(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036808
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電圧出力回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G05F1/56 310D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141289
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】手島 紘明
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC05
5H430EE06
5H430EE18
5H430FF01
5H430FF11
5H430GG05
5H430HH03
(57)【要約】
【課題】大きな負荷容量に対して位相特性が安定している低消費電力の電圧出力回路を実現する。
【解決手段】電圧出力回路は、基準電圧Vrefを生成する電圧生成回路1と、基準電圧Vrefを非反転入力とする差動増幅回路2と、差動増幅回路2の出力を入力とするソースフォロア回路3と、差動増幅回路の出力を入力とし、出力が電圧出力端子OUTに接続されたソースフォロア回路4と、ソースフォロア回路3の出力と差動増幅回路の反転入力とを接続する帰還回路5とを備える。ソースフォロア回路3を構成するトランジスタQ1のゲート-ソース電圧とソースフォロア回路4を構成するトランジスタQ2のゲート-ソース電圧は、等しい値に設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧を生成するように構成された電圧生成回路と、
前記基準電圧を非反転入力とする差動増幅回路と、
前記差動増幅回路の出力を入力とする第1のソースフォロア回路と、
前記差動増幅回路の出力を入力とし、出力が電圧出力端子に接続された第2のソースフォロア回路と、
前記第1のソースフォロア回路の出力と前記差動増幅回路の反転入力とを接続する帰還回路とを備え、
前記第1のソースフォロア回路を構成する第1のトランジスタと前記第2のソースフォロア回路を構成する第2のトランジスタのゲート-ソース電圧が等しい値に設定されていることを特徴とする電圧出力回路。
【請求項2】
請求項1記載の電圧出力回路において、
電圧出力回路の前記電圧出力端子毎に前記第2のソースフォロア回路を備えることを特徴とする電圧出力回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の電圧出力回路において、
前記第1のソースフォロア回路は、
ゲートが前記差動増幅回路の出力端子に接続され、ドレインが電源電圧に接続された前記第1のトランジスタと、
一端が第1のソースフォロア回路の出力である前記第1のトランジスタのソースに接続され、他端がグランドに接続された第1の電流源とから構成され、
前記第2のソースフォロア回路は、
ゲートが前記差動増幅回路の出力端子に接続され、ドレインが前記電源電圧に接続された前記第2のトランジスタと、
一端が第2のソースフォロア回路の出力である前記第2のトランジスタのソースに接続され、他端がグランドに接続された第2の電流源とから構成されることを特徴とする電圧出力回路。
【請求項4】
請求項3記載の電圧出力回路において、
前記第1のトランジスタのゲート-ソース電圧と前記第2のトランジスタのゲート-ソース電圧とが等しくなるように、前記第1、第2の電流源の電流値と前記第1、第2のトランジスタのサイズとが設定されていることを特徴とする電圧出力回路。
【請求項5】
請求項1または2記載の電圧出力回路において、
前記電圧出力端子に接続された容量をさらに備えることを特徴とする電圧出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の電圧を低インピーダンスで出力する電圧出力回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)内部のアナログ回路において、アナログ電圧の入出力などにおけるシグナルグランドなど、一定の電圧を低インピーダンスで出力する用途が存在する。シグナルグランド等の電圧出力の方法として、抵抗分圧回路等で電圧を発生させて、演算増幅回路を使用したボルテージフォロア回路などによってインピーダンス変換を行う方法が考えられる(特許文献1参照)。
【0003】
図4は従来の電圧出力回路の構成例を示す回路図である。この構成では、抵抗R100,R101からなる抵抗分圧回路によって電圧を発生させ、演算増幅回路100と、トランジスタQ100と電流源IS100からなるソースフォロア回路との組み合わせによってインピーダンス変換を行っている。
図4の例では、演算増幅回路100とソースフォロア回路(Q100,IS100)によって負帰還回路を構成しているが、通常の演算増幅器のみのボルテージフォロア回路でも同様のインピーダンス変換の効果が期待できる。
【0004】
図4に示した構成の注意点として、出力端子OUTに設計仕様を上回る負荷容量CLが接続されると、位相特性が不安定になる傾向がある。位相特性が不安定になる原因は、ボルテージフォロア回路の出力トランジスタQ100と負荷容量CLとによって形成される極によって、負帰還回路の位相余裕が悪化するためである。
【0005】
通常のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路で演算増幅回路を設計する場合、演算増幅回路に接続する出力回路としては、ソースフォロア回路またはソース接地回路を用いるのが一般的である。これらソースフォロア回路またはソース接地回路における極の角周波数ωpは、出力トランジスタのトランスコンダクタンスgmと負荷容量CLから、ωp=gm/CL程度の値となる(ソース接地回路の場合は、位相保証容量による極分離の効果を利用した場合の値)。
【0006】
演算増幅回路のユニティゲイン角周波数をωuとすると、ボルテージフォロア回路の位相特性を安定させる条件は、極の角周波数ωpがユニティゲイン角周波数ωuの2倍程度のマージンを確保すること(2ωu≦ωp)であり、出力トランジスタのトランスコンダクタンスgmの条件に言い換えれば、gm≧2ωu/CLを満たすことである。負荷容量CLが大きい場合、位相特性を安定させる条件を満たすためには、出力トランジスタのトランスコンダクタンスgmを相応に大きくする必要がある。
【0007】
一般的に、IC内部回路で電圧出力回路を使用する場合には負荷容量CLは大きくても数pF程度の容量となるが、特殊な用途の場合は、100~1000pF程度の容量になることも考えられる。例えば、以下の(I)~(III)のようなケースが考えられる。
【0008】
(I)IC外部に電圧出力を行う場合で、IC外部に負荷容量が接続されるケース。
(II)高周波数におけるインピーダンスを下げるために、大容量を接続したいケース。
(III)複数の信号に対する基準電圧を生成する場合に、クロストークを避けたいケース。
【0009】
これら(I)~(III)のケースで、回路の位相特性を安定させたい場合には、出力トランジスタのトランスコンダクタンスgmを相応に大きくする必要がある。しかしながら、トランスコンダクタンスgmを上げるには、出力トランジスタの電流値を大きくする必要があるため、回路の消費電流が大きくなるという課題があった。
【0010】
また、上記の複数信号のクロストークの問題を避けるには、大きな負荷容量CLを接続してインピーダンスを下げる方法の他に、信号系統ごとに個別に電圧出力回路を設ける方法もある。しかしながら、複数の電圧出力回路を設ける場合、バッファ用のアンプ回路が系統数分必要になるので消費電流が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、大きな負荷容量に対して位相特性が安定している低消費電力の電圧出力回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電圧出力回路は、基準電圧を生成するように構成された電圧生成回路と、前記基準電圧を非反転入力とする差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力を入力とする第1のソースフォロア回路と、前記差動増幅回路の出力を入力とし、出力が電圧出力端子に接続された第2のソースフォロア回路と、前記第1のソースフォロア回路の出力と前記差動増幅回路の反転入力とを接続する帰還回路とを備え、前記第1のソースフォロア回路を構成する第1のトランジスタと前記第2のソースフォロア回路を構成する第2のトランジスタのゲート-ソース電圧が等しい値に設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の電圧出力回路の1構成例は、電圧出力回路の前記電圧出力端子毎に前記第2のソースフォロア回路を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電圧出力回路の1構成例において、前記第1のソースフォロア回路は、ゲートが前記差動増幅回路の出力端子に接続され、ドレインが電源電圧に接続された前記第1のトランジスタと、一端が第1のソースフォロア回路の出力である前記第1のトランジスタのソースに接続され、他端がグランドに接続された第1の電流源とから構成され、前記第2のソースフォロア回路は、ゲートが前記差動増幅回路の出力端子に接続され、ドレインが前記電源電圧に接続された前記第2のトランジスタと、一端が第2のソースフォロア回路の出力である前記第2のトランジスタのソースに接続され、他端がグランドに接続された第2の電流源とから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明の電圧出力回路の1構成例は、前記第1のトランジスタのゲート-ソース電圧と前記第2のトランジスタのゲート-ソース電圧とが等しくなるように、前記第1、第2の電流源の電流値と前記第1、第2のトランジスタのサイズとが設定されていることを特徴とするものである。
また、本発明の電圧出力回路の1構成例は、前記電圧出力端子に接続された容量をさらに備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、出力が差動増幅回路の反転入力側にフィードバックされる第1のソースフォロア回路と、外部への出力回路となる第2のソースフォロア回路とを設けることにより、大きな負荷容量に対して位相特性が安定している低消費電力の電圧出力回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る電圧出力回路の構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施例に係る電圧出力回路の構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、従来の半導体集積回路の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、従来の電圧出力回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施例に係る電圧出力回路の構成を示す回路図である。本実施例の電圧出力回路は、基準電圧Vrefを生成する電圧生成回路1と、基準電圧Vrefを非反転入力とする差動増幅回路2と、差動増幅回路2の出力を入力とするソースフォロア回路3と、差動増幅回路2の出力を入力とし、出力が電圧出力端子OUTに接続されたソースフォロア回路4と、ソースフォロア回路3の出力と差動増幅回路2の反転入力とを接続する帰還回路5とを備えている。
【0018】
電圧生成回路1は、電源電圧VDDを分圧して基準電圧Vrefを生成する。具体的には、電圧生成回路1は、一端が電源電圧VDDに接続され、他端が差動増幅回路2の非反転入力端子に接続された抵抗R1と、一端が差動増幅回路2の非反転入力端子に接続され、他端がグランドに接続された抵抗R2とから構成される。
【0019】
ソースフォロア回路3は、ゲートが差動増幅回路2の出力端子に接続され、ドレインが電源電圧VDDに接続されたトランジスタQ1と、一端がトランジスタQ1のソース(ソースフォロア回路3の出力端子)に接続され、他端がグランドに接続され、トランジスタQ1に一定電流を供給する電流源IS1とから構成される。
【0020】
ソースフォロア回路4は、ゲートが差動増幅回路2の出力端子に接続され、ドレインが電源電圧VDDに接続されたトランジスタQ2と、一端がトランジスタQ2のソース(ソースフォロア回路4の出力端子)に接続され、他端がグランドに接続され、トランジスタQ2に一定電流を供給する電流源IS2とから構成される。
【0021】
帰還回路5は、ソースフォロア回路3の出力端子と差動増幅回路2の反転入力端子とを接続する配線によって構成される。
【0022】
本実施例では、差動増幅回路(演算増幅回路)2に対して、2つのソースフォロア回路3,4を接続する。ソースフォロア回路3の出力を差動増幅回路2の反転入力側にフィードバックし、ソースフォロア回路4を外部への出力回路として使用する。
【0023】
ここで、出力トランジスタQ1のゲート-ソース電圧VGS1と出力トランジスタQ2のゲート-ソース電圧VGS2とが等しくなるように、電流源IS1,IS2の電流値と出力トランジスタQ1,Q2のサイズパラメータ(例えばゲート幅とゲート長)とが調整されている。
【0024】
ソースフォロア回路3の出力電圧は、差動増幅回路2の仮想短絡により、基準電圧Vrefと等しくなるようにフィードバックがかかる。また、トランジスタQ1,Q2のゲート-ソース電圧VGS1,VGS2が等しくなるように設計されているため、ソースフォロア回路4からはソースフォロア回路3の出力電圧と等しい電圧が出力されるようになっている。
【0025】
図4に示した従来の構成に対するメリットとしては、外部への出力に使用するソースフォロア回路4が負帰還のループに入らないため、電圧出力端子OUTに大きな負荷容量CLが接続されても、電圧出力回路の位相特性が不安定にならないという点である。負帰還のループの極の周波数は、ソースフォロア回路3を構成するトランジスタQ1のトランスコンダクタンスとトランジスタQ1のソースに存在する寄生容量とによって決定される。
【0026】
このため、本実施例では、ソースフォロア回路4の出力である電圧出力端子OUTに例えば100~1000pF程度の大きな負荷容量CLを接続することができ、瞬間的な負荷電流に対して、安定して電圧出力ができるようになる。また、回路の位相特性を安定させるためにトランジスタQ1のトランスコンダクタンスを大きくする必要がないので、回路の消費電流の増大を抑えることができる。
こうして、本実施例では、大きな負荷容量CLに対して位相特性が安定している低消費電力の電圧出力回路を実現することができる。
【0027】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
図2は本発明の第2の実施例に係る電圧出力回路の構成を示す回路図である。本実施例の電圧出力回路は、電圧生成回路1と、差動増幅回路2と、ソースフォロア回路3と、差動増幅回路2の出力を入力とし、出力が電圧出力端子OUT1,OUT2に接続された複数のソースフォロア回路4-1,4-2と、帰還回路5とを備えている。
【0028】
電圧生成回路1と差動増幅回路2とソースフォロア回路3と帰還回路5は、第1の実施例と同じである。
ソースフォロア回路4-1,4-2は、それぞれゲートが差動増幅回路2の出力端子に接続され、ドレインが電源電圧VDDに接続されたトランジスタQ2-1,Q2-2と、一端がトランジスタQ2-1,Q2-2のソース(ソースフォロア回路4-1,4-2の出力端子)に接続され、他端がグランドに接続された電流源IS2-1,IS2-2とから構成される。
【0029】
本実施例は、複数系統の外部への電圧出力を実現するために、複数のソースフォロア回路4-1,4-2を接続したものである。
用途としては、複数系統の信号の基準電圧を必要とする時に、信号同士のクロストークを避けるために、基準電圧を分ける場合が考えられる。
図2に示したように,差動増幅回路1個と複数のソースフォロア回路4-1,4-2を実装することで、複数系統の電圧出力を実現することができる。これにより、
図1の構成の電圧出力回路を複数用意する場合よりも、消費電流を削減することができる。
【0030】
図2の例では、ソースフォロア回路4-1,4-2を2個としているが、3個以上実装して、3系統以上の電圧出力を実現してもよいことは言うまでもない。
また、第1、第2の実施例においては、負荷容量を電圧出力回路の構成要素として設けるようにしてもよいし、電圧出力回路の外部(電圧出力回路を含むICの外部)に負荷容量を設けるようにしてもよいし、電圧出力回路の内部と外部の両方に負荷容量を設けるようにしてもよい。
【0031】
IC外部で大容量を駆動するためのソースフォロア回路の先行例として、特開平06-053758号公報(以下、参考文献)に開示された半導体集積回路がある。
図3に参考文献に開示された半導体集積回路の構成を示す。
【0032】
本発明の電圧出力回路と参考文献に開示された半導体集積回路は、どちらもソースフォロア回路を出力段として用いており、ソースフォロア回路における電圧のシフト量を0に調整するという点で共通している。
【0033】
本発明と参考文献との差異は、主に回路の設計指針である。参考文献に開示された半導体集積回路は、IC外部でパスコンを接続して、基準電圧のインピーダンスを下げることで、信号同士のクロストークを小さくすることを目的としている。本発明では、ソースフォロア回路4のみを複数系統実装して、それぞれの信号に対する基準電圧を出力することで、信号同士のクロストークを原理的に避けるようにしている。
【0034】
また、参考文献に開示された半導体集積回路に対する本発明のメリットは、電圧生成回路1の電流負荷を0にできるため、出力インピーダンスの高い端子のインピーダンス変換に利用し易い点である。逆に参考文献に開示された半導体集積回路のメリットは、トランジスタM2,M4のカレントミラーを用いて、出力トランジスタM3のドレイン電流をトランジスタM1側にフィードバックできるので、出力に定常的な電流負荷がかかった場合でも、トランジスタM1,M3におけるVGSの差を0にできる点である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、外部に電圧を供給する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…電圧生成回路、2…差動増幅回路、3,4,4-1,4-2…ソースフォロア回路、5…帰還回路、Q1,Q2,Q2-1,Q2-2…トランジスタ、R1,R2…抵抗、IS1,IS2,IS2-1,IS2-2…電流源。