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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036798
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ばね部材
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20240311BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20240311BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20240311BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240311BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
F28D15/02 102A
F28D15/02 101H
F28D15/04 B
H01L23/46 B
H05K7/20 R
F16F1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141273
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
【テーマコード(参考)】
3J059
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
3J059BA19
3J059BB01
3J059BC02
3J059BD02
3J059CA01
3J059CB01
3J059GA50
5E322AA11
5E322DB08
5E322EA11
5F136CC12
5F136EA36
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、発熱体の放熱性能を向上させる。
【解決手段】支持板11と、支持板を形成する材質よりヤング率が低く、かつ熱伝導率が高い材質で形成されたヒートパイプ部材12と、を備え、ヒートパイプ部材は、底壁12aを有して上方に向けて開口した箱型に形成され、ヒートパイプ部材の上端開口部が、支持板のうちの少なくとも押し当て部14に接合されて閉塞されることにより、ヒートパイプ部材の内部空間Sが、受熱空間Srと、放熱空間Sdと、大流路P1と、小流路P2と、に区画されるとともに、内部空間に作動液が封入され、受熱空間は、発熱体Xの直上に位置し、放熱空間は、上下方向から見て、受熱空間および発熱体から離れて位置し、大流路、および大流路より流路断面積が小さい小流路はそれぞれ、受熱空間と放熱空間とを各別に連通する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
前記支持板を形成する材質よりヤング率が低く、かつ熱伝導率が高い材質で形成されたヒートパイプ部材と、を備え、
前記ヒートパイプ部材は、底壁を有して上方に向けて開口した箱型に形成され、
前記支持板は、
固定部と、
前記ヒートパイプ部材の底壁の下面のうちの少なくとも一部を発熱体に押し当てる押し当て部と、
前記固定部および前記押し当て部を互いに連結する弾性部と、を備え、
前記ヒートパイプ部材の上端開口部が、前記支持板のうちの少なくとも前記押し当て部に接合されて閉塞されることにより、前記ヒートパイプ部材の内部空間が、受熱空間と、放熱空間と、大流路と、小流路と、に区画されるとともに、前記内部空間に作動液が封入され、
前記受熱空間は、前記発熱体の直上に位置し、
前記放熱空間は、上下方向から見て、前記受熱空間および前記発熱体から離れて位置し、
前記大流路、および前記大流路より流路断面積が小さい前記小流路はそれぞれ、前記受熱空間と前記放熱空間とを各別に連通し、
前記大流路には、前記受熱空間で加熱されて蒸発した前記作動液の蒸気が、前記受熱空間から前記放熱空間に向けて流れ、
前記小流路には、前記放熱空間で前記蒸気が冷却されて凝縮して液体に戻った前記作動液が、毛細管力により前記放熱空間から前記受熱空間に向けて流れる、ばね部材。
【請求項2】
上下方向から見て、前記押し当て部、前記弾性部、および前記固定部がこの順に並ぶ向きは、前記受熱空間および前記放熱空間がこの順に並び、かつ前記大流路および前記小流路が延びる向きと一致している、請求項1に記載のばね部材。
【請求項3】
前記ヒートパイプ部材の内部空間を、前記受熱空間と、前記放熱空間と、前記大流路と、前記小流路と、に区画する区画壁は、前記ヒートパイプ部材と一体に形成されている、請求項1または2に記載のばね部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイス等の発熱体を放熱体に押し付けるばね部材として、例えば下記特許文献1に示されるように、固定部と、放熱体、若しくは発熱体に押し当てられる押し当て部と、固定部および押し当て部を互いに連結する弾性部と、を備えた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5530517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発熱体の放熱性能を向上させるためには、例えば追加の放熱体を設ける必要がある等、構造の複雑化を招くおそれがある。
【0005】
この発明は、簡易な構成で、発熱体の放熱性能を向上させることができるばね部材を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るばね部材は、支持板と、前記支持板を形成する材質よりヤング率が低く、かつ熱伝導率が高い材質で形成されたヒートパイプ部材と、を備え、前記ヒートパイプ部材は、底壁を有して上方に向けて開口した箱型に形成され、前記支持板は、固定部と、前記ヒートパイプ部材の底壁の下面のうちの少なくとも一部を発熱体に押し当てる押し当て部と、前記固定部および前記押し当て部を互いに連結する弾性部と、を備え、前記ヒートパイプ部材の上端開口部が、前記支持板のうちの少なくとも前記押し当て部に接合されて閉塞されることにより、前記ヒートパイプ部材の内部空間が、受熱空間と、放熱空間と、大流路と、小流路と、に区画されるとともに、前記内部空間に作動液が封入され、前記受熱空間は、前記発熱体の直上に位置し、前記放熱空間は、上下方向から見て、前記受熱空間および前記発熱体から離れて位置し、前記大流路、および前記大流路より流路断面積が小さい前記小流路はそれぞれ、前記受熱空間と前記放熱空間とを各別に連通し、前記大流路には、前記受熱空間で加熱されて蒸発した前記作動液の蒸気が、前記受熱空間から前記放熱空間に向けて流れ、前記小流路には、前記放熱空間で前記蒸気が冷却されて凝縮して液体に戻った前記作動液が、毛細管力により前記放熱空間から前記受熱空間に向けて流れる。
【0007】
内部空間に封入された作動液が、発熱体で加熱されている受熱空間で蒸発し(潜熱の吸収)、このときの蒸気が、大流路を通して放熱空間に流入して冷却され凝縮することで液体に戻り(潜熱の放出)、液体に戻された作動液が、毛細管力により小流路を通して受熱空間に戻る。このように、作動液が、受熱空間と放熱空間との間を往来することで、発熱体の熱が放出されることとなり、発熱体の放熱性能を向上させることができる。
ヒートパイプ部材の上端開口部が、支持板に接合されて閉塞されることにより、内部空間が、受熱空間と、放熱空間と、大流路と、小流路と、に区画され、かつ内部空間に作動液が封止されるので、支持板およびヒートパイプ部材が一体に設けられることとなり、構造の複雑化を抑えることができる。
ヒートパイプ部材の上端開口部が、全域にわたって支持板に閉塞されることから、ヒートパイプ部材と支持板との間に上下方向の隙間が生ずることがなく、デッドスペースを生じにくくすることができる。
【0008】
上下方向から見て、前記押し当て部、前記弾性部、および前記固定部がこの順に並ぶ向きは、前記受熱空間および前記放熱空間がこの順に並び、かつ前記大流路および前記小流路が延びる向きと一致してもよい。
【0009】
上下方向から見て、押し当て部、弾性部、および固定部がこの順に並ぶ向きが、受熱空間および放熱空間がこの順に並び、かつ大流路および小流路が延びる向きと一致しているので、受熱空間と放熱空間との距離を容易に長く確保することが可能になり、発熱体の放熱性能を確実に向上させることができる。
【0010】
前記ヒートパイプ部材の内部空間を、前記受熱空間と、前記放熱空間と、前記大流路と、前記小流路と、に区画する区画壁は、前記ヒートパイプ部材と一体に形成されてもよい。
【0011】
ヒートパイプ部材の内部空間を、受熱空間と、放熱空間と、大流路と、小流路と、に区画する区画壁が、熱伝導率が高いヒートパイプ部材と一体に形成されているので、支持板のばね性を阻害することなく、簡易な構成で発熱体の放熱性能を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、簡易な構成で、発熱体の放熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のばね部材の長手方向(一方向)に沿う断面図である。
図2A図1の2A-2A線矢視断面図である。
図2B図1の2B-2B線矢視断面図である。
図3A図2Aの第2実施形態を示す図である。
図3B図2Bの第2実施形態を示す図である。
図4A図2Aの第3実施形態を示す図である。
図4B図2Bの第3実施形態を示す図である。
図5図2Bの第4実施形態を示す図である。
図6A】第5実施形態のばね部材の長手方向(一方向)に沿う断面図である。
図6B図6Aの6B-6B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ばね部材の第1実施形態を、図1図2A、および図2Bを参照しながら説明する。
ばね部材1は、発熱体Xが収容されるケース体C内に収容されて用いられる。発熱体Xは、例えば半導体デバイス等とされ、発熱するチップx1を備えている。
ばね部材1は、支持板11と、ヒートパイプ部材12と、を備えている。ヒートパイプ部材12は、支持板11を形成する材質よりヤング率が低く、かつ熱伝導率が高い材質で形成されている。例えば、支持板11は鉄、若しくはステンレス等で形成され、ヒートパイプ部材12は銅、若しくはアルミニウム等で形成されている。
ヒートパイプ部材12は、後述するように箱型に形成されており、以下、箱型のヒートパイプ部材12が開口する向きを上方といい、これとは逆向きを下方という。
【0015】
支持板11は、固定部13と、押し当て部14と、弾性部15と、を備えている。固定部13、押し当て部14、および弾性部15は一体に形成されている。支持板11は、上下方向から見て一方向に長い長方形状を呈する。固定部13、弾性部15、および押し当て部14は、上下方向から見て前記一方向に沿ってこの順に並んでいる。
【0016】
固定部13は、ケース体Cの内面に固定される。押し当て部14は、弾性部15により発熱体X側である下方に向けて付勢される。押し当て部14は、ヒートパイプ部材12のうちの少なくとも一部を発熱体Xに押し当てる。
固定部13および押し当て部14は、表裏面が上下方向を向く平板状に形成されている。固定部13は、ケース体Cの内面に隙間無く一様に当接している。なお、固定部13は、ケース体Cの内面のうち、固定部13が当接する部分の形状に沿って、例えば湾曲等してもよい。
【0017】
弾性部15は、固定部13および押し当て部14を互いに連結している。弾性部15は、前記一方向に沿って押し当て部14から固定部13側に向かうに従い上方に向けて延びる傾斜部15aと、固定部13から上方に向けて延びる立ち上がり部15bと、傾斜部15aおよび立ち上がり部15bを互いに連結し、上方に向けて突の曲面状に形成された頂部15cと、により構成されている。弾性部15が弾性変形することで、押し当て部14が下方に向けて付勢される。
【0018】
ヒートパイプ部材12は、底壁12aを有して上方に向けて開口した箱型に形成されている。ヒートパイプ部材12は、上下方向から見て前記一方向に長い長方形状を呈する。
ヒートパイプ部材12の底壁12aの下面は、発熱体Xの上面に隙間無く一様に当接している。ヒートパイプ部材12、および押し当て部14は、発熱体Xの上面形状に沿って、例えば湾曲等してもよい。
【0019】
ヒートパイプ部材12の上端開口部は、支持板11のうちの少なくとも押し当て部14に、例えば拡散接合、ろう付け、若しくは接着等により接合されて閉塞されている。これにより、ヒートパイプ部材12の内部空間Sが密閉され、内部空間Sに作動液が封止されるとともに、内部空間Sが、受熱空間Srと、放熱空間Sdと、大流路P1と、小流路P2と、に区画される。内部空間Sは、大気圧より低い減圧状態で密閉される。なお、内部空間Sの内圧を大気圧以上としてもよい。
【0020】
受熱空間Srは、発熱体Xの直上に位置している。図示の例では、受熱空間Srは、発熱体Xのチップx1の直上に位置している。発熱体Xにおける前記一方向の中央部は、押し当て部14における前記一方向の中央部に対して、前記一方向に沿う弾性部15の反対側に離れている。放熱空間Sdは、上下方向から見て、受熱空間Srおよび発熱体Xから離れて位置している。発熱体Xからの熱によって、受熱空間Srの温度は、放熱空間Sdの温度より高くなる。受熱空間Srおよび放熱空間Sdそれぞれの内容積は互いに同じになっている。
【0021】
大流路P1、および小流路P2はそれぞれ、受熱空間Srと放熱空間Sdとを各別に連通している。小流路P2は、大流路P1より流路断面積が小さくなっている。小流路P2の溝幅および深さは、大流路P1の溝幅および深さより小さくなっている。大流路P1、および小流路P2それぞれ流路長は互いに同じになっている。
大流路P1には、受熱空間Srで加熱されて蒸発した作動液の蒸気が、受熱空間Srから放熱空間Sdに向けて流れる。小流路P2には、放熱空間Sdで作動液の蒸気が冷却されて凝縮し液体に戻った作動液が、毛細管力により放熱空間Sdから受熱空間Srに向けて流れる。
【0022】
小流路P2は、上下方向から見て、前記一方向に直交する他方向に間隔をあけて複数設けられている。小流路P2は、上下方向から見て、大流路P1を前記他方向に挟む両側に複数ずつ(同数)設けられている。大流路P1は、内部空間Sにおける前記他方向の中間部に設けられている。
上下方向から見て、押し当て部14、弾性部15、および固定部13がこの順に並ぶ向きは、受熱空間Srおよび放熱空間Sdがこの順に並び、かつ大流路P1および小流路P2が延びる向きと一致している。図示の例は、これらの向きは、前記一方向と一致している。なお、これらの向きを互いに異ならせてもよい。
図1は、ばね部材1における前記他方向の中央部の、前記一方向に沿う断面図を示している。
【0023】
ヒートパイプ部材12の底壁12aの上面における前記他方向の両側部分に、嵩上げ突部(区画壁)17が各別に設けられている。嵩上げ突部17は、ヒートパイプ部材12と一体に形成され、ヒートパイプ部材12の内面のうちの前記他方向の両端面に各別に接続されている。嵩上げ突部17の頂面は、ヒートパイプ部材12の上端開口縁より下方に位置している。嵩上げ突部17の頂面が、小流路P2の底面となっている。これにより、小流路P2の底面は、大流路P1の底面より上方に位置している。嵩上げ突部17は、ヒートパイプ部材12の内面のうちの前記一方向の両端面から、前記一方向に離れている。
【0024】
内部空間Sにおいて、ヒートパイプ部材12の内面のうちの前記一方向の両端面と、嵩上げ突部17と、により前記一方向に挟まれた各部分が、受熱空間Srおよび放熱空間Sdとなっている。内部空間Sのうち、2つの嵩上げ突部17により前記他方向に挟まれた部分が、大流路P1となっている。
【0025】
嵩上げ突部17の頂面に、上方に向けて突出し、前記一方向の全長にわたって連続して延びる突条部(区画壁)16が、前記他方向に間隔をあけて複数形成されている。前記他方向で互いに隣り合う突条部16同士の間に位置する部分が、小流路P2となっている。突条部16の上端面は、ヒートパイプ部材12の上端開口縁と同じ上下方向の位置に位置している。突条部16の上端面は、支持板11の下面にシール状態で当接している。突条部16の上端面は、支持板11の下面に接合されてもよいし、接合されなくてもよい。
【0026】
以上より、嵩上げ突部17および突条部16は、内部空間Sを、受熱空間Srと、放熱空間Sdと、大流路P1と、小流路P2と、に区画し、かつヒートパイプ部材12と一体に形成されている。なお、嵩上げ突部17および突条部16は、支持板11と一体に形成されてもよい。
図示の例では、ヒートパイプ部材12の上端開口部は、全域にわたって押し当て部14に閉塞されている。ヒートパイプ部材12の底壁12aのうち、受熱空間Srと、大流路P1および小流路P2それぞれにおける受熱空間Sr側の端部と、に跨る部分の下面が発熱体Xの上面に当接し、受熱空間Srが位置する部分の下面がチップx1の上面に当接している。
【0027】
例えば、ヒートパイプ部材12のうち、受熱空間Srが位置する部分の上端開口部が、押し当て部14に閉塞され、放熱空間Sdが位置する部分の上端開口部が、弾性部15若しくは固定部13に閉塞されてもよい。ヒートパイプ部材12のうち、大流路P1および小流路P2が位置する部分の上端開口部は、支持板11に対する放熱空間Sdの前記一方向の位置に応じて、例えば、押し当て部14および弾性部15の双方、押し当て部14、弾性部15、および固定部13の全て、若しくは弾性部15および固定部13の双方等に閉塞されてもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材1によれば、内部空間Sに封入された作動液が、発熱体Xで加熱されている受熱空間Srで蒸発し(潜熱の吸収)、このときの蒸気が、大流路P1を通して放熱空間Sdに流入して冷却され凝縮することで液体に戻り(潜熱の放出)、液体に戻された作動液が、毛細管力により小流路P2を通して受熱空間Srに戻る。このように、作動液が、受熱空間Srと放熱空間Sdとの間を往来することで、発熱体Xの熱が放出されることとなり、発熱体Xの放熱性能を向上させることができる。
【0029】
ヒートパイプ部材12の上端開口部が、支持板11に接合されて閉塞されることにより、内部空間Sが、受熱空間Srと、放熱空間Sdと、大流路P1と、小流路P2と、に区画され、かつ内部空間Sに作動液が封止されるので、支持板11およびヒートパイプ部材12が一体に設けられることとなり、構造の複雑化を抑えることができる。
ヒートパイプ部材12の上端開口部が、全域にわたって支持板11に閉塞されることから、ヒートパイプ部材12と支持板11との間に上下方向の隙間が生ずることがなく、デッドスペースを生じにくくすることができる。
【0030】
上下方向から見て、押し当て部14、弾性部15、および固定部13がこの順に並ぶ向きが、受熱空間Srおよび放熱空間Sdがこの順に並び、かつ大流路P1および小流路P2が延びる向きと一致しているので、受熱空間Srと放熱空間Sdとの距離を容易に長く確保することが可能になり、発熱体Xの放熱性能を確実に向上させることができる。
【0031】
ヒートパイプ部材12の内部空間Sを、受熱空間Srと、放熱空間Sdと、大流路P1と、小流路P2と、に区画する嵩上げ突部17および突条部16が、熱伝導率が高いヒートパイプ部材12と一体に形成されているので、支持板11のばね性を阻害することなく、簡易な構成で発熱体Xの放熱性能を確実に向上させることができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態に係るばね部材2を、図3Aおよび図3Bを参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0033】
本実施形態のばね部材2では、小流路P2が、前記他方向だけでなく上下方向にも間隔をあけて複数設けられている。
図示の例では、ヒートパイプ部材12が、上下方向に積層された第1分割部材21、および複数の第2分割部材22により構成されている。
【0034】
第1分割部材21は、底壁21aを有して上方に向けて開口した箱型に形成され、ヒートパイプ部材12の最下層を構成している。第1分割部材21は、上下方向から見て前記一方向に長い長方形状を呈する。第1分割部材21の上端開口部は、第2分割部材22の底壁22aの下面に接合されて閉塞されている。
【0035】
第1分割部材21の底壁21aの上面における前記他方向の両側部分に、上方に向けて突出し、前記一方向に延びる第1突条部(区画壁)23aが、前記他方向に間隔をあけて複数ずつ形成されている。第1突条部23aの上端面は、第1分割部材21の上端開口縁と同じ上下方向の位置に位置している。第1突条部23aの上端面は、第2分割部材22の底壁22aの下面にシール状態で当接している。第1突条部23aの上端面は、第2分割部材22の底壁22aの下面に接合されてもよいし、接合されなくてもよい。前記他方向で互いに隣り合う第1突条部23a同士の間に位置する部分が、小流路P2となっている。第1突条部23aは、第1分割部材21の内面のうちの前記一方向の両端面から前記一方向に離れている。
【0036】
複数の第2分割部材22は、底壁22aを有して上方に向けて開口した箱型に形成され、第1分割部材21上に積層されて設けられている。複数の第2分割部材22は、上下方向から見て前記一方向に長い長方形状を呈する。複数の第2分割部材22は、互いに同じ形状で同じ大きさに形成されている。
【0037】
第2分割部材22の底壁22aにおいて、第1分割部材21のうち、第1突条部23aおよび小流路P2以外の部分、つまり受熱空間Sr、放熱区間Sd、および大流路P1を画成する部分と上下方向に対向する部分に、全域にわたって一体に貫通孔が形成されている。これにより、受熱空間Sr、放熱区間Sd、および大流路P1は、第1分割部材21および複数の第2分割部材22を上下方向に跨いで一体に設けられている。
【0038】
複数の第2分割部材22のうち、ヒートパイプ部材12の最上層を構成する第2分割部材22の上端開口部は、支持板11のうちの少なくとも押し当て部14に接合されて閉塞され、これより下方に位置する第2分割部材22の上端開口部は、直上に位置する第2分割部材22の底壁22aの下面に接合されて閉塞されている。
【0039】
第2分割部材22の底壁22aの上面における前記他方向の両側部分に、上方に向けて突出し、前記一方向に延びる第2突条部(区画壁)23bが、前記他方向に間隔をあけて複数ずつ形成されている。第2突条部23bは、第1突条部23aに対して前記一方向および前記他方向それぞれにおける同じ位置に位置している。前記他方向で互いに隣り合う第2突条部23b同士の間に位置する部分が、小流路P2となっている。
【0040】
複数の第2分割部材22のうち、ヒートパイプ部材12の最上層を構成する第2分割部材22に形成された第2突条部23bの上端面は、支持板11の下面にシール状態で当接し、これより下方に位置する第2分割部材22に形成された第2突条部23bの上端面は、直上に位置する第2分割部材22の底壁22aの下面にシール状態で当接している。前者の第2突条部23bの上端面は、支持板11の下面に接合されてもよいし、接合されなくてもよく、後者の第2突条部23bの上端面は、直上に位置する第2分割部材22の底壁22aの下面に接合されてもよいし、接合されなくてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材2によれば、第1実施形態のばね部材1により得られる作用効果に加え、小流路P2が、前記他方向だけでなく上下方向にも間隔をあけて複数設けられているので、放熱空間Sdで凝縮されて生成された作動液を即座に受熱空間Srに戻しやすくなり、発熱体Xの放熱性能を確実に向上させることができる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係るばね部材3を、図4Aおよび図4Bを参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0043】
本実施形態のばね部材3では、小流路P2が、大流路P1を前記他方向に挟む両側に1つずつ設けられている。小流路P2の溝幅は、大流路P1の溝幅より広くなっている。小流路P2の深さは、大流路P1の深さより浅くなっている。突条部16が、各嵩上げ突部17の頂面のうち、前記他方向の内端部に1つだけ設けられている。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材3によれば、第1実施形態のばね部材1と同様の作用効果が得られる。
【0045】
次に、本発明の第4実施形態に係るばね部材4を、図5を参照しながら説明する。
なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0046】
本実施形態のばね部材4では、支持板11の下面に、ヒートパイプ部材12の上端開口部内に嵌合され、ヒートパイプ部材12の上端開口部を閉塞する嵌合突部41が設けられている。突条部16の上端面は、ヒートパイプ部材12の上端開口縁より下方に位置し、嵌合突部41の下面にシール状態で当接している。嵌合突部41の下面だけでなく嵌合突部41の外周面も、ヒートパイプ部材12の上端部に接合されている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材4によれば、第1実施形態のばね部材1により得られる作用効果に加え、嵌合突部41の下面だけでなく嵌合突部41の外周面も、ヒートパイプ部材12の上端部に接合されているので、支持板11およびヒートパイプ部材12を互いに強固に接合することができるとともに、内部空間Sを確実に密閉することができる。
【0048】
次に、本発明の第5実施形態に係るばね部材5を、図6Aおよび図6Bを参照しながら説明する。図6Aは、ばね部材5における前記他方向の中央部の、前記一方向に沿う断面図を示している。
なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0049】
本実施形態のばね部材5では、放熱空間Sd、大流路P1、および小流路P2が、受熱空間Srを挟む両側に各別に配設されている。図示の例では、放熱空間Sd、大流路P1、および小流路P2が、受熱空間Srを前記一方向に挟む両側に各別に配設されている。
支持板11に、押し当て部14から前記一方向に沿う弾性部15の反対側に向けて延びる延長部51が設けられている。図示の例では、延長部51は、前記一方向に沿って押し当て部14から離れるに従い上方に向けて延びているが、例えば、押し当て部14から離れるに従い下方に向けて延びてもよいし、前記一方向に真直ぐ延びてもよい。
【0050】
発熱体Xにおける前記一方向の中央部は、押し当て部14における前記一方向の中央部と一致している。
ヒートパイプ部材12のうち、受熱空間Srが位置する部分の上端開口部は、押し当て部14に閉塞され、2つの放熱空間Sdが位置する各部分の上端開口部は、弾性部15および延長部51に各別に閉塞されている。ヒートパイプ部材12のうち、2組の大流路P1および小流路P2が位置する各部分の上端開口部は、押し当て部14および弾性部15の双方、並びに押し当て部14および延長部51の双方に各別に閉塞されている。
ヒートパイプ部材12のうち、前記一方向の中間部は、前記一方向に真直ぐ延び、前記一方向の両側部は、前記一方向の外側に向かうに従い上方に向けて延びている。ヒートパイプ部材12は、前記一方向に沿う断面視において、前記一方向の中央部を通り、かつ上下方向に延びる直線に対して対称形状を呈する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によるばね部材5によれば、第1実施形態のばね部材1により得られる作用効果に加え、放熱空間Sd、大流路P1、および小流路P2が、受熱空間Srを挟む両側に各別に配設されているので、発熱体Xの放熱性能を確実に向上させることができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、大流路P1を、内部空間Sにおける前記他方向の両端部に各別に設け、かつ前記他方向に間隔をあけて設けられた複数の小流路P2を、内部空間Sにおける前記他方向の中間部に設ける等、大流路P1および小流路P2それぞれの個数、および相対位置は、適宜変更してもよい。
【0054】
ヒートパイプ部材12において、放熱空間Sdを画成する壁面に、内部空間Sの外側に向けて突出する冷却フィンを形成してもよい。
この場合、冷却フィンが、支持板11ではなく、ヒートパイプ部材12に設けられているので、支持板11のばね性を阻害せずに、発熱体Xの放熱性能を確実に向上させることができる。
なお、冷却フィンが、ヒートパイプ部材12から突出する向きは、例えば前記一方向、前記他方向、および下方等、適宜変更してもよい。
【0055】
小流路P2に、例えばメッシュ若しくはワイヤ等のウィックを設けてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3、4、5 ばね部材
11 支持板
12 ヒートパイプ部材
12a 底壁
13 固定部
14 押し当て部
15 弾性部
16 突条部(区画壁)
17 嵩上げ突部(区画壁)
23a 第1突条部(区画壁)
23b 第2突条部(区画壁)
P1 大流路
P2 小流路
S 内部空間
Sd 放熱空間
Sr 受熱空間
X 発熱体
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B