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特開2024-36746ファイバーガイド、空気紡績装置、及び空気紡績機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036746
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ファイバーガイド、空気紡績装置、及び空気紡績機
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/115 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
D01H1/115 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141177
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】庄田 裕一
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA01
4L056AA19
4L056BD12
4L056CA16
4L056CA18
(57)【要約】
【課題】繊維屑の発生量を削減でき、繊維束を好適に収束しながら案内できるファイバーガイドを提供する。
【解決手段】ファイバーガイド101において、軸方向に平行な平面で捻り通路111を切った第1断面は、第1内壁面141aに相当する第1内壁線WL1と、第3内壁面141cに相当する第2内壁線WL2と、を含む。第1内壁線WL1において捻り通路111の上流側端部に相当する第1上流端点AU1と、第2内壁線WL2において上流側端部に相当する第2上流端点AU2と、の間の距離は、第1内壁線WL1において捻り通路111の下流側端部に相当する第1下流端点AD1と、第2内壁線WL2において下流側端部に相当する第2下流端点AD2と、の間の距離よりも長い。第1上流端点AU1と第1下流端点AD1とを結ぶ第1仮想直線VL1が、ファイバーガイド101の軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維通路が内部に形成されたファイバーガイドであって、
前記ファイバーガイドの軸方向に平行な平面で前記繊維通路を切った第1断面は、前記繊維通路の一側の内壁面に相当する第1内壁線と、前記内壁面とは反対側の内壁面に相当する第2内壁線と、を含み、
前記第1内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第1上流端点と、前記第2内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第2上流端点と、の間の距離は、前記第1内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第1下流端点と、前記第2内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第2下流端点と、の間の距離よりも長く、
前記第1上流端点と前記第1下流端点とを結ぶ第1仮想直線、及び前記第2上流端点と前記第2下流端点とを結ぶ第2仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜していることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項2】
請求項1に記載のファイバーガイドであって、
前記第1仮想直線及び前記第2仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して30°以上50°以下の傾斜角度で傾斜していることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項3】
請求項1に記載のファイバーガイドであって、
前記第1内壁線は、前記第1上流端点と前記第1下流端点との間を結ぶ直線状に形成され、
前記第2内壁線は、前記第2上流端点と前記第2下流端点との間を結ぶ直線状に形成されることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項4】
請求項1に記載のファイバーガイドであって、
前記第1仮想直線が前記ファイバーガイドの軸方向に対してなす角度の大きさと、前記第2仮想直線が前記ファイバーガイドの軸方向に対してなす角度の大きさと、が異なることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項5】
請求項1に記載のファイバーガイドであって、
前記第1仮想直線が、前記ファイバーガイドの軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜しており、
前記第2仮想直線が、前記ファイバーガイドの軸方向に対して平行であるか、25°未満の傾斜角度で傾斜していることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項6】
請求項5に記載のファイバーガイドであって、
前記繊維通路の軸方向長さを2等分する位置で、前記ファイバーガイドの軸方向に垂直な平面で前記繊維通路を切った横断面は、曲がり部を有しており、
前記横断面の近傍に位置する前記繊維通路は、前記曲がり部を境界として、前記第1断面に垂直な寸法が小さい第1部分と、前記第1断面に垂直な寸法が大きい第2部分と、を有し、
前記第1仮想直線は前記第2仮想直線よりも前記第1部分に近いことを特徴とするファイバーガイド。
【請求項7】
繊維通路が内部に形成されたファイバーガイドであって、
前記ファイバーガイドの軸方向に平行な平面で前記繊維通路を切った第2断面は、前記繊維通路の一側の内壁面に相当する第3内壁線と、前記内壁面とは反対側の内壁面に相当する第4内壁線と、を含み、
前記第3内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第3上流端点と、前記第4内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第4上流端点と、の間の距離は、前記第3内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第3下流端点と、前記第4内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第4下流端点と、の間の距離よりも短く、
前記第3上流端点と前記第3下流端点とを結ぶ第3仮想直線、及び、前記第4上流端点と前記第4下流端点とを結ぶ第4仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して35°以上85°以下の傾斜角度で傾斜していることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項8】
請求項7に記載のファイバーガイドであって、
前記第3仮想直線及び前記第4仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して40°以上70°以下の傾斜角度で傾斜していることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項9】
請求項7に記載のファイバーガイドであって、
前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口は、前記ファイバーガイドの軸に対して一側へオフセットして配置されており、
前記繊維通路の内壁面のうち、前記ファイバーガイドの軸に対して前記上流開口がオフセットする方向とは反対側に位置する内壁面は、1又は複数の平面を含むことを特徴とするファイバーガイド。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のファイバーガイドであって、
前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口が形成される上流側端面と、
前記繊維通路の下流側端部に位置する下流開口が形成される下流側端面と、
を有し、
前記上流側端面と前記下流側端面との間の長さが1ミリメートル以上5ミリメートル以下であることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のファイバーガイドであって、
通過する空気を噴出させる紡績ノズルと、
前記紡績ノズルから噴出された空気により形成される旋回空気流が繊維に作用する旋回室と、
が一体的に形成されることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のファイバーガイドであって、
前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口が形成される上流側端面と、側面との間に形成された、面取部を備え、
前記面取部の、前記ファイバーガイドの軸方向に対する傾斜角度が50°以上70°以下であることを特徴とするファイバーガイド。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載のファイバーガイドと、
紡績ノズルから噴出された空気によって撚られた繊維を下流側へ案内する中空ガイド軸体と、
を備えることを特徴とする空気紡績装置。
【請求項14】
請求項13に記載の空気紡績装置と、
前記空気紡績装置で紡績された糸を引き出す引出装置と、
前記引出装置により引き出された糸を巻き取る巻取装置と、
を備えることを特徴とする空気紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気紡績装置に用いられるファイバーガイドに関する。詳細には、本発明は、ファイバーガイドの繊維通路の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績室において形成される旋回空気流の作用によって繊維に撚りを加え、紡績糸を生成する空気紡績装置が知られている。この空気紡績装置には、繊維を紡績室へ案内するためのファイバーガイドが設けられている場合がある。特許文献1は、ファイバーガイドを備える空気紡績装置を開示する。
【0003】
特許文献1のファイバーガイドの内部には、直線状の通路が形成されている。繊維束は、この通路を通過することができる。通路の上流端と下流端との間には、平坦な平面部が形成されている。平面部は、通路が延びる方向に沿って配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-42508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のファイバーガイドに関して、繊維束をより好適に収束しながら案内できるものが望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、繊維屑の発生量を削減でき、繊維束を好適に収束しながら案内できるファイバーガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のファイバーガイドが提供される。即ち、このファイバーガイドの内部には、繊維通路が形成されている。前記ファイバーガイドの軸方向に平行な平面で前記繊維通路を切った第1断面は、第1内壁線と、第2内壁線と、を含む。前記第1内壁線は、前記繊維通路の一側の内壁面に相当する。前記第2内壁線は、前記内壁面とは反対側の内壁面に相当する。前記第1内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第1上流端点と、前記第2内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第2上流端点と、の間の距離は、前記第1内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第1下流端点と、前記第2内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第2下流端点と、の間の距離よりも長い。前記第1上流端点と前記第1下流端点とを結ぶ第1仮想直線、及び、前記第2上流端点と前記第2下流端点とを結ぶ第2仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している。
【0009】
これにより、繊維を好適に収束しながら下流側へ案内できる繊維通路を構成することができる。
【0010】
前記のファイバーガイドにおいて、前記第1仮想直線及び前記第2仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して30°以上50°以下の傾斜角度で傾斜していることが好ましい。
【0011】
これにより、繊維をより好適に収束しながら下流側へ案内できる繊維通路を構成することができる。
【0012】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1内壁線は、前記第1上流端点と前記第1下流端点との間を結ぶ直線状に形成されている。前記第2内壁線は、前記第2上流端点と前記第2下流端点との間を結ぶ直線状に形成されている。
【0013】
これにより、繊維を下流側へ円滑に案内することができる。
【0014】
前記のファイバーガイドにおいて、前記第1仮想直線が前記ファイバーガイドの軸方向に対してなす角度の大きさと、前記第2仮想直線が前記ファイバーガイドの軸方向に対してなす角度の大きさと、が異なることが好ましい。
【0015】
これにより、繊維が通過する経路の形状の自由度を向上させることができる。
【0016】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1仮想直線が、前記ファイバーガイドの軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している。前記第2仮想直線が、前記ファイバーガイドの軸方向に対して平行であるか、25°未満の傾斜角度で傾斜している。
【0017】
これにより、繊維を好適に収束しながら下流側へ案内することができる。
【0018】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記繊維通路の軸方向長さを2等分する位置で、前記ファイバーガイドの軸方向に垂直な平面で前記繊維通路を切った横断面は、曲がり部を有している。前記横断面の近傍に位置する前記繊維通路は、前記曲がり部を境界として、前記第1断面に垂直な寸法が小さい第1部分と、前記第1断面に垂直な寸法が大きい第2部分と、を有する。前記第1仮想直線は前記第2仮想直線よりも前記第1部分に近い。
【0019】
これにより、曲がり部を介して第1部分から第2部分へ繊維を移行させるとともに、繊維を好適に収束しながら下流側へ案内することができる。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のファイバーガイドが提供される。即ち、このファイバーガイドの内部には、繊維通路が形成されている。前記ファイバーガイドにおいて、軸方向に平行な平面で前記繊維通路を切った第2断面は、第3内壁線と、第4内壁線と、を含む。前記第3内壁線は、前記繊維通路の一側の内壁面に相当する。前記第4内壁線は、前記内壁面とは反対側の内壁面に相当する。前記第3内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第3上流端点と、前記第4内壁線において前記繊維通路の上流側端部に相当する第4上流端点と、の間の距離は、前記第3内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第3下流端点と、前記第4内壁線において前記繊維通路の下流側端部に相当する第4下流端点と、の間の距離よりも短い。前記第3上流端点と前記第3下流端点とを結ぶ第3仮想直線、及び、前記第4上流端点と前記第4下流端点とを結ぶ第4仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して35°以上85°以下の傾斜角度で傾斜している。
【0021】
これにより、繊維通路よりも下流側において行われる空気紡績によって繊維が反転するのを、繊維通路の内壁面が阻害しにくい構成を実現することができる。
【0022】
前記のファイバーガイドにおいては、前記第3仮想直線及び前記第4仮想直線のうち少なくとも何れかが、前記ファイバーガイドの軸方向に対して40°以上70°以下の傾斜角度で傾斜していることが好ましい。
【0023】
これにより、繊維通路よりも下流側において行われる空気紡績によって繊維が反転するのを、繊維通路の内壁面がより阻害しにくい構成を実現することができる。
【0024】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口は、前記ファイバーガイドの軸に対して一側へオフセットして配置されている。前記繊維通路の内壁面のうち、前記ファイバーガイドの軸に対して前記上流開口がオフセットする方向とは反対側に位置する内壁面は、1又は複数の平面を含む。
【0025】
これにより、繊維を内壁面によって下流側へ適切に案内することができる。
【0026】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ファイバーガイドは、上流側端面と、下流側端面と、を有する。前記上流側端面には、前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口が形成されている。前記下流側端面には、前記繊維通路の下流側端部に位置する下流開口が形成されている。前記上流側端面と前記下流側端面との間の長さが1ミリメートル以上5ミリメートル以下である。
【0027】
これにより、ファイバーガイドを小型化することができる。
【0028】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このファイバーガイドには、紡績ノズルと、旋回室と、が一体的に形成されている。前記紡績ノズルは、通過する空気を噴出させる。前記旋回室では、前記紡績ノズルから噴出された空気により形成される旋回空気流が繊維に作用する。
【0029】
これにより、部品点数を削減することができる。
【0030】
前記のファイバーガイドは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ファイバーガイドは、面取部を備える。前記面取部は、前記繊維通路の上流側端部に位置する上流開口が形成される上流側端面と、側面との間に形成されている。前記面取部の、前記ファイバーガイドの軸方向に対する傾斜角度が50°以上70°以下である。
【0031】
これにより、ファイバーガイドを、ドラフト装置のドラフトローラに近接して配置することができる。
【0032】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の空気紡績装置が提供される。即ち、この空気紡績装置は、前記ファイバーガイドと、中空ガイド軸体と、を備える。前記中空ガイド軸体は、紡績ノズルから噴出された空気によって撚られた繊維を下流側へ案内する。
【0033】
これにより、繊維通路において繊維を好適に収束しながら下流側へ案内して空気流にて紡績を行うので、良好な物性の糸を生成できる。また、空気紡績の過程で繊維が紡績されずに脱落するファイバーロスを低減することができる。
【0034】
本発明の第4の観点によれば、以下の構成の空気紡績機が提供される。即ち、この空気紡績機は、前記空気紡績装置と、引出装置と、巻取装置と、を備える。前記引出装置は、前記空気紡績装置で紡績された糸を引き出す。前記巻取装置は、前記引出装置により引き出された糸を巻き取る。
【0035】
これにより、良好な物性の糸を巻き取ることができ、ファイバーロスが少ない空気紡績機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態に係る空気紡績装置を備える空気紡績機の全体的な構成を示す正面図。
図2】紡績ユニット及び糸継台車を示す側面図。
図3】紡績装置の構成を模式的に示す断面図。
図4】ファイバーガイドの構成を示す斜視図。
図5】ファイバーガイドを軸方向に沿って上流側から見た図。
図6】ファイバーガイドの第1断面を示す図。
図7】ファイバーガイドの第2断面を示す図。
図8】ファイバーガイドの横断面を示す図。
図9】ファイバーガイドの変形例を示す断面図。
図10】ファイバーガイドの変形例を示す図。
図11】ファイバーガイドの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係る空気紡績装置23を備える空気紡績機1について、図1及び図2を参照して説明する。
【0038】
図1に示すように、空気紡績機1は、ブロアボックス3と、原動機ボックス5と、複数の紡績ユニット7と、糸継台車9と、を備える。複数の紡績ユニット7は、所定の方向に並べて配置されている。
【0039】
ブロアボックス3内には、負圧源として機能するブロア11等が配置されている。
【0040】
原動機ボックス5には、駆動源(図略)と、中央制御装置13と、表示部15と、操作部17と、が配置されている。原動機ボックス5に設けられる駆動源には、複数の紡績ユニット7により共通で利用されるモータが含まれる。
【0041】
中央制御装置13は、空気紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。図2に示すように、それぞれの紡績ユニット7はユニット制御部19を備える。中央制御装置13は、各紡績ユニット7に、図略の信号線を介して接続されている。本実施形態では、それぞれの紡績ユニット7がユニット制御部19を備えているが、所定数(例えば、2つ又は4つ)の紡績ユニット7が1つのユニット制御部19により制御されても良い。
【0042】
表示部15は、紡績ユニット7に対する設定内容及び/又は各紡績ユニット7の状態に関する情報等を表示することができる。
【0043】
各紡績ユニット7は、主として、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置21と、空気紡績装置23と、糸貯留装置25と、巻取装置27と、を備える。ここでの「上流」及び「下流」とは、紡績糸(糸)30の巻取時における、スライバ32、繊維束34、及び紡績糸30の走行方向での上流及び下流を意味する。
【0044】
ドラフト装置21は、空気紡績機1が備えるフレーム36の上端近傍に設けられている。図2に示すように、ドラフト装置21は、4つのドラフトローラ対を備えている。4つのドラフトローラ対は、上流から下流へ向かって順に配置された、バックローラ対41、サードローラ対43、ミドルローラ対45、及びフロントローラ対47である。ミドルローラ対45には、エプロンベルト49が各ローラに対して設けられている。
【0045】
ドラフト装置21は、図略のスライバケースから供給されるスライバ32を、各ドラフトローラ対のローラ同士の間で挟み込んで搬送することによって、所定の繊維量(又は太さ)となるまで引き伸ばして(ドラフトして)、繊維束34を生成する。ドラフト装置21により生成された繊維束34は、空気紡績装置23に供給される。
【0046】
空気紡績装置23は、ドラフト装置21により生成された繊維束34に旋回空気流を作用させることにより、撚りを加えて紡績糸30を生成する。空気紡績装置23の詳細な構成は後述する。
【0047】
糸貯留装置25には、空気紡績装置23により生成された紡績糸30が供給される。糸貯留装置25は、図2に示すように、糸貯留ローラ(引出装置)53と、モータ55と、を備える。
【0048】
糸貯留ローラ53は、モータ55により回転駆動される。糸貯留ローラ53は、その外周面に紡績糸30を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ53は、外周面に紡績糸30を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することによって、空気紡績装置23から紡績糸30を所定の速度で引き出して下流側に搬送する。
【0049】
このように、糸貯留装置25は、糸貯留ローラ53の外周面に紡績糸30を一時的に貯留することができるので、紡績糸30の一種のバッファとして機能する。これにより、空気紡績装置23における紡績速度と、巻取速度(後述のパッケージ73に巻き取られる紡績糸30の走行速度)と、が何らかの理由により一致しないことによる不具合(例えば、紡績糸30の弛み等)を解消することができる。
【0050】
空気紡績装置23と糸貯留装置25との間には、糸監視装置59が設けられている。空気紡績装置23により生成された紡績糸30は、糸貯留装置25により貯留される前に糸監視装置59を通過する。
【0051】
糸監視装置59は、走行する紡績糸30の品質を光センサによって監視し、紡績糸30に含まれる糸欠陥を検出する。糸欠陥としては、例えば、紡績糸30の太さの異常、及び、紡績糸30に含まれる異物等が考えられる。糸監視装置59は、紡績糸30の糸欠陥を検出した場合、ユニット制御部19へ糸欠陥検出信号を送信する。糸監視装置59は、光センサの代わりに、例えば静電容量式のセンサを用いて紡績糸30の品質を監視しても良い。これらの例に代えて、あるいはこれらの例に加えて、糸監視装置59は、紡績糸30の品質として、紡績糸30のテンションを測定するように構成されていても良い。
【0052】
ユニット制御部19は、糸監視装置59から糸欠陥検出信号を受信すると、空気紡績装置23及び/又はドラフト装置21の駆動を停止させることによって紡績糸30を切断する。即ち、空気紡績装置23は、糸監視装置59が糸欠陥を検出したときに紡績糸30を切断する切断部として機能する。なお、紡績糸30を切断するためのカッタを紡績ユニット7が備えても良い。
【0053】
巻取装置27は、クレードルアーム61と、巻取ドラム63と、トラバースガイド65と、を備える。クレードルアーム61は、支軸67まわりに揺動可能に支持されており、紡績糸30を巻き取るためのボビン71(即ちパッケージ73)を回転可能に支持することができる。巻取ドラム63は、ボビン71又はパッケージ73の外周面に接触した状態で回転することにより、パッケージ73を巻取方向に回転駆動させる。巻取装置27は、トラバースガイド65を図略の駆動手段によって往復動させながら、巻取ドラム63を図略の電動モータによって駆動する。これにより、巻取装置27は、紡績糸30を綾振りしつつ、紡績糸30をパッケージ73に巻き取る。
【0054】
図1に示すように、空気紡績機1のフレーム36には、複数の紡績ユニット7が並ぶ方向に沿ってレール81が配置されている。糸継台車9は、レール81の上を走行可能に構成されている。これにより、糸継台車9は、複数の紡績ユニット7に対して移動することができる。糸継台車9は、糸切れ又は糸切断が発生した紡績ユニット7まで走行して、当該紡績ユニット7に対する糸継作業を行う。
【0055】
糸継台車9は、図1に示すように、走行車輪83と、糸継装置85と、サクションパイプ87と、サクションマウス89と、を備える。糸継台車9は更に、図2に示す台車制御部91を備える。
【0056】
サクションパイプ87は、糸出し紡績時に空気紡績装置23により生成された紡績糸30を捕捉可能である。具体的には、サクションパイプ87は、その先端に吸引空気流を発生させることによって、空気紡績装置23から送り出される紡績糸30を吸い込むことにより捕捉することができる。サクションマウス89は、巻取装置27のパッケージ73に巻き取られた紡績糸30を捕捉可能である。具体的には、サクションマウス89は、その先端に吸引空気流を発生させることによって、巻取装置27に支持されたパッケージ73から紡績糸30を吸い込むことにより捕捉することができる。サクションパイプ87とサクションマウス89とは、紡績糸30を捕捉した状態で回動することによって、当該紡績糸30を糸継装置85に導入することができる位置まで案内する。
【0057】
糸継装置85は、サクションパイプ87によって案内された空気紡績装置23からの紡績糸30と、サクションマウス89によって案内されたパッケージ73からの紡績糸30と、を糸継ぎする。本実施形態において、糸継装置85は、旋回空気流により糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。糸継装置85は上記スプライサ装置に限定せず、例えば機械式のノッタ等を採用することもできる。
【0058】
図2に示す台車制御部91は、図示しないCPU、ROM、RAM等を有する公知のコンピュータとして構成されている。台車制御部91は、糸継台車9が備える各部の動作を制御することによって、糸継台車9が行う糸継作業を制御する。
【0059】
次に、図3を参照して、空気紡績装置23の構成について詳しく説明する。
【0060】
図3に示すように、空気紡績装置23は、ファイバーガイド101と、スピンドル(中空ガイド軸体)102と、ノズルブロック103と、針状部材104と、を備えている。
【0061】
ファイバーガイド101は、円柱状の部材の軸方向一側に平面状の面取りが形成された形状を有する。ファイバーガイド101の円柱状の部材の軸線ALは、後述の紡績室113の軸線と一致している。本明細書において、ファイバーガイド101の軸方向とは、軸線ALの方向を意味する。ファイバーガイド101は、例えば、金属又はセラミックにより構成することができる。
【0062】
ファイバーガイド101には、繊維束34が通過可能な捻り通路(繊維通路)111と、軸線ALに沿って延びる貫通孔112と、が形成されている。捻り通路111は、空気紡績を行うための紡績室(旋回室)113に接続している。貫通孔112には、針状部材104が取り付けられている。
【0063】
ファイバーガイド101には、ドラフト装置21により生成された繊維束34が供給される。繊維束34は、ファイバーガイド101において捻り通路111の上流端(上流開口)111aから導入され、下流端(下流開口)111bを経て紡績室113まで案内される。ファイバーガイド101の内部に導入された繊維束34は、針状部材104に巻き掛かるようにして下流側へ案内される。
【0064】
ファイバーガイド101は、ブロック状に形成された本体部115を備える。本体部115は、その上流側端面115aがドラフト装置21側を向き、下流側端面(底面)115bがスピンドル102側を向くように配置されている。
【0065】
ファイバーガイド101は、紡績室113の一部を構成している。具体的には、本体部115の下流側端面115bが、後述のノズルブロック103の内部空間に臨むように配置されることによって、紡績室113が形成される。
【0066】
スピンドル102は、ファイバーガイド101に対して下流側に配置されている。スピンドル102は、繊維束34が走行する方向に沿って細長い丸棒状に形成されている。スピンドル102は、その上流側端面102aが、ファイバーガイド101に対して、紡績室113を介して対向するように配置されている。
【0067】
スピンドル102は、捻り通路111を通過した繊維束34が導かれる紡績通路122を有する。紡績通路122は、紡績室113に接続している。紡績通路122は、スピンドル102に形成された円形の孔126から構成されている。紡績通路122は、スピンドル102の内部において、当該スピンドル102の長手方向に沿って直線状に延びている。紡績通路122の上流端122aは、スピンドル102の上流側端面102aに開口している。紡績通路122の上流端122aは、針状部材104に対向するように配置されている。紡績通路122の中心は、スピンドル102の軸心108と一致する。
【0068】
スピンドル102の上流側端部には、円錐状のテーパ部124が形成されている。テーパ部124は、下流側から上流側にいくに従って外径が小さくなるように形成されている。
【0069】
スピンドル102は、紡績室113の一部を構成している。具体的には、テーパ部124の外周面がノズルブロック103の内部空間に配置されることによって、紡績室113が形成される。スピンドル102の上流側端面102aは、ファイバーガイド101の本体部115に対して適宜の間隔をあけて配置されている。
【0070】
紡績室113は、ファイバーガイド101の本体部115の下流側端面115bと、スピンドル102のテーパ部124の外周面と、後述のノズルブロック103の内面103aと、により囲まれた空間から構成されている。
【0071】
紡績通路122の上流端122aは、捻り通路111の下流開口111bに対して、繊維束34が走行する方向において適宜の間隔をあけて配置されている。前述の紡績室113は、この間隔の部分を含んで構成されている。
【0072】
繊維束34は、捻り通路111の下流開口111bから出た後、紡績室113を経由して、紡績通路122の上流端122aに入る。繊維束34は、紡績通路122を通過して、空気紡績装置23の外部に送り出される。
【0073】
スピンドル102は、図略の補助ノズルを複数有する。複数の補助ノズルは、周方向に等間隔で並べて配置されている。複数の補助ノズルから紡績通路122に圧縮空気が噴出されることにより、紡績通路122内において旋回空気流が発生する。スピンドル102の軸心108に沿う方向で見た場合、この旋回空気流の向きは、紡績ノズル131が発生させる旋回空気流とは逆である。
【0074】
ノズルブロック103は、ファイバーガイド101の下流側に配置されている。ノズルブロック103は、スピンドル102を覆うように配置されている。ノズルブロック103は、例えば、金属又はセラミックにより構成することができる。ノズルブロック103とスピンドル102との間には、スピンドル102の径方向において隙間が形成されている。
【0075】
ノズルブロック103には円形の孔が形成されている。この円形孔の軸心は、スピンドル102の軸心108に一致する。ノズルブロック103の内面103aは、スピンドル102の軸心108の方向で見たときに円形となるように形成されている。
【0076】
ノズルブロック103は、空気が通過可能な紡績ノズル131を有する。空気紡績装置23は、紡績ノズル131から紡績室113内に空気(圧縮空気)を噴出することができる。紡績ノズル131は、スピンドル102の軸心108に対して傾斜した向きに延びる貫通孔として形成されている。図3では紡績ノズル131が模式的に描かれているが、スピンドル102の軸心108に沿う向きで見た場合、紡績ノズル131の向きは、ノズルブロック103の内面103aの接線方向と一致するか、少し傾いている。紡績ノズル131の長手方向一端部は図略の圧縮空気供給部に接続され、長手方向他端部は紡績室113に開口している。
【0077】
紡績ノズル131から紡績室113に圧縮空気が噴射されると、紡績室113において旋回空気流が発生する。図3に示すように、紡績ノズル131の向きは、空気の噴射方向下流となるにつれて繊維束34の走行方向下流側となるように傾斜している。従って、紡績ノズル131からの圧縮空気の噴射に伴い、紡績室113の上流端付近に負圧が発生し、この結果、ファイバーガイド101の上流開口111aにおいて空気吸引流が発生する。
【0078】
本実施形態において、紡績ノズル131は、ノズルブロック103に複数形成されている。複数の紡績ノズル131は、紡績室113の周方向に等間隔で並べて配置されている。ただし、紡績ノズル131の数は限定されず、1つ以上配置されていれば良い。
【0079】
空気紡績装置23は、通常紡績及び糸出し紡績の2種類の紡績を行うことができる。通常紡績は、空気紡績装置23よりも下流側において紡績糸30を巻き取りつつ行う紡績である。糸出し紡績は、通常紡績の前の段階で行われる一時的な紡績であり、空気紡績装置23から紡績糸30が出ていない状態で開始される。糸出し紡績は、空気紡績装置23が旋回空気流を作用させるだけで紡績を行うことから、セルフスピニングと呼ばれることがある。
【0080】
空気紡績装置23が糸出し紡績を行う場合、紡績ノズル131よりも先に補助ノズルから圧縮空気が噴射される。紡績通路122は下流側にいくに従って通路面積が増加するように形成されているので、補助ノズルからの圧縮空気の噴射により、紡績通路122において、下流側に流れる旋回空気流が形成される。この状態で繊維束34をドラフト装置21から供給すると、当該繊維束34は、捻り通路111から紡績室113を通過して紡績通路122に導かれた状態となる。また、補助ノズルから噴射される空気によって形成される旋回空気流の作用により、紡績通路122を通過する部分の繊維束34に、多少の撚りが加えられる。
【0081】
続いて、紡績ノズル131から圧縮空気が噴射され、紡績室113に旋回空気流が形成される。この旋回空気流は、紡績室113を通過する部分の繊維束34に作用する。
【0082】
以下、紡績室113を通過する部分の繊維束34に着目して、繊維の挙動を説明する。この部分での繊維束34を構成する繊維の走行方向下流側の端部は、紡績通路122の内部において、繊維束34の芯部に撚り込まれて固定されている。一方、走行方向上流側の端部は撚り込まれていないので、この自由端は紡績室113の旋回空気流によって芯部から開くように離れ、テーパ部124の外周面に沿うように向きを反転させた状態で旋回する。これにより、芯部に繊維が巻き付くとともに、繊維束34に撚りが加えられ、紡績糸30が生成される。このようにして生成された紡績糸30は、補助ノズルから噴射される空気によって形成される旋回空気流によって下流へ走行し、空気紡績装置23から送り出される。
【0083】
通常紡績では、補助ノズルからの空気の噴射が行われない。通常紡績では、空気紡績装置23から紡績糸30が糸貯留ローラ53により引き出されることによって、空気紡績装置23からの紡績糸30の走行が実現される。通常紡績の原理も糸出し紡績と基本的には同様であり、紡績ノズル131から噴射された空気によって形成される旋回空気流を作用させることにより、繊維束34の加撚が行われる。
【0084】
次に、図4から図7等を参照して、ファイバーガイド101の構成について詳細に説明する。
【0085】
ファイバーガイド101は、略円柱状に形成された中空部材である。ファイバーガイド101の軸線ALは、その延長線が、スピンドル102の軸心108と一致するように配置される。本実施形態では、ファイバーガイド101は、上流側端部が下流側端部よりも高くなるように傾斜して配置される。これを考慮し、以下の説明においては、ファイバーガイド101の上流側端面を「頂面」と称し、下流側端面を「底面」と称することがある。本実施形態のファイバーガイド101においては、当該頂面から底面までの距離(長さ)L1は、1ミリメートル以上5ミリメートル以下である。
【0086】
本実施形態では、紡績ユニット7の高さ方向において、ドラフト装置21及び空気紡績装置23が上側に配置されており、巻取装置27が下側に配置されている。この構成に代えて、ドラフト装置21及び空気紡績装置23が下側に配置されており、巻取装置27が上側に配置されていても良い。この場合、ファイバーガイド101は、上流側端部が下流側端部よりも低くなるように傾斜して配置され、頂面が底面よりも低い位置に位置することになる。
【0087】
ファイバーガイド101の内部には、捻り通路111が形成されている。当該捻り通路111の上流側端部に位置する上流開口111aは、ファイバーガイド101の頂面に形成され、下流側端部に位置する下流開口111bは、ファイバーガイド101の底面に形成されている。
【0088】
捻り通路111の上流開口111aは、軸線ALに沿って見たときに、細長い略長方形に形成されている。ファイバーガイド101の底面における捻り通路111の下流開口111bは、軸線ALに沿って見たときに略C字状に形成されている。この下流開口111bは、軸線ALを迂回するように配置されている。
【0089】
上流開口111aは、図5に示すように、ファイバーガイド101の軸線ALに対して一側へオフセットして配置されている。図5等には、上流開口111aが軸線ALに対してオフセットされる方向が矢印OD1で示されている。
【0090】
図5には、ファイバーガイド101を軸線ALに沿って上流側から見た様子が示されている。このように見た場合、上流開口111aと下流開口111bは一部だけ重なっている。従って、下流開口111bの輪郭には、上流開口111a及び捻り通路111を通じて視認できる部分と、視認できない部分と、が存在する。以下の説明においては、下流開口111bのうち、軸線ALに沿って上流側から見たときに捻り通路111を通じて視認できる部分を「第1下流開口部」と呼び、視認できない部分を「第2下流開口部」と呼ぶことがある。
【0091】
第1下流開口部は、実質的に、細長い略長方形として形成されている。第1下流開口部の長方形の長手方向は、上流開口111aの長方形の長手方向と一致している。軸線ALに沿って上流側から見たときに、第1下流開口部の4辺のうち軸線ALに最も近い1辺と、上流開口111aの4辺のうち軸線ALに最も近い1辺とは、実質的に重なっている。
【0092】
第2下流開口部は、略L字状に折り曲げられた細長い形状として形成されている。第2下流開口部の長手方向端部が、第1下流開口部に接続されている。
【0093】
捻り通路111の形状に着目すると、軸線ALに沿って上流側から見たときに、捻り通路111は、上流開口111aを通じて視認できる部分である第1通路部141と、視認できない部分である第2通路部142と、を有する。
【0094】
図4及び図5に示すように、第1通路部141は、ファイバーガイド101の軸線ALに実質的に平行となるように、ファイバーガイド101を貫通して形成されている。第2通路部142は、ファイバーガイド101の上流側端面115aから下流側端面115bに近づくに従って、前述の矢印OD1とは概ね反対向きに延びる部分を有する。
【0095】
捻り通路111の上流開口111aは、当該第1通路部141の上流側の開口に相当する。捻り通路111の下流開口111bのうち第1下流開口部は、第1通路部141の下流側の開口に相当する。第2下流開口部は、第2通路部142の下流側の開口に相当する。
【0096】
第1通路部141は、図4に示すように、第1内壁面141a、第2内壁面141b、第3内壁面141c、及び第4内壁面141dから構成されている。4つの内壁面は、何れも平面状に形成されている。4つの内壁面(特に、軸線ALから最も遠い第2内壁面141bを除く3つの内壁面)は、繊維束34に実際に接触して繊維束34を案内する案内面として機能する。
【0097】
第1内壁面141a及び第3内壁面141cは、上流開口111aの長手方向両端のそれぞれに位置する。第2内壁面141b及び第4内壁面141dは、上流開口111aの短手方向両端のそれぞれに位置する。
【0098】
以下、図5及び図6を参照して、第1内壁面141a及び第3内壁面141cの特徴をより詳細に説明する。図6は、図5に鎖線で示す平面SP1でファイバーガイド101の第1通路部141を切断し、この断面(第1断面)を図5の太線矢印方向で見た様子を示している。平面SP1は、ファイバーガイド101の軸線ALと平行であり、かつ、上流開口111aの長手方向と平行となるように定められる。
【0099】
図5に示すように、上流開口111aの輪郭と、平面SP1とは、2つの交点を有し、下流開口111bの輪郭と、平面SP1とは、2つの交点を有する。平面SP1で捻り通路111を切った断面輪郭は、第1内壁面141a及び第3内壁面141cに相当する2つの線を有するが、4つの交点は、何れかの線の端部に位置する。以下の説明においては、第1内壁面141a側の上流側の交点を第1上流端点AU1と称し、第1内壁面141a側の下流側の交点を第1下流端点AD1と称する場合がある。また、第3内壁面141c側の上流側の交点を第2上流端点AU2と称し、第3内壁面141c側の下流側の交点を第2下流端点AD2と称する場合がある。
【0100】
第1上流端点AU1と第1下流端点AD1は、捻り通路111の一側に位置し、第2上流端点AU2と第2下流端点AD2は、捻り通路111の他方側に位置する。第1上流端点AU1と第2上流端点AU2との間の距離は、第1下流端点AD1と第2下流端点AD2との間の距離より長い。
【0101】
以下、第1内壁面141aと、平面SP1と、が交差する部分の線(交線)を、第1内壁線WL1と呼ぶことがある。図6に示すように、第1内壁線WL1は、捻り通路111を切断した第1断面の輪郭のうち、第1内壁面141aの部分に相当する。本実施形態では、第1内壁線WL1は、第1上流端点AU1と第1下流端点AD1とを結ぶ直線状に現れる。従って、第1上流端点AU1と第1下流端点AD1とを結ぶ仮想直線を第1仮想直線VL1と定義した場合、第1内壁線WL1と第1仮想直線VL1とは、一致している。
【0102】
図6に示すように、第1上流端点AU1と第1下流端点AD1とを結ぶ第1仮想直線VL1は、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、25°以上70°以下(好ましくは、30°以上50°以下)の傾斜角度で傾斜している。以下、第1仮想直線VL1が軸線ALに対して傾斜する角度を第1傾斜角度θ1と呼ぶことがある。本実施形態では、第1傾斜角度θ1は、略35°である。
【0103】
以下、第3内壁面141cと、平面SP1と、が交差する部分の線(交線)を、第2内壁線WL2と呼ぶことがある。図6に示すように、第2内壁線WL2は、捻り通路111を切断した第1断面の輪郭のうち、第3内壁面141cの部分に相当する。本実施形態では、第2内壁線WL2は、第2上流端点AU2と第2下流端点AD2とを結ぶ直線状に現れる。従って、第2上流端点AU2と第2下流端点AD2とを結ぶ仮想直線を第2仮想直線VL2と定義した場合、第2内壁線WL2と第2仮想直線VL2とは、一致している。
【0104】
図6に示すように、第2上流端点AU2と第2下流端点AD2とを結ぶ第2仮想直線VL2は、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、0°以上25°未満の傾斜角度で傾斜している。以下、第2仮想直線VL2が軸線ALに対して傾斜する角度を第2傾斜角度θ2と呼ぶことがある。θ2は0°であっても良い。即ち、第2仮想直線VL2が軸線ALに対して平行であっても良い。本実施形態では、第2傾斜角度θ2は、略16°である。
【0105】
第1断面において、第1仮想直線VL1及び第2仮想直線VL2(言い換えれば、第1内壁線WL1及び第2内壁線WL2)は、下流側端面115bに近づくに従って、本体部115の外周から遠ざかる向きに傾斜している。
【0106】
空気紡績においては、紡績室113において繊維束34から繊維が抜けてしまうファイバーロスを削減することが、材料費の低減等のために要望されている。図3に示す、スピンドル102の上流側端面102aからフロントローラ対47のニップ点NP1までの距離L0を短くすると、繊維がフリーで走行しにくくなるので、ファイバーロスの低減のために有効である。θ1及びθ2を上記のように定めることにより、仮にファイバーガイド101の長さL1を短くした場合でも、捻り通路111の通過に伴って繊維束34を良好に収束させることができる。
【0107】
本実施形態のファイバーガイド101において、捻り通路111の軸方向の長さは、実質的に、ファイバーガイド101の軸方向の長さL1と一致する。以下、この長さL1を2等分する位置で、ファイバーガイド101の軸方向に垂直な平面SP3で捻り通路111を切った横断面を考える。平面SP3は、図4に示されている。
【0108】
この横断面は、図8に示すように曲がり部146を有している。曲がり部146は、第4内壁面141dと、第2通路部142の内壁面である中間内壁面142aと、を接続する。横断面において、曲がり部146は円弧状の突出部として形成されている。中間内壁面142aについては後述する。横断面の近傍に位置する捻り通路111は、曲がり部146を境界として、第1断面に垂直な寸法D1が小さい第1部分P1と、第1断面に垂直な寸法D2が大きい第2部分P2と、を有する。第2部分P2の位置は、後述する窪み143の位置に対応している。
【0109】
曲がり部146は、概ね円弧状に形成されている。曲がり部146の一端は、第4内壁面141dに対して滑らかに接続している。曲がり部146は、第4内壁面141dとの接続箇所から遠ざかるのに従って、第2内壁面141bから離れるように湾曲している。曲がり部146の他端は、中間内壁面142aに対して滑らかに接続している。
【0110】
本実施形態では、第1断面に関する2つの仮想直線のうち、第1部分P1に近い第1仮想直線VL1の傾斜角度である第1傾斜角度θ1は、25°以上70°以下である。また、第2部分P2に近い第2仮想直線VL2の傾斜角度である第2傾斜角度θ2は、0°以上25°未満である。
【0111】
第2内壁面141bは、図5に示すように、第1内壁面141a及び第3内壁面141cのそれぞれに接続されている。軸線ALに沿って上流側から見た場合、第2内壁面141bは、上流開口111aの短手方向一側に位置する。具体的には、軸線ALに沿って上流側から見た場合、第2内壁面141bは、上流開口111aの短手方向において、軸線ALから遠い側に位置する。
【0112】
第4内壁面141dは、第2内壁面141bの反対側に配置されている。軸線ALに沿って上流側から見た場合、第4内壁面141dは、上流開口111aの短手方向において、軸線ALに近い側に位置する。第4内壁面141dは、捻り通路111において、上流開口111aが軸線ALに対してオフセットする方向(矢印OD1で示す方向)とは反対側に位置する平面状の内壁面を構成する。
【0113】
図4等に示すように、第4内壁面141dにおいて第3内壁面141cに近い側の端部には、傾斜状の窪み143が形成されている。窪み143は、捻り通路111の内部で第1通路部141に対して開口する。窪み143は、下流開口111bが有する前述の第2下流開口部にも接続されている。窪み143は、下流側端面115bへ近づくに従って、第1通路部141からの距離を増大させるように形成されている。
【0114】
第2通路部142は、窪み143の内部空間に相当する。第2通路部142は、捻り通路111の下流側へ近づくに従って、第1通路部141から離れる方向(ファイバーガイド101の軸線ALに概ね近づく方向)に延びるように形成されている。
【0115】
図5に示すように、第2通路部142は、第1延長部144と、第2延長部145と、を有する。第1延長部144は、第1通路部141から離れる方向に延びるように形成されている。軸線ALに沿って上流側から見た場合、第1延長部144は、前述の矢印OD1とは反対の向きに、軸線ALの傍らを通過するように延びている。第2延長部145は、第1延長部144に接続されており、第1延長部144とは異なる方向に短く延びている。第2延長部145は、軸線ALに近接して配置されている。軸線ALに沿って上流側から見た場合、第1延長部144と第2延長部145は略垂直に接続されており、この結果、第2通路部142は略L字状に形成されている。
【0116】
第2延長部145は、軸線ALを挟んで、第1通路部141とは反対側に配置されている。軸線ALに沿って上流側から見た場合に、第2延長部145が延びる方向は、上流開口111aの長手方向と実質的に平行である。
【0117】
第2通路部142を構成する内壁面は、少なくとも、図5に示す中間内壁面142aを含む。中間内壁面142aは、捻り通路111において、上流開口111aが軸線ALに対してオフセットする方向(矢印OD1で示す方向)とは反対側に位置する平面状の内壁面を構成する。
【0118】
以下、図7を参照して、第2通路部142を更に詳細に説明する。図7は、図5に鎖線で示す平面SP2でファイバーガイド101の第1通路部141及び第2通路部142を切断し、この断面(第2断面)を図5の太線矢印方向で見た様子を示している。平面SP2は、ファイバーガイド101の軸線ALと平行であり、かつ、上流開口111aの長手方向に対して垂直となるように定められる。
【0119】
図7に示すように、第2通路部142は、第1通路部141から離れるに従って、ファイバーガイド101の軸線AL方向における下流開口111bまでの距離L2が短くなるように形成されている。即ち、第2通路部142を構成する内壁面である案内面142cは、ファイバーガイド101の軸線ALに対して傾斜して形成されている。
【0120】
上流開口111aの輪郭と、平面SP2とは、2つの交点を有し、下流開口111bの輪郭と、平面SP2とは、2つの交点を有する。平面SP2で捻り通路111を切った断面輪郭は、第2内壁面141b及び案内面142cに相当する2つの線を有するが、4つの交点は、何れかの線の端部に位置する。以下の説明においては、第2内壁面141b側の上流側の交点を第3上流端点BU3と称し、第2内壁面141b側の下流側の交点を第3下流端点BD3と称する場合がある。また、案内面142c側の上流側の交点を第4上流端点BU4と称し、案内面142c側の下流側の交点を第4下流端点BD4と称する場合がある。
【0121】
第3上流端点BU3と第3下流端点BD3は、捻り通路111の一側に位置し、第4上流端点BU4と第4下流端点BD4は、捻り通路111の他方側に位置する。第3上流端点BU3と第4上流端点BU4との間の距離は、第3下流端点BD3と第4下流端点BD4との間の距離より短い。
【0122】
以下、第2内壁面141bと、平面SP2と、が交差する部分の線(交線)を、第3内壁線WL3と呼ぶことがある。第3内壁線WL3は、捻り通路111を切断した第2断面の輪郭のうち、第2内壁面141bの部分に相当する。本実施形態では、第3内壁線WL3は、第3上流端点BU3と第3下流端点BD3とを結ぶ直線状に現れる。従って、第3上流端点BU3と第3下流端点BD3とを結ぶ仮想直線を第3仮想直線VL3と定義した場合、第3内壁線WL3と第3仮想直線VL3とは、一致している。
【0123】
図7に示すように、第3上流端点BU3と第3下流端点BD3とを結ぶ第3仮想直線VL3は、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、例えば0°以上10°以下の傾斜角度で傾斜している。以下、第3仮想直線VL3が軸線ALに対して傾斜する角度を第3傾斜角度θ3と呼ぶことがある。θ3は0°であっても良い。即ち、第3仮想直線VL3は軸線ALと平行であっても良い。
【0124】
以下、案内面142cと、平面SP2と、が交差する部分の線(交線)を、第4内壁線WL4と呼ぶことがある。第4内壁線WL4は、捻り通路111を第2断面の輪郭のうち、案内面142cの部分に相当する。本実施形態では、第4内壁線WL4は、湾曲部分を有するように現れる。従って、第4上流端点BU4及び第4下流端点BD4を結ぶ仮想直線を第4仮想直線VL4と定義した場合、第4内壁線WL4と第4仮想直線VL4とは、一致していない。
【0125】
図7に示すように、第4上流端点BU4及び第4下流端点BD4を結ぶ第4仮想直線VL4は、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、35°以上85°以下、好ましくは、40°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している。以下、第4仮想直線VL4が軸線ALに対して傾斜する角度を第4傾斜角度θ4と呼ぶことがある。本実施形態では、第4傾斜角度θ4は、略45°である。
【0126】
第2断面において、第3仮想直線VL3及び第4仮想直線VL4(言い換えれば、第3内壁線WL3及び第4内壁線WL4)は、下流側端面115bに近づくに従って、前述の矢印OD1とは反対の向きに傾斜している。
【0127】
第4傾斜角度θ4を35°以上85°以下とすることにより、紡績室113における繊維の反転を、捻り通路111の内壁面が阻害しにくい構成を実現することができる。この結果、空気紡績装置23が生成する紡績糸30の物性を向上させることができる。また、捻り通路111の容積を大きくすることができるため、上流開口111aから空気を吸引する作用を向上することができる。従って、円滑な空気紡績を実現することができる。
【0128】
ファイバーガイド101の本体部115において、図4等に示すように、ファイバーガイド101の上流側端面115aと外周面との間に、第1面取部114と第2面取部116が形成されている。第2面取部116は、軸線ALを挟んで、第1面取部114とは反対側に配置されている。第1面取部114及び第2面取部116は、傾斜した平面状に形成されている。
【0129】
軸線ALに沿って上流側から見た場合、図5に示すように、第1面取部114は、上流開口111aの短手方向一側に位置し、第2面取部116は、他側に位置する。
【0130】
第1面取部114は、図7の角度θAに示すように、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、50°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している。第2面取部116は、図7の角度θBに示すように、ファイバーガイド101の軸線ALに対して、20°以上30°以下の傾斜角度で傾斜している。本実施形態において、角度θAは略55°であり、角度θBは略25°である。
【0131】
第1面取部114及び第2面取部116によって、ファイバーガイド101を、ドラフト装置21のフロントローラ対47に対して近接して配置することができる。また、本実施形態では、第1面取部114及び第2面取部116が非対称的に傾斜している。従って、図3に示すように、軸線ALに対してオフセットした位置にある上流開口111aを、フロントローラ対47の間にある繊維束通路に対応して配置することが容易である。
【0132】
以上に説明したように、本実施形態のファイバーガイド101の内部には、捻り通路111が形成されている。ファイバーガイド101において、軸方向に平行な平面SP1で捻り通路111を切った第1断面は、図6に示すように、第1内壁線WL1と、第2内壁線WL2と、を含む。第1内壁線WL1は、捻り通路111の一側の第1内壁面141aに相当する。第2内壁線WL2は、第1内壁面141aとは反対側の第3内壁面141cに相当する。第1内壁線WL1において捻り通路111の上流側端部に相当する第1上流端点AU1と、第2内壁線WL2において捻り通路111の上流側端部に相当する第2上流端点AU2と、の間の距離は、第1内壁線WL1において捻り通路111の下流側端部に相当する第1下流端点AD1と、第2内壁線WL2において捻り通路111の下流側端部に相当する第2下流端点AD2と、の間の距離よりも長い。第1上流端点AU1と第1下流端点AD1とを結ぶ第1仮想直線VL1が、ファイバーガイド101の軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している(25°≦θ1≦70°)。
【0133】
これにより、繊維束34を好適に収束しながら下流側へ案内できる捻り通路111を構成することができる。
【0134】
本実施形態のファイバーガイド101において、第1仮想直線VL1が、ファイバーガイド101の軸方向に対して30°以上50°以下の傾斜角度で傾斜している(30°≦θ1≦50°)。
【0135】
これにより、繊維束34をより好適に収束しながら下流側へ案内できる捻り通路111を構成することができる。
【0136】
本実施形態のファイバーガイド101において、第1内壁線WL1は、第1上流端点AU1と第1下流端点AD1との間を結ぶ直線状に形成されている。第2内壁線WL2は、第2上流端点AU2と第2下流端点AD2との間を結ぶ直線状に形成されている。
【0137】
これにより、繊維束34を下流側へ円滑に案内することができる。
【0138】
本実施形態のファイバーガイド101において、第1仮想直線VL1がファイバーガイド101の軸方向に対してなす角度の大きさと、第2仮想直線VL2がファイバーガイド101の軸方向に対してなす角度の大きさと、が異なる(θ1≠θ2)。
【0139】
これにより、繊維束34が通過する経路の形状の自由度を向上させることができる。
【0140】
本実施形態のファイバーガイド101において、第1仮想直線VL1が、ファイバーガイド101の軸方向に対して25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している(25°≦θ1≦70°)。第2仮想直線VL2が、ファイバーガイド101の軸方向に対して25°未満の傾斜角度で傾斜している(θ2<25°)。
【0141】
これにより、繊維束34を好適に収束しながら下流側へ案内することができる。
【0142】
本実施形態のファイバーガイド101において、捻り通路111の軸方向の長さL1を2等分する位置で、ファイバーガイド101の軸方向に垂直な平面SP3で捻り通路111を切った横断面は、図8に示すように曲がり部146を有している。横断面の近傍に位置する捻り通路111は、曲がり部146を境界として、第1断面に垂直な寸法D1が小さい第1部分P1と、第1断面に垂直な寸法D2が大きい第2部分P2と、を有する。25°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している第1仮想直線VL1は、25°未満の傾斜角度で傾斜している第2仮想直線VL2よりも、第1部分P1に近い。
【0143】
これにより、曲がり部146を介して第1部分P1から第2部分P2へ繊維束34を移行させるとともに、繊維束34を好適に収束しながら下流側へ案内することができる。
【0144】
本実施形態のファイバーガイド101の内部には、捻り通路111が形成されている。ファイバーガイド101において、軸方向に平行な平面SP2で捻り通路111を切った第2断面は、図7に示すように、第3内壁線WL3と、第4内壁線WL4と、を含む。第3内壁線WL3は、捻り通路111の一側の第2内壁面141bに相当する。第4内壁線WL4は、第2内壁面141bとは反対側に位置する案内面142cに相当する。第3内壁線WL3において捻り通路111の上流側端部に相当する第3上流端点BU3と、第4内壁線WL4において捻り通路111の上流側端部に相当する第4上流端点BU4と、の間の距離は、第3内壁線WL3において捻り通路111の下流側端部に相当する第3下流端点BD3と、第4内壁線WL4において捻り通路111の下流側端部に相当する第4下流端点BD4と、の間の距離よりも短い。第4上流端点BU4と第4下流端点BD4とを結ぶ第4仮想直線VL4が、ファイバーガイド101の軸方向に対して35°以上85°以下の傾斜角度で傾斜している(35°≦θ4≦85°)。
【0145】
これにより、捻り通路111よりも下流側において行われる空気紡績によって繊維が反転するのを、捻り通路111の内壁面が阻害しにくい構成を実現することができる。
【0146】
本実施形態のファイバーガイド101においては、第4仮想直線VL4が、ファイバーガイド101の軸方向に対して40°以上70°以下の傾斜角度で傾斜している(40°≦θ4≦70°)。
【0147】
これにより、捻り通路111よりも下流側において行われる空気紡績によって繊維が反転するのを、捻り通路111の内壁面が阻害しにくい構成を実現することができる。
【0148】
本実施形態のファイバーガイド101において、捻り通路111の上流側端部に位置する上流開口111aは、ファイバーガイド101の軸線ALに対して一側へオフセットして配置されている。捻り通路111の内壁面のうち、軸線ALに対して上流開口111aがオフセットする方向(矢印OD1が示す方向)とは反対側に位置する内壁面は、2つの平面、即ち、第4内壁面141d及び中間内壁面142aを含む。
【0149】
これにより、繊維束34を内壁面によって下流側へ適切に案内することができる。
【0150】
本実施形態のファイバーガイド101は、上流側端面115aと、下流側端面115bと、を有する。上流側端面115aには、捻り通路111の上流側端部に位置する上流開口111aが形成されている。下流側端面115bには、捻り通路111の下流側端部に位置する下流開口111bが形成されている。上流側端面115aと下流側端面115bとの間の長さL1が1ミリメートル以上5ミリメートル以下である(1mm≦L1≦5mm)。
【0151】
これにより、ファイバーガイド101を小型化することができる。
【0152】
本実施形態のファイバーガイド101は、第1面取部114を備える。当該第1面取部114は、上流側端面115aと、側面との間に形成されている。第1面取部114の、ファイバーガイド101の軸方向に対する傾斜角度が50°以上70°以下である(50°≦θA≦70°)。
【0153】
これにより、ファイバーガイド101を、ドラフト装置21のフロントローラ対47に近接して配置することができる。
【0154】
本実施形態の空気紡績装置23は、ファイバーガイド101と、スピンドル102と、を備える。スピンドル102は、紡績ノズル131から噴出された空気によって撚られた紡績糸30を下流側へ案内する。
【0155】
これにより、捻り通路111において繊維束34を好適に収束しながら下流側へ案内して空気流にて紡績を行うので、良好な物性の紡績糸30を生成できる。また、空気紡績の過程において繊維が紡績されずに脱落するファイバーロスを低減することができる。
【0156】
本実施形態の空気紡績機1は、空気紡績装置23と、糸貯留ローラ53と、巻取装置27と、を備える。糸貯留ローラ53は、空気紡績装置23で紡績された糸を引き出す。巻取装置27は、糸貯留ローラ53により引き出された糸を巻き取る。
【0157】
これにより、良好な物性の紡績糸30を巻き取ることができ、ファイバーロスが少ない空気紡績機1を実現することができる。
【0158】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0159】
第1内壁線WL1の形状は任意であり、例えば、1本の直線状、折れ線状、曲線状の少なくとも1つに形成することができる。第2内壁線WL2、第3内壁線WL3及び第4内壁線WL4の形状についても同様である。
【0160】
図6又は図9の構成において、θ1=θ2であるように捻り通路111を形成することもできる。θ1及びθ2の両方が25°以上70°以下であっても良く、θ1及びθ2の両方が30°以上50°以下であっても良い。
【0161】
図6又は図9の構成において、θ1<25°、かつ、25°≦θ2≦70°となるように捻り通路111を構成しても良い。
【0162】
θ3及びθ4の両方が35°以上85°以下であっても良く、θ3及びθ4の両方が40°以上70°以下であっても良い。
【0163】
針状部材104を省略することができる。この場合、ファイバーガイド101には、貫通孔112が形成されない。
【0164】
上流開口111a、下流開口111b、曲がり部146、及び窪み143の形状を含めて、捻り通路111の形状は適宜変更することができる。
【0165】
捻り通路111の上流開口111aから下流開口111bの間において、実際に繊維束34と接触して繊維束34を案内する部分の、軸線AL方向における長さが1ミリメートル以上5ミリメートル以下となっていれば、ファイバーガイド101の軸線AL方向における長さは5ミリメートルより長くても良い。
【0166】
図9に示すように、第1通路部141(又は捻り通路111全体)の下流側は、ファイバーガイド101の軸線ALに対して垂直な方向で見た場合、真っ直ぐ延びる垂直部111cを有しても良い。この場合、この垂直部111cの長さL3は、軸線AL方向における捻り通路111の全長L4の50%未満であることが好ましい。
【0167】
図10の例で示すように、第2通路部142において第2延長部145が省略されても良い。
【0168】
図11の例で示すように、捻り通路111において第2通路部142(言い換えれば、窪み143)が省略されても良い。この場合、捻り通路111の内壁面のうち、矢印OD1で示す方向とは反対側に位置する平面は、第4内壁面141dの1つだけである。
【0169】
ファイバーガイド101の形状は任意であり、例えばブロック状に形成することができる。第1面取部114及び第2面取部116の傾斜角度は適宜変更することができる。第1面取部114及び第2面取部116のうち少なくとも何れかが省略されても良い。
【0170】
ファイバーガイド101とノズルブロック103とを1つの部品として構成することができる。この場合、ファイバーガイド101には、紡績ノズル131と、紡績室113と、が一体的に形成される。この構成により、部品点数を削減することができる。
【0171】
紡績ユニット7に、糸貯留ローラ53に代えて、あるいは糸貯留ローラ53に加えて、デリベリローラと従動ローラからなる装置が設けられても良い。デリベリローラと従動ローラとの間に紡績糸30を挟んだ状態でデリベリローラを回転駆動することにより、空気紡績装置23から紡績糸30を、下流側へ引き出すことができる。
【0172】
空気紡績装置23は、通常紡績及び糸出し紡績の2種類の紡績を行う代わりに、通常紡績及びピーシングの2種類の紡績を行うように構成されていても良い。ピーシングとは、上記実施形態のようなスプライサ装置又はノッタを用いない糸継ぎ方法であり、パッケージ73からの紡績糸30を空気紡績装置23又はフロントローラ対47まで逆走させ、この状態でドラフト装置21によるドラフト動作と空気紡績装置23による紡績動作を再開することにより糸継ぎを行う方法である。この場合、パッケージ73からの紡績糸30を空気紡績装置23内へと導入するために、補助ノズルから空気が噴射されても良い。
【0173】
空気紡績機1は、糸継台車9を備える代わりに、糸継ぎに関連する装置の少なくとも一部が各紡績ユニット7に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0174】
1 空気紡績機
23 空気紡績装置
27 巻取装置
30 紡績糸(糸)
53 糸貯留ローラ(引出装置)
101 ファイバーガイド
102 スピンドル(中空ガイド軸体)
111 捻り通路(繊維通路)
111a 上流開口
111b 下流開口
113 紡績室(旋回室)
115a 上流側端面
115b 下流側端面
131 紡績ノズル
142c 案内面(内壁面)
146 曲がり部
AU1 第1上流端点
AD1 第1下流端点
AU2 第2上流端点
AD2 第2下流端点
BU3 第3上流端点
BD3 第3下流端点
BU4 第4上流端点
BD4 第4下流端点
D1,D2 寸法
WL1 第1内壁線
WL2 第2内壁線
WL3 第3内壁線
WL4 第4内壁線
P1 第1部分
P2 第2部分
VL1 第1仮想直線
VL2 第2仮想直線
VL4 第4仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11