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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003670
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】2相分離型液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20240105BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61Q11/00
A61K8/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102967
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠井 彩音
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC352
4C083AC692
4C083AC862
4C083AD352
4C083AD532
4C083AD662
4C083CC41
4C083DD05
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】振とうによる乳化のしやすさと静置後の分離のしやすさとを両立させる。
【解決手段】2相分離型液体口腔用組成物は、(A)コメヌカ油と、(B)流動パラフィンと、(C)不けん化物の含有量が4質量%以下である植物油と、(D)水と、を含有している。(A)コメヌカ油の含有量に対する(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕は、0.5以上である。(B)流動パラフィンの含有量に対する(A)コメヌカ油の含有量及び(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕は、1.0以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)コメヌカ油と、
(B)流動パラフィンと、
前記(A)コメヌカ油以外の植物油として(C)不けん化物の含有量が4質量%以下である植物油と、
(D)水と、を含有し、
前記(A)コメヌカ油の含有量に対する前記(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕は、0.5以上であり、
前記(B)流動パラフィンの含有量に対する前記(A)コメヌカ油の含有量及び前記(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕は、1.0以上である
2相分離型液体口腔用組成物。
【請求項2】
前記(C)植物油は、植物ステロールの含有量が0.2%以下である
請求項1に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【請求項3】
低級アルコールを含有していない
請求項1又は2に記載の2相分離型液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2相分離型液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、静置時には油層と水層との2相に分離している液体組成物であり、振とうすることによって一時的にエマルションを形成させた状態で使用する2相分離型液体口腔用組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-111663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような2相分離型液体口腔用組成物は、使用する際にはエマルションが形成されている状態の維持が求められている一方で、使用後に静置した際には再び2相に分離した状態に速やかに戻ることが外観上好ましい。すなわち、振とうによる乳化のしやすさと静置後の分離のしやすさとを両立させつつ、これらの特徴を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための2相分離型液体口腔用組成物は、(A)コメヌカ油と、(B)流動パラフィンと、前記(A)コメヌカ油以外の植物油として(C)不けん化物の含有量が4質量%以下である植物油と、(D)水と、を含有し、前記(A)コメヌカ油の含有量に対する前記(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕は、0.5以上であり、前記(B)流動パラフィンの含有量に対する前記(A)コメヌカ油の含有量及び前記(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕は、1.0以上であることを要旨とする。
【0006】
上記2相分離型液体口腔用組成物では、前記(C)植物油は、植物ステロールの含有量が0.2%以下であることが好ましい。
上記2相分離型液体口腔用組成物は、低級アルコールを含有していないことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2相分離型液体口腔用組成物によれば、振とうによる乳化のしやすさと静置後の分離のしやすさとを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、2相分離型液体口腔用組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の2相分離型液体口腔用組成物は、(A)コメヌカ油と、(B)流動パラフィンと、前記(A)コメヌカ油以外の植物油として(C)不けん化物の含有量が4質量%以下である植物油と、(D)水と、を含有している。(A)コメヌカ油の含有量に対する(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕は、0.5以上である。(B)流動パラフィンの含有量に対する(A)コメヌカ油の含有量及び(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕は、1.0以上である。
【0009】
2相分離型液体口腔用組成物が、上記の成分を上記の質量比で含有することによって、振とうによる乳化のしやすさと静置後の分離のしやすさとを両立させることができる。
以下では、2相分離型液体口腔用組成物を「口腔用組成物」と省略することもある。口腔用組成物は、静置時には水層と油層との2相に分離する液体組成物である。口腔用組成物は、振とうすることで2相が混ざり合いエマルションを形成する。エマルションが形成されている状態の口腔用組成物を静置すると、口腔用組成物は、再び2相に分離した状態に戻る。口腔用組成物は、振とう及び静置を繰り返すことによって、分離した状態と乳化した状態との間での状態変化を繰り返すことができる。口腔用組成物は、たとえば、口に含んで使用する洗口液である。口腔用組成物は、エマルションを形成させた状態で使用することが好ましい。
【0010】
ここで振とうとは、口腔用組成物の入った容器を、たとえば1秒間に2回の速さで所定回数上下に振りまぜる操作である。所定回数の一例は、30回である。また、水層と油層の2相に分離するとは、口腔用組成物が概ね2つの相に分離することが外観上視認できることを意味する。たとえば、2相の境界に油層及び水層とは外観上異なる乳白色の水及び油の微小な粒子の分散層を有していてもよい。このような分散層は、油層と水層とを合わせた全体の体積として5%以下であることが好ましい。
【0011】
また、上記「不けん化物」とは、植物油をアルカリと反応させ、脂肪酸塩(石けん)が生じるけん化反応を行った時に、けん化されない脂溶性成分を意味する。植物油の不けん化物には、一般に植物ステロールが含有されている。
【0012】
<(A)コメヌカ油>
コメヌカ油は、分離した状態にある口腔用組成物の油層に含有されている。
コメヌカ油は、米糠から抽出して得られる油であれば特に制限されない。コメヌカ油の抽出方法は特に制限されないが、たとえば、溶媒抽出法、圧搾法等を用いることができる。
【0013】
口腔用組成物は、一種類のコメヌカ油を単独で含有するものであってもよいし、二種類以上のコメヌカ油を組み合わせて含有するものであってもよい。コメヌカ油は、市販のコメヌカ油を用いることができる。
【0014】
口腔用組成物におけるコメヌカ油の含有量は、特に制限されないが、たとえば、1.0質量%以上20質量%以下である。以下では、口腔用組成物における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記することがある。上記含有量の上限値は、15%であることが好ましく、より好ましくは10%である。上記含有量の下限値は、4%であることが好ましく、より好ましくは8%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、又は18%であってもよい。
【0015】
<(B)流動パラフィン>
流動パラフィンは、分離した状態にある口腔用組成物の油層に含有されている。
流動パラフィンは、炭素数15以上35以下程度の鎖式飽和炭化水素の混合物を意味するものとする。
【0016】
口腔用組成物が含有する流動パラフィンの種類は特に制限されないが、たとえば、口腔用組成物は、40℃における動粘度が4.0mm/s以上40.0mm/s以下である流動パラフィンを含有していることが好ましい。上記動粘度の上限値は、20.0であることが好ましく、より好ましくは15.0である。上記動粘度の下限値は、9.0であることが好ましく、より好ましくは12.0である。上記40℃における動粘度は、公知の粘度計を用いて測定することができる。
【0017】
たとえば、口腔用組成物は、密度が15℃で0.80g/cm以上0.90g/cm以下である流動パラフィンを含有していることが好ましい。上記密度の上限値は、0.88であることが好ましく、より好ましくは0.85である。上記密度の下限値は、0.83であることが好ましく、より好ましくは0.84である。
【0018】
たとえば、口腔用組成物は、数平均分子量(Mn)が280以上400以下である流動パラフィンを含有していることが好ましい。上記数平均分子量(Mn)の上限値は、370であることが好ましく、より好ましくは340である。上記数平均分子量(Mn)の下限値は、300であることが好ましく、より好ましくは320である。
【0019】
上記数平均分子量(Mn)の測定方法は特に制限されないが、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。具体的には、数平均分子量(Mn)の測定は、下記の条件で行うことができる。測定結果から、市販の単分散ポリスチレンを用いて作成した一次近似による検量線に基づいて数平均分子量(Mn)を求めることができる。
【0020】
装置:Waters社製150-C ALC/GPC
検出器:RI検出器
移動相:o-ジクロロベンゼン(高速液体クロマトグラフ用)
試料濃度:1%溶液
流量:1.0mL/分
カラム:昭和電工(株)製AT-807Sを1本と東ソー(株)製TSK-gelGMH-H6を2本とを直列に連結
カラム温度:140℃
注入量:0.5mL
口腔用組成物は、一種類の流動パラフィンを単独で含有するものであってもよいし、二種類以上の流動パラフィンを組み合わせて含有するものであってもよい。流動パラフィンは、市販の流動パラフィンを用いることができる。
【0021】
口腔用組成物における流動パラフィンの含有量は、特に制限されないが、たとえば、2%以上25%以下である。上記含有量の上限値は、20%であることが好ましく、より好ましくは15%である。上記含有量の下限値は、6%であることが好ましく、より好ましくは10%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、又は24%であってもよい。
【0022】
<(C)植物油>
植物油は、分離した状態にある口腔用組成物の油層に含有されている。
植物油は、不けん化物の含有量が4質量%以下であれば、特に制限されない。好ましくは、植物ステロール(フィトステロールともいう。)の含有量が0.2%以下の植物油である。植物油としては、たとえば、オリーブ油、アボカド油等が挙げられる。
【0023】
オリーブ油は、Olea europaea L.(Oleaceae)の果実を圧搾して得た脂肪油である。たとえば、オリーブ油における不けん化物の含有量は、1.5%以下である。たとえば、オリーブ油が含有する不けん化物における植物ステロールの含有量は、0.2%以下である。
【0024】
アボカド油は、ワニナシ(Persea americana Mill.又はPersea gratissima C.F.Gaertn.又はLauraceae)の果実から得た脂肪油である。たとえば、アボカド油における不けん化物の含有量は、4%以下である。たとえば、アボカド油が含有する不けん化物における植物ステロールの含有量は、0.1%以下である。
【0025】
口腔用組成物は、一種類の植物油を単独で含有するものであってもよいし、二種類以上の植物油を組み合わせて含有するものであってもよい。二種類以上の植物油を組み合わせる場合には、植物油全体に対する不けん化物の含有量が4質量%以下であればよい。植物油は、市販の植物油を用いることができる。たとえば、食用又は化粧料用の植物油を用いることができる。
【0026】
口腔用組成物における植物油の含有量は、特に制限されないが、たとえば、4%以上30%以下である。上記含有量の上限値は、20%であることが好ましく、より好ましくは10%である。上記含有量の下限値は、5%であることが好ましく、より好ましくは7%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、又は28%であってもよい。
【0027】
<油層>
口腔用組成物では、(A)コメヌカ油の含有量に対する(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕が0.5以上である。たとえば、上記質量比〔(C)/(A)〕は、0.5以上10.0以下である。上記質量比〔(C)/(A)〕の上限値は、6.0であることが好ましく、より好ましくは2.0である。上記質量比〔(C)/(A)〕の下限値は、1.0であることが好ましく、より好ましくは1.5である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0又は9.5であってもよい。
【0028】
口腔用組成物では、(B)流動パラフィンの含有量に対する(A)コメヌカ油の含有量及び(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕が1.0以上である。たとえば、上記質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕は、1.0以上10.0以下である。上記質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕の上限値は、6.0であることが好ましく、より好ましくは2.0である。上記質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕の下限値は、1.3であることが好ましく、より好ましくは1.6である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0又は9.5であってもよい。
【0029】
口腔用組成物における油層の含有量は、特に制限されないが、たとえば、5%以上50%以下である。上記含有量の上限値は、40%であることが好ましく、より好ましくは30%である。上記含有量の下限値は、10%であることが好ましく、より好ましくは20%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば、10、15、20、25、30、35、40、又は45%であってもよい。
【0030】
口腔用組成物は、上記(A)、(B)及び(C)の成分に加えて、公知の油溶性成分を含有してもよい。これら油溶性成分は、口腔用組成物の効果を損なわない範囲で配合することができる。以下に示す油溶性の各成分は、一種類のみを単独で用いてもよいし二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
油溶性の成分としては、たとえば、香料、油溶性着色剤、油溶性有効成分等が挙げられる。
香料としては、たとえば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンファー、シトロネロール、1,8-シネオール、シンナミックアルデヒド、チモール、バニリルブチルエーテル、バニリン、フェネチルアルコール、ヘリオトロピン、ボルネオール、サリチル酸メチル、p-メンタン-3,8-ジオール、ラクトン酸メンチル、リナロール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、エチルリナロール、ワニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油、ベルガモット油、ライム油、セージ油、タイム油、ローズマリー油、ローレル油、桂皮油、ピメント油、シソ油、ユーカリ油、アニス油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油等が挙げられる。また、香料としては、アップルフレーバー、アプリコットフレーバー、ストロベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー、ピーチフレーバー、バナナフレーバー、メロンフレーバー等のフレーバー香料を用いることもできる。また、香料としては、オレンジフラワー等の天然香料を用いることもできる。
【0032】
油溶性着色剤としては、たとえば、赤色215号、赤色225号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号等の油溶性色素が挙げられる。油溶性着色剤としては、油溶性である公知の天然色素を用いることもできる。
【0033】
油溶性有効成分としては、たとえば、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、イブプロフェン等が挙げられる。
【0034】
<水層>
(D)成分としての水の種類は、特に制限されないが、たとえば、蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等を用いることができる。
【0035】
口腔用組成物は、(D)水に加えて、公知の水溶性成分を含有してもよい。これら水溶性成分は、口腔用組成物の効果を損なわない範囲で配合することができる。
たとえば、口腔用組成物は、エタノール等の低級アルコールを含有してもよい。なお、「低級アルコール」は、炭素数が5以下のアルコールを意味するものとする。エタノール等の低級アルコールは、口腔用組成物の使用者に刺激感を与える要因になりやすい。このため、口腔用組成物における低級アルコールの含有量は、少量であることが好ましく、例えば、5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、最も好ましくは0質量%である。ここで、0質量%とは、不純物レベルで含有する態様を許容するものとする。
【0036】
その他、水溶性の成分としては、湿潤剤、防腐剤、粘度調整剤、甘味成分、水溶性着色剤、pH調整剤、水溶性香料、水溶性有効成分等が挙げられる。以下に示す水溶性の各成分は、一種類のみを単独で用いてもよいし二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
湿潤剤としてはソルビット、キシリット、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0038】
防腐剤としては、メチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、グアガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤等が挙げられる。
【0039】
甘味成分としては、キシリトール、ステビアエキス、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK等が挙げられる。
水溶性着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、橙色205号、青色1号、緑色3号、緑色201号等の水溶性色素が挙げられる。水溶性着色剤としては、水溶性である公知の天然色素を用いることもできる。
【0040】
pH調整剤としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、これらの水溶性塩等が挙げられる。なお、口腔用組成物は、25℃におけるpHが6.0~8.5の範囲に調整されることが好ましい。
【0041】
水溶性有効成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ等のフッ化物、イプシロンアミノカプロン酸、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、アスコルビン酸、ジヒドロコレステロール、α-ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルリチン酸ジカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、クエン酸亜鉛、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物等が挙げられる。
【0042】
口腔用組成物は、その他の成分として、公知の界面活性剤を含有してもよいが、界面活性剤の含有量は少量であることが好ましく、より好ましくは「0」である。
<容器>
口腔用組成物を充填する容器は、常用される容器であればいずれの容器でもよいが、たとえば、プラスチック容器が挙げられる。プラスチック容器の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。その他の容器としては、ガラス容器等が挙げられる。
【0043】
口腔用組成物を充填する容器は、内容物を容器の外から視認できる容器であることが好ましい。たとえば、口腔用組成物を充填する容器は、透明及び半透明等の容器であることが好ましく、無色透明の容器であることがより好ましい。
【0044】
<作用及び効果>
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の口腔用組成物は、コメヌカ油に加えて、不けん化物の含有量が4%以下である植物油をさらに含有している。より詳しくは、本実施形態の口腔用組成物は、不けん化物の含有量が4%以下である植物油を、コメヌカ油及び流動パラフィンの含有量に対して、所定の割合で含有している。一般に、コメヌカ油における不けん化物の含有量は5%以上10%以下程度である。そのため、コメヌカ油と流動パラフィンとが配合されているものの不けん化物の含有量が4%以下である植物油が配合されていない態様に比べて、本実施形態においては不けん化物の含有量は相対的に小さくなる。すなわち、本実施形態の口腔用組成物の油層では、油層全体に対する不けん化物の含有量の質量比が相対的に小さくなっている。
【0045】
ここで、不けん化物が含有している植物ステロールは、天然の乳化剤として知られている。すなわち、不けん化物は、乳化作用を奏する成分である。
本実施形態の口腔用組成物は、含有する不けん化物の質量比が相対的に小さくなっているため、不けん化物由来の乳化作用が相対的に低下しやすくなる。そのため、油層と水層とが2相に分離しやすくなる。
【0046】
本実施形態の効果について説明する。
(1)口腔用組成物は、振とうすることで水層と油層との2相が容易に混ざり合いエマルションを一時的に形成することができる。この状態の口腔用組成物を口腔内に適用することによって、水層が含有する成分の効果、及び油層が含有する成分の効果の両方を得ることができる。
【0047】
(2)口腔用組成物によれば、エマルションが形成されている状態の口腔用組成物を静置した場合に、速やかに2相に分離した状態に戻る。このため、口腔用組成物の使用者等は、口腔用組成物を使用する際以外では、水層と油層との2相に分離した口腔用組成物の外観を良好にすることができる。
【0048】
(3)口腔用組成物では、口腔用組成物を静置した場合に、口腔用組成物が充填されている容器の壁面への油滴の付着が少ない。すなわち、水層と油層との2相に分離した外観が良好になる。
【0049】
(4)たとえば、水層と油層との2相を有する組成物が、エタノール等の低級アルコールを含有している場合には、2相の分離しやすさが向上することが従来から知られている。また、エタノール等の低級アルコールは、刺激感を与える要因となることも周知である。このため、エタノール等の低級アルコールを含有する組成物は、分離しやすさが向上する一方で、使用者に刺激感を与えることがあった。
【0050】
この点、本実施形態の口腔用組成物は、エタノール等の低級アルコールを含有していない場合でも、水層と油層との2相が分離しやすい。すなわち、口腔用組成物を使用する際に口腔内に与える刺激感を軽減しつつ、水層と油層との分離しやすさを確保することができる。
【0051】
(5)口腔用組成物は、コメヌカ油を含有している。コメヌカ油は、たとえば抗菌作用を持つ脂肪酸を含有している。すなわち、口腔用組成物は、コメヌカ油に由来する抗菌作用を発揮することができる。口腔用組成物は、こうした抗菌作用を発揮するコメヌカ油を含有しつつ、振とうした場合にはエマルションを形成するとともに、静置した場合には容易に2相に分離することができる。
【実施例0052】
2相分離型液体口腔用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、2相分離型液体口腔用組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
【0053】
表1に示す実施例1~9、及び、表2に示す比較例1~11の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合、撹拌することによって製造した。オリーブ油とアボカド油は、不けん化物の含有量がそれぞれ、1.5質量%以下、4質量%以下であり、植物ステロールの含有量がそれぞれ、0.2%以下、0.1%以下である市販品を用いた。流動パラフィンは、40℃における動粘度が12.56mm/s、密度が0.843g/cm、数平均分子量(Mn)が323であるものを用いた。表1及び表2において、各成分の右側に記載した数値は、口腔用組成物における含有量(質量%)を意味する。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
(評価試験)
実施例1~9、及び比較例1~11について、分離面、壁面油滴付着、及び分離時間を評価した。以下に、評価方法及び評価基準を示す。
【0056】
<分離面の評価>
実施例1~9、及び比較例1~11の各口腔用組成物について、振とうによってエマルションを形成させた後、5日間静置した。その後、各組成物の外観を目視によって評価した。なお、評価は、5人の評価者が行った。過半数を占める評価を最終的な評価とした。結果を表1及び表2に示す。
【0057】
・評価基準
○(良好):水層と油層の分離面に白濁した層がない。
×(不可):水層と油層の分離面に白濁した層がある。
【0058】
<壁面油滴付着の評価>
実施例1~9、及び比較例1~11の各口腔用組成物について、振とうによってエマルションを形成させた後、5日間静置した。その後、各口腔用組成物の外観を目視によって評価した。なお、評価は、5人の評価者が行った。過半数を占める評価を最終的な評価とした。結果を表1及び表2に示す。
【0059】
・評価基準
○(良好):直径5mm以上の油滴が容器の壁面に付着していない。
×(不可):直径5mm以上の油滴が容器の壁面に付着している。
【0060】
<分離時間の評価>
実施例1~9、及び比較例1~11の各口腔用組成物について、振とうによってエマルションを形成させた後、5日間静置した。その後、1秒間に2回の速さで上下に30回振りまぜることで振とうした後に再び静置した。静置してから、水層と油層との2相が分離したことを目視で確認できるまでの時間を計測した。なお、評価は、5人の評価者が行った。5人の評価値の平均値を算出して最終的な評価値とした。結果を表1及び表2に示す。
【0061】
<総合評価>
以下の基準によって総合評価を行った。
○(良好):分離面の評価及び壁面油滴付着の評価が共に良好であり、且つ分離時間が180分以内である。
【0062】
×(不可):分離面の評価及び壁面油滴付着の評価のうち少なくとも一方が不可である。または、分離時間が180分よりも長い。
(評価結果)
表1に示すように、実施例1~9では、分離面の評価及び壁面油滴付着の評価が良好であった。すなわち、実施例1~9は、水層と油層との2相に分離した状態において、外観が良好であることがわかる。
【0063】
実施例1~9では、分離時間が180分以内であった。すなわち、実施例1~9は、振とうによってエマルションを形成させた後でも、静置してから180分経過後には、水層と油層との2相に分離した状態に戻る。
【0064】
一方で、(C)植物油を含有していない比較例1は、分離面に白濁した層が見られるとともに、分離時間が長かった。(C)植物油を含有しているものの、質量比〔(C)/(A)〕が0.5未満であり且つ質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕が1.0未満である比較例2~5は、分離面の評価が不可であった。(A)コメヌカ油及び(C)植物油を含有していない比較例6は、分離面の評価が良好であるものの、容器の壁面に油滴の付着が見られた。(B)流動パラフィンを含有していない比較例7~11は、分離面に白濁した層が見られた。
【0065】
以上の結果から、実施例1~9では、振とうした場合には容易にエマルションを形成することができるとともに、静置した場合には容易に2相に分離することができるという効果が得られることがわかる。
【0066】
こうした効果は、以下の構成によって得られるものであることがわかる。すなわち、(A)コメヌカ油と、(B)流動パラフィンと、(C)不けん化物の含有量が4質量%以下である植物油と、(D)水と、を含有している口腔用組成物である。上記口腔用組成物では、(A)コメヌカ油の含有量に対する(C)植物油の含有量の質量比〔(C)/(A)〕が0.5以上である。さらに上記口腔用組成物では、(B)流動パラフィンの含有量に対する(A)コメヌカ油の含有量及び(C)植物油の含有量の合計の質量比〔[(A)+(C)]/(B)〕が1.0以上である。
【0067】
また、実施例1~9では、コメヌカ油を含有しているため、コメヌカ油に由来する抗菌作用を期待できる。
(処方例)
2相分離型液体口腔用組成物の処方例を表3に示す。
【0068】
表3において、各成分の右側に記載した数値は、2相分離型液体口腔用組成物における含有量(質量%)を意味する。
【0069】
【表3】
(試薬の詳細)
実施例欄に記載の各試験に用いた試薬の詳細は、以下の通りである。
【0070】
コメヌカ油:「サンブラン米油(圧搾米糠油)」、三和油脂株式会社
流動パラフィン:「モレスコホワイトP-70」、株式会社MORESCO