(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036725
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ブレーキング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240311BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H01L21/78 T
B28D5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141140
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】522327359
【氏名又は名称】株式会社AC-X Tech
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】國柄 智章
(72)【発明者】
【氏名】高 楊
(72)【発明者】
【氏名】竹原 尚吾
【テーマコード(参考)】
3C069
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA03
3C069BA04
3C069BB01
3C069BC02
3C069CA05
3C069CB01
3C069EA05
5F063AA05
5F063CB07
5F063CB28
5F063DD27
5F063DD81
5F063DD83
5F063DF12
(57)【要約】
【課題】簡単な構成の装置により、チッピングの発生を防止しつつ、基板を全てのブレーキング予定線で無駄なくブレーキングできるようにする。
【解決手段】ブレード5の下面及び左側の当接体27bの上面が基板20の上面、下面にそれぞれ当接した状態で、加圧シリンダ32により基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20a上に曲げ応力が付与されて基板20がブレーキングされ、左側の当接体27bと基板20との間に介在した弾性を有する緩衝シートSAにより、ブレーキングした後に基板20のエッジに生じる過剰な応力が吸収される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に複数のブレーキング予定線が形成されて複数のチップ領域が形成された基板を保持枠の内側に配置し、前記保持枠及び前記基板の少なくとも上面を粘着シートにより覆った状態で、ブレーキング対象の前記ブレーキング予定線に沿って前記基板をブレーキングするブレーキング装置において、
前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上、下に位置して前記基板の上面及び下面に接離自在に当接する上、下当接部を有する割断手段と、
前記割断手段の前記上、下当接部が当接した状態で前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線上に曲げ応力を付与して前記基板をブレーキングする応力付与手段と
を備え、
前記下当接部と前記基板との間に、
前記応力付与手段による曲げ応力によりブレーキングした後に前記基板に生じる過剰な応力を吸収するための弾性を有する緩衝層を配置してブレーキングすることを特徴とするブレーキング装置。
【請求項2】
前記緩衝層は、前記下当接部の上面に弾性材が貼着されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキング装置。
【請求項3】
前記緩衝層は、前記基板の下面に弾性材が貼着されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキング装置。
【請求項4】
前記基板を前記保持枠ごと移動させる移動手段を更に備え、
前記割断手段の前記上、下当接部が前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上、下に当接する位置に、前記移動手段により前記基板が前記保持枠ごと移動されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーキング装置。
【請求項5】
前記下当接部の上面寸法は、前記基板の外形寸法とほぼ同じまたは前記基板の外形寸法よりも大きく、かつ、前記保持枠の内側寸法よりも小さく、
前記下当接部と一緒に、前記基板を前記保持枠ごと移動させる移動手段を更に備え、
前記割断手段の前記上当接部が前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上に当接する位置に、前記移動手段により前記下当接部と一緒に前記基板が移動されることを特徴とする請求1ないし3のいずれかに記載のブレーキング装置。
【請求項6】
前記下当接部の上面は、複数に分割されて成ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか、または、請求項1に従属する請求項4または請求項5に記載のブレーキング装置。
【請求項7】
前記緩衝層は、一方の面が粘着性を有することを特徴とする請求項2または3に記載のブレーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の縦横に形成された複数のブレーキング予定線のうち、ブレーキング対象のブレーキング予定線に沿って基板をブレーキングするブレーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板(ウエハ)を複数の半導体チップにブレーキングするブレーキング装置として、特許文献1に記載のものがある。この種、従来のブレーキング装置では、ブレード周辺を拡大した切断正面図である
図7に示すように、ほぼ円形の基板50の下面にはブレーキング予定線50aとなる罫書筋がダイヤモンドブレード等により格子状に形成され、これにより基板50に複数のチップ領域が形成され、基板50の下面には保護シート51が貼着される一方、基板50の上面側には粘着シート52が貼着され、粘着シート52は基板50よりも大きな内寸を有するほぼ円環状の保持枠(図示省略)に張設され、粘着シート52、保護シート51及び保持枠によって基板50が保持されている。
【0003】
そして、
図7に示すように、保護シート51を下向きにして受け部54上に基板50が載置され、粘着シート52の上方から
図7中の矢印に示すように、ブレード55が基板50のブレーキング対象のブレーキング予定線50a上に押し当てられ、さらにブレード55が下方に押し込まれることによって基板50に曲げ応力が付与され、これにより基板50がブレーキング対象のブレーキング予定線50aに沿って切断され、このような切断作業が全てのブレーキング予定線50aに沿って繰り返し行われて基板50が複数の半導体チップにブレーキングされる。このとき、受け部54はブレード55の下方に空間を有し、ブレーキング対象のブレーキング予定線50aを挟んで当該ブレーキング予定線50aの両側を支持し、受け部54による下2点、及び、ブレード55による上1点の3つの支持点で基板50を支持しつつブレーキングするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-222198号公報(段落0002~0005、
図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のブレーキング装置では、
図8に示すように、曲げ応力により基板50が所定のブレーキング予定線50aで切断されても、ブレード55の過剰な押し込みが停止されないことがあり、このような過剰なブレード55の押し込みが生じた場合には、基板50の切断されたブレーキング予定線50aの上端エッジに負荷がかかり、当該エッジに欠け(チッピング)が生じるという問題がある。また、ブレード55の過剰な押込みが生じないようにブレード55の押し込み量を精度よく制御すればよいが、係る高精度の制御を行うにはコストがかかる。
【0006】
また、3つの支持点で基板50を支持しつつブレーキングする場合に、基板50の周縁に近いブレーキング予定線50aをブレーキングするために基板50を保持枠ごと移動させると、
図9に示すように、基板50の周縁の下方から受け部54の一方がはみ出して、一方の下1点の支持点が基板50の下面から外れて支持できなくなるため、、基板50の周縁に近いブレーキング予定線50aをブレーキングできなくなって無駄が生じるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成の装置により、チッピングの発生を防止しつつ、基板を全てのブレーキング予定線で無駄なくブレーキングできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明に係るブレーキング装置は、格子状に複数のブレーキング予定線が形成されて複数のチップ領域が形成された基板を保持枠の内側に配置し、前記保持枠及び前記基板の少なくとも上面を粘着シートにより覆った状態で、ブレーキング対象の前記ブレーキング予定線に沿って前記基板をブレーキングするブレーキング装置において、前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上、下に位置して前記基板の上面及び下面に接離自在に当接する上、下当接部を有する割断手段と、前記割断手段の前記上、下当接部が当接した状態で前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線上に曲げ応力を付与して前記基板をブレーキングする応力付与手段とを備え、前記下当接部と前記基板との間に、前記応力付与手段による曲げ応力によりブレーキングした後に前記基板に生じる過剰な応力を吸収するための弾性を有する緩衝層を配置してブレーキングすることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、割断手段の上、下当接部が基板の上面、下面にそれぞれ当接した状態で、応力付与手段により基板のブレーキング対象のブレーキング予定線上に曲げ応力が付与されて基板がブレーキングされ、割断手段の下当接部と基板との間に配置された弾性を有する緩衝層により、ブレーキングした後に基板に生じる過剰な応力が吸収されるため、従来のように、過剰な応力によってブレーキングされた基板のエッジに欠け(チッピング)が生じるのを未然に防止することができる。また、基板の周縁に近いブレーキング予定線であっても、割断手段の下当接部により基板を下から支えつつブレーキングできるため、基板の全てのブレーキング予定線で無駄なくブレーキングすることができる。なお、基板の形状は円形に限るものではなく、四角以上の多角形であってもよい。
【0010】
また、前記緩衝層は、前記下当接部の上面に弾性材が貼着されて形成されているとよく、前記基板の下面に弾性材が貼着されて形成されていてもよい。こうすることで、割断手段の下当接部と基板との間に、簡単に緩衝層を配置することができる。
【0011】
また、前記基板を前記保持枠ごと移動させる移動手段を更に備え、前記割断手段の前記上、下当接部が前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上、下に当接する位置に、前記移動手段により前記基板が前記保持枠ごと移動されるようにしてもよい。
【0012】
この場合、基板を保持枠ごと移動させる移動手段を備えるため、割断手段の上、下当接部が基板のブレーキング対象のブレーキング予定線の上、下に当接する位置に、移動手段により基板を保持枠ごと移動することができ、下当接部と基板との間に弾性を有する緩衝層を配置した状態でブレーキングすることができ、基板の周縁に近いブレーキング予定線であっても、その上、下に割断手段の上、下当接部を当接させ、かつ、下当接部と基板との間に弾性を有する緩衝層を配置した状態でブレーキングすることが可能になる。
【0013】
また、前記下当接部の上面寸法は、前記基板の外形寸法とほぼ同じまたは前記基板の外形寸法よりも大きく、かつ、前記保持枠の内側寸法よりも小さく、前記下当接部と一緒に、前記基板を前記保持枠ごと移動させる移動手段を更に備え、前記割断手段の前記上当接部が前記基板の前記ブレーキング対象のブレーキング予定線の上に当接する位置に、前記移動手段により前記下当接部と一緒に前記基板が移動されるようにするとよい。
【0014】
こうすると、割断手段の下当接部と一緒に、基板を保持枠ごと移動させる移動手段を備えるため、割断手段の下当接部の上面寸法を、基板の外形寸法とほぼ同じまたは基板の外形寸法よりも大きく、かつ、保持枠の内側寸法よりも小さく設定しておくことにより、移動手段により下当接部と一緒に基板が移動して、割断手段の上当接部が基板のブレーキング対象のブレーキング予定線の上に当接する位置に移動しても、常に下当接部と基板との間に緩衝層を配置した状態で下当接部によって基板を下から支えることができ、基板の周縁に近いブレーキング予定線も無駄なくブレーキングすることが可能になる。
【0015】
また、前記下当接部の上面は、複数に分割されていてもよい。このように、割断手段の下当接部はその上面が複数に分割された形態であっても、割断手段の下当接部と基板との間に緩衝層を配置することは可能であるため、ブレーキングの状況に応じ、最適な形態の下当接部を選択して使用することができる。
【0016】
また、前記緩衝層は、一方の面が粘着性を有するのが望ましい。この場合、緩衝層の粘着性を有する一方面を割断手段の下当接部の上面、または、基板の下面のどちらにでも貼り付けることができ、割断手段の下当接部と基板との間に緩衝層を容易に配置することができ、緩衝層を貼り替えによって容易に交換することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、割断手段の下当接部と基板との間に配置された弾性を有する緩衝層により、ブレーキングした後に基板に生じる過剰な応力が吸収されるため、簡単な構成の装置により、チッピングの発生を防止することができ、しかも基板の周縁に近いブレーキング予定線であっても、割断手段の下当接部により基板を下から支えつつブレーキングできることから、基板の全てのブレーキング予定線で無駄なくブレーキングすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のブレーキング装置の一実施形態の正面図である。
【
図4】
図1の他の一部のある状態を拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るブレーキング装置の一実施形態について、
図1ないし
図6を参照して説明する。
【0020】
(装置構成)
図1は本実施形態のブレーキング装置1を示し、基板が載置される載置台2と、載置台2を左右方向に長尺の一対のガイドレール3に沿って走行させる駆動機構4と、ガイドレール3の長さ方向に直交する前後方向に長尺のブレード5を上下動自在に支持した支持部6とを備える。ここで、ブレード5が、本発明における割断手段の「上当接部」に相当し、後述する基板のブレーキング対象のブレーキング予定線の上方に位置して基板の上面に接離自在に当接する。
【0021】
載置台2は、
図1~
図3に示すように、両ガイドレール3に沿って走行する左右一対の走行体2aと、両走行体2a上にわたり架設された平面視がほぼ矩形を有するベース板2bと、ベース板2b上に回転自在に載置された円形板状の回転板2cと、回転板2c上に固定され後述する保持枠を支持する支持テーブル2dとを備える。
【0022】
ここで、回転板2cは、
図3に示すように、その下面側周縁に設けられた摺接リング2c1と、ベース板2b上に回転板2cの周囲に平面視で正三角形の3つの頂点位置に配置されて回転板2cの周縁の摺接リング2c1の外周に回転自在に係合した3個の回転体2c2と、いずれかの回転体2c2を回転駆動する図示省略のモータとを備える回転機構により回転され、モータが回転することにより回転体2c2が回転して、摩擦力により当該回転体2c2の回転が摺接リング2c1に伝達されて、摺接リング2c1が回転して回転板2cが回転する。なお、この回転機構は、以下に詳述する駆動機構4とともに本発明における「移動手段」を構成する。
【0023】
駆動機構4は、左右の両端が軸受10により回転自在に支持された左右に長尺のボールねじ11と、ベース板2bの下面中央部に固着されボールねじ11の外周の雄ねじが螺合した雌ねじを有する図示省略の固定部と、ボールねじ11の右端にカップリング12を介してその回転軸が連結されたモータ13とを備える。そして、両走行体2aは、例えば側面視コ字状を有し、基部がベース板2bの下面に固着され、基部の前後両端から下方に垂下した脚部が左右のガイドレール3それぞれに沿って移動可能に係合するように配置され、モータ14の回転によってボールねじ11が回転することにより、両走行体2aの脚部に内蔵のローラがガイドレール3を転動して、両ガイドレール3に沿って走行体2a及びベース板2bが一体となって走行する。なお、モータ13の双方向への回転に応じて両走行体2aがベース板2bとともに左、右方向に走行し、後述する基板を所定のブレードの下方位置に移動させる。
【0024】
載置台2に載置される基板は、
図3、
図4に示すように保持枠に保持されている。すなわち、下面側に格子状に複数のブレーキング予定線20aが形成されて複数のチップ領域が形成されたほぼ円形の半導体基板(ウエハ)20が、ほぼ円環状の保持枠21の内側に配置され、保持枠21及び基板20の上面を粘着シート22により覆われるとともに、基板20の下面側に保護シート23が貼り付けられた状態で保持枠21に保持されている。そして、
図3に示すように、回転板2c上に固定された支持テーブル2d上に保持枠21の周縁部が載置されて固定支持されている。
【0025】
ここで、粘着シート22には、例えばポリ塩化ビニルやポリオレフィン等の透過性及び伸縮性を有する合成樹脂フィルム材を用いるとよく、その粘着面にアクリル系の粘着剤を塗布するとよい。こうすると、表面(上面)側からブレーキング予定線20aを視認し易くなる。また、保護シート23にはポリエチレン等の透明な樹脂フィルム材を用いるとよく、平面視でほぼ正方形に形成するのが望ましい。
【0026】
また、基板20のブレーキング予定線20aは、粘着シート22及び保護シート23を貼着する前の段階において、例えばレーザ光を基板20の下面側から内部に向けてレーザ光を照射することにより、ブレーキング予定線20aとなる改質層が格子状に形成されてブレーキング予定線20aが形成される。そのほかに、例えばダイヤモンドスクライブまたはダイシングブレードなどの手法によりケガキ溝を加工することによりブレーキング予定線20aを形成することができるが、ブレーキング予定線20aの形成手法は、これらに限定されるものではない。
【0027】
ところで、基板20の下方には、
図1に示すように、走行体2aと一緒にガイドレール3に沿って移動し基板20を下方から支える支持体27が配置されている。この支持体27は、走行体2a及びベース板2bに連結かつ分離自在に形成され、ブレード5の前後方向の長さと同程度の長さを有する板状基材27a,27aを備え、駆動機構4と同様の構成を有する移動機構28により、少なくとも左側の基材27aが右側の基材27aに対して接近・離間自在に移動可能に構成されている。
【0028】
ここで、移動機構28は、左右の両端が軸受28aにより回転自在に支持された左右に長尺のボールねじ28bと、左側の基材27aが載置状態で固定されボールねじ28bの外周の雄ねじが螺合した雌ねじを有する一方の固定部28cと、右側の基材27aが載置状態で固定され左右方向の貫通孔をボールねじ28bが貫通した他方の固定部28dと、ボールねじ28bの左端にカップリング28eを介してその回転軸が連結されたモータ28fとを備え、モータ28fが駆動してボールねじ28bが回転することにより、左側の基材27aが固定された固定部28cが、右側の基材27aが固定された固定部28dに対して接近・離間するように左右方向に移動する。
【0029】
さらに、
図1、
図2に示すように、支持体27の両基材27a,27aの上面にはそれぞれ前後方向に長尺の当接体27b,27bが着脱自在に取り付けられており、移動機構28により、支持体27の左側の基材27aが右側の基材27aに接近することにより両当接体27b,27bが合体するようになっている。そして、基板20を下2点、上1点の3つの支持点で支持しつつブレーキングするときには、両当接体27b,27bが離間されて使用され、基板20を下1点、上1点の2つの支持点で支持しつつブレーキングするときには、両当接体27b,27bのうち右側の当接体27bが
図2に示すように取り外され、左側の当接体27bのみが本発明における割断手段の「下当接部」として使用される。なお、右側の当接体27bを「下当接部」として使用することも可能であり、両当接体27bを合体させて、基板20を下1点、上1点の2つの支持点で支持しつつブレーキングする際の「下当接部」とし使用することが可能である。
【0030】
ところで、ブレード5を支持する支持部6は、
図1、
図2に示すように、固定された架台30及び架台30に設けられた上下動機構31により構成されており、上下動機構31は、
図1、
図2に示すように、ボールねじの回転により一緒に上下動する上下2つのガイド体31a,31bと、下方のガイド体31bに取り付けられブレード5に下向きの加圧力を加える加圧シリンダ32とを備え、下方のガイド体31bは、上方のガイド体31aとは別に上下動可能に構成されている。ここで、加圧シリンダ32cが、本発明における「応力付与手段」に相当し、基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20aの上方から所定の押圧力を加えて基板20に曲げ応力を付与する。
【0031】
本発明の最大の特徴として、
図4に示すように、支持体27の左側の当接体27bの上面に、弾性を有する緩衝シートSAが貼り付けられて緩衝層が形成されている。この緩衝シートSAは、例えば厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)のベース材の下面に厚さ180μmの例えばアクリル系粘着剤から成る粘着層が形成されて成り、粘着層が左側の当接体27bの上面に貼り付けられている。なお、緩衝シートSAは、シリコンゴムをはじめ、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、EPDM、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴムシートに粘着層を形成したものや、PP(ポロプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポロエチレン)、ポリオレフィン、アクリル、ポリイミドなどの樹脂製のベース板に粘着層を形成したものであるのが望ましい。
【0032】
(ブレーキング動作)
続いて、基板20のブレーキング動作について説明する。
【0033】
図1に示す支持体27の両当接体27b,27bのうち、右側の当接体27bが
図2に示すように取り外されて左側の当接体27bが下当接部として使用され、左側の当接体27bが
図4に示すようにブレード5の下方に位置するまで、駆動機構4により、支持体27が走行体2a及びベース板2bに連結された状態で基板20及び保持枠21と一緒に移動され、所定位置までの移動が完了すると、支持体27が走行体2a及びベース板2bから分離されて支持体27が走行体2aの移動から切り離される。このとき、左側の当接体27bの上面には、
図4に示すように緩衝シートSAが貼り付けられている。
【0034】
そして、
図4に示すように、ブレード5と左側の当接体27bとの間に保持枠21に保持された基板20が配置された状態となり、その状態でブレーキング対象であるブレーキング予定線20aが、ブレード5の長さ方向と平行で、かつ、ブレード5の先端と左側の当接体27bとの間に位置するように、走行体2a及びベース板2bの移動、及び、上記した回転機構による回転板2cの回転により基板20の位置が微調整され、左側の当接体27bによる下1点とブレード5による上1点の2つの支持点において、基板20がブレーキング対象であるブレーキング予定線20aで支持される。
【0035】
続いて、加圧シリンダ32によりブレード5に所定の加圧力が加えられ、基板20のブレーキング対象であるブレーキング予定線20aの位置に曲げ応力が付与されて、基板20の当該ブレーキング予定線20aが破断され、基板20が当該ブレーキング予定線20aでブレーキングされる。
【0036】
このようにして、1つのブレーキング予定線20aのブレーキングが終了すると、走行体2a及びベース板2bが移動されて次のブレーキング予定線20aがブレード5の下方位置に移動されて、上記したブレーキング動作が繰り返される。また、格子状のブレーキング予定線20aの例えば横方向のブレーキング予定線20aの切断が終了して縦方向のブレーキング予定線20aのブレーキングを行う場合、上記した回転機構により回転板2cが90°回転されて、縦方向のブレーキング予定線20aがブレード5の長さ方向に平行で、かつ、ブレード5の先端と左側の当接体27bとの間に配置されてブレーキングが行われる。
【0037】
このとき、左側の当接体27bと基板20との間に弾性を有する緩衝シートSAが配置されてブレーキングされるため、ブレーキングした基板20に生じる過剰な応力が緩衝シートSAにより吸収され、その結果、加圧シリンダ32の加圧力による過剰な応力によって、ブレーキングされた後の基板20のエッジに欠け(チッピング)が生じることを未然に防止できる。
【0038】
また、格子状のブレーキング予定線20aのうち基板20の周縁に近いブレーキング予定線L(
図5中の矢印)をブレーキングする場合には、
図6に示すように、基板20の周縁に近いブレーキング予定線Lがブレード5の長さ方向に平行で、かつ、ブレード5の先端と左側の当接体27bとの間に配置されてブレーキングが行われるが、その際、左側の当接体27bが基板20の外方にずれてはみ出すことがなく、基板20の当該ブレーキング予定線Lの下方に左側の当接体27bが位置して基板20を下から支えつつ、左側の当接体27bと基板20との間に弾性を有する緩衝シートSAが配置された状態でブレーキングされる。
【0039】
そのため、基板20の周縁に近いブレーキング予定線Lをブレーキングする場合であっても、加圧シリンダ32の加圧力による過剰な応力によって、ブレーキングされた後の基板20のエッジに欠け(チッピング)が生じることを未然に防止できる。
【0040】
したがって、上記した実施形態によれば、ブレード5の下面及び左側の当接体27bの上面が基板20の上面、下面にそれぞれ当接した状態で、加圧シリンダ32により基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20a上に曲げ応力が付与されて基板20がブレーキングされ、左側の当接体27bと基板20との間に介在した弾性を有する緩衝シートSAにより、ブレーキングした後に基板20のエッジに生じる過剰な応力が吸収されるため、従来のように、過剰な応力によってブレーキングされた基板のエッジに欠け(チッピング)が生じるのを未然に防止することができる。
【0041】
また、基板20の周縁に近いブレーキング予定線L(
図5参照)であっても、左側の当接体27bにより基板20を下から支えつつブレーキングできるため、基板20の全てのブレーキング予定線20aで無駄なくブレーキングすることができる。
【0042】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態では、左側の当接体27bを本発明における割断手段の「下当接部」として使用する場合について説明したが、右側の当接体27bを「下当接部」として使用してもよい。さらに、合体状態の両当接体27b,27bを「下当接部」として使用してもよく、この場合、合体した両当接体27b,27bの上面全体に緩衝シートSAを貼り付けるのが好ましい。
【0043】
また、上記した実施形態では、割断手段の「下当接部」として使用する左側の当接体27bの上面に緩衝シートSAを貼り付けた例について説明したが、基板20の下面側の保護シート23に代えて、弾性を有する緩衝シートSAを基板20の下面に直接貼り付けるようにしても、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0044】
また、上記した実施形態では、加圧シリンダ32による押圧力により基板20のブレーキング予定線20aに曲げ応力を付与してブレーキングする、つまり加圧シリンダ32による押圧力のみでブレーキングする場合について説明したが、加圧シリンダ32による押圧力を、それのみではブレーキングできない程度の弱い加圧力に抑えておき、弱い加圧力が加えられた状態のブレード5に、圧縮空気の膨張によるハンマーの衝撃や、振り子による衝撃その他の衝撃力を一気に加えてブレーキングするようにしてもよく、こうすると緩衝シートSAがなくても加圧シリンダ32による押圧力のみでブレーキングする場合よりもチッピングの発生を抑制することができ、緩衝シートSAを組み合わせることで、より確実にチッピングの発生を防止することが可能になる。
【0045】
また、上記した両当接体27b,27bを合体して成る平面視ほぼ円形の1つの当接体を形成して割断手段の下当接部として使用し、このとき両当接体27b,27bを合体して成る1つ当接体の上面寸法(直径)を、基板20の外形寸法(直径)とほぼ同じまたは基板20の外形寸法(直径)よりも大きく、かつ、保持枠21の内側寸法よりも小さく設定し、平面視ほぼ円形の1つの当接体から成る下当接部と一緒に、基板20を保持枠21ごと移動させる移動手段を更に備え、当該移動手段により、ブレード5が基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20aの上に当接する位置に、1つの当接体から成る下当接部と一緒に基板20が移動されるようにしてもよい。
【0046】
また、上記した実施形態では、基板20のブレーキング対象のブレーキング予定線20a上に曲げ応力を付与する応力付与手段を加圧シリンダ32とした場合について説明したが、応力付与手段はこのような加圧シリンダ32に限定されるものではない。
【0047】
また、基板20を保持枠21ごと移動させる移動手段である駆動機構4は、記した構成に限定されるものではない。
【0048】
また、ブレード5、当接体27bから成る割断手段は、上記した構成に限定されるものではなく、基板20の上面及び下面に接離自在に当接する上、下当接部を有するものであって応力付与手段により基板20に対して曲げ応力を付与し得る構成であればよい。
【0049】
そして、本発明は、基板に縦横に形成された複数のブレーキング予定線のうち、ブレーキング対象のブレーキング予定線に沿って基板をブレーキングするブレーキング装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 …ブレーキング装置
2c1 …摺接リング(回転機構)
2c2 …回転体(回転機構)
4 …駆動機構(移動手段)
5 …ブレード(割断手段、上当接部)
20 …基板
20a,L …ブレーキング予定線
21 …保持枠
27b …当接体(割断手段、下当接部)
32 …加圧シリンダ(応力付与手段)
SA …緩衝シート(緩衝層)