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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000368
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20231225BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20231225BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20231225BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20231225BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231225BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231225BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J35/10 301J
B01J35/10 301F
B01J35/04 301L
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 222
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099117
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】高木 信之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA11
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091GA06
3G091GA18
3G091GB04W
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB10W
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4D148AA18
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4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC40B
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC44B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA09
4G169CA13
4G169DA06
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC22X
4G169EC28
4G169EC29
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、触媒性能とOSC性能とを両立させた排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを有し、第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、第2の触媒コート層が、比表面積が40m/g超である高比表面積OSC材、比表面積が4m/g~40m/gである中比表面積OSC材、及び比表面積が4m/g未満である低比表面積OSC材を含む排ガス浄化用触媒に関する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを有し、
第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、
第2の触媒コート層が、比表面積が40m/g超である高比表面積OSC材、比表面積が4m/g~40m/gである中比表面積OSC材、及び比表面積が4m/g未満である低比表面積OSC材を含む
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材が、それぞれ独立して、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物又はセリア-ジルコニア系複合酸化物を含み、低比表面積OSC材が、セリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
低比表面積OSC材が、パイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
第1の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、20%~50%であり、上流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%であり、下流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%である、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
第1の触媒コート層が、上流側コート層の上に配置されている、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
第1の触媒コート層が、上流側コート層の下に配置されている、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
上流側コート層が、高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含み、下流側コート層が、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含む、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
高比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%であり、中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%であり、高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、60重量%以下であり、低比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、40重量%~80重量%であり、ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量すべてを足し合せると、100重量%になる、請求項8に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項10】
第1の触媒コート層が、触媒金属としてのPdを含む、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
二触媒システムにおけるS/Cとして使用するための請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項12】
第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項13】
第1の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、15%~50%であり、第2の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、65%~95%である、請求項12に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項14】
第1の触媒コート層が、触媒金属としてのPtを含む、請求項12に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項15】
二触媒システムにおけるUF/Cとして使用するための請求項12に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のための内燃機関、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、有害成分、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等が含まれている。
【0003】
このため、一般的には、これらの有害成分を分解除去するための排ガス浄化装置が内燃機関に設けられており、この排ガス浄化装置内に取り付けられた排ガス浄化用触媒によってこれらの有害成分がほとんど無害化されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、排ガスが流通するセル構造の基材と、該基材のセル壁面に形成されている触媒層とからなる排ガス浄化用触媒であって、前記触媒層は、前記基材の表面に形成される下触媒層と、該下触媒層の表面に形成される上触媒層とからなり、前記上触媒層は、ロジウムが担持されたジルコニア担体と、ロジウムが担持されておらず、且つ比表面積の異なる二種類のセリア-ジルコニア系複合酸化物と、から少なくとも形成されており、前記下触媒層は、白金が担持されたアルミナ担体と、セリア-ジルコニア系複合酸化物とから形成されている排ガス浄化用触媒を開示している。
【0005】
特許文献2は、内燃機関の排気通路内に配置され、前記内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、基材と、前記基材の表面に形成された触媒コート層と、を備え、前記触媒コート層は、酸素貯蔵能を有するOSC材を含み、且つ、前記触媒コート層は、触媒金属としてRhが主体として配置されているRh層と、触媒金属としてPd及び/又はPtが主体として配置されているPd/Pt層と、を備えており、ここで前記触媒コート層のうちの前記Pd/Pt層の少なくとも一部は、前記OSC材として、セリア-ジルコニア系複合酸化物からなる比表面積が40m/g以上60m/g以下である低比表面積OSC材を含む、排ガス浄化用触媒を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-175053号公報
【特許文献2】特開2022-007587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の排ガス浄化用触媒は、基材に触媒コート層が塗布されている構造を有する。触媒コート層は、触媒金属としての貴金属を含む。
【0008】
排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属の量は、資源リスクの観点から低減させることが求められている。貴金属の量を低減させるためには、貴金属の触媒活性が排ガス浄化用触媒の使用によって低下することを防止すればよく、貴金属の触媒活性が低下するのを防ぐためには、例えば、貴金属の触媒活性の低下の1つの要因である貴金属の排ガス中のHCによる被毒(HC被毒)を抑制することが挙げられる。
【0009】
一方で、触媒コート層は、触媒金属の他に、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する材料(OSC材)を含み得る。OSC材とは、酸素を吸放出することができる材料であり、OSC材によって、空燃比が変動するような場合においても、酸素濃度を一定に保ち、排ガス浄化用触媒の浄化性能(触媒性能)を維持することができる。
【0010】
つまり、排ガス浄化用触媒としては、触媒性能、すなわち貴金属のHC被毒の抑制とOSC性能とを両立させた排ガス浄化用触媒が望ましい。
【0011】
したがって、本発明は、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、触媒性能とOSC性能とを両立させた排ガス浄化用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
触媒活性におけるNOxの浄化は、貴金属の中でも特にロジウム(Rh)によって担われている。しかしながら、Rhの触媒活性は、HC被毒による影響を受けて低下しやすく、特に、例えば酸素濃度の低い状態が継続するA/Fがリッチである雰囲気下ではRh表面がHCにより覆われ得るため、より低下しやすい。したがって、触媒活性の低下の抑制には、RhのHC被毒の抑制が効果的である。
【0013】
一方で、OSC材は、そのOSC性能によって、貴金属の状態変化の遅延や、触媒活性の低下を引き起こす可能性がある。例えば、比表面積が大きいOSC材は、高いOSC性能を有するものの、排ガス中のHCにより覆われ易いため、貴金属の触媒活性の低下と共に、OSC性能の低下を引き起こし得る。これに対して、例えば、比表面積が小さいOSC材は、排ガス中のHCにより覆われにくいことで貴金属の触媒活性の低下は抑えられるものの、OSC性能に限界がある。したがって、適切なOSC性能の確保には、適切なOSC材の選択が求められる。
【0014】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒において、触媒コート層として、触媒金属として貴金属であるPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属として貴金属であるRhを含む第2の触媒コート層とを配置し、第1の触媒コート層を排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成させ、第2の触媒コート層に、比表面積が異なる3種類のOSC材を配置することによって、第1の触媒コート層においてPd及び/又はPtによりHCを浄化しつつ、第2の触媒コート層において3種類のOSC材により調整された酸素雰囲気下にてRhにより効率的にNOxを浄化できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、
触媒コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを有し、
第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、
第2の触媒コート層が、比表面積が40m/g超である高比表面積OSC材、比表面積が4m/g~40m/gである中比表面積OSC材、及び比表面積が4m/g未満である低比表面積OSC材を含む
排ガス浄化用触媒。
(2)高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材が、それぞれ独立して、アルミナ(Al)-セリア(CeO)-ジルコニア(ZrO)系複合酸化物(ACZ)又はセリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)を含み、低比表面積OSC材が、セリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)低比表面積OSC材が、パイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(5)第1の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、20%~50%であり、上流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%であり、下流側コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%である、(4)に記載の排ガス浄化用触媒。
(6)第1の触媒コート層が、上流側コート層の上に配置されている、(4)又は(5)に記載の排ガス浄化用触媒。
(7)第1の触媒コート層が、上流側コート層の下に配置されている、(4)又は(5)に記載の排ガス浄化用触媒。
(8)上流側コート層が、高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含み、下流側コート層が、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含む、(4)~(7)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(9)高比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%であり、中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%であり、高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、60重量%以下であり、低比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、40重量%~80重量%であり、ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量すべてを足し合せると、100重量%になる、(8)に記載の排ガス浄化用触媒。
(10)第1の触媒コート層が、触媒金属としてのPdを含む、(4)~(9)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(11)二触媒システムにおけるS/Cとして使用するための(4)~(10)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(12)第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている、(1)~(3)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(13)第1の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、15%~50%であり、第2の触媒コート層の幅が、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、65%~95%である、(12)に記載の排ガス浄化用触媒。
(14)第1の触媒コート層が、触媒金属としてのPtを含む、(12)又は(13)に記載の排ガス浄化用触媒。
(15)二触媒システムにおけるUF/Cとして使用するための(12)~(14)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(16)基材と該基材上にコートされている第1の触媒コート層及び第2の触媒コート層を含む触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
(i)触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む触媒金属前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、
(ii)触媒金属としてのRhを含むRh前駆体と溶媒と比表面積が40m/g超である高比表面積OSC材と比表面積が4m/g~40m/gである中比表面積OSC材と比表面積が4m/g未満である低比表面積OSC材とを含む第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、
(iii)(i)の工程で調製した第1の触媒コート層用スラリーを排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から塗布して第1の触媒コート層を形成する工程と、
(iv)(ii)の工程で調製した第2の触媒コート層用スラリーを塗布して第2の触媒コート層を形成する工程と、
を含む、排ガス浄化用触媒を製造する方法。
(17)高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材が、それぞれ独立して、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物又はセリア-ジルコニア系複合酸化物を含み、低比表面積OSC材が、セリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、(16)に記載の方法。
(18)低比表面積OSC材が、パイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物を含む、(17)に記載の方法。
(19)第2の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有し、(ii)の工程が、第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程として、(ii-1)下流側コート層用スラリーを調製する工程、及び(ii-2)上流側コート層用スラリーを調製する工程を含み、(iv)の工程が、第2の触媒コート層を形成する工程として、(iv-1)(ii-1)の工程で調製した下流側コート層用スラリーを塗布して下流側コート層を形成する工程、及び(iv-2)(ii-2)の工程で調製した上流側コート層用スラリーを塗布して上流側コート層を形成する工程を含む、(16)~(18)のいずれか1つに記載の方法。
(20)(iii)の工程において、第1の触媒コート層用スラリーが、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、20%~50%まで塗布され、(iv-1)の工程において、下流側コート層用スラリーが、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%まで塗布され、(iv-2)の工程において、上流側コート層用スラリーが、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%まで塗布される、(19)に記載の方法。
(21)(iii)の工程が、(iv-2)の工程の後に実施される、(19)又は(20)に記載の方法。
(22)(iii)の工程が、(iv-2)の工程の前に実施される、(19)又は(20)に記載の方法。
(23)(ii-1)の工程が、Rh前駆体と溶媒と中比表面積OSC材と低比表面積OSC材とを含む下流側コート層用スラリーを調製する工程であり、(ii-2)の工程が、Rh前駆体と溶媒と高比表面積OSC材と低比表面積OSC材とを含む上流側コート層用スラリーを調製する工程である、(19)~(22)のいずれか1つに記載の方法。
(24)(ii-1)及び(ii-2)の工程において、高比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%になり、中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%になり、高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、60重量%以下になり、低比表面積OSC材におけるセリアの量が、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、40重量%~80重量%になり、ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量すべてを足し合せると、100重量%になるように調整される、(23)に記載の方法。
(25)(i)の工程が、Pd前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程である、(19)~(24)のいずれか1つに記載の方法。
(26)排ガス浄化用触媒が、二触媒システムにおけるS/Cとして使用される、(19)~(25)のいずれか1つに記載の方法。
(27)(iv)の工程が、(ii)の工程で調製した第2の触媒コート層用スラリーを排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から塗布して第2の触媒コート層を形成する工程である、(16)~(18)のいずれか1つに記載の方法。
(28)(iii)の工程において、第1の触媒コート層用スラリーが、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、15%~50%まで塗布され、(iv)の工程において、第2の触媒コート層用スラリーが、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、65%~95%まで塗布される、(27)に記載の方法。
(29)(i)の工程が、Pt前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程である、(27)又は(28)に記載の方法。
(30)排ガス浄化用触媒が、二触媒システムにおけるUF/Cとして使用される、(27)~(29)のいずれか1つに記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、HC被毒しやすい空燃比(A/F)がリッチである雰囲気において、触媒性能とOSC性能とを両立させた排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態の一つの例を模式的に示す図である。
図9】比較例1及び実施例2の排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率並びに低温及び高温でのOSC性能を示すグラフである。
図10】比較例3及び実施例5の排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率並びに低温及び高温でのOSC性能を示すグラフである。
図11】第2の触媒コート層における高比表面積OSC材が占めるセリア割合とリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC性能との関係を示すグラフである。
図12】比較例4及び5並びに実施例9の排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率及びOSC性能を示すグラフである。
図13】比較例4及び6並びに実施例8及び10の排ガス浄化用触媒のリッチ雰囲気でのNOx浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の排ガス浄化用触媒は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0019】
本発明は、基材と該基材上にコートされている触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層が、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを有し、第1の触媒コート層が、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されており、第2の触媒コート層が、比表面積が異なる3種類のOSC材を含む排ガス浄化用触媒に関する。
【0020】
(基材)
基材としては、公知のハニカム形状を有する基材を使用することができ、具体的には、ハニカム形状のモノリス基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。これらの中でも、コストの観点から、コージェライトであることが好ましい。
【0021】
(触媒コート層)
触媒コート層は、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層と、触媒金属としてのRhを含む第2の触媒コート層とを少なくとも有する。
【0022】
第1の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側(排ガスが流入する側)の端部(端面)から形成されている。
【0023】
第1の触媒コート層が前記構成をしていることにより、流入した排ガスにおける排ガス、特にHCを効率よく浄化することができる。
【0024】
・第1の実施形態
本発明の第1の実施形態では、第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側(排ガスが流出する側)の端部(端面)から形成されている下流側コート層を有する。
【0025】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常20%~50%、好ましくは20%~35%である。
【0026】
本発明の第1の実施形態において、第1の触媒コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばPd、Ptの高密度化によるPd、Ptの凝集を抑制しつつ、Pd、Ptと排ガス中の有害成分、例えばHCとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0027】
本発明の第1の実施形態では、上流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常30%~70%、好ましくは30%~60%である。
【0028】
本発明の第1の実施形態では、下流側コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常30%~70%、好ましくは50%~70%である。
【0029】
本発明の第1の実施形態において、上流側コート層及び下流側コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばRhの高密度化によるRhの凝集を抑制しつつ、Rhと排ガス中の有害成分、例えばNOxとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0030】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層は、上流側コート層の上に配置されていてもよい。
【0031】
本発明の第1の実施形態において、第1の触媒コート層が、上流側コート層の上に配置されることにより、第1の触媒コート層中に含まれるPd、Ptにより流入した排ガス中の有害成分、特にHCを浄化した後に、上流側コート層中に含まれるRhにより有害成分、特にNOxを浄化することができる。
【0032】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層は、上流側コート層の下に配置されていてもよい。
【0033】
本発明の第1の実施形態において、第1の触媒コート層が、上流側コート層の下に配置されることにより、例えば暖機運転時での、Pd、Ptによるアンモニア(NH)の亜酸化窒素(NO)への酸化を防ぎつつ、RhによりNOxを浄化することができる。
【0034】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層及び上流側コート層の幅は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層及び上流側コート層の幅がそれぞれ異なる場合、第1の触媒コート層の幅の方が長くてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層及び上流側コート層の幅がそれぞれ異なる場合、上流側コート層の幅の方が長くてもよい。
【0035】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層及び上流側コート層の幅がそれぞれ異なる場合、上流側コート層の幅の方が長いことが好ましい。
【0036】
上流側コート層の幅が第1の触媒コート層の幅より長いことにより、Pd及びPtの活性と比較して、Rhの活性を高くし、より有効なRh活用を実現することができる。
【0037】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と下流側コート層とは、基材上の全体において一緒になって単層を形成していてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と下流側コート層とは、重なっていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層は、下流側コート層の上に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層は、下流側コート層の下に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層及び下流側コート層の互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常5%~30%である。
【0038】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層は、下流側コート層と重ならないことが好ましい。
【0039】
第1の触媒コート層が下流側コート層と重ならないことにより、第1の触媒コート層中のPd及び/又はPtと下流側コート層中のRhとが合金化することを防ぐことができる。
【0040】
本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とは、基材上の全体において一緒になって単層を形成していてもよい。
【0041】
本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とは、重なっていてもよい。本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の上に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の下に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層及び下流側コート層の互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常5%~30%である。
【0042】
本発明の第1の実施形態では、上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、下流側コート層の上に配置されることが好ましい。
【0043】
上流側コート層が下流側コート層の上に配置されることにより、排ガスが上流側コート層による雰囲気緩和の後で下流側コート層に導入されるため、その結果、下流側コート層をより有効に活用することができる。
【0044】
本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、第1の触媒コート層と下流側コート層とが接しないように、第1の触媒コート層の上、且つ下流側コート層の下に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、上流側コート層は、第1の触媒コート層と下流側コート層とが接しないように、第1の触媒コート層の下、且つ下流側コート層の上に配置されていてもよい。本発明の第1の実施形態では、第1の触媒コート層と上流側コート層と下流側コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層と上流側コート層と下流側コート層との互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常5%~30%である。
【0045】
本発明の第1の実施形態では、上流側コート層により第1の触媒コート層と下流側コート層とが接しないことにより、第1の触媒コート層中のPd及び/又はPtと下流側コート層中のRhとが合金化することを防ぐことができる。
【0046】
本発明の第1の実施形態において、第2の触媒コート層が前記構成をしていることにより、当該排ガス浄化用触媒を、特に、スタートアップ触媒(S/C、スタートアップコンバータ等とも称される)及びアンダーフロア触媒(UF/C、アンダーフロアコンバータ、床下触媒等とも称される)を含む二触媒システムにおいて、S/Cに使用した場合に、暖機運転時等の高濃度の排ガスが存在し得る雰囲気でも排ガスを効率よく浄化することができる。
【0047】
図1~6に、本発明の第1の実施形態の例を示す。
【0048】
図1に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2及び下流側コート層3は、基材1上の全体において一緒になって単層を形成している、と、第2の触媒コート層2及び3における上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅より短い、とからなる。
【0049】
図1に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒には、上流側コート層2と下流側コート層3とが互いに重なる部分(ラップ部分)が存在しない。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、最も有効なRhの活用が実現できる。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、より良好な浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0050】
図2に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2と下流側コート層3とは重なっており、当該重なる部分において、上流側コート層2は、下流側コート層3の下に配置されている、と、第2の触媒コート層2及び3の上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅より短い、とからなる。
【0051】
図2に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒には、Rhの有効活用部分を低減し得る上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分が存在する。一方で、当該ラップ部分は、十分なOSC性能を担保する。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、良好な浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0052】
図3に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2と下流側コート層3とは重なっており、当該重なる部分において、上流側コート層2は、下流側コート層3の上に配置されている、と、第2の触媒コート層2及び3の上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅より短い、とからなる。
【0053】
図3に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒には、Rhの有効活用部分を低減し得る上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分が存在する。一方で、当該ラップ部分は、十分なOSC性能を担保し、さらに、当該ラップ部分では、上流側コート層2が、排ガスの雰囲気緩和を行い、下流側コート層3をより有効に活用する。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、より良好な浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0054】
図4に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2と下流側コート層3とは重なっており、当該重なる部分において、上流側コート層2は、下流側コート層3の下に配置されている、と、第2の触媒コート層2及び3の上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅より長く、第1の触媒コート層4と上流側コート層2と下流側コート層3とが重なる部分が存在し、当該重なる部分において、第1の触媒コート層4は、上流側コート層2及び下流側コート層3の上に配置されている、とからなる。
【0055】
図4に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒では、上流側コート層2が第1の触媒コート層4又は下流側コート層3に覆われているため、排ガスの上流側コート層2への接触頻度が低下し、上流側コート層2の雰囲気緩和能が低下する。一方で、上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分は、十分なOSC性能を担保する。また、第1の触媒コート層4及び下流側コート層3のラップ部分では、第1の触媒コート層4が、排ガスの浄化、特にHCを効率的に浄化し、下流側コート層3中のRhの被毒を抑制する。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0056】
図5に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2及び下流側コート層3は、基材1上の全体において一緒になって単層を形成している、と、第2の触媒コート層2及び3の上流側コート層2上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4、ここで、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅と同じである、とからなる。
【0057】
図5に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒では、上流側コート層2が第1の触媒コート層4に覆われているため、排ガスの上流側コート層2への接触頻度が低下し、上流側コート層2の雰囲気緩和能が低下する。一方で、上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分が存在しないため、有効なRhの活用が実現できる。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0058】
図6に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層2~4とを有する。触媒コート層2~4は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4と、第1の触媒コート層4及び基材1上に配置されており、且つ排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層2、及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層3を有する第2の触媒コート層2及び3、ここで、上流側コート層2及び下流側コート層3は、基材1上の全体において一緒になって単層を形成しており、第1の触媒コート層4の幅は、上流側コート層2の幅より短い、とからなる。
【0059】
図6に示す本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒では、第1の触媒コート層4が上流側コート層2に覆われているため、排ガスの第1の触媒コート層4への接触頻度が低下し、第1の触媒コート層4の浄化性能が低下する。一方で、上流側コート層2及び下流側コート層3のラップ部分が存在しないため、有効なRhの活用が実現できる。また、上流側コート層2の向上された排ガスの雰囲気緩和により、高いOSC性能を確保できる。したがって、当該排ガス浄化用触媒では、浄化性能とOSC性能との両立が達成できる。
【0060】
・第2の実施形態
本発明の第2の実施形態では、第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている。
【0061】
本発明の第2の実施形態では、第1の触媒コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常15%~50%、好ましくは15%~35%である。
【0062】
本発明の第2の実施形態において、第1の触媒コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばPd、Ptの高密度化によるPd、Ptの凝集を抑制しつつ、Pd、Ptと排ガス中の有害成分、例えばHCとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0063】
本発明の第2の実施形態では、第2の触媒コート層の幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常65%~95%、好ましくは80%~95%である。
【0064】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層の幅が前記範囲であることにより、幅が短すぎることによる触媒金属同士の凝集、例えばRhの高密度化によるRhの凝集を抑制しつつ、Rhと排ガス中の有害成分、例えばNOxとの接触頻度を向上させることができ、排ガス浄化性能を向上することができる。
【0065】
本発明の第2の実施形態では、第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とは、重なっていてもよい。
【0066】
本発明の第2の実施形態では、第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層は、第2の触媒コート層の上に配置されていてもよい。
【0067】
本発明の第2の実施形態において、第1の触媒コート層が第2の触媒コート層の上に配置されていることにより、第1の触媒コート層中に含まれるPd、Ptにより排ガス中の有害成分、特にHCを浄化した後に、上流側コート層中に含まれるRhにより有害成分、特にNOxを浄化することができる。
【0068】
本発明の第2の実施形態では、第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層は、第2の触媒コート層の下に配置されていてもよい。
【0069】
本発明の第2の実施形態において、第1の触媒コート層が第2の触媒コート層の下に配置されていることにより、例えば暖機運転時での、Pd、Ptによるアンモニア(NH)の亜酸化窒素(NO)への酸化を防ぎつつ、RhによりNOxを浄化することができる。
【0070】
本発明の第2の実施形態では、第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とが重なる場合、当該重なる部分において、第1の触媒コート層及び第2の触媒コート層の互いに重なり合う領域のラップ幅は、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、通常5%~30%、好ましくは10%~20%である。
【0071】
本発明の第2の実施形態において、ラップ幅が前記範囲になることにより、Pd及び/又はPtとRhとの合金形成を抑制しつつ、排ガスを効率的に浄化することができる。
【0072】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層が前記構成をしていることにより、当該排ガス浄化用触媒を、特に、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおいて、S/Cで浄化しきれない低濃度の排ガスを浄化する働きを有するUF/Cに使用した場合に、S/Cにおける排ガス浄化により酸素濃度がS/Cでの雰囲気と比較して低くなった(酸素が不足している)雰囲気でも排ガスを効率よく浄化することができる。
【0073】
図7及び8に、本発明の第2の実施形態の例を示す。
【0074】
図7に示す本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層4及び5とを有する。触媒コート層4及び5は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている第2の触媒コート層5とからなり、ここで、第1の触媒コート層4と第2の触媒コート層5とは重なっており、当該重なる部分において、第1の触媒コート層4は、第2の触媒コート層5の上に配置されており、第1の触媒コート層4の幅は、第2の触媒コート層5の幅より短い。
【0075】
図7に示す本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒では、排ガスの第1の触媒コート層4への接触頻度が高いため、両立させた触媒性能及びOSC性能の中でも、特に触媒性能を向上させることができる。
【0076】
図8に示す本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒は、基材1と該基材1上にコートされている触媒コート層4及び5とを有する。触媒コート層4及び5は、基材1上に配置されている排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている第1の触媒コート層4と、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている第2の触媒コート層5とからなり、ここで、第1の触媒コート層4と第2の触媒コート層5とは重なっており、当該重なる部分において、第1の触媒コート層4は、第2の触媒コート層5の下に配置されており、第1の触媒コート層4の幅は、第2の触媒コート層5の幅より短い。
【0077】
図7に示す本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒では、排ガスの第2の触媒コート層5への接触頻度が高いため、両立させた触媒性能及びOSC性能の中でも、特にOSC性能を向上させることができる。
【0078】
本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態において、触媒コート層は、最上層において第1の触媒コート層と、第2の触媒コート層とを含む限り、第1の触媒コート層と、第2の触媒コート層とからなる層のみからなるものであっても、あるいは、第1の触媒コート層と、第2の触媒コート層とからなる層の下に、一層以上、すなわち一層、二層、三層、又は四層以上の層(下層触媒コート層)を有していてもよい。下層触媒コート層の組成及び構造は限定されず、第1の触媒コート層及び/又は第2の触媒コート層と同様のものであっても、あるいは、いずれとも異なるものであってもよい。さらに、下層触媒コート層は必ずしも排ガス浄化用触媒の基材全体に亘って均一でなくてもよく、最上層のように排ガス流れ方向に対して上流側と下流側で領域ごとに異なる組成及び構造を有していてもよい。
【0079】
触媒コート層が第1の触媒コート層と第2の触媒コート層とを有することで、第1の触媒コート層でのHCの浄化及び第2の触媒コート層でのNOxの浄化を効率よく行うことができる。
【0080】
(第1の触媒コート層)
第1の触媒コート層は、触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む。
【0081】
Pd及びPtは、HCやCOを燃焼浄化する能力が高く、有害成分の浄化性能に関しては同様の性能を有するため、互換性のある貴金属として扱われ得る。
【0082】
したがって、例えば、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおけるS/Cで浄化しきれない低濃度の排ガスを浄化する働きを有するUF/Cとして本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒を使用する場合、第1の触媒コート層中の触媒金属としては、Pd及び/又はPtを使用することができ、好ましくはコストの観点から有利になり得るPtを使用することができる。
【0083】
一方で、排ガス浄化用触媒において良好な暖機性が求められる場合、Ptは、Pdと比較して耐久後にシンタリングしやすく、その結果、暖機性能を低下させ得ることから、Pdを使用することが好ましい。
【0084】
したがって、例えば、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおける高濃度の排ガスを浄化するS/Cとして本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を使用する場合、第1の触媒コート層中の触媒金属としては、Pdを使用することが好ましい。
【0085】
第1の触媒コート層に含まれる触媒金属としてのPd及び/又はPtの含有量は、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.2g~10g、好ましくは0.5g~7.0gである。なお、第1の触媒コート層に含まれる触媒金属としてのPd及び/又はPtの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての触媒金属前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0086】
第1の触媒コート層が触媒金属としてのPd及び/又はPtを含むこと、すなわち、上流側、つまり排ガス浄化用触媒前部にPd及び/又はPtを含む第1の触媒コート層を配置することで、Pd、Ptの高密度化による着火性向上により、排ガス、特にHCの浄化性能が向上する。
【0087】
第1の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる他の貴金属、例えばRh、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)及びルテニウム(Ru)からなる群から選択される少なくとも一種をさらに含んでいてもよい。
【0088】
第1の触媒コート層に含まれる触媒金属としてのPd及び/又はPt及び場合により他の貴金属は、そのままでも排ガス浄化用触媒として機能するが、本発明の排ガス浄化用触媒に任意選択的に含まれる担体粒子に担持されていることが好ましい。
【0089】
触媒金属としてのPd及び/又はPt及び場合により他の貴金属が担持される担体粒子は、限定されないが、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に担体粒子として用いられる任意の金属酸化物でよい。
【0090】
したがって、第1の触媒コート層は、担体粒子をさらに含んでいてもよい。担体粒子としては、金属酸化物、例えば、シリカ、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア、セリア、アルミナ、チタニア(TiO)、イットリア(Y)、酸化ネオジム(Nd)、酸化ランタン(La)及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)並びにそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。なお、複合酸化物、例えばAZ、CZ及びACZ中の各酸化物の比率は限定されず、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる比率でよい。CZ及びACZとしては、例えば第2の触媒コート層の項目で説明するCZ及びACZを用いることができる。
【0091】
例えば、セリアは、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、リッチ雰囲気で酸素を放出するOSC特性を有するため、排ガス浄化用触媒内をストイキ雰囲気に保つことができ、アルミナ、ジルコニア、他の金属酸化物は、添加することにより担体の耐久性を高めることができる。
【0092】
前記の担体粒子の特性によれば、選択した担体粒子の種類、組成、組み合わせとその比率、及び/又は量によって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能、特に、HC浄化性能が向上する可能性があることを理解されたい。
【0093】
触媒金属としてのPd及び/又はPt及び場合により他の貴金属が、前記担体粒子に担持されている場合には、担体粒子の比表面積が大きいことから、排ガスと触媒金属との接触面を大きくすることができる。これにより、排ガス浄化用触媒の性能を向上させることができる。
【0094】
触媒金属としてのPd及び/又はPt及び場合により他の貴金属の担体粒子への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。
【0095】
第1の触媒コート層中の担体粒子の含有量は、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~200g、好ましくは20g~100g、より好ましくは40g~100gである。なお、第1の触媒コート層に含まれる担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0096】
第1の触媒コート層は、主として触媒金属としてのPd及び/又はPt、場合により他の貴金属、並びに当該触媒金属としてのPd及び/又はPt及び他の貴金属を担持している担体粒子から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)等の希土類元素、鉄(Fe)等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、触媒金属等を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、触媒金属と同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0097】
第1の触媒コート層中の他の成分の含有量は、存在する場合、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~100g、好ましくは20g~100g、より好ましくは40g~100gである。なお、第1の触媒コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0098】
第1触媒コート層中には、空隙を形成させることもできる。空隙を形成させる方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において公知の技術を使用することができ、具体的には限定されない。
【0099】
第1の触媒コート層のコート量は、限定されないが、基材の第1の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常40g~200g、好ましくは70g~200gである。なお、第1の触媒コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0100】
第1の触媒コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。第1の触媒コート層の厚さは、例えば走査電子顕微鏡(SEM)等で測定することができる。
【0101】
第1の触媒コート層中の各材料の量及び第1の触媒コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0102】
前記で説明した第1の触媒コート層の構成は、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態のいずれにおいても使用することができる。
【0103】
(第2の触媒コート層)
・第1の実施形態
本発明の第1の実施形態では、第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層及び排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層を有し、上流側コート層は、触媒金属としてのRhと、下記で詳細を説明するOSC材とを含み、下流側コート層は、触媒金属としてのRhと、下記で詳細を説明するOSC材とを含む。
【0104】
上流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、好ましくは0.1g~0.8gである。なお、上流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのRh前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0105】
上流側コート層がRhを前記含有量で含むことで、上流側コート層が第1の触媒コート層の下に配置されている場合、第1の触媒コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができ、上流側コート層が第1の触媒コート層の上に配置されている場合、暖機運転時での、Pd、Ptによるアンモニア(NH)の亜酸化窒素(NO)への酸化の前に、RhによりNOxを浄化することができる。
【0106】
下流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、好ましくは0.2g~0.8gである。なお、下流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのRh前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0107】
下流側コート層がRhを前記含有量で含むことで、上流側に存在する第1の触媒コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。
【0108】
下流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、上流側コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量と比較して高いことが好ましい。
【0109】
下流側コート層のRh含有量が上流側コート層のRh含有量よりも高いことにより、上流側コート層と比較して低温になりやすい下流側コート層をより有効活用することができる。
【0110】
上流側コート層及び下流側コート層は、それぞれ、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる他の貴金属、例えばPd、Pt、金、銀、イリジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含んでいてもよい。
【0111】
上流側コート層及び下流側コート層に含まれる触媒金属としてのRh及び場合により他の貴金属は、そのままでも排ガス浄化用触媒として機能するが、下記で詳細を説明するOSC材、本発明の排ガス浄化用触媒に任意選択的に含まれる担体粒子に担持されていることが好ましい。
【0112】
触媒金属としてのRh及び場合により他の貴金属が担持される担体粒子は、限定されないが、下記で詳細を説明するOSC材や、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に担体粒子として用いられる任意の金属酸化物でよい。
【0113】
したがって、第2の触媒コート層、すなわち上流側コート層及び下流側コート層は、それぞれ、担体粒子をさらに含んでいてもよい。担体粒子としては、金属酸化物、例えば、シリカ、酸化マグネシウム、ジルコニア、セリア、アルミナ、チタニア、イットリア、酸化ネオジム、酸化ランタン及びそれらの複合酸化物や固溶体、例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物(AZ)、下記で詳細を説明するOSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)等、並びにそれらの二種以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0114】
酸性担体、例えば、シリカでは、NOxを還元する触媒金属との相性がよい。塩基性担体、例えば、酸化マグネシウムでは、NOxを吸蔵するカリウムやバリウムとの相性がよい。ジルコニアは、他の担体粒子がシンタリングを生じるような高温下において、当該他の担体粒子のシンタリングを抑制し、かつ触媒金属としてのRhと組み合わせることによって、水蒸気改質反応を生じてHを生成し、NOxの還元を効率よく行うことができる。酸塩基両性担体、例えば、アルミナは高い比表面積を有するため、これをNOxの吸蔵及び還元を効率よく行うのに用いることができる。チタニアは、触媒金属の硫黄被毒を抑制する効果を発揮することができる。また、アルミナ、ジルコニア、他の金属酸化物は、添加することにより担体の耐久性を高めることができる。
【0115】
前記の担体粒子の特性によれば、選択した担体粒子の種類、組成、組み合わせとその比率、及び/又は量によって、本発明の排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能、特に、NOx浄化性能が向上する可能性があることを理解されたい。
【0116】
触媒金属としてのRh及び場合により他の貴金属が、前記担体粒子に担持されている場合には、担体粒子の比表面積が大きいことから、排ガスと触媒金属との接触面を大きくすることができる。これにより、排ガス浄化用触媒の性能を向上させることができる。
【0117】
触媒金属としてのRh及び場合により他の貴金属の担体粒子への担持方法は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる方法を使用することができる。
【0118】
上流側コート層及び下流側コート層中の担体粒子(担体粒子が下記で詳細を説明するOSC材を含む場合、これらのOSC材の含有量を除く)の含有量は、限定されない。上流側コート層中の担体粒子の含有量は、例えば、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~100g、好ましくは15g~80gである。下流側コート層中の担体粒子の含有量は、例えば、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常25g~170g、好ましくは30g~100gである。なお、上流側コート層又は下流側コート層に含まれ得る担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0119】
上流側コート層は、比表面積が40m/g超である高比表面積OSC材、比表面積が4m/g~40m/gである中比表面積OSC材、及び比表面積が4m/g未満である低比表面積OSC材からなる群から選択される少なくとも1種のOSC材を含む。下流側コート層は、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材からなる群から選択される少なくとも1種のOSC材を含む。ただし、上流側コート層及び下流側コート層は、合わせて、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材の3種のOSC材を含む。
【0120】
なお、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材は、それぞれ2種以上のOSC材からなっていてもよい。例えば、高比表面積OSC材は、第1の高比表面積OSC材及び第2の高比表面積OSC材からなっていてもよい。例えば、中比表面積OSC材は、第1の中比表面積OSC材及び第2の中比表面積OSC材からなっていてもよい。例えば、低比表面積OSC材は、第1の低比表面積OSC材及び第2の低比表面積OSC材からなっていてもよい。
【0121】
本発明において、比表面積は、BET法により測定された各材料単体での比表面積(BET比表面積)を指す。
【0122】
高比表面積OSC材の比表面積は、60m/g~90m/gが好ましい。
【0123】
中比表面積OSC材の比表面積は、30m/g~40m/gが好ましい。
【0124】
低比表面積OSC材の比表面積は、0.5m/g~2.0m/gが好ましい。
【0125】
高比表面積OSC材としては、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)、例えば蛍石構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物(CeZrO)等が挙げられる。
【0126】
アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物は、アルミナ中にセリア及びジルコニアが分散しており、セリア及びジルコニアの一部がセリア-ジルコニア固溶体を形成している複合酸化物であり、透過電子顕微鏡(TEM)等で観察可能である。なお、セリア及びジルコニアがセリア-ジルコニア固溶体を形成していることは、例えばX線回折(XRD)により確認することができる。
【0127】
高比表面積OSC材としてアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物はセリア-ジルコニア系複合酸化物より酸素吸放出速度が速いため、十分なOSC性能の確保が実現できる。
【0128】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の組成は、Ce/Zrモル比が通常0.6以下、例えば0.1~0.6、好ましくは0.15~0.55であり、アルミナ(Al)成分の含有量が、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物総重量に対して、通常40重量%~70重量%である。なお、高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の組成は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の組成に依存する。
【0129】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の組成を前記範囲にすることで、アルミナによる粒子成長の抑制(耐熱性向上、比表面積の確保)、セリアによる酸素吸放出性能(OSC性能)の確保、ジルコニアによるセリアの安定化作用の確保の効果を十分に得ることができる。
【0130】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム、ランタン、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられる。希土類元素としては、イットリウム及びランタンが好ましい。希土類元素の含有量は、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物総重量に対して、酸化物として、通常2重量%~6重量%である。
【0131】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物が希土類元素を含むことで、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSC性能を向上させたりすることができる。
【0132】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、高比表面積OSC材としての比表面積を有する限り限定されない。高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、限定されないが、走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)の平均値で、通常1nm~500nm未満、好ましくは10nm~100nmである。
【0133】
また、高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、限定されない。高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、限定されないが、通常10nm未満、例えば2nm~10nmである。なお、セリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、例えば、XRDの半価幅で測定することができる。
【0134】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の平均粒径及びアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径を前記範囲にすることで、セリアによるOSC性能の確保の効果を十分に得ることができる。
【0135】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物は、例えば、アルコキシド法又は共沈法によって調製することができる。アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物をアルコキシド法又は共沈法で調製することにより、均一で微細な一次粒子からなる複合酸化物を調製することができ、かつセリア-ジルコニア固溶体を含む複合酸化物を容易に調製することができる。
【0136】
アルコキシド法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属アルコキシドを混合し、加水分解後に焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を金属アルコキシドとして用いなくても、その少なくとも一種を金属アルコキシドとして用いれば、残りの金属は硝酸塩やアセチルアセテート塩等の溶液として用いることもできる。
【0137】
この金属アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、ブトキシド等のいずれでもよいが、溶媒であるアルコールに対する溶解度が高いものが好ましい。なお、溶媒であるアルコールに関しても任意のものを使用できる。
【0138】
共沈法では、例えばアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素のすべての金属の硝酸塩等の水溶性の塩を混合し、アンモニア水等で水酸化物として共沈させ、それを焼成することによりアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を調製することができる。またアルミニウム、セリウム、ジルコニウム、及び場合により希土類元素の全部を水溶性の塩として用いずとも、その少なくとも一種を水溶性の塩として用いれば、残りの金属を金属粉末又は酸化物粉末等の固体として用いることもできる。
【0139】
このようにして得られたアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物は、予め熱処理することが好ましい。アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を予め熱処理することにより、粒子の過度の結晶成長を抑えつつ、耐久後のOSC性能の低下を一層抑制することができる。
【0140】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の比表面積は、アルコキシド法や共沈法における、反応条件、例えば材料濃度、添加速度、反応時間及び反応温度、焼成温度及び時間、並びに粉砕条件等、特に焼成温度及び時間並びに粉砕条件により調整することができる。通常、焼成温度を高くするほど比表面積は小さくなり、また、焼成時間を長くするほど比表面積は小さくなる。高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されないが、大気中、通常500℃~800℃で、通常0.5時間~10時間である。
【0141】
高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物としては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開平10-202102号公報、特開2001-232199号公報、特開2012-187518号公報に記載されているものであってよい。
【0142】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物では、セリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率が、モル比([セリウム]:[ジルコニウム])で、通常43:57~48:52の範囲である。なお、高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の組成は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の組成に依存する。
【0143】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとの含有比率が前記範囲であることで、耐熱性がより十分に高く、長時間高温に晒された後においてもより十分に優れたOSC性能を発揮することができる。
【0144】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物は、セリウム以外の希土類元素から選択される1種以上の元素をさらに含んでいてもよい。希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。希土類元素としては、イットリウム及びランタンが好ましい。希土類元素の含有量は、セリア-ジルコニア系複合酸化物総重量に対して、酸化物として、通常1重量%~20重量%、好ましくは3重量%~7重量%である。
【0145】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物が希土類元素を含むことにより、セリア-ジルコニア系複合酸化物の耐熱性を向上させたり、OSC性能を向上させたりすることができる。
【0146】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、高比表面積OSC材としての比表面積を有する限り限定されない。
【0147】
また、高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、限定されない。なお、セリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、例えば、XRDの半価幅で測定することができる。
【0148】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物は、従来排ガス浄化触媒において助触媒(酸素貯蔵材)として用いられている材料であり、その詳細は当業者には公知である。高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物は、好ましくはセリアとジルコニアが固溶体を形成している。高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物は、アルコキシド法又は共沈法で調製することができ、共沈法であれば、例えばセリウム塩(硝酸セリウム等)とジルコニウム塩(オキシ硝酸ジルコニウム等)を溶解させた水溶液に、アンモニア水を加えて共沈殿を生成させ、得られた沈殿物を乾燥させた後に焼成し、さらに通常400kgf/cm~3500kgf/cmの圧力で加圧成型し、通常1450℃~2000℃の温度条件で還元処理することにより調製することができる。
【0149】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の比表面積は、アルコキシド法や共沈法における、反応条件、例えば材料濃度、添加速度、反応時間及び反応温度、焼成温度及び時間、並びに粉砕条件等、特に焼成温度及び時間並びに粉砕条件により調整することができる。通常、焼成温度を高くするほど比表面積は小さくなり、また、焼成時間を長くするほど比表面積は小さくなる。高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物を調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されない。
【0150】
高比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物としては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開2011-219329号公報に記載されているものであってよい。
【0151】
中比表面積OSC材としては、アルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)、例えば蛍石構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物(CeZrO)等が挙げられる。
【0152】
中比表面積OSC材として使用され得るアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)及びセリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)は、比表面積及び当該比表面積により変化し得る特性以外の性質、例えば各成分の含有量等については、高比表面積OSC材として使用され得るアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物(ACZ)及びセリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)と同じであってよい。
【0153】
中比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及びセリア-ジルコニア系複合酸化物の比表面積は、アルコキシド法や共沈法における、反応条件、例えば材料濃度、添加速度、反応時間及び反応温度、焼成温度及び時間、並びに粉砕条件等、特に焼成温度及び時間並びに粉砕条件により調整することができる。通常、焼成温度を高くするほど比表面積は小さくなり、また、焼成時間を長くするほど比表面積は小さくなる。
【0154】
例えば、中比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、限定されないが、SEM又はTEMの平均値で、通常1nm~500nm、好ましくは10nm~100nmである。
【0155】
例えば、中比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物におけるセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、限定されないが、通常25nm未満、例えば10nm~25nmである。
【0156】
例えば、中比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物を調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されないが、大気中、通常800℃~1200℃で、通常0.5時間~10時間である。
【0157】
例えば、中比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の一次粒子の粒径(平均粒径)は、限定されないが、SEM又はTEMの平均値で、通常1nm~500nm、好ましくは10nm~100nmである。
【0158】
例えば、中比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶子径は、限定されないが、通常25nm未満、好ましくは10nm~25nmである。
【0159】
例えば、中比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物を調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されないが、大気中、通常800℃~1200℃で、通常0.5時間~10時間である。
【0160】
低比表面積OSC材としては、セリア-ジルコニア系複合酸化物(CZ)、例えばパイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物(CeZr、パイロクロアCZ)等を挙げることができる。
【0161】
セリア-ジルコニア系複合酸化物において「パイロクロア構造を有する」とは、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによるパイロクロア型の規則配列構造を有する結晶相(パイロクロア相)が構成されていることを意味する。セリウムイオン及びジルコニウムイオンは、その一部がプラセオジム等の追加の元素により置換されていてもよい。パイロクロア相の配列構造は、CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.5°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有することにより特定することができる。ここで、「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。また、回折線強度を求める際には、各回折線強度の値から、バックグラウンド値として2θ=10~12゜の平均回折線強度を差し引いて計算する。
【0162】
低比表面積OSC材としてのパイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物において、X線回折パターンのピーク強度比により求められる全結晶相に対するパイロクロア型に規則配列した結晶相の含有比率は50%以上、特に80%以上であることが好ましい。低比表面積OSC材としてのパイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物の調製方法は当業者に公知である。
【0163】
セリア-ジルコニア系複合酸化物のパイロクロア相(CeZr)は酸素欠陥サイトを有し、そのサイトに酸素原子が入り込むとパイロクロア相はκ相(CeZr)に相変化する。一方、κ相は酸素原子を放出することによりパイロクロア相に相変化することができる。セリア-ジルコニア系複合酸化物の酸素貯蔵能は、パイロクロア相とκ相との間で相互に相変化して酸素を吸放出することによるものである。
【0164】
ここで、セリア-ジルコニア系複合酸化物のκ相は、再配列により蛍石構造を有する結晶相(CeZrO:蛍石型相)に相変化することが知られており、リーン時、特に高温リーン時には、パイロクロアCZは、κ相を経て、蛍石型相に相変化しやすくなる。
【0165】
低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶相のCuKαを用いたX線回折(XRD)測定において、2θ=14.5°の回折線は規則相(κ相)の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線は規則相の(222)面に帰属する回折線とパイロクロア相を有しないセリア-ジルコニア固溶体の(111)面に帰属する回折線とが重なったものであるため、両者の回折線の強度比であるI(14/29)値を規則相の存在率を示す指標とすることができる。低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物における、大気中、1100℃で5時間加熱した後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=14.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比I(14/29)値は、良好な規則相の維持及び耐久試験後の酸素貯蔵能の観点から、好ましくは、0.017以上である。なお、κ相のPDFカード(PDF2:01-070-4048)及びパイロクロア相のPDFカード(PDF2:01-075-2694)に基づき、完全なκ相のI(14/29)値は0.04、完全なパイロクロア相のI(14/29)値は0.05と計算することができる。また、低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物の結晶相のCuKαを用いたXRD測定において、2θ=28.5゜の回折線はCeO単体の(111)面に帰属する回折線であるため、2θ=28.5゜の回折線と2θ=29゜の回折線の強度比であるI(28/29)値を、複合酸化物からCeOが分相している程度を示す指標とすることができる。低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物における、大気中、1100℃で5時間加熱した後のX線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる2θ=28.5°の回折線と2θ=29°の回折線との強度比I(28/29)値は、セリアの分相の抑制及び耐久試験後の酸素貯蔵能の観点から、好ましくは、0.05以下である。
【0166】
低比表面積OSC材としてのパイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物は、二次粒子径(D50)が3μm~7μmであり、好ましくは3μm~6μmであり、より好ましくは3μm~5μmである。低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZが、この範囲の二次粒子径(D50)を有すると、二次粒子径(D50)がこの範囲にないものと比較して、十分な耐熱性を有しつつ、高い酸素貯蔵容量を維持したまま、酸素吸放出速度を有意に向上させることができる。なお、蛍石構造を有するセリア-ジルコニア系複合酸化物では、二次粒子径と酸素吸放出速度との間にこのような関係がないため、パイロクロアCZにおいて二次粒子径(D50)を特定の範囲とすることで酸素吸放出速度が有意に向上することは、パイロクロアCZに特異的な予想外の効果である。パイロクロアCZでは、パイロクロア構造特有の酸素内部拡散が速い特性により二次粒子径の影響が非常に大きく、一方、トレードオフの関係にある耐熱性は、二次粒子径に対して酸素吸放出速度とは異なる感度を示し、十分に高い耐熱性が維持されるため、結果として、パイロクロアCZにおいて二次粒子径(D50)を特定の範囲とすることで、高い耐熱性を有しつつ、高い酸素貯蔵容量を維持したまま、酸素吸放出速度を有意に向上させることができると推測される。よって、パイロクロアCZが3μm~7μmの二次粒子径(D50)を有することにより、十分な耐熱性を有しつつ、酸素貯蔵容量及び酸素吸放出速度を両立でき、特に、酸素吸放出速度を有意に向上させることができる。
【0167】
ここで、「二次粒子」とは、一次粒子が集合したものであり、「一次粒子」とは、一般的に粉末を構成する最も小さい粒子のことをいう。一次粒子は、SEM又はTEM等により観察して判断することができる。低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZの一次粒子径は、通常、二次粒子径よりも小さく、低比表面積OSC材としての比表面積を有する限り限定されない。低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZの一次粒子の粒径(平均粒径)は、限定されない。ここで、一次粒子径(D50)とは、個数分布を測定した際の平均一次粒子径のことを意味する。一方、二次粒子径(D50)とは、二次粒子径が50%累積粒子径(メジアン径又はD50とも呼ばれる)であることを意味する。二次粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱法により測定して得られた体積基準粒度分布において、全体積を100%とした累積体積分布曲線における50%となる体積の粒子径(すなわち体積基準累積50%径)である。
【0168】
低比表面積OSC材としての特定の範囲の二次粒子径(D50)を有するパイロクロアCZは、例えば、原料を混合して沈殿を得、得られた沈殿を乾燥及び焼成し、粉砕して粉末を得、得られた粉末を加圧成型し、還元処理を施した後、所定の二次粒子径(D50)となるように粉砕することによって得られる。成型体の粉砕は、例えば、ボールミル、振動ミル、ストリームミル及びピンミル等によって行うことができる。
【0169】
低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZの比表面積は、特に焼成温度及び時間並びに粉砕条件により調整することができる。通常、焼成温度を高くするほど比表面積は小さくなり、また、焼成時間を長くするほど比表面積は小さくなる。低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物を調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されない。
【0170】
低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZにおいて、ジルコニウム(Zr)とセリウム(Ce)のモル比(Zr/Ce)は1.13<Zr/Ce<1.30である。
【0171】
低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZは、プラセオジムを含んでいてもよく、好ましくは、セリウム及びジルコニウムに加えてプラセオジムを含む。プラセオジムは、式:Pr11→3Pr+Oで表される還元反応のΔG(ギブズの自由エネルギー)が負であるため、ΔGが正である、式:2CeO→Ce+0.5Oで表されるCeOの還元反応を起こりやすくするものと考えられる。低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZがプラセオジムを含む場合、パイロクロアCZは、好ましくは、全陽イオン合計量に対して0.5モル%~5モル%のプラセオジムを含有し、また、Zrと(Ce+Pr)のモル比は、好ましくは1.13<Zr/(Ce+Pr)<1.30である。
【0172】
低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZは、セリウム及びジルコニウム以外の追加の元素として、プラセオジム以外の元素を含んでいてもよい。プラセオジム以外の追加の元素としては、限定されずに、例えば、セリウム及びプラセオジム以外の希土類元素やアルカリ土類金属が挙げられる。セリウム及びプラセオジム以外の希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、ランタン、ネオジム、イットリウム、スカンジウムが好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。追加の元素の含有量は、通常、パイロクロアCZの全陽イオン合計量に対して5モル%以下である。
【0173】
低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZとしては、当該技術分野において公知のもの、例えば、特開2018-038999号公報に記載されているものであってよい。
【0174】
例えば、低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZの一次粒子の粒径(平均粒径)は、限定されないが、SEM又はTEMの平均値で、通常1μm超、好ましくは1μm超~20μmである。
【0175】
例えば、低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZの結晶子径は、限定されないが、通常100nm超、例えば150nm~500nmである。
【0176】
例えば、低比表面積OSC材としてのパイロクロアCZを調製する場合、焼成温度及び時間は、限定されないが、大気中、通常1100℃~2000℃で、通常0.5時間~15時間である。
【0177】
上流側コート層に含まれる高比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~100g、好ましくは10g~80gである。なお、上流側コート層に含まれ得る高比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての高比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0178】
上流側コート層に含まれる中比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常0g~45g、好ましくは0gである。なお、上流側コート層に含まれ得る中比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての中比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0179】
上流側コート層に含まれる低比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常3g~25g、好ましくは5g~20gである。なお、上流側コート層に含まれ得る低比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての低比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0180】
下流側コート層に含まれる高比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常0g~80g、好ましくは0gである。なお、下流側コート層に含まれ得る高比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての高比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0181】
下流側コート層に含まれる中比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~80g、好ましくは40g~80gである。なお、下流側コート層に含まれ得る中比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての中比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0182】
下流側コート層に含まれる低比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常5g~40g、好ましくは20g~40gである。なお、下流側コート層に含まれ得る低比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての低比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0183】
上流側コート層は、高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことが好ましい。
【0184】
上流側コート層が高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことにより、本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒をS/Cとして使用した場合に、下流側と比較して比較的酸素濃度が高く、HCが堆積しにくい上流側において、NOxを効率よく浄化することができる。
【0185】
下流側コート層は、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことが好ましい。
【0186】
下流側コート層が中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことにより、本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒をS/Cとして使用した場合に、上流側と比較して比較的酸素濃度が低く、HCが堆積しやすい下流側において、比較的低めの比表面積を有するOSC材によりHCの堆積を防ぎつつ、NOxを効率よく浄化することができる。
【0187】
したがって、上流側コート層が、高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含み、下流側コート層が、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことにより、OSC性能と触媒性能とをより両立することができる。
【0188】
本発明の第1の実施形態では、高比表面積OSC材におけるセリアの量は、限定されないが、第2の触媒コート層全体(すなわち、上流側コート層及び下流側コート層)のセリア重量に対して、通常10重量%~40重量%、好ましくは20重量%~40重量%である。
【0189】
本発明の第1の実施形態では、中比表面積OSC材におけるセリアの量は、限定されないが、第2の触媒コート層全体のセリア重量に対して、通常10重量%~45重量%、好ましくは10重量%~40重量%、より好ましくは20重量%~40重量%である。
【0190】
本発明の第1の実施形態では、高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材におけるセリアの量は、限定されないが、第2の触媒コート層全体のセリア重量に対して、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0191】
本発明の第1の実施形態では、低比表面積OSC材におけるセリアの量は、限定されないが、第2の触媒コート層全体のセリア重量に対して、通常20重量%~80重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは40重量%~60重量%である。
【0192】
ここで、本発明の第1の実施形態において、第2の触媒コート層に高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材以外にセリアを含有する化合物が含まれない場合、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量すべてを足し合せると100重量%になる。
【0193】
第2の触媒コート層における各OSC材のセリア量が前記範囲になることにより、より両立した、低温及び高温の両方のOSC性能と、排ガス浄化性能、特にNOx浄化性能とを確立することができる。
【0194】
具体的には、本発明の第1の実施形態において、第2の触媒コート層(上流側コート層及び下流側コート層)がRhと共に比表面積が異なる3種類のOSC材を含むことで、RhのHC被毒の抑制、特に(1)空燃比(A/F)がリッチであり、かつ(2)排ガス浄化用触媒の低体格化に伴う加速時等の吸入空気量が多い(高吸入空気量又は高Ga:高空間速度又は高SVと同義)条件下におけるRhのHC被毒の抑制と、低温及び高温のOSC性能の確保とを両立させて、触媒性能、特にNOx浄化性能を向上させた排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0195】
第2の触媒コート層を構成する上流側コート層及び下流側コート層は、それぞれ、主として触媒金属としてのRh、場合により他の貴金属、当該触媒金属としてのRh及び他の貴金属を担持している担体粒子、並びに前記のOSC材から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、バリウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、ランタン、イットリウム、セリウム等の希土類元素、鉄等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、Rh等を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、Rh等と同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0196】
第2の触媒コート層を構成する上流側コート層及び下流側コート層それぞれにおいて、コート層中の他の成分の含有量は、存在する場合、限定されないが、基材の上流側コート層又は下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~120g、好ましくは80g~120gである。なお、上流側コート層又は下流側コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0197】
上流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の上流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常30g~250g、好ましくは50g~250gである。なお、上流側コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0198】
下流側コート層のコート量は、限定されないが、基材の下流側コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常50g~250g、好ましくは100g~250gである。なお、下流側コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0199】
上流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。上流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0200】
下流側コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。下流側コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0201】
上流側コート層及び下流側コート層中の各材料の量並びに上流側コート層及び下流側コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0202】
・第2の実施形態
本発明の第2の実施形態では、第2の触媒コート層は、触媒金属としてのRhと、下記で詳細を説明する比表面積が異なる3種類のOSC材とを含む。
【0203】
第2の触媒コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、触媒金属の金属換算で、通常0.05g~1.0g、好ましくは0.2g~0.8gである。なお、第2の触媒コート層に含まれる触媒金属としてのRhの含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としてのRh前駆体の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0204】
第2の触媒コート層がRhを前記含有量で含むことで、第1の触媒コート層でHCが十分に浄化された雰囲気の下、Rhが、HC被毒されることなく、NOx浄化性能を十分に発揮することができる。
【0205】
第2の触媒コート層は、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に用いられる他の貴金属、例えばPd、Pt、金、銀、イリジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも一種をさらに含んでいてもよい。
【0206】
第2の触媒コート層に含まれるRh及び場合により他の貴金属の各触媒コート層での態様は、第1の実施形態において説明したRh及び場合により他の貴金属の態様、すなわちそのままの態様、担体粒子に担持された態様等と同様にすることができる。第2の触媒コート層に含まれるRh及び場合により他の貴金属が担体粒子に担持される場合、第2の触媒コート層中の担体粒子の含有量(担体粒子が前記の第1の実施形態において説明したOSC材を含む場合、これらのOSC材の含有量を除く)は、例えば、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~170g、好ましくは50g~140gである。なお、第2の触媒コート層に含まれ得る担体粒子の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての担体粒子の添加量に依存する。
【0207】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層中に含まれるOSC材は、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材からなる。ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材は、前記の第1の実施形態において説明した通りである。
【0208】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層が、比表面積が異なる3種類のOSC材を含むことにより、OSC性能と、排ガス浄化性能、特にNOx浄化性能とを両立することができる。
【0209】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層に含まれる高比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~80g、好ましくは20g~40gである。なお、第2の触媒コート層に含まれる高比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての高比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0210】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層に含まれる中比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常10g~40g、好ましくは20g~40gである。なお、第2の触媒コート層に含まれる中比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての中比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0211】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層に含まれる低比表面積OSC材の含有量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常5g~30g、好ましくは10g~30gである。なお、第2の触媒コート層に含まれる低比表面積OSC材の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての低比表面積OSC材の添加量に依存する。
【0212】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層が、比表面積が異なる3種類のOSC材を前記の含有量で含むことにより、より両立した、低温及び高温の両方のOSC性能と、排ガス浄化性能、特にNOx浄化性能とを確立することができる。
【0213】
具体的には、本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層がRhと共に比表面積が異なる3種類のOSC材を含むことで、RhのHC被毒の抑制、特に(1)空燃比(A/F)がリッチであり、かつ(2)排ガス浄化用触媒の低体格化に伴う加速時等の吸入空気量が多い(高吸入空気量又は高Ga:高空間速度又は高SVと同義)条件下におけるRhのHC被毒の抑制と、OSC性能の確保とを両立させて、触媒性能、特にNOx浄化性能を向上させた排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0214】
本発明の第2の実施形態において、第2の触媒コート層は、主として触媒金属としてのRh、場合により他の貴金属、当該触媒金属としてのRh及び他の貴金属を担持している担体粒子、並びに前記のOSC材から構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、この種の用途の触媒コート層に用いられる他の金属酸化物や添加剤等、具体的にはカリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、バリウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、ランタン、イットリウム、セリウム等の希土類元素、鉄等の遷移金属、前記担体粒子として挙げた金属酸化物(すなわち、Rh等を担持していない金属酸化物)等の一種以上が挙げられる。他の成分は、そのままの形態でも、Rh等と同様に、担体粒子に担持した形態でもよい。
【0215】
第2の触媒コート層中の他の成分の含有量は、存在する場合、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常20g~120g、好ましくは80g~120gである。なお、第2の触媒コート層に含まれ得る他の成分の含有量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料としての他の成分の添加量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0216】
第2の触媒コート層のコート量は、限定されないが、基材の第2の触媒コート層が塗布されている部分の容量1Lに対して、通常50g~250g、好ましくは150g~250gである。なお、第2の触媒コート層のコート量は、排ガス浄化用触媒製造時の材料の総重量(揮発させる成分を除く)に依存する。
【0217】
第2の触媒コート層の厚さは、限定されないが、平均の厚さで、通常5μm~50μm、好ましくは10μm~30μmである。第2の触媒コート層の厚さは、例えばSEM等で測定することができる。
【0218】
第2の触媒コート層中の各材料の量及び第2の触媒コート層の厚さが前記範囲になることにより、排ガス浄化用触媒における圧力損失と触媒性能と耐久性のバランスを良好に保つことができる。
【0219】
(排ガス浄化用触媒の製造方法)
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記で説明した排ガス浄化用触媒の構成成分を使用すること以外は、公知のコーティング技術を使用して製造することができる。
【0220】
例えば、本発明の、基材と該基材上にコートされている第1の触媒コート層及び第2の触媒コート層を含む触媒コート層とを有する排ガス浄化用触媒は、(i)触媒金属としてのPd及び/又はPtを含む触媒金属前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、(ii)触媒金属としてのRhを含むRh前駆体と溶媒と高比表面積OSC材と中比表面積OSC材と低比表面積OSC材とを含む第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程と、(iii)(i)の工程で調製した第1の触媒コート層用スラリーを排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から塗布して第1の触媒コート層を形成する工程と、(iv)(ii)の工程で調製した第2の触媒コート層用スラリーを塗布して第2の触媒コート層を形成する工程と、を含む、方法により製造することができる。
【0221】
ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材は、前記した通りである。
【0222】
・第1の実施形態
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(ii)の工程は、第2の触媒コート層用スラリーを調製する工程として、(ii-1)排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から形成されている下流側コート層用スラリーを調製する工程、及び(ii-2)排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から形成されている上流側コート層用スラリーを調製する工程を含む。さらに、(iv)の工程は、第2の触媒コート層を形成する工程として、(iv-1)(ii-1)の工程で調製した下流側コート層用スラリーを塗布して下流側コート層を形成する工程、及び(iv-2)(ii-2)の工程で調製した上流側コート層用スラリーを塗布して上流側コート層を形成する工程を含む。なお、(i)~(iv)の工程順序は、(i)の工程の後に(iii)の工程が実施され、(ii-1)の工程の後に(iv-1)の工程が実施され、(ii-2)の工程の後に(iv-2)の工程が実施されれば、限定されない。例えば、(i)→(ii-1)→(ii-2)→(iii)→(iv-1)→(iv-2)の順序以外にも、(ii-2)→(ii-1)→(iv-1)→(iv-2)→(i)→(iii)、(i)→(ii-1)→(ii-2)→(iv-1)→(iii)→(iv-2)、(ii-1)→(iv-1)→(ii-2)→(iv-2)→(i)→(iii)、(i)→(iii)→(ii-1)→(iv-1)→(ii-2)→(iv-2)等の順序を採用することができる。
【0223】
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(iii)の工程において、第1の触媒コート層用スラリーは、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、20%~50%まで塗布されることが好ましい。さらに、(iv-1)の工程において、下流側コート層用スラリーは、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%まで塗布されることが好ましい。また、(iv-2)の工程において、上流側コート層用スラリーは、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、30%~70%まで塗布されることが好ましい。
【0224】
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(ii-1)の工程は、Rh前駆体と溶媒と中比表面積OSC材と低比表面積OSC材とを含む下流側コート層用スラリーを調製する工程であることが好ましい。さらに、(ii-2)の工程は、Rh前駆体と溶媒と高比表面積OSC材と低比表面積OSC材とを含む上流側コート層用スラリーを調製する工程であることが好ましい。
【0225】
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(ii-1)及び(ii-2)の工程において、使用する高比表面積OSC材におけるセリアの量は、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%になることが好ましい。さらに、使用する中比表面積OSC材におけるセリアの量は、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、10重量%~40重量%になることが好ましい。また、使用する高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材におけるセリアの量は、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、60重量%以下になることが好ましい。さらに、使用する低比表面積OSC材におけるセリアの量は、第2の触媒コート層としての上流側コート層及び下流側コート層全体のセリア重量に対して、40重量%~80重量%になることが好ましい。ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量すべてを足し合せると、100重量%になるように調整される。
【0226】
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(i)の工程は、Pd前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程であることが好ましい。
【0227】
・第2の実施形態
本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(iv)の工程は、(ii)の工程で調製した第2の触媒コート層用スラリーを排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から塗布して第2の触媒コート層を形成する工程である。なお、(i)~(iv)の工程順序は、(i)の工程の後に(iii)の工程が実施され、(ii)の工程の後に(iv)の工程が実施されれば、限定されない。例えば、(i)→(ii)→(iii)→(iv)の順序以外にも、(ii)→(iv)→(i)→(iii)、(i)→(iii)→(ii)→(iv)等の順序を採用することができる。
【0228】
本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(iii)の工程において、第1の触媒コート層用スラリーは、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、15%~50%まで塗布されることが好ましい。さらに、(iv)の工程において、第2の触媒コート層用スラリーは、排ガス浄化用触媒における基材の全長の、65%~95%まで塗布されることが好ましい。
【0229】
本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、(i)の工程は、Pt前駆体と溶媒とを含む第1の触媒コート層用スラリーを調製する工程であることが好ましい。
【0230】
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、以下のように製造することができる。
【0231】
本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、まず、(ii-1)の工程として、下流側コート層を構成する材料、すなわちRh前駆体(例えばRhを含む塩(例えば硝酸塩)等)、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材からなる群から選択される1種以上のOSC材(例えば中比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及び低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物等)、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)、並びに場合によりさらなる担体粒子(例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物)及び添加剤(例えばバインダー)等を含む下流側コート層用の触媒コート層スラリーを調製する。続いて、(iv-1)の工程として、基材上において、下流側コート層を形成させる領域に、当該スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、下流側コート層を形成させる。続いて、(ii-2)の工程として、上流側コート層を構成する材料、すなわちRh前駆体(例えばRhを含む塩(例えば硝酸塩)等)、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材からなる群から選択される1種以上のOSC材(例えば高比表面積OSC材としてのアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及び低比表面積OSC材としてのセリア-ジルコニア系複合酸化物等)、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)、並びに場合によりさらなる担体粒子(例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物)及び添加剤(例えばバインダー)等を含む上流側コート層用の触媒コート層スラリーを調製する。次に、(iv-2)の工程として、下流側コート層を形成させた基材上において、上流側コート層を形成させる領域に、当該スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、上流側コート層を形成させる。続いて、(i)の工程として、第1の触媒コート層を構成する材料、すなわち触媒金属としてのPd及び/又はPtの前駆体(例えばPd及び/又はPtを含む塩(例えば硝酸塩)等、特に硝酸Pd)、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)、並びに場合により担体粒子(例えばアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物)及び添加剤(例えばバインダー)等を含む第1の触媒コート層用の触媒コート層スラリーを調製する。次に、(iii)の工程として、第2の触媒コート層(下流側コート層及び上流側コート層)を形成させた基材上において、第1の触媒コート層を形成させる領域(上流側コート層上)に、当該スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、第1の触媒コート層を形成させる。なお、本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法において、前記の通り、触媒コート層の形成順序は限定されず、第1の触媒コート層、上流側コート層、下流側コート層の順に、第1の触媒コート層、下流側コート層、上流側コート層の順に、上流側コート層、下流側コート層、第1の触媒コート層の順に、上流側コート層、第1の触媒コート層、下流側コート層の順に、又は下流側コート層、第1の触媒コート層、上流側コート層の順に、触媒コート層を形成させてもよい。
【0232】
本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒を製造する場合、まず、(ii)の工程として、第2の触媒コート層を構成する材料、すなわちRh前駆体(例えばRhを含む塩(例えば硝酸塩)等)、比表面積が異なる3種類のOSC材(例えばアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物等)、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)、並びに場合によりさらなる担体粒子(例えばアルミナ-ジルコニア系複合酸化物)及び添加剤(例えばバインダー)等を含む第2の触媒コート層用の触媒コート層スラリーを調製する。続いて、(iv)の工程として、基材上において第2の触媒コート層を形成させる領域に、当該スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、第2の触媒コート層を形成させる。続いて、(i)の工程として、第1の触媒コート層を構成する材料、すなわち触媒金属としてのPd及び/又はPtの前駆体(例えばPd及び/又はPtを含む塩(例えば硝酸塩)等)、溶媒(例えば水、アルコール、水とアルコールの混合物等)、並びに場合により担体粒子(例えばアルミナ-セリア-ジルコニア系複合酸化物及び/又はセリア-ジルコニア系複合酸化物等)及び添加剤(例えばバインダー)等を含む第1の触媒コート層用の触媒コート層スラリーを調製する。続いて、(iii)の工程として、第2の触媒コート層を形成させた基材上において、第1の触媒コート層を形成させる領域に、当該スラリーをウォッシュコート法により被覆する。余分なスラリーをブロアー等で吹き払った後、例えば、大気中、通常100℃~150℃で通常1時間~3時間乾燥して溶媒分を除去し、大気中、通常450℃~550℃で通常1時間~3時間焼成を行い、第1の触媒コート層を形成させる。なお、本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法において、前記の通り、触媒コート層の形成順序は限定されず、第1の触媒コート層を形成させてから、第2の触媒コート層を形成させてもよい。
【0233】
(排ガス浄化用触媒の用途)
本発明の排ガス浄化用触媒は、リッチ雰囲気での排ガス浄化性能において大きく効果を発揮することができ、リッチ雰囲気で余剰のHC等が排ガス浄化用触媒に吸着して、当該排ガス浄化用触媒を被毒し得るような環境下においても使用することができる高いHC被毒抑制効果を発現する排ガス浄化用触媒として使用することができる。
【0234】
例えば、本発明の第1の実施形態の排ガス浄化用触媒は、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおいて、S/Cとして使用することができる。
【0235】
例えば、本発明の第2の実施形態の排ガス浄化用触媒は、S/C及びUF/Cを含む二触媒システムにおいて、UF/Cとして使用することができる。
【実施例0236】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0237】
I.第1の実施形態
I-1.使用材料
材料1(Al
:La複合化Al
(Al:99重量%)
(La:1重量%)
材料2(高比表面積OSC材)
:Al-CeO-ZrO系複合酸化物(ACZ)
(Al:30重量%)
(CeO:20重量%)
(ZrO:44重量%)
(Nd:2重量%)
(La:2重量%)
(Y:2重量%)
BET比表面積:65m/g
材料3(中比表面積OSC材)
:Al-CeO-ZrO系複合酸化物(ACZ)
(Al:30重量%)
(CeO:20重量%)
(ZrO:44重量%)
(Nd:2重量%)
(La:2重量%)
(Y:2重量%)
BET比表面積:35m/g
材料4(低比表面積OSC材)
:パイロクロア構造を有するCeO-ZrO系複合酸化物(CeZr
(CeO:51.5重量%)
(ZrO:45.5重量%)
(Pr11:3重量%)
(特開2018-038999号公報に基づいて調製)
BET比表面積:1.5m/g
材料5(AZ)
:Al-ZrO系複合酸化物(AZ)
(Al:30重量%)
(ZrO:60重量%)
(La:5重量%)
(Y:5重量%)
材料6(CZ)
:CeO-ZrO系複合酸化物(CZ)
(CeO:40重量%)
(ZrO:50重量%)
(La:5重量%)
(Y:5重量%)
材料7(Ba)
:硫酸バリウム
材料8(Rh)
:硝酸ロジウム水溶液
Rh濃度:2.75重量%
材料9(Pd)
:硝酸パラジウム水溶液
Pd濃度:8.4重量%
基材
:875cc(600セル六角 壁厚2mil 全長105mm)のコージェライトハニカム基材
【0238】
I-2.排ガス浄化用触媒の調製
比較例1
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料8(Rh)、材料5(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0239】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、材料1(Al)、材料2(高比表面積OSC材)、材料4(低比表面積OSC材)、材料5(AZ)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0240】
続いて、調製したスラリー1を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、下流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の下流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料8がRhの金属換算で0.40g(0.40g/L-zone)になり、材料1が40g(40g/L-zone)になり、材料2が75g(75g/L-zone)になり、材料4が28g(28g/L-zone)になり、材料5が40g(40g/L-zone)になるようにした。また、第2の触媒コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の65%を占めるように調整した。
【0241】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、下流側コート層(後部)を調製した。
【0242】
続いて、蒸留水に、撹拌しながら、材料8(Rh)、材料5(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0243】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、材料1(Al)、材料2(高比表面積OSC材)、材料4(低比表面積OSC材)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。
【0244】
続いて、調製したスラリー2を、下流側コート層を形成させた基材に、下流側コート層を形成させた端面の逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、上流側コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の上流側コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料8がRhの金属換算で0.15g(0.15g/L-zone)になり、材料1が20g(20g/L-zone)になり、材料2が15g(15g/L-zone)になり、材料4が8g(8g/L-zone)になり、材料5が20g(20g/L-zone)になるようにした。また、上流側コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の55%を占めるように調整した。
【0245】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、上流側コート層(前部)を調製した。
【0246】
続いて、前記同様に、蒸留水に、撹拌しながら、材料9(Pd)、材料1(Al)、材料6(CZ)、材料7(Ba)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー3を調製した。
【0247】
次に、調製したスラリー3を、第2の触媒コート層である下流側コート層及び上流側コート層を形成させた基材に、上流側コート層を形成させた端面と同じ端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、第1の触媒コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の第1の触媒コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料9がPdの金属換算で5g(5g/L-zone)になり、材料1が25g(25g/L-zone)になり、材料6が75g(75g/L-zone)になり、材料7が13g(13g/L-zone)になるようにした。また、第1の触媒コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の30%を占めるように調整した。
【0248】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、第1の触媒コート層(前部)を調製し、最終的に排ガス浄化用触媒を調製した。
【0249】
比較例2
比較例1において、スラリー1における材料2の全量(75g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(75g/L-zone)に変更し、スラリー2における材料2の全量(15g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(15g/L-zone)に変更した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0250】
実施例1
比較例1において、スラリー1における材料2の全量(75g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(75g/L-zone)に変更し、スラリー1に添加する材料4の量を変更してスラリー1中の材料4が全量で8g/L-zoneになるように調整し、スラリー2に添加する材料2の量を変更してスラリー2中の材料2が全量で75g/L-zoneになるように調整した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0251】
実施例2
比較例1において、スラリー1における材料2の全量(75g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(60g/L-zone)に変更し、スラリー2に添加する材料2の量を変更してスラリー2中の材料2が全量で30g/L-zoneになるように調整した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0252】
実施例3
比較例1において、スラリー1における材料2の全量(75g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(25g/L-zone)に変更し、スラリー1に添加する材料4の量を変更してスラリー1中の材料4が全量で33g/L-zoneになるように調整し、スラリー2に添加する材料2の量を変更してスラリー2中の材料2が全量で30g/L-zoneになるように調整し、スラリー2に添加する材料4の量を変更してスラリー2中の材料4が全量で18g/L-zoneになるように調整した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0253】
実施例4
比較例1において、スラリー1における材料2の全量(75g/L-zone)を材料3(中比表面積OSC材)(25g/L-zone)に変更し、スラリー1に添加する材料4の量を変更してスラリー1中の材料4が全量で18g/L-zoneになるように調整し、スラリー2に添加する材料2の量を変更してスラリー2中の材料2が全量で75g/L-zoneになるように調整し、スラリー2に添加する材料4の量を変更してスラリー2中の材料4が全量で18g/L-zoneになるように調整した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0254】
比較例3
比較例1において、触媒コート層を形成する順番を(下流側コート層→上流側コート層→第1の触媒コート層)から(第1の触媒コート層→下流側コート層→上流側コート層)に変更した以外は、比較例1と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0255】
実施例5
実施例3において、触媒コート層を形成する順番を(下流側コート層→上流側コート層→第1の触媒コート層)から(第1の触媒コート層→下流側コート層→上流側コート層)に変更した以外は、実施例3と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0256】
表1に、比較例1~3及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒における上流側コート層及び下流側コート層のOSC材の触媒構成をまとめる。
【0257】
【表1】
【0258】
表2に、比較例1~3及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒における材料全体に対する各材料が占めるセリアの割合をまとめる。ここで、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材におけるセリアの量(割合)は、すべてを足し合せると、100重量%になる。ただし、表2では、3つのOSC材における各OSC材のセリアの割合は有効数字3桁で表示されているため、当該セリアの割合は、全て足し合せると、100±0.1重量%になる。
【0259】
【表2】
【0260】
I-3.耐久試験
比較例1~3及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の耐久試験を実施した。
各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0261】
I-4.性能評価
I-3.耐久試験を実施した比較例1~3及び実施例1~5の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の性能評価を実施した。
【0262】
I-4-1.OSC評価
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、Ga=10g/s、500℃(低温)又は750℃(高温)の条件下、A/Fが14.1と15.1になるようにA/Fフィードバック制御を行った。ストイキ点とA/Fセンサ出力の差分より、酸素の過不足を以下の式から算出し、Ga=10g/s、500℃(低温)又は750℃(高温)での最大酸素吸蔵量をOSCとして評価した。
OSC(g)=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
【0263】
I-4-2.リッチ雰囲気でのNOx浄化率
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)が14.4の排ガスを供給し、Ga=30/s、550℃でのNOx浄化率を測定した。3分継続時のNOx浄化率をリッチ雰囲気でのNOx浄化活性として評価した。
【0264】
I-5.評価結果
表3並びに図9及び10に結果を示す。
【0265】
【表3】
【0266】
表3より、比較例1及び2と実施例1~4とを比較することで、実施例1~4では、第2の触媒コート層が、比表面積が異なる3種のOSC材、すなわち高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材を含むことにより、より好ましくは、上流側コート層が高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含み、下流側コート層が中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材を含むことにより、不足性能を生じずに、高温及び低温でのOSC性能を維持しながら、リッチ雰囲気下において高いNOx浄化率を得られる、すなわち3つの性能をバランスよく高い次元で維持できることがわかった。例えば、図9より、実施例2では、比較例1において不足していたNOx浄化率を、低温及び高温でのOSCを維持しながら向上させている。
【0267】
したがって、第2の触媒コート層が、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材のすべてを含むことによって、OSC性能とNOx浄化率とを両立できることがわかった。
【0268】
また、表3及び図10より、比較例3と実施例5とを比較することで、本発明の効果は、第1の触媒コート層と上流側コート層との配置を入れ替えても、すなわち上流側コート層が第1の触媒コート層の上に配置されていても得られることがわかった。
【0269】
II.第2の実施形態
II-1.使用材料
材料1(Al
:La複合化Al
(Al:99重量%)
(La:1重量%)
材料2(高比表面積OSC材)
:Al-CeO-ZrO系複合酸化物(ACZ)
(Al:30重量%)
(CeO:20重量%)
(ZrO:44重量%)
(Nd:2重量%)
(La:2重量%)
(Y:2重量%)
BET比表面積:65m/g
材料3(中比表面積OSC材)
:Al-CeO-ZrO系複合酸化物(ACZ)
(Al:30重量%)
(CeO:20重量%)
(ZrO:44重量%)
(Nd:2重量%)
(La:2重量%)
(Y:2重量%)
BET比表面積:35m/g
材料4(低比表面積OSC材)
:パイロクロア構造を有するCeO-ZrO系複合酸化物(CeZr
(CeO:51.5重量%)
(ZrO:45.5重量%)
(Pr11:3重量%)
(特開2018-038999号公報に基づいて調製)
BET比表面積:1.5m/g
材料7(Ba)
:硫酸バリウム
材料8(Rh)
:硝酸ロジウム水溶液
Rh濃度:2.75重量%
材料10(高比表面積OSC材)
:CeO-ZrO系複合酸化物(CZ)
(CeO:20重量%)
(ZrO:70重量%)
(La:5重量%)
(Y:5重量%)
BET比表面積:80m/g
材料11(高比表面積OSC材)
:CeO-ZrO系複合酸化物(CZ)
(CeO:20重量%)
(ZrO:70重量%)
(La:5重量%)
(Y:5重量%)
BET比表面積:35m/g
材料12(Pt)
:硝酸白金水溶液
Pt濃度:8.2重量%
材料13(AZ)
:Al-ZrO系複合酸化物(AZ)
(Al:30重量%)
(ZrO:60重量%)
(Nd:2重量%)
(La:4重量%)
(Y:4重量%)
基材
:875cc(600セル六角 壁厚2mil 全長105mm)のコージェライトハニカム基材
【0270】
II-2.排ガス浄化用触媒の調製
比較例4
最初に、蒸留水に、撹拌しながら、材料8(Rh)、材料13(AZ)を投入し、得られた懸濁液を120℃及び2時間で乾燥し、さらに500℃及び2時間で焼成することで、Rh担持AZ(Rh/AZ)を調製した。
【0271】
次に、蒸留水に、撹拌しながら、Rh/AZ、材料1(Al)、材料2(高比表面積OSC材)、材料4(低比表面積OSC材)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー1を調製した。
【0272】
続いて、調製したスラリー1を基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、第2の触媒コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の第2の触媒コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料1が40g(40g/L-zone)になり、材料2が60g(60g/L-zone)になり、材料4が15g(15g/L-zone)になり、材料13が60g(60g/L-zone)になり、材料8がRhの金属換算で0.18g(0.18g/L-zone)になるようにした。また、第2の触媒コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して下流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の80%を占めるように調整した。
【0273】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、第2の触媒コート層(後部)を調製した。
【0274】
続いて、前記同様に、蒸留水に、撹拌しながら、材料12(Pt)、材料1(Al)、材料10(高比表面積OSC材)、材料7(Ba)、及びAl系バインダーを投入し、懸濁したスラリー2を調製した。
【0275】
次に、調製したスラリー2を、第2の触媒コート層を形成させた基材に、第2の触媒コート層を形成させた端面の逆側の端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うことで、基材壁面に材料をコーティングし、第1の触媒コート層の前駆体層を調製した。その際に、各コーティング材料について、基材の第1の触媒コート層が塗布される部分の容量1Lに対して、材料12がPtの金属換算で0.7g(0.7g/L-zone)になり、材料1が35g(35g/L-zone)になり、材料10が30g(30g/L-zone)になり、材料7が5g(5g/L-zone)になるようにした。また、第1の触媒コート層の前駆体層のコート長は、排ガス浄化用触媒における排ガス流れ方向に対して上流側の端部から、排ガス浄化用触媒における基材の全長の35%を占めるように調整した。
【0276】
最後に、120℃に保たれた乾燥機で、2時間水分を飛ばした後、500℃に保たれた電気炉で、2時間の焼成を行い、第1の触媒コート層(前部)を調製し、最終的に排ガス浄化用触媒を調製した。
【0277】
実施例6
比較例4において、スラリー1における材料2(全量:60g/L-zone)の内の10g/L-zone分を、材料3(中比表面積OSC材)(全量:10g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0278】
実施例7
比較例4において、スラリー1における材料2(全量:60g/L-zone)の内の20g/L-zone分を、材料3(中比表面積OSC材)(全量:20g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0279】
実施例8
比較例4において、スラリー1における材料2(全量:60g/L-zone)の内の30g/L-zone分を、材料3(中比表面積OSC材)(全量:30g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0280】
実施例9
比較例4において、スラリー1における材料2(全量:60g/L-zone)の内の40g/L-zone分を、材料3(中比表面積OSC材)(全量:40g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0281】
比較例5
比較例4において、スラリー1における材料2の全量(60g/L-zone)を、材料3(中比表面積OSC材)(全量:60g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0282】
比較例6
比較例4において、スラリー1における材料2の全量(60g/L-zone)を、材料10(高比表面積OSC材)(全量:60g/L-zone)に変更した以外は、比較例4と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0283】
実施例10
比較例6において、スラリー1における材料10(全量:60g/L-zone)の内の30g/L-zone分を、材料11(中比表面積OSC材)(全量:30g/L-zone)に変更した以外は、比較例6と同様に、排ガス浄化用触媒を調製した。
【0284】
表4に、比較例4~6及び実施例6~10の排ガス浄化用触媒における第2の触媒コート層のOSC材の触媒構成をまとめる。
【0285】
【表4】
【0286】
II-3.耐久試験
比較例4~6及び実施例6~10の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の耐久試験を実施した。
各排ガス浄化用触媒を、V型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温900℃で50時間にわたって、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0287】
II-4.性能評価
II-3.耐久試験を実施した比較例4~6及び実施例6~10の排ガス浄化用触媒について、実際のエンジンを用いて以下の性能評価を実施した。
【0288】
II-4-1.OSC評価
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、Ga=10g/s、500℃の条件下、A/Fが14.1と15.1になるようにA/Fフィードバック制御を行った。ストイキ点とA/Fセンサ出力の差分より、酸素の過不足を以下の式から算出し、Ga=10g/s、500℃での最大酸素吸蔵量をOSCとして評価した。
OSC(g)=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
【0289】
II-4-2.リッチ雰囲気でのNOx浄化率
各排ガス浄化用触媒を、L型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)が14.4の排ガスを供給し、Ga=30/s、500℃でのNOx浄化率を測定した。3分継続時のNOx浄化率をリッチ雰囲気でのNOx浄化活性として評価した。
【0290】
II-5.評価結果
表5及び図11~13に結果を示す。
【0291】
【表5】
【0292】
表5及び図11より、比較例4と実施例6~9とを比較することで、第2の触媒コート層中に高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材に加えて中比表面積OSC材を添加することにより、OSC性能を維持しながら、リッチ雰囲気下におけるNOx浄化率を向上できることがわかった。これは、高比表面積OSC材の一部を中比表面積OSC材に置き換えることで、OSC材に付着するHC量を少なくし、貴金属活性が維持されやすくなったためである。
【0293】
一方で、表5及び図12より、比較例4又は5と実施例9とを比較することで、第2の触媒コート層において、OSC材を高比表面積OSC材及び低比表面積OSC材のみで構成すると、OSC性能は高く維持できるものの、リッチ雰囲気下におけるNOx浄化率は低下してしまい、OSC材を中比表面積OSC材及び低比表面積OSC材のみで構成すると、リッチ雰囲気下におけるNOx浄化率は高く維持できるものの、OSC性能が低下してしまうことがわかった。
【0294】
したがって、第2の触媒コート層が、高比表面積OSC材、中比表面積OSC材、及び低比表面積OSC材のすべてを含むことによって、OSC性能とNOx浄化率とを両立できることがわかった。
【0295】
また、表5及び図13より、比較例4と実施例8の関係及び比較例6と実施例10の関係を比較することで、高比表面積OSC材及び中比表面積OSC材としては、ACZのみならず、CZも使用できることがわかった。
【符号の説明】
【0296】
1:基材、2:上流側コート層、3:下流側コート層、4:第1の触媒コート層、5:第2の触媒コート層
図1
図2
図3
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図12
図13