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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003667
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ステータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240105BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H02K3/18 J
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102963
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 瞭弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 工
【テーマコード(参考)】
5H603
5H621
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB11
5H603CC04
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD21
5H603CE01
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA16
(57)【要約】
【課題】各相のコイルの構成の適正化を図り、電気的特性を向上し得るステータ及びモータを提供する。
【解決手段】隣接する第1相の入口側のコイル12(例えばU相の入口側のコイルU1)の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12(例えばV相の出口側のコイルV2)の出口側端部tbとは、ティース部11aに対する巻回位置として、最外層でかつ先端部側に偏倚した位置に配置する設定とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース部(11a)と複数の前記ティース部の基端部同士を互いに連結する形状をなす環状部(11b)とを有するステータコア(11)と、
複数の前記ティース部毎に導線(12a)の集中巻きにて複数層積み重なるように巻回されてなる複数のコイル(12,U1~U4,V1~V4,W1~W4)とを備え、
複数の前記コイルが多相結線態様をなし、多相のモータ入力端子(tu,tv,tw)から得る多相駆動電力に基づいて、複数の前記コイルを通じて回転磁界を発生させるように構成されてなるステータ(10A~10D)であって、
自相の前記モータ入力端子に電気的に近い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ入口側のコイル(U1,V1,W1)及び入口側端部(ta)とし、自相の前記モータ入力端子から電気的に遠い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ出口側のコイル(U2~U4,V2~V4,W2~W4)及び出口側端部(tb)としたとき、
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とが、ともに最外層でかつ前記ティース部の先端部側に偏倚した位置に配置されて構成されている、ステータ。
【請求項2】
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とが、ともに最外層でかつ前記ティース部の先端部側に最も偏倚した位置に配置されて構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とは、自身が装着される隣接の前記ティース部間の互いに対向する態様にて構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルの導線の前記入口側端部及び前記出口側端部は、前記ステータコアの軸方向一方側に配置されて構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
前記ステータコアは、前記環状部が径方向外側に位置し、前記ティース部が径方向内側に延びる形状にて構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
複数の前記コイルは、3相結線態様をなして構成されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のステータ(10A~10D)と、
前記ステータにて生じる回転磁界に基づいて回転駆動するロータ(20A~20D)とを備えて構成されている、モータ。
【請求項8】
前記ステータは、3相結線態様をなす複数の前記コイルよりなるコイル磁極部と、
前記ロータは、永久磁石(23)よりなる磁石磁極部とを備え、
前記磁石磁極部と前記コイル磁極部との数の比が(12±2)n:12n(但しnは1以上の整数)を満たすように構成されている、請求項7に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルを有するステータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータは、ステータコアのティース部周りに導線が複数回巻回されてコイルが構成されている。例えばアウタステータ型の場合、ステータコアは、先端部が径方向内側を向く複数のティース部と、径方向外側に位置する各ティース部の基端部を環状に互いに連結する環状部とを備えている。各ティース部に巻回される導線は、1ターン毎に各ティース部の延出方向に沿って並ぶように配置されるとともに、先に巻回した導線の上に複数層積み重ねられて配置されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5619046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ステータコアは一般的に接地電位であるため、ステータコアに装着される導線には対地容量が寄生する。この場合、複数回巻回される導線は、ターン毎の配置位置によって対地容量の大きさが異なる。具体的には、導線の対地容量は、ティース部と環状部との両方に近い位置では最も大きく、ティース部と環状部とのいずれか一方と近い位置では次いで大きい。導線がティース部と環状部とのいずれか若しくはその両方から離れる位置ほど、対地容量は小さくなる。
【0005】
また、3相結線をなす各相のコイルにおいては、相間電位差の大きさが懸念事項としてある。各相のコイルの入口側端部、すなわち制御装置側と接続される端部がステータコアのティース部及び環状部に対する位置によっては、各相の相間電位差が大きくなってしまう。このような場合、各相のコイル間の絶縁距離を大きく設定したり、各相のコイル間に別途絶縁材を介装させたりする等の対処が必要となる。このことがステータ、ひいてはモータ全体の小型軽量化の妨げの一因となるという懸念があった。
【0006】
本開示の目的は、各相のコイルの構成の適正化を図り、電気的特性を向上し得るステータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するステータは、複数のティース部(11a)と複数の前記ティース部の基端部同士を互いに連結する形状をなす環状部(11b)とを有するステータコア(11)と、複数の前記ティース部毎に導線(12a)の集中巻きにて複数層積み重なるように巻回されてなる複数のコイル(12,U1~U4,V1~V4,W1~W4)とを備え、複数の前記コイルが多相結線態様をなし、多相のモータ入力端子(tu,tv,tw)から得る多相駆動電力に基づいて、複数の前記コイルを通じて回転磁界を発生させるように構成されてなるステータ(10A~10D)であって、自相の前記モータ入力端子に電気的に近い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ入口側のコイル(U1,V1,W1)及び入口側端部(ta)とし、自相の前記モータ入力端子から電気的に遠い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ出口側のコイル(U2~U4,V2~V4,W2~W4)及び出口側端部(tb)としたとき、周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とが、ともに最外層でかつ前記ティース部の先端部側に偏倚した位置に配置されて構成されている。
【0008】
上記課題を解決するモータは、上記ステータ(10A~10D)と、前記ステータにて生じる回転磁界に基づいて回転駆動するロータ(20A~20D)とを備えて構成されている。
【0009】
上記ステータ及び上記モータの構成によれば、隣接する第1相の入口側のコイルの入口側端部と第2相の出口側のコイルの出口側端部とは、ティース部に対する巻回位置として、最外層でかつ先端部側に偏倚した位置に配置される。つまり、ともに対地容量が十分に小さい位置に配置されるため、各相のコイル全体での入口側端部及び出口側端部それぞれの対地容量を実質的に十分に小さくすることが可能となり、隣接する異相間の相間電位差を十分に抑制することが期待できる。こうした各相のコイルの構成の適正化を図ることで、ステータ及びモータの電気的特性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態におけるステータを含むモータを示す構成図である。
図2】第1実施形態におけるステータの一部を示す構成図である。
図3】第1実施形態におけるコイルの結線態様を示す回路図である。
図4】第2実施形態におけるステータを含むモータを示す構成図である。
図5】第2実施形態におけるステータの一部を示す構成図である。
図6】第2実施形態におけるコイルの結線態様を示す回路図である。
図7】第3実施形態におけるステータを含むモータを示す構成図である。
図8】第3実施形態におけるステータの一部を示す構成図である。
図9】第3実施形態におけるコイルの結線態様を示す回路図である。
図10】第4実施形態におけるステータを含むモータを示す構成図である。
図11】第4実施形態におけるステータの一部を示す構成図である。
図12】第4実施形態におけるコイルの結線態様を示す回路図である。
図13】各実施形態の効果を説明するための波形図である。
図14】(a)~(e)は各実施形態の効果を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、ステータ及びモータの第1実施形態について説明する。
(モータM1及びロータ20Aの構成)
図1に示すように、本実施形態のモータM1は、略円環状に構成されるステータ10Aと、ステータ10Aの内側に回転可能に配置されるロータ20Aとを備えている。ステータ10Aにて通電に基づいて回転磁界が生じると、生じた回転磁界に基づいてロータ20Aが回転駆動する。なお、先にロータ20Aの構成を説明し、後にステータ10Aの構成を説明する。
【0012】
本実施形態のロータ20Aは、回転軸21を有するロータコア22と、ロータコア22の外周面に固定される永久磁石23とを備えている。本実施形態のロータ20Aは、永久磁石23による例えば14極の磁石磁極部を備えてなる。
【0013】
(ステータ10Aの構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態のステータ10Aは、磁性金属材にて略円環状に作製されるステータコア11と、ステータコア11に装着される複数のコイル12とを備えている。
【0014】
ステータコア11は、先端部が径方向内側を向く複数のティース部11aと、径方向外側に位置する各ティース部11aの基端部同士を互いに連結する形状をなす環状部11bとを備えている。各ティース部11aは、本実施形態では12個備えられている。各ティース部11aは、本実施形態では基端部から先端部にかけて同幅の略矩形状をなして延びている。環状部11bは、本実施形態では各ティース部11a毎で分割されたものが互いに環状に連結されてなる。なお、環状部11bが分割されていない一体構成ものを用いてもよい。
【0015】
各ティース部11aには、各コイル12がそれぞれ装着されている。各コイル12は、各ティース部11aに導線12aが集中巻きにより巻回されて構成されている。ティース部11a毎に装着されるコイル12は12個であり、本実施形態のステータ10Aは12極のコイル磁極部を備えてなる。導線12aは、本実施形態では整列巻きにより巻回されている。導線12aは、1ターン毎に各ティース部11aの延出方向に沿って並ぶように配置されるとともに、先に巻回した導線12aの上に複数層、本実施形態では3層積み重ねられて配置されている。
【0016】
ここで図3に示すように、12個のコイル12は、本実施形態では3相Y型の結線態様にて構成されている。Y型の結線態様をなす12個のコイル12は、本実施形態ではU相、V相、W相の各相で4個ずつ2直列2並列の接続態様となっている。各相のコイル12は、U相において2直列2並列をなす一対のコイルU1,U2、V相において2直列2並列をなす一対のコイルV1,V2、及びW相において2直列2並列をなす一対のコイルW1,W2の表記を併用して説明する。すなわち、U相ではコイルU1及びコイルU2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルU1及びコイルU2が並列接続されている。また、V相ではコイルV1及びコイルV2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルV1及びコイルV2が並列接続されている。また、W相ではコイルW1及びコイルW2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルW1及びコイルW2が並列接続されている。
【0017】
また図1に示すように、各相のコイル12は、ステータ10Aの周方向において、コイルU1、コイルU2、コイルW1、コイルW2、コイルV1、及びコイルV2の順で半周分が配置され、残りの半周分はこの配置順を繰り返すものとなっている。隣接する同相のコイル12は2個ずつであり、それぞれ同相内で互いに直列接続されるコイルU1及びコイルU2、コイルV1及びコイルV2、コイルW1及びコイルW2である。また、隣接する同相の直列接続のコイル12同士は、互いに逆方向の巻回態様となっている。つまり、隣接する同相のものそれぞれで、通電により現れる極性が逆となるものである。また、隣接する異相のコイル12同士は、互いに同方向の巻回態様となっている。
【0018】
図2に示すように、各相のコイル12は、導線12aの一対の端部、すなわち入口側端部taと出口側端部tbとを有している。これら入口側端部ta及び出口側端部tbの引き出しは、ステータコア11の軸方向一方側に統一されている。ここで図3に示すように、入口側端部taは、制御装置(図示略)に対して電気的に近い側、換言するとモータM1の自相のモータ入力端子tu,tv,twに電気的に近い側の端部とする。出口側端部tbは、制御装置に対して電気的に遠い側、換言するとモータM1の自相のモータ入力端子tu,tv,twに電気的に遠い側の端部とする。またコイルU1,V1,W1及びコイルU2,V2,W2についても、自相のモータ入力端子tu,tv,twに電気的に近い側を入口側、自相のモータ入力端子tu,tv,twに電気的に遠い側を出口側とする。本実施形態のようにY結線の場合、自相のモータ入力端子tu,tv,twに近いコイルU1,V1,W1が入口側、自相のモータ入力端子tu,tv,twから遠い中性点tn側のコイルU2,V2,W2が出口側である。
【0019】
コイルU1の入口側端部taは、モータM1のU相のモータ入力端子tuに直接又はバスバー等を介して接続される。コイルU1の出口側端部tbは、コイルU2の入口側端部taと連続する端部である。コイルU1,U2を1本の導線12aで続けて巻回する場合、コイルU1の出口側端部tbとコイルU2の入口側端部taとがともにティース部11aの径方向外側に位置するため(図2参照)、径方向内外に跨がるような渡り線12xの配策の抑制が図れる。コイルU2の出口側端部tbは、U相のモータ入力端子tuより電気的に遠い側となる中性点tnと接続する端部である。直列接続された一対のコイルU1及びコイルU2同士は、ステータ10Aの180°対向位置に配置され、互いに導線12aにより連続するか、若しくはバスバー等を用いて、U相のモータ入力端子tuと中性点tnとの間に並列接続される。なお詳述しないが、V相のモータ入力端子tvと中性点tnとの間におけるV相のコイルV1とコイルV2との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。また、W相のモータ入力端子twと中性点tnとの間におけるW相のコイルW1とコイルW2との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。
【0020】
(コイル12の詳細構成)
図2に示すように本実施形態では、異相のコイル12、例えばU相とV相とにおいて、入口側のコイルU1と出口側のコイルV2とが隣接して配置されている。上記したように、本実施形態のコイル12は、導線12aが整列巻きにてティース部11aに巻回され3層積み重ねられてなる。コイルU1の入口側端部taは、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。コイルU1の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。一方、コイルV2の入口側端部taは、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。コイルV2の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。
【0021】
また、コイルU1の入口側端部taは自身のティース部11aの両側の内のコイルV2側に、コイルV2の出口側端部tbは自身のティース部11aの両側の内のコイルU1側に位置している。つまり、コイルU1の入口側端部taとコイルV2の出口側端部tbとは、僅かな空隙を有して物理的に近接して配置されている。これらコイルU1の入口側端部taとコイルV2の出口側端部tbとはティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置にあるため、それぞれ寄生する対地容量は最も小さくなるような構成としている。なお、他の異相のコイル12との関係、すなわち隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW2との関係についても同様である。また、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU2との関係についても同様である。
【0022】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
制御装置は、自身に備えられる3相インバータの動作にて3相駆動電力を生成する。3相駆動は多相駆動の中でも一般的であり、汎用の3相インバータを用いればシステムコスト面でも有利である。制御装置から出力される3相駆動電力は、モータM1の回転駆動のために各相のコイル12に供給される。
【0023】
図14(a)に示すように、制御装置の矩形状に変化する出力電圧Vcに対し、モータM1の入力電圧Vmとしては、例えば立ち上がり直後に過渡的に大きく変動するサージ成分が重畳する。入力電圧Vmに重畳するサージ成分は、制御装置とモータM1との間の接続ケーブル(図示略)を含む電路上のインダクタンス成分が主たる発生要因である。
【0024】
また、各相のコイル12において、ステータコア11の各ティース部11aに装着される導線12aのターン毎の配置位置によって対地容量の大きさが異なる。例えばステータコア11におけるティース部11aと環状部11bとの両方に近い位置、すなわち最内層の最も径方向外側の図2に示す位置P1に配置される導線12aでは、自身の対地容量は最も大きい。そのため、電圧に重畳するサージ成分は、図14(b)に示すように最も大きくなる。ティース部11aと環状部11bとのいずれか一方と近い位置、この場合ティース部11aと近い位置である最内層の最も径方向内側の図2に示す位置P2に配置される導線12aでは、自身の対地容量は上記に次いで大きい。そのため、電圧に重畳するサージ成分は、図14(c)に示すように次いで大きい。環状部11bと近い位置である最外層の最も径方向外側の図2に示す位置P3に配置される導線12aでは、自身の対地容量は上記に次いで大きい。そのため、電圧に重畳するサージ成分は、図14(d)に示すように次いで大きい。ティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置、すなわち最外層の最も径方向内側の図2に示す位置P4に配置される導線12aでは、自身の対地容量は最も小さい。そのため、電圧に重畳するサージ成分は、図14(e)に示すように最も小さくなる。
【0025】
本実施形態では、隣接する入口側のコイルU1の入口側端部taと出口側のコイルV2の出口側端部tbとは、ともにティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた図2に示す位置P4にある。そのため、入口側のコイルU1の入口側端部ta及び出口側のコイルV2の出口側端部tbそれぞれの対地容量は最も小さいもの同士である。また、隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW2とについても、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU2との関係についても同様である。つまり、各相のコイル12全体での入口側端部ta及び出口側端部tbそれぞれの対地容量は実質的に十分小さいもの同士となる。これにより、各相の入力電圧Vmに重畳するサージ成分は最も小さくなり、図13に示すように隣接する異相間の相間電位差は、サージの生じる過渡期において後述する比較例よりも十分な抑制が可能である。また、サージの収まる定常期においても、異相間の相間電位差の十分な抑制が可能である。また、相間のみならず自相内のサージの集中も抑制されるものとなっている。
【0026】
これに対し、比較例としては一般的な構成であり、隣接の入口側のU相コイルの入口側端部と、入口側のV相コイルの入口側端部との径方向位置が揃えられているものとする。入口側の異相コイルの各入口側端部の対地容量はそれぞれ最も小さいが、出口側の異相コイルの各出口側端部は対地容量が最も大きい。また、V相及びW相についても同様である。このような各相のコイルにおける端部の配置の組み合わせとすると、図13に示すように、隣接する異相間の相間電位差は、サージの生じる過渡期とサージの収まる定常期とのいずれにおいても大きくなってしまう。本実施形態では、この比較例に比べて異相間の相間電位差が十分に抑制されている。
【0027】
また本実施形態では、隣接する入口側のコイルU1の入口側端部taと出口側のコイルV2の出口側端部tbとは、僅かな空隙にて物理的に近接する配置としている。上記したように電圧に重畳するサージ成分が十分に小さい関係であるため、例えばコイルU1の入口側端部taとコイルV2の出口側端部tbとの間の絶縁距離を小さく設定することが可能である。また、両者間への絶縁材の介装を不要とすることも可能である。このことは、ステータ10A、ひいてはモータM1全体の小型軽量化に貢献するものである。
【0028】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)隣接する第1相の入口側のコイル12の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12の出口側端部tbとは、ティース部11aに対する巻回位置として、最外層でかつ先端部側に偏倚した位置に配置する設定である。つまり、ともに対地容量が十分に小さい位置に配置されるため、各相のコイル12全体での入口側端部ta及び出口側端部tbそれぞれの対地容量を実質的に十分に小さくでき、隣接する異相間の相間電位差を十分に抑制することができる。こうした各相のコイル12の構成の適正化を図ることで、ステータ10A及びモータM1の電気的特性を向上させることができる。
【0029】
(1-2)隣接する第1相の入口側のコイル12の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12の出口側端部tbとは、ティース部11aの先端部側に最も偏倚した位置であるため、隣接する異相間の相間電位差をより確実に抑制できる構成である。
【0030】
(1-3)隣接する第1相の入口側のコイル12の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12の出口側端部tbとは、自身が装着される隣接のティース部11a間にて互いに物理的に十分に近接して対向する配置である。各端部ta,tbの対地容量が小さくサージも小さいことから、各端部ta,tbの絶縁距離を小さく設定可能で、また別途絶縁材を介装させたりする等の対処も不要である。このことはステータ10A、ひいてはモータM1全体の小型軽量化を図ることに貢献できる。
【0031】
(1-4)各相のコイル12の入口側端部ta及び出口側端部tbの引き出しは、ステータコア11の軸方向一方側に統一されているため、各端部ta,tbに係る接続作業、導線12aの配線作業等を容易とすることができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、ステータ及びモータの第2実施形態について説明する。本実施形態のモータM2では、上記第1実施形態のモータM1との相違点を中心に説明する。
【0033】
(モータM2及びロータ20Bの構成)
本実施形態のモータM2は、ステータ10Bとロータ20Bとを備えている。本実施形態のロータ20Bは、永久磁石23による例えば10極の磁石磁極部を備えてなる。
【0034】
(ステータ10Bの構成)
図4及び図5に示すように、本実施形態のステータ10Bは、12個のティース部11aへの導線12aの集中巻きよりなる12個のコイル12を有し、12極のコイル磁極部を備えてなる。本実施形態の導線12aの巻回は、特に整列されていない乱巻きである。導線12aが乱巻きであっても各相のコイル12においては、先に巻回した導線12aの上に複数層、本実施形態では3層程度積み重ねられている。
【0035】
また図6に示すように、12個のコイル12は、本実施形態では3相Y型の結線態様にて構成されている。Y型の結線態様をなす12個のコイル12は、本実施形態ではU相、V相、W相の各相で4個ずつ4直列の接続態様となっている。各相のコイル12は、U相において4直列をなすコイルU1,U2,U3,U4、V相において4直列をなすコイルV1,V2,V3,V4、及びW相において4直列をなすコイルW1,W2,W3,W4の表記を併用して説明する。すなわち、U相ではコイルU1~U4が直列接続され、V相ではコイルV1~V4が直列接続され、W相ではコイルW1~W4が直列接続されている。
【0036】
図4に示すように、各相のコイル12は、ステータ10Bの周方向において、コイルU1、コイルU2、コイルW3、コイルW4、コイルV1、コイルV2、コイルU3、コイルU4、コイルW1、コイルW2、コイルV3、及びコイルV4の順の配置である。隣接する同相のコイル12は2個ずつであり、互いに逆方向の巻回態様となっている。つまり、隣接する同相のものそれぞれで、通電により現れる極性が逆となるものである。また、隣接する異相のコイル12同士は、互いに同方向の巻回態様となっている。
【0037】
図5に示すように、各相のコイル12は、導線12aの一対の端部、すなわち入口側端部taと出口側端部tbとを有している。図6に示すように、コイルU1の入口側端部taは、モータM1のU相のモータ入力端子tuに直接又はバスバー等を介して接続される。コイルU1の出口側端部tbは、コイルU2の入口側端部taと連続する端部である。コイルU1,U2を1本の導線12aで続けて巻回する場合、コイルU1の出口側端部tbとコイルU2の入口側端部taとはともに径方向外側位置であるため(図5参照)、本実施形態の渡り線12xについても径方向内外に跨がる配策の抑制が図れる。コイルU3,U4は、ステータ10BにおいてコイルU1,U2の180°対向位置にある(図4参照)。コイルU3の入口側端部taは、コイルU2の出口側端部tbと導線12aにより連続するか、若しくはバスバー等を介して接続される。コイルU3の出口側端部tbは、コイルU4の入口側端部taと渡り線12x(図示略)を介して連続する端部である。コイルU4の出口側端部tbは、U相のモータ入力端子tuより電気的に遠い側となる中性点tnと接続する端部である。なお、V相のモータ入力端子tvと中性点tnとの間におけるV相のコイルV1~V4との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。また、W相のモータ入力端子twと中性点tnとの間におけるW相のコイルW1~W4との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。
【0038】
(コイル12の詳細構成)
図5に示すように本実施形態では、異相のコイル12、例えばU相とV相とにおいて、入口側のコイルU1と出口側のコイルV4とが隣接して配置されている。上記したように、本実施形態のコイル12は、導線12aが乱巻きにてティース部11aに巻回され3層程度積み重ねられてなる。コイルU1の入口側端部taは、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。コイルU1の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。一方、コイルV4の入口側端部taは、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。コイルV4の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。
【0039】
また、コイルU1の入口側端部taは自身のティース部11aの両側の内のコイルV4側に、コイルV4の出口側端部tbは自身のティース部11aの両側の内のコイルU1側に位置している。つまり、コイルU1の入口側端部taとコイルV4の出口側端部tbとは、僅かな空隙を有して物理的に近接して配置されている。これらコイルU1の入口側端部taとコイルV4の出口側端部tbとはティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置にあるため、それぞれ寄生する対地容量は最も小さくなるような構成としている。なお、他の異相のコイル12との関係、すなわち隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW4との関係についても同様である。また、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU4との関係についても同様である。
【0040】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では極数及び相内接続等も含め上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、隣接する入口側のコイルU1の入口側端部taと出口側のコイルV4の出口側端部tbとの関係は同様に、ともに対地容量が最も小さい配置としている。また、隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW4とについても、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU4との関係についても同様である。つまり、本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、各相のコイル12全体での入口側端部ta及び出口側端部tbそれぞれの対地容量は実質的に十分小さいものである。これにより、本実施形態においても隣接する異相間の相間電位差は上記第1実施形態と同様(図13参照)、サージの生じる過渡期とサージの収まる定常期とのいずれにおいても十分に抑制されることが推察できる。また同様に、相間のみならず自相内のサージの集中についても抑制されるものと推察できる。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(2-1)本実施形態では上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、上記第1実施形態の効果(1-1)と同様、隣接する異相間の相間電位差を十分に抑制することができる。本実施形態においても、ステータ10B及びモータM2の電気的特性を向上させることができる。
【0042】
(2-2)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-2)と同様、隣接する異相間の相間電位差をより確実に抑制できる構成である。
(2-3)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-3)と同様、ステータ10A、ひいてはモータM1全体の小型軽量化を図ることに貢献できる。
【0043】
(2-4)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-4)と同様、各相のコイル12の入口側端部ta及び出口側端部tbに係る接続作業、導線12aの配線作業等を容易とすることができる。
【0044】
(第3実施形態)
以下、ステータ及びモータの第3実施形態について説明する。本実施形態のモータM3では、上記第1実施形態のモータM1との相違点を中心に説明する。
【0045】
(モータM3及びロータ20Cの構成)
本実施形態のモータM3は、ステータ10Cとロータ20Cとを備えている。本実施形態のロータ20Cは、永久磁石23による例えば8極の磁石磁極部を備えてなる。
【0046】
(ステータ10Cの構成)
図7及び図8に示すように、本実施形態のステータ10Cは、9個のティース部11aへの導線12aの集中巻きよりなる9個のコイル12を有し、9極のコイル磁極部を備えてなる。本実施形態の各ティース部11aは、環状部11bとの接続側である基端部が幅広に設定され、先端部に向けて徐々に幅狭となる略台形状をなして延びている。略台形状のティース部11aに対する本実施形態の導線12aの巻回は整列巻きである。各相のコイル12においては、先に巻回した導線12aの上に複数層、本実施形態では3層積み重ねられている。
【0047】
また図9に示すように、9個のコイル12は、本実施形態では3相Y型の結線態様にて構成されている。Y型の結線態様をなす9個のコイル12は、本実施形態ではU相、V相、W相の各相で3個ずつ3直列の接続態様となっている。各相のコイル12は、U相において3直列をなすコイルU1,U2,U3、V相において3直列をなすコイルV1,V2,V3、及びW相において3直列をなすコイルW1,W2,W3の表記を併用して説明する。すなわち、U相ではコイルU1~U3が直列接続され、V相ではコイルV1~V3が直列接続され、W相ではコイルW1~W3が直列接続されている。
【0048】
図7に示すように、各相のコイル12は、ステータ10Cの周方向において、コイルU1、コイルU2、コイルU3、コイルW1、コイルW2、コイルW3、コイルV1、コイルV2、及びコイルV3の順の配置である。隣接する同相のコイル12は3個ずつであり、互いに逆方向の巻回態様となっている。つまり、隣接する同相のものそれぞれで、通電により現れる極性が逆となるものである。また、隣接する異相のコイル12同士は、互いに同方向の巻回態様となっている。
【0049】
図8に示すように、各相のコイル12は、導線12aの一対の端部、すなわち入口側端部taと出口側端部tbとを有している。図9に示すように、コイルU1の入口側端部taは、モータM1のU相のモータ入力端子tuに直接又はバスバー等を介して接続される。コイルU1の出口側端部tbは、コイルU2の入口側端部taと連続する端部である。コイルU1,U2を1本の導線12aで続けて巻回する場合、コイルU1の出口側端部tbとコイルU2の入口側端部taとはともに径方向外側位置であるため(図8参照)、本実施形態の渡り線12xについても径方向内外に跨がる配策の抑制が図れる。コイルU2の出口側端部tbは、コイルU3の入口側端部taと連続する端部である。コイルU2の出口側端部tbとコイルU3の入口側端部taとはともに径方向内側位置であるため、両者間の渡り線12xについても径方向内外に跨がる配策の抑制が図れる。コイルU3の出口側端部tbは、U相のモータ入力端子tuより電気的に遠い側となる中性点tnと接続する端部である。なお、V相のモータ入力端子tvと中性点tnとの間におけるV相のコイルV1~V3との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。また、W相のモータ入力端子twと中性点tnとの間におけるW相のコイルW1~W3との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。
【0050】
(コイル12の詳細構成)
図8に示すように本実施形態では、異相のコイル12、例えばU相とV相とにおいて、入口側のコイルU1と出口側のコイルV3とが隣接して配置されている。上記したように、本実施形態のコイル12は、導線12aが整列巻きにてティース部11aに巻回され3層積み重ねられてなる。コイルU1の入口側端部taは、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。コイルU1の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。一方、コイルV3の入口側端部taは、最内層の最も径方向外側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方に最も近い位置である。コイルV3の出口側端部tbは、導線12aの巻回の関係で、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置である。
【0051】
また、コイルU1の入口側端部taは自身のティース部11aの両側の内のコイルV3側に、コイルV3の出口側端部tbは自身のティース部11aの両側の内のコイルU1側に位置している。つまり、コイルU1の入口側端部taとコイルV3の出口側端部tbとは、僅かな空隙を有して物理的に近接して配置されている。これらコイルU1の入口側端部taとコイルV3の出口側端部tbとはティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置にあるため、それぞれ寄生する対地容量は最も小さくなるような構成としている。なお、他の異相のコイル12との関係、すなわち隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW3との関係についても同様である。また、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU3との関係についても同様である。
【0052】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では極数及びコイル配置等も含め上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、隣接する入口側のコイルU1の入口側端部taと出口側のコイルV3の出口側端部tbとの関係は同様に、ともに対地容量が最も小さい配置としている。また、隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW3とについても、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU3との関係についても同様である。つまり、本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、各相のコイル12全体での入口側端部ta及び出口側端部tbそれぞれの対地容量は実質的に十分小さいものである。これにより、本実施形態においても隣接する異相間の相間電位差は上記第1実施形態と同様(図13参照)、サージの生じる過渡期とサージの収まる定常期とのいずれにおいても十分に抑制されることが推察できる。また同様に、相間のみならず自相内のサージの集中についても抑制されるものと推察できる。
【0053】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(3-1)本実施形態では上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、上記第1実施形態の効果(1-1)と同様、隣接する異相間の相間電位差を十分に抑制することができる。本実施形態においても、ステータ10C及びモータM3の電気的特性を向上させることができる。
【0054】
(3-2)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-2)と同様、隣接する異相間の相間電位差をより確実に抑制できる構成である。
(3-3)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-3)と同様、ステータ10A、ひいてはモータM1全体の小型軽量化を図ることに貢献できる。
【0055】
(3-4)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-4)と同様、各相のコイル12の入口側端部ta及び出口側端部tbに係る接続作業、導線12aの配線作業等を容易とすることができる。
【0056】
(第4実施形態)
以下、ステータ及びモータの第4実施形態について説明する。本実施形態のモータM4では、上記第1実施形態のモータM1との相違点を中心に説明する。
【0057】
(モータM4及びロータ20Dの構成)
本実施形態のモータM4は、ステータ10Dとロータ20Dとを備えている。本実施形態のロータ20Dは、上記第1実施形態と同様の構成であり、永久磁石23による例えば14極の磁石磁極部を備えてなる。
【0058】
(ステータ10Dの構成)
図10及び図11に示すように、本実施形態のステータ10Dは、12個のティース部11aへの導線12aの集中巻きよりなる12個のコイル12を有し、12極のコイル磁極部を備えてなる。各ティース部11aに対する本実施形態の導線12aの巻回は整列巻きであり、各相のコイル12においては先に巻回した導線12aの上に複数層、本実施形態では3層積み重ねられている。
【0059】
また図12に示すように、12個のコイル12は、本実施形態では3相Δ型の結線態様にて構成されている。Δ型の結線態様をなす12個のコイル12は、本実施形態ではU相、V相、W相の各相で4個ずつ2直列2並列の接続態様となっている。各相のコイル12は、U相において2直列2並列をなす一対のコイルU1,U2、V相において2直列2並列をなす一対のコイルV1,V2、及びW相において2直列2並列をなす一対のコイルW1,W2の表記を併用して説明する。すなわち、U相ではコイルU1及びコイルU2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルU1及びコイルU2が並列接続されている。また、V相ではコイルV1及びコイルV2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルV1及びコイルV2が並列接続されている。また、W相ではコイルW1及びコイルW2が一対直列接続されるとともに、対で直列接続されたコイルW1及びコイルW2が並列接続されている。
【0060】
図10に示すように、各相のコイル12のステータ10Dの周方向における配置は上記第1実施形態と同様である。隣接する同相のコイル12は2個ずつであり、それぞれ同相内で互いに直列接続されるコイルU1及びコイルU2、コイルV1及びコイルV2、コイルW1及びコイルW2である。また、隣接する同相の直列接続のコイル12同士は、互いに逆方向の巻回態様である。また、隣接する異相のコイル12同士は、互いに同方向の巻回態様である。
【0061】
図11に示すように、各相のコイル12は、導線12aの一対の端部、すなわち入口側端部taと出口側端部tbとを有している。図12に示すように、コイルU1の入口側端部taは、モータM1のU相のモータ入力端子tuに直接又はバスバー等を介して接続される。コイルU1の出口側端部tbは、コイルU2の入口側端部taと連続する端部である。コイルU1,U2を1本の導線12aで続けて巻回する場合、コイルU1の出口側端部tbとコイルU2の入口側端部taとはともに径方向外側位置であるため(図11参照)、本実施形態の渡り線12xについても径方向内外に跨がる配策の抑制が図れる。コイルU2の出口側端部tbは、自相のU相のモータ入力端子tuより電気的に遠い側となる異相のV相のモータ入力端子tvと接続する端部である。直列接続された一対のコイルU1及びコイルU2同士は、ステータ10Dの180°対向位置に配置され、互いに導線12aにより連続するか、若しくはバスバー等を用いて、自相のモータ入力端子tuと異相のモータ入力端子tvとの間に並列接続される。なお、自相のV相のモータ入力端子tvと異相のW相のモータ入力端子twとの間におけるV相のコイルV1とコイルV2との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。また、自相のW相のモータ入力端子twと異相のU相のモータ入力端子tuとの間におけるW相のコイルW1とコイルW2との関係、及びそれぞれの入口側端部taと出口側端部tbとの関係についても同様である。
【0062】
(コイル12の詳細構成)
図11に示すように本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、異相のコイル12、例えばU相とV相とにおいて、入口側のコイルU1と出口側のコイルV2とが隣接して配置されている。本実施形態においてもコイルU1の入口側端部taとコイルV2の出口側端部tbとは、最外層の最も径方向内側、すなわちティース部11aと環状部11bとの両方から最も離れた位置にあり、互いに僅かな空隙を有して物理的に近接して配置されている。コイルU1の入口側端部taとコイルV2の出口側端部tbとは、それぞれ寄生する対地容量は最も小さくなるような構成である。なお、隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW2との関係、また隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU2との関係についてもそれぞれ同様である。
【0063】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では3相結線等も含め上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、隣接する入口側のコイルU1の入口側端部taと出口側のコイルV2の出口側端部tbとの関係は同様に、ともに対地容量が最も小さい配置としている。また、隣接する入口側のコイルV1と出口側のコイルW2とについても、隣接する入口側のコイルW1と出口側のコイルU2との関係についても同様である。つまり、本実施形態においても上記第1実施形態と同様に、各相のコイル12全体での入口側端部ta及び出口側端部tbそれぞれの対地容量は実質的に十分小さいものである。これにより、本実施形態においても隣接する異相間の相間電位差は上記第1実施形態と同様(図13参照)、サージの生じる過渡期とサージの収まる定常期とのいずれにおいても十分に抑制されることが推察できる。また同様に、相間のみならず自相内のサージの集中についても抑制されるものと推察できる。
【0064】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(4-1)本実施形態では上記第1実施形態と若干の構成が違うものの、上記第1実施形態の効果(1-1)と同様、隣接する異相間の相間電位差を十分に抑制することができる。本実施形態においても、ステータ10D及びモータM4の電気的特性を向上させることができる。
【0065】
(4-2)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-2)と同様、隣接する異相間の相間電位差をより確実に抑制できる構成である。
(4-3)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-3)と同様、ステータ10A、ひいてはモータM1全体の小型軽量化を図ることに貢献できる。
【0066】
(4-4)本実施形態においても上記第1実施形態の効果(1-4)と同様、各相のコイル12の入口側端部ta及び出口側端部tbに係る接続作業、導線12aの配線作業等を容易とすることができる。
【0067】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・隣接する第1相の入口側のコイル12の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12の出口側端部tbとを、ティース部11aの先端部側に最も偏倚した位置に設定したが、先端部側に偏倚した位置が好ましいものの、最も偏倚した位置でなくてもよい。
【0069】
・隣接する第1相の入口側のコイル12の入口側端部taと第2相の出口側のコイル12の出口側端部tbとを、自身が装着される隣接のティース部11a間にて互いに近接して対向させたが、ティース部11aを挟んだ反対側に配置してもよい。
【0070】
・各相のコイル12の入口側端部ta及び出口側端部tbの引き出し方向について、ステータコア11の軸方向一方側に統一したが、軸方向両側に適宜引き出す態様としてもよい。
【0071】
・ステータコア11について、環状部11bが径方向外側、ティース部11aが径方向内側の延びる形状としていたが、これとは逆に、径方向内側に環状部、径方向外側に延びる形状のティース部のステータコアを用いたものであってもよい。
【0072】
・上記各実施形態は3相駆動用のモータM1~M4への適用であり、ロータの磁石磁極部とステータのコイル磁極部との数の比が(12±2)n:12n、若しくは(6n+3)±1:6n+3を満たす範囲内で、各磁極部の数を適宜変更してもよい。但し、nは1以上の整数である。第1、第2及び第4実施形態のモータM1,M2,M4は前式にて設定、第3実施形態のモータM3は後式にて設定されたものである。
【0073】
・3相駆動用のモータM1~M4への適用のみならず、3相以外の多相駆動のモータに適用してもよい。例えば、5相駆動であってもよい。5相駆動では、ロータの磁石磁極部とステータのコイル磁極部との数の比は(20±2)n:20nを満たすように設定される。
【0074】
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[1]
複数のティース部(11a)と複数の前記ティース部の基端部同士を互いに連結する形状をなす環状部(11b)とを有するステータコア(11)と、
複数の前記ティース部毎に導線(12a)の集中巻きにて複数層積み重なるように巻回されてなる複数のコイル(12,U1~U4,V1~V4,W1~W4)とを備え、
複数の前記コイルが多相結線態様をなし、多相のモータ入力端子(tu,tv,tw)から得る多相駆動電力に基づいて、複数の前記コイルを通じて回転磁界を発生させるように構成されてなるステータ(10A~10D)であって、
自相の前記モータ入力端子に電気的に近い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ入口側のコイル(U1,V1,W1)及び入口側端部(ta)とし、自相の前記モータ入力端子から電気的に遠い側の前記コイル及び前記コイルの導線の端部をそれぞれ出口側のコイル(U2~U4,V2~V4,W2~W4)及び出口側端部(tb)としたとき、
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とが、ともに最外層でかつ前記ティース部の先端部側に偏倚した位置に配置されて構成されている、ステータ。
【0075】
[2]
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とが、ともに最外層でかつ前記ティース部の先端部側に最も偏倚した位置に配置されて構成されている、上記[1]に記載のステータ。
【0076】
[3]
周方向に隣接する異相の前記コイルにおいて、第1相の前記入口側のコイルの前記入口側端部と第2相の前記出口側のコイルの前記出口側端部とは、自身が装着される隣接の前記ティース部間の互いに対向する態様にて構成されている、上記[1]又は[2]に記載のステータ。
【0077】
[4]
前記コイルの導線の前記入口側端部及び前記出口側端部は、前記ステータコアの軸方向一方側に配置されて構成されている、上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のステータ。
【0078】
[5]
前記ステータコアは、前記環状部が径方向外側に位置し、前記ティース部が径方向内側に延びる形状にて構成されている、上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のステータ。
【0079】
[6]
複数の前記コイルは、3相結線態様をなして構成されている、上記[1]から[5]のいずれか1つに記載のステータ。
【0080】
[7]
上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のステータ(10A~10D)と、
前記ステータにて生じる回転磁界に基づいて回転駆動するロータ(20A~20D)とを備えて構成されている、モータ。
【0081】
[8]
前記ステータは、3相結線態様をなす複数の前記コイルよりなるコイル磁極部と、
前記ロータは、永久磁石(23)よりなる磁石磁極部とを備え、
前記磁石磁極部と前記コイル磁極部との数の比が(12±2)n:12n(但しnは1以上の整数)を満たすように構成されている、上記[7]に記載のモータ。
【符号の説明】
【0082】
10A~10D ステータ、11 ステータコア、11a ティース部、11b 環状部、12 コイル、12a 導線、20A~20D ロータ、23 永久磁石、U1,V1,W1 コイル(入口側のコイル)、U2~U4,V2~V4,W2~W4 コイル(出口側のコイル)、ta 入口側端部、tb 出口側端部、tu,tv,tw モータ入力端子
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