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特開2024-36715フィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の増殖作用を呈するベータグルカン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036715
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】フィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の増殖作用を呈するベータグルカン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240311BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240311BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08B37/00 C
A61K31/716
A61K8/73
A61Q19/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141119
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】517105869
【氏名又は名称】小林 裕司
(71)【出願人】
【識別番号】504447198
【氏名又は名称】二村 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕司
(72)【発明者】
【氏名】二村 芳弘
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C083AD211
4C083EE12
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA04
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA89
4C090AA01
4C090AA09
4C090BA23
4C090BB54
4C090BB63
4C090BB74
4C090BB76
4C090BB92
4C090BB94
4C090DA22
4C090DA26
(57)【要約】
【課題】 フィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体を提供する。
【解決手段】 ベータグルカン誘導体とはベータグルカン1分子、ポリフェノール1分子とシステイン3分子から構成される両親媒性の低分子化合物である。製造方法はアサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌より発酵した発酵液を培地としてラクトバチルス ロイテリにより発酵する天然物を利用した製造工程からなる。得られたベータグルカン誘導体はフィブリリン増加作用を示し、これはmRNAレベル及びタンパク質レベルで確認される。さらに、遺伝子の酸化を防止して細胞の保護作用が認められた。このベータグルカン誘導体は化粧料、食品などに応用される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で示されるフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は体表を覆う臓器であり、薬剤の浸透性や美容の領域で着目されている。特に、皮膚表皮細胞の増殖性については再生医療との関係から様々な研究と発明がなされている。また、表皮細胞の増殖にはEGFなどの成長因子の他に、フィブロネクチンやフィブリリンなどの細胞外マトリックスが関与している。
【0003】
皮膚細胞の増殖に関する発明としてはジペプチドカルノシンのリポアミノ酸誘導体を有する、皮膚もしくは粘液における1以上の細胞外基質成分の形成を刺激する組成物に関する発明があり、細胞外マトリックスと表皮細胞の増殖性が記載されている。(例えば、特許文献1参照。)また、幹細胞及び/又は前駆細胞の賦活剤の発明がある。ここでは バトロキソビンを含んでなるCD34又はネスチンを発現する幹細胞及び/又は前駆細胞の賦活剤が提示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、ヒト臍帯のウォートンジェリー由来の新規な生物材料があり、分化間葉幹細胞もしくは他の細胞株に分化した間葉幹細胞について記載されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
しかし、これらの発明では皮膚表皮細胞の活性化作用は軽微であり、また、化学合成品やヒト由来でありウイルス感染の可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6326601号
【特許文献2】特許第5602364号
【特許文献3】特許第5427237号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の物質による皮膚表皮細胞の活性化作用は軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題があり、また、化学合成された物質では安全性に問題があり、利用が限られている。
【0008】
そこで、副作用が弱く優れた皮膚表皮細胞の活性化作用を呈する天然物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は下記の式(1)で示されるフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を有するベータグルカン誘導体に関するものである。
【0010】
【化1】
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載のベータグルカン誘導体はフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用に優れている。
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0015】
フィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体とは、下記の式(1)で示される構造体である。
【0016】
【化2】
【0017】
そもそもフィブリリン(Fibrillin)とは分子量約35万の糖蛋白であり、コラゲナーゼ耐性の直径20nm以下の弾性線維の周辺部に存在し、細胞の構造維持及び増殖作用に関与している。
【0018】
さて、前記の式(1)に示すようにフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体はベータグルカンの1分子、ポリフェノール側鎖の1分子及びシステインの3分子から構成されている。
【0019】
このベータグルカン誘導体はC63H97O39N3S3の化学式であらわされ、炭素63個、水素97個、酸素39個、窒素3個及び硫黄3個から形成されている。
【0020】
これらの分子及びその結合はすべて自然界に存在する天然型であり、各分子間はエステル結合などを介して結合している。
【0021】
このベータグルカン誘導体はベータグルカンもポリフェノール及びシステインを原料として化学合成により生成される。しかし、その化学的な合成では原料の損失が多く、製造コストが高くなるため、産業への利用は限定される。化学合成された純度の高いベータグルカン誘導体は分析の標準品や微量な試供品を得るために用いられる。
【0022】
このベータグルカン誘導体の構造を解析することは有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品や製剤に利用して販売する際の有効成分の含有量の指標として利用できることから好ましい。
【0023】
このベータグルカン誘導体の構造解析の一例として化学合成された高純度(純度93%以上)の標準品を用いてC5D5N中の500MHzのH-NMRにより解析した場合、ピークの位置は0.91、0.95、1.10、1.30、1.52、1.57、1.76、2.56、2.72、3.36、4.45、5.03、5.22、5.25、5.35、6.03及び6.11ppmに認められる。
【0024】
さらに、C5D5N中の500MHzのH-NMR解析により、9.1、19.0、19.1、19.2、19.3、19.9、21.4、23.6、25.5、26.5、27.3、28.1、32.5、36.4、37.5、38.5、39.3、42.0、44.7、45.3、49.8、51.8、52.7、63.0、63.8、64.4、64.5、67.0、68.1、69.4、70.2、70.3、71.6、73.1、73.3、73.8、74.0、74.4、75.5、76.9、77.1、77.6、78.9、79.4、79.5、79.8、80.3、80.9、83.3、87.1、89.0、90.7、101.2、103.4、104.7、104.9、105.0、108.2、112.2、119.2、137.4、137.8及び178.3ppmにピークが認められる。
【0025】
さらに、このベータグルカン誘導体は高速液体クロマトグラフィーにより解析される。このうち、構成成分であるベータグルカンは多糖類の一種であり、細胞膜受容体への作用、免疫調節作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用、脂肪燃焼作用、神経保護作用、育毛作用や抗菌作用などの優れた働きを呈する。
【0026】
このベータグルカン誘導体ではベータグルカンは6位の水酸基で3分子のシステインとエステル結合をしている。6位の水酸基とシステインのカルボン酸によるエステル結合である。
【0027】
この構成成分であるベータグルカンは天然に存在している化合物である。ここで示した構成成分であるベータグルカンはグルコースの6分子がベータ1、4結合で結合している。
【0028】
さらに、このベータグルカンは1位末端とポリフェノールとエーテル結合している。ここに存在するポリフェノールは2つのジヒドロキシベンゼンを有するポリフェノールである。このポリフェノールの水酸基は抗酸化作用に優れ、生体内で生じる活性酸素やフリーラジカルなどを消去してこの構造を安定化している。
【0029】
このベータグルカン誘導体はベータグルカン骨格による疎水性とポリフェノールの没食子酸の水酸基による水溶性及びグアニンによる塩基性が加わり、両親媒性とpHに対する緩衝能力を呈することにより吸収が高まる。
【0030】
構成成分であるシステインはSH基を有し、還元作用を呈する。さらに、ケラチンの原材料として皮膚細胞の細胞骨格や細胞膜表面の細胞外マトリックスを形成して表皮細胞を強化する。
【0031】
このベータグルカン誘導体においてポリフェノール部分は抗酸化作用の他に、DNA分子を加齢、酸化、活性酸素や紫外線から防御して遺伝子を保護する働きがある。遺伝子の安定化に寄与している。また、ラジカルスカベンジャー作用を呈してラジカルを消去する。ラジカル類はコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質を分解することから、ラジカルを消去する働きは組織の保護の目的でも好ましい。
【0032】
さらに、ベータグルカンの水酸基部分は弱酸性に荷電していることから、耐酸性が強く、経口摂取された場合に、胃酸に対して抵抗性を示し、結果としてベータグルカン誘導体の体内への吸収率が高まることは好ましい。また、中性であるため、皮膚に塗布した場合、皮膚に対して刺激性がないことは安全性の点から好ましい。
【0033】
このベータグルカン誘導体は両親媒性であることにより、細胞内に浸透しやすく、また、核膜内に到達しやすく、遺伝子に直接作用することは好ましい。
【0034】
また、ベータグルカン誘導体は皮膚表皮細胞のフィブリリンを増加させる。フィブリリン増加の機序はベータグルカン誘導体が表皮細胞の細胞膜表面に結合することによる細胞膜の刺激によるフィブリリン産生刺激である。
【0035】
さらに、疎水性を呈して核膜に浸透して皮膚表皮細胞を活性化する。この細胞活性化のメカニズムとしてはDNAポリメラーゼの遺伝子レベルでの活性化及びEGF(Epidermal Growth Factor)受容体の活性化である。
【0036】
つまり、DNAポリメラーゼはDNAを複製し、核酸を増加させ、細胞を増殖させる鍵となる酵素である。ベータグルカン誘導体はDNAポリメラーゼを活性化させる。このベータグルカン誘導体はDNAポリメラーゼを活性化させる作用により皮膚表皮細胞は活性化する。
【0037】
さらに、ベータグルカン誘導体はEGF受容体の反応性を活性化するメカニズムは受容体の親和性の増加であり、EGF受容体の立体構造を変化させることによりEGF受容体の反応性が高まる。同時に、FGF受容体も活性化されることは好ましい。すなわち、EGFとの併用により相乗効果が認められることは好ましい。
【0038】
また、ベータグルカン誘導体は8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼまたは8-ヒドロキシルデオキシグアニンDNAグリコシターゼ(いずれもOGG1と略す)の活性化も誘発する。
【0039】
DNAポリメラーゼは遺伝子の増殖と修復を行う酵素である。遺伝子の障害の対する修復の一つにSOS修復といわれるDNAポリメラーゼを介した修復作用がある。この修復は塩基の変化や付加体に働き、DNA鎖の切断と複製を行う工程からなる。
【0040】
OGG1は8OHdGのような塩基の酸化体の排除と正常な塩基の組み込みを行う工程である。このベータグルカン誘導体はOGG1の活性中心に働きかけてOGG1の働きを高める。この遺伝子修復の働きはEGFとの相乗作用が認められることから好ましい。
【0041】
このベータグルカン誘導体による表皮細胞の活性化は核内に遺伝子が存在するすべての表皮細胞にも働く。さらに、遺伝子の障害の方法も活性酸素、フリーラジカル、紫外線、化学物質、医薬品の副作用、金属、加齢などすべての物質による障害に対応する。たとえば、神経表皮細胞の遺伝子の障害に対しても修復させ、神経表皮細胞を活性化する。
【0042】
また、ベータグルカン誘導体は皮膚の角質細胞膜も通過しやすく、角質層のバリア機能を維持する働きにより肌の健康や美容が保持される点は好ましい。また、このベータグルカン誘導体は細胞膜を通過し、皮膚細胞内で皮膚表皮細胞を活性化して細胞の再生や機能を促進することから好ましい。
【0043】
植物に対してはこのベータグルカン誘導体が植物の細胞壁と細胞膜を通過して植物細胞内に入り、皮膚表皮細胞を促進し、花の開花や結実、葉の成長を促進して植物の寿命を延長することは好ましい。すなわち、植物活性化剤としての働きがある。
【0044】
また、このベータグルカン誘導体は両親媒性であり、水溶性の化粧水と油性のクリームのいずれにも配合できる点は好ましい。このベータグルカン誘導体は遺伝子の修復に働き、細胞の増殖、正常なコラーゲンやエラスチン産生を促進することにより皮膚細胞機能を促進することは好ましい。
【0045】
たとえば、神経においても神経細胞を活性化する。神経細胞は認知症、アルツハイマー症などで活性酸素やアミロイドβたんぱく質による遺伝子の障害を受けやすく、遺伝子は修復されにくいという弱点がある。そのため、このベータグルカン誘導体による神経細胞の活性化は神経の働きを回復させることは神経疾患の防御と回復の目的で好ましい。
【0046】
また、神経終末からの神経伝達物質の放出を促進して神経伝達を高めることは好ましい。運動神経細胞の神経末端からのアセチルコリンの放出を高めることにより筋肉の収縮を高めて神経と筋肉の活動性を増すことは好ましい。
【0047】
また、このベータグルカン誘導体は表皮細胞を増殖させ、コラーゲンやエラスチンの産生を高めることは好ましい。化粧料としての利用が高まることから好ましい。
【0048】
このベータグルカン誘導体は心筋梗塞において冠状動脈の梗塞や虚血状態でも心筋細胞を活性化して心臓の活動を活性化して強心作用を発揮することは好ましい。
【0049】
特に、梗塞部位の血管においてはこのベータグルカン誘導体は血管新生を促進し、血流の改善し、血圧を低下させる。
【0050】
また、このベータグルカン誘導体はアスリートや運動時、筋肉を増強したい場合、筋肉細胞の遺伝子レベルでのエネルギー産生を活性化することから好ましい。
【0051】
このベータグルカン誘導体は生体内では腎臓や肝臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解されて構成成分である安全性の高いベータグルカン、ポリフェノール及びシステインに分解される。したがって、このベータグルカン誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
【0052】
さらに、ベータグルカン部分には植物の生育を促進する植物活性化作用がある。すなわち、このベータグルカン誘導体は植物の生育を促進できる点は産業上の利用の点から好ましい。
【0053】
また、植物が細菌やウイルスに感染した場合、遺伝子が障害を受ける場合がある。このような遺伝子の障害に抵抗して表皮細胞を活性化し、増殖させることは好ましい。
【0054】
このベータグルカン誘導体は天然物を発酵する方法により得られることは、安全性が高いことから好ましい。たとえば、アサイヤシやコメヌカを乳酸菌により発酵する製造方法によりこのベータグルカン誘導体を得ることができる。乳酸菌のうちでも、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)が製造効率の点から好ましい。ラクトバチルス ロイテリはヒトや動物に常在するグラム陽性の乳酸桿菌の一種で、ヒト腸内細菌として腸内に、もしくは、皮膚に常在している。皮膚では皮膚の抗炎症作用を有する善玉菌である。さらに、糸状菌の1種であるGalactomyces candidusの培養液、霊芝、冬虫夏草、ヒメマツタケ、蘭の花や茎、バラの樹、キンカンなどのかんきつ類、植物の新芽、蕾などの原基組織やその他の植物にも認められる。さらには、ラクトバチルス ロイテリをアサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌により発酵した発酵液を培地として発酵させ、得られた発酵液を精製する工程からなる製造方法により得られるベータグルカン誘導体とすることも天然物由来で安全性が高いことから好ましい。
【0055】
このベータグルカン誘導体を上記の培養液や植物から抽出することは可能である。ただし、精製には大量の原料を必要とし、有機溶媒などを利用することから産業上への利用は制限される。特に、アサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌により発酵した発酵液を培地としてラクトバチルス ロイテリを発酵させた発酵液を精製する製造方法により製造されるフィブリリン増加作用を介した皮膚表皮細胞の活性化作用を呈するベータグルカン誘導体とすることにより製造方法を限定した目的とするベータグルカン誘導体が特定されることは好ましい。この発酵法による製造方法は化学合成による製造方法とは異なり、天然に存在する製造方法であり、不純物も天然物となることから安全性の点においても好ましい。
【0056】
すなわち、このベータグルカン誘導体はラクトバチルス ロイテリをアサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌により発酵した発酵液を培地として発酵させ、それを精製することにより得られる。この菌は使用経験も豊富であり、安全性も高い。特に、セティ株式会社の高濃度ロイテリ菌は1000億cfu/gという高い濃度であるため、製造に利用しやすく好ましい。
【0057】
上記培養法は食経験があり、ベータグルカン誘導体の産生量も多いことから好ましい。得られたベータグルカン誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするベータグルカン誘導体を精製し、純度を高めることは、目的とするベータグルカン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0058】
医薬品としては注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤はシェラックまたは砂糖などで被覆することもできる。
【0059】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
【0060】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0061】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0062】
食品製剤としては皮膚表皮細胞を活性化するため、美容食品に利用される。保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0063】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚の毛艶や脱毛の回復を目的とした飼料やペット用サプリメントとして利用される。
【0064】
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
【0065】
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0066】
製造された化粧料は障害された表皮細胞の回復と増加、コラーゲンやエラスチンの増加及び肌の維持など美容の目的で利用される。
【0067】
また、このベータグルカン誘導体は遺伝子が障害された歯肉細胞の機能の維持を目的とした歯磨き剤、洗口液や歯磨きペーストなどに利用できる。
【0068】
植物に対しては遺伝子の障害を回復させることにより発芽の促進、成長、結実と収穫量の増加を目的とした植物活性化剤として利用することができる。
【0069】
この植物活性化剤は希少なバラ、蘭や花の活性化の目的で利用でき、葉や野菜、穀類の栽培を安定化させる。植物工場における野菜、果実や葉の栽培にも利用でき、栽培効率を上げることができる。花を利用する場合、バラ、蘭やエーデルワイスの花などが好ましい。
【0070】
以下、ベータグルカン誘導体の製造方法の一つとしてラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)をアサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌により発酵した発酵液を培地として発酵させ、得られた発酵液を精製する工程からなる製造方法について説明する。
【0071】
原料はラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、アサイヤシ果実、コメヌカ及びベニコウジ菌である。
【0072】
ラクトバチルス ロイテリの発酵用培地を調製するため、アサイヤシ果実とコメヌカをベニコウジ菌によりより発酵させる発酵液を製造する。
【0073】
アサイヤシ果実は学名Euterpe oleraceaであるヤシ科の植物であるアサイヤシの果実であり、産地はブラジル、タイなどのいずれの産地でも良いがブラジル産のアサイヤシは品質も安定していることから好ましい。CANA CORPORATIONのブラジル産アサイヤシ果実フリーズドライ粉末は品質が高く利用しやすい。コメヌカは脱穀した玄米の外郭の一部を精米時に剥離して得られる食用部分であり、栄養素に富み、日本では古来、ぬか漬けなどの発酵用培地として利用されている。産地は日本産で特に、無農薬のコメヌカが安全性の点から好ましい。特に、はらだ自然農園(京都府亀岡市)で製造されたコメヌカは品質が高いことから好ましい。ベニコウジ菌は学名Monascus purpureusの糸状菌の一種であり、有用発酵菌の一つであり、古来から豆腐ようや食用色素などに利用されている。有限会社紅麹本舗(京都府舞鶴市)で製造されたベニコウジ菌は品質が安定していることから好ましい。
【0074】
アサイヤシ果実とコメヌカは3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が培養の工程を実施しやすくすることから好ましいため、粉砕機により粉砕される。これらの粉砕物をオートクレーブにより滅菌し、ベニコウジ菌により発酵タンク中で発酵させる。添加量はアサイヤシ果実1重量に対してコメヌカ1から5重量、ベニコウジ菌0.001~0.1重量が好ましい、発酵温度は32~37℃で、発酵時間は12~24時間が好ましい。
【0075】
得られた発酵液は濾過され、得られた濾過液を100℃で10~20分間加熱し、自然冷却して滅菌される。この発酵濾過液をラクトバチルス ロイテリの培地として利用する。
【0076】
ラクトバチルス ロイテリは学名Lactobacillus reuteriであり、ヒト体内にも存在している有用微生物である。発酵用原料としてセティ株式会社(東京都千代田区)で高濃度ロイテリ菌として販売されている。
【0077】
前記の発酵濾過液1重量に対してラクトバチルス ロイテリ0.001~0.1重量を添加し、発酵タンク中で35~38℃、24~48時間発酵させる。
【0078】
また、ラクトバチルス ロイテリを前培養することは培養時間が短縮されることから好ましい。
【0079】
目的とするベータグルカン誘導体をHPLCなどにより定量することならびに菌体の増殖性を確認することにより、培養の工程管理を実施することは産生量が調整されることから好ましい。この培養によりベータグルカンが遊離し、ポリフェノールとシステインが結合した目的とするベータグルカン誘導体を産生することが可能である。
【0080】
前記の培養物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程を実施しやすいことから好ましい。また、得られた培養物を超音波処理することは生成物が溶媒に分散し、目的とする物質を分離しやすいことから好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0081】
前記の培養物から目的とするベータグルカン誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質を得られる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0082】
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするベータグルカン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1~300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0083】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0084】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0085】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0086】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0087】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD-2またはXAD-4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH-20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA-410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
【0088】
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH-20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0089】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して2~30倍量が好ましく、4~20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10~30℃が好ましく、12~25℃がより好ましい。
【0090】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0091】
セファデックスLH-20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0092】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0093】
ベータグルカン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするベータグルカン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから好ましい。
【0094】
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるベータグルカン誘導体が脂溶性に変換されることから脂溶性の溶媒に親和する点で好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
【0095】
また、このベータグルカン誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
【実施例0096】
アサイヤシ果実(ブラジル産、輸入元CANA CORPORATION)のアサイヤシ果実フリーズドライ粉末1kg及びコメヌカ粉末1kg(はらだ自然農園(京都府亀岡市))を粉砕機により粉砕した後、オートクレーブ(SDL-320、トミー製)により120℃、15分間滅菌した。
【0097】
これを発酵用タンク滅菌された発酵用丸形40リットルタンク(遠藤科学製)に添加した。ここに有限会社紅麹本舗(京都府舞鶴市)で製造されたベニコウジ菌を前培養した発酵液50gを添加して35~36℃で15時間発酵させた。
【0098】
発酵過程では通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、発酵終了後、発酵タンクより発酵液を取り出した。発酵液を濾過布により粗濾過した後、ろ液を珪藻土と濾紙(東洋濾紙)を敷いたブフナー型濾過器により濾過した。得られた濾過液を100℃で15分間加熱した。自然冷却後、これを発酵濾過液とした。
【0099】
前記の発酵濾過液1kgに対してラクトバチルス ロイテリ(セティ株式会社製)10gを添加し、清浄な発酵タンク中で36℃、40時間発酵させた。
【0100】
発酵過程では通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、目的とするベータグルカン誘導体の生成を検出した。発酵終了後、発酵タンクより発酵液を取り出した。発酵液を濾過布により粗濾過した後、ろ液を珪藻土と濾紙(東洋濾紙)を敷いたブフナー型濾過器により濾過した。得られた濾過液を100℃で15分間加熱した。自然冷却後、濾過液を目的とするベータグルカン誘導体を含む培養液とした。これを検体1とした。検体1の製造量は0.74kgであった。
【0101】
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のベータグルカン誘導体含有物の100gに5%エタノール含有精製水の2Lを添加し、ダイヤイオン(AMP03型、三菱化学製)500gを5%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラム(遠藤科学製)に供した。
【0102】
これに10Lの5%エタノール液を添加して清浄し、さらに、25%エタノール液を1L添加して洗浄した。また、65%エタノール液を1L添加して目的とするベータグルカン誘導体を溶出させ、この溶出液をエパポレーターにより濃縮した。この精製工程を5回繰り返して5回目に精製されたベータグルカン誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これを真空乾燥させ、ベータグルカン誘導体の精製物5.1gを得てこれを検体2とした。収率は約5%であり、天然物から精製するには十分な収量であり、この製造方法が目的とするベータグルカン誘導体の優れた製法であることが確認された。
【0103】
以下に、ベータグルカン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0104】
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。その結果、純度は99.3%であった。
【0105】
この検体2を核磁気共鳴装置(500MHz、溶媒C5D5N、ブルカー製)で解析した結果、検体2からベータグルカンの1分子、ポリフェノールの1分子、システインの3分子からなる目的とするベータグルカン誘導体が検出された。
【0106】
すなわち、C5D5N中の500MHzのH-NMRにより解析した場合、ピークの位置は0.91、0.95、1.10、1.30、1.52、1.57、1.76、2.56、2.72、3.36、4.45、5.03、5.22、5.25、5.35、6.03及び6.11ppmに認められた。
【0107】
さらに、C5D5N中13C-NMRの解析により、9.1、19.0、19.1、19.2、19.3、19.9、21.4、23.6、25.5、26.5、27.3、28.1、32.5、36.4、37.5、38.5、39.3、42.0、44.7、45.3、49.8、51.8、52.7、63.0、63.8、64.4、64.5、67.0、68.1、69.4、70.2、70.3、71.6、73.1、73.3、73.8、74.0、74.4、75.5、76.9、77.1、77.6、78.9、79.4、79.5、79.8、80.3、80.9、83.3、87.1、89.0、90.7、101.2、103.4、104.7、104.9、105.0、108.2、112.2、119.2、137.4、137.8及び178.3ppmにピークが認められた。
【0108】
以下に、13C-NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)

【0109】
上記の解析結果から化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明した。すなわち、検体2は目的とするベータグルカン誘導体であり、ベータグルカンの1分子、ポリフェノールの1分子、システインの3分子からなる目的とするベータグルカン誘導体であることが確認された。この物質はC63H97O39N3S3で、炭素63個、水素97個、酸素39個、窒素3個及び硫黄3個から形成されることが判明した。
【0110】
以下にヒト由来皮膚表皮細胞を用いた増殖作用試験について述べる。なお、この試験方法は生化学的に成分の働きを検証できる再現性のある常法である。
(試験例2)
【0111】
クラボウより購入したヒト由来表皮細胞(表皮由来、エピーダーセル)を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。皮膚表皮細胞を培養液で洗浄後、プレート(FALCON製)に播種した。ここに紫外線照射装置(クオークテクノロジー製)により280nmの紫外線を1時間照射した。ここに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ製、表皮成長因子)をいずれも0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
【0112】
培養液を採取後、表皮細胞の増殖率をトリパンブルー法により計数した。その後、表皮細胞の懸濁液を調製した。ここからmRNAを核酸抽出キット(フナコシ製)により抽出した。常法に従い、RT-PCR法によりフィブリリンのmRNAを定量した。また、細胞に含有されるフィブリリン量をELISA法(抗フィブリリン抗体、フナコシ製、コードAG-20B―0073―C100)及び抗マウスIgG抗体を用いて分光学的に定量した。なお、抗原としてフナコシ製のフィブリリン(Asproson、コードAG-20B―0073―C010)を用いた。
【0113】
同時に、細胞懸濁液中の8-OHdG量をキット(日本老化制御研究所製)にて定量した。8-OHdGに特異的なモノクローナル抗体を使用したELISAキットである。
【0114】
なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
【0115】
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚表皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として188%に増加した。また、検体2では267%に増加した。一方、EGFでは180%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGFよりも優れた表皮細胞活性化作用を呈した。
【0116】
上記の細胞中のフィブリリンのmRNA発現量(コピー数)は溶媒対照群では20コピー、検体1処理群では50コピー、検体2処理群では180コピ-、EGF処理群では23コピーであった。これにより検体1及び検体2はフィブリリンをmRNAレベルで増加させた。
【0117】
また、ELISA法によりフィブリリンを定量した結果、検体1の0.1mg/mlの添加によりフィブリリン量は溶媒対照群に比して平均値として198%に増加した。また、検体2では349%に増加した。一方、EGFでは176%となった。この結果、検体1及び検体2の方がEGFよりも優れたフィブリリン増加作用を呈した。
【0118】
また、上記の細胞中の8OHdG量は溶媒対照群では540ng、検体1処理群では155ng、検体2処理群では78ng、EGF処理群では509ngであった。
【0119】
8OHdGは遺伝子が活性酸素により修飾された変異した状態であり、遺伝子の障害をあらわしている。検体1及び検体2でこの値が低く、EGFより優っていた。これは検体1及び検体2による皮膚表皮細胞の遺伝子修復作用を示す。
【0120】
一方、安全性試験の一環として人工皮膚であるEpiSkin(SkinEthic社製)を用いた皮膚刺激性実験では、検体1及び検体2の添加により刺激性は認められず、安全性が確認された。なお、この方法は皮膚刺激性試験評価法として動物を使用しない代替法として確立されている。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明で得られるベータグルカン誘導体は皮膚表皮細胞を活性化させ、皮膚表皮細胞の細胞機能を増進させる。これにより国民の美容的QOLを改善し、健康な労働人口を増加させ、かつ、医療費を削減できる。
【0122】
本発明で得られるベータグルカン誘導体は培養法により製造されることから機能性を有する食品として利用でき、食品産業や培養業界の発展に寄与する。