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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036788
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/06 20060101AFI20240311BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20240311BHJP
   B62D 1/08 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B60K20/06
H01R4/34
B62D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141258
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久田 雅人
【テーマコード(参考)】
3D030
3D040
5E012
【Fターム(参考)】
3D030DB13
3D040AA03
3D040AB01
3D040AC01
3D040AC17
3D040AC36
3D040AD05
3D040AD15
3D040AE19
3D040AF08
5E012BA12
(57)【要約】
【課題】製造コストを抑制することができる構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】構造体2は、取付先に取り付ける取付部21を備えた本体20と、板形状を有し、少なくとも一部が本体20に覆われて本体20と一体とされた板部材3と、板部材3に形成され、取付部21の骨組みとなる骨組部30と、骨組部30の第1の面300から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材8が挿入される挿入開口310を備えて取付部21と取付部材8との間に介在する介在部31と、を備えて概略構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付先に取り付けられる取付部を備えた本体と、
板形状を有し、少なくとも一部が前記本体に覆われて前記本体と一体とされた板部材と、
前記板部材に形成され、前記取付部の骨組みとなる骨組部と、
前記骨組部の第1の面から突出し、前記取付先に取り付けられる際に取付部材が挿入される挿入開口を備えて前記取付部と前記取付部材との間に介在する介在部と、
を備えた構造体。
【請求項2】
前記介在部は、前記取付部材と締結されるねじ山を前記挿入開口の内面に有する、
請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記介在部は、取り付けの際に挿入される前記取付部材のスペーサ又はカラーとなる、
請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記本体は、コネクタが接続されるコネクタ部と、前記板部材の一部が露出する少なくとも1つの切断開口と、を有し、
前記板部材は、前記コネクタ部に露出する複数のコネクタピンと、前記複数のコネクタピンの間に位置する複数のタイバーと、を有し、前記少なくとも1つの切断開口に露出する前記複数のタイバーの少なくとも1つが切断され、前記複数のコネクタピンの少なくとも2つが電気的に分離される、
請求項2又は3に記載の構造体。
【請求項5】
前記介在部は、前記本体の内側方向に設けられ、
前記骨組部は、前記第1の面の反対側の第2の面が前記本体から露出する、
請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記本体は、前記複数のコネクタピンの少なくとも2つの間に形成された第1のタイバーが電気的に分離された状態で露出する第1の切断開口と、前記複数のコネクタピンのうちの1つのコネクタピンと前記骨組部との間に形成された第2のタイバーが電気的に分離された状態で露出する第2の切断開口と、を有する、
請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記本体は、車両のパドルシフト装置の操作部が回転可能に取り付けられ、前記取付部材を用いて前記取付先であるステアリングの芯金に取り付けられる、
請求項6に記載の構造体。
【請求項8】
前記本体は、コネクタが接続されるコネクタ部を有し、
前記板部材は、前記コネクタ部に露出する複数のコネクタピンと、前記複数のコネクタピンの間に位置する複数のタイバーと、を有し、
前記複数のタイバーの少なくとも1つは、前記複数のコネクタピンの少なくとも2つを電気的に分離するために切断されている、
請求項2又は3に記載の構造体。
【請求項9】
金属材料を用いて形成された板部材に対してバーリング加工を行うことによって前記板部材の第1の面から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材が挿入される挿入開口を備えた介在部を形成し、
樹脂材料を用いたインサート成形によって前記板部材の少なくとも一部を覆うと共に、前記介在部の前記挿入開口が露出する取付部を有する本体を形成する、
構造体の製造方法。
【請求項10】
前記介在部と共に、複数のコネクタピンと、前記複数のコネクタピンの間に位置する複数のタイバーと、を前記板部材に形成し、
前記取付部と共に、前記複数のタイバーの少なくとも1つが露出する少なくとも1つの切断開口を形成し、
前記少なくとも1つの切断開口に露出する前記複数のタイバーの少なくとも1つを切断し、前記複数のコネクタピンの少なくとも2つを電気的に分離する、
請求項9に記載の構造体の製造方法。
【請求項11】
前記取付部材と締結されるねじ山を前記挿入開口の内面に形成する、
請求項9又は10に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ステアリングホイールの左右に配置され、可動部材に対する操作によって車両の変速段を切り替えることができるパドルシフトが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このパドルシフトは、ステアリングホイールに取り付けられるカバー部材を有し、このカバー部材に可動部材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来のパドルシフトは、例えば、可動部材が操作された際、カバー部材が取付先から外れないように取り付けられなければならない。そのため、カバー部材は、例えば、ねじによってステアリングホイールに取り付けられる場合、ねじが締結される部品を圧入したり、インサート成形したりすることで製造コストが増加する問題があった。
【0006】
従って本発明の目的は、製造コストを抑制することができる構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、取付先に取り付けられる取付部を備えた本体と、板形状を有し、少なくとも一部が本体に覆われて本体と一体とされた板部材と、板部材に形成され、取付部の骨組みとなる骨組部と、骨組部の第1の面から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材が挿入される挿入開口を備えて取付部と取付部材との間に介在する介在部と、を備えた構造体を提供する。
【0008】
また本発明の他の一態様は、金属材料を用いて形成された板部材に対してバーリング加工を行うことによって板部材の第1の面から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材が挿入される挿入開口を備えた介在部を形成し、樹脂材料を用いたインサート成形によって板部材の少なくとも一部を覆うと共に、介在部の挿入開口が露出する取付部を有する本体を形成する、構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、パドルシフト装置の構造体の一例を示す図であり、図1(b)は、パドルシフト装置の配置の一例を示す上面図である。
図2図2(a)は、パドルシフト装置の一例を示す分解図であり、図2(b)は、パドルシフト装置の取付部側の一例を示す図であり、図2(c)は、板部材の配置の一例を示す図である。
図3図3(a)は、板部材と本体の位置関係の一例を示す図であり、図3(b)及び図3(c)は、介在部の形成の一例を示す図であり、図3(d)~図3(g)は、板部材のコネクタピンの形成の一例を示す図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、切断前のタイバーの一例について説明するための図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、切断後のタイバーの一例について説明するための図である。
図6図6は、構造体の取り付けの一例を示す図である。
図7図7(a)は、構造体の裏面側の一例を示す図であり、図7(b)は、板部材の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る構造体は、取付先に取り付けられる取付部を備えた本体と、板形状を有し、少なくとも一部が本体に覆われて本体と一体とされた板部材と、板部材に形成され、取付部の骨組みとなる骨組部と、骨組部の第1の面から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材が挿入される挿入開口を備えて取付部と取付部材との間に介在する介在部と、を備えて概略構成されている。
【0012】
この構造体は、取付部の骨組となる骨組部に介在部が形成されているので、介在部を取付部に圧入したり、介在部のみを取付部と一体に形成したりする場合と比べて、部品数が少なくなって製造コストを抑制することができる。
【0013】
[第1の実施の形態]
(パドルシフト装置1の概要)
図1(a)は、第1の実施の形態に係るパドルシフト装置の構造体の一例を示す図であり、図1(b)は、パドルシフト装置の配置の一例を示す上面図である。図2(a)は、第1の実施の形態に係るパドルシフト装置の一例を示す分解図であり、図2(b)は、パドルシフト装置の取付部側の一例を示す図であり、図2(c)は、図2(b)において構造体の本体を除去して板部材の配置の一例を説明し易くした図である。図3(a)は、第1の実施の形態に係る板部材と本体の位置関係の一例について説明するための図であり、図3(b)及び図3(c)は、介在部の形成の一例について説明するための図であり、図3(d)~図3(g)は、板部材のコネクタピンの形成の一例について説明するための図である。図4(a)及び図4(b)は、第1の実施の形態に係る構造体の切断前のタイバーの一例について説明するための図である。図5(a)及び図5(b)は、第1の実施の形態に係る構造体の切断後のタイバーの一例について説明するための図である。図1(b)は、パドルシフト装置1と芯金910との取り付けが分かるようにカバーを外した状態の一例を示している。図4(b)及び図5(b)は、説明のため、板部材のみを図示している。
【0014】
なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。
【0015】
本実施の形態の構造体2を備えたパドルシフト装置1は、一例として、図1(a)及び図1(b)に示すように、車両9のステアリング90の左右に配置されている。このステアリング90は、ユーザが把持する把持部91と、警報機などが配置される中央部92と、中央部92と把持部91の間の右スポーク部93、下スポーク部94及び左スポーク部95と、を備えている。パドルシフト装置1は、右スポーク部93及び左スポーク部95の裏側に配置されている。
【0016】
パドルシフト装置1は、ユーザが手前方向に操作することで、左側を操作すると車両9の変速装置の変速段が1段下り、右側を操作すると変速段が1段上がるように構成されている。この左右に配置されたパドルシフト装置1は、構成部品が同じであって形状や配置などが左右対称となっているので、以下では、主に右側に配置されたパドルシフト装置1について説明する。なお構造体2は、パドルシフト装置1に限定されず、インサート成形によって樹脂と板部材3とを一体とする構成を有する装置に適用可能である。
【0017】
パドルシフト装置1は、一例として、図2(a)に示すように、構造体2と、操作部4と、コンタクトラバー部5と、ピン6と、を備えて概略構成されている。パドルシフト装置1は、操作部4がピン6を回転軸として構造体2に対して回転するように構成されている。
【0018】
(構造体2の構成)
構造体2は、一例として、図2(a)~図3(a)に示すように、取付先に取り付ける取付部21を備えた本体20と、板形状を有し、少なくとも一部が本体20に覆われて本体20と一体とされた板部材3と、板部材3に形成され、取付部21の骨組みとなる骨組部30と、骨組部30の第1の面300から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材8が挿入される挿入開口310を備えて取付部21と取付部材8との間に介在する介在部31と、を備えて概略構成されている。
【0019】
本体20は、一例として、PBT(Poly Butylene Terephtalate)やナイロンなどの樹脂材料やセラミックなどの非導電材料を用いて形成されている。本実施の形態の本体20は、樹脂材料を用いて形成されている。なお本体20は、樹脂材料を用いてインサート成形により形成される場合、インサート成形可能な樹脂であれば良く、上記の材料に限定されない。また本体20は、コネクタ70が接続されるコネクタ部22と、板部材3の一部が露出する少なくとも1つの切断開口と、を有している。
【0020】
左右のパドルシフト装置1には、図1(a)に示すように、ハーネス7がそれぞれ接続されている。このハーネス7は、端部にコネクタ70を有している。ハーネス7は、車両9の変速装置を制御する制御装置と電気的に接続されている。
【0021】
本実施の形態の本体20は、図4(a)及び図4(b)に示すように、複数のコネクタピンの少なくとも2つの間に形成された第1のタイバー35が電気的に分離された状態で露出する第1の切断開口23と、複数のコネクタピンのうちの1つのコネクタピンと骨組部30との間に形成された第2のタイバー36が電気的に分離された状態で露出する第2の切断開口24と、を有している。
【0022】
また本体20は、図4(a)に示すように、複数のコネクタピンの少なくとも2つの一部が露出する露出開口25を有している。本実施の形態の露出開口25には、第1のコネクタピン32の接触端部38と、第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34の接触端部39が露出している。
【0023】
本体20は、図1(b)に示すように、車両9のパドルシフト装置1の操作部4が回転可能に取り付けられ、取付部材8を用いて取付先であるステアリング90の芯金910に取り付けられている。この本体20は、取付先の形状に応じた凹部27を有している。
【0024】
取付部21は、図2(a)に示すように、表面200から突出するように形成されている。この取付部21は、上面210に板部材3の骨組部30が露出している。
【0025】
(板部材3の構成)
板部材3は、一例として、導電性を有する導電材料を用いて形成され、銅合金系材料、鉄合金系材料などを用いて形成されている。この板部材3は、一例として、すずメッキ銅板である。なお板部材3は、一例として、インサート成形が可能な導電性を有する樹脂を用いて形成されても良い。
【0026】
骨組部30は、取付部材8が締結された際の取付部21の強度を高めている。骨組部30は、図3(a)に示すように、側面から見ると、複数のコネクタピンから立ち上がるように折曲部302が設けられている。この折曲部302の先には、介在部31が設けられている。また折曲部302は、図4(b)及び図5(b)に示すように、インサート成形時において板部材3を金型に取り付ける際に使用される取付用孔303を介在部31とは反対側に有している。
【0027】
介在部31は、図3(b)及び図3(c)に示すように、挿入開口310が骨組部30に対してバーリング加工を行うことによって板部材3の第1の面300から突出するように形成されている。この突出方向は、挿入開口310に挿入される取付部材8が締め付けによって挿入開口310内を進行する方向、言い換えるなら挿入される方向に突出している。
【0028】
介在部31は、一例として、円筒形状に形成されている。そして介在部31は、図4(b)に示すように、取付部材8と締結されるねじ山312を挿入開口310の内面311に有している。なお変形例として介在部31は、ねじ山312を形成せずに、取り付けの際に挿入される取付部材8のスペーサ又はカラーとして構成されても良い。取付部材8は、ねじ山312と結合するボルトである。
【0029】
介在部31は、図3(a)に示すように、本体20の内側方向に設けられている。また骨組部30は、第1の面300の反対側の第2の面301が本体20から露出している。この第2の面301は、一例として、取付先と取付部材8を介して取り付けされる場合、取付先と接触する。そのため、取付部材8を取り付ける際、本体20の樹脂部分が傷ついたり、破損したりすることを抑制することができる。
【0030】
なお介在部31は、図4(a)及び図5(a)に示すように、取付部21の本体20の裏面201側の取付空間211に露出している。パドルシフト装置1は、この取付空間211にナットを配置して取付部材8と締結させても良い。
【0031】
板部材3は、コネクタ部22に露出する複数のコネクタピンと、複数のコネクタピンの間に位置する複数のタイバーと、を有している。また板部材3は、少なくとも1つの切断開口に露出する複数のタイバーの少なくとも1つが切断され、複数のコネクタピンの少なくとも2つが電気的に分離される。
【0032】
本実施の形態の複数のコネクタピンは、一例として、図4(b)に示すように、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34である。また少なくとも1つのタイバーは、一例として、第1のコネクタピン32と第2のコネクタピン33の間に形成された第1のタイバー35である。
【0033】
なお複数のコネクタピンは、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34に限定されず、さらに多くのコネクタピンを備えて複数の信号が入出力するようにされても良い。
【0034】
なお板部材3は、一例として、コネクタ70の仕様に応じて第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34が設けられているが電気的に分離されていない。従って第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34の間に形成される第3のタイバー37は、切断しなくても良いので第1の切断開口23に露出しない。
【0035】
第1のコネクタピン32は、隣接する第2のコネクタピン33と電気的に分離される。従って第1のタイバー35は、第1の切断開口23に露出している。なお板部材3は、図4(b)及び図5(b)に示すように、インサート成形時において板部材3を金型に取り付ける際に使用される取付用孔304を第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34と接触端部38及び接触端部39との間に有している。
【0036】
第1のコネクタピン32は、コネクタ部22に露出する挿入部320と、本体20と一体とされるピン基部321と、を有している。同様に第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34は、挿入部330及び挿入部340と、ピン基部331及びピン基部341と、を有している。
【0037】
第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34は、図4(a)に示すように、挿入部320~挿入部340とピン基部321~ピン基部341が同じ形状を有している。ここで第1のコネクタピン32は、図3(e)に示すように、側面から見た場合、ピン基部321の太さが挿入部320よりも太くなっている。また第1のコネクタピン32は、図3(g)に示すように、上面から見た場合、ピン基部321の太さが挿入部320よりも太くなっている。第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34は、第1のコネクタピン32と同様に、側面及び上面から見た場合、ピン基部331及びピン基部341の太さが挿入部330及び挿入部340よりも太くなっている。
【0038】
第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34は、図3(d)~図3(g)に示すように、1枚の板を加工して形成される。そのため、挿入部320~挿入部340は、コネクタ70の仕様に応じた形状とする必要があるので、元の厚みから細く形成されている。なお挿入部320~挿入部340は、一例として、厚みが板部材3の厚みの半分近いがこれに限定されない。
【0039】
第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34は、図4(b)に示すように、等間隔で形成されている。そして第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34は、図3(a)に示すように、側面から見て高低差がないように並んで形成されている。
【0040】
ここで変形例として板部材3は、センサや制御部などを含む電子回路が設けられた状態でインサート成形されても良い。例えば、構造体2がセンサ装置に使用された場合、板部材3は、少なくとも測定対象の物理量を測定するセンサを含む電子回路が設けられ、インサート成形により樹脂と一体となって本体20となる。
【0041】
(操作部4の構成)
操作部4は、図2(a)に示すように、収容部40と、パドル41と、複数の押子42と、ピン支持部43と、を備えている。操作部4は、樹脂材料や金属材料を用いて形成されている。
【0042】
収容部40は、図2(a)に示すように、コンタクトラバー部5を挟んで構造体2を内部空間400に収容している。
【0043】
左右のパドル41は、図1(a)に示すように、それぞれの上部410がユーザから見てステアリング90の右スポーク部93及び左スポーク部95よりも上に突出している。このパドル41は、図1(b)に示す矢印A方向、つまりユーザの手前の方向に操作可能とされている。操作部4は、ピン6を介して本体20と回転可能に一体とされている。つまり操作部4は、ピン6を回転中心として回転する。
【0044】
押子42は、コンタクトラバー部5のラバードーム50に対応して設けられている。本実施の形態の押子42は、ラバードーム50が2つ設けられているので、収容部40に2つ設けられている。押子42は、ラバードーム50の接点51と接触し、操作部4の操作に応じてラバードーム50を座屈させる。なお操作部4は、主に、ラバードーム50の座屈から元の形状に戻る復元力により、操作前の操作位置に戻るように構成されている。
【0045】
ピン支持部43は、円柱形のピン6の両端部を支持するように内部空間400に設けられている。ピン6は、図3(a)に示すように、本体20の挿入孔26に挿入され、両端部がピン支持部43に支持される。
【0046】
(コンタクトラバー部5の構成)
コンタクトラバー部5は、一例として、シリコンや合成ゴムなどの弾性力を生成可能な樹脂材料を用いて形成されている。このコンタクトラバー部5は、図2(a)に示すように、2つのラバードーム50を有している。このラバードーム50は、一例として、図5(b)において点線で示すように、一方の接点51が本体20の露出開口25に露出する接触端部38及び接触端部39と対向する。
【0047】
ここで少なくとも接点51は、導電性を有している。操作部4が操作された場合、接点51は、押子42に押されて露出開口25に露出する接触端部38及び接触端部39に接触する。なお変形例としてコンタクトラバー部5は、接点51のみではなく、全体が導電性樹脂を用いて形成されても良い。
【0048】
この接点51と接触端部38及び接触端部39の接触により、第1のコネクタピン32と第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34が接点51を介して導通する。この導通によってパドルシフト装置1は、操作がなされたことを示す信号を車両9に出力する。
【0049】
本実施の形態におけるラバードーム50は、2つ設けられており、一方のラバードーム50のみが座屈して接点51と接触端部38及び接触端部39とが接触する。他方のラバードーム50は、信号の出力に関わらないもののパドル41の操作の際にユーザに付与される節度や操作感を一方のラバードーム50と共に生成している。
【0050】
パドルシフト装置1は、パドル41が細長いため、ラバードームが1つだと上部410側が先に傾いて移動し易くなって操作感が低下する可能性がある。しかし本実施の形態のパドルシフト装置1は、2つのラバードーム50を備えているので、パドル41が構造体2に対して平行に移動し易く、操作感が向上する。さらにパドルシフト装置1は、操作終了後に元の位置に復帰する弾性力を2つのラバードーム50で生成している。
【0051】
(ピン6の構成)
ピン6は、一例として、ステンレスなどの金属材料を用いて円柱形又は円筒形に形成されている。
【0052】
(パドルシフト装置1の取り付けについて)
図6は、実施の形態に係る構造体の取り付けの一例について説明するための図である。この図6は、右側のパドルシフト装置1に関する図である。
【0053】
構造体2は、図6に示すように、ステアリング90の芯金910に取り付けられる。右の構造体2は、凹部27が右スポーク部93側の芯金910に設けられた取付片911に嵌められる。構造体2は、取付片911を介して取付部材8が挿入開口310に挿入され、締結されて芯金910に取り付けられる。なお芯金910は、いくつかの部品を組み合わせて構成されても良い。
【0054】
この取り付けの際、本体20の取付部21は、樹脂部分が芯金910に直接接触せずに、板部材3の第2の面301が接触するので、取付部材8を締め付けても傷が付いたり、破損したりすることを抑制することができる。
【0055】
以下では、本実施の形態の構造体2の製造方法について説明する。
【0056】
(構造体2の製造方法)
構造体2の製造方法は、金属材料を用いて形成された板部材3に対してバーリング加工を行うことによって板部材3の第1の面300から突出し、取付先に取り付けられる際に取付部材8が挿入される挿入開口310を備えた介在部31を形成し、樹脂材料を用いたインサート成形によって板部材3の少なくとも一部を覆うと共に、介在部31の挿入開口310が露出する取付部21を有する本体20を形成することを含んでいる。
【0057】
図3(b)の矢印は、一例として、バーリング加工する際にパンチングを行う方向を示している。介在部31は、図3(b)及び図3(c)に示すように、矢印の方向から板部材3に穴を開け、その際に立ち上がった部分として形成されている。なお介在部31は、絞り加工によって形成されても良い。
【0058】
また構造体2の製造方法は、介在部31と共に、複数のコネクタピンと、複数のコネクタピンの間に位置する少なくとも1つのタイバーと、を板部材3に形成し、取付部21と共に、複数のタイバーの少なくとも1つが露出する少なくとも1つの切断開口を形成し、少なくとも1つの切断開口に露出する複数のタイバーの少なくとも1つを切断し、複数のコネクタピンの少なくとも2つを電気的に分離することを含んでいる。
【0059】
板部材3は、プレス加工及びエッチング加工により、骨組部30、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34などを形成する。板部材3は、インサート成形のために金型のキャビティに配置される際、変形し易い部分を支える複数のタイバーが形成される。上述のように、板部材3には、第1のタイバー35~第3のタイバー37が形成されている。また上述のように、本体20には、第1の切断開口23及び第2の切断開口24が形成される。
【0060】
図4(a)及び図4(b)は、切断前の第1のタイバー35及び第2のタイバー36を示している。第1のタイバー35は、第1の切断開口23に露出している。また第2のタイバー36は、第2の切断開口24に露出している。
【0061】
この第1のタイバー35及び第2のタイバー36は、図5(a)及び図5(b)に示すように、レーザなどによって切断される。この切断によって第1のコネクタピン32は、第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34と電気的に分離されると共に、骨組部30と電気的に分離される。
【0062】
なお介在部31は、一例として、骨組部30を形成した後にバーリング加工により形成されても良いし、形成された後、骨組部30が形成されても良い。
【0063】
さらに構造体2の製造方法は、取付部材8と締結されるねじ山312を挿入開口310の内面311に形成することを含んでいる。
【0064】
なおねじ山312は、バーリング加工により介在部31を形成した後に形成しても良いし、インサート成形によって本体20が形成された後に形成されても良い。
【0065】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る構造体2、及びその製造方法は、製造コストを抑制することができる。例えば、介在部を圧入する場合は、取付部を形成した後、取付部に介在部が圧入されるので、工程が増えると共に介在部の部品が取付部の骨組と別に必要となる。また例えば、介在部のみをインサート成形する場合は、介在部の部品が取付部の骨組と別に必要となると共に、介在部を金型に保持する部材が必要となる。一方本実施の形態の構造体2、及びその製造方法は、取付部21の骨組となる骨組部30に介在部31がバーリング加工により形成されているので、介在部を取付部に圧入したり、介在部のみを取付部と一体に形成したりする場合と比べて、部品数が少なくなり、製造コストを抑制することができる。また構造体2、及びその製造方法は、介在部を圧入する場合と比べて、工程数が少なくなり、さらに製造コストを抑制することができる。
【0066】
構造体2、及びその製造方法は、取付部21の骨組となる骨組部30に介在部31が形成されているので、この構成を採用しない場合と比べて、取付部21の強度が向上する。
【0067】
構造体2、及びその製造方法は、骨組部30の第2の面301が取付部21の上面210に露出するので、この構成を採用しない場合と比べて、取り付けによって取付部21の樹脂部分に傷が入ったり、破損したりすることを抑制することができ、また取付先との取り付けの強度が向上する。
【0068】
構造体2、及びその製造方法は、第1の切断開口23及び第2の切断開口24に切断する第1のタイバー35及び第2のタイバー36を露出させ、インサート成形後に切断することができるので、切断又は分離した状態でインサート成形する場合と比べて、骨組部30、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34の本体20に対する位置決めの精度が向上する。
【0069】
構造体2、及びその製造方法は、介在部31にねじ山312が形成されているので、この構成を採用しない場合と比べて、ナットなどの部品を必要とせずに、ボルトである取付部材8を締結することができる。
【0070】
構造体2、及びその製造方法は、1枚の板を加工して骨組部30、介在部31、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34を形成するので、個別に形成してインサート成形で一体とする場合と比べて、配置位置の精度が高く、また製造コストを抑制することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、インサート成形前に板部材のタイバーが切断されている点で他の実施の形態と異なっている。
【0072】
図7(a)は、第2の実施の形態に係る構造体の裏面側の一例を示す図であり、図7(b)は、板部材の一例を示す図である。なお以下に記載する実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0073】
本実施の形態の構造体2の本体20は、コネクタ70が接続されるコネクタ部22を有している。また板部材3は、コネクタ部22に露出する複数のコネクタピンとして第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34と、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34の間に位置する複数のタイバーとしての第1のタイバー35及び第3のタイバー37と、を有している。この第1のタイバー35及び第3のタイバー37の少なくとも1つである第1のタイバー35は、第1のコネクタピン32~第3のコネクタピン34の少なくとも2つ、つまり第1のコネクタピン32と第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34とを電気的に分離するために切断されている。なお第2のコネクタピン33と第3のコネクタピン34の間の第3のタイバー37は、切断されず、第2のコネクタピン33と第3のコネクタピン34を物理的に接続している。
【0074】
さらに板部材3は、第1のコネクタピン32と骨組部30との間に形成された第2のタイバー36を有している。この第2のタイバー36は、第1のコネクタピン32と骨組部30とを電気的に分離するために切断されている。
【0075】
また板部材3の折曲部302は、図7(b)に示すように、インサート成形時において金型に取り付ける際に使用される2つの取付用孔303を介在部31とは反対側に有している。さらに板部材3は、第1のコネクタピン32と折曲部302の間、第2のコネクタピン33及び第3のコネクタピン34と接触端部38及び接触端部39との間に、インサート成形時において板部材3を金型に取り付ける際に使用される2つの取付用孔304を有している。
【0076】
第1のタイバー35及び第2のタイバー36は、板部材3を金型に取り付けた後、プレス加工などにより切断される。この構造体2の製造方法は、板部材3の2つの取付用孔303及び2つの取付用孔304に金型の位置決め用の突起を挿入して金型に取り付けられ、金型に取り付けられた状態で第1のタイバー35及び第2のタイバー36を切断して第1のコネクタピン32及び骨組部30を電気的に分離すると共に、第1のコネクタピン32及び第2のコネクタピン33を電気的に分離することを含んでいる。なお取付用孔の数や形成位置は、タイバーの切断が可能であり、また金型に対する位置決め精度が高く、かつ樹脂の充填による位置ずれが抑制されれば、これらに限定されない。
【0077】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る構造体2、及びその製造方法は、2つの取付用孔303及び2つの取付用孔304によって板部材3を金型に取り付けた状態で第1のタイバー35及び第2のタイバー36を切断するので、切断した複数の部品を金型に取り付ける場合と比べて、位置決めを行いながら複数の部品を取り付けなくても良く、製造コストを抑制することができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…パドルシフト装置、2…構造体、3…板部材、4…操作部、8…取付部材、9…車両、20…本体、21…取付部、22…コネクタ部、23…第1の切断開口、24…第2の切断開口、25…露出開口、26…挿入孔、27…凹部、30…骨組部、31…介在部、32~34…第1のコネクタピン~第3のコネクタピン、35~37…第1のタイバー~第3のタイバー、70…コネクタ、90…ステアリング、300…第1の面、301…第2の面、303…取付用孔、304…取付用孔、310…挿入開口、312…ねじ山、910…芯金、911…取付片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7