(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036701
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/088 20060101AFI20240311BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240311BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61M25/088
A61M25/00 620
A61M25/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007432
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堀場 健一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大
(72)【発明者】
【氏名】杉村 春佳
(72)【発明者】
【氏名】吉川 光則
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA14
4C267AA28
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB16
4C267BB20
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG02
4C267GG21
4C267HH01
4C267HH07
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】押し込み強度および引き抜き強度を向上させ、かつ構成部材間の滑りや摩耗を低減できる、中間開口を有するカテーテルを提供する。
【解決手段】先端チューブ20および先端チューブ20から基端側へ延在する線状シャフト30を有する中間開口を有するカテーテルであって、先端チューブ20は、外層26と、外層26の径方向内側の軸心方向の少なくとも一部に配置される中層25と、中層25の径方向内側に配置される補強層24と、を有し、線状シャフト30は、外層26と中層25の間に配置され、補強層24から径方向の外側へ離間している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有する中間開口を有するカテーテルであって、
前記先端チューブは、外層と、前記外層の径方向内側の軸心方向の少なくとも一部に配置される中層と、前記中層の径方向内側に配置される補強層と、を有し、
前記線状シャフトは、前記外層と前記中層の間に配置され、前記補強層から径方向の外側へ離間していることを特徴とする中間開口を有するカテーテル。
【請求項2】
前記中層は、金属材料により形成される円管状のカラー部材、構造を中継するブリッジ構造の部材、または樹脂材料により形成される部材である請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記中層は、前記先端チューブの周方向において少なくとも前記線状シャフトが配置される範囲を含んで形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項4】
前記中層は、前記先端チューブの周方向において全周的に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項5】
前記中層と前記外層の色が異なることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項6】
前記補強層は、少なくとも1つの線材が巻回されたコイルまたは複数の線材が編組みされたブレードにより形成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項7】
前記補強層の径方向内側に配置されて内周面を形成する内層を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項8】
前記外層および前記中層は、樹脂材料により形成されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項9】
前記線状シャフトと前記補強層の離間距離は、前記先端チューブの厚み方向において、0.01~0.03mmであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【請求項10】
ガイディングカテーテルに挿入される治療用カテーテルをガイドするため、前記ガイディングカテーテルの先端開口から前記治療用カテーテルの先端を突出させ、前記治療用カテーテルに沿って冠動脈内を末梢へ進め、前記治療用カテーテルに設けられて治療を行うための治療部を病変部に配置するためのガイドエクステンションカテーテルであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の中間開口を有するカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端チューブと、先端チューブに連結されて先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトとを有する中間開口を有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等の生体管腔へ挿入して治療や診断等を行うための治療用カテーテル(バルーンカテーテルやステント留置用カテーテルなど)を目的部位へ案内するために、ガイディングカテーテルが用いられる。
【0003】
例えば、冠動脈の治療を行うPCIの1つである経皮的冠動脈形成術(PTCA)では、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤを手首や大腿部の皮膚から動脈内へ挿入し、冠動脈の入口へ到達させる。次に、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルを動脈内に挿入し、続いて、ガイディングカテーテル用のガイドワイヤを抜去し、冠動脈口に係合させる。ガイディングカテーテルの内腔に治療用カテーテル用ののより細いガイドワイヤを挿入して、冠動脈内の病変部を通過させる。この後、治療用カテーテル用ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを挿入し、ガイディングカテーテル先端開口からバルーンカテーテル先端を突出させ、病変部を通過したガイドワイヤに沿って冠動脈内を末梢へ進め、バルーンを病変部に配置し、バルーンを拡張させて治療を行う。
【0004】
ガイディングカテーテルの先端を所定の部位(例えば、冠動脈口)に係合させた後に、治療用カテーテルをガイディングカテーテル先端開口から病変部まで湾曲あるいは屈曲した冠動脈内をスムーズに進めるため、ガイドエクステンションカテーテルが使用される場合がある(例えば、特許文献1および2を参照)。すなわち、ガイドエクステンションカテーテルは、ガイディングカテーテルよりも病変部の近くまで挿入することが可能であり、さらに、治療用カテーテルに安定したバックアップ力を与えることができる。
【0005】
ガイドエクステンションカテーテルは、ガイディングカテーテルの内腔を移動して、ガイディングカテーテル先端開口から先端側へ突出可能な先端チューブと、先端チューブに連結されて先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトとを有する、いわゆる中間開口を有するカテーテルであり、中間開口は、ここでは先端チューブの基端開口部である。ガイドエクステンションカテーテルは、先端チューブの基端側が線状シャフトと接続されているため、管状の部位(先端チューブ)の長さが短い。このため、ガイディングカテーテルの内部にガイドワイヤを挿入した状態で、ガイドワイヤを抜去することなく、ガイドエクステンションカテーテルをガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルに対して抜き差しすることが容易となる。すなわち、このような手技を行う際には、ガイディングカテーテルよりも基端側に突出しているガイドワイヤの長さが、ガイドエクステンションカテーテルの管状の部位の長さよりも長いことが必要である。ガイドエクステンションカテーテルは、線状シャフトを有することで、管状の部位の長さを短くできるため、必要以上に長いガイドワイヤを使用する必要がなく、手技が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2895227号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3042685号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2には、先端チューブに補強体が配置され、補強体に線状シャフトが接触したガイドエクステンションカテーテルが記載されている。さらに、補強体に線状シャフトが溶接されてもよいことが記載されている。しかしながら、補強体に線状シャフトが溶接されていない場合には、先端チューブと補強体は相対的に滑り、摩耗が生じる可能性がある。また、先端チューブと補強体が相対的に滑ると、カテーテルの押し込み強度および引っ張り強度が低下する。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、押し込み強度および引き抜き強度を向上させ、かつ構成部材間の滑りや摩耗を低減できる、中間開口を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する中間開口を有するカテーテルは、先端チューブおよび前記先端チューブから基端側へ延在する線状シャフトを有する中間開口を有するカテーテルであって、前記先端チューブは、外層と、前記外層の径方向内側の軸心方向の少なくとも一部に配置される中層と、前記中層の径方向内側に配置される補強層と、を有し、前記線状シャフトは、前記外層と前記中層の間に配置され、前記補強層から径方向の外側へ離間していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した中間開口を有するカテーテルは、中層と外層の間に線状シャフトを挟んで強固に固定でき、押し込み強度および引き抜き強度を向上できる。また、線状シャフトと補強層が離れているため、線状シャフトと補強層が直接接触することにより生じ得る構成部材間の滑りや摩耗を抑制できる。
【0011】
前記中層は、金属材料により形成される円管状のカラー部材、構造を中継するブリッジ構造の部材、または樹脂材料により形成される部材であってもよい。これにより、中層の強度を適切に設定して、中層と外層の間に線状シャフトを強固に固定でき、押し込み強度および引き抜き強度を向上できる。
【0012】
前記中層は、前記先端チューブの周方向において少なくとも前記線状シャフトが配置される範囲を含んで形成されてもよい。これにより、中層を全周的に配置する必要がないため、先端チューブの外径を小さくできる。
【0013】
前記中層は、前記先端チューブの周方向において全周的に形成されてもよい。これにより、製造時において中層の周方向の位置を考慮する必要がなくなり、製造が容易となる。また、先端チューブの強度を容易に向上させることができる。
【0014】
前記中層と前記外層の色が異なってもよい。これにより、製造時に中層と外層を判別しやすくなるため、製造時の取り違えを防止しやすくなり、かつ製造が容易となる。
【0015】
前記補強層は、少なくとも1つの線材が巻回されたコイルまたは複数の線材が編組みされたブレードにより形成されてもよい。これにより、先端チューブを薄く形成できるとともに、先端チューブをキンクし難くすることができる。
【0016】
前記カテーテルは、前記補強層の径方向内側に配置されて内周面を形成する内層を有してもよい。これにより、内層を、先端チューブの内腔を他のデバイスが通過しやすい材料や構造により形成することが可能となる。
【0017】
前記外層および前記中層は、樹脂材料により形成されてもよい。これにより、外層と中層の接合性を高めて、外層と中層の間に挟まれる線状シャフトを、先端チューブに対して強固に固定できる。
【0018】
前記線状シャフトと前記補強層の離間距離は、前記先端チューブの厚み方向において、0.01~0.03mmであってもよい。これにより、線状シャフトが補強層から離れ過ぎず、先端チューブの外径や厚さを適切な大きさに維持できる。
【0019】
前記カテーテルは、ガイディングカテーテルに挿入される治療用カテーテルをガイドするため、前記ガイディングカテーテルの先端開口から前記治療用カテーテルの先端を突出させ、前記治療用カテーテルに沿って冠動脈内を末梢へ進め、前記治療用カテーテルに設けられて治療を行うための治療部を病変部に配置するためのガイドエクステンションカテーテルであってもよい。これにより、術者が体外に位置する線状シャフトを操作する際に、ガイドエクステンションカテーテルは、押し込み力、引き抜き力や回転力を先端チューブへ効果的に伝達させることができ、かつ手術中に先端チューブと線状シャフトが分離することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る中間開口を有するカテーテルであるガイドエクステンションカテーテル、ダイレータおよびガイディングカテーテルを示す平面図である。
【
図2】ガイドエクステンションカテーテルを示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は線状シャフトの一部拡大図である。
【
図3】ガイドエクステンションカテーテルを示す図であり、(A)は
図2のA-A線に沿う断面図、(B)は
図2のB-B線に沿う断面図、(C)は
図2のC-C線に沿う断面図である。
【
図4】ダイレータを示す図であり、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)はダイレータ線状シャフトの一部拡大図である。である。
【
図6】ガイドエクステンションカテーテルにダイレータを組み立てたカテーテル組立体を示す側面図である。
【
図7】第1変形例を示す中間開口を有するカテーテルの図であり、(A)は側面図、(B)は先端チューブを透過して示す側面図である。
【
図8】第2変形例を示す中間開口を有するカテーテルの平面図である。
【
図9】第3変形例を示す中間開口を有するカテーテルおよびダイレータの側面図である。
【
図10】第4変形例を示す中間開口を有するカテーテルおよびダイレータの側面図である。
【
図11】第5変形例を示すダイレータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0022】
本実施形態に係る中間開口を有するカテーテルは、
図1に示すように、先端ソフトチップ100Aを有するガイディングカテーテル100に挿入されて、ガイディングカテーテル100の先端開口101から突出し、治療用カテーテルをガイドするためのチューブをガイディングカテーテル100から先端側へ延長するために使用されるガイドエクステンションカテーテル10である。ガイドエクステンションカテーテル10には、ラピッドエクスチェンジ型のダイレータ50が挿入可能である。
【0023】
ガイドエクステンションカテーテル10は、
図1~3に示すように、管状の先端チューブ20と、先端チューブ20に連結されて先端チューブ20から基端側へ延在する線状シャフト30とを備えている。
【0024】
先端チューブ20は、ガイディングカテーテル100の内腔を移動して、ガイディングカテーテル100の先端開口101から先端側へ突出可能である。これにより、先端チューブ20は、ガイディングカテーテル100から連続する内腔を提供する。すなわち、手技において、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ20は、ガイディングカテーテル100よりも病変部の近くまで挿入されて、治療用カテーテルに安定したバックアップを与えることができる。
【0025】
先端チューブ20は、先端から基端へ貫通する内腔を有する管体であり、先端側に配置される管状部21と、管状部21の基端側に配置される半管部22とを備えている。管状部21は、周方向に360度の範囲で材料が設けられて円管状に形成される。半管部22は、周方向に略180度の範囲で材料が設けられて、ハーフパイプ状に形成される。なお、半管部22の材料が設けられる角度範囲は、360度未満であれば、特に限定されず、例えば180度未満であってもよい。また、半管部22は、設けられなくてもよい。管状部21の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば200mm~400mmである。半管部22の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば5mm~200mmである。先端チューブ20の内径は、特に限定されないが、例えば1.3mm~1.5mmである。先端チューブ20の外径は、特に限定されないが、例えば1.55mm~1.75mmである。
【0026】
先端チューブ20の剛性は、基端側から先端側へ向かって段階的に、または徐々に減少することが好ましい。これにより、先端チューブ20は、先端側ほど剛性が減少して柔軟な構造となるため、先端部に柔軟性を付与しつつ、基端部に高い押し込み性を付与できる。なお、先端チューブ20の剛性は、基端側から先端側へ向かって変化しなくてもよい。先端チューブ20は、最先端に、例えばポリウレタン等の柔軟な材料により形成される先端チップ21Aを有している。
【0027】
先端チューブ20は、内層23と、補強層24と、中層25と、外層26と、先端マーカー27と、基端マーカー28とを備えている。管状部21は、内層23、補強層24、中層25、外層26、先端マーカー27および基端マーカー28により形成される。半管部22は、内層23、中層25および外層26により形成されるが、内層23と外層26あるいは外層26のみでもよい。
【0028】
内層23は、先端チューブ20の管状部21および半管部22の内周面を形成する層である。内層23は、補強層24の径方向内側に配置される。内層23は、内部をガイドワイヤ、治療用カテーテルまたはダイレータ50等が摺動しやすいように、低摩擦材料により形成されることが好ましい。低摩擦材料は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)等のフッ素系樹脂やシリコン樹脂であるが、これらに限定されない。内層23の厚みは、特に限定されないが、例えば0.0001mm~0.1mmm、好ましくは0.005mm~0.05mm、より好ましくは0.01mm~0.03mmである。
【0029】
補強層24は、先端チューブ20の管状部21を補強するために、少なくとも1つの線材が螺旋状に巻回されたコイル、または複数の線材が編組みされた複数のブレードにより形成される。補強層24は、内層23の径方向外側に配置され、中層25の径方向内側に配置される。コイルやブレードは、例えばステンレス鋼、タングステン線などの金属材料からなる線材により形成され、線材の断面形状は丸、楕円、長円、長方形などの形状であり、線材の径、幅、厚さは特に限定されず、適宜設定される。補強層24がコイルにより形成される場合、長軸と線材の交差角度は特に限定されず、適宜設定され長軸方向に沿って一定でも変化してもよい。補強層24がブレードにより形成される場合、編み目の一つをピック(pick)としたピック数、ひとつのピックに含まれる素線の数である持ち数(number of ends)、1周にあるピックの数である打ち数(number of spindles)は適宜設定される。また補強線の形状や寸法は、巻き方向によって異なるものを用いてもよい。補強層24のコイルまたはブレードを形成する線材は、隙間を有して疎ピッチで配置されても、隙間なく密ピッチで配置されてもよい。補強層24は、タングステン線を密ピッチで配置される場合には、造影性を向上させる造影マーカーとすることができる。
【0030】
中層25は、先端チューブ20の管状部21および半管部22の内層23および補強層24の外周面を囲む層である。中層25は、補強層24の径方向外側に配置され、外層26の径方向内側に配置される。中層25は、補強層24が設けられない範囲においては、内層23に接合されている。中層25は、線状シャフト30の径方向内側に配置される。中層25は、先端チューブ20の周方向において、全周的に形成されてもよく、または少なくとも線状シャフト30が配置される範囲を含んで部分的に形成されてもよい。中層25は、半管部22において周方向に部分的に形成されるが、半管部22には中層25を設けなくてもよい。管状部21において周方向に全周的に形成されるが、管状部21においても周方向に部分的に形成されてもよい。
【0031】
中層25の構成材料は、特に限定されないが、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリイミド系等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を用いることができる。または各種エラストマーのうち、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等を好適に使用できる。中層25の厚みは、特に限定されないが、例えば0.0001mm~0.1mm、好ましくは0.005mm~0.05mm、より好ましくは0.01mm~0.03mmである。また、中層25は、X不透過性材料(造影剤)を材料中に含んでもよい。X線不透過性の金属は、例えば金、白金、銀、ビスマス、タングステンまたこれらのうち2種類以上の合金(例えば、白金-タングステン)、硫酸バリウム、もしくは他の金属との合金(例えば、金-イリジウム、白金-イリジウム、白金-ニッケル)などが挙げられる。また、中層25の構成材料は、例えばステンレス鋼、ニッケル・チタン合金等例えば金、白金、銀、ビスマス、タングステンまたこれらのうち2種類以上の合金(例えば、白金-タングステン)、硫酸バリウム、もしくは他の金属との合金(例えば、金-イリジウム、白金-イリジウム、白金-ニッケル)であってもよく、金属材料である中層25が線状シャフト30や補強層24との間に樹脂を設けてもよく、樹脂として接着剤でもよい。
【0032】
外層26は、先端チューブ20の管状部21および半管部22の外周面を形成する層である。外層26は、管状部21および半管部22の中層25の外周面を囲んでいる。すなわち、外層26は、中層25の径方向外側に配置される。外層26は、さらに、管状部21に設けられる先端マーカー27および基端マーカー28の外周面を囲んでいる。外層26は、中層25との間に、線状シャフト30を挟んで固定している。このため、線状シャフト30は、補強層24に直接的に接触しない。線状シャフト30および補強層24は、金属材料により形成される場合、接触すると滑りやすく、かつ摩耗を生じやすい。これに対し、補強層24と線状シャフト30の間に樹脂材料により形成される中層25が設けられるため、補強層24と線状シャフト30がそれぞれ樹脂材料に固定されるため線状シャフト30および補強層24の滑りや摩耗を抑制できる。
【0033】
外層26は、線状シャフト30が埋設される部位の外表面に凸部29を有している。凸部29は、先端チューブ20の軸心と直交する断面において、径方向外側へ突出している。凸部29は、折り返されるように曲がった線状シャフト30に対応する位置に形成される。このため、先端チューブ20の内部に線状シャフト30が埋設される部位において、外層26が薄くなり過ぎない。したがって、先端チューブ20の強度を向上でき、先端チューブ20から線状シャフト30が抜けることを抑制でき、線状シャフト30を過剰に細くする必要がなくなり、かつガイドエクステンションカテーテル10の押し込み強度および引き抜き強度を向上できる。
【0034】
外層26は、先端チューブ20の軸心と直交する断面において、2つの凸部29が形成される部位と、1つの凸部29が形成される部位とを有する。2つの凸部29が形成される部位は、一つの凸部29が形成される部位よりも先端側に配置される。2つの凸部29が形成される部位には、線状シャフト30の先端部の、折り返されて2本の線材が並ぶように存在する部位が埋設されている。1つの凸部29が形成される部位は、線状シャフト30の先端部の折り返された部位よりも基端側で、1本の線材が存在する部位が埋設されている。2つの凸部29の間には、凹部29Aが形成される。2つの凸部29は、線状シャフト30の後述する半円部34が位置する最先端にて連続してつながっている。なお、凸部29は、形成されなくてもよい。
【0035】
外層26の構成材料は、特に限定されないが、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリイミド系等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を用いることができる。または各種エラストマーのうち、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、等を好適に使用できる。外層26の厚みは、特に限定されないが、例えば0.0001mm~0.1mm、好ましくは0.005mm~0.05mm、より好ましくは0.01mm~0.03mmである。である。外層26の外周面には、血管やガイディングカテーテル100の内壁面との通過性を向上させるために潤滑性材料がコーティングされてもよい。潤滑性材料は例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、β-メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体と、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド等の親水性単量体との共重合体;上記親水性単量体から構成される(共)重合体;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子物質;多糖類、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、水溶性ポリアミド、ポリ(2-ヒドロキシエチル(メタ)クリレート)、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。好ましくはアクリルアミドを含むポリアクリルアミド共重合体などの親水性潤滑ポリマーであり、フッ素系樹脂などの疎水性潤滑ポリマーであってもよい。
【0036】
外層26および中層25は、例えば、金属材料ではなく樹脂材料により形成される。これにより、外層26および中層25は、高い接合強度を有することができる。このため、外層26および中層25は、挟まれる線状シャフト30を、先端チューブ20に対して強固に固定できる。また外層26と中層25は、同じ材料を用いてもよく、あるいは色の異なるものや硬度が異なるものを用いてもよい。
【0037】
先端マーカー27および基端マーカー28は、X線透視下で視認できるX線不透過性の金属を含んでいる。先端マーカー27および基端マーカー28は、例えばリング状の部材であるが、C字状断面の部材や、コイル等であってもよい。X線不透過性の金属は、例えば金、白金、銀、ビスマス、タングステンまたこれらのうち2種類以上の合金(例えば、白金-タングステン)、硫酸バリウム、もしくは他の金属との合金(例えば、金-イリジウム、白金-イリジウム、白金-ニッケル)などが挙げられる。先端マーカー27および基端マーカー28がX線不透過性の金属を含んでいる場合、術者は、体内に挿入された先端チューブ20の位置を、X線造影下で把握することができる。
【0038】
先端マーカー27は、管状部21の先端部の内層23と外層26の間に挟まれて配置される。なお、先端マーカー27が配置される位置は、内層23と外層26の間に限定されず、例えば内層23と中層25の間、中層25と外層26の間あるいは、外層26の外側に配置されてもよい。先端マーカー27は、補強層24よりも先端側に配置される。したがって、先端マーカー27は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24と重ならない。これにより、先端チューブ20の厚さを薄くでき、かつ外径を小さくできる。なお、先端マーカー27は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24と重なってもよい。また、先端マーカー27は、設けられなくてもよい。
【0039】
基端マーカー28は、管状部21の基端部の中層25と外層26の間に挟まれて配置される。なお、基端マーカー28が配置される位置は、中層25と外層26の間に限定されず、例えば内層23と中層25の間や内層23と外層26の間あるいは、外層26の外側に配置されてもよい。基端マーカー28は、補強層24よりも基端側に配置される。したがって、基端マーカー28は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24と重ならない。これにより、先端チューブ20の厚さを薄くでき、かつ外径を小さくできる。なお、基端マーカー28は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24と重なってもよい。また、基端マーカー28は、設けられなくてもよい。
【0040】
線状シャフト30は、可撓性を有する線材であり、丸線、平線あるいは円弧線でもよいが丸線が好ましく、先端チューブ20に連結されて先端チューブ20から基端側へ延在している。線状シャフト30は、直線状の基部31と、基部31の先端側に配置されて形状付けられた先端形状部32とを備えている。なお、基部31は、可撓性を有して柔軟に曲がるため、常に直線状である必要はない。先端形状部32は、基部31から先端側へ延在する中間直線部33と、中間直線部33の先端側に配置される半円部34と、半円部34から中間直線部33が配置される側の反対側へ延在する先端直線部35とを備えている。
【0041】
中間直線部33は、半管部22の基端面から、管状部21の基端部まで到達している。したがって、中間直線部33の先端は、管状部21に位置している。中間直線部33は、基部31の軸心上に位置して基部31から先端側へ延びる延長線L1に対して、0度を超える微小な角度で傾斜している。したがって、中間直線部33は、延長線L1から一方側へずれて配置される。あるいは中間直線部33が延長線L1と平行あるいは延長線L1上にあってもよい。
【0042】
中間直線部33の基端は、半管部22の基端より基端側に位置してもよく、半管部22の先端側に位置してもよい。中間直線部33が基部31の軸心上に位置して基部31から先端側へ延びる延長線L1に対して傾斜する始点は、半管部22内にあってもよく、管状部21内にあってもよい。
【0043】
半円部34は、管状部21の基端部で略半円を描くように方向を約180度変更させて曲がっている。半円部34は、延長線L1と交差するように配置される。なお、半円部34は、延長線と厳密に交差しなくてもよい。半円部34は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24と重なる位置に配置される。すなわち、先端チューブ20の軸心方向の所定の範囲内に、半円部34および補強層24の両方が設けられる。先端直線部35は、管状部21の中間直線部33と接する側と反対側の端部から、基端側へ延在している。先端直線部35は、延長線L1と略平行であるが、厳密に平行である必要はない。中間直線部33と先端直線部35の間には、延長線L1が配置される。中間直線部33、半円部34および先端直線部35は、同一平面上に配置される。先端直線部35の半円部34と接する側と反対側に位置する終端部36は、管状部21に位置している。なお、終端部36は、半管部22に位置してもよい。終端部36は、先端チューブ20の軸心方向において、補強層24よりも基端側に配置されている。半円部34は曲率半径が一定でなくてもよく、半楕円あるいは、半円部の方向が180度を超えてもよく、逆に180°に満たなくてもよい。
【0044】
線状シャフト30の先端チューブ20に埋設される部位は、中層25と外層26の間に配置され、補強層24から径方向の外側へ離間している。線状シャフト30と補強層24の離間距離は、特に限定されないが、先端チューブ20の厚み方向(管状部21の径方向)において、例えば0.01~0.03mmである。線状シャフト30は、補強層24と全く接触しないことが好ましいが、先端チューブ20に軸心方向の一部において部分的に接触してもよい。
【0045】
線状シャフト30は、外部へ露出している部位の全部あるいは少なくとも一部に、ガイディングカテーテル100の内壁面と低摩擦で摺動できるように、低摩擦材料が被覆されてもよい。低摩擦材料は、例えばフッ素系樹脂やシリコン樹脂であるが、これらに限定されない。線状シャフト30は、ガイディングカテーテル100の内壁面と摺動性を向上させるために、外部へ露出している部位の全部あるいは少なくとも一部に、潤滑性材料がコーティングされてもよい。
【0046】
線状シャフト30は、
図2(B)に示すように、基端側から先端側へ向かって、外径が一定の第1直線部40と、外径が減少する第1テーパ部41と、外径が一定の第2直線部42と、外径が減少する第2テーパ部43と、外径が一定の第3直線部44とを有している。第1直線部40は、基部31を形成する。第1テーパ部41は、基部31と中間直線部33の境界を含む部位を形成する。第2直線部42、第2テーパ部43、および第3直線部44の基端側の一部は、中間直線部33を形成する。第3直線部44の他の部位は、半円部34および先端直線部35を形成する。あるいは、先端直線部35、半円部34および中間直線部33が第2テーパ部43より先端側にあってもよく、すなわち先端形状部32が基部31よりも外径が小さくかつ、一定でもよい。線状シャフト30は、先端形状部32を所定の形状に形状付けられた後に、先端チューブ20に連結される。
【0047】
線状シャフト30は、基端マーカー28の外周面または内周面に、接着剤によって接着されている。線状シャフト30は、例えば中間直線部33と先端直線部35において基端マーカー28に接着されるが、接着される部位は特に限定されない。接着された基端マーカー28と線状シャフト30は、製造時において、接着された状態で組み込むことができ、製造が容易となる。また、線状シャフト30と基端マーカー28を、カシメや溶接等により固定する場合、線状シャフト30と基端マーカー28には変形が生じやすい。これに対し、基端マーカー28および線状シャフト30を接着により固定する場合には、これらに変形が生じにくい。このため、カテーテルの形状を安定させることができ、かつ低コストで製造できる。なお、線状シャフト30と基端マーカー28は、接着以外の方法で固定されてもよく、例えばカシメや溶接等により固定されてもよい。
【0048】
線状シャフト30の外径は、特に限定されないが、例えば0.05mm~1mmであり、先端から基端まで一定径でもよい。線状シャフト30の基部31の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば1100mm~1300mmである。線状シャフト30の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、ニッケル・チタン合金等を好適に使用できる。また、線状シャフト30の断面形状は、円形に限定されず、例えば長方形、正方形、楕円形等であってもよく、部位によって異なる形状であってもよい。線状シャフト30は、ガイディングカテーテル100への挿入長さを把握するために、基部31に目視で確認できる深度マーカーを有してもよい。
【0049】
ラピッドエクスチェンジ型のダイレータ50は、
図4および5に示すように、管状のダイレータ先端チューブ60と、ダイレータ先端チューブ60に連結されてダイレータ先端チューブ60から基端側へ延在するダイレータ線状シャフト70とを備えている。すなわち、ダイレータ50も、ガイドエクステンションカテーテル10と同様に、先端チューブと線状シャフトを有する中間開口を有するカテーテルである。ダイレータ50は、ガイドエクステンションカテーテル10と共に冠動脈に挿入され、かつ、冠動脈に生ずる狭窄部などの病変部までスムーズに誘導するための器具と呼ぶことができる。
【0050】
あるいはダイレータ50は、ガイドエクステンションカテーテル10と共に冠動脈に挿入され、かつ、冠動脈に生ずる狭窄部などの病変部を超えてスムーズに誘導し、これにより狭窄部を拡張する器具と呼ぶことができる。
【0051】
ダイレータ先端チューブ60は、先端から基端へ貫通する内腔を有する管体であり、先端側に配置される先端テーパ部61と、先端テーパ部61の基端側に配置された筒状部62と、筒状部62の基端側に配置された傾斜部63とを備えている。先端テーパ部61は、先端側へ向かってテーパ状に縮径している。
【0052】
あるいは、先端テーパ部61は、先端側へ向かってテーパ状に縮径し、さらにその先に、外径が一定の筒状部を有してもよい。筒状部62は、均一な外径および内径を有する円筒である。筒状部62の外径は、先端チューブ20の内径よりも、例えば0.05mm小さい。これにより、筒状部62は、先端チューブ20の内腔を、円滑に移動できる。筒状部62の内径は、挿入されるガイドワイヤの外径よりも大きい。これにより、筒状部62は、ガイドワイヤに沿って円滑に移動できる。傾斜部63は、軸心と直交する断面に対して傾斜する基端面を有している。なお、傾斜部63は、設けられなくてもよい。先端テーパ部61の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば3mm~30mmである。ダイレータ先端チューブ60の全体の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば100mm~450mmである。ダイレータ先端チューブ60は、ある程度の可撓性を有して柔軟であることが好ましい。このため、ダイレータ先端チューブ60の構成材料は、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリエーテルケトン、ポリイミド系等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を用いることができる。または各種エラストマーのうち、例えばポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、等を好適に使用できる。ダイレータ先端チューブ60は、上述したX不透過性材料(造影剤)を材料中に含んでもよい。
【0053】
あるいは、ダイレータ先端チューブ60は、上述したX不透過性材料(造影剤)を材料中に含んでもよく、または、X線不透過性の金属でできたマーカーを有してもよい。X線不透過性の金属は、例えば金、白金、銀、ビスマス、タングステンまたこれらのうち2種類以上の合金(例えば、白金-タングステン)、硫酸バリウム、もしくは他の金属との合金(例えば、金-イリジウム、白金-イリジウム、白金-ニッケル)などが挙げられる。X線不透過性の金属を含んでいる先端マーカーあるいは基端マーカー(図示せず)を設けた場合、術者は、体内に挿入されたダイレータ先端チューブ60の位置を、X線造影下で把握することができる。
【0054】
ダイレータ先端チューブ60は、例えば、ダイレータ線状シャフト70を金型内に配置した状態でインサート成形することにより形成される。
【0055】
ダイレータ線状シャフト70は、可撓性を有する線材であり、ダイレータ先端チューブ60に連結されてダイレータ先端チューブ60から基端側へ延在している。ダイレータ線状シャフト70は、直線状のシャフト基部71と、シャフト基部71の先端側に配置されて形状付けられたシャフト先端形状部72とを備えている。なお、シャフト基部71は、可撓性を有して柔軟に曲がるため、常に直線状である必要はない。シャフト先端形状部72は、シャフト基部71から先端側へ延在するシャフト中間直線部73と、シャフト中間直線部73の先端側に配置されるシャフト半円部74と、シャフト半円部74からシャフト中間直線部73が設けられる側の反対側へ延在するシャフト先端直線部75とを備えている。
【0056】
シャフト中間直線部73は、ダイレータ先端チューブ60の傾斜部63の基端側へ突出している部位の基端面から、筒状部62まで到達している。したがって、シャフト中間直線部73の先端は、筒状部62に位置している。シャフト中間直線部73は、シャフト基部71の軸心上に位置するとともにシャフト基部71から先端側へ延びる延長線L2に対して、0度を超える微小な角度で傾斜している。したがって、シャフト中間直線部73は、延長線L2から一方側へずれて配置される。
【0057】
シャフト半円部74は、筒状部62の基端部で略半円を描くように方向を約180度変更させて曲がっている。シャフト半円部74は、延長線L2と交差するように配置される。なお、シャフト半円部74は、延長線L2と厳密に交差しなくてもよい。シャフト先端直線部75は、シャフト半円部74のシャフト中間直線部73と接する側と反対側の端部から、基端側へ延在している。シャフト先端直線部75は、延長線L2と略平行であるが、厳密に平行である必要はない。シャフト中間直線部73とシャフト先端直線部75の間には、延長線L2が配置される。シャフト中間直線部73、シャフト半円部74およびシャフト先端直線部75は、同一平面上に配置される。シャフト先端直線部75のシャフト半円部74と接する側と反対側のシャフト終端部76は、筒状部62、もしくは傾斜部63に位置している。シャフト半円部74は曲率半径が一定でなくてもよく、半楕円あるいは、方向が180度を超えてもよく、逆に180°に満たなくてもよい。
【0058】
ダイレータ線状シャフト70は、
図4(B)に示すように、基端側から先端側へ向かって、外径が一定のダイレータ直線部80と、ダイレータ直線部80の先端からダイレータ線状シャフト70の最先端まで外径が減少するダイレータテーパ部81とを有している。ダイレータ直線部80は、シャフト基部71を形成する。ダイレータテーパ部81は、シャフト基部71の先端部、シャフト中間直線部73、シャフト半円部74およびシャフト先端直線部75を形成する。ダイレータ直線部80とダイレータテーパ部81の境界は、ダイレータ先端チューブ60よりも基端側に配置されるが、ダイレータ先端チューブ60の基端や、ダイレータ先端チューブ60の内部に配置されてもよい。ダイレータ線状シャフト70は、シャフト先端形状部72を所定の形状に形状付けられた後に、ダイレータ先端チューブ60に連結される。
【0059】
ダイレータ線状シャフト70の外径は、特に限定されないが、例えば0.05mm~1mmである。ダイレータ線状シャフト70の基部31の軸心方向の長さは、特に限定されないが、例えば1000mm~1400mmである。ダイレータ線状シャフト70の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、ニッケル・チタン合金等を好適に使用できる。また、ダイレータ線状シャフト70の断面形状は、円形に限定されず、例えば長方形、正方形、楕円形等であってもよく、部位によって異なる形状であってもよい。ダイレータ線状シャフト70は、ガイディングカテーテル100への挿入長さを把握するために、目視で確認できる深度マーカーを有してもよい。
【0060】
ガイドエクステンションカテーテル10およびダイレータ50は、
図6に示すようにガイドエクステンションカテーテル10にダイレータ50を挿入した状態で使用できる。ガイドエクステンションカテーテル10およびダイレータ50は、組み合せられたカテーテル組立体の状態で包装されてもよい。これにより、手技の利便性が向上し、包装を開封後に直ぐに手技を行うことができる。
【0061】
ダイレータ先端チューブ60は、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ20の内腔を移動して、先端チューブ20の先端開口201から先端側へ部分的に突出可能である。このとき、ダイレータ先端チューブ60の先端テーパ部61が、先端チューブ20の先端開口201から先端側へ突出する。術者は、ガイディングカテーテル100の先端を冠動脈口に係合(エンゲージ)した後に、ダイレータ50を挿入されたガイドエクステンションカテーテル10を、ガイディングカテーテル100の先端開口101から突出させる。このとき、ダイレータ先端チューブ60の外周面と先端チューブ20の内周面のクリアランスが小さいため、ダイレータ先端チューブ60の外周面と先端チューブ20の内周面が一部の微小な面で接触する。同様に、ダイレータ先端チューブ60の内周面とガイドワイヤの外周面のクリアランスが小さいため、ダイレータ先端チューブ60の外周面と先端チューブ20の内周面が一部の微小な面で接触する。
【0062】
このため、ダイレータ先端チューブ60は、ガイドエクステンションカテーテル10を、ガイドワイヤに沿って目的の位置まで円滑に誘導する役割を果たす。目的の位置として病変部の手前あるいは病変部を超えた位置まで誘導してもよい。次に、ガイドエクステンションカテーテル10から、ガイドワイヤの位置を固定してダイレータ先端チューブ60を抜去する。続いて、ガイディングカテーテル100およびガイドエクステンションカテーテル10の内腔を通して、ガイドワイヤに沿って治療用カテーテルを病変部へ到達させる。この後、術者は、治療用カテーテルにより、病変部の治療(例えばバルーンによる拡張や、ステントの留置)を行うことができる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る中間開口を有するカテーテルは、先端チューブ20および先端チューブ20から基端側へ延在する線状シャフト30を有する中間開口を有するカテーテルであって、先端チューブ20は、外層26と、外層26の径方向内側の軸心方向の少なくとも一部に配置される中層25と、中層25の径方向内側に配置される補強層24と、を有し、線状シャフト30は、外層26と中層25の間に配置され、補強層24から径方向の外側へ離間している。
【0064】
上記のように構成した中間開口を有するカテーテルは、中層25と外層26の間に線状シャフト30を挟んで強固に固定でき、押し込み強度および引き抜き強度を向上できる。また、線状シャフト30と補強層24が離れているため、線状シャフト30と補強層24が直接接触することにより生じ得る構成部材間の滑りや摩耗を抑制できる。特に、線状シャフト30および補強層24の構成材料が金属である場合に、線状シャフト30と補強層24が直接接触することにより生じる滑りや摩耗を効果的に抑制できる。
【0065】
また、中層25は、金属材料により形成される円管状のカラー部材、構造を中継するブリッジ構造の部材、または樹脂材料により形成される部材であってもよい。これにより、中層25の強度を適切に設定して、中層25と外層26の間に線状シャフト30を強固に固定でき、押し込み強度および引き抜き強度を向上できる。
【0066】
また、中層25は、先端チューブ20の周方向において少なくとも線状シャフト30が配置される範囲を含んで形成される。これにより、中層25を全周的に配置する必要がないため、先端チューブ20の外径を小さくできる。
【0067】
また、中層25と外層26の色が異なってもよい。これにより、製造時に中層25と外層26を判別しやすくなるため、製造時の取り違えを防止しやすくなり、かつ製造が容易となる。
【0068】
また、補強層24は、少なくとも1つの線材が巻回されたコイルまたは複数の線材が編組みされたブレードにより形成される。これにより、先端チューブ20を薄く形成できるとともに、先端チューブ20をキンクし難くすることができる。
【0069】
また、中間開口を有するカテーテルは、補強層24の径方向内側に配置されて内周面を形成する内層23を有する。これにより、内層23を、先端チューブ20の内腔を他のデバイスが通過しやすい材料や構造により形成することが可能となる。
【0070】
また、外層26および中層25は、樹脂材料により形成されてもよい。これにより、外層26と中層25の接合性を高めて、外層26と中層25の間に挟まれる線状シャフト30を、先端チューブ20に対して強固に固定できる。
【0071】
また、線状シャフト30と補強層24の離間距離は、先端チューブ20の厚み方向において、0.01~0.03mmであってもよい。これにより、線状シャフト30が補強層24から離れ過ぎず、先端チューブ20の外径や厚さを適切な大きさに維持できる。
【0072】
また、中間開口を有するカテーテルは、ガイディングカテーテル100に挿入される治療用カテーテルをガイドするため、ガイディングカテーテル100の先端開口101から治療用カテーテルの先端を突出させ、治療用カテーテルに沿って冠動脈内を末梢へ進め、治療用カテーテルに設けられて治療を行うための治療部を病変部に配置するためのガイドエクステンションカテーテル10であってもよい。これにより、術者が体外に位置する線状シャフト30を操作する際に、ガイドエクステンションカテーテル10は、押し込み力、引き抜き力や回転力を先端チューブ20へ効果的に伝達させることができ、かつ手術中に先端チューブ20と線状シャフト30が分離することを防止できる。治療用カテーテルに設けられて治療を行うための治療部とは、例えばバルーンやステントである。
【0073】
また、中間開口を有するカテーテルは、ガイディングカテーテル100に挿入される治療用カテーテルをガイドするため、ガイディングカテーテル100の先端開口101から治療用カテーテルの先端を突出させ、治療用カテーテルに沿って冠動脈内を末梢へ進め、治療用カテーテルに設けられて治療を行うための治療部を病変部に配置するためのガイドエクステンションカテーテル10に挿入されるラピッドエクスチェンジ型のダイレータ50であってもよい。これにより、術者が体外に位置するダイレータ線状シャフト70を操作する際に、ダイレータ50は、押し込み力、引き抜き力や回転力をダイレータ先端チューブ60へ効果的に伝達させることができ、かつ手術中にダイレータ先端チューブ60とダイレータ線状シャフト70が分離することを防止できる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、
図7に示す第1変形例のように、先端形状部32の軸心は、同一平面を超えて立体的に配置されてもよい。例えば、終端部36は、中間直線部33および半円部34が位置する平面から離れて配置される。これにより、線状シャフト30の中間直線部33、半円部34および先端直線部35を、先端チューブ20の限定された厚さの範囲内に効率よく配置できるため、先端チューブ20の厚さの増加を抑制できる。線状シャフト30の立体的な形状である先端形状部32と補強層24の間に中層25が配置されて、先端形状部32が補強層24から離れていてもよい。
【0075】
また、
図8に示す第2変形例のように、中層25は、先端チューブ20の全長および周方向において全周的に形成されてもよい。すなわち、中層25は、円管であり、先端チューブ20の軸心と直交する断面が、軸心方向の全ての位置で円形であってもよい。これにより、製造時において中層25の周方向の位置を考慮する必要がなくなり、製造が容易となる。また、先端チューブ20の強度を容易に向上させることができる。中層25の内径および外径は、軸心方向へ均一であっても、変化してもよい。
【0076】
また、中層25は、先端チューブ20の軸心方向の全ての位置において、先端チューブ20の軸心と直交する断面がC字形状であってもよい。
【0077】
また、中層25は、金属材料により形成される円管状のカラー部材や、構造を中継する他のブリッジ構造であってもよく中層25は樹脂材料でもよい。
【0078】
また、
図9に示す第3変形例のように、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ20は、略均一の内径を有する基端内腔20Aと、基端内腔20Aの先端側に配置されて先端側向かってテーパ状に減少する内径を有する先端内腔20Bを備えてもよい。これにより、先端チューブ20は、ダイレータ50の先端テーパ部61の一部を先端内腔20Bに収容し、先端テーパ部61の基端側に配置された筒状部62を、基端内腔20Aに収容できる。先端チューブ20は、通常よりも外径の太い筒状部62を基端内腔20Aに配置可能であるため、ダイレータ先端チューブ60の押し込み性および貫通力を向上できる。
【0079】
また、
図10に示す第4変形例のように、ダイレータ50のダイレータ先端チューブ60は、基端側へテーパ状に広がる基端開口部64を有してもよい。これにより、ガイドワイヤのダイレータ先端チューブ60への挿入性を向上できる。また、ダイレータ先端チューブ60は、基端部に、先端部よりも大きな外径を有する大径部65を有してもよい。大径部65を、ガイドエクステンションカテーテル10の先端チューブ20に突き当てて干渉させることで、ダイレータ50がガイドエクステンションカテーテル10から突出し過ぎないようにすることができる。
【0080】
また、
図11に示す第5変形例のように、ダイレータ50のダイレータ先端チューブ60は、軸心方向へ所定の間隔(例えば5mm間隔)で並ぶ複数のX線造影マーカー66を有してもよい。これにより、X線透視下でX線造影マーカー66を基準に長さを見積もることができる。このため、術者は、後に挿入する治療用カテーテルのサイズを決定することが容易となる。
【0081】
また、ガイドエクステンションカテーテル10の線状シャフト30と、ダイレータ50のダイレータ線状シャフト70のそれぞれ一部あるいは全部の色が異なってもよい。これにより、両者を識別することが容易となり、手技の利便性を向上できる。
【0082】
また、線状シャフト30あるいはダイレータ線状シャフト70にシリコンなどの潤滑剤を塗布してシャフト同士の絡まりを防止してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 ガイドエクステンションカテーテル(カテーテル)
20 先端チューブ
21 管状部
22 半管部
23 内層
24 補強層
25 中層
26 外層
27 先端マーカー
28 基端マーカー
29 凸部
30 線状シャフト
50 ダイレータ(カテーテル)
60 ダイレータ先端チューブ(先端チューブ)
70 ダイレータ線状シャフト(線状シャフト)
100 ガイディングカテーテル
101 先端開口