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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036758
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】エアコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20240311BHJP
   F04B 41/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F04B39/12 E
F04B41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141210
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 友紀雄
(72)【発明者】
【氏名】西土 典之
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB05
3H003AC02
3H003BC02
3H003CB02
3H003CD04
3H076AA04
3H076AA12
3H076AA33
3H076AA35
3H076BB10
3H076BB26
3H076CC07
3H076CC31
(57)【要約】
【課題】クランクケース内への粉塵の侵入を抑制できるエアコンプレッサが必要とされている。
【解決手段】エアコンプレッサ1は、第1ピストン11bを収容する第1シリンダ11aと、第1シリンダ11aで圧縮された空気が導入されかつ第2ピストン12bを収容する第2シリンダ12aと、クランクケース20を有する。クランクケース20は、クランク軸33を収容する筒状本体20aと、クランク軸33と第1ピストン11bを連結する第1ロッド11cが挿通される第1ボア20bと、クランク軸33と第2ピストン12bを連結する第2ロッド12cが挿通される第2ボア20cを有する。クランクケース20は、筒状本体20aを分割し、かつ第1ボア20bを分割し、かつ第2ボア20cを分割するように相互に組付けられる第1クランクケース21と第2クランクケース23を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンプレッサであって、
第1ピストンを収容する第1シリンダと、
前記第1シリンダで圧縮された空気が導入されかつ第2ピストンを収容する第2シリンダと、
クランクケースを有し、前記クランクケースは、クランク軸を収容する筒状本体と、前記クランク軸と前記第1ピストンを連結する第1ロッドが挿通される第1ボアと、前記クランク軸と前記第2ピストンを連結する第2ロッドが挿通される第2ボアを有し、
前記クランクケースは、前記筒状本体を分割し、かつ前記第1ボアを分割し、かつ前記第2ボアを分割するように相互に組付けられる第1クランクケースと第2クランクケースを有するエアコンプレッサ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアコンプレッサであって、
前記第1クランクケースは、単一の面状に延出する第1分割面を有し、
前記第2クランクケースは、単一の面状に延出しかつ前記第1分割面と対向する第2分割面を有するエアコンプレッサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアコンプレッサであって、
前記第1クランクケースは、前記筒状本体および前記第1ボアおよび前記第2ボアの分割縁から外方へ延出する第1フランジを有し、
前記第2クランクケースは、前記筒状本体および前記第1ボアおよび前記第2ボアの分割縁から外方へ延出する第2フランジを有し、
前記第1フランジと前記第2フランジは、結合具によって相互に組付けられるエアコンプレッサ。
【請求項4】
請求項3に記載のエアコンプレッサであって、
前記第1クランクケースの前記第1フランジと前記第2クランクケースの前記第2フランジの間にシール部材が設けられるエアコンプレッサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記クランクケースは、前記筒状本体の第1端を塞ぐ第1カバーと、前記筒状本体の第2端を覆いかつ外気の導入を許容する吸気部が形成された第2カバーを有し、
前記第1クランクケースが前記第1カバーを備え、前記第2クランクケースが前記第2カバーを備えるエアコンプレッサ。
【請求項6】
請求項5に記載のエアコンプレッサであって、
前記クランクケースは、前記第1シリンダ側に位置する筒状の前記第1ボアの軸中心線と平行でかつ略前記軸中心線に位置する平面で前記第1クランクケースと前記第2クランクケースに分割されているエアコンプレッサ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のエアコンプレッサであって、
前記第2シリンダで圧縮された空気を貯留するタンクを有し、
前記第1クランクケースは、前記タンクに締結される基台部を備えるエアコンプレッサ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のエアコンプレッサであって、
前記第1クランクケースと前記第2クランクケースを組付ける複数の結合具を有し、
前記複数の結合具は、前記第1ボアの周囲に位置する複数の第1ボア側結合具と、前記第1ボア側より多い数でかつ前記第2ボアの周囲に位置する複数の第2ボア側結合具を含むエアコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば圧縮エア駆動式の釘打機やエアダスタ等のエアツールに圧縮エアを供給するエアコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にエアコンプレッサに関する技術が開示されている。エアコンプレッサは、圧縮空気を生成するレシプロ式の圧縮機構を有する。圧縮機構は、電動モータによって回転するクランク軸と、クランク軸方向と略直交方向の両側に配置される2つの圧縮部を有する。第1圧縮部は、クランク軸と略直交する方向に延出する第1シリンダと、第1シリンダ内で往復動する第1ピストンを有する。第2圧縮部は、クランク軸と略直交する方向に延出する第2シリンダと、第2シリンダ内で往復動する第2ピストンを有する。第1ピストンと第2ピストンは、それぞれ第1ロッドと第2ロッドによってクランク軸に連結される。クランク軸と第1ロッドと第2ロッドは、例えばアルミニウム等の金属製のクランクケースに収容される。第1シリンダと第2シリンダは、クランクケースに支持される。
【0003】
第1ピストンと第2ピストンは、クランク軸の回転動力によって各シリンダ内を往復動する。第1ピストンは、クランクケースを介して第1シリンダへ取り込んだ外気から圧縮エアを生成する。第2ピストンは、第1シリンダから第2シリンダへ送られた圧縮エアをさらに圧縮する。第2シリンダ内で生成された圧縮エアはタンクに貯留される。タンクに貯留された圧縮エアは、圧縮エア駆動式の釘打機やエアダスタ等のエアツールに供給される。
【0004】
クランクケースには、外気を取り込むための吸気部が設けられる。吸気部は、外気に含まれる粉塵をろ過するための吸気フィルタを有する。クランクケースは、クランク軸を収容する筒状本体と、第1ロッドが挿通される第1ボアと、第2ロッドが挿通される第2ボアとが連結された形状で設けられる。クランクケースは、クランク軸と第1ロッドと第2ロッドを組付け可能な形状で設けられる。例えば引用文献1に記載の従来のエアコンプレッサでは、第1ボアおよび第2ボアの略円筒形状の一部が切欠かれている。切欠き部分には、クランクケース内への粉塵の侵入を防ぐシール部材が取付けられる。シール部材は、例えばゴム等を材料にして設けられる。
【0005】
万一、吸気フィルタが粉塵の堆積等で目詰まりしてしまう場合がある。吸気フィルタが目詰まりすると、吸気部の吸気性能が低下する。吸気性能が低下した状態で圧縮エアを生成し続けると、クランクケース内で負圧が発生する。負圧によってゴム製のシール部材が撓み、シール部材のたわみ部分から外気とともに粉塵がクランクケース内に侵入してしまう場合がある。圧縮機構内に粉塵が侵入してしまうと、ピストン等の摺動部材を摩耗させて製品寿命を低下させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-19476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがってクランクケース内への粉塵の侵入を抑制できるエアコンプレッサが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの特徴によるとエアコンプレッサは、第1ピストンを収容する第1シリンダを有する。エアコンプレッサは、第1シリンダで圧縮された空気が導入されかつ第2ピストンを収容する第2シリンダを有する。エアコンプレッサは、クランクケースを有する。クランクケースは、クランク軸を収容する筒状本体を有する。クランクケースは、クランク軸と第1ピストンを連結する第1ロッドが挿通される第1ボアを有する。クランクケースは、クランク軸と第2ピストンを連結する第2ロッドが挿通される第2ボアを有する。クランクケースは、筒状本体を分割し、かつ第1ボアを分割し、かつ第2ボアを分割するように相互に組付けられる第1クランクケースと第2クランクケースを有する。
【0009】
したがって筒状本体と第1ボアと第2ボアは、一体に連結されたクランク軸と第1ロッドと第2ロッドを組付け可能に第1クランクケースと第2クランクケースに分割される。クランクケースの分割面は、筒状本体と第1ボアと第2ボアのいずれも分割するようにクランクケースの中央付近に設けられる。そのため第1クランクケースおよび第2クランクケースの分割面の周囲を高い剛性で設けることができる。そのため第1クランクケースおよび第2クランクケースの分割面の周囲は、クランクケースの内外の圧力差で変形し難い。これにより粉塵がクランクケース内へ侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エアコンプレッサの外観斜視図である。
図2図1中II矢視図である。本図は、エアコンプレッサを左斜め後方から見た斜視図である。本図は、本体カバーを取り外して圧縮機構が露出された状態を示している。
図3】本開示の実施例に係る圧縮機構の横断面図である。
図4図3中IV-IV線断面矢視図である。
図5図3に示す断面におけるクランクケースの横断面図である。
図6図4に示す断面におけるクランクケースの縦断面図である。
図7】クランクケースの斜視図である。
図8】左方から見たクランクケースの分解斜視図である。
図9】右方から見たクランクケースの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の他の特徴によると第1クランクケースは、単一の面状に延出する第1分割面を有する。第2クランクケースは、単一の面状に延出しかつ第1分割面と対向する第2分割面を有する。したがって第1分割面と第2分割面を面合わせすることで、第1クランクケースと第2クランクケースをクランクケースへと組付けることができる。第1分割面および第2分割面の平面度を高くすることで、第1分割面と第2分割面の間の気密性を高めることができる。
【0012】
本開示の他の特徴によると第1クランクケースは、筒状本体および第1ボアおよび第2ボアの分割縁から外方へ延出する第1フランジを有する。第2クランクケースは、筒状本体および第1ボアおよび第2ボアの分割縁から外方へ延出する第2フランジを有する。第1フランジと第2フランジは、結合具によって相互に組付けられる。したがって第1フランジと第2フランジを設けることで、第1クランクケースおよび第2クランクケースの分割縁の面積を広くすることができる。これにより第1クランクケースと第2クランクケースの分割縁におけるシール性と剛性を向上させることができる。
【0013】
本開示の他の特徴によると第1クランクケースの第1フランジと第2クランクケースの第2フランジの間にシール部材が設けられる。したがってクランクケースの外側から見えるシール部材の面積を小さくすることができる。そのためシール部材は、例えばクランクケースの内外で圧力差が生じた場合に圧力による変形量が小さい。そのためシール部材の周囲に粉塵が侵入可能な経路が形成されることを抑制できる。これにより第1クランクケースと第2クランクケースの分割縁におけるシール性を向上させることができる。
【0014】
本開示の他の特徴によるとクランクケースは、筒状本体の第1端を塞ぐ第1カバーを有する。クランクケースは、筒状本体の第2端を覆いかつ外気の導入を許容する吸気部が形成された第2カバーを有する。第1クランクケースが第1カバーを備え、第2クランクケースが第2カバーを備える。したがって第1クランクケースと第2クランクケースは、吸気部を分割しない形状で設けられる。これにより吸気部に粉塵が侵入可能な経路が形成されることを抑制できる。
【0015】
本開示の他の特徴によるとクランクケースは、第1シリンダ側に位置する筒状の第1ボアの軸中心線と平行でかつ略軸中心線に位置する平面で第1クランクケースと第2クランクケースに分割されている。したがって第1ボアの軸中心線は、クランク軸の軸方向においてクランクケースの略中央に位置する。そのため第1クランクケースおよび第2クランクケースの分割縁を高い剛性で設けることができる。また、各分割縁の高い剛性を利用して、第1クランクケースと第2クランクケースの組付け性を向上させることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると第2シリンダで圧縮された空気を貯留するタンクを有する。第1クランクケースは、タンクに締結される基台部を備える。したがって基台部を介して第1クランクケースをタンクに連結させた状態で、第2クランクケースを第1クランクケースから取り外すことができる。第2クランクケースを取り外すことでクランクケースに収容されるクランク軸や第1ロッドや第2ロッド等を修理、交換等できる。これによりエアコンプレッサのメンテナンス性を高めることができる。
【0017】
本開示の他の特徴によるとエアコンプレッサは、第1クランクケースと第2クランクケースを組付ける複数の結合具を有する。複数の結合具は、第1ボアの周囲に位置する複数の第1ボア側結合具と、第1ボア側より多い数でかつ第2ボアの周囲に位置する複数の第2ボア側結合具を含む。したがって第2ボア側結合具を第1ボア側結合具よりも多くすることで、第2ボアの結合強度が第1ボアよりも高くなる。そのため第2ボアは、第1シリンダよりも高圧の圧縮エアが生成される第2シリンダを安定した状態で支持できる。
【0018】
次に本開示の1つの実施例を図1~9に基づいて説明する。図1,2に示すようにエアコンプレッサ1は、前後に長い2つの略円柱状のタンク2を有する。生成された圧縮エアは2つのタンク2に貯蔵される。2つのタンク2の前後の合計4箇所には、脚部3が設けられている。各脚部3には、防振性の高いゴム素材が用いられる。各脚部3にはサイドプロテクタ3aが並設される。2つのタンク2の前部間に、タンク2内のドレン水排出用のドレンコック2aが設けられる。2つのタンク2の上部間は基台部4で相互に連結される。基台部4の上面に圧縮機構(コンプレッサ本体)10が搭載される。基台部4の前方と後方には、持ち運び用のハンドル部5が2つのタンク2の上部間に跨って設けられる。図1は本体カバー6で圧縮機構10が覆われた状態を示している。図2に示すように本体カバー6を取り外すと圧縮機構10が露出される。
【0019】
図1に示すように本体カバー6の前面には、高圧用の吐出口7と低圧用の吐出口8がそれぞれ左右に2口ずつ配置される。高圧用の吐出口7からは、例えば2.5MPaの圧縮エアが供給される。低圧用の吐出口8からは、例えば1MPaの圧縮エアが供給される。吐出口7,8の上方には、それぞれ吐出圧を設定するための調整ダイヤル7a,8aが設けられる。本体カバー6の前部上面には、各種の表示部を含む主として起動操作用の操作部9が設けられる。本体カバー6の前後左右の側面には、網目状に配置された複数の通気孔6aが設けられる(図1では本体カバー6の後面側の通気孔6aは見えていない)。
【0020】
図2,3に示すように圧縮機構10は、略円筒形状のクランクケース20の前部の第1圧縮部11と、クランクケース20の後部の第2圧縮部12を有する。第1圧縮部11と第2圧縮部12との間においてクランクケース20の右側部には、電動モータ30が支持される。クランクケース20は基台部4上に固定される。
【0021】
図2,3に示すように電動モータ30には、比較的大きな起動トルクが得られるブラシレスモータが用いられる。電動モータ30は、円環形の回転子30aと、回転子30aの内周側に位置する同じく円環形の固定子30bを有する。固定子30bは、クランクケース20の右側部に固定される。回転子30aの中心にクランク軸(モータ軸)33が結合される。クランク軸33の右端部には放熱ファン31が取り付けられる。クランク軸33とともに放熱ファン31が回転することで、電動モータ30で発生する熱が放熱されて電動モータ30が冷却される。クランク軸33は固定子30bの中心を経て左方へ延出する。クランク軸33は、右側の軸受33aと左側の軸受33bを介してクランクケース20の右側部と左側部間に跨った状態で回転可能に支持される。クランク軸33の左端部側は、吸気部40を経て左方へ突き出される。クランク軸33の左端部には吸気ファン32が取り付けられる。吸気ファン32の回転により、吸気部40に外気が吹き付けられる。
【0022】
図3に示すように第1圧縮部11と第2圧縮部12には、圧縮エアを生成するための動力がクランク軸33から伝達される。クランク軸33には、略円板状の第1クランク部34と第2クランク部35がモータ軸線Jに対して偏心した状態で取り付けられる。第1クランク部34は、左右方向においてクランク軸33の中央に設けられる。第2クランク部35は、第1クランク部34と横並びで第1クランク部34の右方に設けられる。
【0023】
図3に示すように第1クランク部34には、第1圧縮部11の第1ロッド11cが連結される。第1ロッド11cの先端には、第1圧縮部11の第1ピストン11bが取り付けられる。第1ピストン11bは、前後方向に延出する第1シリンダ11aに収容され、第1シリンダ11a内を前後方向に往復動する。第2クランク部35には、第2圧縮部12の第2ロッド12cが連結される。第2ロッド12cの先端には、第2圧縮部12の第2ピストン12bが取り付けられる。第2ピストン12bは、前後方向に延出する第2シリンダ12aに収容され、第2シリンダ12a内を前後方向に往復動する。
【0024】
図3に示すように第1クランク部34と第2クランク部35は、クランク軸33の軸線回りの同じ位置で同じ方向に偏心している。このため、クランク軸33の1回転により第1圧縮部11と第2圧縮部12の一方の圧縮工程と他方の吸気工程が同時になされる。第1圧縮部11において第1ピストン11bが前方へ移動する圧縮工程では、第2圧縮部12において第2ピストン12bが前方へ移動して吸気工程がなされる。第1圧縮部11において第1ピストン11bが後方へ移動する吸気工程では、第2圧縮部12において第2ピストン12bが後方へ移動して圧縮工程がなされる。
【0025】
図3に示すように第1シリンダ11aの第1圧縮室11dと第2シリンダ12aの第2圧縮室12dは、供給管13を介して連通される(図2参照)。供給管13の上流側は、補助逆止弁11eを介して第1圧縮室11dに接続される。補助逆止弁11eにより供給管13から第1圧縮室11dへの圧縮エアの逆流が阻止される。供給管13の下流側は、第2圧縮室12dに接続されている。第1圧縮室11dから補助逆止弁11eを経て供給管13に流入した圧縮エアはそのまま第2圧縮室12dに供給される。
【0026】
このように電動モータ30の起動により第1圧縮部11と第2圧縮部12の2段階で圧縮エアが生成される。第2圧縮部12の第2圧縮室12dに供給された圧縮エアは、第2ピストン12bが後退することでさらに高圧に圧縮される。第2圧縮室12dで生成された例えば約4.5MPaの高圧の圧縮エアは、第1逆止弁14を経てタンク2に至るエア通路15に流入する。第1逆止弁14により、エア通路15に流入した圧縮エアが第2圧縮室12dへ逆流することが阻止される。
【0027】
図3,5に示すようにクランクケース20は、中央の筒状本体20aと、前部の第1ボア20bと、後部の第2ボア20cを有する。筒状本体20aは、モータ軸線Jを概ね中心とする略円筒形状である。第1ボア20bは、前後方向に延出する第1ロッド11cの軸中心を概ね中心とする略円筒形状である。第1ボア20bの後端の開口は、筒状本体20aに連通される。第1ボア20bの前端には、第1圧縮部11の第1シリンダ11aが連結される。第1シリンダ11aの軸中心線は、第1ボア20bの軸中心線Kと略同じ位置である。軸中心線Kは、左右方向においてクランクケース20の中央に位置する。
【0028】
図3に示すように第2ボア20cは、前後方向に延出する第2ロッド12cの軸中心を概ね中心とする略円筒形状である。第2ボア20cは、第1ボア20bよりも小さいボア径で設けられる。第2ボア20cの前端の開口は、筒状本体20aに連通される。第2ボア20cの後端には、第2圧縮部12の第2シリンダ12aが連結される。第2シリンダ12aの軸中心線は、第2ボア20cの軸中心線Lと略同じ位置である。第2ボア20cの軸中心線Lは、第1ボア20bの軸中心線Kよりも電動モータ30に近い右方に位置する。したがって第2ボア20cの軸中心線Lは、左右方向においてクランクケース20の中央よりも右方に位置する。
【0029】
図7~9に示すようにクランクケース20は、左側の第1クランクケース21と右側の第2クランクケース23に分割される。第1クランクケース21と第2クランクケース23は、アルミ製である。
【0030】
図3,4に示すように第1クランクケース21と第2クランクケース23は、略垂直に延出する平面Sで左右に分割される。平面Sは、第1ボア20bの軸中心線Kと略同じ左右位置で軸中心線Kと平行に延出する。第1クランクケース21の第1分割面21dと、第2クランクケース23の第2分割面23dは、それぞれ単一の平面状に形成されて平面S上で互いに対向する。
【0031】
図4,5,8,9に示すように第1クランクケース21の下部には、略水平に延出する基台部28が設けられる。基台部28は、第1クランクケース21の前部と後部に1つずつ設けられる。基台部28は、2つのタンク2を連結する基台部4の上面に連結される。これによりクランクケース20がタンク2の上方で保持される。
【0032】
図7~9に示すように第1クランクケース21は、同一素材で一体に設けられた筒状本体分割部21aと第1ボア分割部21bと第2ボア分割部21cを有する。第2クランクケース23は、同一素材で一体に設けられた筒状本体分割部23aと第1ボア分割部23bと第2ボア分割部23cを有する。筒状本体分割部21aと筒状本体分割部23aは、筒状本体20aを左右に分割する。第1ボア分割部21bと第1ボア分割部23bは、第1ボア20bを左右に分割する。第2ボア分割部21cと第2ボア分割部23cは、第2ボア20cを左右に分割する。
【0033】
図8,9に示すように第1ボア20bの内周面は、第1ボア分割部21bの分割縁において前端から後端に亘って開口する。第2ボア20cの内周面は、第2ボア分割部21cの分割縁において前端から後端に亘って開口する。筒状本体20aの内周面は、筒状本体分割部21aの分割縁において前端から後端に亘って開口する。しかも筒状本体分割部21aの開口は、第1ボア分割部21bの開口および第2ボア分割部21cの開口と前後方向に連通する。そのため第2クランクケース23を第1クランクケース21から取り外した状態で、クランク軸33と第1ロッド11cと第2ロッド12cとを組付けたアッセンブリを第1クランクケース21内へ右方から左方へと挿入できる。
【0034】
図8,9に示すようにクランクケース20は、右側の第1端20dを塞ぐ第1カバー22と、左側の第2端20eを塞ぐ第2カバー24を有する。第1カバー22は、第1クランクケース21と同一素材で一体に設けられる。第2カバー24は、第2クランクケース23と同一素材で一体に設けられる。第1カバー22の中央には、略円筒形状の軸受凹部22aが設けられる。軸受凹部22aの中央には、第1カバー22を左右方向に貫通する挿通孔22bが設けられる。軸受凹部22aには、クランク軸33を回転可能に支持する軸受33aが保持される。挿通孔22bには、クランク軸33が挿通される。第1カバー22の右側面には、固定子30bを固定ねじ29でねじ固定するためのねじ孔22cが設けられる。
【0035】
図7~9に示すように第1クランクケース21は、筒状本体20aおよび第1ボア20bおよび第2ボア20cの分割縁に第1フランジ21eを有する。第1フランジ21eは、第1分割面21dに沿ってクランクケース20の外方へ延出する。第1フランジ21eは、第1ボア20bの前端から第2ボア20cの後端まで前後方向に連続して、略一定の左右方向の厚みで設けられる。第1フランジ21eには複数のねじ孔21fが設けられる。ねじ孔21fは、第1分割面21dから右方へ延出する。
【0036】
図7~9に示すように第2クランクケース23は、筒状本体20aおよび第1ボア20bおよび第2ボア20cの分割縁に第2フランジ23eを有する。第2フランジ23eは、第2分割面23dに沿ってクランクケース20の外方へ延出する。第2フランジ23eは、第1ボア20bの前端から第2ボア20cの後端まで前後方向に連続して、略一定の左右方向の厚みで設けられる。第2フランジ23eには、左右方向に貫通する複数の挿通孔23fが設けられる。
【0037】
図7~9に示すように第1クランクケース21の第1ボア分割部21bの下部には、通路溝21gが設けられる。通路溝21gは、第1分割面21dから右方に向けて凹設される。通路溝21gは、第1ボア分割部21bの前端から筒状本体分割部21aの内周面まで前後方向に延出する。第2クランクケース23の第1ボア分割部23bの下部には、通路溝23gが設けられる。通路溝23gは、第2分割面23dから左方に向けて凹設される。通路溝23gは、第1ボア分割部23bの前端から筒状本体分割部23aの内周面まで前後方向に延出する。第1クランクケース21と第2クランクケース23を連結させることで、通路溝21gと通路溝23gが連結されてエア通路20fが形成される。筒状本体20a内に取り込まれた外気は、エア通路20fを介して第1シリンダ11a(図3参照)に供給される。
【0038】
図8,9に示すように第1分割面21dと第2分割面23dの間には、ゴム製で薄い平板状のシール部材26,27が介装される。シール部材26は、上側の第1フランジ21eの第1分割面21dおよび上側の第2フランジ23eの第2分割面23dと略同形状に設けられる。シール部材26には、後述する結合具25を挿通させるための複数の挿通孔26aが設けられる。シール部材27は、下側の第1フランジ21eの第1分割面21dおよび下側の第2フランジ23eの第2分割面23dと略同形状に設けられる。シール部材27には、結合具25を挿通させるための複数の挿通孔27aが設けられる。
【0039】
図8,9に示すシール部材26,27は、第1クランクケース21と第2クランクケース23の間に挟まれることで第1分割面21dと第2分割面23dの間を気密に塞ぐ。シール部材26,27は、左右方向の厚みが薄く、かつ径方向の長さが筒状本体20aまたは第1ボア20bまたは第2ボア20cの径方向の厚みと略同じ長さである。そのため、例えばクランクケース20内が外気に対して負圧になる場合でも、シール部材26,27は左右方向に変形し難く、かつ外気が侵入可能な経路を径方向に形成し難い。そのため負圧によるクランクケース20内への外気の侵入が抑制される。
【0040】
図8,9に示すように第1クランクケース21のねじ孔21fは、上側の第1分割面21dに3つ、下側の第1分割面21dに3つで計6つ設けられる。第2クランクケース23の挿通孔23fは、上側の第2分割面23dに3つ、下側の第2分割面23dに3つで計6つ設けられる。シール部材26の挿通孔26aと、シール部材27の挿通孔27aは、それぞれ3つ設けられる。ねじ孔21fと挿通孔26a,27aと挿通孔23fは、第1クランクケース21とシール部材26,27と第2クランクケース23を左右方向に連結させた状態で左右に横並びになるように配置される。挿通孔23fと挿通孔26a,27aには、第1クランクケース21と第2クランクケース23を連結させるための結合具(連結ねじ)25が挿通される。各結合具25をねじ孔21fに締結させることで、第1クランクケース21と第2クランクケース23が連結される。各結合具25を緩めることで、第2クランクケース23を第1クランクケース21から取り外すことができる。
【0041】
図7~9に示すように複数の結合具25は、クランク軸33よりも前方の第1ボア20bの周囲に取り付けられる第1ボア側結合具25aと、クランク軸33よりも後方の第2ボア20cの周囲に取り付けられる第2ボア側結合具25bを含む。第2ボア側結合具25bは、第1ボア側結合具25aよりも多く取り付けられる。本実施例では、第1ボア側結合具25aは上側と下側に1本ずつ、計2本取り付けられる。第2ボア側結合具25bは上側と下側に2本ずつ、計4本取り付けられる。第1クランクケース21と第2クランクケース23を複数の結合具で組付け、かつ第1クランクケース21と第2クランクケース23の間にシール部材26,27を介装させることで、クランクケース20が気密に形成される。
【0042】
図3,4に示すように第2カバー24には、クランクケース20内に外気を導入する吸気部40が設けられる。第2カバー24は、左右方向に貫通する複数の吸気孔24eを有する。図3,4において外気は吸気部40に対して左から右に流れてクランクケース20内に吸気される。以下吸気の流れについて上流側を外側、下流側を内側とも称する。吸気部40は、吸気孔24eが形成される第2カバー24と、第2カバー24の吸気孔24eを塞ぐフィルタ41と、フィルタ41を覆うフィルタカバー42と、フィルタカバー42を覆う防塵カバー43を有する。
【0043】
図3,4に示すように第2カバー24の内面側の中心に円筒形の軸受凹部24aが設けられる。軸受凹部24aに軸受33bが保持される。1つの規制板33cが軸受凹部24aの開口側に4本の固定ねじ44でねじ結合される。これにより軸受凹部24aの開口側が規制板33cで塞がれる。軸受33bが軸受凹部24aの底部と規制板33cにより挟まれることで、軸受33bのモータ軸線J方向の位置ずれが規制される。
【0044】
図3,4,7に示すように第2カバー24の外面側に、フィルタ41を収容するフィルタ収容凹部24bが設けられる。フィルタ収容凹部24bの中心には、上記内面側の軸受凹部24aを形成するための円筒形の凸部24cが設けられる。凸部24cの中心に設けた挿通孔24dにクランク軸33が挿通される。凸部24cの周縁四等分位置に径方向外方に張出した張出部24hが設けられる。各張出部24hには、ねじ孔24iが設けられる。ねじ孔24iには、規制板33cを第2カバー24にねじ結合するための固定ねじ44が螺合される。凸部24cの周囲にフィルタ収容凹部24bが設けられる。
【0045】
図3,5,7に示すように第2カバー24は、フィルタ収容凹部24bの径方向外方に複数のねじボス部24fを有する。本実施例では4箇所のねじボス部24fが設けられる。各ねじボス部24fの内周にねじ孔24gが設けられる。4箇所のねじボス部24fのねじ孔24gそれぞれに固定ねじ45が締め付けられることで、フィルタカバー42と防塵カバー43が第2カバー24に対していわゆる共締めによりねじ結合される。
【0046】
図7に示すように各ねじボス部24fは、第2カバー24の外面に左方へ突き出す状態に設けられる。各ねじボス部24fの外径は、基部側の大径部と先端側の小径部に段付き形成される。各ねじボス部24fの両側方に吸気孔24eが設けられる。本実施例では合計8箇所の吸気孔24eが設けられる。8箇所の吸気孔24eを外側から塞ぐようにして1つのフィルタ41(図3参照)がフィルタ収容凹部24bに収容される。
【0047】
図3,4に示すようにフィルタ41は、フェルト材を素材とする消音用かつ防塵用のフィルタで、概ね円板形に形成される。フィルタ41の中心には、第2カバー24の凸部24cと張出部24hを挿通させる挿通孔41aが設けられる。挿通孔41aの周囲4箇所には、第2カバー24のねじボス部24fの大径部を挿通するための挿通孔41bが設けられる。
【0048】
図3,4に示すようにフィルタ41の外側(左側)にフィルタカバー42が結合される。フィルタカバー42は、フィルタ41とほぼ同径の円板形に形成される。フィルタカバー42によりフィルタ41の吸気側面全体が覆われる。フィルタカバー42の中心にクランク軸33が挿通される挿通部42aが設けられる。フィルタカバー42は、図では見えていない多数箇所の吸気孔を有する。フィルタカバー42の周縁側の四等分位置に第2カバー24のねじボス部24fの小径部を挿通するための挿通孔42bが設けられる。
【0049】
図3,4に示すように防塵カバー43はフィルタカバー42とほぼ同径の円板形に形成される。吸気ファン32により発生する外気の流れが防塵カバー43により遮られて、フィルタカバー42に直接吹き付けられることが回避される。防塵カバー43の内面中心に、円筒形の挿通部43aが設けられる。挿通部43aはフィルタカバー42側(右側)に向けて突出する。フィルタカバー42の挿通部42aが挿通部43aに挿入される。挿通部43aに挿入された挿通部42aの内周側を経てクランク軸33の先端部が外方へ突き出される。突き出し部分に吸気ファン32が支持される。防塵カバー43の内面の周方向の四等分位置に固定ねじ45が挿通される挿通孔43bが設けられる。
【0050】
図3,4に示すようにフィルタカバー42と防塵カバー43の外周部は一定の幅で全周にわたって概ね45°の角度で第2カバー24側に屈曲している。屈曲した防塵カバー43とフィルタカバー42との間に一定の隙間の吸気口46が形成される。
【0051】
図3,4に示すように防塵カバー43とフィルタカバー42は、4本の固定ねじ45により第2カバー24に対していわゆる共締めにより結合される。第2カバー24の4箇所のねじボス部24fの大径部がフィルタ41の挿通孔41b内に位置する。ねじボス部24fの小径部がフィルタカバー42の挿通孔42bと防塵カバー43の挿通孔43bに跨った状態で位置する。各ねじボス部24fのねじ孔24gに固定ねじ45が締め込まれることで、防塵カバー43とフィルタカバー42が第2カバー24に共締めされる。これにより、フィルタ41が第2カバー24のフィルタ収容凹部24b内に保持される。
【0052】
上述するようにエアコンプレッサ1は、図3に示すように第1ピストン11bを収容する第1シリンダ11aを有する。エアコンプレッサ1は、第1シリンダ11aで圧縮された空気が導入されかつ第2ピストン12bを収容する第2シリンダ12aを有する。エアコンプレッサ1は、クランクケース20を有する。クランクケース20は、クランク軸33を収容する筒状本体20aを有する。クランクケース20は、クランク軸33と第1ピストン11bを連結する第1ロッド11cが挿通される第1ボア20bを有する。クランクケース20は、クランク軸33と第2ピストン12bを連結する第2ロッド12cが挿通される第2ボア20cを有する。クランクケース20は、筒状本体20aを分割し、かつ第1ボア20bを分割し、かつ第2ボア20cを分割するように相互に組付けられる第1クランクケース21と第2クランクケース23を有する。
【0053】
したがって筒状本体20aと第1ボア20bと第2ボア20cは、一体に連結されたクランク軸33と第1ロッド11cと第2ロッド12cを組付け可能に第1クランクケース21と第2クランクケース23に分割される。クランクケース20の分割面(平面S)は、筒状本体20aと第1ボア20bと第2ボア20cのいずれも分割するようにクランクケース20の中央付近に設けられる。そのため第1クランクケース21の第1分割面21dの周囲と第2クランクケース23の第2分割面23dの周囲を高い剛性で設けることができる。そのため第1クランクケース21の第1分割面21dの周囲と第2クランクケース23の第2分割面23dの周囲は、クランクケース20の内外の圧力差で変形し難い。これにより粉塵がクランクケース20内へ侵入することを抑制できる。
【0054】
図8,9に示すように第1クランクケース21は、単一の面状に延出する第1分割面21dを有する。第2クランクケース23は、単一の面状に延出しかつ第1分割面21dと対向する第2分割面23dを有する。したがって第1分割面21dと第2分割面23dを面合わせすることで、第1クランクケース21と第2クランクケース23をクランクケース20へと組付けることができる。第1分割面21dおよび第2分割面23dの平面度を高くすることで、第1分割面21dと第2分割面23dの間の気密性を高めることができる。
【0055】
図7~9に示すように第1クランクケース21は、筒状本体20aおよび第1ボア20bおよび第2ボア20cの分割縁から外方へ延出する第1フランジ21eを有する。第2クランクケース23は、筒状本体20aおよび第1ボア20bおよび第2ボア20cの分割縁から外方へ延出する第2フランジ23eを有する。第1フランジ21eと第2フランジ23eは、結合具25によって相互に組付けられる。したがって第1フランジ21eと第2フランジ23eを設けることで、第1クランクケース21および第2クランクケース23の核分割縁の面積を広くすることができる。これにより第1クランクケース21と第2クランクケース23の分割縁におけるシール性と剛性を向上させることができる。
【0056】
図8,9に示すように第1クランクケース21の第1フランジ21eと第2クランクケース23の第2フランジ23eの間にシール部材26,27が設けられる。したがってクランクケース20の外側から見えるシール部材26,27の面積を小さくすることができる。そのためシール部材26,27は、例えばクランクケース20の内外で圧力差が生じた場合に圧力による変形量が小さい。そのためシール部材26,27の周囲に粉塵が侵入可能な経路が形成されることを抑制できる。これにより第1クランクケース21と第2クランクケース23の分割縁におけるシール性を向上させることができる。
【0057】
図7~9に示すようにクランクケース20は、筒状本体20aの第1端20dを塞ぐ第1カバー22を有する。クランクケース20は、筒状本体20aの第2端20eを覆いかつ外気の導入を許容する吸気部40が形成された第2カバー24を有する。第1クランクケース21が第1カバー22を備え、第2クランクケース23が第2カバー24を備える。したがって第1クランクケース21と第2クランクケース23は、吸気部40を分割しない形状で設けられる。これにより吸気部40に粉塵が侵入可能な経路が形成されることを抑制できる。
【0058】
図3,4に示すようにクランクケース20は、第1シリンダ11a側に位置する筒状の第1ボア20bの軸中心線Kと平行でかつ略軸中心線Kに位置する平面Sで第1クランクケース21と第2クランクケース23に分割されている。したがって第1ボア20bの軸中心線Kは、クランク軸33の軸方向(左右方向)においてクランクケース20の略中央に位置する。そのため第1クランクケース21および第2クランクケース23の分割縁を高い剛性で設けることができる。また、各分割縁の高い剛性を利用して、第1クランクケース21と第2クランクケース23の組付け性を向上させることができる。
【0059】
図2,4に示すように第2シリンダ12aで圧縮された空気を貯留するタンク2を有する。第1クランクケース21は、タンク2に締結される基台部28を備える。したがって基台部28を介して第1クランクケース21をタンク2に連結させた状態で、第2クランクケース23を第1クランクケース21から取り外すことができる。第2クランクケース23を取り外すことでクランクケース20に収容されるクランク軸33や第1ロッド11cや第2ロッド12c等を修理、交換等できる。これによりエアコンプレッサ1のメンテナンス性を高めることができる。
【0060】
図2,8,9に示すようにエアコンプレッサ1は、第1クランクケース21と第2クランクケース23を組付ける複数の結合具25を有する。複数の結合具25は、第1ボア20bの周囲に位置する複数の第1ボア側結合具25aと、第1ボア20b側より多い数でかつ第2ボア20cの周囲に位置する複数の第2ボア側結合具25bを含む。したがって第2ボア側結合具25bを第1ボア側結合具25aよりも多くすることで、第2ボア20cの結合強度が第1ボア20bよりも高くなる。そのため第2ボア20cは、第1シリンダ11aよりも高圧の圧縮エアが生成される第2シリンダ12aを安定した状態で支持できる。
【0061】
以上説明した本開示の実施例には種々変更を加えることができる。例えば本実施例では、吸気部40を圧縮機構10の左側部に設ける構成を例示した。これに代えて、例えば吸気部40を圧縮機構10の右側部、下部、上部等に設ける構成としても良い。
【0062】
本実施例ではクランクケース20を右側の第1クランクケース21と左側の第2クランクケース23に分割する構造を例示した。これに代えて、例えばクランクケース20を上部ケースと下部ケースに分割する構造としても良い。
【0063】
クランクケース20を左右に分割する平面Sは、第1ボア20bの軸中心線K上に位置しても良いし、軸中心線Kに対して左右いずれかにずれた位置であっても良い。単一の平面Sで第1クランクケース21と第2クランクケース23に分割する構造を例示した。これに代えて、例えばクランクケース20の上部を分割する分割面と、クランクケース20の下部を分割する分割面を左右方向に位置をずらしても良い。
【0064】
第1フランジ21eと第2フランジ23eが第1ボア20bの前端から第2ボア20cの後端まで前後方向に連続して設けられる構成を例示した。これに代えて、例えば結合具25を取り付ける部分の周囲にのみ第1フランジ21eと第2フランジ23eを設ける構成としても良い。あるいは、第1フランジ21eと第2フランジ23eを設けず、例えば略C字状の鎹状の結合具25で第1クランクケース21と第2クランクケース23を連結させても良い。第1クランクケース21と第2クランクケース23を連結させる第1ボア側結合具25aと第2ボア側結合具25bの数は、例示した個数に限らず適宜変更して良い。
【0065】
アルミ製の第1クランクケース21と第2クランクケース23を例示した。これに代えて第1クランクケース21と第2クランクケース23は、例えばマグネシウム製、鉄製等であっても良い。ゴム製のシール部材26,27を例示した。これに代えて、例えばシール性の高い合成樹脂等をシール部材26,27の素材としても良い。第1クランクケース21と第2クランクケース23の間にシール部材を介装しない構成としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1…エアコンプレッサ
2…タンク、2a…ドレンコック
3…脚部
3a…サイドプロテクタ
4…基台部
5…ハンドル部
6…本体カバー、6a…通気孔
7…吐出口(高圧用)
7a…調整ダイヤル
8…吐出口(低圧用)
8a…調整ダイヤル
9…操作部
10…圧縮機構(コンプレッサ本体)
11…第1圧縮部、11a…第1シリンダ、11b…第1ピストン、11c…第1ロッド
11d…第1圧縮室、11e…補助逆止弁
12…第2圧縮部、12a…第2シリンダ、12b…第2ピストン、12c…第2ロッド
12d…第2圧縮室
13…供給管
14…第1逆止弁
15…エア通路
20…クランクケース、20a…筒状本体、20b…第1ボア
20c…第2ボア、20d…第1端、20e…第2端、20f…エア通路
21…第1クランクケース、21a…筒状本体分割部、21b…第1ボア分割部
21c…第2ボア分割部、21d…第1分割面、21e…第1フランジ、21f…ねじ孔
21g…通路溝
22…第1カバー、22a……軸受凹部、22b…挿通孔、22c…ねじ孔
23…第2クランクケース、23a…筒状本体分割部、23b…第1ボア分割部
23c…第2ボア分割部、23d…第2分割面、23e…第2フランジ、23f…挿通孔
23g…通路溝
24…第2カバー、24a…軸受凹部、24b…フィルタ収容凹部、24c…凸部
24d…挿通孔、24e…吸気孔、24f…ねじボス部、24g…ねじ孔
24h…張出部、24i…ねじ孔
25…結合具(連結ねじ)、25a…第1ボア側結合具、25b…第2ボア側結合具
26…シール部材、26a…挿通孔
27…シール部材、27a…挿通孔
28…基台部
29…固定ねじ
30…電動モータ、30a…回転子、30b…固定子
31…放熱ファン
32…吸気ファン
33…クランク軸(モータ軸)、33a,33b…軸受、33c…規制板
34…第1クランク部
35…第2クランク部
40…吸気部
41…フィルタ、41a,41b…挿通孔
42…フィルタカバー、42a…挿通部、42b…挿通孔
43…防塵カバー、43a…挿通部、43b…挿通孔
44,45…固定ねじ
46…吸気口
J…モータ軸線
K…(第1ボアの)軸中心線
L…(第2ボアの)軸中心線
S…平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9