(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036644
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】遺伝物質をヒト細胞に標的化して導入するための指向性改変組換えウイルスベクターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/35 20060101AFI20240308BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240308BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240308BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240308BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240308BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240308BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240308BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240308BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240308BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240308BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240308BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240308BHJP
C07K 16/08 20060101ALN20240308BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C12N15/35
C07K14/015
C12N15/62 Z
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K31/7088
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K47/68
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
C12N15/12
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C07K16/46
C07K16/28
C07K16/08
C12N7/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017826
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2022163041の分割
【原出願日】2018-06-27
(31)【優先権主張番号】62/525,704
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クリストス カラツオス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェイ. マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ワン
(72)【発明者】
【氏名】リア サビン
(57)【要約】
【課題】遺伝物質を細胞および/または組織に標的化して導入するために有用な、指向性改変組換えウイルスベクターおよびそれを含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、エピトープを含む組換えウイルスキャプシドタンパク質を提供し、前記エピトープが、前記キャプシドタンパク質とは異種であり、前記異種エピトープまたはその一部分が、抗体パラトープに特異的に結合し、前記ウイルスキャプシドタンパク質が、減少または無効化された天然指向性を有する組換えウイルスキャプシドを形成する。一実施形態では、前記組換えウイルスキャプシドタンパク質は、前記組換えウイルスキャプシドタンパク質が減少または無効化されたウイルスキャプシドを形成するように、前記ウイルスキャプシドの前記天然指向性に関与するアミノ酸位置での置換、挿入、または欠失を含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
EFSウェブ経由でテキストファイルとして提出
ファイル10335WO01_ST25.txtに記述されている配列表は、88キロバイトであり、2018年6月27日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は、概して、遺伝物質を細胞および/または組織に標的化して導入するために有用な、指向性改変組換えウイルスベクターおよびそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の標的細胞への遺伝子の送達は、多様な慢性疾患および遺伝疾患の診断および遺伝子療法のための現代医学における最も重要な技術のうちの1つとなっている。現在のところ、理想的な遺伝子送達媒体を欠くために、遺伝子療法の臨床適用における進展が制限されている。治療的な成功を達成するためには、遺伝子送達媒体は、非標的細胞への形質導入を回避しながら、標的細胞への形質導入が可能でなければならない。具体的には、ウイルスの天然指向性が火急の治療的ニーズを満たしていないときに、天然指向性が削除または軽減され、所望の指向性が首尾よく作製されている組換えウイルスベクターが必要である。(Buchholz et al.,)
【0004】
近年では、ベクター開発の大部分の進展は、レトロウイルス、レンチウイルス、および単純ヘルペスウイルスなどのエンベロープウイルス(例えば、キャプシドが脂質二重層によって囲まれているウイルス)のみならず、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびアデノウイルス(Ad)などのネイキッドウイルス(例えば、エンベロープ(例えば、脂質二重層)を有さないウイルスキャプシドタンパク質によって形成されるキャプシドを含むウイルス)を使用して達成されている。AAVは、穏やかな免疫原性でしかないが、明白な毒性なしに広範囲の種および組織を生体内に形質導入することが可能な非エンベロープウイルスであるため、AAV系ベクターは多くの研究の焦点となっている。
【0005】
AAVは、小さな非エンベロープ性の一本鎖DNAウイルスである。AAVゲノムは、4.7kbであり、それぞれ、2つの逆位末端反復(ITR)、およびRepタンパク質およびCapタンパク質をコードする2つのオープンリーディングフレームを特徴とする。2つのITRは、AAV複製、パッケージング、および統合に必要不可欠な唯一のシスエレメントである。Repリーディングフレームは、分子量78kD、68kD、52kD、および40kDの4つのタンパク質をコードする。これらのタンパク質は、主にAAV複製を調節し、宿主細胞の染色体へのAAVの統合で機能する。Capリーディングフレームは、83~85kD(VP1)、72~73kD(VP2)、および61~62kD(VP3)の分子量を有する3つの構造(キャプシド)ウイルスタンパク質(VP)をコードする。AAVビリオンにおける総タンパク質のうちの80%以上は、VP3で構成され、成熟ビリオンにおいて、VP1、VP2、およびVP3は、およそ1:1:10の相対的存在量で見出されている。生体外で、3つのタンパク質は、ビリオン様構造、例えばウイルスキャプシドへと自然発生的に集合する。したがって、感染細胞におけるウイルスキャプシド形成は、ウイルスDNA合成とは無関係に進行するように思われる(Kotin et al.(1994)Hum.Gene Ther.5:793によって検証されている)。
【0006】
すべての既知のAAVセロタイプの中でも特に、AAV2は、その感染クローンが最初に作製されたため、おそらく最も良好に特徴付けられたセロタイプである。(Samulski et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA79:2077-2081)。その後、AAV3A、AAV3B、AAV4およびAAV6の全配列も決定されている。(Rutledge et al.(1998)J.Virol.72:309-319、Chiorini et al.(1997)J.Virol.71:6823-6833、S.Muramatsu et al.(1996)Virol.221:208-217)。概して、すべてのAAVは、ヌクレオチド配列において80%を超える同一性を共有している。
【0007】
AAVは、他のウイルスベクターとは異なり、AAVが任意の既知のヒト疾患と関連することが示されておらず、概して病原性とはみなされていないため、ヒト遺伝子療法のための有望なベクターである。(Muzyczka et al.(1992)Current Topics in Microbiology and Immunology158:97-129)。さらに、AAVは、有糸分裂後の組織を比較的低い免疫原性で安全に形質導入し、部位特異的な様式で宿主染色体に、およびRepタンパク質がトランスで供給された場合に、染色体19で組織培養細胞に、統合することが可能である。(Kotin et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2211-2215、Samulski et al.(1991)EMBO J.10(12):3941-3950、Balague et al.(1997)J.Virol.71:3299-3306、Surosky et al.(1997)J.Virol.71:7951-7959)。AAVの統合ゲノムは、筋肉、肝臓、および脳を含む多数の組織における長期遺伝子発現を可能にすることが示されている(Fisher(1997)Nature Med.3(3):306-312、Snyder et al.(1997)Nature Genetics16:270-276、Xiao et al.(1997)Experimental Neurology144:113-124、Xiao et al.(1996)J.Virol.70(11):8098-8108)。
【0008】
AAVを含む多数のウイルスは、最終的に感染細胞によるウイルスのエンドサイトーシスをもたらす、ウイルス/リガンド:細胞/受容体の相互作用を介して細胞に感染する。このリガンド:受容体相互作用は、ウイルスベクター研究の大部分の焦点であり、例えば、標的細胞によって発現された受容体を介した、例えば野生型ウイルスによる標的細胞への感染に対して天然に許容状態である細胞から、ウイルスの天然指向性を再配向させるように操作することができる。
【0009】
大部分の細胞表面受容体またはマーカーが、恒常的である(例えば、再生使用のため)か、またはリガンドに誘導される(例えば、受容体に媒介される)かのいずれかでエンドサイトーシスの経路に関与するため、理論上、任意の細胞表面タンパク質またはマーカーに向かうベクターの再標的化は、標的細胞による感染をもたらすはずである。これら受容体は、クラスリン被覆ピット中で塊状になり、クラスリン被覆小胞を介して細胞に進入し、受容体が分類される酸性化エンドソームを通過し、次いで、細胞表面に再生使用されるか、細胞内で貯蔵されるか、またはリソソーム中で分解されるかのいずれかである。このように、ウイルスベクターを再標的化するためのプラットフォームは、多くの場合、ウイルスベクターの天然指向性を削除し、標的細胞単独でまたは主に標的細胞によって発現される受容体またはマーカーにウイルスベクターを再配向さあせることを目的としている。ウイルスベクターを使用した標的化遺伝子療法の進歩のうちの多くは、ウイルスベクターの天然指向性のシュードタイピング、拡張、および/または再標的化がもたらされる、ウイルスベクターの非組換え(非遺伝子)または組換え(遺伝子)改変として要約することができる。(Nicklin and Baker(2002)Curr.Gene Ther.2:273-93、Verheiji and Rottier(2012)Advances Virol2012:1-15において検証されている)。
【0010】
非遺伝的手法は、典型的には、野生型(非改変型)ウイルス表面タンパク質および標的細胞の両方を認識するアダプターを利用する。可溶性疑似受容体(野生型ウイルス)、ポリエチレングリコールなどのポリマー、および抗体またはその一部分が、アダプターのウイルス結合ドメインとして使用されてきたが、天然ペプチドまたはビタミンリガンド、ならびに抗体およびその一部分は、上述のアダプターの細胞結合ドメインに使用されてきた。この手法では、標的細胞へのウイルスベクターの再標的化は、ベクター:アダプター複合体が、標的細胞の表面上に発現されたタンパク質(例えば、細胞表面タンパク質)に結合すると達成することができる。
【0011】
かかる手法は、AAV(Bartlett et al.(1999)Nat.Biotechnol.74:2777-2785)、アデノウイルス(Hemminki et al.(2001)Cancer Res.61:6377-81、van Beusechem et al.(2003)Gene Therapy10:1982-1991、Einfeld,et al.(2001)J.Virol.75:11284-91、Glasgow et al.(2009)PLOS One4:e8355)、ヘルペスウイルス(Nakano et al.(2005)Mol.Ther.11:617-24)、およびパラミキソウイルス(Bian et al.(2005)Cancer Gene Ther.12:295-303、Bian et al.(2005)Int.J.Oncol.29:1359-69)、コロナウイルス(Haijema et al.(2003)J.Virol.77:4528-43]8、Wurdinger et al.(2005)Gene Therapy12:1394-1404)に使用されている。
【0012】
より一般的な手法は、ウイルスキャプシドタンパク質、したがってウイルスキャプシドの表面の組換え遺伝子改変である。間接的な組換え手法では、ウイルスキャプシドは、その後アダプターに連結される異種「足場」を用いて改変される。アダプターは、足場および標的細胞に結合する。(Arnold et al.(2006)Mol.Ther.5:125-132、Ponnazhagen et al.(2002)J.Virol.76:12900-907、WO97/05266も参照されたい)。(1)抗体アダプターのFcに結合するFc結合分子(例えば、Fc受容体、プロテインAなど)、(2)ビオチン標識化アダプターに結合する(ストレプト)アビジン、(3)(ストレプト)アビジンに融合するアダプターに結合するビオチン、および(4)Spy標識化アダプターに結合するSpyCatcherなどの等長ペプチド結合を形成するタンパク質:タンパク質結合対、などの足場が、Adに組み込まれている(Pereboeva et al.(2007)Gene Therapy14:627-637、Park et al.(2008)Biochemical and Biophysical Research Communications366:769-774、Henning et al.(2002)Human Gene Therapy13:1427-1439、Banerjee et al.(2011)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters21:4985-4988)、AAV(Gigout et al.(2005)Molecular Therapy11:856-865、Stachler et al.(2008)Molecular Therapy16:1467-1473)、およびトガウイルス(Quetglas et al.(2010)Virus Research153:179-196、Ohno et al.(1997)Nature Biotechnology15:763-767、Klimstra et al.(2005)Virology338:9-21)。
【0013】
直接的な組換え標的化手法では、標的化リガンドは、ウイルスキャプシドに直接挿入されるか、またはウイルスキャプシドに連結されて、すなわち、タンパク質ウイルスキャプシドが改変されて異種標的リガンドを発現する。次いで、リガンドは、標的細胞上で優先的にまたは標的細胞上でのみ発現される受容体またはマーカーを再配向、例えば結合する。(Stachler et al.(2006)Gene Ther.13:926-931、White et al.(2004)Circulation109:513-519.)。直接的な組換え手法は、AAV(Park et al.,(2007)Frontiers in Bioscience13:2653-59、Girod et al.(1999)Nature Medicine5:1052-56、Grifman et al.(2001)Molecular Therapy3:964-75、Shi et al.(2001)Human Gene Therapy12:1697-1711、Shi and Bartlett(2003)Molecular Therapy7:515-525)、レトロウイルス(Dalba et al.Current Gene Therapy5:655-667、Tai and Kasahara(2008)Frontiers in Bioscience13:3083-3095、Russell and Cosset(1999)Journal of Gene Medicine1:300-311、Erlwein et al.(2002)Virology302:333-341、Chadwick et al.(1999)Journal of Molecular Biology285:485-494、Pizzato et al.(2001)Gene Therapy8:1088-1096)、ポックスウイルス(Guse et al.(2011)Expert Opinion on Biological Therapy11:595-608、Galmiche et al.(1997)Journal of General Virology78:3019-3027、Paul et al.(2007)Viral Immunology20:664-671)、パラミキソウイルス(Nakamura and Russell(2004)Expert Opinion on Biological Therapy4:1685-1692、Hammond et al.(2001)Journal of Virology75:2087-2096、Galanis(2010)Clinical Pharmacology and Therapeutics88:620-625、Blechacz and Russell(2008)Current Gene Therapy8:162-175、Russell and Peng(2009)Current Topics in Microbiology and Immunology330:213-241)、およびヘルペスウイルス(Shah and Breakefield(2006)Current Gene Therapy6:361-370、Campadelli-Fiume et al.(2011)Reviews in Medical
Virology21:213-226)で使用されている。
3つの手法の各々は、利点および欠点を有する。直接的な組換え手法の主な利点は、ウイルスベクターの特異性がウイルスゲノムに固有であり、複製の際に特異性が維持されることである。しかしながら、この組換え手法および間接的な組換え手法では、ウイルスを遺伝子改変する能力は、キャプシド構造の維持、および標的化リガンドまたは足場を許容し適切に提示するであろう位置に標的化リガンドまたは足場が置かれることを必要とし、したがって使用することができる適切なリガンドまたは足場のレパートリーが制限される。このように、組換え再標的化方法は、抗体またはその一部分などの他の結合リガンドの組み込みにつながる、標的化リガンドとして有用な天然に存在する分子によって制限される。非組換えおよび組換えアダプタープラットフォームの両方は、使用されるアダプターの柔軟性において有利である。しかしながら、これらの2つの構成要素系では、最適な形質導入効率の達成は困難である。
異種エピトープをウイルスキャプシドに挿入することによる、従来の組換え再標的化方策に固有の問題を解決するウイルス再標的化方策が、本明細書で提供される。本組換えウイルスキャプシドは、特にウイルスベクター:多重特異性結合分子のある特定の比率以内で、異種エピトープに特異的結合するFvなどの抗体パラトープと標的細胞に特異的に結合する再標的化リガンドとを含む多重特異性、任意選択的に二重特異性の結合分子と組み合わせられると、復元および再配向される天然指向性の減少または無効化を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Kotin et al.(1994)Hum.Gene Ther.5:793
【非特許文献2】Samulski et al.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA79:2077-2081
【非特許文献3】Rutledge et al.(1998)J.Virol.72:309-319
【非特許文献4】Chiorini et al.(1997)J.Virol.71:6823-6833
【非特許文献5】S.Muramatsu et al.(1996)Virol.221:208-217
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で開示されるのは、組換えウイルスキャプシドタンパク質であって、ウイルスキャプシドが、組換えウイルスキャプシドタンパク質と、組換えウイルスキャプシドによって封入されている対象ヌクレオチドを含むウイルスベクターと、を含み、当該キャプシドタンパク質、キャプシド、およびウイルスベクターが、異種エピトープを含む(提示する)ように遺伝子改変されており、異種エピトープ(その一部分またはウイルスキャプシドタンパク質と組み合わせられている)が、抗体パラトープと結合対を形成し、組換えウイルスキャプシドタンパク質または組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスキャプシドが、低減または無効化された(天然)指向性を有するように、組換えウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターが、受容体結合に関与するアミノ酸位置での、例えばウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターの(天然)指向性の変異、挿入、または欠失をさらに含み得る(例えば、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、異種エピトープを欠く標準ウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターの形質導入効率よりも低い形質導入効率、または多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で検出不能な形質導入効率を有する)、組換えウイルスキャプシドタンパク質である。かかる組換えウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターの減少または無効化された(天然)指向性は、適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合部分の存在下で、向上または復元することができる。したがって、ウイルスベクター:多重特異性結合分子のある特定の比率を含む組成物を含む、(1)本明細書に記載の組換えキャプシドタンパク質を含むキャプシドを有する組換えウイルスベクターと、(2)抗体パラトープおよび標的化リガンドを含む多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子と、を含む組成物についても記載されており、標的細胞に遺伝物質を配向および/または導入するためのその使用についても本明細書に記載している。また、例えば、標的細胞に標的化して対象ヌクレオチドを送達するために、組換えウイルスベクターを再標的化する方法であって、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子に組換えウイルスベクターを接触させることを含む方法についても記載されており、組換えウイルスベクターを作製する方法についても記載されている。
【0017】
本明細書に記載されるのは、エピトープを含む組換えウイルスキャプシドタンパク質であって、エピトープが、キャプシドタンパク質とは異種であり、エピトープまたはその一部分が、抗体パラトープに特異的に結合し、組換えウイルスキャプシドタンパク質、または組換えウイルスキャプシドを含むウイルスキャプシドが、例えば多重特異性、任意選択的に二重特異性結合部分の非存在下で減少または無効化された天然指向性を有する、組換えウイルスキャプシドタンパク質である。
【0018】
いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入および/または提示が、異種エピトープを欠く標準ウイルスキャプシドと比較して、ウイルスキャプシドの(天然)指向性を減少または無効化する、例えば、ウイルスキャプシドが、アミノ酸位置でのエピトープの挿入、および/またはアミノ酸位置でアミノ酸のエピトープへの置換を含む変異を含むように、異種エピトープは、組換えウイルスキャプシドタンパク質に挿入(提示)され、変異によって、例えば、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合部分の非存在下で、キャプシドタンパク質の(天然)指向性が減少または無効化される。いくつかの実施形態では、挿入および/または提示が、例えば多重特異性、任意選択的に二重特異性結合部分の非存在下で、異種エピトープを欠く標準ウイルスキャプシドと比較して、組換えウイルスキャプシドの(天然)指向性を部分的に減少させるように、異種エピトープがウイルスキャプシドタンパク質に挿入(提示)され、ウイルスキャプシドは、例えば変異を欠く標準ウイルスキャプシドと比較して、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合部分の非存在下で、組換えウイルスキャプシドまたはそれを含む組換えウイルスベクターの(天然)指向性をさらに減少および/または無効化するさらなる変異(例えば異種エピトープの挿入以外の置換、欠失、挿入)をさらに含む。
【0019】
概して、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、キャプシド遺伝子に由来し得、例えばエピトープを発現するように改変されたキャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/または遺伝子改変された、例えばアデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどの、概してヒト細胞に感染する非エンベロープウイルス、または概してヒト細胞に感染する非エンベロープウイルスのセロタイプである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAVキャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたキャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/または霊長類に感染する遺伝子改変アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドタンパク質のAAVセロタイプであり、任意選択的に、AAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2、AAV6、AAV8、またはAAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2キャプシドタンパク質、遺伝子改変AAV6キャプシドタンパク質、遺伝子改変AAV8キャプシドタンパク質、または遺伝子改変AAV9キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV2キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/または野生型AAV2 VP1タンパク質のアミノ酸配列が配列番号1としてそれぞれ表される、遺伝子改変AAV2 VP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV6キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV6キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/または野生型AAV6 VP1のアミノ酸配列が配列番号3として表される、遺伝子改変AAV6 VP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV8キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV8キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/または野生型AAV VP1タンパク質のアミノ酸配列が配列番号21としてそれぞれ表される、遺伝子改変AAV8 VP1、VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV9キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/またはAAV9 VP1の野生型アミノ酸配列が配列番号5としてそれぞれ表される、遺伝子改変AAV9
VP1、VP2もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV2キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/またはAAV2の遺伝子改変VP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV6キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV6キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/またはAAV6の遺伝子改変VP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV8キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV8キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/またはAAV8の遺伝子改変VP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、エピトープを発現するように改変されたAAV9キャプシド遺伝子によってコードされ、かつ/またはAAV9の遺伝子改変VP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質である。
【0020】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、エピトープを発現するように改変されたキメラAAVキャプシド遺伝子に由来する、例えば改変されたキメラAAVキャプシド遺伝子によってコードされ、キメラAAVキャプシド遺伝子が、複数の核酸配列を含み、複数の核酸配列の各々が、異なるAAVセロタイプのキャプシドタンパク質の一部分をコードし、複数の核酸配列が、一緒になってキメラAAVキャプシドタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、キメラAAV2キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、キメラAAV6キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、ウイルスキャプシドタンパク質は、キメラAAV8キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、キメラAAV9キャプシド遺伝子に由来する。
【0021】
概して、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、標準キャプシドを含む、異種エピトープまたはキャプシドを欠く標準キャプシドと比較して、異種エピトープ自体がそれぞれ、組換えキャプシドタンパク質またはそれを含むキャプシドの天然指向性を減少および/または無効化するように、組換えキャプシドタンパク質に挿入され、かつ/または組換えキャプシドタンパク質によって提示されている異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、野生型標準キャプシドタンパク質の天然指向性に関与するキャプシドタンパク質の領域、例えば、細胞標的化に関与するキャプシドタンパク質の領域に、挿入(提示)されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、Adファイバータンパク質のノブドメインに挿入され、かつ/またはノブドメインによって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、Adファイバータンパク質のHIループに挿入され、かつ/またはHIループによって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAVキャプシドタンパク質のヘパリン結合部位に挿入され、かつ/またはヘパリン結合部位によって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2キャプシドタンパク質のヘパリン結合部位に挿入され、かつ/またはヘパリン結合部位によって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV6キャプシドタンパク質のヘパリン結合部位に挿入され、かつ/またはヘパリン結合部位によって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV8キャプシドタンパク質のヘパリン結合部位に挿入され、かつ/またはヘパリン結合部位によって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV9キャプシドタンパク質のヘパリン結合部位に挿入され、かつ/またはヘパリン結合部位によって提示されている。いくつかの実施形態では、(i)ウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、エピトープは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質の位置I453またはI587のアミノ酸、ならびに/またはAAV2 VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、(ii)ウイルスキャプシドタンパク質は、AAV6キャプシド遺伝子に由来し、エピトープは、AAV6 VP1キャプシドタンパク質の位置I585のアミノ酸、ならびに/またはAAV6 VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、(iii)ウイルスキャプシドは、AAV8キャプシド遺伝子に由来し、エピトープは、AAV8 VP1キャプシドタンパク質の位置I590のアミノ酸、ならびに/またはAAV8 VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、あるいは(iv)ウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、エピトープは、AAV9 VP1キャプシドタンパク質の位置I453またはI589のアミノ酸、ならびに/またはAAV9 VP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換える。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2キャプシドタンパク質VP1のG453(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)、AAV2キャプシドタンパク質VP1のN587(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)、AAV6キャプシドタンパク質VP1のQ585(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)、AAV8キャプシドタンパク質VP1のN590(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)、AAV9キャプシドタンパク質VP1のG453(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)、またはAAV9キャプシドタンパク質VP1のA589(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)からなる群から選択されるアミノ酸の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2キャプシドタンパク質VP1のG453(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2キャプシドタンパク質VP1のN587(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV6キャプシドタンパク質VP1のQ585(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7、AAV8、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV8キャプシドタンパク質VP1のN590(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV9のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV9キャプシドタンパク質VP1のG453(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV9キャプシドタンパク質VP1のA589(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応する位置の、またはヒトに感染する異なるAAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、およびAAV8のVP1、VP2、および/もしくはVP3キャプシドタンパク質の対応するアミノ酸)の直後に挿入されている(例えばC末端に融合されている)。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質の(または同じキャプシド遺伝子からコードされたVP2および/もしくはVP3キャプシドの対応する位置の)アミノ酸N587とR588との間に挿入され、かつ/またはAAV2 VP1キャプシドタンパク質によって提示される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号2として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号4として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号25として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号26として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号27として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えキャプシドタンパク質は、異種エピトープに加えて、第2の異なる変異を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV2キャプシドタンパク質であり得、異種エピトープを含み、変異、例えば、R585Aおよび/またはR588A変異をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV2 VP1タンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、R585Aおよび/またはR5889Aからなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV2 VP1タンパク質のN587の直後に挿入されている(例えば、N587のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、R585Aおよび/またはR588Aからなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV9 VP1タンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、W503A変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV9 VP1タンパク質のA589の直後に挿入されている(例えば、A589のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、W503A変異をさらに含む。
【0023】
概して、組換えウイルスキャプシドタンパク質および/または組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクターは、少なくとも1アミノ酸長である異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、約5アミノ酸長~約35アミノ酸長であり得、抗体パラトープ(例えば、免疫グロブリン可変ドメイン)と結合対を形成する。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、少なくとも10アミノ酸長を含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、親和性タグを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープおよび/または親和性タグは、免疫グロブリン定常ドメインと結合対を形成しない。いくつかの実施形態では、異種エピトープおよび/または親和性タグは、金属イオン、例えばNi2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+などと結合対を形成しない。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、ストレプトアビジン、Strep II、HA、L14、4C-RGD、LH、およびプロテインAからなる群から選択されるポリペプチドではない。いくつかの実施形態では、親和性タグは、FLAG(配列番号7)、HA(配列番号8)およびc-myc(EQKLISEEDL、配列番号6)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、c-myc(EQKLISEEDL、配列番号6)を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含む異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、(i)AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、(ii)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含み、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、(iii)R585Aおよび/またはR5889Aからなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のN587の直後に挿入されている(例えば、N587のC末端に融合されている)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含む異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、(i)AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、(ii)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含み、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のN587の直後に挿入されている(例えば、N587のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、(iii)R585Aおよび/またはR588Aからなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、(i)AAV6キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV6 VP1キャプシドタンパク質であり、(ii)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含み、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のQ585の直後に挿入されている(例えば、Q585のC末端に融合されている)異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV8 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のN590の直後に挿入されている(例えば、N590のC末端に融合されている)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含む異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含む異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、(i)AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、(ii)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含み、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のG453の直後に挿入されている(例えば、G453のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、(iii)W503A変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のA589の直後に挿入されている(例えば、A589のC末端に融合されている)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含む異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、(i)AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、(ii)配列EQKLISEEDL(配列番号6)を含み、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のA589の直後に挿入されている(例えば、A589のC末端に融合されている)異種エピトープを含み、(iii)W503A変異をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のI587に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のN587とR588との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含み、例えば、配列番号2として表されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV6 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のI585に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のQ585とS586との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含み、例えば、配列番号4として表されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV8 VP1キャプシドの少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のI590に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のN590とT591との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含み、例えば、配列番号25として表されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV9 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のI453に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV9
VP1キャプシドタンパク質のG453とS454との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含み、例えば、配列番号26として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV9
VP1キャプシドタンパク質のI589に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドは、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のA589とQ590との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含み、例えば、配列番号27として表されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、異種エピトープは、親和性タグおよび1つ以上のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、リンカーが隣接する親和性タグを含み、例えば、異種エピトープは、N末端からC末端に向かって、第1のリンカー、親和性タグ、および第2のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のリンカーは、各々独立した、少なくとも1アミノ酸長のポリペプチドである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の異種エピトープ、例えば、親和性タグ自体、または1つ以上のリンカーと組み合わせた親和性タグは、約5アミノ酸長~約35アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1および第2のリンカーは、同一の長さであり、かつ/または同一のアミノ酸配列を含む。
【0030】
概して、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、減少または無効化された天然指向性を有し、標準ウイルスキャプシド、例えば標準ウイルスキャプシドタンパク質を含むキャプシド、例えば組換えウイルスキャプシドタンパク質と同一であるが異種エピトープを欠くウイルスキャプシドタンパク質のものと比較して、形質導入に対して天然に許容状態である標準細胞を標的化および結合する能力が、例えば減少しているか、あるいは不可能である。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも10%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも20%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも30%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも40%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも50%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも60%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも70%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも75%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも80%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも85%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも90%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも95%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドは、標準ウイルスキャプシドと比較して、少なくとも99%低下した形質導入効率を呈する。いくつかの実施形態では、および適切な多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子の非存在下で、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスキャプシドによる、対照細胞の形質導入は、無効化される、例えば検出不能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスキャプシドは、モザイクキャプシドであり、例えば、ある特定の比率で、異種エピトープを含む組換えウイルスキャプシドタンパク質と、異種エピトープを含まない標準キャプシドタンパク質とを含む。いくつかの実施形態では、標準キャプシドタンパク質は、組換えウイルスキャプシドタンパク質と同じセロタイプを有する野生型キャプシドタンパク質のアミノ酸配列を含むという点で、野生型標準キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、標準キャプシドタンパク質は、対照標準キャプシドタンパク質が異種エピトープを欠くことを除いて、組換えウイルスキャプシドタンパク質のアミノ酸配列を含むという点で、対照標準キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、標準キャプシドタンパク質は、野生型のキャプシドタンパク質の指向性を減少させる変異(例えば、アミノ酸配列の挿入、キメラ化など)を除いて、組換えウイルスキャプシドタンパク質と同じセロタイプを有する野生型キャプシドタンパク質のものと実質的に同一のアミノ酸配列を含むという点で、変異野生型標準タンパク質である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、組換えウイルスキャプシドタンパク質と、標準キャプシドタンパク質とを、1:1~1:15の範囲の比率で含むか、あるいは本明細書に記載の方法は、このように組み合わせる。いくつかの実施形態では、比率は1:2である。いくつかの実施形態では、比率は1:3である。いくつかの実施形態では、比率は1:4である。いくつかの実施形態では、比率は1:5である。いくつかの実施形態では、比率は1:6である。いくつかの実施形態では、比率は1:7である。いくつかの実施形態では、比率は1:8である。いくつかの実施形態では、比率は1:9である。いくつかの実施形態では、比率は1:10である。いくつかの実施形態では、比率は1:11である。いくつかの実施形態では、比率は1:12である。いくつかの実施形態では、比率は1:13である。いくつかの実施形態では、比率は1:14である。いくつかの実施形態では、比率は1:15である。
【0032】
また、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示の組換えウイルスキャプシドタンパク質をコードする核酸、(例えば、組換えウイルスキャプシドを作製する方法に使用され得る)かかる核酸、および/または組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組成物(例えば、組換えウイルスキャプシドタンパク質から本質的になる組成物、本明細書に記載のウイルスキャプシドタンパク質を含むキャプシドによって封入されているウイルスベクターのみを含む組成物、(例えば、ウイルスベクター対多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子(分子:分子)のある特定の比率で)かかるウイルスベクターと多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子とを含む組成物、かかるウイルスベクター、再標的化分子、および薬学的に許容可能な担体などを含む組成物)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、EQKLISEEDL(配列番号6)のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と、およびアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスキャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のI587に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のN587とR588との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含み、例えば、いくつかの実施形態では、記載の核酸は、配列番号2として表されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV6 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のI585に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のQ585とS586との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含み、例えば、いくつかの実施形態では、記載の核酸は、配列番号4として表されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV8 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のI590に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のN590とT591との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含み、例えば、いくつかの実施形態では、記載の核酸は、配列番号25として表されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のI453に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のG453とS454との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含み、例えば、いくつかの実施形態では、記載の核酸は、配列番号26として表されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のI589に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のA589とQ590との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)をコードするヌクレオチド配列を含み、例えば、いくつかの実施形態では、記載の核酸は、配列番号27として表されるアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
【0037】
概して、本明細書に記載の組換えウイルスベクターは、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスキャプシドを含み、ウイルスキャプシドは、対象ヌクレオチドを封入している。いくつかの実施形態では、対象ヌクレオチドは、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、哺乳類プロモーター、鳥類プロモーター、魚プロモーター、昆虫プロモーター、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、対象ヌクレオチドは、非ヒトプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、EF1αプロモーターである。
【0038】
概して、対象ヌクレオチドは、1つ以上の遺伝子であってもよく、これは検出可能なマーカー、例えば、レポーター、または治療ポリペプチドをコードしてもよい。いくつかの実施形態では、対象ヌクレオチドは、レポーター遺伝子である。いくつかの実施形態では、対象ヌクレオチドは、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼなどからなる群から選択される検出可能なマーカーをコードするレポーター遺伝子である。いくつかの実施形態では、検出可能なマーカーは、緑色蛍光タンパク質である。他の実施形態では、対象ヌクレオチドは、自殺遺伝子、抗体またはその断片をコードするヌクレオチド、CRISPR/Cas系またはそれらの一部分(複数可)をコードするヌクレオチド、アンチセンスRNAをコードするヌクレオチド、siRNAをコードするヌクレオチド、分泌酵素などからなる群選択される。一実施形態では、対象ヌクレオチドは、マルチドメイン治療用のタンパク質、例えば、2つの別個の機能を提供する少なくとも2つのドメインを含むタンパク質をコードする。
【0039】
本明細書に記載の組成物は、概して、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスベクターを含み、例えば、キャプシドが対象ヌクレオチドを封入している、組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むキャプシドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、(1)異種エピトープを含むように遺伝子改変された組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むキャプシドを有するウイルスベクターと、(2)(i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープ、および(ii)受容体に特異的に結合する再標的化リガンドを含む、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子と、任意選択的に、(3)薬学的に許容可能な担体と、を含む。
【0040】
本明細書に記載の抗体パラトープは、概して、異種エピトープを特異的に認識する相補性決定領域(CDR)、例えば、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのCDR3領域を最小限で含む。いくつかの実施形態では、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、異種エピトープに特異的に結合する抗体パラトープを含む抗体(またはその一部分)を含む。例えば、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、単一ドメイン重鎖可変領域または単一ドメイン軽鎖可変領域を含み得、単一ドメイン重鎖可変領域または単一ドメイン軽鎖可変領域が、異種エピトープに特異的に結合する抗体パラトープを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、Fv領域を含み得、例えば、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、異種エピトープに特異的に結合する抗体パラトープを含む、scFvを含み得る。いくつかの実施形態では、多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、異種エピトープに特異的結合する抗体パラトープを含む抗体(またはその一部分)を含み、抗体(またはその一部分)が、さらに1つ以上の抗体定常ドメイン(例えば、重鎖定常ドメイン(例えば、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、CH4など)、および/または軽鎖定常ドメイン(例えばCL)を含み、1つ以上の抗体定常ドメインが、異種エピトープに結合しない。
【0041】
本明細書に記載の多重特異性、任意選択的に二重特異性結合分子は、組換えウイルスキャプシドタンパク質に挿入/提示されている異種エピトープに特異的結合するパラトープ(例えば、パラトープを含む抗体またはその一部分)に加えて、再標的化リガンドをさらに含む。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(例えば、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質の単離および/または精製のための)ビーズの表面上の受容体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、哺乳類(例えば、ヒト)真核細胞、例えば、標的細胞の表面上に発現される、細胞表面タンパク質、例えば、受容体、細胞表面マーカーなどに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)肝細胞、(ヒト)脳細胞、(ヒト)T細胞、(ヒト)腎細胞、(ヒト)腸細胞、(ヒト)膵細胞、(ヒト)癌細胞、および/または異種病原体に感染した(ヒト)細胞に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)肝細胞特異性マーカー、(ヒト)脳細胞特異性マーカー、(ヒト)T細胞特異性マーカー、(ヒト)腎細胞特異性マーカー、(ヒト)腸細胞特異性マーカー、(ヒト)膵細胞特異性マーカー、(ヒト)腫瘍細胞特異性マーカー、および/または病原性エピトープに結合する。
【0042】
いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)肝細胞によって発現される受容体、例えば、アシアロ糖タンパク質受容体、例えば、hASGR1に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)神経細胞によって発現される受容体、例えば、GABA、トランスフェリンなどに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)T細胞によって発現される受容体、例えば、CD3、例えば、CD3εに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)造血幹細胞によって発現される受容体、例えば、CD34に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)腎細胞によって発現される受容体に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)筋細胞によって発現される受容体、例えばインテグリンなどに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)癌細胞によって発現される受容体、例えば腫瘍関連抗原、例えば、アジポフィリン、AIM-2、ALDH1A1、アルファ-アクチン-4、アルファ-フェトタンパク質(「AFP」)、ARTC1、B-RAF、BAGE-1、BCLX(L)、BCR-ABL融合タンパク質b3a2、ベータ-カテニン、BING-4、CA-125、CALCA、癌胎児性抗原(“CEA”)、CASP-5、CASP-8、CD274、CD45、Cdc27、CDK12、CDK4、CDKN2A、CEA、CLPP、COA-1、CPSF、CSNK1A1、CTAG1、CTAG2、サイクリンD1、サイクリン-A1、dek-can融合タンパク質、DKK1、EFTUD2、伸長因子2、ENAH(hMena)、Ep-CAM、EpCAM、EphA3、上皮癌抗原(“ETA”)、ETV6-AML1融合タンパク質、EZH2、E6、E7、FGF5、FLT3-ITD、FN1、G250/MN/CAIX、GAGE-1,2,8、GAGE-3,4,5,6,7、GAS7、グリピカン-3、GnTV、gp100/Pme117、GPNMB、HAUS3、ヘプシン、HER-2/neu、HERV-K-MEL、HLA-A11、HLA-A2、HLA-DOB、hsp70-2、IDO1、IGF2B3、IL13Ralpha2、腸カルボキシルエステラーゼ、K-ras、カリクレイン4、KIF20A、KK-LC-1、KKLC1、KM-HN-1、CCDC110としても知られているKMHN1、LAGE-1、LDLR-フコシルトランフエェラーゼAS融合タンパク質、Lengsin、M-CSF、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-C1、MAGE-C2、リンゴ酸酵素、マンマグロビン-A、MART2、MATN、MC1R、MCSP、mdm-2、ME1、Melan-A/MART-1、Meloe、ミッドカイン、MMP-2、MMP-7、MUC1、MUC5AC、ムチン、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン、ミオシンクラスI、N-raw、NA88-A、neo-PAP、NFYC、NY-BR-1、NY-ESO-1/LAGE-2、OA1、OGT、OS-9、Pポリペプチド、p53、PAP、PAX5、PBF、pml-RARアルファ融合タンパク質、多型上皮ムチン(“PEM”)、PPP1R3B、PRAME、PRDX5、PSA、PSMA、PTPRK、RAB38/NY-MEL-1、RAGE-1、RBAF600、RGS5、RhoC、RNF43、RU2AS、SAGE、セクレニン1、SIRT2、SNRPD1、SOX10、Sp17、SPA17、SSX-2、SSX-4、STEAP1、サバイビン、SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質、TAG-1、TAG-2、テロメラーゼ、TGF-ベータRII、TPBG、TRAG-3、トリオースリン酸イソメラーゼ、TRP-1/gp75、TRP-2、TRP2-INT2、チロシナーゼ、チロシナーゼ(“TYR”)、VEGF、WT1、XAGE-lb/GAGED2a、Kras、NY-ESO1、MAGE-A3、HPV E2、HPV E6、HPV E7、WT-1抗原(リンパ腫および他の固形癌における)、ErbB受容体、メランA[MART1]、gp100、チロシナーゼ、TRP-1/gp75、およびTRP-2(黒色腫における);MAGE-1およびMAGE-3(膀胱、頭頚部、および非小細胞癌腫における);HPV EGおよびE7タンパク質(子宮頸癌における);ムチン[MUC-1](乳癌、膵癌、結腸癌、および前立腺癌における);前立腺特異性抗原[PSA](前立腺癌における);癌胎児性抗原[CEA](大腸癌、乳癌、および消化器癌における)、ならびにMAGE-2、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-10、MAGE-12、BAGE-1、CAGE-1,2,8、CAGE-3 TO 7、LAGE-1、NY-ESO-1/LAGE-2、NA-88、GnTV、TRP2-INT2としてかかる共有腫瘍特異性抗原(shared tumor-specific antigens)などに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、E6および/またはE7に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、Her2に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、ヒトグルカゴン受容体(hGCGR)に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、ヒトエクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ3(hENTPD3)に結合する。
【0043】
いくつかの実施形態では、パラトープ(例えば、抗体またはその一部分)および再標的化リガンドは、互いに直接融合している。いくつかの実施形態では、異種エピトープに特異的結合するパラトープ(例えば、抗体またはその一部分)、および再標的化リガンドは、互いに共有結合している。
【0044】
いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、組換えウイルスキャプシドタンパク質に挿入/提示されている異種エピトープに特異的結合するパラトープを含み、第2の抗原結合ドメインが、標的細胞によって発現される細胞表面タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、二重特異性結合分子は、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗体結合ドメインが、組換えウイルスキャプシドタンパク質に挿入/提示されている異種エピトープに特異的結合するパラトープを含み、第2の抗原結合ドメインが、標的細胞によって発現される受容体に特異的に結合し、第1の抗原結合ドメインが、第1のCH3ドメインを含む第1の重鎖領域に操作可能に連結され、第2の抗体結合ドメインが、第2のCH3ドメインを含む第2の重鎖領域に操作可能に連結され、第1および第2のIg CH3ドメインが、少なくとも1つのアミノ酸で互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠く二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を減少させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソンナンバリングによる、EUナンバリングではH435R)などのプロテインA結合を減少または無効にする変異を含有する。第2のCH3ドメインはさらに、Y96F改変(IMGTによる、EUではY436F)を含んでもよい。第2のCH3ドメイン内に見出され得るさらなる改変としては、以下が挙げられる:IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる、EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGT、EUではN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる、EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)。
【0045】
いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示される親和性タグに結合し、第2の抗原結合ドメインが、標的細胞の表面上に発現される受容体に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、標的細胞の表面上で発現される受容体に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、hASGR1に結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、CD3タンパク質、例えばCD3εに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、インテグリンに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、インテグリン、例えばhGCGRに結合する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性結合分子、例えば、第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であり、第1の抗原結合ドメインが、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質によって提示されるアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6)に結合し、第2の抗原結合ドメインが、ENTPD3に結合する。
【0046】
また、組換えウイルスキャプシドタンパク質、それを含むウイルスベクター、組成物などを作製および使用する方法が本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルスを再配向させて、標的細胞に診断/治療カーゴを送達する方法は、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えウイルスベクター、例えば異種エピトープを提示する組換えウイルスキャプシドを含むキャプシドを含むウイルスベクターを、二重特異性結合分子と組み合わせることを含み、二重特異性結合分子が、(i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープ、および(ii)受容体に特異的に結合する再標的化リガンドを含む。かかる方法は、組換えウイルスベクターを生成する第1の工程として、例えば、ウイルスベクターの生成に十分な条件下でパッケージング細胞を培養することを含み得、パッケージング細胞が、エピトープを含むキャプシドタンパク質をコードするプラスミドを含む。標的細胞に診断/治療カーゴを送達するとき、本明細書に記載の方法は、異種エピトープを提示する組換えウイルスキャプシドを含むキャプシドを含むウイルスベクターと、多重特異性結合分子との組み合わせを標的細胞に接触させることを含み得、多重特異性結合分子が、i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープ、および(ii)標的細胞によって発現される受容体に特異的に結合する再標的化リガンドを含む。いくつかの実施形態では、標的細胞は生体外にある。他の実施形態では、標的細胞は、対象、例えばヒトの生体内にある。
【0047】
いくつかの実施形態では、標準ウイルスベクターのものと同様のウイルスベクターの形質導入効率を復元する分子:分子の比率で、本明細書に記載の組換えキャプシドタンパク質を含むキャプシドで封入されている対象ヌクレオチドを含む組換えウイルスベクターと、多重特異性結合分子とを、本明細書に記載の組成物は含むか、あるいは本明細書に記載の方法は組み合わせる。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:0.5~1:100の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:4~1:20の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対二重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:8~1:15の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:4である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:8である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:15である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:20である。
【0048】
また、本明細書に記載されているのは、ウイルスキャプシドを不活性化する方法、および/またはウイルスベクターを生成する方法であり、方法は、概して、(a)ウイルスキャプシドタンパク質をコードする核酸配列に、異種タンパク質をコードする核酸を挿入して、異種タンパク質を含む遺伝子改変キャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を形成すること、および/または(b)ウイルスベクターを生成するのに十分な条件下でパッケージング細胞を培養することであって、パッケージング細胞が、ヌクレオチド配列を含む、培養すること、を含む。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞は、ヘルパープラスミドおよび/または対象ヌクレオチドを含む伝達プラスミドをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養上清から自己相補的アデノ随伴ウイルスベクターを単離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、パッケージング細胞を溶解することと、一本鎖アデノ随伴ウイルスベクターを細胞溶解物から単離することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)細胞片を除去することと、(b)DNase IおよびMgCl2を用いて、ウイルスベクターを含有する上清を処理することと、(c)ウイルスベクターを濃縮することと、(d)ウイルスベクターを精製することと、(e)(a)~(d)のうちの任意の組み合わせと、をさらに含む。また、本明細書に記載の方法に従って作製されたウイルスベクター、および本明細書に記載のウイルスベクターを生成するのに有用なパッケージング細胞、例えば、記載の組換えキャプシドタンパク質をコードするプラスミドを含むパッケージング細胞が本明細書に提供されている。
【0049】
特定の態様では例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
エピトープを含む組換えウイルスキャプシドタンパク質であって、前記エピトープが、前記キャプシドタンパク質とは異種であり、
前記異種エピトープまたはその一部分が、抗体パラトープに特異的に結合し、
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、減少または無効化された天然指向性を有する組換えウイルスキャプシドを形成する、組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目2)
前記エピトープが、少なくとも1アミノ酸長である、項目1に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目3)
前記組換えウイルスキャプシドタンパク質が、減少または無効化されたウイルスキャプシドを形成するように、前記ウイルスキャプシドの前記天然指向性に関与するアミノ酸位置での置換、挿入、または欠失を含む、項目1または項目2に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目4)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド遺伝子に由来し、任意選択的に、前記異種エピトープが、AAV2のI587、AAV6のI585、AAV8のI590、AAV9のI453、AAV9のI589、および霊長類に感染するAAVセロタイプの任意の対応するアミノ酸からなる群から選択される位置に挿入され、任意選択的に、前記霊長類に感染するAAVセロタイプが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9からなる群から選択される、項目1~3に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目5)
前記アデノ随伴ウイルスが、AAV2である、項目4に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目6)
前記アデノ随伴ウイルスが、AAV6である、項目4に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目7)
前記アデノ随伴ウイルスが、AAV8である、項目4に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目8)
前記アデノ随伴ウイルスが、AAV9である、項目4に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目9)
(i)前記ウイルスキャプシドタンパク質が、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、前記エピトープが、位置I453またはI587のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、
(ii)前記ウイルスキャプシドタンパク質が、遺伝子改変AAV6 VP1キャプシドタンパク質であり、前記エピトープが、位置I585のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、
(iii)前記ウイルスキャプシドが、遺伝子改変AAV8 VP1キャプシドタンパク質であり、前記エピトープが、位置I590のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、
(iv)前記ウイルスキャプシドタンパク質が、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、前記エピトープが、位置I453またはI589のアミノ酸の後に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換える、項目1~8のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目10)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、前記AAV2 VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸N587とR588との間に並ぶ、前記エピトープを発現するように改変されたAAV2キャプシド遺伝子によってコードされる、項目1~9のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目11)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、AAV6キャプシド遺伝子に由来し、前記エピトープが、アミノ酸Q585の直後に挿入されている、項目1~9のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目12)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、AAV8キャプシド遺伝子に由来し、前記エピトープが、前記AAV8 VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸N590の直後に挿入されている、項目1~9のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。(項目13)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、前記エピトープが、前記AAV9 VP1キャプシドタンパク質の位置G453またはA589のアミノ酸の後で前記キャプシドタンパク質に挿入され、かつ/またはそのアミノ酸を置き換え、前記キャプシドタンパク質が、追加の変異をさらに含む、項目1~9のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目14)
前記追加の変異が、W503Aである、項目13に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目15)
前記エピトープが、アミノ酸配列EQKLISEEDLを含み、前記アミノ酸配列またはその一部分が、前記抗体パラトープに特異的に、および任意選択的に結合する、項目1~14のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目16)
前記エピトープが、アミノ酸配列EQKLISEEDLを含み、前記アミノ酸配列またはその一部分が、前記抗体パラトープに特異的に結合し、
前記アミノ酸配列EQKLISEEDLが、AAVキャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ操作可能に連結されている、項目1~15のいずれかに記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目17)
前記ウイルスキャプシドタンパク質が、配列番号2として表されるアミノ酸配列、配列番号4として表されるアミノ酸配列、配列番号25として表されるアミノ酸配列、配列番号26として表されるアミノ酸配列、または配列番号27として表されるアミノ酸配列を含む、項目16に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目18)
前記組換えウイルスキャプシドタンパク質、または前記組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスキャプシドが、前記抗体パラトープを含む多重特異性結合分子の非存在下で、標的細胞に感染することができず、任意選択的に、前記抗体パラトープを含む多重特異性結合分子の非存在下で、前記ウイルスキャプシドタンパク質、または前記組換えウイルスキャプシドタンパク質を含むウイルスキャプシドの形質導入効率が、
(i)少なくとも10%減少されるか、
(ii)少なくとも20%減少されるか、
(iii)少なくとも30%減少されるか、
(iv)少なくとも40%減少されるか、
(v)少なくとも50%減少されるか、
(vi)少なくとも60%減少されるか、
(vii)少なくとも70%減少されるか、
(viii)少なくとも80%減少されるか、
(ix)少なくとも90%減少されるか、あるいは
(x)無効化される、項目1~17のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質。
(項目19)
項目1~18のいずれか一項に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸。
(項目20)
前記ヌクレオチド配列が、配列番号2として表されるアミノ酸配列、配列番号4として表されるアミノ酸配列、配列番号25として表されるアミノ酸配列、配列番号26として表されるアミノ酸配列、または配列番号27として表されるアミノ酸配列を含む、組換えウイルスキャプシドタンパク質をコードする、項目19に記載の単離核酸。
(項目21)
項目20に記載の組換えウイルスキャプシドによって封入された対象ヌクレオチドを含む組換えウイルスベクターであって、任意選択的に、前記組換えウイルスキャプシドが、モザイクキャプシドである、組換えウイルスベクター。
(項目22)
前記対象ヌクレオチドが、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、哺乳類プロモーター、鳥類プロモーター、魚プロモーター、昆虫プロモーター、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるプロモーターの制御下にある、項目21に記載の組換えウイルスベクター。
(項目23)
前記対象ヌクレオチドが、非ヒトプロモーターの制御下にある、項目22に記載の組換えウイルスベクター。
(項目24)
前記対象ヌクレオチドが、AAV ITR配列に隣接している、項目23に記載の組換えウイルスベクター。
(項目25)
前記対象ヌクレオチドが、レポーター遺伝子である、項目21~24のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクター。
(項目26)
前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質をコードする、項目25に記載の組換えウイルスベクター。
(項目27)
前記対象ヌクレオチドが、自殺遺伝子、抗体またはその断片をコードするヌクレオチド、CRISPR/Cas系またはその一部分(複数可)をコードするヌクレオチド、アンチセンスRNAをコードするヌクレオチド、siRNAをコードするヌクレオチド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目21~24のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクター。
(項目28)
(a)項目21~27のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクターと、(b)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープを含む多重特異性結合分子と、を含む組成物であって、任意選択的に、多重特異性結合分子が、標的細胞上で発現された受容体に特異的に結合する再標的化リガンドをさらに含み、前記多重特異性結合分子が、任意選択的に二重特異性結合分子である、組成物。
(項目29)
前記ウイルスベクターおよび前記多重特異性結合分子が、1:4の比率で存在する、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記抗体パラトープが、Fvドメインである、項目28または29に記載の組成物。
(項目31)
前記Fvドメインが、重鎖定常ドメインに直接融合されている、項目30に記載の組成物。
(項目32)
前記再標的化リガンドが、抗体またはその一部分である、項目28~31のいずれか一項に記載の組成物。
(項目33)
前記多重特異性結合分子が、二重特異性抗体であり、
前記パラトープおよび前記再標的化リガンドが、第1および第2の重鎖定常ドメインに融合されている別個のFvドメインを各々含む、項目28~32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目34)
前記第1および第2の重鎖が、異なる結合親和性でプロテインAに結合する、項目33に記載の組成物。
(項目35)
前記多重特異性結合分子が、二重特異性抗体であり、
前記再標的化リガンドが、2つの同一の免疫グロブリン重鎖および2つの同一の軽鎖を含む四量体抗体構造を備え、
異種エピトープに結合する前記パラトープが、一方もしくは両方の重鎖のC末端もしくはN末端に、かつ/または一方もしくは両方の重鎖のC末端もしくはN末端に付加されている、項目28~32のいずれか一項に記載の組成物。
(項目36)
前記パラトープがscFvであり、任意選択的に、前記scFvが、配列番号37として表されるアミノ酸配列を含む、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記異種エピトープが、アミノ酸配列EQKLISEEDLまたはその一部分を含み、前記抗体パラトープが、前記アミノ酸配列EQKLISEEDLまたはその一部分に特異的に結合する、項目28~36のいずれか一項に記載の組成物。
(項目38)
前記再標的化リガンドが、細胞表面マーカーである細胞表面タンパク質に特異的に結合する、項目28~37のいずれか一項に記載の組成物。
(項目39)
前記細胞表面マーカーが、アシアロ糖タンパク質1(ASGR1)である、項目38に記載の組成物。
(項目40)
前記細胞表面マーカーが、CD3である、項目38に記載の組成物。
(項目41)
前記細胞表面マーカーが、ENTPD3である、項目38に記載の組成物。
(項目42)
薬学的に許容可能な担体をさらに含む、項目28~41のいずれか一項に記載の組成物。
(項目43)
項目21~27のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクターを標的細胞に配向させる方法であって、
前記組換えウイルスベクターを多重特異性結合分子と接触させることを含み、
前記多重特異性結合分子が、(i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープ、および(ii)前記標的細胞の表面上に発現されるタンパク質に特異的に結合する再標的化リガンドを含む、方法。
(項目44)
前記標的細胞が、生体内にある、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記接触させることが、エクスビボで実施される、項目43または項目44に記載の方法。
(項目46)
細胞表面タンパク質を発現している標的細胞に対象ヌクレオチドを送達する方法であって、前記標的細胞を項目28~42のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含み、前記多重特異性結合分子が、前記細胞表面タンパク質に結合する再標的化リガンドを含む、方法。
(項目47)
前記標的細胞が、生体外にある、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記標的細胞が、対象の生体内にある、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記対象が、ヒトである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記標的細胞が、ヒト細胞である、項目46~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記標的細胞が、肝細胞、脳細胞、T細胞、腎細胞、腸細胞、膵細胞、癌細胞、および異種病原体に感染した細胞からなる群から選択される、項目46~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記標的細胞が、ヒト肝細胞である、項目46~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記細胞表面タンパク質が、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体1(hASGR1)である、項目46~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記標的細胞が、ヒトT細胞である、項目46~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記細胞表面タンパク質が、CD3である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記細胞表面タンパク質が、ヒトグルカゴン受容体(hGCGR)である、項目46~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記標的細胞が、腸細胞である、項目46~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記標的細胞が、膵細胞である、項目46~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記細胞表面タンパク質が、ENTPD3である、項目57および58に記載の方法。(項目60)
ウイルスキャプシドタンパク質を不活性化する方法であって、
(a)異種エピトープをコードする核酸を、ウイルスキャプシドタンパク質をコードする核酸配列に挿入して、前記異種エピトープを含む遺伝子改変されたキャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を形成することと、
(b)ウイルスベクターの生成に十分な条件下で、パッケージング細胞を培養することであって、前記パッケージング細胞が、前記ヌクレオチド配列を含む、培養することと、を含む、方法。
(項目61)
ウイルスベクターを生成する方法であって、ウイルスベクターの生成に十分な条件下でパッケージング細胞を培養することを含み、前記パッケージング細胞が、項目1~18のいずれか一項に記載の組換えキャプシドタンパク質をコードするプラスミドを含む、方法。
(項目62)
前記パッケージング細胞が、ヘルパープラスミド、および/または対象ヌクレオチドを含む伝達プラスミドをさらに含む、項目60または項目61に記載の方法。
(項目63)
培養上清から自己相補的アデノ随伴ウイルスベクターを単離することをさらに含む、項目60~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記パッケージング細胞を溶解することと、一本鎖アデノ随伴ウイルスベクターを前記細胞溶解物から単離することと、をさらに含む、項目60~63のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
a.細胞片を除去することと、
b.DNase IおよびMgCl2を用いて、ウイルスベクターを含有する前記上清を処理することと、
c.ウイルスベクターを濃縮することと、
d.前記ウイルスベクターを精製することと、
e.a~dのうちの任意の組み合わせと、をさらに含む、項目60~64のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
項目60~65のいずれか一項に記載の方法に従って作製される、ウイルスベクター。(項目67)
項目1~18のいずれか一項に記載のキャプシドタンパク質をコードするプラスミドを含むウイルスベクターを生成するための、パッケージング細胞。
(項目68)
配列番号6に結合するパラトープを含む結合分子であって、前記パラトープが、配列番号28として表される前記核酸配列によってコードされる、HCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2および/またはLCDR3配列の前記scFvを含む、結合分子。
(項目69)
前記抗体パラトープが、Fvドメインである、項目68に記載の結合分子。
(項目70)
前記Fvドメインが、重鎖定常ドメインに直接融合されている、項目69に記載の結合分子。
(項目71)
前記結合分子が、二重特異性抗体であり、再標的化リガンドをさらに含み、
前記パラトープおよび前記再標的化リガンドが、第1および第2の重鎖定常ドメインに融合されている別個のFvドメインを各々含む、項目68~70のいずれか一項に記載の結合分子。
(項目72)
前記第1および第2の重鎖が、異なる結合親和性でプロテインAに結合する、項目71に記載の結合タンパク質。
(項目73)
前記結合分子が、二重特異性抗体であり、再標的化リガンドをさらに含み、
前記再標的化リガンドが、2つの同一の免疫グロブリン重鎖および2つの同一の軽鎖を含む四量体抗体構造を備え、
前記パラトープが、一方もしくは両方の重鎖のC末端もしくはN末端に、かつ/または一方もしくは両方の重鎖のC末端もしくはN末端に、付加されている、項目68または69のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
(項目74)
前記パラトープがscFvであり、任意選択的に、前記scFvが、配列番号37として表されるアミノ酸配列を含む、項目73に記載の結合タンパク質。
(項目75)
抗体またはその一部分である再標的化リガンドをさらに含む、項目69~72のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
(項目76)
前記再標的化リガンドが、細胞表面マーカーである細胞表面タンパク質に特異的に結合する、項目75に記載の結合タンパク質。
(項目77)
前記細胞表面マーカーが、アシアロ糖タンパク質1(ASGR1)である、項目76に記載の結合タンパク質。
(項目78)
前記細胞表面マーカーが、CD3である、項目76に記載の結合タンパク質。
(項目79)
前記細胞表面マーカーが、GCGRである、項目76に記載の結合タンパク質。
(項目80)
前記細胞表面マーカーが、ENTPD3である、項目76に記載の結合タンパク質。
(項目81)
(a)項目21~27のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクターと、(b)項目68~81のいずれか一項に記載の結合タンパク質と、を含む、組成物。
(項目82)
前記ウイルスベクターおよび前記多重特異性結合分子が、1:4の比率で存在する、項目81に記載の組成物。
(項目83)
薬学的に許容可能な担体をさらに含む、項目81または項目82に記載の組成物。
本特許または本出願は、色付きで作成された少なくとも1つの図面を含有する。色付きの図面(複数可)を伴う本特許または本特許出願公開の写しは、要求により、および必要な料金を支払うことにより、当局に提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1-1】(A)野生型scAAV2-CMV-eGFPウイルスベクターのみ、(B)scAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターのみ、次の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたscAAV2-N587Mycウイルスベクター:(C)1:0.5、(D)1:1、(E)1:2、(F)1:4、(G)1:8、(H)1:15、(I)1:20、(J)1:50、もしくは(K)1:100、(L)、または1:8の比率で、単一特異性抗Myc抗体と混合されたscAAV-N587Mycウイルスベクター、と培養されたHepG2細胞による、緑色蛍光(GFP)発現を評価する、免疫蛍光顕微鏡画像(上部パネル)、または蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たヒストグラム(下部パネル)を提供する。
【
図2A-1】野生型scAAV2ウイルスベクターのみ(i)、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ(ii)、次の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクター:1:0.5(iii)、1:1(iv)、1:2(v)、1:4(vi)、1:8(vii)、1:15(viii)、1:20(ix)、もしくは1:100(x)、または1:8の比率で無関係な二重特異性抗Myc-GCGR抗体と混合されたscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクター(xii)、と培養された29T3-hASGR1細胞による、緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。1:8の比率で二重特異性抗myc-ASGR1抗体と混合されたscAAV-N587Mycウイルスベクターと培養された29T3細胞によるGFP発現(xi)も、示されている。各実験では、2x10
5細胞、および5×10
9ウイルスベクターを使用した。
【
図2B-1】非改変AAV9-CAGG-GFPウイルスベクターのみ(i)、AAV9-A589Myc-CAGG-eGFPウイルスベクターのみ(ii)、次の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたAAV9-A589Myc-CAGG-eGFPウイルスベクター:1:1(iii)、1:2(iv)、1:4(v)、1:8(vi)、1:20(vii)、1:50(viii)、もしくは1:100(ix)、と培養された29T3-hASGR1細胞による、緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)評価から得たヒストグラムを提供する。各実験では、2x10
5細胞、および1×10
10ウイルスベクター(qPCRによる滴定)を使用した。
【
図3-1】0nM(C)、50nM(D)、10nM(E)、2nM(F)、0.4nM(G)、0.08nM(H)、0.016nM(I)、または0.0032nM(J)の濃度で、二価抗ASGR1抗体と事前に培養された29T3-hASGR1細胞による緑色蛍光(GFP)発現、およびその後1:8の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターを用いて感染させた(L)29T3-hASGR1細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得た、ドットプロットを提供する。野生型scAAVウイルスベクターのみ(A)、またはscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ(B)と培養した293T3-hASGR1細胞は、対照として機能する。各実験では、2x10
5細胞、および5x10
9ウイルスベクター(qPCRによる滴定)を使用した。
【
図4】野生型scAAVウイルスベクターのみ(A)、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ(B)と培養されるか、あるいはその後1x10
9(C)、2x10
9(D)、4x10
9(E)、8x10
9(F)、2x10
10(G)、1x10
11(H)、1x10
12(I)の二重特異性抗Myc-ASGR1抗体、続いて1x10
9のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養された、293T-hASGR1細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。また、1x10
11抗myc-ASGR1抗体分子、続いて1x10
9のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養された293T細胞(J)、および1x10
11の無関係な二重特異性抗Myc-GCGR抗体分子、続いて1x10
9のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養された、293T-hASGR1細胞(K)の免疫蛍光顕微鏡画像が示されている。
【
図5-1】野生型ssAAVウイルスベクターのみ(A)、ssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターのみ(B)、次の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクター:1:1(C)、1:2(D)、1:4(E)、1:8(F)、1:20(G)、1:100(H)、1:1000(I)、または1:8の比率で無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体と混合されたssAAV-N587Mycウイルスベクター(K)と培養された、29T3-hASGR1細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。1:8の比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合されたssAAV-N587Mycウイルスベクターと培養された29T3細胞によるGFP発現(J)も、示されている。各実験では、2x10
5細胞、および5×10
9ウイルスベクターを使用した。
【
図6-1】野生型ssAAVPウイルスベクターのみ(A)、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ(B)、次の比率で二重特異性抗-Myc-GCGR抗体と混合されたscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクター:1:0.5(C)、1:1(D)、1:2(E)、1:4(F)、1:8(G)、1:15(H)、1:20(I)、1:50(J)、もしくは1:100(K)、または1:8の比率で無関係な単一特異性抗Myc抗体(Regeneron Pharmaceuticals,Tarrytown,NY)と混合されたscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクター(L)と培養された29T3-hGCGR細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。各実験では、2x10
5細胞、および5×10
9ウイルスベクターを使用した。
【
図7-1】Jurkat細胞単独(A)、または野生型scAAV6-EF1-eGFPウイルスベクターのみ(B)、AAV6-Q585Myc-EF1a-eGFPウイルスベクターのみ(C)、次の比率で二重特異性抗-Myc-CD3抗体と混合されたAAV6-Q585Myc-EF1a-eGFPウイルスベクター:1:1(D)、1:5(E)、1:10(F)、1:100、または(G)、1:1000(H)、と培養されたJurkat細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。各実験では、2x10
5細胞、および1x10
9ウイルスベクターを使用した。
【
図8C】腎臓の免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。すべての試料は、1x10
11の野生型scAAV2-CMV-eGFP(i、v)、生理食塩水(ii、vi)、1x10
11のscAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクター単独(iii、vii)、または二重特異性抗-myc-ASGR1抗体を含むscAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクター(iv、viii)を静脈注射した10日後に、肝細胞によってヒトASGR1を発現するように遺伝形質転換して改変されたC57BL/6マウス(i~iv)、または野生型C57BL/6マウス(v~viii)から採取する。
【
図9-1】2.18x10
11の野生型ssAAV2-CAGG-eGFP(B、C、E、F)、生理食塩水(A、D)、2.18x10
11のssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター単独(G~I、J~L)、または二重特異性抗-myc-ASGR1抗体を含むssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター(M~O、P~R)を静脈注射した4週間後に、肝細胞上にヒトASGR1を発現するように遺伝形質転換して改変されたC57BL/6マウス(D~F、J~L、P~R)、または野生型C57BL/6マウス(A~C、G~I、M~O)から採取した肝臓試料の免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。各画像は、1匹のマウスを表している。
【
図10】(A)野生型AAV9、(B)250nMのNaCl、(C)二重特異性抗myc-hCD3抗体と組み合わせたAAV9-A589myc-CAGG-eGFPウイルス粒子、または(D)二重特異性抗-myc-ASGR1抗体と組み合わせたAAV9-A589myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を静脈注射した10日後、肝細胞によってヒトASGR1を発現するように遺伝形質転換して改変されたC57BL/6マウスから採取した肝臓試料の免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態において有用な、図解的な、正確な縮尺ではない、非限定的な例としての多重特異性結合分子のフォーマットを提供する。
【
図12-1】(A)_野生型AAV8ウイルスベクターのみ、(C)AA8-N590-mycウイルスベクターのみ、または次の比率で二重特異性抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性分子と混合されたpAAV RC8 N590mycウイルスベクター:(D)1:1、(E)1:2、(F)1:4、(G)1:8、(H)1:12、(I)1:15、(J)1:50、もしくは(K)1:100、と培養された29T3-hASGR1細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。模擬トランスフェクトされた29T3-hASGR1細胞によるGFP発現(B)も、示されている。各実験では、2x10
5細胞、および1x10
9ウイルスベクターを使用した。
【
図13】(A)~(C)野生型AAV8、(D)~(F)AA8-N590-mycウイルスベクターおよび対照二重特異性結合分子、または(G)~(I)抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子と組み合わせたAAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を静脈注射した10日後、肝細胞によってヒトASGR1を発現するように遺伝形質転換して改変されたC57BL/6マウスから採取した肝臓試料の、免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。
【
図14-1】(A)野生型AAV2ウイルスベクターのみ、(B)AAV2-N587Myc-CAGG-eGFPウイルスベクターのみ、または次の比率で二重特異性抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc二重特異性分子と混合されたAAV2-N587Myc-CAGG-eGFPウイルスベクター:(C)1:1、(D)1:2、(E)1:4、(F)1:8、(G)1:20、(H)1:50、(I)1:100、もしくは(K)1:200、と培養された29T3-h ENTPD3細胞による緑色蛍光(GFP)発現を評価する、蛍光活性化セルソーティング(FACS)から得たドットプロットを提供する。各実験では、2x10
5細胞、および1x10
9ウイルスベクターを使用した
【
図15A】肝臓試料の免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。
【
図15B】腸試料の免疫蛍光顕微鏡画像を提供する。
【
図15C】膵臓試料の蛍光顕微鏡画像を提供する。すべての試料は、PBS(15A(i)、15B(i)、および15C(i))、5x10
11の野生型AAV9(15A(ii)、15B(ii)、および15C(ii))、1x10
3の無関係な二重特異性IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質を含む5x10
11のAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター(15A(iii)、15B(iii)、および15C(iii))、または1x10
13の二重特異性hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質を含む5x10
11のAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター(15A(iv)、15B(iv)、および15C(iv))を静脈注射した10日後、野生型C57BL/6マウスから採取する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
非改変ウイルスキャプシドまたは足場改変ウイルスキャプシドを利用するアダプター手法を用いる一般的な問題は、改変キャプシドの最適以下の形質導入効率である。(Grifman et al.(2001)Mol.Ther.3:964-75)。例えば、Curielらは、カルボキシ末端ノブドメインのHIループ内にRGD-4C配列が遺伝学的に組み込まれたファイバーを含有する組換えアデノウイルスベクターの生成および特徴評価について記載しており、短いペプチドリガンドを組み込むための最適な部位としてファイバーノブのHIループの有用性を実証している。例えば、米国特許第7,297,542号を参照し、またBeatty and Curiel(2012)Adv.Cancer Res.115:39-67も参照されたい。同様に、AAVキャプシドタンパク質へのリガンドペプチドの挿入により、キャプシドの表面上にリガンドを提示し、その受容体とリガンドとの相互作用を通じて形質導入を媒介することが可能であり、それによって遺伝子改変キャプシドによるウイルス指向性を再配向させるキャプシドがもたらされた(Girod et al.(1999)Nat.Med.5(9):1052-6,1438(errata included)(1999)、Grifman et
al.(2001)Mol.Ther.3(6):964-75、Nicklin et al.(2001)Mol.Ther.4(3):174-81、Shi et al.(2001)Hum Gene Ther.17(3):353-61(2006)、Wu et al.(2000)J.Virol.74(18):8635-47)。具体的には、AAVキャプシドタンパク質VP1の挿入部位I-587にインテグリン結合Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフを挿入することにより、αvβ1インテグリンを介してAAVウイルスベクターを細胞に形質導入することを可能にすることが実証されている(Girod et al.(1999)上記)。対照的に、アミノ酸R447(I-447)の後の14-アミノ酸ペプチドL14の挿入は、コンフォメーション高感度抗体(conformation-sensitive antibody)A20によってまだ認識されるキャプシドをもたらしたが、かかる組換えウイルスベクターは、L-14受容体を発現する細胞に形質導入することができなかった(Girod et al.1999、参照Wu et al.(2000)(位置I-447でヘマグルチニン(HA)ペプチドの挿入、およびHAペプチドを発現する細胞への形質導入の成功が報告されている)。T448とN449との間のMycエピトープの挿入は、抗myc抗体によって認識され、したがってキャプシド表面上に存在したが、不活性化ウイルスベクターをもたらした。(Grifman et al.,2001)。対照的に、N587後のNGRモチーフの挿入による再標的化の成功が再び報告されたが、N587後のc-mycの挿入はなかった。(Grifman et al.,2001)。米国特許第9,624,274号は、異種エピトープの好適な挿入部位としてのAAVキャプシドタンパク質のI-453について記載している。これらの研究は、AAVキャプシドタンパク質による、異種ペプチド、例えばエピトープの挿入および提示の成功を実証しているが、異種ペプチドおよび細胞表面タンパク質に特異的に結合する多重特異性結合分子、例えば二重特異性抗体などの二重特異性結合分子が、細胞表面タンパク質を発現している細胞に改変ウイルスベクターを再標的化し、それらの形質導入効率を復元することができるという見込みを、これらの研究のうちのいずれも提供していない。
【0052】
本明細書に開示されているのは、パラトープ、例えばエピトープに特異的に結合するFvドメインと、標的細胞の表面上に発現される受容体に結合するリガンドとを含む、多重特異性結合分子と関連して使用することができる、異種エピトープで改変された組換えウイルスキャプシドタンパク質である。本明細書に示されるように、ある特定の比率で、多重特異性結合分子と、本明細書に記載のキャプシドタンパク質で形成されているキャプシドを有するウイルスベクターとを接触させることにより、野生型ウイルスに匹敵するレベルまで、ウイルスキャプシドの形質導入効率を復元する(例えば、実施例2参照)。概して、本明細書に記載の異種エピトープで改変されたキャプシドタンパク質は、限定されないが、アデノウイルス(Ad)およびアデノ随伴ウイルス(AAV)などの非エンベロープウイルスに由来し得る。
【0053】
本発明は、多数の実施形態を参照して具体的に示され、記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示の様々な実施形態に対して、形式および詳細が変更され得、本明細書に開示の様々な実施形態は、特許請求の範囲を限定するように機能することを意図しないことを当業者は理解するであろう。
【0054】
本明細書に記載の方法および材料と同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの好ましい方法および材料を以下記載する。本明細書で引用されるすべての出版物は、その記載全体が参照により本明細書に組み込まれる。別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0055】
用語の定義
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0056】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈で別途明確に指示されない限り、複数への言及を含む。したがって、例えば、「1つの方法」への言及は、本明細書に記載され、かつ/または当業者には本開示の閲読により明らかになるであろう種類の1つ以上の方法および/または工程を含む。
【0057】
「抗体」という用語には、4つのポリペプチド鎖(ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖)を含む、免疫グロブリン分子が含まれる。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(V-H)および重鎖定常領域(CH)を含む。重鎖定常領域は、少なくとも3つのドメイン、CH1、CH2、CH3、および任意選択的にCH4を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含む。重鎖および軽鎖可変ドメインはさらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域に差し込まれている、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化することができる。各重鎖および軽鎖可変ドメインは、3つのCDRおよび4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序で配列される。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3として省略され得、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3として省略され得る)。典型的な四量体抗体構造は、2つの同一の抗原結合ドメインを含み、各々が、VHとVLとの会合により形成され、各々が、それぞれのCHおよびCLドメインと一緒になって抗体Fv領域を形成している。単一ドメイン抗体は、単一の抗原結合ドメイン、例えば、VHまたはVLを含む。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一鎖Fvs(scFv)、単一鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、細胞内抗体、ミニボディ、ダイアボディ(diabodies)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば抗原特異的TCRに対する抗ID抗体を含む)、および上記のうちのいずれかのエピトープ結合断片を包含する。「抗体(antibody)」および「抗体antibodies)」という用語はまた、米国特許出願公開第2007/0004909号に開示のものなどの共有ダイアボディ(covalent diabodies)、および米国特許出願公開第2009/0060910号に開示のものなどのIg-DARTSを指す。抗体としては、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0058】
抗体の抗原結合ドメイン、例えば、抗原のエピトープを認識し結合する抗体の一部はまた、「パラトープ」と称される。抗体のFv領域の(5~10アミノ酸の)小さな領域、すなわち抗原結合断片(Fab領域)の一部であり、抗体の重鎖および/または軽鎖の部分を含有し得る。パラトープは、パラトープが高親和性でエピトープに結合するとき、エピトープに特異的に結合する。「高親和性」抗体という用語は、その標的エピトープに対して約10-9M以下(例えば、約1x10-9M、1x10-10M、1x10-11M、または約1x10-12M)のKDを有する抗体を指す。一実施形態では、KDは、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって測定され、別の実施形態では、KDは、ELISAによって測定される。
【0059】
「相補性決定領域」という語句または「CDR」という用語は、生物体の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、当該アミノ酸配列は、通常(すなわち、野生型動物では)、免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域における2つのフレームワーク領域の間に見られる。CDRは、例えば生殖細胞系の配列または再構成配列もしくは非再構成配列によって、例えば、ナイーヴB細胞もしくは成熟B細胞、またはT細胞によってコードされ得る。CDRは、体細胞変異され(例えば動物生殖細胞系でコードされた配列と異なり)、ヒト化され、および/またはアミノ酸置換、付加、もしくは欠失で改変され得る。一部の環境下(例えば、CDR3に関して)では、CDRは、2つ以上の配列(例えば、生殖細胞系配列)によってコードされ得、その2つ以上の配列は(例えば、非再構成核酸配列においては)連続していないが、例えば、配列のスプライシングまたは接続(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J再構成)の結果として、B細胞核酸配列では連続している。
【0060】
「エピトープ」は、免疫系によって、特に抗体、B細胞、または細胞毒性T細胞によって認識されるマクロ分子の一部である。エピトープは通常、非自己タンパク質に由来すると考えられるが、認識され得る宿主由来の配列もエピトープとして分類される。エピトープは、少なくとも4アミノ酸長、好ましくは4~30アミノ酸長、より好ましくは5~20アミノ酸長、特に5~15アミノ酸長を有する。エピトープは、一次タンパク質構造において互いに離れているが、二次構造および/または三次構造ではより近接した関係になるアミノ酸によって典型的には形成される、直線状または三次元状であり得る。B細胞によって特異的に認識されるエピトープは、B細胞エピトープと称される。
【0061】
「逆位末端反復」または「ITR」という語句は、効率的な複製に必要なアデノ随伴ウイルスのゲノム中の対称核酸配列を含む。ITR配列は、AAV DNAゲノムの各末端に位置する。ITRは、ウイルスDNA合成のための複製の起源として機能し、AAV統合ベクターを生成するための必須シス構成要素である。
【0062】
「軽鎖」という語句は、任意の生物体由来の免疫グロブリン軽鎖配列を含み、別段の規定がない限り、代替軽鎖のみならず、ヒトκ軽鎖およびλ軽鎖、ならびにVpreBを含む。軽鎖可変ドメインは、典型的には、別段の規定がない限り、3つの軽鎖CDRおよび4つのフレームワーク(FR)領域を含む。概して、完全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメイン、および軽鎖定常領域を含む。軽鎖可変ドメインは、軽鎖可変領域遺伝子配列によってコードされ、概して、生殖細胞系に存在するVセグメントおよびJセグメントのレパートリーに由来するVLセグメントおよびJLセグメントを含む。様々な生物体のV軽鎖セグメントおよびJ軽鎖セグメントの配列、位置、および命名は、IMGTデータベース、www.imgt.orgで見ることができる。軽鎖は、例えば、軽鎖に現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される第1または第2のエピトープのいずれにも選択的に結合しない軽鎖を含む。軽鎖はまた、軽鎖に現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される1つ以上のエピトープの結合および認識により、重鎖または別の軽鎖に結合および認識するか、またはこれを補助するものを含む。一般的な軽鎖または汎用的な軽鎖は、ヒトVκ1~39Jκ遺伝子またはヒトVκ3~20Jκ遺伝子に由来する軽鎖を含み、それらの体細胞変異(例えば、親和性成熟)バージョンを含む。例示的なヒトVLセグメントは、ヒトVκ1~39遺伝子セグメント、ヒトVκ3~20遺伝子セグメント、ヒトVλ1~40遺伝子セグメント、ヒトVλ1~44遺伝子セグメント、ヒトVλ2~8遺伝子セグメント、ヒトVλ2~14遺伝子セグメント、およびヒトVλ3~21遺伝子セグメントを含み、それらの体細胞変異(例えば、親和性成熟)バージョンを含む。1つの生物体(例えば、ヒトもしくは齧歯類、例えば、ラットもしくはマウス、または鳥類、例えばニワトリ)からの可変ドメインと、同じかまたは異なる生物体(例えば、ヒトもしくは齧歯類、例えばラットももしくはマウス、または鳥類、例えばニワトリ)からの定常領域とを含む軽鎖を作製することができる。
【0063】
「約」または「およそ」という用語は、統計的に有意の値の範囲内であることを含む。かかる範囲は、所与の値または範囲の10倍以内、好ましくは50%以内、より好ましくは20%以内、なおより好ましくは10%以内、さらにより好ましくは5%以内であり得る。「約」または「およそ」という用語によって包含される許容可能な変動は、研究中の特定の系に依存し、当業者によって容易に理解され得る。
【0064】
「親和性タグ」という用語は、例えば、別のポリペプチド配列、例えば高親和性を有する抗体パラトープと特異的に結合する、特定の結合対のメンバーであるポリペプチド配列を含む。例示的および非限定的親和性タグは、ヘキサヒスチジンタグ、FLAGタグ、StrepIIタグ、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)タグ、カルタチオン結合ペプチド(CBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、HAタグ、およびc-Mycタグを含む。(Zhao
et al.(2013)J.Analytical Meth.Chem.1-8において検証され、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0065】
「キャプシドタンパク質」という用語は、ウイルスのキャプシドの一部であるタンパク質を含む。アデノ随伴ウイルスでは、キャプシドタンパク質は、概して、VP1、VP2、および/またはVP3と称され、各々単一のcap遺伝子によってコードされる。AAVでは、3つのAAVキャプシドタンパク質は、代替的なmRNAスプライシングおよび/または代替的な翻訳開始コドンの使用を介したcapオープンリーディングフレーム(ORF)から重複した様式で生成されるが、3つのタンパク質すべてが共通の終止コドンを使用する。Warrington et al.(2004)J.Virol.78:6595、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。AAV2のVP1は、概して2.4kbのmRNA上のATG開始コドン(アミノ酸M1)から翻訳されるが、AAV2のVP2およびVP3は、より小さい2.3kbのmRNAから生じ、VP2生成にはより弱いACG開始コドン(アミノ酸T138)、および最も豊富なキャプシドメタンタンパク質であるVP3の生成には次に利用可能なATGコドン(アミノ酸M203)へのリードスルー翻訳が使用される。Warrington,上記、Rutledge et
al.(1998)J.Virol.72:309-19、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。アデノ随伴ウイルスのキャプシドタンパク質のアミノ酸配列は、当該技術分野で周知であり、概して、具体的にはデペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に保存されている。Rutledge et al.,上記を参照されたい。例えば、Rutledge et al.(1998)、上記は、
図4BのAAV2、AAV3、AAV4、およびAAV6のVP1、VP2、およびVP3キャプシドタンパク質のアミノ酸配列アラインメントを提供し、VP1、VP2、およびVP3キャプシドタンパク質の各々の開始部位は、矢印で示され、可変ドメインは枠で囲まれている。したがって、本明細書に提供されているアミノ酸位置は、AAVのVP1キャプシドタンパク質に関係して提供され得、さらに明記されない本明細書に提供されているアミノ酸位置は、配列番号1として表される主要な外被タンパク質VP1のAAV2配列を指すが、当業者であれば、AAVのVP2および/またはVP3キャプシドタンパク質内の同じアミノ酸の位置、および異なるセロタイプのうちのアミノ酸の対応する位置をそれぞれ容易に決定することが可能であろう。加えて、当業者であれば、「キメラキャプシドタンパク質」の形成のために、異なるAAVセロタイプのキャプシドタンパク質間のドメインを交換することが可能であろう。
【0066】
「キメラAAVキャプシドタンパク質」の生成のための2つのAAVキャプシドタンパク質構築物間のドメイン交換について記載されており、例えば、Shen et al.(2007)Mol.Therapy15(11):1955-1962(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。「キメラAAVキャプシドタンパク質」は、アミノ酸配列、例えば、2つ以上の異なるAAVセロタイプ由来のドメインを含み、AAV様ウイルスキャプシド/ウイルス粒子を形成することが可能であり、かつ/または形成する、AAVキャプシドタンパク質を含む。キメラAAVキャプシドタンパク質は、キメラAAVキャプシド遺伝子、例えば、複数の、例えば少なくとも2つの核酸配列を含むヌクレオチドよってコードされ、その複数の各々は、別個のAAVセロタイプのキャプシドタンパク質をコードするキャプシド遺伝子の一部分と同一であり、その複数は一緒に、機能的キメラAAVキャプシドタンパク質をコードする。特定のAAVセロタイプに関係するキメラキャプシドタンパク質についての参考文献は、キャプシドタンパク質が、そのセロタイプのキャプシドタンパク質由来の1つ以上のドメイン、および異なるセロタイプのキャプシドタンパク質由来の1つ以上のドメインを含むことを示している。例えば、AAV2キメラキャプシドタンパク質は、AAV2 VP1、VP2、および/またはVP3キャプシドタンパク質の1つ以上のドメインと、異なるAAVのVP1、VP2、および/またはVP3キャプシドタンパク質の1つ以上のドメインとを含む、キャプシドタンパク質を含む。
【0067】
「モザイクキャプシド」は、少なくとも2組のVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質を含み、その各組は、異なるcap遺伝子によってコードされる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のモザイクキャプシドは、異種エピトープをコードする核酸配列を挿入して遺伝子改変されたcap遺伝子によってコードされる組換えVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質を含み、標準cap遺伝子、例えば組換えVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質と同じAAVセロタイプの野生型VP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をコードする野生型標準cap遺伝子、組換えVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質と同一であるが異種エピトープが非存在のVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をコードする標準cap遺伝子、組換えVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質と変異(例えば、挿入、置換、欠失)(この変異は、好ましくは、野生型VP1、VP2、および/またはVP3タンパク質の指向性を減少させる)以外実質的に同じであるAAVセロタイプの野生型VP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をコードする変異野生型標準cap遺伝子、によってコードされるVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態では、標準キャプシドタンパク質は、組換えVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質と同じAAVセロタイプのVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質の少なくとも1つのドメインを含むキメラ標準タンパク質である。いくつかの実施形態では、標準cap遺伝子は、キメラVP1、VP2、および/またはVP3タンパク質をコードする。
【0069】
「重鎖」または「免疫グロブリン重鎖」という語句は、任意の生物体由来の免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む、免疫グロブリン重鎖配列を含む。重鎖可変ドメインは、別段の規定がない限り、3つの重鎖CDRおよび4つのFR領域を含む。重鎖の断片は、CDR、CDRおよびFR、ならびにそれらの組み合わせを含む。典型的な重鎖は、可変ドメインに続いて(N末端からC末端に向かって)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有する。重鎖の機能性断片は、エピトープを特異的に認識する(例えば、マイクロモル、ナノモル、またはピコモル範囲のKDを有するエピトープを認識する)ことが可能であり、細胞から発現および分泌可能であり、少なくとも1つのCDRを含む断片を含む。重鎖可変ドメインは、可変領域ヌクレオチド配列によってコードされ、概して、生殖系細胞に存在するVH、DH、およびJHセグメントのレパートリー由来の、VH、DH、およびJHセグメントを含む。様々な生物体のV重鎖セグメント、D重鎖セグメント、およびJ重鎖セグメントの配列、位置、および命名は、IMGTデータベースで見ることができ、これは、インターネットを介してURLが「imgt.org」の世界的なウェブ(www)でアクセス可能である。
【0070】
「重鎖のみの抗体」、「重鎖のみの抗原結合タンパク質」、「単一ドメイン抗原結合タンパク質」、「単一ドメイン結合タンパク質」、などの用語は、重鎖定常領域に操作可能に連結されている可変ドメインを含む可変領域を含む免疫グロブリン様鎖を含む単量体またはホモ二量体の免疫グロブリン分子を指し、これは重鎖定常領域が、典型的には機能的CH1ドメインを欠くために軽鎖と会合不可能である。したがって、「重鎖のみの抗体」、「重鎖のみの抗原結合タンパク質」、「単一ドメイン抗原結合タンパク質」、「単一ドメイン結合タンパク質」、などの用語は、(i)機能的CH1つのドメインを欠く重鎖定常領域に操作可能に連結されている可変ドメインを含む免疫グロブリン様鎖のうちの1つを含む単量体単一ドメイン抗原結合タンパク質、または(ii)2つの免疫グロブリン様鎖を含み、各々が機能的CH1ドメインを欠く重鎖定常領域に操作可能に連結されている可変ドメインを含む、ホモ二量体単一ドメイン抗原結合タンパク質、の両方を包含する。様々な態様では、ホモ二量体単一ドメイン抗原結合タンパク質は、2つの同一の免疫グロブリン様鎖を含み、各々が機能的CH1ドメインを欠く同一の重鎖定常領域に操作可能に連結されている同一の可変ドメインを含む。加えて、単一ドメイン抗原結合タンパク質の各免疫グロブリン様鎖は、可変ドメインを含み、これは、重鎖可変領域遺伝子セグメント(例えば、VH、DH、JH)、軽鎖遺伝子セグメント(例えば、VL、JL)、またはそれらの組み合わせに由来し得、重鎖定常領域(および任意選択的にヒンジ領域)の遺伝子の配列、例えばIgG、IgA、IgE、IgD、またはそれらの組み合わせをコードするCH1における欠失変異または不活性化変異を含む重鎖定常領域(CH)遺伝子配列に連結し得る。重鎖遺伝子セグメントに由来する可変ドメインを含む単一ドメイン抗原結合タンパク質は、「VH単一ドメイン抗体」または「VH単一ドメイン抗体結合タンパク質」と称され得、例えば、米国特許第8,754,287号、米国特許公開第2014/0289876号、同第2015/0197553号、同第2015/0197554号、同第2015/0197555号、同第2015/0196015号、同第2015/0197556号、同第2015/0197557号(それらの各々は、それらの全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。軽鎖遺伝子セグメント由来の可変ドメインを含む単一ドメイン抗原結合タンパク質は、「VL単一ドメイン抗原結合タンパク質」と称され得、例えば、米国公開第2015/0289489号(その全体が参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0071】
「軽鎖」という語句は、任意の生物体由来の免疫グロブリン軽鎖配列を含み、別段の規定がない限り、代替軽鎖のみならず、ヒトカッパ(κ)軽鎖およびラムダ(λ)軽鎖、ならびにVpreBを含む。軽鎖可変ドメインは、典型的には、別段の規定がない限り、3つの軽鎖CDRおよび4つのフレームワーク(FR)領域を含む。概して、完全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメイン、および軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む。軽鎖可変ドメインは、軽鎖可変領域ヌクレオチド配列によってコードされ、概して、生殖系細胞に存在する軽鎖VおよびJ遺伝子セグメントのレパートリーに由来する、軽鎖VLおよび軽鎖JLセグメントを含む。様々な生物体の軽鎖V遺伝子セグメントおよび軽鎖J遺伝子セグメントの配列、位置、および命名は、IMGTデータベースで見ることができ、これは、インターネットを介してURLが「imgt.org」の世界的なウェブ(www)でアクセス可能である。軽鎖は、例えば、軽鎖に現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される第1または第2のエピトープのいずれにも選択的に結合しない軽鎖を含む。軽鎖はまた、軽鎖に現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される1つ以上のエピトープの結合および認識により、重鎖に結合および認識するか、またはこれを補助するものを含む。軽鎖はまた、軽鎖に現れるエピトープ結合タンパク質によって選択的に結合される1つ以上のエピトープの結合および認識により、重鎖に結合および認識するか、またはこれを補助するものを含む。一般的な軽鎖または汎用的な軽鎖は、ヒトVκ1~39Jκ5遺伝子またはヒトVκ3~20Jκ1遺伝子由来の軽鎖を含み、それらの体細胞変異(例えば、親和性成熟)バージョンを含む。
【0072】
「操作可能に連結されている」という語句は、本明細書で使用される場合、互いに直接的または間接的に相互作用する、あるいは生物学的事象に関わるように互いに配置される、構成要素または要素の物理的な並置(例えば、三次元的空間における)を含み、この並置は、かかる相互作用および/または配置を達成または可能にする。一例を挙げると、核酸中の制御配列(例えば、発現制御配列)は、コード配列の発現および/または活性に対してその存在または非存在が影響を与えるように、コード配列に位置すると、コード配列に「操作可能に連結されている」と言われる。多くの実施形態では、「操作可能な連結」は、互いに関連する構成要素または要素の共有結合を含む。しかしながら、当業者であれば、いくつかの実施形態では、共有結合は、効果的な操作可能な連結を達成するのに必要ではないことを容易に理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、核酸制御配列が制御するコード配列と操作可能に連結されている核酸制御配列は、対象ヌクレオチドと連続している。代替的にまたは加えて、いくつかの実施形態では、1つ以上のかかる制御配列は、トランスで、または対象のコード配列を制御するための距離で機能する。いくつかの実施形態では、「発現制御配列」という用語は、本明細書で使用される場合、それらが連結されているコード配列の発現および処理に影響を与えるのに必要なおよび/または十分なポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態では、発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNA処理シグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を向上する配列(例えばコザックコンセンサス配列)、タンパク質安定性を向上する配列、ならびに/またはいくつかの実施形態では、タンパク質分泌を向上する配列であり得るか、あるいはこれらを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の制御配列は、特定の宿主細胞もしくは生物体、またはそれらのタイプで優先的にまたはそれらでのみ活性である。一例を挙げると、原核生物では、制御配列は、典型的には、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み、真核生物では、多くの実施形態では、制御配列は、典型的には、プロモーター、エンハンサー、および/または転写終結配列を含む。当業者であれば、多くの実施形態で、「制御配列」という用語は、その存在が発現および処理に不可欠な構成要素を指し、いくつかの実施形態で、その存在が発現に有利である構成要素(例えば、リーダー配列、標的化配列、および/または融合パートナー配列を含む)を含むことをその文脈から理解するであろう。
【0073】
「組換えキャプシドタンパク質」という用語は、比較研究のための標準ウイルスおよび/または対照ウイルスでありうる野生型ウイルスの対応するキャプシドタンパク質と比較して、少なくとも1つの変異を有するキャプシドタンパク質を含む。組換えキャプシドタンパク質は、キャプシドタンパク質に挿入され得、かつ/またはキャプシドタンパク質によって提示され得る異種エピトープを含む、キャプシドタンパク質を含む。この文脈における「異種」とは、キャプシドタンパク質が由来するウイルスと比較して異種であることを意味する。挿入されるアミノ酸は、キャプシドタンパク質の2つの所与のアミノ酸の間に単に挿入され得る。アミノ酸の挿入はまた、挿入部位におけるキャプシドタンパク質の所与のアミノ酸の欠失を伴う場合があり、例えば、1つ以上のキャプシドタンパク質アミノ酸は、5つ以上の異種アミノ酸によって置換される)。
【0074】
「多重特異性結合分子」および「二重特異性結合分子」などの用語は、概してかつそれぞれ、少なくとも2つのおよび2つのみの非同一の結合構成要素を含む結合分子を指し、各結合構成要素が、異なるエピトープ-2つの異なる分子(例えば、2つの異なる免疫原上の異なるエピトープ)、または同じ分子(例えば、同じ免疫原上の異なるエピトープ)、のいずれかに特異的に結合する。概して、本明細書において二重特異性結合分子の結合構成要素のうちの1つは、ウイルスキャプシドタンパク質によって提示される異種エピトープに特異的に結合し、第2の結合構成要素は、標的細胞、例えば、T細胞マーカー(例えば、CD3、CD28など)によって主におよび/または優先的に発現されるタンパク質、例えば細胞表面マーカーに特異的である。二重特異性結合分子は、例えば、同じ免疫原の異なるエピトープを認識する結合構成要素を組み合わせることによって作製され得る。例えば、異なるエピトープを認識する結合構成要素(例えば、軽鎖または重鎖可変配列)をコードする核酸配列は、同じかもしくは異なる重鎖定常領域(複数)、同じかもしくは異なる軽鎖定常領域(複数)、または1つの重鎖定常領域および1つの軽鎖定常領域それぞれをコードする核酸配列に融合され得、かかる配列は、Fab構造、scFab構造、ダイアボディ構造、scFv構造、scFv-Fc構造、scFv-ジッパー構造、同属の汎用的な軽鎖を含む典型的な抗体と同様の四量体構造、同属の汎用的な軽鎖を含む典型的な二価抗体を含む四量体構造、および/または重鎖のうちの一方もしくは両方(例えば、N末端および/またはC末端)もしくは軽鎖のうちの一方もしくは両方(例えば、N末端および/またはC末端)に付加されている追加の結合構成要素(例えばscFV、scFV-ジッパー構造、scFabなど)と同様のフォーマットの多重特異性抗原結合タンパク質として細胞内に発現され得る。多重特異性、具体的には二重特異性結合分子の様々なフォーマットは周知であり、例えば、Brinkmann and Konterman(2017)Mabs 9:182-212(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0075】
例示的な多重特異性分子は、重鎖CDR、続いて(N末端からC末端に向かって)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを各々有する2つの重鎖と、エピトープ結合特異性を付与しないが各重鎖と会合することができる免疫グロブリン軽鎖(例えば、一般的な軽鎖)か、または各重鎖と会合することができ重鎖エピトープ結合領域によって結合されるエピトープのうちの1つ以上に結合することができる免疫グロブリン軽鎖か、または各重鎖と会合することができ重鎖のうちの一方もしくは両方をエピトープのうちの一方もしくは両方に結合可能な免疫グロブリン軽鎖のいずれかと、を有する。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、(1)IgG1、IgG2、IgG4、およびそれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第1のCH3アミノ酸配列を含む、第1の重鎖定常領域に操作可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、ならびに(2)免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含み、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインが、IgG1、IgG2、IgG4、およびそれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第2のCH3アミノ酸配列を含む第2の重鎖定常領域に操作可能に連結されており、第1または第2の重鎖可変ドメイン(同族の軽鎖の有無にかかわらず)が、本明細書に記載の異種エピトープに結合し、他の重鎖可変ドメイン(同族の軽鎖の有無にかかわらず)が、標的細胞上の受容体に結合し、第1の重鎖定常領域が、多重特異性結合タンパク質の容易な単離を提供する様式で、第2の定常鎖領域と会合し、例えば第1および第2の重鎖定常領域が、ノブイントゥホール(knobs-into-hole)(KIH)フォーマットを形成するか、あるいは第2のCH3アミノ酸配列が、第2のCH3アミノ酸配列のプロテインAへの結合を減少させるかあるいは排除する改変を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,713号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、(1)IgG1、IgG2、IgG4、およびそれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第1のCH3アミノ酸配列を含む、第1の重鎖定常領域に操作可能に連結されている免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、ならびに(2)免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含み、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメインが、IgG1、IgG2、IgG4、およびそれらの組み合わせから選択されるヒトIgGの第2のCH3アミノ酸配列を含む第2の重鎖定常領域に操作可能に連結されており、第1および第2の重鎖可変ドメイン(同族の軽鎖の有無にかかわらず)が、同じかまたは異なる抗原に結合し、第1または第2の重鎖定常領域が、追加の結合ドメインをさらに含むように改変され(例えば、本明細書に記載の異種エピトープに結合するscFVまたはFv、例えば、追加の結合ドメインが、一方または両方の重鎖のC末端またはN末端に付加されている)、第1の重鎖定常領域が、多重特異性結合タンパク質の容易な単離を提供する様式で、第2の定常鎖領域と会合し、例えば第1および第2の重鎖定常領域が、ノブイントゥホール(KIH)フォーマットを形成するか、あるいは第2のCH3アミノ酸配列が、第2のCH3アミノ酸配列のプロテインAへの結合を減少させるかあるいは排除する改変を含む。第2のCH3アミノ酸配列が減少または排除されたプロテインAへの結合を含むいくつかの実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、H95R改変(IMGTエクソンナンバリングによる、EUナンバリングではH435R)を含む。一実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、Y96F改変(IMGTエクソン番号による、EUではH436F)をさらに含む。別の実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、H95R改変(IMGTエクソンナンバリング、EUナンバリングではH435R)およびY96F改変(IMGTエクソンナンバリング、EUではH436F)の両方を含む。いくつかの実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、改変ヒトIgG1由来であり、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる、EUではD356E、L38M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)からなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、改変ヒトIgG2由来であり、N44S、K52N、およびV82I(IMGTによる、EUではN384S、K392N、およびV422I)からなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のCH3アミノ酸配列は、改変ヒトIgG4由来であり、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる、EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)からなる群から選択される変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域アミノ酸配列は、非ヒト定常領域アミノ酸配列であり、重鎖定常領域アミノ酸配列は、上述の改変の種類のうちのいずれか1つ以上を含む。
【0076】
さまざまな実施形態では、Fcドメインは、変更されたFc受容体結合を有するように改変され、その結果エフェクター機能に影響を与える。いくつかの実施形態では、Fcドメインを含む作製された重鎖定常領域(CH)は、キメラである。このように、キメラCH領域は、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプに由来するCHドメインを組み合わせる。例えば、キメラCH領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4分子に由来するCH3ドメインの一部またはすべてと組み合わせられた、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4分子に由来するCH2ドメインの一部またはすべてを含む。いくつかの実施形態では、キメラCH領域は、キメラヒンジ領域を含有する。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EUナンバリングによる位置216~227のアミノ酸残基、Kabatナンバリングによる位置226~240のアミノ酸残基)と、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EUナンバリングによる位置228~236のアミノ酸残基、Kabatナンバリングによる位置241~249のアミノ酸位置)との組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4上部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、ヒトIgG2下部ヒンジに由来するアミノ酸残基とを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fc含有タンパク質(例えば、抗体)の所望の薬物動態特性に影響を与えることなく、正常なFcエフェクター機能のうちのすべて、一部を活性化するように、あるいはいずれをも活性化しないように作製され得る。キメラCH領域を含み、変更されたエフェクター機能を有するタンパク質の例については、その全体が本明細書に組み込まれる、WO2014/022540を参照されたい。
【0078】
「標的細胞」という用語は、対象ヌクレオチドの発現が望ましい任意の細胞を含む。好ましくは、標的細胞は、以下に記載のように、再標的化リガンドを用いて細胞を標的化することを可能にするタンパク質、例えば受容体をそれらの表面上に呈する。標的化されたタンパク質、例えば、受容体は、標的細胞に特異的である、例えば「細胞特異性マーカー」、「細胞特異性抗原」などであることが好ましい。「細胞特異性マーカー」、「細胞特異抗原」、「器官特異性マーカー」、「組織特異性マーカー」、などの用語は、細胞、組織、および/または器官の特異性マーカーである、その発現が細胞、組織、および/または器官によって濃縮されたそれらのタンパク質を含む。タンパク質発現の文脈での「濃縮された」とは、主に、優先的に、または単にそのタンパク質が特異性マーカーである細胞/組織/器官による、細胞/組織/器官に特異的なタンパク質の発現または過剰発現を指しかつ含むが、かかるマーカーは、他の細胞/組織/または器官によっても最小限レベルで発現され得る。Human Protein Atlasは、タンパク質が細胞/組織/器官特異性マーカーであるかどうかを決定ために使用することができ、細胞/組織/器官特異的タンパク質のリポジトリも提供する。(参照www.proteinatlas.org、また参照Uhlen et al.(2010)Nat.Biotech.28:1248-50(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【0079】
「形質導入」または「感染」などの用語は、ウイルスベクターによる標的細胞への核酸の導入を指す。形質導入などに関係する効率、例えば、「形質導入効率」という用語は、対象ヌクレオチドを含むウイルスベクターの組数との培養後に、対象ヌクレオチドを発現する細胞の画分(例えば、パーセンテージ)を指す。形質導入効率を決定する周知の方法は、蛍光レポーター遺伝子を用いて形質導入された細胞の蛍光活性化セルソーティング、対象ヌクレオチドの発現用のPCRなどを含む。
【0080】
「野生型」という用語は、本明細書で使用される場合、(変異体、病気、変更などに対して)「正常」な状態または状況で自然界に見られる構造および/または活性を有する実在物を含む。当業者であれば、野生型ウイルスベクター、例えば、野生型キャプシドタンパク質が、比較研究における標準ウイルスベクターとして使用され得ることを理解するであろう。概して、標準ウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターは、効果が試験される変化以外、試験ウイルスキャプシドタンパク質/キャプシド/ベクターと同一である。例えば、試験ウイルスベクターに異種エピトープを挿入する効果、例えば形質導入効率を決定するために、(適切な多重特異性結合分子の非存在下または存在下での)試験ウイルスベクターの形質導入効率は、異種エピトープの存在を除き、すべての場合(例えば、追加の変異、対象ヌクレオチド、ウイルスベクターおよび標的細胞の数など)で試験ウイルスベクターと同一である標準ウイルスベクターの形質導入効率と(必要であれば適切な多重特異性結合分子の非存在下または存在下で)比較することができる。
【0081】
組換えウイルスキャプシドタンパク質およびウイルスベクター、ならびに核酸
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、Adキャプシドタンパク質、例えば、Ad1、Ad2、Ad3、Ad4、Ad5、Ad6、およびAd7からなる群から選択されるAdセロタイプのキャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、Ad2キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、Ad5キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えAdウイルスキャプシドタンパク質は、ファイバータンパク質ドメイン中に、例えば、ファイバータンパク質、ファイバーノブ、および/またはファイバーノブのHIループのカルボキシ末端に、異種エピトープを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド遺伝子に由来し、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびAAV9からなる群から選択されるAAVセロタイプの遺伝子改変キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子、AAV6キャプシド遺伝子、AAV8キャプシド遺伝子、またはAAV9キャプシド遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV2キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV2 VP1キャプシドタンパク質であり、その野生型のアミノ酸配列は、配列番号1としてそれぞれ表される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV8キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV8 VP1キャプシドタンパク質であり、その野生型のアミノ酸配列は、配列番号21として表される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し、例えば、遺伝子改変AAV9 VP1キャプシドタンパク質であり、その野生型のアミノ酸配列は、配列番号5としてそれぞれ表される。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV6キャプシド遺伝子に由来し、例えば、AAV6の遺伝子改変VP1キャプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV9キャプシドタンパク質のI-453に挿入されている。
【0083】
概して、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、異種エピトープがキャプシドタンパク質またはそれを含むキャプシドの天然指向性を減少させ、かつ/または無効にするように、キャプシドタンパク質に挿入され、かつ/またはキャプシドタンパク質によって提示される異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、野生型標準キャプシドタンパク質の天然指向性に関与するキャプシドタンパク質の領域、例えば、細胞受容体に関与するキャプシドタンパク質の領域に、挿入されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、Adファイバータンパク質のノブドメインに挿入され、かつ/またはノブドメインによって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、Adファイバータンパク質のHIループに挿入され、かつ/またはHIループによって提示されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2キャプシドタンパク質VP1のG453、AAV2キャプシドタンパク質VP1のN587、AAV6キャプシドタンパク質VP1のQ585、AAV9キャプシドタンパク質VP1のG453、およびAAV9キャプシドタンパク質VP1のA589からなる群から選択されるアミノ酸位置の後に挿入されている。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、AAV2 VP1キャプシドのアミノ酸N587とR588との間に挿入され、かつ/またはそこに提示されている。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号2として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号4として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号25として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号26として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号27として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。AAV2を使用することによって同定される追加の好適な挿入部位は、当該技術分野で周知であり(Wu et al.(2000)J.Virol.74:8635-8647)、I-1、I-34、I-138、I-139、I-161、I-261、I-266、I-381、I-447、I-448、I-459、I-471、I-520、I-534、I-570、I-573、I-584、I-587、I-588、I-591、I-657、I-664、I-713、およびI-716を含む。本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I-1、I-34、I-138、I-139、I-161、I-261、I-266、I-381、I-447、I-448、I-459、I-471、I-520、I-534、I-570、I-573、I-584、I-587、I-588、I-591、I-657、I-664、I-713、I-716、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される位置に挿入される特異性エピトープを含む、AAV2キャプシドタンパク質であり得る。追加のAAVセロタイプを使用することにより同定される追加の好適な挿入部位は、周知であり、I-587(AAV1)、I-589(AAV1)、I-585(AAV3)、I-585(AAV4)、およびI-585(AAV5)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I-587(AAV1)、I-589(AAV1)、I-585(AAV3)、I-585(AAV4)、I-585(AAV5)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される位置に挿入される異種エピトープを含む、AAV2キャプシドタンパク質であり得る。
【0084】
本明細書で使用される命名I-###は、AAVキャプシドタンパク質のVP1タンパク質に対するアミノ酸数を###に命名する挿入部位を指すが、かかる挿入は、直接N末端もしくはC末端に、好ましくは所与のアミノ酸のうちの5つのアミノ酸の配列中のN末端またはC末端のうちの1つのアミノ酸のC末端に、好ましくは3つ、より好ましくは2つ、特に1つのアミノ酸(複数可)のN末端またはC末端に位置し得る。加えて、本明細書で言及される位置は、AAVキャプシド遺伝子によってコードされるVP1タンパク質に対するものであり、対応する位置(およびその変異)は、標準AAVキャプシド遺伝子によってコードされるVP1、VP2、およびVP3タンパク質の配列アラインメントを実施することによって、キャプシド遺伝子によってコードされるVP2およびVP3キャプシドタンパク質を容易に同定することができる。
【0085】
したがって、キャプシドタンパク質がコードされる際に、開始コドンをずらした同じ遺伝子のリーディングフレームを重ねることによって、cap遺伝子のこれらの部位のうちの1つをコードする核酸の対応する位置への挿入は、VP1、VP2、および/またはVP3への挿入につながる。したがって、例えば、AAV2では、この命名によると、アミノ酸1~138の挿入はVP1にのみ挿入され、138~203の挿入は、VP1およびVP2に挿入され、203~C末端の挿入は、VP1、VP2、およびVP3に挿入され、これは当然のことながら、挿入部位I-587についても当てはまる。したがって、本発明は、VP1、VP2、および/またはVP3タンパク質における対応する挿入を有するAAVの構造遺伝子を包含する。
【0086】
加えて、密接に関連するファミリーメンバーのうちの、少なくとも広範囲の大部分のメンバーが高度に保存されていることに起因して、列挙されているAAV以外のAAVへの対応する挿入部位は、アミノ酸アラインメントを実施することによって、またはキャプシド構造の比較によって同定することができる。例えば、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Rutledge et al.(1998)J.Virol.72:309~19、および異なるAAVキャプシドタンパク質の例示的なアラインメントでは米国特許第9,624,274号を参照されたい。
【0087】
(例えば、多重特異性結合分子の非存在下での)組換えウイルスキャプシドからなる本明細書に開示のいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I587部位に異種エピトープを挿入されているAAV2キャプシドタンパク質VP1であり、異種エピトープは、Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフ、NGRモチーフ、またはc-mycを含まない。(例えば、多重特異性結合分子の非存在下での)組換えウイルスキャプシドからなる本明細書に開示のいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、T448とN449との間に異種エピトープを挿入されているVP1キャプシドタンパク質であり、異種エピトープはc-mycを含まない。(例えば、多重特異性結合分子の非存在下での)組換えウイルスキャプシドからなる本明細書に開示のいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I-447部位に異種エピトープを挿入されているVP1キャプシドタンパク質であり、異種エピトープは、L14またはHAを含まない。
【0088】
(例えば、多重特異性結合分子をさらに含む)組換えウイルスキャプシドを含むいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I587部位に異種エピトープを挿入されているVP1キャプシドタンパク質であり、異種エピトープは、Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフ、NGRモチーフ、またはc-mycを含む。(例えば、多重特異性結合分子をさらに含む)組換えウイルスキャプシドを含む本明細書に開示のいくつかの組成物では、ウイルスキャプシドは、VP1キャプシドであり、異種エピトープはc-mycを含み、異種エピトープは、T448とN449との間、またはN587とR588との間に挿入されている。(例えば、多重特異性結合分子をさらに含む)組換えウイルスキャプシドを含む本明細書に開示のいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、I-447部位に異種エピトープを挿入されているVP1キャプシドタンパク質であり、異種エピトープは、L14またはHAを含む。(例えば、多重特異性結合分子の存在下での)組換えウイルスキャプシドを含む本明細書に開示のいくつかの組成物では、組換えウイルスキャプシドタンパク質は、T448とN449との間に異種エピトープを挿入されているVP1キャプシドタンパク質であり、異種エピトープはc-mycを含む。米国特許第9,624,274号は、異種エピトープの好適な挿入部位としてのAAVキャプシドタンパク質のI-453について記載している。
【0089】
いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を無効化し、例えば、野生型標準ウイルスベクターおよび/または標的細胞による感染に対して天然に許容状態である細胞の形質導入は、適切な多重特異性結合分子の非存在下では検出不能である。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、例えば、野生型標準ウイルスベクターによる感染に対して天然に許容状態である細胞の形質導入と比較して、ウイルスベクターの天然指向性を減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも5%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも5%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも10%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも20%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも30%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも40%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも50%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも60%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも70%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも80%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも90%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも95%減少させる。いくつかの実施形態では、異種エピトープの挿入(提示)は、ウイルスベクターの天然指向性を少なくとも90%減少させる。異種エピトープの挿入(提示)が、組換えウイルスキャプシドの天然指向性を無効化しないこれらの実施形態では、かかる組換えウイルスキャプシドの天然指向性は、第2の異なる変異によって無効化され得る。例えば、一実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、AAV9キャプシド遺伝子に由来し得、異種エピトープを含み、変異、例えばW503A変異をさらに含み得る。
【0090】
特に、ウイルスベクターの全身投与対局所的または局所領域的投与が意図されている場合、天然宿主細胞によるウイルスベクターの取り込みによって、ウイルスベクターの有効用量が制限されるため、ウイルスをその天然宿主細胞から非標的化することは重要である。AAV2およびAAV6の場合、HSPGは、多数の細胞、特に肝細胞におけるウイルス取り込みのための主な受容体であると報告されている。AAV2については、HSPG結合活性は、5つの基本アミノ酸、R484、R487、R585、R588、およびK532の群に依存している(Kern et al.,(2003)J Virol.77(20):11072-81)。近年、リシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換K531Eは、ヘパリンまたはHSPGに結合するAAV6の能力の抑制につながると報告された((Wu et al.、2006)J.of Virology80(22):11393-11397)。したがって、好ましい点変異は、天然受容体によって媒介される所与の標的細胞へのウイルスベクターの形質導入活性を、HSPGが主な受容体である場合ウイルスベクターのHSPGへの結合を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも95%減少させるものである。
【0091】
結果として、HSPG結合ウイルスベクターに好ましいさらなる変異は、それぞれのウイルスのHSPG結合に関与する、R、K、またはH、好ましくはRまたはKなどの塩基性アミノ酸を、なくすか、あるいはA、D、G、Q、S、およびTなどの非塩基性アミノ酸、好ましくはA、または異なるが高度に保存されている、この位置のかかる塩基性アミノ酸を欠くAAVセロタイプの対応する位置に存在するアミノ酸によって置き換える変異である。結果として、好ましいアミノ酸置換は、R484A、R487A、R487G、K532A、K532D、R585A、R585S、R585Q、R585A、またはR588T、特にAAV2ではR585Aおよび/またはR588A、ならびにAAV6ではK531AまたはK531Eである。本発明の特に好ましい一実施形態は、2つの点変異R585AおよびR588Aを追加で含有する、かかるAAV2のキャプシドタンパク質変異であり、これらの2つの点変異は、大幅にHSPG結合活性を削除するのに十分である。これらの点変異は、標的化目的では、HSPG発現細胞からの効率的な非標的化を可能にし、その新しい標的細胞へのそれぞれの変異体ウイルスの特異性を増加させる。
【0092】
本発明の一実施形態は、本発明の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む多量体構造である。多量体構造は、本明細書に記載の異種エピトープを含む、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも30個、最も好ましくは少なくとも60個の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む。それらは、普通のウイルスキャプシド(空のウイルス粒子)、またはウイルスベクター(対象ヌクレオチドを封入するキャプシド)を形成することができる。ウイルスゲノムをパッケージングすることが可能なウイルスベクターの形成は、本明細書にウイルスベクターとして記載の組換えウイルスキャプシドの使用に非常に好ましい特色である。
【0093】
本発明の一実施形態は、上述のキャプシドタンパク質をコードする核酸である。好ましくは、核酸は、特許請求の範囲の核酸配列を含むベクターである。核酸、特にベクターは、本発明のキャプシドタンパク質を組換え発現するために必要である。
【0094】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの組換えウイルスキャプシドタンパク質および/またはそれをコードする核酸の使用、好ましくは遺伝子伝達ベクター(transfer vector)として製造および使用するための少なくとも1つの多量体構造(例えば、ウイルスベクター)である。
【0095】
異種エピトープ
概して、組換えウイルスキャプシドタンパク質および/または組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクターは、例えば多重特異性結合分子を介したウイルスベクターの再標的化を可能にする異種エピトープを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、B細胞エピトープであり、例えば、約1アミノ酸長~約35アミノ酸長であり、抗体パラトープ、例えば、免疫グロブリン可変ドメインと結合対を形成する。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、親和性タグを含む。
【0096】
多数のタグが、当該技術分野で既知である。(例えば、Nilsson et al.(1997)“Affinity fusion strategies for detection、purification、and immobilization of recombinant protein”Protein Expression and Purification 11:1-16、Terpe et al.(2003)”Overview of tag protein fusions:From molecular and biochemical fundamentals to Commercial Microbiology and Biotechnology 60:523-533、および参考文献を参照されたい)。親和性タグとしては、限定されないが、固定化二価カチオン(例えば、Ni2+)に結合するポリヒスチジンタグ(例えば、His-6、His-8、またはHis-10タグ)、(例えば、生体内でビオチン化ポリペプチド配列上の)固定化アビジンに結合するビオチン部分、固定化グルタチオンに結合するGST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)配列、固定化Sタンパク質に結合するSタグ、固定化抗体もしくはドメインまたはそれらの断片に結合する抗原(例えば、対応する抗体に結合するT7、myc、FLAG、およびBタグを含む)、FLASHタグ(特定のヒ素系部分に連結する高親和性タグ)、固定化リガンドに結合する受容体または受容体ドメイン(またはその逆)、固定化IgGに結合するプロテインAまたはその誘導体(例えばZ)、固定化アミロースに結合するマルトース結合タンパク質(MBP)、固定化アルブミンに結合するアルブミン結合タンパク質、固定化キチンに結合するキチン結合ドメイン、固定化カルモジュリンに結合するカルモジュリン結合ペプチド、および固定化セルロースに結合するセルロース結合ドメイン、が挙げられる。別の例示的なタグは、Covalysから市販されているSNAP-タグである(www.covalys.com)。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の異種エピトープは、抗体パラトープによってのみ認識される親和性タグを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の異種エピトープは、抗体パラトープおよび他の特異的結合対によって認識される親和性タグを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、異種エピトープおよび/または親和性タグは、免疫グロブリン定常ドメインと結合対を形成しない。いくつかの実施形態では、異種エピトープおよび/または親和性タグは、金属イオン、例えばNi2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+などと結合対を形成しない。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、ストレプトアビジン、StrepII、HA、L14、4C-RGD、LH、およびプロテインAからなる群から選択されるポリペプチドではない。
【0098】
いくつかの実施形態では、親和性タグは、FLAG(配列番号7)、HA(配列番号8)、およびc-myc(EQKLISEEDL;配列番号6)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、c-mycである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え不可欠キャプシドは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質の少なくとも5つの連続アミノ酸に隣接し、かつ/または操作可能に連結されているアミノ酸配列EQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のN587とR588との間に挿入されているEQKLISEEDL(配列番号6として表される)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、配列番号2として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質は、配列番号4として表されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号25として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号26として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えウイルスキャプシド、組換えウイルスキャプシドを含むウイルスベクター、および/または組換えウイルスキャプシドを含む組成物は、配列番号27として表される核酸配列によってコードされたアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、異種エピトープは、親和性タグおよび1つ以上のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、異種エピトープは、リンカーが隣接する親和性タグを含み、例えば、異種エピトープは、N末端からC末端に向かって、第1のリンカー、親和性タグ、および第2のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のリンカーは、各々独立して、少なくとも1アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、第1および第2のリンカーは、同一である。
【0101】
概して、本明細書に記載の異種エピトープ、例えば、親和性タグ自体、または1つ以上のリンカーと組み合わせた親和性タグは、約5アミノ酸長~約35アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、少なくとも5アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、6アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、7アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、8アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、9アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、10アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、11アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、12アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、13アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、14アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、15アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、16アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、17アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、18アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、19アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、20アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、21アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、22アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、23アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、24アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、25アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、26アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、27アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、28アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、29アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、30アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、31アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、32アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、33アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、34アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、異種エピトープ(それ自体、または1つ以上のリンカーとの組み合わせ)は、35アミノ酸長である。
【0102】
再標的化部分
本明細書に記載のウイルスベクターは、多重特異性結合分子、具体的には(i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープと、(ii)(例えば精製のための)ビーズの表面にコンジュゲートされ得る、または標的細胞によって発現され得る受容体に特異的に結合する再標的化リガンドと、を含む多重特異性結合分子の不在下で、形質導入能力を減少または無効化している。したがって、(i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープと、(ii)受容体に特異的に結合する再標的化リガンドと、を含む多重特異性結合分子は、ウイルスベクターを再標的化する。かかる「再標的化」または「再配向」は、野生型ウイルスベクターが組織内および/または生物体内のいくつかの器官内のいくつかの細胞を標的化し、異種エピトープの挿入により、組織または器官を幅広く標的化することが減少または無効化され、生物体内の組織またはより具体的な器官のより具体的な細胞に再標的化することが、多重特異性結合分子を用いて達成される、シナリオを含み得る。かかる再標的化または再配向はまた、野生型ウイルスベクターが組織を標的化し、異種エピトープの挿入により、組織の標的化が減少または無効化され、完全に異なる組織に再標的化することが、多重特異性結合分子を用いて達成される、シナリオを含み得る。本明細書に記載の抗体パラトープは、概して、異種エピトープを特異的に認識する相補性決定領域(CDR)、例えば、重鎖および/または軽鎖可変ドメインのCDR3領域を最小限で含む。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、異種エピトープに特異的結合する抗体パラトープを含む抗体(またはその一部分)を含む。例えば、多重特異性結合分子は、単一ドメイン重鎖可変領域または単一ドメイン軽鎖可変領域を含み得、単一ドメイン重鎖可変領域または単一ドメイン軽鎖可変領域は、異種エピトープに特異的結合する抗体パラトープを含む。いくつかの実施形態では、多重特異性結合分子は、Fv領域を含み得、例えば、多重特異性結合分子は、異種エピトープに特異的結合する抗体パラトープを含む、scFvを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性結合分子は、c-mycに特異的に結合する抗体パラトープを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性結合分子は、c-mycに特異的に結合する抗体パラトープを含み、パラトープは、scFv、scFvの重鎖および軽鎖可変ドメイン、ならびに/または配列番号28として表される核酸配列によってコードされるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列の組、例えば配列番号37として表されるアミノ酸配列を含むscFVを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性結合分子は、配列番号28として表される核酸配列によってコードされるFvまたはsCfvを含む。
【0104】
したがって、本発明は、c-mycに特異的に結合する抗体として、抗体の抗原結合断片、および多重特異性結合タンパク質を含み、抗体、抗体の断片、および多重特異性結合タンパク質が、配列番号29を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号30を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含むパラトープを含む。本発明はまた、c-Mycに特異的に結合するパラトープを含む、抗体、抗体の抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を含み、パラトープが、配列番号31を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号32を含むHCDR2、配列番号33を含むHCDR3、配列番号34を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号35を含むLCDR2、および配列番号36を含むLCDR3を含む。
【0105】
本発明は、配列番号29として表されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むHCVRを含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0106】
本発明は、配列番号30として表されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むLCVRを含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0107】
本発明は、配列番号30として表されるLCVRアミノ酸配列と対をなす配列番号29として表されるHCVRアミノ酸配列を含む、HCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号29/30からなる群から選択される。
【0108】
本発明は、配列番号31として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0109】
本発明は、配列番号32として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0110】
本発明は、配列番号33として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0111】
本発明は、配列番号34として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0112】
本発明は、配列番号35として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0113】
本発明は、配列番号36として表されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。
【0114】
本発明は、配列番号36として表されるLCDR3アミノ酸配列と対をなす配列番号33として表されるHCDR3アミノ酸を含む、HCDR3およびLCDR3(HCDR3/LCDR3)アミノ酸配列対を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号33/36として表される。
【0115】
本発明は、配列番号28として表されるヌクレオチド配列によってコードされる6つのCDRの組(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列組は、配列番号31-32-33-34-35-36として表される。
【0116】
関連する実施形態では、本発明は、配列番号29/30として表されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有される6つのCDRの組(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含むパラトープを含む、抗体、その抗原結合断片、および/または多重特異性結合タンパク質を提供する。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は当該技術分野で周知であり、本明細書に開示の特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することができる例示的な慣習としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。一般的な条件では、Kabat定義は配列変動性に基づき、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義はKabatとChothia手法との間の折衷物である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。パブリックデータベースもまた、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0117】
本発明はまた、抗myc抗体またはその部分をコードする核酸分子を提供する。
【0118】
本明細書に記載の多重特異性結合分子は、組換えウイルスキャプシドタンパク質に挿入/提示されている異種エピトープに特異的結合するパラトープ(例えば、抗体またはその一部分)に加えて、再標的化リガンドをさらに含む。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、細胞の表面上に発現されるタンパク質、例えば、(ヒト)真核細胞(例えば標的細胞)上の細胞表面タンパク質に結合する。再標的化リガンドによって標的化され得る、細胞表面タンパク質、例えば好適な細胞表面受容体は多数存在し、そのための再標的化リガンド、例えば抗体またはそれらの一部分が既に利用可能である。かかる構造としては、クラスIおよびクラスIIの主要組織適合性抗原、多様なサイトカインの受容体(例えば、IL-1、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22、IL-25、IL-33などの受容体)、細胞型特異性成長ホルモン、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CTNF)、コロニー刺激成長因子、内皮増殖因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経膠由来神経栄養因子、グリア細胞増殖因子、gro-ベータ/mip 2、肝細胞増殖因子、インスリン様成長因子、インターフェロン(α-IFN、β-IFN、γIFN、コンセンサスIFN)、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14)、ケラチノサイト増殖因子、白血病抑制因子、マクロファージ/単球走化性活性化因子、神経成長因子、好中球活性化タンパク質2、血小板由来増殖因子、幹細胞因子、形質転換増殖因子、腫瘍壊死因子、血管内皮成長因子、リポタンパク質(PRLRなどのさらなるまたは他のタイプ1膜貫通受容体、GCGRなどのG-タンパク質結合受容体、Nav1.7、ASIC1、またはASIC2などのイオンチャネルを含む)、細胞接着分子、アミノ酸などの代謝物質の輸送分子、Bリンパ球またはTリンパ球の光源受容体(例えば、B細胞受容体および関連するタンパク質(例えば、CD19、CD20など)、ならびにT細胞受容体および関連するタンパク質(例えば、CD3、CD4、CD8など)、テトラスパニンタンパク質(例えば、CD63)が含まれるがこれらに限定されない。本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドは、ウイルスベクター複合体の標的として分化細胞表面抗原に結合する再標的化リガンドを含む多重特異性結合分子を用いることによって、細胞型の特異的感染を可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)肝細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち肝臓特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)脳細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、脳細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)造血細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち造血細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)T細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわちT細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)B細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち、B細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)樹状細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち樹状細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)マクロファージによって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわちマクロファージ特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)NK細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわちNK細胞特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)腎肝細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち腎臓特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)膵肝細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち膵臓特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)腸細胞によって(例えば単独で)主に発現されるタンパク質、すなわち腸特異性マーカーに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)癌細胞、すなわち腫瘍関連抗原(例えば単独で)によって主に発現されるタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、主に異種病原体に感染している(ヒト)細胞(例えば単独で)によって発現されるタンパク質に結合する。(1)細胞/組織/器官によって特異的に発現されるか、またはその発現が細胞/組織/器官中に濃縮され、(2)本明細書に記載の再標的化リガンドとして有用な抗原結合タンパク質によって認識される、タンパク質は周知であり、
www.proteinatlas.orgでも見ることができ、またUhlen et al.(2010)Nat.Biotech.28:1248-50(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))を参照されたい。以下の表1は、再標的化リガンドとして有用であり得る抗原結合タンパク質に利用可能である例示的かつ非限定的な器官特異性マーカー、およびかかるマーカーを発現する細胞/組織/器官を提供している。
【表1-1】
【表1-2】
【0120】
いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)肝細胞によって発現される受容体、例えば、アシアロ糖タンパク質受容体、例えば、hASGR1に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)脳細胞によって発現される受容体に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)T細胞によって発現される受容体、例えば、CD3、例えば、CD3εに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)腎細胞によって発現される受容体に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)筋細胞によって発現される受容体、例えばインテグリンなどに結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、(ヒト)がん細胞によって発現される受容体、例えば腫瘍関連抗原、例えば、E6およびE7に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、ヒトグルカゴン受容体(hGCGR)に結合する。いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、ヒトENTPD3に結合する。
【0121】
いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、腫瘍細胞によって発現される腫瘍関連抗原に結合する。特異的な腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、例えば、アジポフィリン、AIM-2、ALDH1A1、アルファ-アクチン-4、アルファ-フェトタンパク質(「AFP」)、ARTC1、B-RAF、BAGE-1、BCLX(L)、BCR-ABL融合タンパク質b3a2、ベータ-カテニン、BING-4、CA-125、CALCA、癌胎児性抗原(“CEA”)、CASP-5、CASP-8、CD274、CD45、Cdc27、CDK12、CDK4、CDKN2A、CEA、CLPP、COA-1、CPSF、CSNK1A1、CTAG1、CTAG2、サイクリンD1、サイクリン-A1、dek-can融合タンパク質、DKK1、EFTUD2、伸長因子2、ENAH(hMena)、Ep-CAM、EpCAM、EphA3、上皮癌抗原(“ETA”)、ETV6-AML1融合タンパク質、EZH2、E6、E7、FGF5、FLT3-ITD、FN1、G250/MN/CAIX、GAGE-1,2,8、GAGE-3,4,5,6,7、GAS7、グリピカン-3、GnTV、gp100/Pme117、GPNMB、HAUS3、ヘプシン、HER-2/neu、HERV-K-MEL、HLA-A11、HLA-A2、HLA-DOB、hsp70-2、IDO1、IGF2B3、IL13Ralpha2、腸カルボキシルエステラーゼ、K-ras、カリクレイン4、KIF20A、KK-LC-1、KKLC1、KM-HN-1、CCDC110としても知られているKMHN1、LAGE-1、LDLR-フコシルトランフエェラーゼAS融合タンパク質、Lengsin、M-CSF、MAGE-A1、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-C1、MAGE-C2、リンゴ酸酵素、マンマグロビン-A、MART2、MATN、MC1R、MCSP、mdm-2、ME1、Melan-A/MART-1、Meloe、ミッドカイン、MMP-2、MMP-7、MUC1、MUC5AC、ムチン、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン、ミオシンクラスI、N-raw、NA88-A、neo-PAP、NFYC、NY-BR-1、NY-ESO-1/LAGE-2、OA1、OGT、OS-9、Pポリペプチド、p53、PAP、PAX5、PBF、pml-RARアルファ融合タンパク質、多型上皮ムチン(“PEM”)、PPP1R3B、PRAME、PRDX5、PSA、PSMA、PTPRK、RAB38/NY-MEL-1、RAGE-1、RBAF600、RGS5、RhoC、RNF43、RU2AS、SAGE、セクレニン1、SIRT2、SNRPD1、SOX10、Sp17、SPA17、SSX-2、SSX-4、STEAP1、サバイビン、SYT-SSX1または-SSX2融合タンパク質、TAG-1、TAG-2、テロメラーゼ、TGF-ベータRII、TPBG、TRAG-3、トリオースリン酸イソメラーゼ、TRP-1/gp75、TRP-2、TRP2-INT2、チロシナーゼ、チロシナーゼ(“TYR”)、VEGF、WT1、XAGE-lb/GAGED2a、Kras、NY-ESO1、MAGE-A3、HPV E2、HPV E6、HPV E7、WT-1抗原(リンパ腫および他の固形癌における)、ErbB受容体、メランA[MART1]、gp100、チロシナーゼ、TRP-1/gp75、およびTRP-2(黒色腫における);MAGE-1およびMAGE-3(膀胱、頭頚部、および非小細胞癌腫における);HPV EGおよびE7タンパク質(子宮頸癌における);ムチン[MUC-1](乳癌、膵癌、結腸癌、および前立腺癌における);前立腺特異性抗原[PSA](前立腺癌における);癌胎児性抗原[CEA](大腸癌、乳癌、および消化器癌における)、ならびにMAGE-2、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-10、MAGE-12、BAGE-1、CAGE-1,2,8、CAGE-3 TO 7、LAGE-1、NY-ESO-1/LAGE-2、NA-88、GnTV、TRP2-INT2としてかかる共有腫瘍特異性抗原に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、ErBb2/Her2である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、E6および/またはE7である。
【0122】
いくつかの実施形態では、再標的化リガンドは、免疫応答に関連するCDマーカー、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20などに結合する。いくつかの実施形態では、CDマーカーは、CD3である。
【0123】
ある特定の例示的な実施形態では、多重特異性結合分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)および軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1および第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)の文脈において、第1の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A1」を伴って示され得、第2の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A2」を伴って示され得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書ではA1-HCDR1、A1-HCDR2、およびA1-HCDR3と称され得、第2の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書ではA2-HCDR1、A2-HCDR2、およびA2-HCDR3と称され得る。
【0124】
第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的または間接的に接続されて、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメインおよび第2の抗原結合ドメインは、各々別個の多量体形成ドメイン(multimerizing domain)に接続されてもよい。1つの多量体形成ドメインと別の多量体形成ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメイン間の会合を促進し、それによって二重特異性抗原結合分子を形成する。本明細書で使用される場合、「多量体形成ドメイン」は、同じかまたは同様の構造または構成の第2の多量体形成ドメインと会合する能力を有する、任意の巨大分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、多量体形成ドメインは、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドであってもよい。多量体形成構成要素の非限定的な例は、各アイソタイプグループ内の任意のアロタイプのみならず、(CH2~CH3ドメインを含む)免疫グロブリンのFc部分、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択されるIgGのFcドメインである。
【0125】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には、2つの多量体形成ドメイン、例えば、個別の抗体重鎖の各々個々の部分である2つのFcドメインを含むであろう。第1および第2の多量体形成ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプのものであってもよい。あるいは、第1および第2の多量体形成ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などの異なるIgGアイソタイプのものであってもよい。
【0126】
ある特定の実施形態では、多量体形成ドメインは、Fc断片、または少なくとも1つのシステイン残基を含有する1~約200のアミノ酸長のアミノ酸配列である。他の実施形態では、多量体形成ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体形成ドメインとしては、ロイシンジッパー、ヘリックスループモチーフ、またはコイルドコイルモチーフを含むか、またはこれらからなるペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。
【0127】
本発明の二重特異性抗原結合分子を作製するために、任意の二重特異性抗体フォーマットまたは技術を使用してもよい。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはその断片は、第2の結合特異性を有する別の抗体または抗体断片などの1つ以上の他の分子実在物に、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、または非共有会合、またはその逆により)機能的に連結して、二重特異性抗原結合分子を生成することができる。本発明の文脈で使用され得る特定の例示的な二重特異性フォーマットとしては、非限定的に、例えば、scFv系またはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブイントゥホール、一般的な軽鎖(例えば、ノブイントゥホールを有する一般的な軽鎖)、CrossMab、CrossFab、(SEED)抗体、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性フォーマットが挙げられる(前述のフォーマットの考察では、例えば、Klein et al.2012、mAbs 4:6、1-11およびそこで引用される参考文献を参照し、またBrinkmann and Konterman(2017)mAbs 9:182-212も参照されたい(それらの各々全体が参照により組み込まれる))。
【0128】
本発明はまた、第1のCH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、第1および第2のIg CH3ドメインが、少なくとも1つのアミノ酸で互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の差異が、アミノ酸の差異を欠く二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を減少させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソンナンバリングによる、EUナンバリングではH435R)などのプロテインA結合を減少または無効にする変異を含有する。第2のCH3はさらに、Y96F改変(IMGTによる、EUではY436F)を含んでもよい。第2のCH3に見出され得るさらなる改変としては、以下が挙げられる:IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる、EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGT、EUではN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる、EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)、例えばWO2010/151792を参照されたい。
【0129】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであってもよい。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4 CH2領域に由来するCH2配列の一部またはすべて、およびヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4に由来するCH3配列の一部またはすべてを含み得る。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域を含有し得る。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせられたヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含み得る。本明細書に表される抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの特定の例は、N-末端からC末端に向かって[IgG4 CH1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 CH3]を含む。本明細書に表される抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインの別の例は、N-末端からC末端に向かって[IgG1 CH1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG1 CH3]を含む。本発明の抗原結合分子のうちのいずれかに含まれ得るキメラFcドメインのこれらの例および他の例は、参照によりその全体が組み込まれるPCT出願第WO2014/022540号に記載されている。これらの一般的な構造的配置を有するキメラFcドメインおよびその変異体は、変化したFc受容体結合を有し得、その結果Fcエフェクター機能に影響を与える。
【0130】
使用および作製方法
本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質のさらなる実施形態は、対象ヌクレオチド、例えば、レポーター遺伝子または治療遺伝子を標的細胞に送達するためのそれらの使用である。概して、対象ヌクレオチドは、レポーター遺伝子(複数可)または治療遺伝子(複数可)に隣接する5’および3’逆位末端反復(ITR)配列を概して含み得る伝達プラスミドであってもよい(AAVベクター内に包含されるとき、ウイルスプロモーターまたは非ウイルスプロモーターの制御下にあり得る。一実施形態では、対象ヌクレオチドは、5’から3’に向かって、5’ITR、プロモーター、遺伝子(例えば、レポーターおよび/または治療遺伝子)、および3’ITRを含む伝達プラスミドである。
【0131】
有用なプロモーターの非限定的な例としては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、脾臓焦点形成ウイルス(SFFV)プロモーター、伸長因子1アルファ(EF1a)プロモーター(1.2kb EFlaプロモーター、または0.2kb EFlaプロモーター)、キメラEF 1a/IF4-プロモーター、およびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターが挙げられる。内部エンハンサーはまた、対象遺伝子の発現を増加させるためにウイルス構築物中に存在し得る。例えば、CMVエンハンサーを使用することができる(Karasuyama et al.1989.J.Exp.Med.169:13(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、CMVエンハンサーは、ニワトリ13-アクチンプロモーターと組み合わせて使用することができる。
【0132】
多様なレポーター遺伝子(または検出可能部分)を、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む多量体構造に封入することができる。レポーター遺伝子の例としては、例えば、β-ガラクトシダーゼ(lacZ遺伝子にコードされる)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、MmGFP、青色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(eBFP)、mPlum、mCherry、tdTomato、mStrawberry、J-Red、DsRed、mOrange、mKO、mCitrine、Venus、YPet、黄色蛍光タンパク質(YFP)、高感度黄色蛍光タンパク質(eYFP)、Emerald、CyPet、シアン蛍光タンパク質(CFP)、Cerulean、T-Sapphire、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、またはそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書に記載の方法は、緑色蛍光タンパク質をコードするレポーター遺伝子の使用を用いる標的化ベクターの構築を実証するが、本開示の閲読時に当業者であれば、本明細書に記載の非ヒト動物は、レポーター遺伝子の非存在下で、または当該技術分野で既知の任意のレポーター遺伝子を用いて生成することができることを理解するであろう。
【0133】
多様な治療遺伝子を、例えば、伝達ベクターの一部として、本明細書に記載の組換えウイルスキャプシドタンパク質を含む多量体構造に封入することができる。治療遺伝子の非限定的な例としては、毒素(例えば、自殺遺伝子)、治療抗体またはその断片、CRISPR/Cas系またはその一部分(複数可)、アンチセンスRNA、siRNA、shRNAなどをコードするものが挙げられる。
【0134】
本発明のさらなる実施形態は、組換えキャプシドタンパク質の調製のためのプロセスであり、方法は、
a)好適な条件下で組換えキャプシドタンパク質をコードする核酸を発現する工程と、
b)工程a)の発現されたキャプシドタンパク質を単離する工程と、を含む。
【0135】
本発明のさらなる実施形態は、ウイルスの指向性を変化させるための方法であって、(a)異種エピトープをコードする核酸を、ウイルスキャプシドタンパク質をコードする核酸配列に挿入して、異種エピトープを含む遺伝子改変キャプシドタンパク質をコードする核酸配列を形成する工程、および/または(b)ウイルスベクターの生成に十分な条件下でパッケージング細胞を培養する工程であって、パッケージング細胞が、核酸配列を含む、パッケージング細胞を培養する工程、を含む、方法である。本発明のさらなる実施形態は、キャプシドタンパク質の表面上に異種エピトープを提示するための方法であって、a)好適な条件下で本発明による核酸を発現する工程と、b)工程a)の発現されたキャプシドタンパク質を単離する工程と、を含む、方法である。
【0136】
いくつかの実施形態では、パッケージング細胞は、ヘルパープラスミドおよび/または対象ヌクレオチドを含む伝達プラスミドをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、培養上清から自己相補的アデノ随伴ウイルスベクターを単離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、パッケージング細胞を溶解することと、一本鎖アデノ随伴ウイルスベクターを細胞溶解物から単離することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)細胞片を除去することと、(b)DNase IおよびMgCl2を用いて、ウイルスベクターを含有する上清を処理することと、(c)ウイルスベクターを濃縮することと、(d)ウイルスベクターを精製することと、(e)(a)~(d)のうちの任意の組み合わせと、をさらに含む。
【0137】
本明細書に記載のウイルスベクターの生成に有用なパッケージング細胞としては、例えば、ウイルスに対して許容状態の動物細胞、もしくはウイルスに対して許容状態になるように改変された細胞、または例えば、リン酸カルシウムなどの形質転換剤の使用によるパッケージング細胞構築物が挙げられる。本明細書に記載のウイルスベクターの生成に有用なパッケージング細胞株の非限定的な例としては、例えば、ヒト胚腎臓293(HEK-293)細胞(例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関[ATCC]番号CRL-1573)、SV40 Large T-抗原を含有するHEK-293細胞(HEK-293Tまたは293T)、HEK293T/17細胞、ヒト肉腫細胞株HT-1080(CCL-121)、リンパ芽球様細胞株ラージー(CCL-86)、上皮神経膠芽腫-星状細胞腫様細胞株U87-MG(HTB-14)、T-リンパ腫細胞株HuT78(TIB-161)、NIH/3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、HeLa細胞(例えば、ATCC番号CCL-2)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RATI細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、HLHepG2細胞、CAP細胞、CAP-T細胞などが挙げられる。
【0138】
L929細胞、Cosset et al(1995)J Virol 69,7430-7436に概説されているFLYウイルスパッケージング細胞系、NS0(マウス骨髄腫)細胞、ヒト羊膜細胞(例えば、CAP、CAP-T)、酵母細胞(S.cerevisiae、Pichia pastorisを含むがこれらに限定されない)、植物細胞(タバコNTl、BY-2を含むがこれらに限定されない)、昆虫細胞(SF9、S2、SF21、Tni(例えば、High5)を含むがこれらに限定されない)、または細菌細胞((E.coliを含むがこれに限定されない)。
【0139】
さらなるパッケージング細胞および系、核酸ゲノムをシュードタイプ化ウイルスベクターにパッケージングするためのパッケージング技法およびベクターについては、例えば、Polo,et al,Proc Natl Acad Sci USA,(1999)96:4598-4603を参照されたい。パッケージングの方法は、ウイルス成分を永久的に発現するパッケージング細胞を使用すること、または細胞をプラスミドで過渡的にトランスフェクトすることを含む。
【0140】
さらなる実施形態は、ウイルスを再配向する方法、および/またはレポーターもしくは治療遺伝子を標的細胞に送達する方法を含み、方法は、細胞を生体外または生体内で形質導入するための方法を含み、異種エピトープを提示する組換えウイルスキャプシドを含むキャプシドを含むウイルスベクターと、多重特異性結合分子との組み合わせを標的細胞に接触させる工程を含み、多重特異性結合分子が、i)エピトープに特異的に結合する抗体パラトープ、および(ii)標的細胞によって発現される受容体に特異的に結合する再標的化リガンドを含む。いくつかの実施形態では、野生型対照ウイルスベクターのものと同様のウイルスベクターの形質導入効率を復元する分子:分子の比率で、組換えウイルスベクターと、多重特異性結合分子とを、本明細書に記載の組成物は含むか、あるいは本明細書に記載の方法は組み合わせる。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:0.5~1:100の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:4~1:20の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:8~1:15の範囲である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:4である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:8である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:15である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:20である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:100未満である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:50未満である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:20未満である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:15未満である。いくつかの実施形態では、組換えウイルスベクター対多重特異性結合分子の比率(分子:分子)は、1:10未満である。
【0141】
いくつかの実施形態では、標的細胞は生体外にある。他の実施形態では、標的細胞は、対象、例えばヒトの生体内にある。
【0142】
標的細胞
本明細書に開示の組換えウイルスベクターを使用して、対象ヌクレオチドを送達するために、多種多様な細胞を標的化することができる。標的細胞は、概して、対象ヌクレオチドおよび所望の効果に基づいて選択されるであろう。
【0143】
いくつかの実施形態では、対象ヌクレオチドを送達して、酵素欠損症、またはX連結されている重症複合免疫不全などの免疫欠損症などの生物体の欠損を埋め合わせるタンパク質を、標的細胞が産生することを可能にすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、通常は動物中でタンパク質を産生するであろう細胞が標的化される。他の実施形態では、タンパク質が最も有益である領域内の細胞が標的化される。
【0144】
他の実施形態では、siRNAをコードする遺伝子などの対象ヌクレオチドは、標的細胞中の特定の遺伝子の発現を阻害することができる。対象ヌクレオチドは、例えば、病原体ライフサイクルに関与する遺伝子の発現を阻害し得る。したがって、病原体から感染しやすいか、あるいは病原体に感染した細胞が標的化され得る。他の実施形態では、対象ヌクレオチドは、標的細胞中の毒素の産生を担う遺伝子の発現を阻害し得る。
【0145】
他の実施形態では、対象ヌクレオチドは、毒性タンパク質を発現する細胞を殺傷する毒性タンパク質をコードし得る。この場合、腫瘍細胞または他の不要な細胞が標的化され得る。
【0146】
なお他の実施形態では、治療用タンパク質などの収集されるタンパク質をコードする対象ヌクレオチドを使用し、タンパク質を産生および分泌することが可能な細胞を標的化してもよい。
【0147】
対象ヌクレオチドの発現が望ましい標的細胞の特定の集団が同定されると、その標的細胞の集団上で特異的に発現される標的受容体が選択される。標的受容体は、細胞の集団に対してのみか、または他の細胞の集団に対するよりもその細胞の集団に対してより高い程度に発現され得る。発現が特異的であるほど、送達が標的細胞に対してより特異的に配向され得る。文脈に応じて、マーカーの(およびしたがって、遺伝子送達の)特異性の所望の量は変化し得る。例えば、毒性遺伝子を導入するために、非標的細胞の殺傷を回避するように高い特異性が最も好ましい。採取用のタンパク質の発現、または包括的な影響が望ましい分泌生成物の発現のために、より低いマーカー特異性が必要とされる場合がある。
【0148】
上記のように、標的受容体は、再標的化リガンドを同定または作製することができる任意の受容体であり得る。好ましくは、標的受容体は、受容体などのペプチドまたはポリペプチドである。しかしながら、他の実施形態では、標的受容体は、結合パートナーによって認識され得る炭水化物または他の分子であり得る。標的受容体の結合パートナー、例えば、リガンドが既知の場合、親和性分子として使用してもよい。しかしながら、結合分子が不明である場合、標準的な手順を使用して標的受容体に対する抗体を生成することができる。そのときは、多重特異性結合分子の一部として、抗体を再標的化リガンドとして使用することができる。
【0149】
したがって、標的細胞は、例えば、(1)特定の用途(例えば、治療、収集されるタンパク質の発現、および疾患抵抗の付与)、および(2)所望の量の特異性を有するマーカーの発現、を含む多様な因子に基づいて選択され得る。
【0150】
標的細胞は、いかなる方法でも限定されず、生殖系細胞および細胞株、ならびに体細胞および細胞株の両方を含む。標的細胞は、いずれかの起源に由来する幹細胞であり得る。標的細胞が生殖系細胞であるとき、標的細胞は、好ましくは、単細胞胚および胚幹細胞(ES)からなる群から選択される。
【0151】
医薬組成物、剤形、および投与
さらなる実施形態は、本発明による少なくとも1つの組換えウイルスキャプシドタンパク質および適切な多重特異性結合分子、ならびに/または本発明による核酸、好ましくは本発明による少なくとも1つの多量体構造を含む、医薬品を提供する。かかる医薬品は、有用な遺伝子伝達ベクターであることが好ましい。
【0152】
また、本明細書に記載のウイルスベクター、ならびに薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含む、医薬組成物も本明細書に開示されている。加えて、本明細書に記載のウイルスベクターを含む医薬剤形が本明細書に開示されている。
【0153】
本明細書で考察されるように、本明細書に記載のウイルスベクターは、様々な治療用途(生体内およびエクスビボ)に、および研究ツールとして使用することができる。
【0154】
本明細書に開示のウイルスベクターに基づく医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容可能な担体および/または賦形剤を使用する、任意の従来的な様式で製剤化され得る。ウイルスベクターは、投与するために、例えば、注射、(口または鼻のいずれかを通した)吸入、もしくは隔離によって、または経口、口腔内、非経口、もしくは直腸内投与によって、または腫瘍に直接投与することによって処方され得る。
【0155】
医薬組成物は、全身投与、局所投与、または局在化投与を含む、多様な投与モード用に製剤化され得る。技法および製剤は、例えば、Remrnington’s Pharmaceutical Sciences,Meade Publishing Co.,Easton,Paに見ることができる。全身投与については、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下を含む、注射が好ましい。注射のために、医薬組成物は、好ましくは、ハンク溶液またはリンガー溶液などの生理学的に適合性のある緩衝液で、液体溶液中に製剤化され得る。加えて、医薬組成物は、固体形態で製剤化され得、使用直前に再溶解または懸濁され得る。医薬組成物の凍結乾燥形態も好適である。
【0156】
経口投与のために、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ-化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微晶質セルロース、またはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に従来的な手段によって調製される、例えば、錠剤またはカプセルの形態をとることができる。錠剤はまた、当該技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとり得るか、あるいは使用前に水または他の好適な媒体を含む構成を用いる乾燥生成物として提示され得る。かかる液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例えば、ationd油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いる従来的な手段によって調製され得る。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤、および甘味剤を含有してもよい。
【0157】
医薬組成物は、注射によって、例えば、ボーラス注射または連続点滴によって、非経口投与用に製剤化することができる。注射用の製剤は、任意選択的に防腐剤を添加して、例えば、アンプルまたは多用量容器内で単位剤形で提示することができる。医薬組成物は、油性媒体または水性媒体中に懸濁液、溶液、または乳濁液としてさらに製剤化することができ、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤を含む、他の薬剤を含有し得る。
【0158】
加えて、医薬組成物は、デポ剤として製剤化することもできる。これらの長時間作用する製剤は、移植(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中の乳濁液として)またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化され得る。他の好適な送達系としては、長期間にわたる薬物の局所的な非浸潤性送達の可能性を提供するマイクロスフェアが挙げられる。この技術は、炎症または虚血を引き起こすことなく、冠動脈カテーテルを介して器官の任意の選択される部分に注射することができる前毛細血管サイズを有する、マイクロスフェアを含み得る。投与された治療薬は、マイクロスフェアから徐々に放出され、選択される組織中に存在する周囲細胞によって吸収される。
【0159】
全身投与は、経粘膜的手段または経皮的手段によっても可能である。経粘膜的投与または経皮的投与については、浸透するバリアに対して適切な浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤は、概して、当該技術分野で既知であり、例えば経粘膜的投与用に、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。加えて、洗剤を使用して浸透を促進してもよい。経粘膜的投与は、鼻腔内噴霧または座薬を使用して行ってもよい。局所投与のために、本明細書に記載のウイルスベクターは、当該技術分野で概して既知の、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化することができる。治癒を加速させるために、洗浄溶液を局所的に使用して損傷または炎症を治療することもできる。
【0160】
注射可能な使用に好適な医薬品形態としては、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;滅菌注射溶溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を挙げることができる。すべての場合において、医薬品形態は、滅菌される必要があり、かつ流体である必要がある。また、製造条件およびある特定の保存パラメータ(例えば、冷却および凍結)の条件下で安定している必要があり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存される必要がある。
【0161】
本明細書に開示される製剤が対象における免疫応答を促進する治療剤として使用される場合、治療剤は、中性または塩形態の組成物に製剤化され得る。薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)であって、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸などで形成される、酸付加塩が含まれる。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、ならびにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基などにも由来し得る。
【0162】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆の使用によって、分散の場合は必要なウイルスベクターの大きさの維持によって、かつ界面活性剤の使用の場合によって維持することができる。微生物の活動の防止は、当該技術分野で既知の様々な抗細菌剤および抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤の組成物、例えば、アルミニウムモノステアリン酸およびゼラチン使用によってもたらされ得る。
【0163】
滅菌注射可能な溶液は、必要に応じて、上記に列挙されている様々な他の成分を用いて、活性化合物または構築物を適切な溶媒中に必要な量で組み込むことによって調製することができ、その後に濾過滅菌を行う。
【0164】
処方の際、溶液は、投与製剤と適合する様式で、および療上有効な量で投与され得る。製剤は、上記に記載の注射可能な溶液のタイプなど、多様な剤形で容易に投与されるが、徐放性カプセルまたはマイクロ粒子およびマイクロスフェアなども用いることができる。
【0165】
水溶液中での非経口投与のために、例えば、必要に応じて溶液を好適に緩衝化し、最初に液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースと等張させるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に好適である。この文脈では、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者には分かるであろう。例えば、1mlの等張性NAcl溶液中に1回分の用量を溶解し、1000mlの皮下注入流体に添加するか、または提案される点滴部位に注射することができる。
【0166】
投与に責任を有する人物は、いずれの場合でも、個々の対象に対する適切な用量を決定するであろう。例えば、対象は、病原性微生物に対する、または対象の条件(例えば、癌)に対する必要性もしくは曝露に応じて、ある期間の間毎日もしくは毎週、または月1回、年2回、もしくは年1回、本明細書に記載のウイルスベクターを投与され得る。
【0167】
静脈内、腫瘍内、皮下、または筋肉内注射などの非経口投与のために製剤化される化合物に加えて、他の薬学的に許容可能な形態には、例えば、経口投与のための錠剤または他の固体、リポソーム製剤、徐放性カプセル、生分解性形態、および現在使用されている任意の他の形態が含まれる。
【0168】
また、鼻腔内もしくは吸入可能な溶液もしくは噴霧、エアロゾル、または吸入剤も使用し得る。鼻腔溶液は、ドロップまたは噴霧中の鼻腔通路に投与するように設計された水溶液であり得る。鼻腔溶液は、鼻の分泌に多くの点で類似しているように調製され得る。したがって、水性の鼻腔溶液は、通常、等張性であり、わずかに緩衝化されて、pH5.5~7.5を維持する。加えて、必要に応じて、眼科調製物および適切な薬物安定剤に使用されるものと類似した抗菌防腐剤を製剤に含めることができる。様々な市販の鼻腔調製物が知られており、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤を含むことができ、喘息予防のために使用される。
【0169】
経口製剤は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムとしての賦形剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製剤、または粉末の形態をとる。ある特定の定義された実施形態では、経口医薬組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体を含むか、または硬質もしくは軟質のシェルゼラチンカプセルで囲まれ得るか、または錠剤に圧縮され得るか、または食事の食品により直接組み込まれ得る。経口治療投与のために、活性化合物は、賦形剤により組み込まれ得、摂取性錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用され得る。
【0170】
錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどはまた、以下:トラガントゴム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンとしての結合剤、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、およびスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味剤、またはハッカ油、イチャクソウの油、もしくはチェリー香味料などの香味剤を含有し得る。投薬単位形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、液体担体が含有され得る。様々な他の材料が被覆として、または別様に、投薬単位の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤、ピル、またはカプセルは、シェラック、糖、またはそれらの両方で被覆され得る。エリキシル剤のシロップは、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、ならびにチェリーまたはオレンジ風味などの香味剤を含有し得る。
【0171】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、方法および組成物と併用するためのキットに関する場合がある。キットはまた、好適な容器、例えば、バイアル、チューブ、ミニチューブもしくはマイクロチューブ、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器も含み得る。追加の構成要素または薬剤が提供されるとき、キットは、この薬剤または構成要素が配置され得る1つ以上の追加の容器を収容し得る。本明細書のキットとしてはまた、典型的には、ウイルスベクターを収容するための手段、および市販のしっかり密封される任意の他の試薬容器が挙げられる。かかる容器としては、所望のバイアルが保持される注射器またはブロー成形プラスチック容器を挙げることができる。任意選択的に、記載の組成物には、例えば、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗真菌もしくは抗細菌剤、または抗腫瘍剤などの1つ以上の追加の活性剤が必要な場合がある。
【0172】
用量範囲および投与頻度は、ウイルスベクターの性質、および特定の患者の医学的状態ならびにパラメータ、および使用される投与経路に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクター組成物は、投与モード、投与経路、対象の疾患の性質および状態に応じて、約1×105プラーク形成単位(pfu)~約1×1015pfuの範囲の用量で対象に投与することができる。いくつかの場合では、ウイルスベクター組成物は、約1×108pfu~約1×1015pfu、または約1×1010pfu~約1×1015pfu、または約1×108pfu~約1×1012pfuの範囲の用量で投与することができる。より正確な用量もまた、投与される対象に応じ得る。例えば、対象が若年である場合、低用量を必要とし得、対象が成人ヒト対象である場合、より高い用量を必要とし得る。ある特定の実施形態では、より正確な用量は、対象の重量に応じ得る。ある特定の実施形態では、例えば、若年ヒト対象は、約1×108pfu~約1×1010pfuを受領することができるが、成人ヒト対象は、約1×1010pfu~約1×1012pfuの用量を受領することができる。
【0173】
本明細書に開示の組成物は、当該技術分野で既知の任意の手段によって投与され得る。例えば、組成物は、静脈内、腫瘍内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、筋肉内、髄腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍下、眼球内、経口的、局所的(locally)に、吸入、注射、点滴、連続点滴、局所的灌流によって、カテーテル、洗浄を介して、クリーム中で、または脂質組成物中で、対象に投与することを含み得る。
【0174】
当業者に既知の任意の方法は、本明細書に記載のウイルスベクター、パッケージング細胞、およびベクター構築物の大規模生成に使用され得る。例えば、マスターシードおよびワーキングシード在庫は、必要条件を満たした初代CEFにおいてGMP条件下で、または他の方法によって調製され得る。パッケージング細胞を大きな表面積のフラスコ上にプレーティングし、ほぼ集密まで増殖させ、ウイルスベクターを精製してもよい。細胞を採取し、培養培地に放出したウイルスベクターを単離および精製するか、あるいは細胞内ウイルスベクターを機械的に崩壊させることによって放出してもよい(細胞破片は、大細孔深層濾過(large-pore depth filtration)によって、かつ宿主細胞DNAをエンドヌクレアーゼで消化させることによって除去することができる)。その後、ウイルスウイルスベクターを、タンジェンシャルフロー濾過によって精製および濃縮し、続いて透析ろ過してもよい。得られた濃縮バルクは、安定化剤を含有する緩衝液で希釈し、バイアルに充填し、凍結乾燥させることによって製剤化することができる。組成物および製剤は、後の使用のために保存されうる。使用するために、凍結乾燥ウイルスベクターは、希釈剤を添加することによって再構成されてもよい。
【0175】
併用療法で使用されるある特定の追加の薬剤は、当技術分野で既知の任意の手段によって製剤化および投与することができる。
【0176】
本明細書に開示の組成物は、アルミニウム塩および他の鉱物アジュバント、張力活性剤(tensoactive agents)、細菌誘導体、媒体、およびサイトカインなどのアジュバントも含み得る。アジュバントはまた、拮抗免疫調節特性を有してもよい。例えば、アジュバントは、Th1またはTh2免疫性を刺激することができる。本明細書に開示の組成物および方法はまた、アジュバント療法を含み得る。
【実施例0177】
以下の実施例は、説明目的のみに提供され、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0178】
実施例1:異種エピトープを含むアデノ随伴ウイルスベクターの生成
AAVキャプシドタンパク質は、PCRを使用して、FLAG、c-myc、ヘキサヒスチジンなどのいくつかの異種エピトープのうちの1つを含有するように改変して、組換えキャプシドタンパク質をコードするプラスミドを生成する。簡潔に述べると、コドンがAAV2キャプシドタンパク質のN587、AAV6 VP1キャプシドタンパク質のQ585、AAV8 VP1キャプシドタンパク質のN590、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のA589、AAV9 VP1キャプシドタンパク質のG453をコードした後、FLAG、c-myc、またはヘキサヒスチジンをコードする配列をフレームに挿入する。
【0179】
アデノ随伴ウイルス生成は、HEK293細胞を用いたトリプルトランスフェクション方法(例えば、Erik Arden and Joseph M.Metzger、J
Biol Methods.2016;3(2))を参照のこと)を使用して実施する。細胞は、適切なベクター:
ヘルパープラスミド、pHelper(Agilent、Cat#240074);
例えば、pAAV RC2/6/9(Cell Biolabs、Cat#VPK-426)、pAAV RC8、pAAV RC2-N587myc、pAAV RC2/6-Q585myc、pAAVRC8-N590myc、pAAV RC9-A589mycなどの、野生型または改変AAV rep/cap遺伝子(pAAV RC2(Cell biolabs、Cat#VPK-422)をコードするプラスミド;および
対象ヌクレオチドと、例えば、pscAAV-CMV-eGFP、pAAV-CMVGFP(Agilent Cat#240074)、pAAV-EF1a-eGFP、またはpAAV-CAGG-eGFPなどのAAV ITR配列をコードするプラスミド
を用いる、PEFpro(Polyplus transfection,New York,NY)媒介性トランスフェクションの1日前にプレーティングする。
【0180】
トランスフェクション72時間後に、培地を収集し、細胞を緩衝液[50MmのTris-Hcl、150MmのNaCl、および0.5%デオキシコール酸ナトリウム(Sigma、Cat#D6750-100G)]中で溶解する。次に、培地および細胞溶解物の両方が0.5U/μlの最終濃度になるまで、ベンゾナーゼ(Sigma、St.Louis,MO)を添加し、その後37℃で60分間培養する。細胞溶解物を、4000rpmで30分間遠心分離する。細胞溶解物および培地を一緒に組み合わせ、最終濃度8%でPEG8000(Teknova Cat#P4340)で沈殿させる。ペレットを400MmのNacl中に再懸濁し、10000gで10分間遠心分離する。上清中のウイルスを、149,000gで3時間の超遠心分離によってペレット化し、qPCRによってタイトレーションする。
【0181】
AAVゲノムをタイトレーションするためのqPCRでは、AAV試料を37℃で1時間DNaseI(Thermofisher Scientific、Cat#EN0525)で処理し、DNA抽出物All Reagents(Thermofisher Scientific Cat#4403319)を使用して溶解する。プライマーをAAV2 ITRに直接使用して、QuantStudio 3 Real-Time PCR System(Thermofisher Scientific)を使用してキャプシド形成ウイルスゲノムを定量化する。AAV2 ITRプライマーの配列は、5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT-3’(正方向ITR、配列番号9)および5’-CGGCCTCAGTGAGCGA-3’(逆方向ITR、配列番号10)(Aurnhammeret al.,2012)であり、それぞれ、AAVの左側内部逆位反復(ITR)配列、およびAAVの右側内部逆位反復(ITR)配列に由来する。AAV2 ITRプローブの配列は、5’-6-FAM-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCG-TAMRA-3’(配列番号11)(Aurnhammer C.,Haase M.,Muether N.,et al.,2012,Hum.Gene Ther.Methods 23,18-28)である。10分間95°Cの活性化工程の後、95℃で15秒間、および60℃で30秒間の2工程のPCRサイクルを40サイクル実施する。TaqMan Universal PCR Master Mix(Thermofisher Scientific、Cat#4304437)をqPCRに使用した。DNAプラスミド(Agilent、Cat#240074)は、絶対力価を決定するための基準として使用する。
【0182】
c-mycエピトープが中に生成されたキャプシドを含むアデノ随伴ウイルスベクター。本実施例では、c-mycエピトープ(EQKLISEEDL、配列番号6)を、AAV2 VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸N587とR588との間、またはAAV9 VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸A589とQ590との間に挿入した、すなわち、c-mycエピトープをコードするヌクレオチド配列(GAA CAA AAA CTC ATC TCA GAA GAG GAT CTG、配列番号12)を、プラスミドpAAV RC2(Cell Biolabs,Inc.,San Diego,CA)またはプラスミドpAAV RC2/9に挿入し、それぞれの改変pAAV RC2-N587Myc pAAV RC9-A589Mycプラスミドの各々を使用して、減少または無効化された指向性を有するAAVウイルスベクターの改変キャプシドタンパク質をコードした。
【0183】
pAAV RC2-N587Mycを作製するために、(5’から3’に向かって)BsiW1制限部位、pAAV RC2の位置3050と3773との間のヌクレオチド配列、およびc-mycエピトープオーバーハングヌクレオチド配列を含む第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物、ならびに(5’から3’に向かって)c-mycエピトープオーバーハングヌクレオチド配列、pAAV RC2の位置3774~4370の間のヌクレオチド配列、およびPme1制限部位を含む第2のPCR生成物を、表2に表されているプライマーを使用して作製した。BsiW1(New England Biolabs、R0553L)およびPme1(New England Biolabs、R0560L)を用いてpAAV RC2を消化させることによって、pAAV RC2-N587Mycプラスミド(すなわち、VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸N587とR588との間にc-mycエピトープをコードするように改変されたpAAV RC2プラスミド)を作製し、(2012)Methods Mol.Biol.52:51-9に記載のようにライゲーション独立クローニングを介して、2つのPCR生成物を挿入した。
【0184】
pAAV RC2/6-Q585Mycを作製するために、3757と3758との間に挿入されるc-mycエピトープ配列を有するpAAV RC2/6の位置3700および3940を含むgblockDNA断片を、Integrated DNA Technologies(Coralville,Iowa)から注文した。MscI(New England Biolabs、Cat#R0534L)およびAflII(New England Biolabs、Cat#R0520L)を用いて消化させたpAAV RC2/6にgblock断片を、(2012)Methods Mol.Biol.52:51-9に記載のように、ライゲーション独立クローニングを介して挿入することにより、pAAV RC2/6-Q585Mycプラスミドを作製した。
【0185】
pAAV RC9-A589Mycを作製するために、(5’から3’に向かって)BsiW1制限部位、pAAV RC9の位置3052と3779との間のヌクレオチド配列、およびc-mycエピトープオーバーハングヌクレオチド配列を含む第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物、ならびに(5’から3’に向かって)c-mycエピトープオーバーハングヌクレオチド配列、pAAV RC9の位置3779~4404の間のヌクレオチド配列、およびPme1制限部位を含む第2のPCR生成物を、表2に表されているプライマーを使用して作製した。
【0186】
BsiW1(New England Biolabs、R0553L)およびPme1(New England Biolabs、R0560L)を用いてpAAV RC9を消化させることによって、pAAV RC9-A589Mycプラスミド(すなわち、VP1キャプシドタンパク質のアミノ酸A589とQ590との間にc-mycエピトープをコードするように改変されたpAAV RC2/9プラスミド)を作製し、(2012)Methods Mol.Biol.52:51-9に記載のようにライゲーション独立クローニングを介して、2つのPCR生成物を挿入した。
【表2】
【0187】
BamHIおよびNotI制限部位を使用して、GFP断片をpscAAV MCSベクター(Cell Biolabs、Cat#VPK-430)に導入することによってpscAAV-CMV-eGFPを生成した。Thermofisher Scientific(Waltham、MA)からのデノボ合成によって、pAAV-EF1a-eGFPプラスミドおよびpAAV-CAGG-eGFPを作製した。
【0188】
実施例2:AAVウイルスベクターの生体外での抗体媒介性再標的化
HepG2は、ヒト肝癌細胞株であり、肝臓特異性マーカーであるアシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)を発現する。scAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターが、HepG2に感染し得るかどうかを試験するために、例えばc-mycおよびASGR1(抗myc-ASGR1抗体)の両方を認識する二重特異性抗体を介して、異なる比率(1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:8、1:15、1:20、1:50、または1:100)のウイルスゲノム(5e9ウイルスゲノム)の数対抗体分子の数の、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体とを含む混合物を室温で30分間培養し、次いでHepG2細胞を添加した。対照として、HepG2細胞をまた、野生型scAAV2-CMV-eGFPウイルスベクターのみ、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ、または単一特異性抗myc抗体(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)を1:8の比率で含むscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと培養した。感染3日後、感染HepG2細胞によるGFP発現を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって確認した(
図1)。GFP発現はまた、野生型scAAV2-CMV-eGFPと培養したとき、および1:8の比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと二重特異性抗myc-ASGR1抗体と培養したときに、HepG2細胞に匹敵するパーセンテージで検出された(それぞれ44.6%および44.1%、
図1Aおよび1G、上部および下部パネル)。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターとより高いまたはより低い二重特異性抗myc-ASGR1抗体(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)との混合物と培養されたHepG2細胞でのFACSによって、より低いGFP発現を検出した(
図1C、下部パネル)。加えて、抗myc-ASGR1抗体の非存在下でscAAV-N587Myc-CMV-eGFPに感染したHepG2細胞、またはscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPおよび単一特異性抗myc抗体と培養したHepG2細胞では、GFPを検出しなかった。
【0189】
同様に、細胞表面上にヒト(h)ASGR1を発現するように遺伝子改変された293T細胞である-293T-hASGR1細胞を、異なる比率(1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:8、1:15、1:20、または1:100)のウイルスゲノム対抗体分子の数の、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体とを含む混合物と培養した。(hASGR1を発現しない)野生型293T細胞を、1:8の比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との混合物と培養し、293T-hASGR1細胞を、(a)野生型scAAVウイルスベクターのみ、(b)scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターのみ、または(c)対照として機能する、c-mycおよび293T細胞によって発現されないグルカゴン受容体(GCGR)(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)を認識する無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体を1:8の比率で含むscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクター、と培養した。感染3日後、293T-hASGR1または293T細胞を、ヒト抗-hASGR1抗体(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)、続いてAPCコンジュゲートヤギ抗ヒト抗体(Jackson ImmunoResearch laboratories Inc,Cat#109-136-098,West Grove,PA)で染色し、FACSによってGFP発現を分析した。293T-hASGR1細胞(
図2Ai~2Axおよび2Axii)の表面上ではhASGR1発現を検出したが、293T細胞(
図2Axi)では検出しなかった。1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:8、1:15、1:20、および1:50の比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との混合物と培養後、野生型scAAVと培養した293T-hASGR1細胞(56.7%)に匹敵するレベルで、GFP陽性293T-hASGR1細胞を検出した(56.9%~68.3%)((
図2Aiおよび2Aiii~2Aix)。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体の1:100の比率は、感染性が減少した(
図2Ax)。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFP単独との培養、または無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体を含むscAAV-N587Mycとの培養は、293T-hASGR1細胞によるGFP発現を生じなかった(
図2Aiiおよび2Axii)。
【0190】
同様の実験では、293T-hASGR1細胞を、未改変AAV9-CAGG-GFPウイルスベクターのみ、AAV9-A589Myc-CAGG-eGFPウイルスベクターのみ、または異なる比率で二重特異性抗Myc-ASGR1抗体と混合したAAV9-A589Myc-CAGG-eGFPウイルスベクターと培養した細胞と培養した。感染3日後、GFP発現をFACSにより分析した。1:1、1:2、1:4、1:8、1:20、1:50、および1:100の比率のAAV9-A589Myc-CAGG-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との混合物と培養後、野生型AAV9-CAGG-eGFPと培養した293T-hASGR1細胞(9.72%)に匹敵するレベルで、GFP陽性293T-hASGR1細胞を検出した(41.1%~91%)(
図2B(i)および
図2B(iii)~(ix)。AAV9-A589Myc-CAGG-eGFP単独との培養は、293T-hASGR1細胞によるGFP発現を生じなかった(
図2B(ii))。
【0191】
二価抗hASGR1抗体(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.,Tarrytown,NY)の293T-hASGR1細胞の感染を阻害する能力を試験した。293T-hASGR1細胞を、室温で1時間、異なる濃度で二価抗hASGR1抗体と培養し、その後、1:8の比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと二重特異性抗myc-ASGR1抗体とを含む混合物と培養した。感染3日後、細胞を固定し、上述のFACSにより分析した。
図3は、scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPの進入が、二価抗hASGR1抗体によって用量依存的な様式で阻害され得ることを示すデータを提供している。
【0192】
二重特異性抗体および改変AAVの連続的な投与が、改変AAVの抗体媒介性再標的化をもたらすことができるかどうかを決定するために、異なる数の二重特異性抗myc-ASGR1抗体分子(1x10
9~1x10
12の範囲の分子)を2x10
5の293T-hASGR1細胞に1時間添加し、その後1x10
9のscAAV-N587Mycウイルスベクターを添加した。対照としては、(1)野生型scAAVのみと、すなわち抗体の非存在下で培養した293T-hASGR1細胞、(2)1x10
11の無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体分子および1x10
9のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養した293T-hASGR1細胞、ならびに(3)1x10
11の二重特異性抗myc-ASGR1抗体分子および1x10
9のscAAV-N587Mycウイルスベクターと連続して培養した、hASGR1を発現しない293T細胞が挙げられた。感染2日後、感染293T-hASGR1細胞によるGFP発現を、顕微鏡によって視覚化した(
図4)。293T-hASGR1細胞によるGFP発現は、野生型scAAVのみと培養後、およびすべての濃度の抗ASGR1抗体分子およびscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPと連続して培養後で観察された(
図4A、4C~4I)。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPのみと培養後の29T3-hASGR1細胞(
図4B)、抗myc-hASGR1抗体およびscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養した後の、ASGR1を発現しない293T細胞(
図4J)、または無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体およびscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと連続して培養した後の29T3-hASGR1細胞(
図4K)では、GFPを検出しなかった。
【0193】
本明細書に記載されるように、自己相補的AAV(scAAV)の指向性は、(1)例えば、キャプシドタンパク質の改変、例えばc-mycエピトープの挿入によって不活性化され得、任意選択的に、(2)二重特異性抗体を使用して、例えば、c-mycエピトープ、および標的細胞によって発現されるリガンドを認識する二重特異性抗体を用いて再配向され得る。一本鎖AAV(ssAAV)の指向性が同様に(1)減少または無効化することができるかどうか、および任意選択的に(2)再配向され得るかどうかを決定するために、293T-hASGR1細胞を、二重特異性抗myc-hASGR1抗体の非存在下、または異なるウイルスベクター:抗体の比率(1:0、1:1、1:2、1:4、1:8、1:20、1:100、または1:1000)で二重特異性抗myc-hASGR1抗体の存在下で、実施例1に記載のように生成したssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターと培養した。対照としては、野生型ssAAVと培養した293T-hASGR1細胞、1:8のウイルスベクター:抗体の比率のssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターおよび無関係な二重特異性抗myc-GCGR抗体と培養した293T-hASGR1細胞、ならびに1:8のウイルスベクター:抗体の比率のssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターおよび二重特異性抗myc-hASGR1抗体と培養した(hASGR1を発現しない)293T細胞が挙げられた。感染3日後、細胞を固定し、GFP発現をFACSによって検出した(
図5)。野生型ssAAVと培養した293T-hASGR1細胞、およびすべての比率のssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との混合物と培養した293T-hASGR1細胞で、GFP発現を検出した(
図5A、5C~5I)。ssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターおよび二重特異性抗myc-ASGR1抗体と培養した29T3細胞によるGFP発現(
図5J)、またはssAAV2-N587Myc-CMV-hrGFPウイルスベクターのみと培養した、もしくはssAAV-N587Mycウイルスベクターおよび無関係な二重特異性抗myc-GCGR二重特異性抗体と培養した293T-hASGR1細胞によるGFP発現(
図5B、5K)は観察されなかった。
【0194】
ヒト(h)グルカゴン受容体(GCGR)は、通常293T細胞によって発現されない。しかしながら、293T-hGCGRは、細胞表面上にhGCGRを発現するように遺伝子改変された、安定な293T細胞株である。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターの再標的化が、hGCGR受容体を介した二重特異性抗myc-GCGR抗体によって媒介され得るかどうかを試験するために、293T-hGCGR細胞を、異なる比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFP:二重特異性抗myc-GCGR抗体を含む異なる混合物と培養した。scAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターを、293T-hGCGR細胞に添加する30分前に室温で、1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:8、1:15、1:20、1:50、または1:100の比率で二重特異性抗myc-GCGR抗体と混合した。感染3日後、感染293T-hCGCR細胞によるGFP発現を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって確認した(
図6)。野生型scAAVと培養後(
図6A)、または1:0.5、1:1、1:2、1:4、1:8、1:15、1:20、1:50、および1:100の比率のscAAV2-N587Myc-CMV-eGFP/二重特異性抗myc-GCGR抗体と培養後(
図6C~6K)に、顕著なパーセンテージのGFP陽性細胞を検出した。scAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクター単独、または単一特異性抗myc抗体を含むscAAV2-N587Myc-CMV-eGFPウイルスベクターと培養した293T-hGCGR細胞では、GFPは検出しなかった(それぞれ
図6Bおよび6L)。
【0195】
Jurkatは、ヒト急性T細胞白血病細胞株であり、ヒト(h)CD3を発現する。AAV6-Q585Myc-EF1a-eGFPウイルスベクターの再標的化が、hCD3受容体を介した二重特異性抗myc-CD3抗体によって媒介され得るかどうかを試験するために、Jurkat細胞を、異なる比率のAAV6-Q585Myc-EF1a-eGFP:二重特異性抗myc-CD3抗体を含む異なる混合物と培養した。AAV6-Q585Myc-EF1a-eGFPウイルスベクターを、Jurkat細胞に添加する30分前に室温で、1:1、1:5、1:10、1:100、1:1000の比率で、二重特異性抗myc-CD3抗体と混合した。感染3日後、感染Jurkat細胞によるGFP発現を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって確認した(
図7)。野生型AAV6-EF1a-eGFPと培養後(
図7B)、または1:1、1:5、1:10、および1:100の比率のAAV6-Q585Myc-EF1a-eGFP/二重特異性抗myc-CD3抗体と培養後(
図7D~7G)、顕著なパーセンテージのGFP陽性細胞を検出した。AAV6-Q585Myc-EF1a-eGFPウイルスベクターと培養したJurkat細胞では、GFPは検出しなかった(
図7C)。
【0196】
本実施例に記載されているのは、scAAV2、またはc-mycエピトープがVP1キャプシドタンパク質のアミノ酸N587とR588との間に挿入されている遺伝子改変ssAAV2(scAAV-N587mycまたはssAAV-N587myc)、Q585とS586との間にc-mycエピトープが挿入されているAAV6、および野生型AAVに通常感染した感染細胞を含むAAV9の不活性化によって実証された、いくつかの自己相補的(sc)または一本鎖(ss)AAVセロタイプの天然指向性の不活性化である(
図1A~1B、2A~2B、3A~3B、4A~4B、5A~5B、6A~6B、および7)。加えて、本実施例で実証されているのは、c-mycエピトープおよび標的細胞によって発現される第2のリガンド(例えばhASGR1、hGCGR、またはhCD3)を認識する二重特異性抗体の、改変AAVの指向性を再標的化する能力、およびリガンド特異的様式でシュードタイプ化AAVによる標的細胞の感染を媒介する能力である(
図1~7)。さらに、本実施例は、遺伝子改変sc-またはss-AAV、および二重特異性抗体の同時投与が、感染に必要ではないこと、すなわち、連続投与が、遺伝子改変sc-またはss-AAVの生体外での再標的化に十分であることを実証している(
図4)。
【0197】
実施例3:改変ウイルスベクターの生体内での抗体媒介性再配向
異なる多重特異性結合分子フォーマットを用いるウイルスベクターの肝臓への再標的化
二重特異性抗myc-ASGR1抗体が、scAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクターを生体内でhASGR1を発現する肝細胞に再標的化させることができるかどうかを決定するために、C57BL/6で肝細胞がhASGR1をバックグラウンド発現するように遺伝子改変されたマウス、および対照野生型C57BL/6マウスに、1x10
11(qPCRによるタイトレーション)の野生型scAAV2-CMV-eGFP単独、またはウイルスゲノム対抗体分子が1:8の比率で、二重特異性抗myc-ASGR1と組み合わせたscAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクターを血管内に注射した。対照としては、生理食塩水[250MmのNacl]、またはscAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクター単独を注射したマウスが挙げられた。注射10日後、マウスを屠殺し、4%のPFAで経心腔的灌流を行った。肝臓、腎臓、および心臓の器官を収集し、15%のスクロース、続いて30%のスクロース中で脱水した。次いで、器官をスライド上で低温切片にし、ニワトリ抗EGFP抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West
Grove,PA)およびAlexa-488コンジュゲート抗ニワトリ二次抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West Grove,PA)で染色した。(
図8A~8C)。肝臓にASGR1を発現するように改変され、野生型scAAV2-CMV-eGFP、または二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたscAAV2-N587myc-CMV-eGFPを注射した遺伝形質転換動物からの肝臓(
図8A(i)および8A(iv))、ならびに野生型scAAV2-CMV-eGFPを注射した野生型C57BL/6マウスからの肝臓(
図8A(v))では、GFP陽性細胞を検出した。生理食塩水、またはscAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクター単独を注射したすべての脾臓もしくは腎臓試料(
図8Bおよび8C)、またはすべての動物からの肝臓、脾臓、もしくは腎臓試料(
図8A(ii、iii、vi、vii))、二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたscAAV2-N587myc-CMV-eGFPを注射した野生型C57BL/6動物から採取した肝臓試料(
図8A(viii))ではGFPを検知しなかった。要約すると、scAAV2-N587myc-CMV-eGFPウイルスベクターと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との組み合わせは、hASGR1を発現する(肝)細胞のみに感染し、これは、scAAV2-CMV-eGFPウイルスベクターが、キャプシドタンパク質の改変によって不活性化されたこと、例えばscAAVウイルスベクターの天然指向性が、例えばc-mycエピトープを用いて減少または無効化することができたこと、かかるウイルスベクターは、例えば二重特異性抗myc-ASGR1抗体によって、例えば生体内で肝細胞に特異的に再活性化、例えば特異的に再標的化することができたことを強く提示している。
【0198】
同様に、二重特異性抗myc-ASGR1抗体が、ssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクターを生体内でhASGR1を発現する肝細胞に再標的化させることができるかどうかを決定するために、C57BL/6で肝細胞がhASGR1をバックグラウンド発現するように遺伝子改変されたマウス、および対照野生型C57BL/6マウスに、2.18x10
11(qPCRによるタイトレーション)の野生型ssAAV2-CAGG-eGFP単独、またはウイルスゲノム対抗体分子が1:4の比率で、二重特異性抗myc-ASGR1と組み合わせたssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクターを血管内に注射した。対照としては、PBS、またはssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター単独を注射したマウスが挙げられた。注射4週間後、マウスを屠殺し、4%のPFAで経心腔的灌流を行った。肝臓、腎臓、および心臓の器官を収集し、15%のスクロース、続いて30%のスクロース中で脱水した。次いで、器官をスライド上で低温切片にし、ニワトリ抗EGFP抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West Grove,PA)およびAlexa-488コンジュゲート抗ニワトリ二次抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West Grove,PA)で染色した。肝臓にASGR1を発現するように改変され、野生型ssAAV2-CAGG-eGFP、または二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPを注射した遺伝形質転換動物からの肝臓(
図9E~9F、9P~9R)、および野生型ssAAV2-CAGG-eGFPを注射した野生型C57BL/6マウスからの肝臓(
図9B~9C)では、GFP陽性細胞を検出した。驚くべきことに、二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPの感染効率は、WT ssAAV2-CAGG-GFP(
図9E~9F、9P~9R)よりも非常に高い。生理食塩水、またはssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクター単独を注射したすべての動物からの肝臓試料(
図9A、9D、9G~9L))、または二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPを注射した野生型C57BL/6動物から採取した肝臓試料(
図9M~9O)ではGFPを検知しなかったか、あるいはかろうじて検出した。要約すると、ssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクターと二重特異性抗myc-ASGR1抗体との組み合わせは、hASGR1を発現する(肝)細胞のみに感染し、これは、ssAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルスベクターが、キャプシドタンパク質の改変によって不活性化されたこと、例えばscAAVウイルスベクターの天然指向性が、例えばc-mycエピトープを用いて減少または無効化することができたこと、かかるウイルスベクターは、例えば二重特異性抗myc-ASGR1抗体によって、例えば生体内で肝細胞に特異的に再活性化、例えば特異的に再標的化することができたことを強く提示している。
【0199】
シュードタイプAAV9ウイルスベクターを用いたさらなる実験を、C57BL/6で肝細胞がhASGR1を発現するように遺伝子改変されたマウスで実施した。これらのマウスに、1x10
11(qPCRによるタイトレーション)の野生型AAV9-CAGG-eGFP、またはウイルスゲノム対抗体分子が1:100の比率で、二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたAAV9-A589myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した。対照としては、PBS、または無関連な二重特異性抗myc-hCD3抗体と組み合わせたAAV9-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射したマウスが挙げられた。注射4週間後、マウスを屠殺した。肝臓を、10%のホルマリンで固定し、GFP染色のためにHistoWiz Inc(New York,NY)に送った。野生型AAV9-CAGG-eGFP、または二重特異性抗myc-ASGR1抗体と組み合わせたAAV9-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した動物からの肝臓では、GFP陽性細胞を検出した(
図10Aおよび10D)。生理食塩水、または二重特異性抗myc-hCD3抗体と組み合わせたAAV9-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した動物からのすべての肝臓試料では、それぞれGFPを検出しなかったか、あるいはかろうじて検出した(
図10Bおよび10C)。要約すると、AAV2と同様に、AAV9の天然指向性は、キャプシドタンパク質の改変によって、例えばc-mycエピトープの挿入によって減少または無効化することができ、かかる改変ウイルスベクター、例えばAAV9-A589mycは、対応する二重特異性抗エピトープ細胞特異性マーカー結合タンパク質、例えば肝細胞に対する二重特異性抗myc-ASGR1抗体を使用して特定の細胞型に再標的化することができる。
【0200】
抗hASGR1 IgG4ノブイントゥホールFcフォーマットに付加された抗myc
scFc
様々な多重特異性結合分子フォーマットが、AAV感染を媒介することができるかどうかを決定するために、抗myc scFvを、ノブイントゥホール抗-hASGR1 IgG4抗体の1つの鎖のC末端に融合した(
図11A参照)。具体的には、抗hASGR1ステルスノブIgG4重鎖をコードするpRG7078の1459~1478および1479~1498と同種のアームに隣接する抗myc scFv(配列番号28)をコードするgblockを、Integrated DNA technologies(Skokie,Illinois)から得た。配列番号28によってコードされるscFv(配列番号37)のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列(AA)をコードするヌクレオチド配列(NA)は、表3に提供されている。
【表3】
【0201】
gblockを、抗hASGR1ステルスノブIgG4重鎖をコードするpRG7078にクローニングして、抗hASGR1ステルスノブIgG4抗myc scFv融合ペプチドをコードするpRG7078、「抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性」を作製した。c-mycを用いて改変されたpRG7078プラスミド、未改変pRG7078抗hASGR1 IgG4ステルスホールスター、および抗体軽鎖を含有するプラスミドを、293T細胞にトランスフェクトし、OPTI-MEM(Cat#31985070,Thermo Fisher)と培養した。トランスフェクト4日後、培地を収集し、プロテインAカラム(cat#89948、Thermo Fisher)を使用して抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子を精製した。
【0202】
シュードタイプAAV8ウイルスベクターを作製するために、pAAV RC8 N590myc、AAV8のVP1キャプシドタンパク質のN590とT591との間に挿入されたc-mycエピトープ(配列番号22)を含むgblockを、Integrated DNA technologies(Skokie,Illinois)から注文した。pAAV RC8プラスミド(配列番号23)を、Mlu1およびSbf1酵素で消化させ、SLICを使用してgblockをベクターにクローニングしてpAAV RC8 N590myc(配列番号24)を作製した。
【0203】
細胞表面上にヒト(h)ASGR1を発現するように遺伝子改変された293T細胞である-293T-hASGR1細胞を、異なる比率(1:0、1:1、1:2、1:4、1:8、1:12、1:15、1:50、または1:100)のAAV8-N590Myc-CAGG-eGFP対-hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子分子、またはAAV8-CAGG-eGFPウイルスゲノムを含むいずれかの混合物と培養した。感染3日後、GFP発現をFACSにより分析した。1:1、1:2、1:4、1:8、1:12、1:15、1:50、または1:100の比率のAAV8-N590Myc-CAGG-eGFPと抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性分子との混合物と培養後、野生型AAV8-CAGG-eGFPと培養した293T-hASGR1細胞(46.1%)(
図12A)に匹敵する、GFP陽性293T-hASGR1細胞を検出した(2.12%~22.2%、
図12D~12K))。疑似感染細胞(
図12B)、またはAAV8-N590Myc-CAGG-eGFP単独との培養のいずれも、293T hASGR1細胞によるGFP発現を生じなかった(
図12C)。
【0204】
抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合タンパク質が、AAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を、生体内でhASGR1を発現する肝細胞に再標的化させることができるかどうかを判断するために、C57BL/6で肝細胞がhASGR1をバックグラウンド発現するように遺伝子改変されたマウスに、1x10
11(qPCRによるタイトレーション)の野生型AAV8-CAGG-eGFP、またはウイルスゲノム対結合タンパク質分子が1:12の比率で、抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子と組み合わせたAAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を血管内に注射した。対照動物に、抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子と同様のフォーマットを有する無関係な抗hCD3x抗myc二重特異性結合分子と組み合わせたAAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した。注射3週間後、マウスを屠殺し、4%のPFAで経心腔的灌流を行った。肝臓、腎臓、および心臓の器官を収集し、15%のスクロース、続いて30%のスクロース中で脱水した。次いで、器官をスライド上で低温切片にし、ニワトリ抗EGFP抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West Grove,PA)およびAlexa488コンジュゲート抗ニワトリ二次抗体(Jackson ImmunoResearch Labs,Inc.West Grove,PA)で染色した。野生型AAV8-CAGG-eGFP(
図13A~13C)、または抗hASGR1-IgG4-Fc/抗myc二重特異性結合分子と組み合わせたAAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した動物からの肝臓では、GFP陽性細胞を検出した(
図13G~13I)。無関係な抗hCD3/myc結合タンパク質と組み合わせたAAV8 N590myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した動物からの肝臓試料では、GFPを検出しなかったか、あるいはかろうじて検出した(
図13D~13F)。要約すると、エピトープ標識化AAV8、例えばAAV8-N590mycは、エピトープに特異的に結合する二重特異性結合分子と、標的細胞タイプによって発現される細胞特異性マーカーとを使用して、特定の細胞型に再標的化することができる。
【0205】
ウイルスベクターの腸および/または膵臓への再標的化
細胞表面上にヒトエクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ3(hENTPD3)を発現するように遺伝子改変された293T細胞(「293T-ENTPD3」)を、AAV2-N587Myc-CAGG-eGFPまたはAAV2-CAGG-GFPウイルスゲノムと、ノブイントゥホール抗hENTPD3 IgG4抗体(抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc)の1つの鎖のC末端に抗myc scFvを融合することによって形成した二重特異性結合分子とを異なる比率(1:0、1:1、1:2、1:4、1:8、1:20、1:50、1:100、または1:200)で含む混合物と培養した。感染3日後、GFP発現をFACSにより分析した。AAV2-N587Myc-CAGG-eGFPと抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗mycとの混合物と培養後、野生型AAV2-CAGG-eGFPと培養した293T-ENTPD3細胞(66%)(
図14A)に匹敵するレベルの、GFP陽性293T-ENTPD3細胞を検出した(1.48%~16%、
図14C~14J)。AAV2-N587Myc-CAGG-eGFP単独との培養は、293T-ENTPD3細胞による非常に低いレベルのGFP発現を生じた(
図14B)。
【0206】
ENTPD3が腸の粘膜で発現されると判断された(データ示さず)。抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質が、AAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を、生体内でENTPD3を発現する腸細胞に再標的化させることができるかどうかを判断するために、C57BL/6マウスに、5x10
11(qPCRによるタイトレーション)の、ウイルスゲノム対結合タンパク質分子が1:20の比率で、抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質と組み合わせたAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を血管内に注射した。対照マウスに、PBS、野生型AAV9、または無関係な結合タンパク質分子と組み合わせたAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射した。注射3週間後、マウスを屠殺した。肝臓、腸、および膵臓を、10%のホルマリンで固定し、GFP染色のためにHistoWiz Inc(New York,NY)に送った。野生型AAV9(
図15B(ii))を注射したマウスではGFP陽性細胞を検出したが、PBS、または無関係な結合分子と組み合わせたAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子、または抗-hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質(それぞれ
図15A(iii)~15A(iv))を注射したマウスからの肝臓では検出されず、hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質を同時注射したときでさえも、AAV2-N587mycウイルスベクターがENTPD3陰性肝細胞に感染しないことを示している。hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質と組み合わせた、野生型AAV9またはAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射したマウスの腸内でのみ、GFPを検出した(
図15B(i)~15B(iv))。抗hENTPD3-IgG4-Fc/抗myc結合タンパク質と組み合わせたAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射したマウスの膵島では、GFPを検出した。(
図15C(iv))。WT AAV9は、膵臓の島細胞と非島細胞との両方を感染させた(
図15C(ii))。生理食塩水、または無関係な結合タンパク質と組み合わせたAAV2-N587myc-CAGG-eGFPウイルス粒子を注射したマウスからの膵臓試料では、GFPを検出しなかった。(
図7C(i)および7C(iii))。要約すると、AAVの天然指向性は、異種エピトープを挿入することにより減少または無効化することができ、エピトープタグ、および再標的化される細胞または組織によって発現されるマーカーに結合する多重特異性結合タンパク質を使用して、同じかまたは異なる細胞に再標的化することができる。
【0207】
本実施例は、アデノ随伴ウイルスベクターのいくつかの異なるセロタイプを、本明細書に記載の異種エピトープ(例えばc-myc)を用いて遺伝子改変して感染性を不活性化することができ、異種エピトープ(例えばc-myc)と、標的細胞によって発現されるマーカーとの両方を認識する(二重特異性フォーマットにかかわらず)二重特異性抗体を使用して、ウイルスベクターを再標的化して、対象ヌクレオチドに送達することができることを実証している。
【0208】
実施例4:特定の細胞に治療カーゴを送達するための遺伝子改変AAV-N587Mycウイルスベクターの使用
本実施例は、1つ以上の自殺遺伝子、生物学的治療剤(例えば、抗体)、CRISPR/Cas遺伝子編集系、shRNAなどの治療カーゴを、標的細胞型に特異的に送達するAAV-N587Mycウイルスベクターの能力を実証する。具体的には、本実施例は、標的リガンドを発現する細胞への自殺遺伝子、抗体コード配列、またはCRISPR/Cas遺伝子編集系の送達について記載している。
【0209】
標的化リガンドを発現する細胞への自殺遺伝子の送達
自殺遺伝子を特定の細胞に送達するscAAV2-N587Mycウイルスベクターの能力を試験するために、HER2+乳癌の異種移植ヌードマウスモデル(Wang et
al.((2010)Cancer Gene Therapy17:559-570)に記載)を使用する。
【0210】
ウイルスベクター:レポーターEGFP遺伝子を担持するscAAV2-N587MycまたはssAAV2-N587Mycウイルスベクター(scAAV2-N587Myc-EGFPまたはssAAV2-N587MycEGFP)を、実施例1に記載のように精製する。自殺遺伝子(SG)を担持するscAAV2-N587MycまたはssAAV2-N587Mycウイルスベクターは、同様に生成する。簡潔に述べると、上述のように、(1)pAdヘルパー、および(2)pAAV RC2(野生型キャプシドをコードする)、またはpAAV RC2-N587Mycベクター(c-mycエピトープで改変されたキャプシドをコードする)、および(3)自殺遺伝子、例えばシトシンデアミナーゼ遺伝子、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子を担持するpAAVベクターを用いて、プロモーター、例えばCMVの制御下で293T17細胞をトランスフェクトする。ssAAV-N587MycSGまたはscAAV-N587SGウイルスベクターを、実施例1に記載のように単離およびタイトレーションする。
【0211】
細胞株:BT474乳癌、SK-BR-3乳癌、およびCalu-3肺癌細胞株は、HER2陽性ヒト腫瘍細胞株である(Bunn P.A.et al.,(2001)Clin Cancer Res.7:3239-3250、Pegram M,et al.(1999)Oncogene18:2241-2251、Spiridon CI,et al.,(2002)Clin Cancer Res.8:1720-1730)。A-673横紋筋肉腫およびHeLa子宮頸癌は、HER2陰性ヒト腫瘍細胞株であり、BEAS-2bは、不死化気管支上皮HER2陰性細胞株である(Jia LT et al.(2003)Cancer Res.63:3257-3262、Kern JA,et al.,(1993)Am J Respir Cell Mol Biol9:448-454、Martinez-Ramirez A,et al.,(2003)Cancer Genet Cytogenet.2003、141:138-142)。これらの細胞株のうちのすべては、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から入手し、ATCCによって推奨される培地で維持する。
【0212】
マウス:メスヌードマウス、生後6~8週間を入手し、特定の病原体のない条件下で飼育する。0日目のマウスに、同時に(1)107のBT474、SK-BR-3、Calu-3、A-673、またはHeLa腫瘍細胞を右脇腹に皮下注射し、(2)二重特異性抗myc-HER2抗体、およびレポーター(例えば、EGFP)または自殺遺伝子を担持するss-またはscAAV-N587Mycウイルスベクターを静脈内に処置する。未処理の動物(腫瘍細胞のみを注射した動物)、レポーターもしくは自殺遺伝子を担持する野生型ss-もしくはscAAVウイルスベクターを注射した動物、二重特異性抗myc-HER2抗体のみを注射した動物、またはレポーターもしくは自殺遺伝子のみを担持するss-もしくはscAAV-N587Mycウイルスベクターを注射した動物が、対照として機能する。すべての動物は、注射および処置1日後に適切なプロドラッグを用いて処置する。各腫瘍のサイズは、キャリパーを使用して週2回測定し、腫瘍体積は、長さ×幅2×0.52として計算する。病的状態、腫瘍潰瘍化、腫瘍直径15mm、または腫瘍体積1000mm3になると、マウスを屠殺し、屠殺した日を死亡日として記録する。野生型ss-もしくはscAAV、またはレポーター遺伝子を担持するss-もしくはscAAV-N587Mycウイルスベクターを注射した動物の肝臓、脾臓、腎臓、および腫瘍を固定し、レポーター遺伝子発現を可視化する。
【0213】
自殺誘導遺伝子の標的化送達が説明されているが(Zarogoulidis P.,et al.(2013)J.Genet.Syndr.Gene Ther.4:16849)、本実施例は、異種エピトープ、例えばc-mycを含む本明細書に記載のウイルスベクター、ならびに標的化リガンドおよび異種エピトープに特異的に結合する二重特異性抗体を使用して、標的化HER2リガンドを発現する細胞への自殺遺伝子の送達を説明する。追加の実験では、本明細書に記載の異種エピトープを含むウイルスベクター、ならびに異種エピトープ(例えばc-myc)および標的受容体に特異的に結合する二重特異性抗体を使用して、自殺遺伝子が、1つ以上の他の標的リガンドを発現する別の細胞型に送達される。標的化に好適な受容体の例示的かつ非限定的な例としては、ウイルスベクターのエンドサイトーシスを媒介する受容体、例えば、癌胎児性抗原(CEA)(Qiu
Y,et al.(2012)Cancer Lett.316:31-38)、および血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)(Leng A,et al.(2013)Tumour Biol.32:1103-1111、Liu T,et al.(2011)Exp Mol Pathol.91:745-752)が挙げられる。標的化され得る追加の受容体としては、上皮成長因子受容体(EGFR)Heimberger
AB,et al.(2009)Expert Opin Biol Ther.9:1087-1098)、白血球分化抗原44(CD44)(Heider KH,et al.(2004)Cancer Immunol Immunother.53:567-579)、白血球分化抗原133(CD133 別名AC133)(Zhang SS,et al.(2012)BMC Med.;10:85)、葉酸受容体(FR)(Duarte S,et al.,(2011)J Control Release149(3):264-72)、トランスフェリン受容体(TfR)または白血球分化抗原71(CD71)(Habashy HO,et al.,Breast Cancer
Res Treat.119(2):283-93)、ムチン(Torres MP,et al.,(2012)Curr Pharm Des.2012;18(17):2472-81)、ステージ特異的胎児性抗原4(SSEA-4)(Malecki M.,et al.,(2012)J Stem Cell Res Ther.2(5))、腫瘍抵抗性抗原1-60(TRA-1-60)(Malecki M.,et al.,(2013)J Stem Cell Res Ther.3:134)が挙げられる。