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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036710
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】車両窓のシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/75 20160101AFI20240311BHJP
   B60J 10/20 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141107
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 孝一
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA27
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA31
3D201EA01
3D201EA05
(57)【要約】
【課題】ウェザーストリップインナに覆われない、スリットの隙間をシール可能とする。
【解決手段】スリット70の車両方向前後端には、ウェザーストリップインナ50に覆われない間隙80,81が形成される。窓板40の車室面45にはシールピース100,110が設けられる。シールピース100,110は、本体部102,112、縦変形シール部103,113、及び横変形シール部104,114を備える。本体部102,112は、窓板40が全閉位置にあるときに間隙80,81に嵌め込まれる。縦変形シール部103,113は、本体部102,112の車両方向前方または後方に隣接して設けられウェザーストリップインナ50の車両方向後端または前端に変形当接する。横変形シール部104,114は、本体部102,112の車両幅方向内側に隣接して設けられドアトリム20の上端24に変形当接する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネルアウタ及びドアパネルインナの間の収容空間に収容された窓板及び前記窓板の昇降機構を備え、
前記収容空間の上方部分に当たる前記ドアパネルアウタ及び前記ドアパネルインナの部分は車幅方向に離隔されることで、車両前後方向に延びるスリットが形成され、
前記スリットの上端開口のうち前記ドアパネルインナ側の縁部には、ウェザーストリップインナが設けられ、
前記ドアパネルインナには、車室側から前記ドアパネルインナを覆うドアトリムが設けられ、
前記ドアトリムの上端は、前記ウェザーストリップインナの底端部を覆うとともに前記スリットの車両前後方向全長に亘って延設され、
前記ウェザーストリップインナの車両方向前後端は、前記スリットの車両方向前後端の手前で終端され、それにより前記スリットの車両方向前後端には、前記ウェザーストリップインナに覆われない間隙が形成され、
前記窓板の車室面には、当該窓板が全閉位置にあるときに前記間隙に対応する位置にシールピースが設けられ、
前記シールピースは、
前記窓板が全閉位置にあるときに前記間隙に嵌め込まれる本体部と、
前記本体部の車両方向前方または後方に隣接して設けられ前記ウェザーストリップインナの車両方向後端または前端に変形当接する縦変形シール部と、
前記本体部の車両幅方向内側に隣接して設けられ前記ドアトリムの前記上端に変形当接する横変形シール部と、
を備える、
車両窓のシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両窓のシール構造であって、
前記縦変形シール部と前記横変形シール部は、複数の溝が切られた弾性体から構成され、
前記横変形シール部の前記溝の深さが前記ドアトリムの前記上端の厚さ以上である、
車両窓のシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両窓のシール構造であって、
前記縦変形シール部及び前記横変形シール部の前記溝は、当該溝の底から上方に向かって、前記本体部から徐々に離隔される斜め溝である、
車両窓のシール構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両窓のシール構造であって、
前記縦変形シール部は、前記横変形シール部よりも、隣り合う前記溝間の距離が短い、
車両窓のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両窓のシール構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
車両用のドアは、車外側のパネル材であるドアパネルアウタと、車室側のパネル材であるドアパネルインナを備える。
【0003】
ドアパネルアウタとドアパネルインナの間には空間が設けられる。この空間の少なくとも一部は、窓板及び当該窓板の昇降機構を収容する収容空間となる。この収容空間の上方部分に当たるドアパネルアウタ及びドアパネルインナの部分は離隔され、それにより車両前後方向に延びるスリットが形成される。このスリットを通って窓板が昇降される。
【0004】
スリットにはシール部材が設けられる。例えばスリットのドアパネルアウタ側の開口縁にはウェザーストリップアウタが設けられる。またスリットのドアパネルインナ側の開口縁にはウェザーストリップインナが設けられる。
【0005】
ウェザーストリップアウタが窓板の車外側の面(窓板外面)と当接することで、上記収容空間内への雨滴等の進入が抑制される。
【0006】
また例えば、ドアパネルインナの底部には、水抜孔が形成される。この水抜孔からドア内の収容空間に車外騒音が入り込む。ウェザーストリップインナが窓板の車室側の面(窓板内面)と当接することで、車室内への車外騒音の進入が抑制される。
【0007】
さらに車両用のドアには、ドアパネルインナを車室側から覆う内装材として、ドアトリムが設けられる。ドアトリムの上端は、ドアパネルインナに形成された上記スリットの開口縁、及びウェザーストリップインナの底部を覆うように延設される。例えばドアトリムの上端から、ウェザーストリップインナの上端部分のみが露出して窓板に当接する。
【0008】
車両窓のシール構造として、例えば特許文献1では、ドアガラス内面の下端部にシール部材が接着される。シール部材は、窓を閉めたとき(全閉時)のみドアライニング(ドアトリム)に接触する。また特許文献2では、ドアガラスの側端縁にシール部材が貼り付けられる。そしてドアガラスの全閉時に、シール部材がインナーウェザーストリップに弾接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-109678号公報
【特許文献2】特開2002-178748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、車両前後方向に延設されるスリットの全長に亘ってウェザーストリップインナが設けられる場合、ウェザーストリップインナの前後端がドアの窓枠に接触する。この場合、昇降移動する窓板と固定された窓枠の両方に当接する、ウェザーストリップインナの前後端がばたついて異音が発生するおそれがある。
【0011】
異音抑制のため、ウェザーストリップインナの前後端はスリットの前後端の手前で終端される場合がある。この場合、スリットの車両前後端では、ウェザーストリップインナに覆われない隙間が生じる。
【0012】
そこで本明細書では、ウェザーストリップインナに覆われない、スリットの隙間をシール可能な、車両窓のシール構造が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、車両窓のシール構造が開示される。このシール構造は、窓板及び当該窓板の昇降機構を備える。窓板及び昇降機構は、ドアパネルアウタ及びドアパネルインナの間の収容空間に収容される。収容空間の上方部分に当たるドアパネルアウタ及びドアパネルインナの部分は車幅方向に離隔される。これにより、車両前後方向に延びるスリットが形成される。スリットの上端開口のうちドアパネルインナ側の縁部には、ウェザーストリップインナが設けられる。ドアパネルインナには、車室側からドアパネルインナを覆うドアトリムが設けられる。ドアトリムの上端は、ウェザーストリップインナの底端部を覆うとともにスリットの車両前後方向全長に亘って延設される。ウェザーストリップインナの車両方向前後端は、スリットの車両方向前後端の手前で終端される。それによりスリットの車両方向前後端には、ウェザーストリップインナに覆われない間隙が形成される。窓板の車室面には、当該窓板が全閉位置にあるときに間隙に対応する位置にシールピースが設けられる。シールピースは、本体部、縦変形シール部、及び横変形シール部を備える。本体部は、窓板が全閉位置にあるときに間隙に嵌め込まれる。縦変形シール部は、本体部の車両方向前方または後方に隣接して設けられウェザーストリップインナの車両方向後端または前端に変形当接する。横変形シール部は、本体部の車両幅方向内側に隣接して設けられドアトリムの上端に変形当接する。
【0014】
上記構成によれば、ウェザーストリップインナに覆われない間隙に、シールピースの本体部が嵌め込まれる。また本体部の周辺に設けられた縦変形シール部及び横変形シール部がウェザーストリップインナ及びドアトリムに当接変形することで、上記間隙がシールされる。
【0015】
また上記構成において、縦変形シール部と横変形シール部は、複数の溝が切られた弾性体から構成されてよい。この構造において、横変形シール部の溝の深さはドアトリムの上端の厚さ以上である。
【0016】
上記構成によれば、本体部の頂面をドアトリムの頂面と揃える、いわゆる面一(つらいち)配置にすることが可能となり、見栄えが向上する。
【0017】
また上記構成において、縦変形シール部及び横変形シール部の溝は、当該溝の底から上方に向かって、本体部から徐々に離隔される斜め溝であってよい。
【0018】
上記構成によれば、斜め溝が形成されることで、縦変形シール部及び横変形シール部の上方部分が本体部から離隔されるような展開変形が促される。
【0019】
また上記構成において、縦変形シール部は、横変形シール部よりも、隣り合う溝間の距離が短くてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ドアトリムと比較して撓み易い構造のウェザーストリップインナと当接する縦変形シール部を、横変形シール部よりも変形し易い構造にできる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示される、車両窓のシール構造によれば、ウェザーストリップインナに覆われないスリットの隙間をシールすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る車両のシール構造が搭載されたフロントドアを例示する斜視図である。
図2】窓板及び昇降機構を例示する斜視図である。
図3】ウェザーストリップの形状および取付構造を例示する一部断面斜視図である。
図4】フロントドアの前方部分を例示する斜視図である。
図5】フロントドアの後方部分を例示する斜視図である。
図6】フロントシールピースを例示する斜視図である。
図7】リアシールピースを例示する斜視図である。
図8】リアシールピースによってスリットの隙間がシールされたときの様子を例示する斜視図である。
図9】リアシールピースによるシール構造を例示する一部断面斜視図である。
図10】フロントシールピースによってスリットの隙間がシールされたときの様子を例示する斜視図である。
図11】フロントシールピースによるシール構造を例示する一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施形態に係る、車両窓のシール構造が図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、シール構造の仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0024】
また図1図11では、各構成の位置や方向を表すために、FR軸、RW軸、及びUP軸からなる直交座標系が用いられる。FR軸は車両前方を正方向とする車両前後方向軸である。RW軸は車両右側を正方向とする車幅方向軸である。UP軸は上方を正方向とする車両上下方向軸である。
【0025】
また以下では、本実施形態に係る車両窓のシール構造及びこれを搭載したフロントドア10の構造説明に当たり、フロントドア10の閉止時における各構成の配置や向きが、直交座標系を用いて説明される。
【0026】
以下に詳細に説明されるように、本実施形態に係る車両窓のシール構造は、ドアパネルアウタ12、ドアパネルインナ16及びドアトリム20を備える。さらに当該シール構造は、窓板40(図2参照)及びその昇降機構90を備える。加えて当該シール構造は、ウェザーストリップインナ50(図10参照)、フロントシールピース100及びリアシールピース110(図8参照)を備える。
【0027】
<全体構成>
図1には、車両右側に設けられるフロントドア10が例示される。フロントドア10は、車外側のパネル材であるドアパネルアウタ12と、車室側のパネル材であるドアパネルインナ16を備える。
【0028】
ドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16の間には空間が設けられる。図2を参照して、この空間の少なくとも一部は、窓板40及び昇降機構90が収容される収容空間75となる。収容空間75の上方部分には窓板40が通過するためのスリット70(図3参照)が形成される。
【0029】
スリット70には、ドアパネルインナ16と窓板40との隙間をシールするためにウェザーストリップインナ50が設けられる。ここで、ウェザーストリップインナ50の車両前後方向寸法は、スリット70の車両前後方向寸法よりも短く形成される。図4図5を参照して、このような寸法設定に基づき、ウェザーストリップインナ50の車両方向前端55及び後端56は、スリット70の車両方向前端73及び後端74の手前で終端する。
【0030】
ウェザーストリップインナ50の前端55とスリット70の前端73の間には、ウェザーストリップインナ50で覆われない間隙80が形成される。同様にして、ウェザーストリップインナ50の後端56とスリットの後端74の間には、ウェザーストリップインナ50で覆われない間隙81が形成される。
【0031】
これらの間隙80,81をシールするために、図2を参照して、窓板40の車室面45には、フロントシールピース100及びリアシールピース110が設けられる。窓板40が全閉状態のとき、言い換えると窓板40が最上位置まで上昇させられたとき、図10に例示されるように、フロントシールピース100が間隙80に嵌め込まれる。また図8に例示されるように、リアシールピース110が間隙81に嵌め込まれる。
【0032】
<ドア構成>
図1を参照して、フロントドア10は、ドアパネルアウタ12とドアパネルインナ16が溶接等により接合される。例えばドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16はともに鋼板から構成される。
【0033】
ドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16には窓板40用の枠体が形成される。さらにドアパネルアウタ12とドアパネルインナ16との間には窓板40及び昇降機構90を収容する収容空間75(図2参照)が形成される。窓板40は例えばガラス板から構成される。昇降機構90は窓板40を上昇及び下降させる機構であって、レギュレータモータ91及びウインドウレギュレータ92を備える。昇降機構90の詳細は既知であるため以下では説明が詳細される。
【0034】
図1を参照して、ドアパネルインナ16には、車室側からドアパネルインナ16を覆う内装材であるドアトリム20が設けられる。ドアトリム20は車幅方向内側に突出する構造となっている。
【0035】
ドアトリム20は、例えばポリプロピレン等の樹脂材料から構成される。またドアトリム20の(上端24を含む)頂壁22は、ウェザーストリップインナ50のシール部51(図3参照)よりも剛性が高い(変形し難い)構造となっている。
【0036】
例えばドアトリム20は、車幅方向内側を向く側壁21と、側壁21の上端に接続される頂壁22を備える。さらに側壁21の下端には底壁23が接続される。ドアトリム20の側壁21にはインサイドハンドル28やウインドウスイッチ29等の機器が取り付けられる。
【0037】
頂壁22は例えばUP-RW断面で円弧状に形成され、側壁21の上端から車幅方向外側かつ上方に延設される。ドアトリム20の頂壁22及びその上端24は、スリット70の車両前後方向全長に亘って延設される。例えば頂壁22及びその上端24は、前後に亘ってスリット70を超過するように延設される。
【0038】
図3を参照して、ウェザーストリップインナ50とドアパネルインナ16との接続箇所を隠すために、ドアトリム20の上端24はスリット70の上方まで延設される。より具体的には、ドアトリム20の上端24はウェザーストリップインナ50の底端部52を覆う。その一方で、ウェザーストリップインナ50のシール部51の上半分及び上端53は、ドアトリム20の上端24から車幅方向外側に突出(露出)するように配置される。
【0039】
<窓枠構造>
図1を参照して、フロントドア10には略矩形の窓枠が形成される。窓枠は昇降式の窓板40の枠であって、上枠30、下枠31、前枠32、及び後枠33を備える。またフロントドア10の前方には固定窓27が設けられてもよい。
【0040】
図3には、窓枠の後方部分の一部断面斜視図が例示される。この斜視図では、断面がハッチングで示される。すなわち、ドアトリム20の後端部分の図示が省略され、また後枠33を構成するドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16の図示が一部省略される。
【0041】
収容空間75(図2参照)の上方部分に当たるドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16の部分は、車幅方向に離隔される。例えばドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16の、収容空間75の上方部分には、車両前後方向に延設される縦壁部12A,16Aが設けられる。例えば縦壁部12A,16Aは車幅方向に離隔した状態で平行に延設される。
【0042】
縦壁部12A,16Aにより収容空間75の上方には、車両前後方向に延びるスリット70が形成される。スリット70の幅(RW軸寸法)、言い換えると縦壁部12A,16Aの離隔間隔は、窓板40の厚さ(RW軸寸法)を超過するように定められる。
【0043】
スリット70は例えば平面視で矩形の切り込みであって、その上端開口71にはウェザーストリップアウタ60及びウェザーストリップインナ50が取り付けられる。より詳細には、縦壁部12Aの上端にウェザーストリップアウタ60が取り付けられ、縦壁部16Aの上端にウェザーストリップインナ50が取り付けられる。
【0044】
例えば、ウェザーストリップアウタ60及びウェザーストリップインナ50の底端部52,62には固定溝54,64が形成される。この固定溝54,64がドアパネルアウタ12及びドアパネルインナ16の縦壁部12A,16Aに嵌め込まれる。例えばウェザーストリップインナ50及びウェザーストリップアウタ60はゴム等の軟性の樹脂材料から構成される。
【0045】
窓板40から車室側の構造に関して上記の取付構造を言い換えると、スリット70の上端開口71のうち、ドアパネルインナ16側の縁部72に、ウェザーストリップインナ50が設けられる。
【0046】
ウェザーストリップインナ50及びウェザーストリップアウタ60は、底端部52,62の上端からシール部51,61が接続される。シール部51,61は上方かつ窓板40側に延設される。例えばシール部51,61は上方ほど薄くなる先細りの形状となる。
【0047】
図4には、フロントドア10の前方部分の窓構造が例示される。図5には、フロントドア10の後方部分の窓構造が例示される。図4を参照して、前枠32の後面には窓板40のガイド溝であるガラスラン32Aが形成される。さらに前枠32の前方に固定窓27が嵌め込まれる。
【0048】
図4及び図5を参照して、ウェザーストリップインナ50及びウェザーストリップアウタ60はスリット70の長手方向(車両前後方向)に沿って延設される。ここで、ウェザーストリップインナ50及びウェザーストリップアウタ60の車両前後方向寸法(全長)は、スリット70の車両前後方向寸法(全長)よりも短く形成される。
【0049】
さらにウェザーストリップインナ50及びウェザーストリップアウタ60の前端及び後端は、スリット70の前端及び後端とは離隔される。例えば図4を参照して、ウェザーストリップインナ50の前端55は、スリット70の前端73の手前(車両方向後方)で終端する。また図5を参照して、ウェザーストリップインナ50の後端56はスリット70の後端74の手前(車両方向前方)で終端する。
【0050】
ウェザーストリップインナ50がスリット70に対して上記のような配置を採ることで、ウェザーストリップインナ50の前端55とスリット70の前端73の間には、ウェザーストリップインナ50に覆われない間隙80が形成される。またウェザーストリップインナ50の後端56とスリット70の後端74の間には、ウェザーストリップインナ50に覆われない間隙81が形成される。
【0051】
このように、ウェザーストリップインナ50(及びウェザーストリップアウタ60)の前後端が、スリット70の前後端には当接しない構造を採る。これにより、固定された前枠32または後枠33と、昇降移動する窓板40の両者にウェザーストリップインナ50(及びウェザーストリップアウタ60)が当接することが避けられる。
【0052】
例えば窓板40が降下する際に、窓板40の車室面45(車室側の面)に当接する、ウェザーストリップインナ50の上端53も下に潜り込むように変形する。仮にウェザーストリップインナ50の前後端が窓板40だけでなく前枠32及び後枠33にも当接していると、その当接構造によって、上端53の潜り込みが阻害される。その結果、ウェザーストリップインナ50の上端53からいわゆるばたつき音が生じるおそれがある。ウェザーストリップインナ50の前後端を前枠32及び後枠33から離隔することで、そのようなばたつき音の発生が抑制される。
【0053】
<シールピース>
図2を参照して、窓板40の車室面45にはフロントシールピース100及びリアシールピース110が設けられる。フロントシールピース100及びリアシールピース110は、窓板40が全閉位置にあるとき、言い換えると最上位置にあるときに、間隙80,81(図4図5参照)に対応する位置に設けられる。
【0054】
例えばフロントシールピース100は窓板40の底縁41と前側縁42との交差部分に設けられる。また例えばリアシールピース110は窓板40の底縁41と後側縁43との交差部分に設けられる。
【0055】
図6には、フロントシールピース100の単体斜視図が例示される。なおこの図に示される直交座標系を参照して、図6では、図2で示されるものとは前後方向及び左右方向を反転させたアングルで、フロントシールピース100が示される。
【0056】
フロントシールピース100は弾性体101及び剛性体106を備える。弾性体101はシール部材として機能する。剛性体106は弾性体101の支持体として機能する。
【0057】
剛性体106はベース107、ガセット108、及び柱109を備える。柱109は例えば角柱形状であって、窓板40の車室面45と対向する面には突起109Aが設けられる。例えば柱109には一対の突起109A,109Aが設けられる。突起109A,109Aに対応するようにして窓板40には例えば一対の挿入口(図示せず)が穿孔される。
【0058】
ベース107は弾性体101が載せられる台座である。ベース107の車幅方向寸法及び車両前後寸法は弾性体101と同寸法となるようにベース107が形成される。またベース107を支持する補強部材として、柱109の側面及びベース107の底面に接続されるようにして、ガセット108が設けられる。
【0059】
弾性体101は本体部102、縦変形シール部103、及び横変形シール部104を備える。これらの部材はいずれも同一材料から構成される。例えばこれらの部材はゴム等の樹脂材料から形成される。
【0060】
本体部102は間隙80(図4参照)に対応した形状となっている。例えば本体部102の平面形状は、窓板40の車室面45、ドアトリム20の上端24、ウェザーストリップインナ50の前端55、及び前枠32の後面で区画される間隙80の矩形形状と同一であってよい。なお以下では「同一」とは厳密な寸法の一致を求めるものでは無く、成形上設定される誤差(公差)内の差異であれば、同一の範囲に含まれる。
【0061】
また本体部102の高さT1(UP軸寸法)は、例えばドアトリム20の上端24の厚さT2(図9参照)を超過するように定められる。図10に例示されるように、本体部102は窓板40が全閉位置にあるときに間隙80に嵌め込まれる。
【0062】
横変形シール部104は、窓板40が全閉状態まで上昇したときにドアトリム20の上端24に変形当接するシール部材である。横変形シール部104は、本体部102の車幅方向内側に隣接して設けられる。
【0063】
例えば横変形シール部104は本体部102と同一の弾性材料に複数の溝104Aが切られることで形成される。溝104Aは例えばFR軸方向に沿って複数本切られる。これにより横変形シール部104は、溝104Aによって隔てられ車両前後方向に延設される複数のフラップ104Bを備える。
【0064】
溝104Aの深さT1は、本体部102の厚さT1と同一であってよく、ドアトリム20の上端24の厚さT2を超過するように定められる。
【0065】
また、溝104Aはその底から上方に向かって、本体部102から徐々に離隔される、斜め溝であってよい。例えば溝104Aは底から車幅方向内側かつ上方に向かって延設される。これによりフラップ104Bも底から車幅方向内側かつ上方に向かって斜め傾斜状に立設される。
【0066】
縦変形シール部103は、窓板40が全閉状態まで上昇したときにウェザーストリップインナ50に変形当接するシール部材である。縦変形シール部103は、本体部102の車両方向後方に隣接して設けられる。
【0067】
例えば縦変形シール部103は本体部102と同一の弾性材料に複数の溝103Aが切られることで形成される。溝103Aは例えばRW軸方向に沿って複数本切られる。これにより縦変形シール部103は、溝103Aによって隔てられ車幅方向に延設される複数のフラップ103Bを備える。
【0068】
溝103Aの深さT1は、本体部102の厚さT1と同一であってよく、ドアトリム20の上端24の厚さT2を超過するように定められる。
【0069】
また、溝103Aはその底から上方に向かって、本体部102から徐々に離隔される、斜め溝であってよい。例えば溝103Aは底から車両方向後方かつ上方に向かって延設される。これによりフラップ103Bも底から車両方向後方かつ上方に向かう、後傾状に設けられる。
【0070】
さらに、縦変形シール部103は、横変形シール部104よりも、隣り合う溝103Aの距離が短くなるように形成される。言い換えると、縦変形シール部103のフラップ103Bは、横変形シール部104のフラップ104Bよりも薄くなるように形成される。
【0071】
後述されるように、横変形シール部104はドアトリム20に変形当接し、縦変形シール部103はウェザーストリップインナ50に変形当接する。ドアトリム20と比較してウェザーストリップインナ50の、特にシール部51(図3参照)はドアトリム20の上端24よりも撓み易い(柔らかい)。そのため縦変形シール部103を、横変形シール部104よりも撓み易い軟構造とすることで、両シール部の変形量が揃えられる。
【0072】
またフロントシールピース100には、溝104Aと溝103Aが交差する交差部105が設けられる。交差部105は横変形シール部104と共にドアトリム20に変形当接されることから、図6の態様に代えて、フロントシールピース100は、交差部105まで溝103Aが切られていない構造であってよい。
【0073】
図7にはリアシールピース110の斜視図が例示される。リアシールピース110は、フロントシールピース100と同様に、弾性体111及び剛性体116を備える。さらに弾性体111は本体部112、縦変形シール部113及び横変形シール部114を備える。また剛性体116はベース117、ガセット118、及び柱119を備える。
【0074】
本体部112は間隙81(図5参照)に対応した形状となっている。例えば本体部112の平面形状は、窓板40の車室面45、ドアトリム20の上端24、ウェザーストリップインナ50の後端56、及び後枠33の後面で区画される間隙81の矩形形状と同一であってよい。
【0075】
リアシールピース110の各構成は、基本的にはフロントシールピース100の各構成と同様である。例えば、フロントシールピース100の各構成を説明する上記記載において、符号の十の位の数を0から1に変更すると、リアシールピース110の説明となる。
【0076】
ただし、リアシールピース110では、縦変形シール部113が、本体部112の車両方向前方に設けられる。また縦変形シール部113の溝113A及びフラップ113Bは、底から車両方向前方かつ上方に向かう、前傾状に設けられる。
【0077】
図8には、リアシールピース110によって間隙81がシールされている様子が例示される。また図9には、その時のリアシールピース110の変形当接の様子が例示される。なお図9では、ウェザーストリップインナ50及びドアトリム20の後端部分が除去される。
【0078】
窓板40の上昇に伴って、リアシールピース110も上昇する。さらにリアシールピース110の横変形シール部114がドアトリム20の上端24の裏面(隠れ面)に当接して変形する。
【0079】
ここで、横変形シール部114のフラップ114Bは車幅方向内側に向かって斜めに立設されていることから、フラップ114Bの上端部分は、本体部112から離隔されるようにして展開変形される。
【0080】
また窓板40の上昇に伴って、リアシールピース110の縦変形シール部113がウェザーストリップインナ50のシール部51の裏面(隠れ面)に当接して変形する。
【0081】
ここで、縦変形シール部113のフラップ113Bは上述のように前傾状に立設されていることから、フラップ113Bの上端部分は、本体部112から離隔されるようにして展開変形される。
【0082】
また、上述のように、溝114Aの深さT1(図7参照)がドアトリム20の上端24の厚さT2(図9参照)を超過する。このため、図8に例示されるように、本体部112の頂面112Aはドアトリム20の頂面22Aと高さ位置が揃ういわゆる面一(つらいち)配置とすることが出来る。
【0083】
次に、図10には、フロントシールピース100によって間隙80がシールされている様子が例示される。また図11には、その時のフロントシールピース100の変形当接の様子が例示される。なお図11では、ウェザーストリップインナ50の前端及びドアトリム20の一部が除去される。
【0084】
窓板40の上昇に伴って、フロントシールピース100も上昇する。さらにフロントシールピース100の横変形シール部104がドアトリム20の上端24の裏面(隠れ面)に当接して変形する。
【0085】
このとき、横変形シール部104のフラップ104Bは車幅方向内側に向かって斜めに立設されていることから、フラップ104Bの上端部分は、本体部102から離隔されるようにして展開変形される。
【0086】
また窓板40の上昇に伴って、フロントシールピース100の縦変形シール部103がウェザーストリップインナ50のシール部51の裏面(隠れ面)に当接して変形する。
【0087】
ここで、縦変形シール部103のフラップ103Bは上述のように後傾状に立設されていることから、フラップ103Bの上端部分は、本体部102から離隔されるようにして展開変形される。
【0088】
また、上述のように、溝104Aの深さT1(図6参照)がドアトリム20の上端24の厚さT2(図9参照)を超過する。このため、図10に例示されるように、本体部102の頂面102Aはドアトリム20の頂面22Aと高さ位置が揃ういわゆる面一(つらいち)配置とすることが出来る。
【0089】
<本実施形態に係るシール構造の別例>
図1図11では、車両ドアとしてフロントドアが例示される。しかしながら、本実施形態に係る車両ドアのシール構造は、リアドアにも適用可能となっている。
【0090】
より詳細には、スリット70を通って昇降する昇降式の窓板40と、当該窓板40に当接するウェザーストリップインナ50とを備える車両ドアであれば、本実施形態に係る車両ドアのシール構造が適用可能である。より詳細には、当該車両ドアは、ウェザーストリップインナ50の前後端が、窓板40用のスリット70の前後端の手前で終端される。これにより、スリット70の前後端には、ウェザーストリップインナ50に覆われない間隙80,81が形成される。車両ドアが以上のような構造を備える場合に、本実施形態に係るシール構造が適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
10 フロントドア、12 ドアパネルアウタ、12A ドアパネルアウタの縦壁部、16 ドアパネルインナ、16A ドアパネルインナの縦壁部、20 ドアトリム、22 ドアトリムの頂壁、22A ドアトリムの頂面、24 ドアトリムの上端、40 窓板、50 ウェザーストリップインナ、51 ウェザーストリップインナのシール部、52 ウェザーストリップインナの底端部、53 ウェザーストリップインナの上端、55 ウェザーストリップインナの前端、56 ウェザーストリップインナの後端、70 スリット、71 スリットの上端開口、72 上端開口の縁部、73 スリットの前端、74 スリットの後端、75 収容空間、80,81 間隙、90 昇降機構、100 フロントシールピース、101,111 弾性体、102,112 本体部、102A,112A 頂面、103,113 縦変形シール部、103A,104A,113A,114A 溝、103B,104B,113B,114B フラップ、104,114 横変形シール部、106,116 剛性体、107,117 ベース、108,118 ガセット、109,119 柱、110 リアシールピース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11