(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036649
(43)【公開日】2024-03-15
(54)【発明の名称】細胞送達装置におけるPDX1膵臓内胚葉細胞及びその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/39 20150101AFI20240308BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240308BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61K35/39
A61P3/10
A61K9/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017913
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2022090183の分割
【原出願日】2016-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】503431792
【氏名又は名称】ヴィアサイト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,ケビン アレン
(72)【発明者】
【氏名】クルーン,エバート
(72)【発明者】
【氏名】スコット,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マーティンソン,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】マグリーヴィー,クレイグ
(57)【要約】
【課題】膵臓内胚葉細胞等の細胞を宿主に移植する装置及び方法を開示する。
【解決手段】装置は、細胞除外膜の外側の不織布を含み、不織布及び/又は細胞除外膜を穿孔することができる。免疫抑制試薬による宿主の治療は、細胞送達装置の穿孔による同種移植片拒絶を抑制するために必要とされ、移植した膵臓内胚葉細胞の成熟又は機能を損なわない。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布層及びPDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞送達装置を含む組合せ製品。
【請求項2】
前記細胞組合せ製品が細胞除外膜をさらに含み、前記不織布層が前記細胞送達装置の前記細胞除外膜に対して外側にある請求項1に記載の組合せ製品。
【請求項3】
前記不織布層及び前記細胞除外膜が共に積層される請求項1又は請求項2に記載の組合せ製品。
【請求項4】
前記不織布層及び前記細胞除外膜が穿孔を含む請求項2又は請求項3に記載の組合せ製品。
【請求項5】
前記不織布層が穿孔されず、前記細胞除外膜が穿孔される請求項2又は請求項3に記載の組合せ製品。
【請求項6】
前記組合せ製品が免疫抑制薬で治療を受けたラットに移植される請求項1から5の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項7】
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓前駆細胞である請求項1から6の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項8】
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓内分泌細胞である請求項1から6の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項9】
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓ベータ細胞である請求項1から6の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項10】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が150ミクロン以下の直径を有する請求項4又は請求項6から9の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項11】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が100ミクロン以下の直径を有する請求項4又は請求項6から9の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項12】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が75ミクロン以下の直径を有する請求項4又は請求項6から9の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項13】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が50ミクロン以下の直径を有する請求項4又は請求項6から9の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項14】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約1.0mm離れている請求項4又は請求項6から13の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項15】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約1.5mm離れている請求項4又は請求項6から13の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項16】
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約2mm離れている請求項4又は請求項6から13の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項17】
前記不織布層及び前記細胞除外膜がそれぞれ、装置につき約40個未満の穿孔を含む請
求項4又は請求項6から16の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項18】
前記不織布層及び前記細胞除外膜がそれぞれ、装置につき約20個未満の穿孔を含む請求項4又は請求項6から16の何れか1項に記載の組合せ製品。
【請求項19】
a)哺乳類動物宿主に免疫抑制薬を投与し、
b)膵臓内胚葉細胞を含む有孔装置を前記哺乳類動物宿主に移植し、及び
c)前記哺乳類動物宿主の前記有孔装置において前記膵臓内胚葉細胞集団を成熟させ、前記前駆細胞集団がインスリン分泌細胞を産生し、それによって哺乳類動物でインスリンが産生することを含む哺乳類動物でインスリンを産生する方法。
【請求項20】
前記哺乳類動物宿主がヒト又はラットである請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓内胚葉細胞等の細胞を送達する装置の分野及びその使用に関する。
【0002】
支援の記載
本発明は、カリフォルニア再生医療研究所による資金援助を部分的に受けた。
【背景技術】
【0003】
装置の生細胞又は組織を移植するいくつかの方法が試されてきた。例えば、以前に有孔細胞送達装置が報告された。米国特許出願第12/618,659号及び国際公開第1993002635号を参照のこと、その全体が参照により本明細書に援用される。これらの開示において、細胞送達装置の各層が穿孔され、すなわち、穿孔が装置のそれぞれの壁又は装置全体(全層)を横断する。装置の各層が穿孔していると、細胞が装置から逃げてしまうだろう。
【0004】
Valentini等の米国特許出願第4,877,029号は、その全体が参照により本明細書に援用される、半透性の神経誘導チャンネル又は細胞不透過性の滑らかな内膜面と小柱構造を形成する1~20ミクロンのサイズの孔を有する外表面から構成される管を記載している。この小柱構造は、管の厚みを横断する穴(孔)を含まず、従ってこの構造は内部区画に血管成長することができない。
【0005】
細胞送達装置の内部に不織布が使用されている。不織布は、細胞を装置内部に接着し、分配するための構造を提供する送達装置内に不活性スキャフォールドを提供する。米国特許出願第5,853,717号を参照のこと(その全体が参照により援用される)。
【0006】
不織布はグルコース監視装置を取り囲むためにも使用される。米国特許出願第8,527,026号は、その全体が参照により本明細書に援用される、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の血管新生層によって取り囲まれたセンサーを記載し、ePTFEの上にはNWFが積層され得る。この‘026特許では、患者の血中グルコースレベルをこのセンサーで測定している。
【0007】
細胞をカプセルに包み、in vivoの生存率を促進するための多くの戦略が開発されてきたが、色々なものが混ざった結果だけが報告された。したがって、移植細胞の成熟又は機能を促進する細胞を移植するための装置及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
細胞を送達する医療装置、移植細胞の細胞生存率、分化及び成熟を促進する方法を提供する。特に、本明細書に記載の実施形態は、不織布(NWF)、例えば、ポリエステル不織布(NWPF)を細胞除外膜の外側に提供することによって、宿主の組織と送達装置のインターフェースを改善して、移植片の血管新生を改善する。本明細書に記載の実施形態は、NWF及び細胞除外膜の穿孔を含んで、移植片の血管新生を改善する。本明細書に記載の実施形態は、細胞生存率を改善する宿主免疫反応を制御する。
【0009】
いくつかの実施形態において、(a)不織布層を含む細胞送達装置と(B)PDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含む組合せ製品を開示する。
【0010】
他の実施形態において、哺乳類動物でインスリンを産生する方法を開示する。この方法は、a)哺乳類動物宿主に免疫抑制薬を投与し、b)膵臓内胚葉細胞を含む有孔装置を哺
乳類動物宿主に移植し、及びc)哺乳類動物宿主の有孔装置の膵臓内胚葉細胞集団を成熟させ、前駆細胞集団がインスリン分泌細胞を産生することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図3はCペプチドタンパク質の合計含有量と膵島等価物(IEQ)として示されるベータ細胞の質量の相関を示すグラフである。このグラフを使用して、膵島等価物(IEQ)として示される有孔細胞カプセル化装置に膵臓細胞を移植した後に産生されたベータ細胞の質量を確認することができる。
【
図4】
図4は追加された不織布層を有する細胞送達装置の断面図である。
【
図5】
図5は針で穿孔した送達装置(対照、CON)及びレーザーで穿孔した装置で送達された膵臓前駆体を移植されたラットの血清中ヒトCペプチドの濃度を示すグラフである。分泌Cペプチドレベルを移植後12週目の空腹時と、グルコースの腹腔内投与後60分に分析した。平均Cペプチド濃度(+/-SEM)。「M」は、針を使用した手動の孔の形成を指し、約2mmの間隔である。
【
図6】
図6は(手動の)針で穿孔した送達装置(対照、CON)及びレーザーで穿孔した装置で送達された膵臓前駆体を移植されたラットの血清中ヒトCペプチドの濃度を示すグラフである。分泌されたCペプチドレベルを移植後34週目の空腹時と、グルコースの腹腔内投与後15分及び30分に分析した。「M」は、針を使用した手動の孔の形成を指し、約2mmの間隔である。
【
図7】
図7は移植後10、16、36及び39週目に有孔装置で送達された膵臓前駆体を以前に移植したラットから外植された移植片のCペプチドタンパク質の合計含有量を示すグラフである。10週と16週のデータを生成するために使用された有孔装置は、
図1Dと類似しているが、NWFが細胞除外膜に積層せず、2mmの間隔の孔を有する。使用したNWPFは、基本重量が1.00oz/yd
2、公称厚みが228μm、繊維径が26μmを有する。36週のデータを生成するために使用された有孔装置は、NWFを有しないことを除いて16週の装置と同じである。39週のデータを生成するために使用された有孔装置は、使用したNWFの基本重量が0.75oz/yd
2であり、孔の間隔が2mmであることを除いて、16週の装置と同じである。
【
図8】
図8は約9か月間、有孔装置の膵臓内胚葉細胞をラットに移植することによって個々の移植片で達成されたベータ細胞の質量は、同様の期間にマウスに移植されたインタクトな装置と比較して、約5倍増加したことを示すグラフである。
【
図9】
図9はCペプチドが定常になった後のインタクトな細胞送達装置と有孔細胞送達装置の断面の写真である。有孔装置は、インタクトな装置より拡大し、より多くのインスリン産生細胞(ベータ細胞)を含む。
【
図10A】有孔送達装置で送達された膵臓内胚葉を移植された通常の食事を与えられたヌードラット(対照)、又は250mg/kgのシクロスポリンA(CsA-250)を含有する食事を与えられたラットにおける血清中ラット若しくはヒトCペプチドの濃度を示すグラフである。
図10Aは、12週目にシクロスポリンAを投与された内在性ラットベータ細胞の機能が完全に欠如していることを示す。
図10Bは、CsAの処置を受けたラットのヒトCペプチドレベルが、内在性ベータ細胞のCsA毒性によって、わずかに増加したことを示す。
【
図11】
図11はそれぞれ有孔送達装置の膵臓内胚葉を移植された、通常の食事を与えられたヌードラット(対照)、250mg/kgのシクロスポリンA(CsA-250)を含有する食事を与えられたラット、250mg/kgのシクロスポリンAと500mg/kgのミコフェノール酸モフェチル(CsA-250+MMF500)を含有する食事を与えられたラット、150mg/kgのタクロリムスと500mg/kgのミコフェノール酸モフェチル(TAC-150+MMF500)を含む食事を与えられたラットにおける血清中ヒトCペプチドの濃度を示すグラフである。CsAの処置を受けたラットの血中グルコースレベルが、内在性ベータ細胞のISD毒性によって、わずかに増加した。
【
図12】
図12は11週(◆)、14週(■)及び18週(●)に、有孔又は無孔(インタクトな)送達装置の何れかで送達された膵臓内胚葉を移植された、通常の食事を与えられたヌードラット(対照)又はCsA-MMFを含有する食事を与えられたラットにおける血清中ヒトCペプチドの濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を詳細に参照し、添付の図面に例を示す。可能な限り、同じ又は同様の部分を指すために、同じ参照番号を図面全体に使用する。
【0013】
用語の説明
他に断りがない限り、通常の使用に従って技術用語を使用する。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Press出版、1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew等(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.出版、1994(ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A.Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a
Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers,Inc.出版、1995(ISBN 1-56081-569-8)に見つけることができる。
【0014】
治療薬:いくつかの実施形態において、細胞送達装置は治療薬を含む。「治療薬」という用語は、所与の疾患に対して治療的又は予防的結果を提供する薬又は微生物等の病原薬を指す。好ましくは、治療薬は、カプセルに包まれた細胞、細胞凝集体、オルガノイド、クラスター、塊、組織、癌細胞に対して向けられた毒素、例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、メクロレタミン等である。治療薬は、抗体又はその断片、DNA分子又はRNA分子であってもよい。さらに治療薬は、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、又は細胞疾患若しくは障害の治療又は予防をさらに容易にするその他の薬をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、治療薬は、以下に示すように移植される細胞である。
【0015】
移植細胞:一実施形態において、移植部位又は送達装置には、「移植細胞」(implanted cells)、「外因性細胞」、「移植に適した細胞」、「移植細胞」(transplanted cells)、「移植細胞」(implanted cells)、「治療用細胞」、「移植カプセル化細胞」、「カプセル化細胞」、「治療用同種細胞」又は「治療用自家細胞」とも呼ばれる「細胞」が添加される。多様な細胞を本開示の方法に使用することができる。移植細胞は、同種若しくは異種細胞集団、又は目的の生物学的活性物質を1つ以上産生する細胞であり得る。移植細胞、例えば、膵臓前駆体又はPDX1陽性膵臓内胚葉は、最初に移植したときは、治療的に活性でなくてもよいが、一度移植されると、さらに発生し、成熟し、治療効果を有する。本明細書で使用する場合、「
移植される細胞」は、充分に生存可能及び/若しくは機能的な細胞若しくは細胞集団を指し、又は代謝障害のin vivo治療に機能性になる。
【0016】
「誘導多能性幹細胞」、「iPS細胞」又は「iPS」は、特定の遺伝子又は遺伝子産物を挿入することによって、線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、ニューロン、表皮細胞等の非多能性細胞、一般的には成人体細胞又は高分化細胞から人工的に調製された一種の多能性幹細胞を指し、リプログラミング細胞とも呼ばれる。Takahashi等、Cell
131:861-872(2007);Wernig等、Nature 448:318-324(2007);Park等、Nature 451:141-146(2008)を参照のこと、またPCT出願国際公開第2010048567号、PCT出願第PCT/US2009/061935号、PCT出願第PCT/JP2009/063906号及び米国特許出願第第2011/0039338US号、第2011/0039338号も参照のこと、その全体が参照により本明細書に援用される。iPSCを作製する上述の方法及びその他の方法は知られており、iPSCが派生する又は生成される様式は、本開示の方法を限定しない。ヒトiPSCは、胚を伴う使用のない多能性幹細胞の源を提供する。
【0017】
移植細胞はリプログラム細胞を含む。本明細書で使用する場合、「リプログラミング」、「リプログラムされた」という用語又はその等価物は、培地又はin vivoの何れかに少なくとも1つの新しい細胞種の子孫を形成する測定可能に増加した能力を細胞に与えるプロセスを指し、その能力はリプログラミングすることなく同条件下で有する。
【0018】
移植細胞は分化、脱分化及び分化転換細胞を含む。したがって、本明細書で使用する場合、「分化」というフレーズは、特殊化していない細胞がより特殊化した細胞種になるプロセスを指す。反対に、「脱分化」というフレーズは、部分的に又は高分化した細胞が、多能性又は多分化能を有する細胞等の発達段階初期に逆戻りする細胞プロセスを指す。さらに対照的に、「分化転換」というフレーズは、1つの分化した細胞種を別の分化した細胞種に形質転換するプロセスを指す。
【0019】
移植細胞は、単独のホルモン細胞又はポリホルモン(polyhormonal)細胞を含む。本明細書で使用する場合、「単独のホルモン」細胞又はその等価物は、たった1つのホルモンを発現する細胞(例えば、未成熟ベータ細胞及びベータ細胞は、インスリンタンパク質のみを発現し、グルカゴン又はソマトスタチンタンパク質を発現しない)を指す。本明細書で使用する場合、「ポリホルモン」細胞は、1つ以上又は複数のホルモンを発現する(例えば、内分泌前駆体又は前駆細胞は、同細胞に2、3又は4個以上のホルモンを発現する細胞の亜集団を有する)。
【0020】
移植細胞は、中内胚葉細胞を含む。「中内胚葉細胞」という用語又はその等価物は、SOX17 low、CXCR4 low、FOXA2 low、SOX7 low及びSOX1 lowに比べて、比較的高発現レベルのブラキュリ、FGF4、SNAI1 MIXL1及び/又はWNT3マーカー遺伝子を有する多能性細胞を指す。
【0021】
移植細胞は、胚体内胚葉細胞を含む。「胚体内胚葉」、「DE」、「胚体内胚葉系」という用語又はその等価物は、腸管又は腸管から派生した臓器の細胞に分化することができる多能性内胚葉系細胞を指す。
【0022】
移植細胞は、PDX1陰性前腸内胚葉細胞を含む。「PDX1陰性前腸内胚葉細胞」、「前腸内胚葉細胞」又はその等価物は、SOX17、HNF1β(HNF1B)、HNF4アルファ(HNF4A)及びFOXA1マーカーを発現する細胞であるが、PDX1、AFP、SOX7又はSOX1を実質的に発現しない。PDX1陰性前腸内胚葉細胞集団
及びその生成方法は、2006年10月27日出願された米国特許出願第11/588,693号、明細書名「PDX1-expressing dorsal and ventral foregut endoderm」に記載されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0023】
移植細胞は、PDX1陽性、背側性偏向、前腸内胚葉細胞を含む。「PDX1陽性、背側性偏向、前腸内胚葉細胞」という用語(背側性PDX1陽性前腸内胚葉細胞)は、2013年2月6日に出願された米国特許出願第13/761,078号及び米国特許出願第9,109,245号の表1から選択される1つ以上のマーカーを発現する細胞であり、上述の特許は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0024】
移植細胞は、膵臓内胚葉細胞を含む。「膵臓内胚葉」、「膵臓上皮性」、「膵臓上皮」(「PE」と短縮され得る)、「膵臓内前駆体」、「PDX1陽性膵臓内胚葉」又は「PEC細胞産物」という用語又はその等価物、例えば「膵臓内胚葉細胞」(PEC)は、全ての前駆体(precursor)又は前駆体(progenitor)膵臓細胞である。PECは、本明細書に記載するとき、ステージ4分化後(約12~14日目)の前駆細胞集団であり、少なくとも2つの主要な固有の集団:i)PDX1及びNKX6.1を発現するが、CHGA(若しくはCHGA陰性、CHGA-)を発現しない膵臓前駆細胞、「非内分泌性多能性前駆体亜集団(CHGA-)」、「非内分泌性(CHGA-)亜集団」、「非内分泌性(CHGA-)細胞」又はその等価物、並びにii)CHGA(CHGA陽性CHGA+)、「内分泌性多能性前駆体亜集団(CHGA+)」又は「内分泌性(CHGA+)亜集団」、「内分泌性(CHGA+)細胞」又はその等価物を含む。PDX1及びNKX6.1を発現するが、CHGAを発現しないPEC膵臓内前駆体亜集団は、「非内分泌性多能性膵臓前駆体亜集団(CHGA-)」、「非内分泌性前駆体亜集団」、「非内分泌性(CHGA-)亜集団」、「非内分泌性(CHGA-)亜集団」、又は「多能性前駆体亜集団」等とも呼ばれる。CHGAを発現するPEC多ホルモン性内分泌性細胞亜集団は、「内分泌系に関与する細胞(CHGA+)」、又は「CHGA+細胞」等とも呼ばれる。理論に縛られることはないが、NKX6.1を発現するが、CHGAを発現しない細胞集団は、PECのより活性又は治療的成分であると仮説され、CHGA陽性多ホルモン性内分泌性細胞は、in vivoにグルカゴン発現膵島細胞にさらに分化し、成熟すると仮説されている。Kelly等(2011)Cell-surface markers for the isolation of pancreatic cell types derived from human embryonic stem cells、Nat Biotechnol.29(8):750-756、2011年7月31日にオンライン出版及びSchulz等(2012)、A Scalable System for Production of Functional Pancreatic Progenitors from Human Embryonic Stem Cells、PLosOne 7(5):1-17、e37004を参照のこと、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0025】
時には、膵臓内胚葉は前述のPECを参照することなく使用されるが、概して少なくともステージ3及び4型細胞を参照するために使用される。その使用及び意味は文脈から明らかになる。膵臓内胚葉は、PDX1、NKX6.1、PTF1A、CPA1、cMYC、NGN3、PAX4、ARX及びNKX2.2マーカーから選択されるマーカーの高レベルの発現を有するが、例えばCHGA、INS、GCG、GHRL、SST、MAFA、PCSK1及びGLUT1の膵臓内分泌細胞の特徴である遺伝子を実質的に発現しない。さらに、NGN3を発現するいくつかの「内分泌前駆細胞」は、その他の非膵臓構造(例えば十二指腸)に分化することができる。膵臓内胚葉又は内分泌前駆細胞集団及びその方法は、2007年7月5日に出願された米国特許出願第11/773,944号、明細書名「Methods of producing pancreatic hormo
nes」、及び2008年4月21日に出願された米国特許出願第12/107,020号、明細書名「METHODS FOR PURIFYING ENDODERM AND PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVED FORM
HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS」にも記載されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0026】
移植細胞は内分泌前駆細胞を含む。「内分泌前駆細胞」又はその等価物は、本明細書で使用する場合、ニューロゲニン3(NEUROG3)、PDX1、PTF1A、SOX9、NKX6.1、HNF1b、GATA4、HNF6、FOXA1、FOXA2、GATA6、MYT1、ISLET1、NEUROD、SNAIL2、MNX1、IA1、RFX6、PAX4、PAX6、NKX2.2及びMAFBから成るリストから少なくとも1つのマーカーを発現し、限定されないが膵島ホルモン発現細胞を含む内分泌系の細胞にさらに分化することができる胚体内胚葉系の多能性細胞を指す。内分泌前駆細胞は、少なくとも2012年3月6日に出願された米国特許出願第8,129,182号、明細書名「ENDOCRINE PRECURSOR CELLS, PANCREATIC HORMONE-EXPRESSING CELLS AND METHODS OF PRODUCTION」及び2014年10月14日に出願された米国特許出願第8,859,286号、明細書名「IN VITRO DIFFERENTIATION OF PLURIPOTENT STEM CELLS TO PANCREATIC ENDODERM CELLS(PEC) AND ENDOCRINE CELLS」に詳細に記載され、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0027】
移植細胞は、内分泌細胞を含む。「内分泌細胞」又は「膵島ホルモン発現細胞」、「膵臓内分泌細胞」、「膵島細胞」、「膵島」、「幹細胞由来ベータ細胞」、「ベータ細胞」(「β細胞」)、「SC-ベータ細胞」又はその等価物は、インスリンを発現することができるが、グルカゴン、ソマトスタチン、グレリン及び膵臓ポリペプチドを発現しない膵臓内分泌細胞である。β細胞に特徴的なマーカーを発現する膵臓内分泌細胞は、インスリン及び以下の転写因子:PDX1、NKX2.2、NKX6.1、NeuroD1、ISL1、HNF3β、HB9、MAFA、及びPAX6の少なくとも1つの発現を特徴とし得る。
【0028】
移植細胞は、適切に内分泌細胞を特定する。本明細書で使用する場合、フレーズ「適切に特定された内分泌細胞」又は「ステージ7培養物」、「未成熟ベータ細胞」を含む「未成熟内分泌細胞」又はその等価物は、血中グルコースに反応してインスリンを分泌するように移植された場合、例えば未成熟ベータ細胞をin vivoで機能化することができるin vitroに作製された内分泌細胞集団を指す。適切に特定された内分泌細胞又はステージ7培養物は、以下を含む追加の特徴を有し得る。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、移植されると、機能的膵島細胞に発現及び成熟する。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団は、内分泌細胞を富化し(又は非分泌細胞を枯渇させる)。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団の約50%超の細胞は、CHGA+である。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団の細胞の約60%、約70%、80%、90%、95%、98%又は100%超がCHGA+である。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団の細胞の約50%未満がCHGA-である。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団の細胞の約15%未満がCHGA-である。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞集団の細胞の約10%、5%、3%、2%、1%、0.5%又は0%未満がCHGA-である。さらに、特定のマーカーの発現がステージ3の最中にNGN3発現等の適切に特定された内分泌細胞であってもよい。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、ステージ5でNGN3の発現を増加させた。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、単独のホルモン(例えば、INSのみ、GCGのみ又はSSTのみ)である。一実
施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、NKX6.1及びPDX1を含むその他の未成熟の内分泌細胞マーカーを共発現する。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、単独のホルモンとNKX6.1及びPDX1を含む共発現するその他の未成熟の内分泌細胞マーカーの両方であってもよい。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、合計のINS集団の割合として単独のホルモンを発現するINS細胞をより多く有し得る。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、合計のINS集団の割合として単独のホルモンを発現するINS細胞を少なくとも50%有する。一実施形態において、適切に特定された内分泌細胞は、CHGA+/INS+/NKX6.1+(三重陽性)である。一実施形態において、細胞集団の細胞の約25%超がCHGA+/INS+/NKX6.1+(三重陽性)である。一実施形態において、細胞集団の細胞の約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%超がCHGA+/INS+/NKX6.1+(三重陽性)である。
【0029】
移植細胞は、未成熟の内分泌細胞を含む。「未成熟の内分泌細胞」という用語、特に「未成熟のベータ細胞」又はその等価物は、内分泌前駆細胞、膵臓内胚葉細胞(PE)、膵臓前腸細胞、胚体内胚葉細胞、中内胚葉細胞、又は後述する初期由来細胞を含むその他の内分泌細胞に由来する細胞を指し、INS、NKX6.1、PDX1、NEUROD、MNX1、NKX2.2、MAFA、PAX4、SNAIL2、FOXA1又はFOXA2から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する。好ましくは、本明細書に記載の未成熟ベータ細胞は、INS、NKX6.1及びPDX1を発現し、より好ましくは、INS及びNKX6.1を共発現する。「未成熟内分泌細胞」、「未成熟膵臓ホルモン発現細胞」、「未成熟膵島」という用語又はその等価物は、例えば、米国特許出願第8,859,286号の
図45に記載の少なくとも1つの単能性未成熟ベータ細胞又は前ベータ細胞を指し、参照によりその全体が本明細書に援用され、その他の未成熟細胞を含まず、例えば、この用語は、未成熟アルファ(グルカゴン)細胞、未成熟デルタ(ソマトスタチン)細胞、未成熟イプシロン(グレリン)細胞、又は未成熟膵臓ポリペプチド(PP)を含まない。多能性細胞を膵臓内分泌前駆細胞及び膵臓内分泌細胞に分化する方法は、さらに米国特許出願第9,012,218号、第9,181,528号、第9,234,178号、第9,150,833号、第9,096,832号、第9,062,290号にさらに記載され、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0030】
移植細胞は機能的ベータ細胞を含む。「機能的ベータ細胞」、「成熟ベータ細胞」という用語又はその等価物は、確立されたプロセスを示す膵臓内分泌細胞であり、確実に迅速で制御されたグルコース促進インスリン分泌(「GSIS」)を行い、特に、ミトコンドリア呼吸/活性、次にインスリン分泌の第1フェーズ及び第2フェーズ(「二相性GSIS」)が増加する。詳細には、機能的ベータ細胞は、以下の二相性GSISの特徴の少なくとも1つを示し、(i)インスリン分泌によるミトコンドリア呼吸/活性のカップリング、(ii)高い要求(本明細書では、高グルコース濃度)に応答する迅速なインスリン分泌、(iii)要求が静まった後に迅速にインスリン分泌をやめる能力、(iv)複数回のインスリン分泌の「オン-オフ」スイッチング能力、(v)要求通りの適正量のインスリンを分泌する能力、及び(vi)複数のインスリン分泌促進物質(例えば、エキセンディン-4又はアミノ酸-L-グルタミン及びL-アルギニン)に応答する能力の少なくとも1つを示す。機能的ベータ細胞は、インスリンと以下の転写因子:PDX1、NKX2.2、NKX6.1、NeuroD1、ISL1、HNF3β、HB9、PAX6、MAFA、SLC2A1、UCN3及びGLP1Rの少なくとも1つの発現を特徴とし得る。
【0031】
本明細書で使用する場合、「多能性細胞から発生」、「多能性細胞から分化」、「多能性細胞から成熟」又は「多能性細胞から産生」、「多能性細胞から派生」、「多能性細胞から分化した」という用語及びその等価物は、多能性細胞からin vitro又はin
vivoに分化された細胞種の産生を指す。
【0032】
移植細胞は、細胞凝集体を含む。細胞凝集体は前述に示した細胞種の凝集体であり得る。凝集体は、実質的に1つの細胞種であっても、混合細胞集団であってもよい。本明細書で使用する場合、「クラスター」、「塊」、「凝集体」という用語又はその等価物は、同義に使用することができ、概して、単一の細胞に分離され、凝集されてクラスターを形成する、又は密接な細胞間接触を有する細胞群を指す。「再凝集された」という用語は、本明細書で使用する場合、クラスター、塊及び/又は凝集体がより小さいクラスター、塊及び/又は凝集体又は単一の細胞に分離され、クラスター、塊及び/又は凝集体に再凝集されることによって、新しい細胞間接触が形成される。この分離は、一般的には本質的には(パスツールピペットを使用して)手動であるが、他の分離方法も考慮される。凝集体懸濁多能性細胞培養物は、実質的に、国際公開第PCT/US2007/062755号、明細書名「COMPOSITIONS AND METHODS FOR CULTURING DIFFERENTIAL CELLS」及び第PCT/US2008/082356号、明細書名「STEM CELL AGGREGATE SUSPENSION
COMPOSITIONS AND METHODS OF DIFFERENTIATION THEREOF」に記載されている。
【0033】
移植細胞は単一細胞懸濁液を含む。「単一細胞懸濁液」という用語又はその等価物は、多能性又は高分化した単一細胞懸濁液、又は機械的若しくは化学的手段によって、多能性細胞から生じた単一細胞懸濁液を指す。2011年6月21日に出願された米国特許出願第7,964,402号、明細書名「Methods for culture and
production of single cell populations of human embryonic stem cells」に詳細に記載されている。
【0034】
「細胞」は、個別の細胞、細胞株又はこの細胞に由来する培養物を指す。「培養物」は、同じ又は異なる種類の単離された細胞を含む組成物を指す。「培養物」、「集団」又は「細胞集団」は、本明細書で使用する場合、同義に使用することができ、その意味は文脈に応じて明らかになる。例えば、「集団」という用語は、同じ識別特徴を有する1つ以上の細胞の細胞培養物であり得、又は異なる識別特徴を有する1つ以上の細胞種の培養物であり得る。「亜集団」という用語は、細胞培養物又は細胞集団内で特定の細胞種を記述するために使用するとき、細胞培養物又は集団のサブセットを指す。
【0035】
「細胞系」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞種が最も初期の前駆細胞から完全に成熟した細胞(特定化された細胞)に生育するステージの全てを指す。例えば、「胚体内胚葉系細胞」、「PDX1陰性内胚葉系細胞」、「PDX1陽性膵臓内胚葉系細胞」、「内分泌前駆体系細胞」、「内分泌系細胞」又は「未成熟ベータ系細胞」等は、胚体内胚葉細胞、PDX1陰性内胚葉細胞、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞等から派生又は分化した細胞を指す。胚体内胚葉細胞は、その前駆体の1つである中内胚葉細胞の系である。PDX1陽性膵臓内胚葉細胞は、その前駆体の1つである胚体内胚葉細胞の系である。PDX1陽性膵臓細胞、胚体内胚葉細胞及び中内胚葉細胞の系の内分泌前駆体は全てその前駆体である。内分泌前駆細胞、PDX1陽性膵臓細胞、胚体内胚葉細胞、及び中内胚葉細胞の系の未成熟ベータ細胞は全てその前駆体である。ベータ細胞は、例えば、未成熟ベータ細胞の唯一の系である。本明細書に記載の全ての内胚葉系細胞は、hES系細胞である。
【0036】
「治療」、「改善」又は「治癒」という用語又はその等価物は、徴候又は症状を改善する治療介入を指す。「改善」は、徴候又は症状の数又は重症度の軽減を指す。
【0037】
「患者」、「宿主」、「哺乳類動物宿主」、「対象」という用語又はその等価物は、ヒト及び非ヒト哺乳類動物の両方を含むカテゴリーの1つである生きている多細胞脊椎動物を指す。いくつかの実施形態において、対象はヒト対象である。好ましい治療対象の患者はヒト対象である。有孔組合せ製品を移植した患者は、「高リスクのインスリンを必要としている患者」であり、集団の例として、低血糖症に気がつかない、不安定(脆性)T1D及び移植患者が挙げられる。標的の患者集団は、有孔組合せ製品それ自体から独立して、臨床使用/経験が経時的に変化し得るが、むしろ免疫抑制レジメンの性質に関係する。例えば、有孔組合せ製品は、運用許容範囲を達成するISDレジメンを使用して、「全てのT1D集団」に使用され得る。
【0038】
「有効量」、「治療有効量」という用語又はその等価物は、治療する対象又は細胞に望ましい効果を達成するのに充分な薬の量を指す。例えば、血中グルコースレベルを抑制し、又は測定可能に低下する、及び最終的に恒常的に血糖を制御するのに必要な細胞の量であってもよい。また、細胞又は対象の機能又は構造を変化させる薬の有効量を意味し得る。薬の有効量は単回量又は数回量で投与され得る。しかしながら、有効量は、投与する特定の薬、治療対象、苦痛の重症度及び種類、並びに投与形式に依存する。
【0039】
「生物付着」、「汚損装置」という用語又はその等価物は、本明細書で使用する場合、生物環境(例えば、限定されないが、皮下環境等を含む宿主環境)を有する埋め込み型成体装置のインターフェースにおけるプロセスを指し、タンパク質が非特異的に装置の物質に吸収されて、次に、マクロファージ及び線維芽細胞等の宿主細胞の装置表面への付着が促されることによって部分的に生じる。このプロセスは、一般的に異物反応として呼ばれる。したがって、本明細書に記載の実施形態は、生物付着耐性表面を含むカプセル化装置である。このような表面は、表面親水性及び電荷、生体分子機能化及び薬物溶出に基づいて作製され、又は使用することができる。装置の生物付着が減少することによって、概して、異物反応を減少させ、細胞生存率、発生、成熟及び機能を回復し、又は維持する。本明細書に記載の実施形態は、装置の表面の生物付着を抑制し、又は減少し、血管新生を促進し、その結果、装置と装置内の細胞を統合するために、不織布の使用を検討する。
【0040】
本明細書で使用する場合、「低血糖症の減少」は、HbA1cの0.2%以下の増加によって規定される、血糖コントロールを悪化することなく、低血糖エピソードの数が減少することを指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、「インスリン依存性の減少」は、HbA1cの0.2%以下の増加によって規定される、血糖コントロールを悪化することなく、外因性インスリン注入の投与回数及び/又は投与量が減少することを指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、「維持」は、有孔組合せ製品の内部で維持されるPEC細胞の量を意味する。有孔装置は、製剤中の細胞産物、貯蔵寿命、外科移植、成熟及び機能を維持する。
【0043】
本明細書で使用する場合、「組織カプセル」は、移植片の周囲に形成される異物カプセルを意味する。有孔装置及びその細胞含有量の大部分は、移植期間中にカプセルの内部に維持されることを意図する。装置は、カプセル形成の前に、最初の移植の最中に、管腔の内部に細胞産物を維持する。
【0044】
「移植」は、前駆体又は未成熟の細胞集団が成熟した細胞種に分化することを指す。例えば、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞集団の移植によって、膵臓内分泌細胞集団に成熟する。
【0045】
「移植片」は、本明細書に記載の装置にカプセル化され、又は送達される分化した細胞集団を指す。例えば、成熟した膵臓内分泌細胞移植片が挙げられる。
【0046】
「本質的に」又は「実質的に」という用語は、細胞集団又は培養物に存在するほぼ僅少又は少量の成分又は細胞を意味し、例えば、未成熟のベータ細胞は、「本質的に又は実質的にINS、NKX6.1及びPDX1を発現する未成熟のベータ細胞であり、本質的又は実質的にNGN3を発現しない」。他の例として、限定されないが、「本質的又は実質的にhES細胞」、「本質的又は実質的に胚体内胚葉細胞」、「本質的又は実質的に前腸内胚葉細胞」、「本質的又は実質的にPDX1陰性前腸内胚葉細胞」、「本質的又は実質的にPDX1陽性膵臓内胚葉細胞」、「本質的又は実質的に膵臓内分泌前駆細胞」、「本質的又は実質的に膵臓内分泌細胞」等が挙げられる。
【0047】
細胞培養物又は細胞集団における細胞について、「実質的に含まない」という用語は、細胞培養物又は細胞集団を含まない特定の細胞種が、細胞培養物又は細胞集団に存在する細胞の総数の少なくとも約10%未満、少なくとも約9%未満、少なくとも約8%未満、少なくとも約7%未満、少なくとも約6%未満、少なくとも約5%未満、少なくとも約4%未満、少なくとも約3%未満、少なくとも約2%未満、又は少なくとも約1%未満の量で存在する。
【0048】
「不織布」という用語又はその等価物として、限定されないが、織り又は編み以外のプロセスによって製造された結合した布、形成された布、又は加工された布が挙げられる。
【0049】
他に断りがない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術の当業者によって多く理解される意味と同じ意味を有する。単数形「a」、「an」及び「the」は、他に明確に断りがない限り複数も含む。同様に、「又は」という用語は、他に明確に断りがない限り「及び」を含むことを意図する。核酸又はポリペプチドの塩基のサイズ又はアミノ酸のサイズ、及び全分子量又は分子質量値は適切であり、記述のために提供されることがさらに理解される。本明細書に記載の方法及び材料と類似し、又は等価な方法及び材料は、本開示を実行し、又は試験を行うときに使用することができ、適切な方法及び材料を以下に記述する。用語「含む(comprise)」は、「含む(include)」を意味する。本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。齟齬がある場合、用語の説明を含んで本明細書が優先される。さらに、材料、方法及び例は説明のためだけにあり、限定を意図していない。
【0050】
以下の請求項及び本開示で使用する場合、「本質的に成る」というフレーズは、このフレーズの後に列挙する要素を含むことを意味し、列挙した要素の開示において、特定される作用又は活動を妨害しない又はそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「本質的に成る」というフレーズは、列挙した要素が必要であり又は必須であるが、その他の要素は、任意であり、それが列挙した要素の作用又は活動に影響するかどうかによって、存在しても存在しなくてもよい。
【0051】
細胞送達装置
細胞カプセル化装置、細胞維持装置、細胞封じ込め装置又は生体人工器官とも呼ばれる細胞送達装置は、限定されないが、宿主免疫系を含む宿主の細胞を全体的又は部分的にカプセルに包む筐体を提供する装置である。
【0052】
細胞は目的の細胞であってもよい。細胞は、同種若しくは異種細胞集団、又は目的の生物学的活性物質を1つ以上生成する細胞であり得る。移植細胞、例えば、膵臓前駆体又はPDX1陽性膵臓内胚葉は、最初に移植したときは、治療的に活性でなくてもよいが、一
度移植されると、さらに発生し、成熟し、治療効果を有する。移植細胞は、懸濁液又は細胞凝集体の個別の細胞であり得る。
【0053】
例えば、糖尿病又はその1つ以上の症状は、糖尿病をり患している対象への移植に適した細胞を移植した後に、一定期間改善し、又は減少し得る。一実施形態において、細胞送達装置には、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が添加される。一実施形態において、細胞送達装置には、膵臓前駆細胞が添加される。一実施形態において、細胞送達装置には、膵臓内分泌前駆細胞が添加される。一実施形態において、細胞送達装置には、膵臓内分泌細胞が添加される。一実施形態において、細胞送達装置には、成熟したベータ細胞が添加される。
【0054】
一実施形態において、移植細胞は、全能性細胞を含む。一実施形態において、移植細胞は、多能性(pluripotent)細胞を含む。一実施形態において、移植細胞は、多能性(multipotent)細胞を含む。多能性細胞として、内分泌前駆細胞、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、又は中内胚葉細胞を含み、膵臓アルファ、ベータ、デルタ及びガンマ膵島細胞のそれぞれが生じ得る。一実施形態において、移植細胞は、単能性細胞を含む。単能性細胞は、例えば、インスリンベータ細胞のみに分化する能力を有し、グルカゴン(アルファ)細胞、ソマトスタチン(デルタ)細胞及び膵臓ポリペプチド(ガンマ)細胞には分化しない未成熟ベータ細胞を含む。一実施形態において、移植細胞は、高分化した細胞を含む。
【0055】
一実施形態において、移植細胞は、周知の一般に利用可能な不死化細胞株である。本明細書に記載の発明は、WiCellのウェブサイト、wicell.org/home/stem-cell-lines/order-stem-cell-lines/obtain-stem-cell-lines.cmsxで市販されている全てのhES細胞株、及び少なくともhESC及びiPSC、例えば、CyT25、CyT203、CyT212、BG01、BG02、BG03と有用である。本発明の実施に適した細胞は周知の又は後に作製された多能性細胞である。WiCellは数百ものその他の市販のhES幹細胞株を列挙している。当業者は、文献及び一般公開されているデータベース、例えば、the National Institutes of Health(NIH)Stem Cell Registry、the Human Embryonic Stem Cell Registry、及びthe University of Massachusetts Medical School(Worcester、Massachusetts、USA)のthe International Stem Cell Registryから、本発明で使用する市販の幹細胞を確認し、購入する方法を知っている。これらのデータベースは、細胞株が利用可能になり、登録されるたびに定期的に更新される。the International Stem Cell Registryには少なくとも254個の市販のiPSC株及び1211個の市販のhESC株が列挙されている。一実施形態において、多能性移植細胞は、ヒト胚性幹(hES)細胞、ヒト胚性生殖(hEG)細胞、誘導性多能性幹細胞(すなわち、「iPS細胞」又は「iPSC細胞」)、単為生殖生物細胞、体細胞各輸送等によって生じた胚である。一実施形態において、移植細胞は、ヒト胚性幹(hES)細胞、ヒト胚性生殖(hEG)細胞、誘導性多能性幹細胞(すなわち、「iPS細胞」又は「iPSC細胞」)、単為生殖生物細胞、体細胞各輸送等によって生じた胚等の多能性細胞に由来する分化細胞である。多能性は、表面マーカー、転写マーカー、核型、及び3つの胚葉の細胞に分化する能力について、細胞を特徴付けることによって、決定することもできる。これらの特徴は当業者に周知である。例えば、ヒト多能性幹細胞は、多能性の分化及び維持を導く遺伝子の確実に抑制するコア調節複合体を形成するいくつかの転写因子、転写因子Oct-4、Nanog及びSox-2を含む細胞表面タンパク質、糖脂質SSEA3、SSEA4、ケラタン硫酸抗原、Tra-1-60、Tra-1-81及びアルカリホスファターゼ等の細胞表
面抗原の存在によって規定又は特徴付けることができる。
【0056】
当業者は、ヒト胚を使用する必要性がなく、早い時点で行われたヒト胚の破壊的使用を前提とせず、本開示の方法を実施し、本開示の装置を使用することができる。確かに、単為生殖で活性化された卵母細胞からhES細胞株を誘導することは、(例えば、国際公開第03/046141号に記載、参照により本明細書にその全体が援用される)本発明を実施する方法の1つである。胚を破壊せずに哺乳類動物のES細胞等の多能性幹細胞を誘導するその他の方法が存在する。端的には、Advanced Cell Technology(Worcester、Massachusetts、USA)は、胚を無傷の状態で、したがって破壊することなく、1つの卵割球からマウス及びヒトES細胞を誘導する3つの科学ジャーナル記事を公開した。2005年の終わりに、Chung等は、1つの卵割球からマウスES細胞を作製する方法を最初に記載した。Chung等(2006)Nature 439:216-219、2005年10月16日にオンライン出版を参照のこと。Chung等(2006)は、移植前遺伝子診断(PGD)、217頁を参照のこと、のために使用した技術と同様の顕微操作を使用して、胚から組織診を取り出したことを記載した。その当時、Chung等(2006)は、卵割球細胞株をその他の胚性幹細胞と共培養した。Chung等(2008)Human Embryonic Stem Cell Lines Generated without Embryo
Destruction, Cell Stem Cell 2:113-117を参照のこと。しかし、2008年の終わりに、前述のChung等による研究では、ラミニンを有する培地で単離された卵割球を培養するとhESCが生じる能力が高まったため、hESC細胞株はES細胞との共培養を全く必要としないことを証明した。Chung等(2008), Human Embryonic Stem Cell Lines Generated without Embryo Destruction、Cell Stem Cell(2):113-117、p.116、2008年1月10日にオンライン出版を参照のこと。さらに、この方法で得られたhESが、6か月以上、未分化状態を維持することができるhES細胞を含むその他のヒト多能性幹細胞と同じ特徴を有することを証明し、正常な核型並びにOct-4、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanog及びアルカリホスファターゼを含む多能性のマーカーの発現を示し、in vitroで3つの胚性胚葉の誘導体を分化し、形成し、さらにin vivoのテラトーマを形成することができる。
【0057】
移植細胞は分化、脱分化及び分化転換細胞を含み得る。追加の実施形態において、移植細胞は、1つのホルモン又はポリホルモン細胞を含み得る。さらなる実施形態において、移植細胞はリプログラム細胞を含む。いくつかの実施形態において、移植細胞は中胚葉細胞を含む。
【0058】
他の実施形態において、移植細胞は、胚体内胚葉細胞を含む。特定の実施形態において、胚体内胚葉細胞は哺乳類動物細胞であり、好ましい実施形態において、胚体内胚葉細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、SOX17、CXCR4、MIXL1、GATA4、HNF3β、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から選択される1つ以上のマーカーは、胚体内胚葉細胞に発現する。他の実施形態において、OCT4、αフェトプロテイン(AFP)、トロンボモジュリン(TM)、SPARC、SOX7及びHNF4αから選択される1つ以上のマーカーは発現しない、又は胚体内胚葉細胞にかなり発現する。胚体内胚葉細胞集団及びその生成方法は、2004年12月23日に出願された米国特許出願第11/021,618号、明細書名「DEFINITIVE ENDODERM」にも記載されており、参照によりその全体が援用される。
【0059】
いくつかの実施形態において、移植細胞は内分泌前駆細胞を含む。他の実施形態におい
て、移植細胞は機能的ベータ細胞を含む。さらなる実施形態において、移植細胞は、限定されないが、ランゲルハンスのヒト膵島、ブタ膵島及びラット膵島を含む。移植細胞は、高分化したアルファ(α)、ベータ(β)、デルタ(δ)及び/又は膵臓ペプチド(PP)細胞を含む。一態様において、本開示と一致した実施形態は、ランゲルハンス細胞の膵島の移植に使用される。いくつかの実施形態において、移植細胞は、幹細胞、脾臓、膵臓、胆嚢、腎臓及び外分泌機能を有するその他の組織等のその他の細胞種を含む。いくつかの実施形態において、移植細胞は、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、細胞増殖制御因子、又は代謝機能を有するその他の細胞を分泌する神経内分泌細胞、増殖細胞及び細胞株を含む。当業者に明らかなように、これらの細胞及び組織は、哺乳類動物の組織、初代培養細胞、生物産物を産生する培養された細胞株、及び遺伝子操作された培養細胞株から得ることができる。移植細胞は、遺伝子操作して、タンパク質、ペプチド、核酸又はその他の生物活性剤等の望ましい分子を産生することもできる。例として、レシピエントを失っている又は欠損している酵素、又は癌細胞に対する毒素等の治療薬を発現する酵素を発現するように操作された細胞が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、移植細胞は、SOX17、HNF1β(HNF1B)、HNF4アルファ(HNF4A)及びFOXA1マーカーを発現する細胞であるが、PDX1、AFP、SOX7又はSOX1を実質的に発現しないPDX1陰性前腸内胚葉細胞を含む。他の実施形態において、移植細胞は、PDX1陽性、背側性偏向、前腸内胚葉細胞を含む。
【0061】
実施形態において、移植細胞は、動物由来の産物を含まない培地に存在する。別の実施形態において、移植細胞は、異物を含まない培地に存在する。移植細胞は、増殖因子を補充した培地に存在することができる。「補助増殖因子」という用語は、最も広義の意味で使用され、多能性細胞の成長を促し、細胞生存を維持し、細胞分化を刺激し、及び/又は細胞分化の逆転を刺激するのに効果的な物質を指す。このような物質として、限定されないが、サイトカイン、ケモカイン、小分子、中和抗体及びタンパク質が挙げられる。増殖因子として、細胞の発生と維持、並びに組織の形態と機能を制御する細胞内シグナル伝達ポリペプチドも挙げられる。好ましい実施形態において、補助増殖因子は、steel細胞因子(SCF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、可溶性インターロイキン-6受容体(IL-6R)と組み合わせたインターロイキン-6(IL-6)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、腫瘍壊死因子(TNF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択される。
【0062】
一実施形態において、移植細胞は、D’Amour等、「Production of
Pancreatic Hormone-Expressing Endocrine
Cells From Human Embryonic Stem Cells」(2006年11月1日)Nature Biotechnology 24、1392-1401、参照によりその全体が本明細書に援用される、に記載の細胞と実質的に同様である。D′Amour等は、5つのステップの分化プロトコル:ステージ1(多くは胚体内胚葉を産生)、ステージ2(多くはPDX1陰性前腸内胚葉を産生)、ステージ3(多くはPDX1陽性前腸内胚葉を再生)、ステージ4(多くは多能性膵臓前駆細胞又は膵臓内分泌前駆細胞とも呼ばれる膵臓内胚葉を産生)、及びステージ5(多くは、ホルモン発現内分泌細胞を産生)を記載している。
【0063】
一実施形態において、移植細胞は、Schulz等、A Scalable System for Production of Functional Pancreatic Progenitors from Human Embryonic Stem
Cells PLoS One 7:5 1-17(2012)、参照によりその全体
が本明細書に援用される、に記載の細胞と実質的に同様である。Schulz等は、hESCの増殖、バンク方法及び懸濁液ベースの分化システムを記載している。特に、未分化の多能性細胞を動的回転懸濁液培養物のクラスターに凝集し、次に4ステージのプロトコルで、2週間、まとめて分化した。端的には、hESC単層をAccutase(Innovative Cell Technologies)でhES細胞凝集体懸濁液から分離し、StemPro hESC SFM(Life Technologies;Glutamax含有DMEM/F12、StemPro hESC補助剤、BSA、及び1%(v/v)のペニシリン/ストレプトマイシンを組み合わせた;FGF-2及び2-メルカプトエタノールを除いた)に、1×106細胞/mLで回収し、再懸濁する。1つの細胞懸濁液を非TC処理6ウェルプレート(5.5mL/ウェル)に分注し、Innova 2000ローテータ(New Brunswick Scientific)で95rpmで回転し、500mLのNalgeneフィルターレシーバー貯蔵容器(150mL/容器)に分注し、Sartorius Certomat RM-50ローテータ(5cmの回転軸で構成)で65rpmで回転した。細胞を37℃/8%CO2インキュベーターで一晩回転し、約100~200μmの凝集体を形成した。100~200μmの凝集体の直径について、6ウェルの皿の回転速度は60~140rpm、500mLの容器の回転速度は5~20rpmにして使用することができる。懸濁液凝集体の分化は、D’Amourからいくつか修正した。ステージ2の最中にTGF-βRIキナーゼ阻害剤IVを含み、ステージ3の最中に、レチノイン酸をより安定したレチノイド類似体、TTNPB(3nM)に交換した。増殖因子KGF(50ng/mL)及びEGF(50ng/mL)をステージ4に加えて、細胞質量を保持した。ノギン(50ng/mL)もステージ4で加えた。
【0064】
一実施形態において、移植細胞は、Agulnick等、Insulin-Producing Endocrine Cells Differentiated In Vitro From Human Embryonic Stem Cells Function in Macroencapsulation Devices In Vivo Stem Cells Translationalmedicine 4:1-9(2015)、参照によりその全体が本明細書に援用される、に記載の細胞と実質的に同様である。Agulnick等は、膵臓前駆細胞を作製し、細胞集団の73%~80%がPDX1陽性(PDX1+)及びNKX6.1+膵臓前駆体から構成されるように、修正したプロトコルを記載している。膵臓前駆細胞は、73%~89%の内分泌細胞を再現性よく含み、その約40%~50%がインスリンを発現する膵島様細胞(IC)にさらに分化した。これらのインスリン陽性細胞の大きい画分は、1つのホルモン陽性であり、転写因子PDX1及びNKX6.1を発現した。我々は、膵臓前駆細胞を作製し、細胞集団の73%~80%がPDX1陽性(PDX1+)及びNKX6.1+PPから構成されるように、プロトコルを修正した。PPは、73%~89%の内分泌細胞を再現性よく含み、その約40%~50%がインスリンを発現する膵島様細胞(IC)にさらに分化した。これらのインスリン陽性細胞の大きい画分は、1つのホルモン陽性であり、転写因子PDX1及びNKX6.1を発現した。Agulnick等は、追加的に、ステージ3(5~7日)でアクチビンA、Wnt3A及びヘレグリンβ1で処理し、ステージ4(7~13日)でアクチビンAとヘレグリンβ1で処理することによってSchulz等、2012のプロトコルを修正したプロトコルを記載している。
【0065】
多能性幹細胞に由来する様々な細胞組成物が本明細書に記載され、以下の米国特許出願に見つけることができる。米国特許出願第第10/486,408号、明細書名「METHODS FOR CULTURE OF HESC ON FEEDER CELLS」、2002年8月6日出願;第11/021,618号、明細書名「DEFINITIVE ENDODERM」、2004年12月23日出願;第11/115,868号、明細書名「PDX1 EXPRESSING ENDODERM」、2005年4月26
日出願;第11/165,305号、明細書名「METHODS FOR IDENTIFYING FACTORS FOR DIFFERENTIATING DEFINITIVE ENDODERM」、2005年6月23日出願;第11/573,662号、明細書名「METHODS FOR INCREASING DEFINITIVE ENDODERM DIFFERENTIATION OF PLURIPOTENT HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS WITH PI-3 KINASE INHIBITORS」、2005年8月15日出願;第12/729, 084号、明細書名「PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM」2005年10月27日出願;第12/093,590号、明細書名「MARKERS OF DEFINITIVE ENDODERM」、2005年11月14日出願;第11/993,399号、明細書名「EMBRYONIC STEM CELL CULTURE COMPOSITIONS AND
METHODS OF USE THEREOF」2006年6月20日出願;第11/588,693号、明細書名「PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERM」2006年10月27日出願;第11/681,687号、明細書名「ENDOCRINE PROGENITOR/PRECURSOR CELLS, PANCREATIC HORMONE-EXPRESSING CELLS AND METHODS OF PRODUCTION」2007年3月2日出願;第11/807,223号、明細書名「METHODS FOR
CULTURE AND PRODUCTION OF SINGLE CELL POPULATIONS OF HESC」2007年5月24日出願;第11/773,944号、明細書名「METHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMONES」2007年7月5日出願;第11/860,494号、明細書名「METHODS FOR INCREASING DEFINITIVE ENDODERM PRODUCTION」2007年9月24日出願;第12/099,759号、明細書名「METHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMONES」2008年4月8日出願;第12/107,020号、明細書名「METHODS FOR PURIFYING ENDODERM AND PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVED FORM HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS、2008年4月21日出願;第12/618,659号、明細書名「ENCAPSULATION OF PANCREATIC LINEAGE CELLS DERIVED FROM HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLS」2009年11月13日出願;第12/765,714号及び第13/761,078号、両出願とも明細書名「CELL COMPOSITIONS FROM DEDIFFERENTIATED REPROGRAMMED CELLS」2010年4月22日出願、及び2013年2月6日出願;第11/838,054号、明細書名「COMPOSITIONS AND METHODS USEFUL FOR CULTURING DIFFERENTIABLE CELLS」、2007年8月13日出願;第12/264,760号、明細書名「STEM CELL AGGREGATE SUSPENSION COMPOSITIONS AND METHODS OF DIFFERENTIATION THEREOF」2008年11月4日出願;第13/259,15号、明細書名「SMALL MOLECULES SUPPORTING PLURIPOTENT CELL GROWTH」、2010年4月27日出願;PCT/US11/25628号、明細書名「LOADING SYSTEM
FOR AN ENCAPSULATION DEVICE」、2011年2月21日出願;第13/992,931号、明細書名「AGENTS AND METHODS FOR INHIBITING PLURIPOTENT STEM CELLS、2010年12月28日出願;米国意匠特許出願第29/408,366号、2011年12月12日出願;第29/408,368号、2011年12月12日出願;第29/423,365号、2012年5月31日出願;及び第29/447,944号、2013年
3月13日出願;米国特許出願第14/201,630号、明細書名「3-DIMENSIONAL LARGE CAPACITY CELL ENCAPSULATION DEVICE ASSEMBLY」2014年3月7日出願;及び米国特許出願第14/106,330号、明細書名「IN VITRO DIFFERENTIATION OF PLURIPOTENT STEM CELLS TO PANCREATIC ENDODERM CELLS(PEC) AND ENDOCRINE CELLS」2013年12月13日出願、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0066】
多能性幹細胞に由来する様々な細胞組成物が本明細書に記載され、排他的権利を有する以下の特許出願に見つけることができる。米国特許出願第2009/0269845号、明細書名「Pluripotent cells」、2008年4月24日出願;米国特許出願第2011/0014703号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells」2010年7月20日出願;米国特許出願第2011/0014702号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells」2010年7月19日出願;米国特許出願第2011/0151561号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells」2010年12月16日出願;米国特許出願第2010/0112692号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells」、2009年10月22日出願;米国特許出願第2012/0052576号、明細書名「Differentiation of Pluripotent Stem Cells、2011年8月17日出願;米国特許出願第2010/0112693号、明細書名「Differentiation of human pluripotent stem cells」2009年10月23日出願;米国特許出願第2011/0151560号、明細書名「Differentiation of human embryonic stem cells」、2010年12月16日出願;米国特許出願第2010/0015100号、明細書名「Differentiation of
human embryonic stem cells」、2008年7月31日出願;米国特許出願第2009/0170198号、明細書名「Differentiation of human embryonic stem cells」、2008年11月25日出願;米国特許出願第2015/0329828号、明細書名「Use of Small Molecules to Enhance Mafa Expression in Pancreatic Endocrine Cells」、2015年5月7日出願;米国特許出願第2013/0330823号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells into Pancreatic Endocrine Cells」、2013年6月6日出願;国際特許出願第WO 2013/192005号、明細書名「Differentiation of human embryonic stem cells into pancreatic endocrine cells」2013年6月13日出願;米国特許出願第2014/0242693号、明細書名「Suspension
and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocrine cells」、2013年12月30日出願;米国特許出願第米国特許出願第2014/0295552号、明細書名「Suspension and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocrine cells」、2014年6月17日出願;国際特許出願第WO 2015/065524号、明細書名「Suspension and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocr
ine cells」、2014年5月21日出願;米国特許出願第2013/0330823号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic Stem Cells into Pancreatic Endocrine Cells」2013年6月6日出願;米国特許出願第2014/0186953号、明細書名「Differentiation of Human Embryonic
Stem Cells Into Pancreatic Endocrine Cells Using HB9 Regulators」2013年12月18日出願;米国特許出願第14/963730号、2015年12月9日出願;米国特許出願第14/898,015号、2015年12月11日出願、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0067】
一実施形態において、移植細胞は、生体適合性ポリエチレングリコール(PEG)を使用してカプセル化される。PEGベースのカプセル化については以下の特許出願に記載されている。米国特許出願第7,427,415号、明細書名「IMPLANTATION
OF ENCAPSULATED BIOLOGICAL MATERIALS FOR TREATING DISEASES」;米国特許出願第6,911,227号、明細書名「GELS FOR ENCAPSULATION OF BIOLOGICAL
MATERIALS」;米国特許出願第6,911,227号、第5,529,914号、第5,801,033号、第6,258,870号、明細書名「GELS FOR ENCAPSULATION OF BIOLOGICAL MATERIALS」、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0068】
別の実施形態において、送達装置はTheraCyte(以前はBaxter)device(Irvine、Calif.)である。TheraCyte細胞送達装置は、米国特許出願第6,773,458号;第6,156,305号;第6,060,640号;第5,964,804号;第5,964,261号;第5,882,354号;第5,807,406号;第5,800,529号;第5,782,912号;第5,741,330号;第5,733,336号;第5,713,888号;第5,653,756号;第5,593,440号;第5,569,462号;第5,549,675号;第5,545,223;号第5,453,278号;第5,421,923号;第5,344,454号;第5,314,471号;第5,324,518号;第5,219,361号;第5,100,392号;及び第5,011,494号、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0069】
別の実施形態において、送達装置は、米国特許出願第8,278,106号、米国特許出願第14/201,630号、2014年3月7日出願、米国意匠特許出願第 29/447,944号、第29/509,102号、第29/484,363号、第29/484,360号、第29/484,359号、第29/484,357号、第29/484,356号、第29/484,355号、第29/484,362号、第29/484,358号、第29/408,366号、第29/517,319号、第29/408,368号、第29/518,513号、第29/518,516号、第29/408,370号、第29/517,144号、第29/423,365号、第29/530,325号に実質的に記載され、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0070】
本明細書に記載の細胞送達装置の実施形態は、移植細胞が血中グルコースに応答してインスリンを生成することができる限り、特定のサイズ、形状、デザイン、容積容量及び/又は細胞送達装置を作製するために使用される材料に限定されることを意図していない。
【0071】
細胞送達装置のコア(細胞チャンバー又は管腔とも呼ばれる)の移植片又は細胞は、ハイドロゲル又は細胞外マトリックス成分等の固定マトリックスに固定され得る。さらに、
細胞送達装置のコアは、挿入部を含んで、コアの中心に「無細胞」領域を作製することができ、装置の中心で細胞の壊死性コアが発生する可能性がさらに減少する。
【0072】
細胞送達装置は、生物学的活性を維持し、産物又は機能を送達するためのアクセスを提供するのに適した構造を有し、例えば、円柱状、長方形、ディスク形状、パッチ形状、卵形、星状、又は球状を含む。さらに細胞送達装置は、メッシュ様又は入れ子構造に巻きつき、管状、又は包むことができる。細胞送達装置が、移植後にいつか回収される場合、(球状の装置は、レシーバーの血管を移動するには小さすぎるというように)細胞送達装置が移植部位から移動することを招く傾向にある構造は避けるべきである。本発明の実施形態は、高い構造統合性を提供し、宿主から容易に回収される形状を含む。このような形状として、長方形パッチ、ディスク、円柱、及び平坦なシートが挙げられる。
【0073】
その他の実施形態において、細胞送達装置又は大容量の組立体は、細胞送達装置の管腔をさらに分ける1つ又は2つ以上のシール、すなわち、パーティションシールから構成される。例えば、米国意匠特許出願第29/408366号、29/408368号、29/408370号及び29/423,365号を参照のこと。
【0074】
細胞送達装置は、皮下に移植され得るが、腹腔内又は腹腔壁、筋肉内部位、腹部脂肪パッド、又は別の適切な場所等のその他の位置に移植され得る。あるいは、開示の細胞送達装置は、網又はその他の適切な部位を含む宿主の身体の管腔に部分的に移植され、皮下環境に延在し得る。一実施形態において、細胞は、装置の残りが腹腔内環境にありながら、皮下環境に延在する装置の部分に添加され得る。別の実施形態において、細胞送達装置は、脳、脊髄領域又は移植細胞から治療効果を引き出すのに必要とされるその他の臓器に移植されてもよい。多くの例では、宿主はヒトであるが、別の哺乳類動物又は非哺乳類動物であってもよい。
【0075】
拡張装置:一実施形態において、細胞送達装置又は拡張可能な大容量の組立体を提供する。
【0076】
詰め替え用装置:移植された細胞送達装置の内部で細胞を交換することは、細胞送達装置から細胞を取り除き、次に治療薬又は細胞をリザーバー、チャンバー、管腔、容器又は移植された細胞送達装置のコンパートメントに、例えば、皮下に直接注入することによって達成することができる。細胞/治療薬の注入は、ポートに挿入されたシリンジを使用して達成することができる。
【0077】
あるいは、別の実施形態において、本明細書で提供する装置又は組立体は、入口又は出口のポートを含まず、装置は、いわゆるポートレスであり、細胞は、移植部位に移植される前に、送達装置に添加される。
【0078】
マルチチャンバーモジュラー装置
一実施形態において、移植細胞は、大容量組立体又は大容量装置とも呼ばれるマクロ細胞カプセル化装置/送達装置に送達される。本明細書で使用する場合、「大容量組立体」又は「大容量装置」は、多数又は複数の細胞チャンバーから構成される細胞カプセル封入装置を指す。一実施形態において、大容量組立体は、少なくとも1、2、4、5、6、7、8、9又は10個以上の細胞チャンバーから構成される。別の実施形態において、大容量組立体は、大容量組立体がいくつかの細胞チャンバー(又はモジュラーユニット)から構成されるように作製される。例えば、モジュラーユニットは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個以上の細胞チャンバーから構成され得、米国特許出願第8,278,106号、参照によりその全体が本明細書に援用される、に記載の疾患の治療に必要とされる細胞の数又は用量に依存し得る。送達装置のチャンバーの数は、移植される細胞の
容量及び/又は数に基づいて決定される。
【0079】
3次元大容量装置:一実施形態において、無細胞領域によって相互接続される複数又は多数の細胞チャンバーを含む細胞送達装置又は大容量組立体が提供され、例えば、2014年3月7日に出願された米国特許出願第14/201,630号に記載のように折りたたまれ、曲げられる。一実施形態において、大容量組立体は、少なくとも2つの細胞チャンバー並びに折りたたまれた、折りたたまれていない少なくとも2つの構成を含み、折りたたまれた構成は、折りたたまれていない構成より小さいフットプリントを有する。したがって、本明細書で使用する場合、「細胞カプセル化装置」又は「細胞送達装置」という用語は、1つの細胞チャンバーから成る1つの装置、又は米国特許出願第8,278,106号及び2014年3月7日に出願された米国特許出願第14/201,630号、参照によりその全体が本明細書に援用される、に記載の3次元装置又は装置組立体における大容量装置又は複数の細胞チャンバーのように、複数の細胞チャンバーから成る1つの装置を意味することができる。したがって、細胞送達装置、大容量組立体及び3次元装置は同義に使用することができる。
【0080】
様々な細胞送達装置の構成
細胞送達装置は、それぞれが1つ又は複数の機能を提供する様々な層を含む。いくつかの実施形態において、細胞送達装置は、細胞除外膜と不織布の両方を含む。
【0081】
細胞除外膜:この層は、T細胞等の免疫系の細胞成分が装置に入ってくるのを抑制する。この層は、治療細胞が装置から出ていくのを防ぐ役割もある。この層は、目的のカプセルに包まれた生物活性物質(インスリン、グルカゴン、膵臓ポリペプチド等)が通過するのを可能にし、細胞送達装置の外側及び患者の体内で活性物質を標的細胞に対して使用可能にする。この層は、理想的に宿主に自然に存在する栄養が膜を通過して、必須栄養素がカプセルに包まれた細胞に提供される。細胞除外膜は、米国特許出願第6,773,458号;6,520,997号;6,156,305号;6,060,640号;5,964,804号;5,964,261号;5,882,354号;5,807,406号;5,800,529号;5,782,912号;5,741,330号;5,733,336号;5,713,888号;5,653,756号;5,593,440号;5,569,462号;5,549,675号;5,545,223号;5,453,278号;5,421,923号;5,344,454号;5,314,471号;5,324,518号;5,219,361号;5,100,392号;及び5,011,494号、参照によりその全体が本明細書に援用される、を含むBaxterによって前述した特許を含む技術に記載されている。いくつかの実施形態において、この層は穿孔している。
【0082】
膜:いくつかの実施形態において、細胞送達装置は、膜層、膜リング又は膜溶接部を含む。膜は、少なくとも2つ以上の層を一緒に接着し、又は結合することを助ける溶接部にのみ存在する結合又は接着層である。いくつかの実施形態において、膜は、不織布(以下参照)の内面(チャンバー面)にのみ存在して、固定するのを抑制する外面(宿主面)にある場合はその膜が形成する平滑面を取り除く。いくつかの実施形態において、膜は、細胞除外膜の内面(チャンバー面)に存在する。膜はチャンバーの一部ではなく、溶接部に置かれる。
【0083】
メッシュ:織りメッシュは、それぞれの装置に構造的剛性を提供し、保護性外骨格として提供することによって、細胞除外膜を保護する。いくつかの実施形態において、不織メッシュは、装置の構成に含まれない。装置の設計から織りメッシュを含まないことから生じる剛性の欠如に対処するために、装置の外側に不織布及び/又は不織布のリングの二重層を使用することができる。
【0084】
不織布:移植後に宿主にうまく統合される細胞カプセル化装置を提供する。このために、装置-宿主インターフェースにおいて、生物付着を減少させる(reducing)こと、抑制すること、減少させる(decreasing)ことは装置の統合に欠かせない。一実施形態において、不織布を使用して、構造的統合性を提供するとともに、血管新生を増加させ、生物付着を減少又は抑制することができるかどうかを調査する。一実施形態において、不織布は、細胞除外膜が織りメッシュに直接接触することを防ぎ、宿主に固定する装置又は装置の統合のために追加の材料を提供する。織りの堅固さ及びシートの厚みを変えた多くの種類の不織布がある。一実施形態において、フィラメント断面は三葉である。不織布は、結合した布、形成された布、又は加工された布であり得、織り又は編み以外の工程によって製造される。いくつかの実施形態において、織布、シート又はバットに作製されたステープル繊維等の繊維から主に又は全体的に構成された通常は平坦なシート形状の多孔性テキスタイル様材料である。不織布の構造は、例えば、一般的に多かれ少なかれランダムに配置されたステープル繊維の配列に基づいている。
【0085】
不織布は、テキスタイル業界で周知の様々な技術によって作製することができる。様々な方法によって、カード処理、湿式、メルトブローン、スパンボンド又はエアレイド不織布が作製され得る。例示的な方法及び基質は、米国特許出願第2010/0151575号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に援用される。一実施形態において、不織布はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。一実施形態において、不織布は、スパンボンドポリエステルである。
【0086】
不織布の密度は、加工条件に応じて変化し得る。一実施形態において、不織布は、基本重量が約0.40~約1.00(oz/yd2)、公称厚みが約127~約228μm、繊維径が約0.5~約26μmであるスパンボンドポリエステルである。一実施形態において、フィラメント断面は三葉である。いくつかの実施形態において、不織布は生体適合性及び/又は生体吸収性である。
【0087】
歴史的に、細胞送達装置は、治療用細胞の封じ込めのための細胞除外膜、溶接のための膜、及び/又は織りメッシュ(EN-A構成)を含む単純な構成を有する。
【0088】
図1A~Dは、細胞送達装置の特定の実施形態の分解図である。図にはEN20が図示され、無孔形態で、成熟時に移植細胞の約20μlを支持する能力を有する薬物送達装置の省略表現である。
図1A~Dに示すように、装置は、追加の様々な層のメッシュ、膜(film)、膜(membrane)及び不織布を有することができる。それぞれの構造が材料の堆積として作製され、密封された「サンドイッチ」のように製造されている。
【0089】
以下の表1は細胞送達装置の構成を記載している。装置のそれぞれの壁は、層によって必要とされ、付与される機能に応じて、同一の数の層及び材料の種類、又は異なる数及び種類の層から構成され得る。装置のチャンバー又は筐体は、周辺を溶接し、又は結合することで作製され、チャンバーの追加は、ポートチュービングによって達成される。表1の第1列及び下列は、移植時に宿主に曝される又は接触すると思われる層である。
【0090】
【0091】
例えば、
図1A:装置(EN20B1)は、不織布リング51、膜リング52、不織布の2つの層が細胞除外膜(53)に対して熱積層のように積層する膜層を有し、不織布層は、宿主に対して外側を向いており、細胞除外膜層は、周辺又は溶接部において、チャンバー又は移植細胞、及び膜リング(54)に対して内側を向いている。このパターンはその他の装置壁について繰り返される。装置の反対側は、不織布リング58、膜リング57、不織布の2つの層は、細胞除外膜(56)に対して熱積層のように積層する膜層を有し、不織布層は、宿主に対して外側を向いており、細胞除外膜層は、チャンバー又は移植細胞に対して内側を向いている。前述のように、周辺又は溶接部に膜リング(55)がある。すなわち、チャンバーの2つの側又は壁は、互いに鏡像イメージであり、間に細胞を添加するためのポート(85)が、治療薬が存在する管腔(86)を形成する。
図1Aを参照のこと。この実施形態において、メッシュ層は含まれない。いくつかの実施形態において、不織布リングより、(
図1A、1B、51及び59と比較すると)送達装置の全表面が不織布に覆われている。
【0092】
図1Bは、不織布層(59)、膜リング(60)、メッシュ層(61)、不織布層が、周辺及び溶接部で、膜(62)及び膜リング(63)に対して熱積層のように積層される細胞除外膜層を有する送達装置(EN20B2)を示す一実施形態である。チャンバーの2つの側面又は壁は、互いに鏡像イメージであり、間に細胞を添加するためのポート(85)が、治療薬が存在する管腔(86)を形成する。したがって、装置の反対側は、不織布層(68)、膜リング(67)、メッシュ層(66)、不織布層が、周辺及び溶接部で、膜(65)及び膜リング(64)に対して熱積層のように積層される細胞除外膜層を含む。
図1Aと同様に、チャンバーの2つの側は互いに鏡像イメージである。
【0093】
図1Cは、メッシュ層(69)、膜リング(70)、不織布層が、周辺及び溶接部で、膜(71)及び膜リング(72)に対して熱積層のように積層される細胞除外膜層を有する送達装置(EN20B3)を示す一実施形態である。したがって、別のメッシュ層(76)、膜リング(75)、不織布が膜(74)及び膜リング(73)に対して熱積層のように積層される細胞除外膜層が示される。チャンバーの2つの側面又は壁は、互いに鏡像イメージであり、間に細胞を添加するためのポート(85)が、治療薬が存在する管腔(
86)を形成する。
図1A~Bと同様に、チャンバーの2つの側は互いに鏡像イメージである。
【0094】
図1Dは、EN20B3と同じ構造を有する送達装置(EN20B4)を示す一実施形態であるが、不織布層(79及び82)は、EN20B3の不織布層の密度と異なる密度を有する。メッシュ層(71及び84)、膜リング(78、80、81及び83)は、
図1Cに示されるそれぞれの要素と類似している。
【0095】
一実施形態において、不織布及び細胞除外膜は、熱積層又は熱プレス(例えば、Plastic Assembly Systems製のARB Arbor Press)を使用して、積層することができる。プレスは、約305~320°Fまで加熱される。0~6PSIの圧力が、3フィート/分又は10フィート/分の速度で不織布及び膜に加えられる。しかしながら、不織布及び細胞除外膜は積層する必要はない。
【0096】
一実施形態において、不織布層は、宿主に対して外側を向いており、細胞除外膜層は、チャンバー又は移植細胞に対して内側を向いているが、当業者は、例えば、不織布層がチャンバー又は移植細胞に対して内側を向いており、細胞除外膜層が宿主に対して外側を向いているといった本開示を使用して、異なる構造を想像することができる。いくつかの実施形態において、ポリエステル不織布は、細胞除外膜の外側にあり、膜に積層されている。
【0097】
いくつかの実施形態において、細胞除外膜及び/又は不織布は、一緒に積層され、穿孔される。いくつかの実施形態において、細胞除外膜は、最初に穿孔され、不織布に積層される。いくつかの実施形態において、不織布が穿孔され、細胞除外膜に積層される。細胞除外膜が穿孔される場合、哺乳類動物宿主は、免疫無防備状態であるか、免疫抑制薬で治療される。
【0098】
図1A~Dに示す細胞送達装置に使用される不織布は、実質的に平坦であるが、さらに操作されて厚みを提供し得る。例えば、不織布は、プリーツされ、輪郭付けられ、又は打ち出されてもよい。さらに、パイルを有する布、メリヤス、カーペットの製造のようにタフティングを使用して、パイル及びその他の3次元構造を有する布を作製してもよい。例えば、米国特許第7,754,937号を参照のこと、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0099】
本明細書で考えられている装置は、多くの異なる構成、及び治療薬を保持する異なる容量を有し得る。ENCAPTRA EN20又はEN20装置又は小さい送達装置は、約20μlの機能容積を有する装置を指し、マウスの1kgあたり約2,500~3,500IEQ又は80,000IEQ超のベータ細胞の質量を含み得る。ENCAPTRA EN250、EN250若しくはEN250装置又は大きい送達装置は、約250μLの機能容積を有し、EN20装置より約12.5倍(12.5X)大きく、マウスの1kgあたり最大約30,000~45,000IEQを含み得る。ENCAPTRA EN100、EN100又はEN100装置は、約100μLの機能容積を有し、EN20装置より約6.5倍(6.5X)大きく、マウスの1kgあたり最大約16,250~22,750IEQを含み得る。EN大容量又はEN-LC装置は、EN20より約48.4倍(48.4X)大きい。4つの細胞チャンバーを含むEN-LC装置は、最大約121,000~169,400IEQを含み得る。したがって、患者に治療有効量を送達するために、充分なPEC量を送達するのに、少なくとも約4、約5、約6、約7、約8機のEN250装置又は約2機のEN-LC装置が必要である。
【0100】
投与能力を高めるために装置のサイズを大きくする他に、装置を穿孔することも投与能
力を高める。有孔EN20装置は、無孔EN20装置より(成熟時に達成されるベータ細胞の質量を意味する)約5倍の投与能力を有する。記載の有孔装置の別の投与方法は、インタクトな装置の約5分の1である。
【0101】
有孔細胞送達装置
移植後に短期間に血管新生を促進するために、宿主の脈管構造とカプセルに包まれた細胞の直接的な細胞間接触を提供する有孔細胞送達装置に細胞を移植する。いくつかの実施形態において、装置の層が全て穿孔されているわけではない。例えば、有孔細胞送達装置は、1つの層、例えば細胞除外膜、又は細胞除外膜及び不織布層に穿孔を提供する。これは、移植細胞/組織を保持し、同時に脈管構造及びマクロファージ等の進入といった宿主との交換を可能にする。
【0102】
穿孔をレーザー穴あけ加工することによって、穿孔のサイズ、数及び位置を選択することができる。宿主の維管束組織(毛細血管等)及び膵臓細胞種を支持する間質細胞が装置の管腔に入ることができる充分な大きさである。一実施形態において、穿孔の大きさは、宿主マクロファージ及びその他の貪食細胞が装置に入り、有孔装置の管腔から壊死性残屑を取り除くこともできるように定められる。一実施形態において、有孔の大きさは、移植片によって産生されるインスリン等の治療薬が、細胞送達装置から出ることができるようにも定められる。血管構造が装置の管腔で成長することができる穿孔は、装置を宿主に固定し、装置の移動を抑制することを助ける。一実施形態において、有孔の大きさは細胞保持を最大にする細胞凝集体の直径に基づいても定められる。
【0103】
いくつかの実施形態において、装置は、宿主に移植し、宿主に免疫学的に適合性又は非適合性であり得る治療薬を実質的に含むように適合した生体適合性材料から作製される細胞筐体を含み、チャンバーは、細胞除外膜及び任意にメッシュ層及び膜溶接部を有し、壁は、細胞除外膜を通過する孔を有し、孔は宿主の毛細血管が壁の厚みを通過することができる充分な大きさの最も狭い点に内径を有し、孔の数は、宿主の毛細血管がそこに含まれ得る治療薬の生存能を支持するのに充分である。
【0104】
一実施形態において、送達装置の1つ以上の層が穿孔している有孔送達装置を提供する。一実施形態において、送達装置の1つ以上の層が穿孔していない有孔送達装置を提供する。一実施形態において、細胞除外膜だけが穿孔される。一実施形態において、装置のそれぞれの壁を通過しない孔を含む細胞送達装置を提供する。一実施形態において、細胞送達装置の穿孔は、装置のそれぞれの壁を通過しないが、細胞送達装置の管腔内面に宿主の脈管構造がまだ成長する孔から構成される。一実施形態において、不織布を含まない細胞送達装置を開示する。一実施形態において、不織布を含まないが、細胞除外膜が穿孔される細胞送達装置を開示する。このような実施形態において、細胞除外膜の孔の直径は、細胞を維持するために使用され、すなわち装置の孔は、そこに含まれる細胞凝集体より小さい。
【0105】
一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、PDX1/NKX6.1 co-positive膵臓前駆細胞から構成される。一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、インスリン(INS)及びNKX6.1を発現する未成熟のベータ細胞又はINS、NKX6.1及びMAFBを発現する未成熟のベータ細胞から構成される。一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、INSとMAFA、又はINS、NKX6.1とMAFAを発現する成熟したベータ細胞から構成される。一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、膵臓内分泌細胞から構成される。一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、膵臓インスリン分泌細胞から構成される。一実施形態において、有孔送達装置の細胞は、血中グルコースレベルに応答して、インスリンを分泌することができる膵臓ベータ又はインスリン細胞から構成される。
【0106】
不織布によって囲まれた有孔装置
これらの実施形態において、不織布は、細胞送達装置の外側にある。移植細胞に影響するというよりも、不織布は、細胞筐体を取り囲む宿主血管新生を高める。
【0107】
一実施形態において、不織布を含む細胞送達装置を開示する。一実施形態において、ポリエステル不織布(NWPF)を含む細胞送達装置を開示する。ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリアミドは、使用することができるポリエステル不織布のいくつかの例である。一実施形態において、細胞除外膜は、不織布で取り囲まれ(又は被覆されている)、すなわち、不織布は細胞除外膜に対して外側である。別の方法として、不織布は、移植細胞ではなく宿主に面している。一実施形態において、不織布は、細胞除外膜の周りにジャケットを形成する。一実施形態において、細胞除外膜だけが穿孔され、不織布を含む装置の外層は穿孔されていない。一実施形態において、細胞除外膜及び不織布は穿孔されており、装置のその他の層は穿孔されていない。
【0108】
一実施形態において、孔は装置に含まれるhPSC由来凝集体等の細胞凝集体、例えば、そこに含まれる胚体内胚葉系細胞凝集体より小さい。一実施形態において、孔は、そこに含まれるPDX1陽性膵臓内胚葉細胞凝集体より小さい。一実施形態において、孔は、そこに含まれる膵臓前駆細胞凝集体より小さい。一実施形態において、孔は、そこに含まれる内分泌細胞凝集体より小さい。一実施形態において、孔は、そこに含まれる成熟したベータ細胞凝集体より小さい。
【0109】
一実施形態において、孔の直径は、細胞を保持するのに充分小さいが、治療効果が確実に達成されるほど充分に大きい。例えば、糖尿病患者の場合、孔の直径は、移植細胞が血中グルコースレベルに応答してインスリンを成熟させ、及び/又は産生する能力によって決定される。
【0110】
一実施形態において、有孔細胞送達装置は、ラット又はヒトに移植される。一実施形態において、ラット又はヒトに移植される有孔細胞送達装置は、細胞除外膜及びポリエステル不織布に孔を含み(装置のその他の層は穿孔されていない)、孔は、(孔の中心から中心を測定して)約2mm以上の離れており、孔の直径は、100ミクロン未満である。一実施形態において、ラット又はヒトに移植される有孔細胞送達装置は、細胞除外膜及びポリエステル不織布に孔を含み(装置のその他の層は穿孔されていない)、孔は、約2mm以上離れている。一実施形態において、ラット又はヒトに移植される有孔細胞送達装置は、細胞除外膜及びポリエステル不織布に孔を含み(装置のその他の層は穿孔されていない)、孔の直径は、約100ミクロン未満である。
【0111】
一実施形態において、ラット又はヒトに移植される有孔細胞送達装置は、細胞除外膜に孔を含み(装置のその他の層は穿孔されていない)、孔は、約2mm以上の離れており、孔の直径は、約100ミクロン未満である。
【0112】
一実施形態において、細胞送達装置は、有孔の細胞除外膜及びPDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含み、ヒト患者に移植することができ、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞はin vivoでインスリン産生細胞に成熟する。一実施形態において、細胞送達装置は、有孔の細胞除外膜、有孔のNWF層及びPDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含み、細胞送達装置は、ヒト患者に移植することができ、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞はin vivoでインスリン産生細胞に成熟する。
【0113】
積層された装置
一実施形態において、細胞除外膜は不織布に積層される。一実施形態において、細胞除
外膜はNWFに積層される。細胞除外膜が不織布に積層される場合、細胞除外膜は平坦なままである。積層しない場合、細胞除外膜は、不均一な細胞分布になり得るダムを作製する平面から変形する可能性がある。不均一な細胞分布は、壊死領域を誘導し、細胞死等が有効性を低下し得る。細胞送達装置のチャンバー又は管腔の内部の細胞分布を制御することは、細胞送達装置内の細胞の空間的位置としても示される。一実施形態において、細胞送達装置内の細胞分布(細胞の位置)を制御する方法は、細胞除外膜を不織布に積層することを含む。一実施形態において、細胞送達装置内の細胞分布(細胞の位置)を制御する方法は、細胞除外膜をNWFに積層することを含む。
【0114】
細胞を細胞送達装置の管腔の内部に均一に分布することを達成することによって、移植する必要のある細胞が少なくなる。少ない数の細胞を使用することで、細胞の残骸が少なくなる。細胞が均一に分布され、膜により近く接触するため、栄養物を細胞に拡散増大するという別の利益がある。栄養物の細胞への拡散増大は、細胞生存率の改善につながる。
【0115】
装置に積層した膜が組み込まれるにつれて、管腔を完全に満たすことができ、移植細胞の治療有効性が最大になる。積層した膜を組み込んでいる装置でより長く大きい管腔を満たすことができる。
【0116】
有孔積層装置
穿孔は、穴、孔、開口(opening)、穿刺、開口部(aperture)又はチャンネルとも呼ばれる。
【0117】
前述の装置は非限定的な開示であり、本明細書に記載の実施形態を踏まえたその他の装置は、本開示により体現される。本開示は、前述の装置の組み合わせを考慮している。例えば、一実施形態において、細胞除外膜及び不織布は、一緒に積層され、穿孔される。一実施形態において、有孔細胞除外膜及び無孔NWF不織布は一緒に積層される。
【0118】
治療用細胞を添加した有孔装置の潜在的な治療価値は、1型糖尿病(T1D)の集団に大きな価値を有し、慢性免疫抑制薬の副作用は、許容され、又は免疫抑制薬は、すでに以前の臓器移植(例えば腎移植)によって必要とされている。重要なこととして、多能性幹細胞に由来する治療用細胞は、死亡した臓器ドナーの使用に関係する限界を克服し、その限界とは主に、(1)要望に適した死体からの膵島の供給が非常に限定され、(2)提供された臓器に関する患者のリスク(例えば、移植前に提供された組織を検査する能力が限定されたドナー由来の病原)である。さらに、送達装置及び投与の皮下移植経路は、現在の臨床の膵島移植を上回るいくつかの利点を提供し、利点として、移植部位の非侵襲的モニタリング及び撮像能力、移植片及び外植片/生検の手術の容易性、及び門脈血栓症事象の排除が挙げられる。確かに、膵島移植領域は、門脈内移植部位の代わりを長い間求めてきた。Cantarelli等、Alternative transplantation sites for pancreatic islet grafts Curr Diab Rep.2011 Oct;11(5):364-74を参照のこと。
【0119】
望ましい装置の穿孔幾何形状を決定するために、孔の直径、量及び分布を特徴化した。
図2A~Dはそれぞれ、特定の孔の密度を有する装置を記述する実施形態である。図に示される孔の形状及びサイズは均一であるが、i)孔のサイズ又は形状は均一である必要はない、ii)装置の両側の孔は、装置を組み立てたときに整列している(規則正しい列にある)必要はない、iii)各装置の孔の数又は密度は、僅少であってもよく、直接的な宿主と移植片の細胞間接触及び血管新生を促進する、iv)孔の直径はそこにカプセルに包まれた細胞又は組織、例えば、細胞クラスター又は凝集体のサイズに依存するが、カプセルに包まれた細胞は穿孔を通じて装置から漏れるとは限らず、むしろ装置の外側の移植細胞に比べて、装置の内側により多くの宿主由来細胞が存在する、並びにv)細胞除外膜
及び不織布の孔は、装置を組み立てたときに整列している必要はなく、装置のチャンバーの外側から内側まで不規則な経路を形成していてもよい。さらに装置が卵形のように示されるが、装置の形状は、円形、長方形、正方形、三角形の何れの形状であってもよい。
【0120】
一実施形態において、穿孔は、円形又は卵形又は楕円形である。穿孔は、長方形、6角形、多角形又はスリット等のその他の形状を有してもよいことに留意するべきである。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有する。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有しない。一実施形態において、穿孔は、細胞除外膜に均一に分布される。一実施形態において、穿孔は、細胞除外膜の上で様々な間隔で存在し、例えば、装置の中央又は装置の端でクラスター形成され得る。一実施形態において、複数の穿孔は、一連の行と列で離れており、グリッド配列、同心円、その他の幾何学的構成又は構成の組み合わせを形成する。一実施形態において、複数の穿孔はランダムに分布される。一実施形態において、穿孔は、それぞれの細胞除外膜に存在するのでなく、装置の一方の側だけに存在する。
【0121】
一実施形態において、細胞送達装置は、細胞除外膜だけが穿孔される層を含む。一実施形態において、細胞送達装置は、膜リング、メッシュ及び細胞除外膜を含み、細胞除外膜だけが穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、膜リング、メッシュ、不織布及び細胞除外膜を含み、細胞除外膜及び不織布層だけが穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、不織布及び細胞除外層を含み、細胞除外膜と不織布層のみが穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、細胞除外膜の外側に不織布を含み、細胞除外膜及び不織布層だけが穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、互いに積層された不織布及び細胞除外層を含み、細胞除外膜と不織布層のみが穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、細胞除外層の外側に不織布を含み、細胞除外膜に積層され、細胞除外膜及び不織布層のみが穿孔される。
【0122】
一実施形態において、細胞送達装置は、細胞除外膜及び不織布層のみが穿孔される層を含み、孔はレーザーで作製される。
【0123】
穿孔の直径
有孔細胞送達装置の使用は、細胞が逃げる、細胞がより少なくなる、腫瘍形成能等の特定の欠点を有する。穿孔の開口部は、したがって、細胞除外膜がカプセルに包まれた要素を保持することができ、同時に、有孔装置の管腔及び膵臓細胞種を支持する間質細胞から壊死性残屑を除去することができる脈管構造、マクロファージ及びその他の貪食細胞の進入といった宿主との交換を可能にする。一実施形態において、穿孔は、毛細血管の内殖を可能にする直径約100μM未満である。出願人は、以前に、四分位の直径100~200μmで平均直径約180μmの膵臓前駆細胞凝集体について(Schulz等(2012)前述)、孔直径が約100μm以下であると細胞産物を実質的に保持し、前述のその他の利益を達成し、したがって、細胞の送達と回収、並びに毛細血管の内殖の両方を容易にすることを開示した。細胞は宿主組織、例えば宿主血管に暴露されるが、サイズがより大きいと、細胞が逃げるリスクが僅かになる。一実施形態において、孔は、宿主の毛細血管が内殖し、放出することができ、治療薬から生成されるホルモンが装置の管腔/チャンバーから出ていくことができる程度の大きさの内径を有する。
【0124】
孔サイズ(直径)は、細胞機能に応じて変化し得る。例えば、完全な細胞の封じ込めが必要でない場合、孔の直径と密度に対する制限は緩い。特定の装置の孔は、同じ直径を有してもよく、その装置の異なる部品の異なる直径を有してもよい。例えば、カプセルに包まれた細胞、細胞凝集体、オルガノイド、クラスター、塊、及び組織の多くが装置の中心に大方配置される傾向にある場合、少なく及び/又は小さい孔を有し得る装置の近位端及び遠位端に比べて、より多くの孔が装置の領域における細胞生存に必要となり得る。このように、宿主-移植片の細胞間血管新生が、移植後に短期間で確立される限り、穿孔のサ
イズ、密度及び分布には多くの柔軟性がある。再度、
図2A及び2Bは、有孔装置の実施形態を示す。
図2Bは、細胞プーリングの領域を少なくする二重管腔及び二重ポートを示す。
【0125】
他の実施形態において、膵臓前駆細胞凝集体は、装置の孔の平均直径より大きい。一実施形態において、細胞送達装置は、約300ミクロン未満、約200ミクロン未満、約150ミクロン未満、約100ミクロン未満、約75ミクロン未満、約60ミクロン未満、又は約50ミクロン未満の直径の孔で穿孔される。一実施形態において、細胞送達装置は、約300~50ミクロン、約200~50ミクロン、約200~75ミクロン又は約70~80μmの直径の孔で穿孔される。一実施形態において、孔径は約200ミクロンより大きい。一実施形態において、孔径は約200~400ミクロンである。
【0126】
一実施形態において、穿孔は、約40~150μmの直径を有する。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有する。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有しない。
【0127】
穿孔の密度
一実施形態において、装置の表面領域の0.4%未満が穿孔され、孔は、(孔の中心間を測定して)約2mm間隔で離れているが、2mm未満であっても2mmより大きく離れていてもよく、宿主-移植片細胞間血管新生を促進する。いくつかの実施形態において、装置の表面領域の約5.0%未満、約4.0%未満、約3.0%未満、約2.0%未満、約1.0%未満、約0.8%未満、約0.3%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満が穿孔される。いくつかの実施形態において、装置の表面領域の約5.0~0.5%、約5.0~3.5%、約4.0~2.0%が穿孔される。
【0128】
一実施形態において、細胞除外膜を高い透過性の膜に置き換えることで穿孔を避ける。例えば、膜に80~120ミクロンの孔から成る膜では、このような孔は本明細書に記載の孔と類似した密度で作製される。
【0129】
実施例1は、穿孔が比較的に少なく、細胞生存率を向上しながら、直接的な宿主の血管新生の望ましい利益を提供することを示す。移植後12及び34週のグルコース促進インシュリン(GSIS)試験(実施例1に記載)では、直径約100μm、(孔の中心間を測定して)互いに約1、1.5又は2mm離れている孔が胸腺欠損のヌードマウスにおいて機能的移植片を生成することを示す。確かに、2mm離れた最も低密度の孔であっても、直接的な血管新生及び堅調なCペプチドレベルを示した。臨床的安全性の観点から、孔が少ないほどリスクが減少し、細胞送達装置から逃げる細胞があったとしても、有孔装置の最も低密度の孔(2mm間隔)が好ましい。
【0130】
一実施形態において、細胞送達装置は、(孔の中心間を測定して)約0.5mm、1.0mm、1.5mm、2mm、4mm、8mm以上離れた孔を有する有孔細胞除外膜を含む。一実施形態において、細胞送達装置は、約0.5mm、1.0mm、1.5mm、2mm、4mm、8mm以上離れた孔を有する有孔細胞除外膜及び有孔NWF層を含む。一実施形態において、細胞送達装置は、約0.5mm、1.0mm、1.5mm、2mm、4mm、8mm以上離れた孔を有する有孔NWF層に積層された有孔細胞除外膜及び有孔NWF層を含む。一実施形態において、約0.5mm~4mm、約0.5mm~2mm、又は約1.0mm~2mm離れた孔又は穿孔から成る細胞送達装置を提供する。
【0131】
孔の数/密度は、装置につき、5~200個又は20~100個であってもよく、装置のサイズ(管腔表面領域)に部分的に依存する。確かに、孔の数/密度は、装置の管腔につき、20~50~100個であってもよい。確かに、孔の数/密度は、装置の管腔につ
き、5~200個、20~100個であってもよい。当業者は、望ましい効果を達成する孔の数/密度を決定することができる。糖尿病患者の場合、孔の数/密度は、移植細胞が血中グルコースレベルに応答してインスリンを成熟させ、及び/又は産生する能力によって決定される。
【0132】
一実施形態において、孔が約0.5mm、1.0mm、1.5mm、2mm以上離れている孔又は穿孔を含む細胞送達装置が提供され、孔径は約200ミクロン未満、約150ミクロン未満、約100ミクロン未満、又は約75ミクロン未満である。一実施形態において、孔が約2mm以上離れており、孔径が約200ミクロン未満である穿孔を含む細胞送達装置を提供する。一実施形態において、孔が約2mm以上離れており、孔径が(孔の中心間を測定して)約100ミクロン未満である孔又は穿孔を含む細胞送達装置を提供する。
【0133】
有孔細胞送達装置の製造者
技術分野で周知の製造方法を使用して、本開示の有孔装置を製造することができる。歴史的には、装置を組み立て、細胞を添加し、その後、針を使用してインタクトな装置に手動で穿孔を加えた。このように、装置の全ての層が穿孔していた。米国特許出願第12/618,659号及びPCT出願第WO/1993/002635号を参照のこと。さらに、穿孔を作製したときに細胞は装置の内側にあるために、カプセルに包まれた細胞のいくらかは穿孔するときに針の通路に存在し、針がカプセルに包まれた細胞のいくらかを傷つける可能性があった。この方法は、針が挿入されて、孔を作り、その後取り除かれるため、偶発的な汚染(装置から離れる細胞)が生じる可能性もある。
【0134】
本明細書の実施形態は、レーザーを使用して、孔のサイズ及び分布を制御し、装置の各層を穿孔せず、細胞が添加された後に装置を穿孔しない。このように、穿孔を形成することによって、細胞を傷つける、又は破壊することがなく、潜在的な汚染が減少し、細胞除外膜(又は細胞除外膜及び不織布層)が穿孔され、その他の層が移植時に送達装置のカプセルに包まれた細胞を保持することを助けることができる。
【0135】
有孔細胞送達装置は、前臨床齧歯動物モデル(通常20μLの容量)及び臨床試験のためのより大きな装置(EN250)といった多くのサイズ構成で構築することができる。有孔及び無孔細胞送達装置は同一の材料、製造技術及び厚みを使用する。
【0136】
針の代わりにレーザーを使用することによって、細胞除外膜のみが穿孔される有孔細胞送達装置の製造を開示する。いくつかの実施形態において、不織布が細胞除外膜に積層し、この2つの層のみが穿孔される。一実施形態において、装置層の孔の製造は自動化されている。
【0137】
一実施形態において、穿孔は、円形又は卵形又は楕円形である。穿孔は、長方形、6角形、多角形又はスリット等のその他の形状を有してもよいことに留意するべきである。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有する。一実施形態において、穿孔は、均一な形状を有しない。一実施形態において、穿孔は、細胞除外膜に均一に分布される。一実施形態において、穿孔は、細胞除外膜の上で様々な間隔で存在し、例えば、装置の中央又は装置の端にクラスター形成され得る。一実施形態において、複数の穿孔は、一連の行と列で離れており、グリッド配列、同心円、その他の幾何学的構成又は構成の組み合わせを形成する。一実施形態において、複数の穿孔はランダムに分布される。一実施形態において、穿孔は、それぞれの細胞除外膜に存在するのでなく、装置の一方の側だけに存在する。
【0138】
一実施形態において、装置には複数の異なる細胞集団がある。一実施形態において、装置には複数のチャンバーがあり、チャンバーのそれぞれが、無細胞領域又は島によって分
かれており、チャンバーのそれぞれが穿孔される。一実施形態において、装置にはチャンバーには複数のチャンバーがあり、チャンバーのそれぞれが無細胞領域によって分かれており、全てのチャンバーが穿孔されているわけではない。一実施形態において、膵臓前駆体が1つのチャンバーにカプセル化され、異なる治療薬が別のチャンバーにカプセル化される。この例では、膵臓前駆体を含むチャンバーのみが穿孔されている。
【0139】
改善された投与プロファイル
膵臓内胚葉系細胞を送達するための有孔装置を使用する1つの利点は、細胞の増殖能力が増加することである。孔によって、生存率を改善する宿主脈管構造と細胞間接触が可能になる。孔によって、装置チャンバーを拡張することができ、有孔装置の内部により多くの細胞が入る余地ができる。細胞増殖能力の増加によって、細胞質量が増加し、細胞質量の増加が細胞容量の増加に相関する。出願人は、適切な細胞容量が同じサイズの装置(例えば、EN20、EN100、EN250等)に添加されると、有孔装置の最終細胞容量(移植後約12~16週で細胞は成熟する)がインタクト又は無孔装置よりかなり多いことを示した。実際には、最終(成熟した)細胞容量は、無孔又はインタクトな装置に比べて、有孔装置において約5~6倍多い。これは、それ以外の同サイズの細胞送達装置の投与能力を改善する。
【0140】
膵島移植術において、膵島の数又は容量は、膵島等価物又はIEQとして示されることが多い。1IEQは、150μmの直径の膵島と同等であると考えられる。健康なヒトは約100万IEQを有し、T1Dと診断された患者は、約80%の膵島細胞を失っていた。治療薬で、完全に膵島の質量/機能を回復させる必要はない。膵島の質量/機能の約20%、すなわち約200,000IEQを回復することは、T1D患者の機能的治癒になる。Gillard等、Minimal functional β-cell mass in intraportal implants that reduces glycemic variability in type 1 diabetic recipients Diabetes Care2013(11)3483-8は、機能性β細胞移植片を有するレシピエントが、正常なコントロール対象の18%(四分位範囲10~33%)に対応する平均の機能性β細胞質量を示すことを示す。
【0141】
出願人は、Kroon等(2008)、前述に以前記載された移植された成熟したPEC移植片によって放出されるCペプチドに基づいてIEQを計算しようとした。出願人は、装置に生成されるCペプチドが相対IEQ数に相関するリニアスケールがあることを示した。
図3を参照のこと。このグラフを生成するために、出願人は、特定の一定分量の死体の膵島を購入した。6つの異なる膵島調製物をすりつぶし、各試料からCペプチドの合計を測定した。各膵島試料のCペプチドの測定値をグラフにし、Cペプチドレベル対ヒト膵島等価物の量に直線関係があることを示した。
図3を参照のこと。以下の式は、Cペプチドレベル(ピコモル)とヒト膵島数(IEQ)の直線関係を規定する。
Cペプチド=0.3889x+245.53
この式は、0.9852の定量R
2の補正を有する。定量のR
2係数は、回帰直線がどの程度実データポイントに近似するかを示す統計的測定値である。R
2が1であることは、回帰直線がデータに完全に一致することを示す。したがって、式に示されるCペプチドとIEQの相関は、強力な又は高い信頼水準を有する。
【0142】
一実施形態において、IEQの数は、膵島IEQに対するCペプチドレベルの直線関係によって外挿され、又は推定することができ、IEQの数は、治療用細胞を含む有孔又は無孔装置のいずれか1つで達成される細胞量の相対的測定値である。したがって、例えば、2000ピコモルのCペプチドは、約4500IEQであり、又は以下のヒト膵島である。
2000=0.3889x+245.53→(2000-245.53)/0.3889
=x→x=4511.36IEQ
【0143】
一実施形態において、有孔細胞送達装置は、完全(無孔)細胞送達装置に比べて少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍以上の投与能力を改善する。例えば、有孔EN20装置又は小さい送達装置は、約20μlの名目上の充填容量を有し、ラットの1kgあたり約7,000~47,000IEQ(約23,000の平均)又は250,000IEQ超のベータ細胞の質量を有する。名目上の充填容量300μlを有するより大きい送達装置は、最大700,000IEQのベータ細胞質量を含み得る。したがって、患者に治療有効量を送達するために、充分なPEC量を送達するのに、1又は2機の大きい有孔装置が必要であると推定される。
【0144】
一実施形態において、有孔細胞送達装置による移植後の哺乳類動物のCペプチド産生は、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20週、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週までは定常ではない。
【0145】
一実施形態において、有孔細胞送達装置による移植後の哺乳類動物のCペプチド産生は、移植後約30週、移植後約31週、移植後約32週、移植後約33週、移植後約34週、移植後約35週、移植後約36週、移植後約37週、移植後約38週、移植後約39週、移植後約40週に定常になる。一実施形態において、有孔細胞送達装置による移植後の哺乳類動物のCペプチド産生は、移植後約30~40週で定常になる。一実施形態において、有孔細胞送達装置による移植後の哺乳類動物のCペプチド産生は、移植後約35~45週、移植後約30~45週で定常になる。
【0146】
有孔細胞送達装置は、装置の管腔に一種の保護ニッチを提供して、移植後すぐに厳しい皮下の宿主環境となるものから移植細胞を遮蔽し得ると仮定される。確かに、出願人が有孔装置と細胞カプセル化が全く存在しないもの(すなわち精巣上体脂肪パッド下で移植された装置なし/「裸細胞」)を比較したときに、裸細胞より有孔装置のほうが、細胞機能が改善した(データ示さず)。したがって、細胞のより直接的な宿主-移植片細胞間接触(直接的血管新生)だけがin vivoの細胞機能の改善に対する解決策ではなく、裸細胞が有孔装置の細胞を上回る改善された機能を有することが予想される。出願人の米国特許第12/618,659号、前述を参照のこと。
【0147】
送達装置は、病態の是正において、組織又は細胞置換に使用することができる。現在、最も実施されていることが、病態を是正するために、門脈循環に注入することによる細胞小器官又は遊離細胞の同種移植であり、細胞を肝臓に留まらせることができる。本発明は、容易に接近することができる代わりの移植部位の使用を可能にし、その内容物を有する送達装置は必要であれば除去することができる。送達装置によって、宿主が移植組織に充分な栄養補助を提供して、病態を是正することができる。したがって、送達装置は、ヒト組織の同種移植に使用することができる。
【0148】
送達装置は、また、遺伝子改変された患者自身の細胞を移植して、治療用産物を生成するために使用することができる。細胞が形質転換して、遺伝子を発現し、治療用産物を分泌すると、その細胞にとって取り外し可能な容器が望ましい。本発明の送達装置は、ハイブリッドバイオ人工臓器を構築するためにも使用することができる。送達装置は、詳細な脈管構造を有するバイオ人工臓器を供給して、栄養が臓器に送達され、代謝老廃物を除去し、臓器によって作製された治療用産物を宿主に送達することができる。
【0149】
生物学的免疫保護戦略の追加の開発業務は、将来的に、慢性免疫抑制の必要性を無くすことができる。Rong、An effective approach to pre
vent immune rejection of human ESC-derived allografts Cell Stem Cell 2014 14(1):121-130を参照のこと、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0150】
他に断りがない限り、無孔装置又はインタクトな装置は、穿孔(孔)を有しない装置を意味する。
【0151】
組合せ製品
本明細書に記載の実施形態は、組合せ製品を開示し、細胞又は治療薬を添加した装置を示し、それぞれ単独で候補となる医療装置又は細胞産物になり得るが、一緒に組合せ製品を作製する。一実施形態において、組合せ製品は細胞が添加される有孔装置を指す。これは「有孔組合せ製品」と呼ばれる。装置(有孔又は無孔)は、限定されないが、EN20、EN100、EN250又はEN大容量を含む本明細書に記載のマクロ細胞送達装置であり得る。組合せ製品は、装置のサイズを特定し得、例えば、VC-01-20は細胞が添加されたEN20を意味する。(有孔又は無孔)装置に添加される細胞は、限定されないが、胚体内胚葉、PDX1陽性内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、膵臓内胚葉、PDX1及びNKX6.1を発現する膵臓内胚葉細胞、内分泌前駆体、NKX6.1及びINSを発現する内分泌前駆体、未成熟ベータ細胞、NKX6.1、INS及びMAFBを発現する未成熟ベータ細胞、成熟内分泌細胞、INS、GCG、SST及びPPを発現する成熟内分泌細胞、成熟ベータ細胞、並びにINS及びMAFAを発現する成熟ベータ細胞であってもよい。
【0152】
in vivoで移植されると、成熟する膵臓内胚葉細胞(「有孔組合せ製品」)を添加した有孔送達装置は、インスリン依存性を減少させ、及び/又は低血糖症に気がつかない、不安定(脆性)であり、又は臓器移植を受けたことがあり、免疫抑制治療に耐性がある可能性がある、又はすでに治療中のハイリスクI型糖尿病患者の低血糖症を減少させることを意図する。活動の主要方法は、ヒト膵臓内胚葉細胞(PEC)又は膵臓前駆細胞を介し、宿主の直接的な血管新生を容易にする透過性、耐久性のある埋め込み型医療装置に含まれる。PEC細胞は、移植後、治療用グルコース応答性インスリン放出細胞に分化し、成熟する。このように、有孔組合せ製品はヒトインスリンの分泌を補助する。有孔組合せ製品は、in vivoのPEC細胞の分布(放出)を制限する。有孔組合せ製品は、装置内の治療用細胞の集団を維持し、インスリン及びその他の膵臓産物の血流への分布を容易にする充分な血管移植を可能にする場所に移植される。有孔組合せ製品は、通常の手術器具で移植又は外植し、2年間以上治療的用量を提供することを意図する。装置は、製剤中の充分な用量のPEC細胞産物、貯蔵寿命、臨床的効果を達成する操作及び手術移植を維持し、細胞産物は、安全要件を満たすように、確実に組織カプセルの内部に配置される。
【0153】
有孔組合せ製品は、PECの用量を含む有孔装置(PD)、ヒト膵臓前駆細胞治療産物から構成される。患者に移植後、有孔組合せ製品は、装置の統合及び移植された細胞産物の直接的な血管新生によって、インスリンを必要とする患者の治療のために、PEC細胞をグルコース応答性、インスリン産生細胞の分化及び成熟を可能にするように設計される。
【0154】
有孔装置(PD)は、共に結合される堆積した材料層から構成されて、細胞含有管腔を形成する耐久性、生体適合性、取り外しが容易な移植装置として規定される。装置は、長期間の移植を意図した生体適合性及び生体安定材料から構成される。半透性膜は、移植後直ぐに栄養物の管腔への拡散を可能にし、同時に、膜の穿孔によって、装置の管腔及び直接的には移植細胞に対する宿主の血管の成長を可能にし、インスリンを含む移植した細胞産物の血流への灌流及び放出を改善する。
【0155】
PDは、宿主血管の侵入又は内殖を可能にする大きさの穿孔を含み、その他の宿主細胞は、免疫細胞を含み、免疫抑制薬の使用を必要とする装置の細胞を含む管腔に移動する。
【0156】
有孔組合せ製品は、5年間、移植されることが予想されるが、少なくとも2年間の用途を満たす必要がある。PDの設計意図は、カプセル形成の期間に移植細胞の初期生存及び分化/成熟の所定の保護された空間を提供し、移植期間全体にわたって大部分の細胞を保持することである。装置の部品は生体適合性でなければならない。治療的投与を潜在的に達成する充分な用量を有する装置、及び中間時点(センチネル)で組織診断を介して移植及び宿主組織応答を評価するために、容易な移植及び外植に適したより小さいユニットの2つの装置構成が臨床試験のために開発されている。充分な細胞量を維持して、有効性を提供する有孔装置の能力を損なうことなく、充分な量の宿主血管が移植細胞に直接的に内殖されることを可能にするような装置の穿孔のサイズ及び数が選択されるべきである。さらに、有孔装置は、確実に、産物を外植する間に周囲の宿主組織のカプセルを含む充分な量の移植細胞が身体から取り除かれ、安全要件を満たすようにする。
【0157】
PD及び有孔組合せ製品の設計は、インタクトな(孔のない)細胞送達装置の類似性に関係する追加の利益を有する。その利益として、以下が挙げられる。
【0158】
PDは同じ材料、類似の製造工程、米国特許出願第8278106号、及び米国特許出願第14/201,630に以前に開示されたインタクトな細胞カプセル化装置のために確立された包括的な生体適合性試験を支援する。
【0159】
インタクトな装置と有孔装置は、同様の形状寸法及び操作特徴を提供するため、移植と外植の両方の手術方法が両者で同じになることを意図する。要約すると、有孔組合せ製品は、細胞産物の送達について、インタクトな細胞カプセル化装置と共に、既存の製造工程及び臨床経験を支援するように設計される。
【0160】
以下のパラグラフでは、他の実施形態を記載する。
【0161】
不織布を含む細胞送達装置。
【0162】
細胞除外膜をさらに含み、不織布は細胞除外膜の外側にあるパラグラフ24に記載の細胞送達装置。
【0163】
細胞除外膜及び細胞除外膜の外側にある不織布を含み、細胞除外膜のみが穿孔される細胞送達装置。
【0164】
宿主の血管が細胞送達装置の管腔に直接的に接触するパラグラフ26に記載の細胞送達装置。
【0165】
細胞除外膜及び細胞除外膜の外側にある不織布を含み、不織布のみが穿孔される細胞送達装置。
【0166】
宿主の血管が細胞送達装置の外表面に直接的に接触するパラグラフ28に記載の細胞送達装置。
【0167】
細胞除外膜、細胞除外膜の外側にある不織布、及びメッシュ層、膜溶接部のいずれか若しくはその両方を含み、不織布及び細胞除外膜が穿孔される細胞送達装置。
【0168】
宿主の血管が細胞送達装置の管腔に直接的に接触するパラグラフ30に記載の細胞送達装置。
【0169】
細胞除外膜及び細胞除外膜の外側にある不織布を含み、不織布及び細胞除外膜のみが穿孔される細胞送達装置。
【0170】
宿主の血管が細胞送達装置の外表面に直接的に接触するパラグラフ32に記載の細胞送達装置。
【0171】
宿主の血管が細胞送達装置全体に形成し、細胞送達装置に添加される治療薬と直接的に接触するパラグラフ32に記載の細胞送達装置。
【0172】
不織布が細胞除外膜に積層されるパラグラフ32に記載の細胞送達装置。
【0173】
細胞送達装置が少なくとも1つの免疫抑制薬で治療を受ける哺乳類動物宿主に移植されるパラグラフ32に記載の細胞送達装置。
【0174】
免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗薬免疫抑制薬及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ36に記載の細胞送達装置。
【0175】
免疫抑制薬が、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ37に記載の細胞送達装置。
【0176】
免疫抑制薬で治療を受ける宿主に移植される有孔不織布を含む細胞送達装置。
【0177】
免疫抑制薬で治療を受ける宿主に移植される細胞除外膜の外側に不織布を含む細胞送達装置。
【0178】
不織布が穿孔されるパラグラフ39又は40に記載の細胞送達装置。
【0179】
細胞除外膜が穿孔されるパラグラフ41に記載の細胞送達装置。
【0180】
細胞除外膜及び不織布が穿孔されるパラグラフ42に記載の細胞送達装置。
【0181】
免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗薬免疫抑制薬及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ39又は40に記載の細胞送達装置。
【0182】
免疫抑制薬が、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ44に記載の細胞送達装置。
【0183】
細胞除外膜を含み、不織布が細胞除外膜に積層されるパラグラフ39又は40に記載の細胞送達装置。
【0184】
哺乳類動物にin vivoに移植される細胞の生存率を促進する方法であって、a)細胞を有孔細胞送達装置に添加し、b)細胞を含む有孔装置を哺乳類動物宿主に移植し、それによって移植細胞の細胞生存率を促進することを含む方法。
【0185】
細胞が膵臓内胚葉細胞であるパラグラフ47に記載の方法。
【0186】
哺乳類動物はマウスではないパラグラフ47に記載の方法。
【0187】
哺乳類動物はヒト又はラットであるパラグラフ47に記載の方法。
【0188】
哺乳類動物の血中グルコースを低下させる方法であって、1)細胞を細胞送達装置に添加し、装置は、有孔細胞除外膜及び細胞除外膜に対して外側にある有孔不織布を含み、その他の穿孔された層を含まず、b)細胞送達装置を哺乳類動物宿主に移植し、c)移植細胞を成熟させ、それによって哺乳類動物の血中グルコースを低下させる方法。
【0189】
細胞除外膜及び細胞除外膜の外側にある不織布を含み、不織布が細胞除外膜に積層される細胞送達装置。
【0190】
不織布及び細胞除外膜が穿孔されるパラグラフ52に記載の細胞送達装置。
【0191】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、細胞除外膜だけが穿孔される細胞送達装置。
【0192】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受ける哺乳類動物に移植されず、細胞除外膜だけが穿孔される細胞送達装置。
【0193】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療ラット又はヒトに移植され、細胞除外膜だけが穿孔される細胞送達装置。
【0194】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受けない哺乳類動物に移植され、細胞除外膜だけが穿孔される細胞送達装置。
【0195】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受けないラット又はヒトに移植され、細胞除外膜だけが穿孔される細胞送達装置。
【0196】
細胞除外膜及びNWFを含み、細胞除外膜とNWFだけが穿孔される細胞送達装置。
【0197】
細胞除外膜及びNWFを含み、ISDで治療を受ける哺乳類動物に移植され、細胞除外膜及びNWFだけが穿孔される細胞送達装置。
【0198】
細胞除外膜及びNWFを含み、ISDで治療を受けるラット又はヒトに移植され、細胞除外膜及びNWFだけが穿孔される細胞送達装置。
【0199】
細胞除外膜及びNWFを含み、ISDで治療を受けない哺乳類動物に移植され、細胞除外膜とNWFだけが穿孔される細胞送達装置。
【0200】
細胞除外膜及びNWFを含み、ISDで治療を受けないラット又はヒトに移植され、細胞除外膜とNWFだけが穿孔される細胞送達装置。
【0201】
インタクトな細胞除外膜を含み、NWFを含まない細胞送達装置。
【0202】
インタクトな細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受ける哺乳類動物に移植される細胞送達装置。
【0203】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受けるラット又はヒトに移植される細胞送達装置。
【0204】
細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受けない哺乳類動物に移植される細胞送達装置。
【0205】
インタクトな細胞除外膜を含み、NWFを含まず、ISDで治療を受けないラット又はヒトに移植される細胞送達装置。
【0206】
インタクトな細胞除外膜及びインタクトなNWFを含む細胞送達装置。
【0207】
インタクトな細胞除外膜及びインタクトなNWFを含み、ISDで治療を受ける哺乳類動物に移植される細胞送達装置。
【0208】
インタクトな細胞除外膜及びインタクトなNWFを含み、ISDで治療を受けるラット又はヒトに移植される細胞送達装置。
【0209】
インタクトな細胞除外膜及びインタクトなNWFを含み、ISDで治療を受けない哺乳類動物に移植される細胞送達装置。
【0210】
インタクトな細胞除外膜及びインタクトなNWFを含み、ISDで治療を受けないラット又はヒトに移植される細胞送達装置。
【0211】
免疫抑制
免疫抑制化合物で宿主を治療しながら、成熟した膵島を移植することは以前から開示されている。米国特許出願第9,062,290号を参照のこと、参照によりその全体が本明細書に援用される。しかし、カルシニューリン阻害剤は、(1)糖尿病誘発性であり(糖尿病を発症する)(Crutchlow MF、Transplant-associated hyperglycemia:a new look at an old problem Clin J Am Soc Nephrol.2(2):343-55(2007))でレビューされた)、(2)マウスの内在性膵臓細胞の再生に負に影響する(Heit J、Calcineurin/NFAT signaling regulates pancreatic beta-cell growth and function Nature 21;443(7109):345-9(2006)and Nir T, Recovery from diabetes in mice
by beta cell regeneration J Clin Invest
117(9):2553-61(2007)を参照のこと)ことが報告された。このように、未成熟な膵臓前駆体がカルシニューリン阻害剤の存在下でin vivoに成熟するかどうかについて、仮に成熟する場合、宿主が免疫抑制薬で治療を受けている場合、成熟した移植片が生存し、機能することができるかどうかについては知られておらず、予測することができなかった。
【0212】
膵島移植片による1型糖尿病の治療であっても、長期間にわたって、多くの患者を外因性インスリン注射から解放するのに効果的ではなかった。1つの問題として、同種移植片拒絶を抑制するのに必要とされる免疫抑制試薬が移植した膵島細胞の機能を著しく損なう可能性があることであった。Cellular and Molecular Approaches to Achieving Euglycemia(1997)、NIH
Guide 26(38)を参照のこと。
【0213】
本明細書に記載の実施形態は、細胞を含む移植された有孔装置に関し、宿主は免疫抑制薬による治療を受ける。一実施形態において、有孔装置は、NWF等の宿主に面している不織布の少なくとも1つの層を含み、宿主は免疫抑制薬による治療を受ける。一実施形態
において、有孔装置は、細胞外膜に積層され、宿主に面しているNWFの少なくとも1つの層を含み、宿主は免疫抑制薬による治療を受ける。一実施形態において、免疫抑制薬は、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗薬免疫抑制薬及びその組み合わせから成る群から選択される。一実施形態において、免疫抑制薬は、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)及びその組み合わせから成る群から選択される。一実施形態において、免疫抑制薬は、無孔装置を移植された宿主に投与される。
【0214】
一実施形態において、免疫抑制薬による治療を受ける宿主に、有孔細胞送達装置の治療有効量の治療薬を投与する方法を開示する。
【0215】
以下のパラグラフでは、他の実施形態を記載する。
【0216】
方法は、a)哺乳類動物宿主に免疫抑制薬を投与し、b)膵臓内胚葉細胞を含む有孔装置を哺乳類動物宿主に移植し、及びc)in vivoの有孔装置に膵臓内胚葉細胞集団を成熟させ、前駆細胞集団がインスリン分泌細胞に成熟し、それにより哺乳類動物にin
vivoでインスリンを産生することを含む。
【0217】
免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗薬免疫抑制薬及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ62に記載の方法。
【0218】
免疫抑制薬が、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ63に記載の方法。
【0219】
有孔装置が細胞除外膜及び細胞除外膜の外側にある不織布の少なくとも1つの層を含むパラグラフ62に記載の方法。
【0220】
不織布が細胞除外膜に積層されるパラグラフ665に記載の方法。
【0221】
免疫抑制薬で治療を受ける宿主に移植される膵臓内胚葉細胞を含む有孔細胞送達装置。
【0222】
免疫抑制薬が、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗薬免疫抑制薬及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ67に記載の有孔細胞送達装置。
【0223】
免疫抑制薬が、シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムス(TAC)及びその組み合わせから成る群から選択されるパラグラフ68に記載の有孔細胞送達装置。
【0224】
有孔装置が不織布の少なくとも1つの層を含むパラグラフ67に記載の有孔細胞送達装置。
【0225】
有孔装置が細胞除外膜を含み、不織布が細胞除外膜に積層されるパラグラフ70に記載の有孔細胞送達装置。
【0226】
哺乳類動物の対象の治療用細胞の生存率を改善する方法であって、有孔細胞送達装置の有効量の治療用細胞及び有効量の免疫抑制薬を対象に投与することを含み、有効量の免疫抑制薬は、治療用細胞がin vivoで生存し、成熟する能力を損なわない方法。
【0227】
哺乳類動物でインスリンを産生する方法であって、膵臓内胚葉を宿主に移植し、有効量
の免疫抑制薬を宿主に投与し、膵臓内胚葉が哺乳類動物でインスリン産生細胞に成熟することを可能にし、それにより哺乳類動物においてインスリンを産生する方法。
【0228】
宿主の移植された異種又は同種細胞に対する免疫又は炎症反応を抑制し、又は調節する方法であって、有孔細胞送達装置の細胞を送達し、宿主に有効量の抗炎症因子又は免疫抑制薬を投与し、細胞は膵臓内胚葉である方法。
【0229】
対象の糖尿病を治療する方法であって、(a)糖尿病対象に免疫抑制薬を投与し、(b)有孔細胞送達装置で対象に膵臓内胚葉細胞を投与し、膵臓内胚葉細胞は、インスリン産生細胞に成熟し、それにより対象の糖尿病を治療する方法。
【0230】
本明細書に記載の実施形態の追加の特徴及び利点は詳細な記述、図及び例から明らかになるだろう。実施形態の例は以下の通りである。
(1)
不織布層及びPDX1陽性膵臓内胚葉細胞を含む細胞送達装置を含む組合せ製品。
(2)
前記細胞組合せ製品が細胞除外膜をさらに含み、前記不織布層が前記細胞送達装置の前記細胞除外膜に対して外側にある(1)に記載の組合せ製品。
(3)
前記不織布層及び前記細胞除外膜が共に積層される(1)又は(2)に記載の組合せ製品。
(4)
前記不織布層及び前記細胞除外膜が穿孔を含む(2)又は(3)に記載の組合せ製品。(5)
前記不織布層が穿孔されず、前記細胞除外膜が穿孔される(2)又は(3)に記載の組合せ製品。
(6)
前記組合せ製品が免疫抑制薬で治療を受けたラットに移植される(1)から(5)の何れかに記載の組合せ製品。
(7)
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓前駆細胞である(1)から(6)の何れかに記載の組合せ製品。
(8)
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓内分泌細胞である(1)から(6)の何れかに記載の組合せ製品。
(9)
前記PDX1陽性膵臓内胚葉細胞が膵臓ベータ細胞である(1)から(6)の何れかに記載の組合せ製品。
(10)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が150ミクロン以下の直径を有する(4)又は(6)から(9)の何れかに記載の組合せ製品。
(11)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が100ミクロン以下の直径を有する(4)又は(6)から(9)の何れかに記載の組合せ製品。
(12)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が75ミクロン以下の直径を有する(4)又は(6)から(9)の何れかに記載の組合せ製品。
(13)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が50ミクロン以下の直径を有する(4)又は(6)から(9)の何れかに記載の組合せ製品。
(14)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約1.0mm離れている(4)又は(6)から(13)の何れかに記載の組合せ製品。
(15)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約1.5mm離れている(4)又は(6)から(13)の何れかに記載の組合せ製品。
(16)
前記不織布層及び前記細胞除外膜の前記穿孔が約2mm離れている(4)又は(6)から(13)の何れかに記載の組合せ製品。
(17)
前記不織布層及び前記細胞除外膜がそれぞれ、装置につき約40個未満の穿孔を含む(4)又は(6)から(16)の何れかに記載の組合せ製品。
(18)
前記不織布層及び前記細胞除外膜がそれぞれ、装置につき約20個未満の穿孔を含む(4)又は(6)から(16)の何れかに記載の組合せ製品。
(19)
a)哺乳類動物宿主に免疫抑制薬を投与し、
b)膵臓内胚葉細胞を含む有孔装置を前記哺乳類動物宿主に移植し、及び
c)前記哺乳類動物宿主の前記有孔装置において前記膵臓内胚葉細胞集団を成熟させ、前記前駆細胞集団がインスリン分泌細胞を産生し、それによって哺乳類動物でインスリンが産生することを含む哺乳類動物でインスリンを産生する方法。
(20)
前記哺乳類動物宿主がヒト又はラットである(19)に記載の方法。
【0231】
通常のヒト患者に有孔装置を使用するには、慢性免疫抑制薬(ISD)療法が必要である。ISDによって生じる有害事象のために、出願人専売のPDX1陽性膵臓内胚葉細胞又は膵臓前駆体(「PEC」とも呼ばれる)がISDを投与された宿主に移植した場合に、(1)成熟することができるのか、(2)以前の研究では、特定のカルシニューリン阻害剤が糖尿病誘発性であること(糖尿病を発症する)(Crutchlow等(2007)前述を参照のこと)、マウスの内在性膵臓細胞の再生に負に影響する(Heit(2006)前述)ことが示されたため、成熟した細胞が生存し、生物学的に活性であり続け、血中グルコースレベルに反応してインスリンを産生するかどうかは分からなかった。出願人は、シクロスポリンAによる治療を受けた動物のヒトCペプチドの血清レベルが未治療の対照ラットで測定したレベルに類似するという事実によって証明されたように、有孔装置で移植されたPECが、ISDを投与したヌードラットにおいて分化し、機能し続けるという驚くべき発見をした。さらに、CsA治療ラットに観察された初期高血糖が逆転したことを観察した。この事実は、移植後少なくとも30週間続き、シクロスポリンAによるカルシニューリン阻害の前述の治療レベルに対する移植片感受性が無くなったことを示している。次の研究では、有孔装置の膵臓内胚葉にさらに試験を行い、CsA又はミコフェノール酸モフェチル(MMF)を有するタクロリムス(TAC)の併用を投与された宿主に移植した。この試験は、試験対象のISDレジメン全てに対して膵臓内胚葉と移植片耐性を確立した。要約すると、膵臓内胚葉及び移植片の機能は、以前の参考文献の報告からの予想に反して、高血糖及びカルシニューリン阻害の複合された存在によって、負の影響を受けているように見えなかった。このように、当業者は、膵臓内胚葉と移植片の機能が免疫抑制を維持するための最も多く使用される薬によって負の影響を受けることはないと予想する。
【0232】
一実施形態において、装置は腹膜前に移植される。
【0233】
関連文献
ヒト多能性幹細胞由来の膵臓細胞のカプセル化については、Martinson等、米国特許出願第8278106号、2012年10月2日出願に記載されている。移植可能なカプセル化装置と使用されるツール及び器具は、米国特許第14/254,844号、2014年4月16日出願、及び米国意匠特許出願第29/488,209号、第29/488,217号、第29/488,191号、第29/488,204号に記載されている。移植可能な装置に細胞を添加する器具及び方法については、2014年10月13に出願されたPCT/US2014/060306号に記載されている。「LOADING SYSTEM FOR AN ENCAPSULATION DEVICES」は、米国特許出願第14/000,864号、2013年8月21日出願に記載されている。「3-DIMENSIONAL LARGE CAPACITY CELL ENCAPSULATION DEVICE ASSEMBLIES」は、米国特許出願第14/201,630号、2014年3月7日出願、米国意匠特許出願第29/447,944号、第29/509,102号、第29/484,363号、第29/484,360号、第29/484,359号、第29/484,357号、第29/484,356号、第29/484,355号、第29/484,362号、第29/484,358号に記載されている。「CELL ENCAPSULATION DEVICES」は、米国意匠特許出願第29/408,366、第29/517,319号、第29/408,368号、第29/518,513号、第29/518,516号、第29/408,370号、第29/517,144号、第29/423,365号、第29/530,325号に記載されている。「CULTURING OF HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS INTO PANCREATIC ENDOCRINE CELLS」は第 13/998,884号及び第62/352,968号に記載されている。「FORAMINOUS IMPLANT」は、国際公開第WO1993/02635号に記載されている。前述の参考の特許/出願はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0234】
本明細書に記載の刊行物及び特許は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【実施例0235】
当然のことながら、前述したことは説明した実施形態に関連し、本発明の範囲から逸脱することなく多数の変更がなされ得る。本発明は、以下の実施例によってさらに説明され、その範囲を限定するのものとして理解してはならない。対照的に、様々なその他の実施形態、修正及びその等価物があることが明確に理解され、それらが本明細書の記述を読んだ後に、説明した実施形態の趣旨及び/又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【0236】
実施例1:様々な密度の不織布を有する細胞送達装置
EN20装置は、一般的に3つの層:1)内部の細胞除外膜、2)中央の膜リング、及び3)織りメッシュの外層から構成される。製造プロセスの間、3つの部品が一緒に超音波接合(又は密封)される場合、細胞除外膜は、特に溶接部と管腔の間の移行領域の近くで、目の詰まったメッシュによって圧縮され得る。装置の極端な屈曲も、膜の領域を圧縮し得る。これらの圧縮領域は、潜在的に、膜に割れ目ができ、装置の統合性を損なう(例えば、装置からの細胞漏れ)可能性がある。装置の構造的統合性を改善し、同時にその機能性(細胞除外、血管形成、生体適合性等)維持するために、追加の材料及び/又は層の試験を行った。不織布は、潜在的な介在性のバッファ層として認識された。
【0237】
新規の装置は、不織布を使用して作製した。前述のように、装置の部品(不織布、膜メッシュ及び膜)は、様々なパターンで配列され得る。ここでは、様々な繊維密度:0.40、0.75及び1.00oz/yd^2を使用して、不織布を外側織りメッシュ層と細胞除外膜の外面の間に加えた。追加された不織布を有する送達装置の断面図を示す
図4を
参照のこと。
【0238】
不織布を細胞除外膜に積層しない、又はカスタムのポリエチレン、乾燥接着性織布(例えば、Part Number Spunfab PO4605、SpunFab,Inc.)を細胞除外膜に熱積層した。表5を参照のこと。低基本重量(0.145oz/yd^2)の接着剤を選択して、積層プロセスの最中に、細胞除外膜の孔の閉塞を阻害する。
【0239】
この試験をSCID-Bgマウスの2つの群で実施した。凍結保存した膵臓内胚葉細胞(「PEC」と呼ぶ)を解凍し、DMEM/HIグルコース(27mm)及びB27を含むDulbecco培地に培養し、各コホートについてEN20サイズの装置に別々に添加した。
【0240】
【0241】
【0242】
様々な構成の機能性を決定するために、グルコース促進インスリン分泌(GSIS)アッセイをKroon等、2009、前述及びAgulnick等、2015、前述に記載のように、移植後約8、13、16及び22週で実施した。特にGSISアッセイの前に、マウスを約15~18時間絶食にした。約30%のブドウ糖(Hospira)溶液の管腔内注入によって約3.0g/kg体重のグルコースを投与し、(絶食)前、グルコース投与後30及び/又は60分に血液を回収した。約50μLの血液試料をイソフルラン麻酔下で後眼窩静脈叢を穿刺することによって回収し、血液/血清分離ゲルを含むマイクロタイターチューブ(BD Biosciences、cat#365956)に写した。これらのチューブを4000~6000xgで10分間回転させた後、血清を回収した。ELISAアッセイ(Mercodia Ultrasensitive Human
c-peptide ELISA、cat#10-1141-01)を使用して、血液試料の血清のヒトCペプチドを分析した。
【0243】
表8は、グルコース促進後の血清中のヒトCペプチドによって測定したときに、NWFを組み込んだ装置が、対照装置(NWF未使用)に比べて改善した機能を与えたことを示す。
【0244】
例えば、EN20-NWF(2)(0.75oz/yd^2、細胞除外膜に積層されない)を移植したマウスから最大Cペプチドが達成された。Cペプチド値は、移植後、13週(1945pM対841pM)と16週(3697pM対1326pM)の両方でEN20 Control-1装置より約2.5倍高かった。EN20-NWF(2)-SB(不織布のPET材料をポリエチレン接着性織布で細胞除外膜に積層した)を移植したマウスは、移植後13週(1314pM対841pM)と16週(1696pM対1326pM)の両方でヒトCペプチド血清値が約1.5倍高かった。
【0245】
同様に、その他の密度の不織布PET材料を使用したとき((NWF(3)は0.40oz/yd^2であり、NWF(1)は1.00oz/yd^2であり、細胞除外膜に積層されない)、Cペプチド値は、移植後13週(NWF(3)あり装置の1603pM対EN20 Control-2装置の644pM、NWF(1)あり装置の1482pM対EN20 Control-2装置の644pM)と16週(NWF(3)あり装置の2186pM対EN20 Control-2の826pM、NWF(1)あり装置の2285pM対EN20 Control-2の826pM)でEN20 Control-2装置を移植されたマウスより約2.5倍高かった。(表8を参照のこと)
【0246】
【0247】
外植された移植片の組織学的分析は、NWFを有しない対照装置に比べて、細胞除外膜とメッシュ層との間にNWFを含む装置の周辺の血管新生が増加したことを示し、これは、グルコース促進後、対照に比べてヒトCペプチド血清レベルが著しく高いことで示されるように、NWFが装置の機能的性能の改善に寄与することを示唆している。
【0248】
細胞除外膜と外側メッシュの間のNWFが、in vivoでEN20装置の機能的性能を改善したが、様々な異なる密度(基本重量)のNWF(1)、(2)又は(3)は、(表8のコホート2のEN20-NWF(3)とEN20-NWF(1)を比べて)機能的性能にあまり著しい影響を与えないようであった。意外なことに、NWFが細胞膜層に積層されなかった装置(コホート1のEN20-NWF(2)、コホート2のEN20-
NWF(3)、EN20-NWF(1))は、不織布PET層がポリエチレン接着性織布で細胞除外膜に積層された装置(コホート1のEN20-NWF(2)-SB)に比べて、機能的性能が改善した(2.5倍及び1.5倍高いヒトCペプチド)。このことから、NWFの存在(積層された又は積層されない)が送達細胞の機能性に最も大きな効果を有すると結論付けられる。
【0249】
実施例2:細胞送達装置の細胞除外膜に対する不織布の積層
細胞除外膜層に対するNWF層の積層の効果をさらに調べた。小さいサイズの20μLの細胞送達装置の少なくとも3つの構成を構築した(「EN20」)。対照の装置は、最内層の細胞除外膜と最外層のメッシュから構成された(「EN20 Control」)。実験用装置は、最内層の細胞除外膜、中央のNWF及び最外層のメッシュから構成された。一構成において、NWFを細胞除外膜に積層しなかった(「EN20-NWF(2)」)。別の構成において、熱と圧力を使用してNWFを細胞除外膜に積層した(「EN20-NWF(2)-HL」)。細胞除外膜及びNWFの熱積層(すなわち、熱スタッキング)を標準的な熱プレス機械(例えばARB Arbor Press、Plastic
Assembly Systems)を使用して行った。プレスを305~320oFに加熱し、0~6PSIの圧力を3フィート/分又は10フィート/分の速度で加えた。
【0250】
完成した装置は全て殺菌処理し、ヒト多能性幹細胞に由来する研究グレードの膵臓前駆細胞を無菌で添加し、少なくともKroon等2008前述及びAgulnick等 2015前述に記載のように、SCID-Bgマウスに移植した。様々な構成の機能性を特定するために、グルコース促進インスリン分泌(GSIS)アッセイを実施例1に記載のように、移植後約12週と16週に行った。
【0251】
EN20-NWF(2)(熱積層していない)装置を移植したマウスから得た最大Cペプチド値は、移植後12週では約2.4倍、16週では約1.9倍高く(241%対100%及び185%対100%を比較されたい)、EN20-NWF(2)-HL(熱積層した)を移植したマウスは、対象に比べて、移植後12週では約2.8倍、16週では約2.30倍高かった(278%対100%及び229%対100%を比較されたい)。
【0252】
これは、細胞除外膜に対する不織布の積層が装置の細胞の機能性に改善された効果を有することを実証している(12週では241%対278%、16週では185%対229%を比較されたい)。しかしながら、前述のように、細胞の機能性に最も大きな効果を有するのは不織布(積層された又は積層されていない)の存在であった。すなわち、不織布を有する装置は、不織布を有しない対照の装置より少なくとも1.9倍高いCペプチド値を有した。
【0253】
【0254】
不織布は、装置の宿主の血管新生を改善することによって、装置の移植を改善し、それにより細胞生存率、増殖、発生、成熟及び装置内部の機能が改善するように思われる。
【0255】
実施例3:有孔装置の孔密度の最適化
出願人は、マクロ細胞送達装置の穿孔の最適な数(密度)を特徴付けようとする。以下の表2は、穿孔された不織布ありの有孔細胞送達装置と不織布なしの有孔細胞送達装置を記載し、密度(装置の約100ミクロンにつき穿孔の数)を変える。概して、NWF層は、その不織布構造により不同の孔又はギャップを有することに留意されたい。そのため、100ミクロン未満の孔又はギャップがあり得、100ミクロンより大きい孔又はギャップもあり得る。NWF層は、基本重量が約0.4~0.75oz/yd^2であり、公称厚みが約127~約228μm、繊維径が26μmを有し得る。装置に孔を開ける方法は様々あるが、例えば、全層を互いの上部で最初に積層し、その後、装置の両側又は壁の各層を穿孔する。あるいは、細胞除外層を穿孔し、その後、NWF層を含むその他の無孔層の装置と合わせる。レーザーでの穿孔は、孔サイズ(直径)及び穿孔の数(密度)をかなり制御する。以下の表2の群1~3では、細胞除外膜をレーザーで穿孔して、約50~120μmで平均直径が約87μmであり、互いに約1mm、1.5mm又は2mm間隔の孔を形成した。小ゲージの皮下針を使用して、対照群(群4及び群5)の各層に互いに約2mmの孔を手動で作製した。
【0256】
【0257】
全ての動物(胸腺欠損のヌードラット)に、それぞれ約20μLの固定の膵臓前駆細胞凝集体を含む試験又は対照EN20装置の2つの皮下移植片を移植した。
【0258】
全ての装置構成で(約1mm、1.5mm又は2mm間隔のレーザーで生成した孔及び約2mm間隔の針で生成した孔)、
図5に示されるヒトCペプチドレベルによって示される胸腺欠損のヌードラットの機能的膵臓内分泌細胞内で、膵臓前駆体が生存、増殖、発生及び成熟することができた。GSISアッセイ(Kroon等(2008)前述;Agulnick等(2015)前述)を孔密度から独立して、全ての有孔装置で移植後34週間実施し、対照装置においてもグルコース誘発後15分及び30分間実施した。
図6を参照のこと。
【0259】
当業者は、移植細胞と宿主細胞の、特に宿主の脈管構造の細胞間接触が増加すると、細胞生存率、増殖及び成熟が増加し、装置の孔が多いほどよいと仮定するだろう。そのため、孔密度の低い装置の細胞も孔密度の高い装置と同様に機能することを発見したことは驚くべきことであった。例えば、2mm間隔の孔の装置(孔同士の間隔の開いていると、より少ない孔と低密度を意味する)は、2mm未満間隔の孔(孔同士の間隔の狭いと、より多くの孔と高密度を意味する)と同様に機能した。このように、出願人は、穿孔の孔密度が低い又は数が少なくても(小さいサイズのEN20の壁につき約20個の穿孔があり、装置の表面積の約0.4%未満が穿孔されている)、宿主の血管新生及び細胞生存率に望ましい利益を提供することを発見した。当業者は孔が多いほど(密度がより高いほど)宿主の血管新生が増加及び/又は速くなり、移植細胞に酸素及びその他の栄養物を送達するのを補助し、それにより細胞生存率及び分化が増加すると予想しているため、このことは驚くべきことだった。
【0260】
孔が少ないほど装置から逃げる細胞が減少し、又は逃げることを抑制することによって、安全性が改善するため、低密度の装置のほうが好まれ得る。さらに、万一移植片全体を取り除くとしても、移植片全体を回収することができる装置の内部に細胞を保持することが望ましい。
【0261】
実施例4:無孔装置と比較した改善された投与プロファイルを有する有孔装置
前述の実施例3、表2に記載の有孔送達装置を移植されたラットでは、マウスのインタクトな装置に比べて、経時的にCペプチド含有量が増加することを示した(例えば、インタクトな装置について
図7の点線を参照のこと)。
図7は、様々な穿孔の構成によって生成されたCペプチドを示し、NWF層を有する有孔装置では、(インスリン含有量を示す)Cペプチドが最大約30、35又は40週まで増加することを示す。約15週で、有孔装置の細胞は、無孔装置に移植された細胞よりも約50%も多くのCペプチドを生成する。16週で、有孔装置の細胞によって生成された平均のCペプチドは2,696ピコモルであり(
図7、SP-2016-149)、
図3に記載のようにIEQに対するCペプチドのレベルの直線関係に基づいており、装置につき約6,300IEQであり、すなわち細胞量は約6300IEQである。約39週までに、有孔装置の細胞は、9,244ピコモルの平均Cペプチド値を有し(
図7、SP-2015-128)、再び
図3に基づいており、装置につき約23,100IEQの用量である。
【0262】
細胞を保持した有孔装置を移植されたラットで生成されるCペプチドは、インタクトな細胞を含む装置より多く、有孔装置においてCペプチドが定常になるまで長期間かかる(約35週)(
図7、SP-2015-128)。すなわち、有孔及び無孔(インタクトな)細胞装置は、約16週まで同様のレベルのヒトCペプチドを有し、その後、Cペプチドは、インタクトな装置では定常になり、有孔装置では増加し続ける。
【0263】
有孔装置で達成されるより高いCペプチド濃度は、約16週までは到達しない。
図7、SP-2016-149~SP-2015-128を参照のこと。対照的に、インタクトな装置を移植されたマウスのCペプチドレベルは、約16週で2,000ピコモル未満の定常になる。
図7(点線の水平線)を参照のこと。
【0264】
36又は39週間ラットに移植された有孔装置の細胞量又はIEQを同じ期間マウスに移植されたインタクトな装置と比較した。マウスのインタクトな装置に比べて、ラットの有孔装置の細胞量は約5倍増加した。
図8を参照のこと。
図8は、マウスのインタクトな装置が約5,000未満のIEQを有し、ラットの有孔装置は約23,100ピコモルのIEQを有し、5倍の差があることを示す。このことは、有孔装置の細胞は増殖することができ、したがって、より多くのインスリン産生細胞を保持し、及び/又は細胞は、細胞につき、より多くのインスリンを産生しているためであり得る。同じサイズであり、各装置に添加される最初の細胞量が同じであるインタクト(上部)及び有孔(下部)送達装置の細胞の組織学的断面図の顕微鏡写真を示す
図9を参照のこと。成熟後、有孔装置の細胞は、インタクトな装置の細胞より増殖性である。すなわち、細胞質量がより多く、又は好ましくはベータ細胞質量がより多い。前述及び
図7に記載のCペプチドデータは、有孔装置の成熟した細胞が、インタクトな装置の細胞より多くのCペプチドを生成することを示す。
図7に示すように、Cペプチドレベルが高いほど、膵島の数又はIEQが多くなり、IEQが多いほど、細胞量が多くなることを示す。
【0265】
有孔装置の細胞はインタクト又は無孔装置の細胞よりもIEQ値が5~6倍多いため、インタクトな装置の細胞に比べて、より少ない有孔装置又は小さい有孔装置で治療的細胞量を達成することができる。したがって、一実施形態において、有孔装置の細胞は、インタクト又は無孔装置と同じサイズ容量につき、投与能力を改善する。
【0266】
実施例5:膵臓内胚葉は、カルシニューリン阻害剤で治療を受けたヌードラットで成熟することができる
膵島置換療法について、有孔装置の治療用細胞を移植することは、慢性免疫抑制療法を必要とする。死体からの膵島移植細胞の維持免疫抑制ではタクロリムス(TAC)等のカルシニューリン阻害剤を使用するが、シクロスポリン(CsA)、抗増殖剤及びミコフェノール酸モフェチル(MMF)を使用する頻度は少ない。カルシニューリン阻害剤は、(1)糖尿病誘発性であり(糖尿病を発症する、Crutchlow等(2007)、前述)、(2)マウスの内在性膵臓の再生に負に影響する(Heit(2006)、前述及びNir(2007)、前述)。このように、免疫抑制薬の投与から生じる有害事象は、増殖はin vivoのカプセルに包まれた膵臓内胚葉の成熟の重要な要素であるため、膵臓内胚葉の成熟について予想され得、膵臓内胚葉細胞移植片から生じる成熟したベータ細胞についても予想され得る。
【0267】
ISDの影響を試験するため、5匹のヌードラットに通常の食事を与え、5匹のヌードラットに250mg/kgのシクロスポリンAを調合した食事を18週間与えた。この方法は、腹腔内注射及び/又は胃管栄養による日々の投与によるストレスを回避するという利点を有する。12時間の血中濃度曲線下面積(AUC0-12hr)として示された結果として生じる薬物暴露レベルは、約16μg・hr/mLと推定された。この暴露は、腎臓及び肝臓移植レシピエントのシクロスポリンA臨床ターゲットAUC0-12hrが6-9μg・hr/mLであるのに対し高い。
【0268】
カルシニューリン阻害剤に応答して、治療群のラットは糖尿病になった。特に、250mg/kgの食事でシクロスポリンAを投与されたラットは、約10週間後に高血糖になり、すなわち、このラットは内在性Cペプチドを生成しなかった。グルコース誘発後の30分と60分のラットの血清中Cペプチドレベルは、500pM以下であった。
図10A
を参照のこと。この影響は、外因性インスリン(Linbit pellet及びLantus)の投与によって一時的に管理された。その他の点では、シクロスポリンAの食事は、ラットに良好な耐容性を示した。確かに、体重と食事の消費率は、対照食事を与えられたラットより正常であった。
【0269】
前述のように小さいサイズのEN20装置に膵臓前駆体(又はPEC)を含む有孔装置をラットに移植した。装置は、NWF層を含まなかった。移植後18週で、シクロスポリンA治療群のラットの血清中ヒトCペプチドレベルは、未治療対照群のラットと実質的な差はなかった(
図10B)。CsA治療群のラットは、30分では1069~4098pMの血清中ヒトCペプチド、60分では1995~4144pMの血清中ヒトCペプチドであることを観察したように、堅調なインスリンレベルを示した。重要な点として、ラットは高血糖ではなく、又は外因性インスリンを必要としなかったことである。例えば、15週で、平均血中グルコースは283mg/dL(高血糖)であり、20週で128mg/dL(正常血糖)であった。このことは、有孔装置の移植片が正常血中グルコースを調節していたことを示した。このデータは、有孔装置のPECが、CsAを投与されたラットにおいて分化と機能を継続したことを実証する。この事実は、移植後少なくとも36週間続き(データ図示せず)、PECとシクロスポリンAによるカルシニューリン阻害の前述の治療レベルに対する移植片感受性の欠如を示している。
【0270】
前述のことは、カルシニューリン阻害の治療を受けた糖尿病(高血糖)のラットであっても、有孔装置に移植された膵臓内胚葉は、成熟することができ、インスリン産生細胞を生成し、糖尿病の病態を逆転することができることを実証する。
【0271】
実施例6:膵臓内胚葉は、カルシニューリン阻害剤及び代謝拮抗薬免疫抑制薬で治療を受けたヌードラットで成熟することができる
カルシニューリン阻害剤代謝拮抗薬免疫抑制薬に暴露されたときの有孔装置にカプセル化された膵臓内胚葉がインスリン産生細胞に成熟する能力を評価した。表12は研究プロトコルの概要を示す。通常の食事(対照)、250mg/kgのシクロスポリンA(CsA-250)を含む食事、250mg/kgのシクロスポリンAと500mg/kgのミコフェノール酸モフェチル(CsA-250+MMF500)を含む食事、又は150mg/kgのタクロリムスと500mg/kgのミコフェノール酸モフェチル(TAC-150+MMF500)を含む食事をヌードラットにそれぞれ与えた。食事に順化して2週間後、ラットに実施例1~4に記載の有孔装置で送達されるPECを移植した。
【0272】
望ましいISD含有量を有する食事の再調合をBio-Serv(Flemington、NJ)で実施した。穀物をベースとしたPicoLab 5053食事、1/2”ペレットが食事の基本であり、対照の食事と同一であり、ラットに適宜与えた。
【0273】
【0274】
推定されるISD投与量は、典型的なラットの食物消費率の体重1kgあたり約70gに基づく。実際の食物消費率及びISD投与量を測定した。
【0275】
【0276】
*針を用いて手動で穿孔した装置で送達された約7×106の膵臓内胚葉細胞の移植片(マウスにつき1つ、ヌードラットにつき2つ)を全ての動物に皮下投与した。送達装置にはNWF層を含まないことに留意されたい。
【0277】
移植後9週で、ISD(CsA-MMF又はTAC-MMFのいずれか)で治療を受けたラットは、対照(ISDなし)よりヒトCペプチドレベルが高かった。
図11を参照のこと。一過性にヒトCペプチドレベルが高くなることは、部分的に、これらの動物がISD治療薬の結果として糖尿病になり、内在性インスリン分泌の欠如により、対照動物より血中グルコースレベルが高かったことが原因である。すなわち、ISDによる治療を受けたラットは、対照よりラットCペプチドのレベルが低いことが予想される。
【0278】
実施例7:有孔細胞送達装置のポリエステル不織布層は、膵臓前駆体の発生と機能を改善する
実施例1~4は、NWFを組み入れると、NWFが細胞除外膜層に対する積層の有無から独立して、及び装置の孔密度(孔の数)から独立して、カプセルに包まれた細胞と送達装置の構造及び機能が増加することを示した。実施例5は、ヒト多能性幹細胞に由来する膵臓前駆体が、宿主がカルシニューリン阻害剤(例えばCsA)の免疫抑制レジメンで治療を受けると、実際は、生存し、発生し、機能性膵臓内分泌細胞に成熟し得ることを示し、このことはこれまで記載されたことがなく、出願人が開示するまで知られていなかった。実施例6は、膵臓前駆体がカルシニューリン阻害剤の免疫抑制レジメンだけでなく、代謝拮抗薬免疫抑制薬の免疫抑制レジメンにおいて生存することができることをさらに示した。
【0279】
この研究では、実施例1~6の教示を組み合わせて、カルシニューリン阻害剤と代謝拮抗薬免疫抑制レジメンの併用で治療した、(装置の壁又は側につき)少なくとも1つのNWF層を組み入れた有孔送達装置及び無孔送達装置の膵臓前駆体の機能を特定した。
【0280】
概して、有孔NWF送達装置を移植した対照ラットは、無孔NWFカプセル化装置の細胞を移植したラットよりヒトCペプチドレベルが高かった。
図12(対照、インタクトな送達装置、無孔装置、CsA-MMFによる治療なしを比較)を参照のこと。これは、有孔装置の穿孔(孔)によって移植細胞を有する宿主血管の直接的な血管新生によるものであり、細胞生存率を改善する。さらに、ISDで治療を受けたラットにおいて、有孔NWF送達装置を移植したラットは、無孔NWF装置を移植したラットよりヒトCペプチドレ
ベルが高かった。
図12(インタクトな送達装置及び無孔装置、CsA-MMFによる治療なしを比較)を参照のこと。興味深いことに、CsA-MMFを投与され、有孔NWF送達装置を移植した動物のヒトCペプチドレベルは、同種の有孔NWF送達装置を移植したが、CsA-MMF免疫抑制薬を投与されていない動物より約2倍(1.6倍)高かった。
図12を参照のこと。このヒトCペプチドの増加は、NWF送達装置とCsA-MMF免疫抑制レジメンの組み合わせの相乗効果の結果であり得る。この改善されたヒトCペプチドレベルは、NWF単独及び/又はISDとの併用によって軽減された改善された宿主の血管新生の結果であり得る。