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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036809
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ポート創閉鎖用ガイド
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141290
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】594001775
【氏名又は名称】株式会社ベアーメディック
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100179132
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 知生
(72)【発明者】
【氏名】三澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 裕太
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB01
4C160BB30
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】外科手術においてトロカール等の抜去後のポート創を安全に閉鎖する。
【解決手段】本発明に係るポート創閉鎖用ガイド10は、中心軸に沿って延在する本体11と、本体の一方の端部に配置されるフランジ12と、本体の他方の端部に配置される先端部13と、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2とを備え、本体に、第1の斜め孔14と第2の斜め孔15が、中心軸と所定の角度を有して配置され、第1の斜め孔は、フランジの底部に第1のフランジ側入出口14_1を有し、本体の側面に第1の本体側入出口14_2を有し、第2の斜め孔は、フランジの底部に第2のフランジ側入出口15_1を有し、本体の側面に第2の本体側入出口15_2を有し、斜め孔位置確認用マークの少なくとも1部が、第1の本体側入出口と第2の本体側入出口との少なくともいずれか一方と、先端部の先端とを結ぶ線上または線上の近傍に配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延在する本体と、
前記本体の一方の端部に配置されるフランジと、
前記本体の他方の端部に配置される先端部と、
斜め孔位置確認用マークと
を備え、
前記本体は、第1の斜め孔と、第2の斜め孔とを備え、
前記第1の斜め孔と前記第2の斜め孔はそれぞれ、前記中心軸と所定の角度を有して配置され、
前記第1の斜め孔は、前記フランジの底部に第1のフランジ側入出口を有し、前記本体の側面に第1の本体側入出口を有し、
前記第2の斜め孔は、前記フランジの底部に第2のフランジ側入出口を有し、前記本体の側面に第2の本体側入出口を有し、
前記斜め孔位置確認用マークの少なくとも1部が、前記第1の本体側入出口と前記第2の本体側入出口との少なくともいずれか一方と、前記先端部の先端とを結ぶ線上または前記線上の近傍に配置される
ことを特徴とするポート創閉鎖用ガイド。
【請求項2】
前記斜め孔位置確認用マークが、前記先端部の先端と所定の間隔をもって配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のポート創閉鎖用ガイド。
【請求項3】
前記斜め孔位置確認用マークが、目盛りを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のポート創閉鎖用ガイド。
【請求項4】
さらに目盛りが配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のポート創閉鎖用ガイド。
【請求項5】
斜め孔位置調整治具を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のポート創閉鎖用ガイド。
【請求項6】
体表から体腔内に挿入されるポート創閉鎖用ガイドであって、
中心軸に沿って延在する本体と、
前記本体の一方の端部に配置されるフランジと、
前記本体の他方の端部に配置される先端部と、
斜め孔位置調整治具とを備え、
前記本体は、第1の斜め孔と、第2の斜め孔とを備え、
前記第1の斜め孔と前記第2の斜め孔はそれぞれ、前記中心軸と所定の角度を有し、前記中心軸に対して線対称の位置に配置される
ことを特徴とするポート創閉鎖用ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術においてトロカール等の抜去後のポート創の閉鎖に用いるポート創閉鎖用ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲な外科手術として、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術などが行われている。これらの手術では、腹腔鏡(硬性内視鏡)に加えて、鉗子、電気メス等の手術器具を体腔内に挿入するためにトロカールが用いられる。また、トロカールは、腹腔鏡検査や外科的処置にも用いられる。
【0003】
トロカールを用いる場合には、トロカールの挿入前に、患者の腹部などの皮膚を一部切開して切開部(以下、「ポート創」という。)が形成される。このポート創に挿入されたトロカールを介して、例えば腹腔鏡や手術器具が体腔内に挿入され、腹腔鏡で手術部位を観察しながら手術等が行われる。ここで、腹腔鏡や各種手術器具それぞれを体腔内に挿入するために、複数のポート創を設け、複数のトロカールを挿入する。
【0004】
腹腔鏡手術、腹腔鏡検査、外科的処置等の終了後、トロカールを抜去して、ポート創を閉鎖する。このポート創を閉鎖が不完全であると、腹部の内容物がポート創を通過してヘルニア状態となるおそれがある。
【0005】
上述のポート創の閉鎖に用いるポート創閉鎖用ガイドの一例が、特許文献1~4に記載されている。
【0006】
一般的なポート創閉鎖用ガイドと縫合糸把持具とを用いて施されるポート創の閉鎖について、以下に説明する(例えば、非特許文献1)。
【0007】
図11A、Bそれぞれに、従来のポート創閉鎖用ガイド50の構成を示す鳥瞰図とB-B’断面図を示す。
【0008】
ポート創閉鎖用ガイド50は、図11A、Bに示すように、円柱状の本体51と、本体51の基端に配置されるフランジ52と、本体51の先端に先端部53を備える。
【0009】
本体51は、第1の斜め孔54と、第2の斜め孔55とを備える。第1の斜め孔54と第2の斜め孔55はそれぞれ、中心軸と所定の角度を有し、中心軸に対して線対称の位置に配置される。
【0010】
第1の斜め孔54は、フランジ52の底部に第1の斜め孔54のフランジ側入出口(以下、「第1のフランジ側入出口」という。)54_1を有し、本体51の側面に第1の斜め孔54の本体側入出口(以下、「第1の本体側入出口」という。)54_2を有する。
【0011】
一方、第2の斜め孔55は、フランジ52の底部に第2の斜め孔55のフランジ側入出口(以下、「第2のフランジ側入出口」という。)55_1を有し、本体51の側面に第2の斜め孔55の本体側入出口(以下、「第2の本体側入出口」という。)55_2を有する。
【0012】
従来のポート創閉鎖用ガイド50を用いたポート創の閉鎖方法の一例を、図12A~Hを参照して説明する。
【0013】
初めに、手術終了後にトロカールを抜去し、 ポート創閉鎖用ガイド50を腹壁1のポートサイト(ポート創)6に挿入する(図12A)。
【0014】
次に、縫合糸把持具8の先端で縫合糸7を把持して、ポート創閉鎖用ガイド50の第1のフランジ側入出口54_1から第1の斜め孔54を介して腹腔(体腔)5に挿通させる(図12B、C)。
【0015】
ここで、縫合糸把持具8は、例えば「ベアパッスル」(株式会社ベアーメディック製)である。
【0016】
その結果、縫合糸把持具8の先端が腹壁1の一部の組織(以下、「第1の組織部分」という。)4_1を刺通して、腹壁の腹腔側の表面3から挿出する。
【0017】
このとき、術者は、他のポート創のトロカールを介して挿入された腹腔鏡(図示せず)で、体腔5内から観察しながら縫合糸把持具8を挿通する。
【0018】
次に、縫合糸把持具8から縫合糸7を解放して、縫合糸把持具8を引き抜く(図12D)。その結果、縫合糸7が第1の組織4_1を挿通する。
【0019】
次に、縫合糸把持具8を第2のフランジ側入出口55_1から第2の斜め孔55を介して体腔5に挿通させる。その結果、縫合糸把持具8の先端が腹壁1の一部の組織(以下、「第2の組織部分」という。)4_2を刺通する。この縫合糸把持具8の先端に、さらなる他のポート創のトロカールを介して挿入された鉗子(図示せず)を用いて、縫合糸7を把持させる(図12E)。
【0020】
次に、ポート創閉鎖用ガイド50を抜去して、ポート創閉鎖用ガイド50から縫合糸7を解放する(図12G)。この状態で、このポート創に再度トロカールを挿入して、鉗子を挿入して、他のポート創の閉鎖を施す(図示せず)。
【0021】
次に、ポート創閉鎖用ガイド50を抜去して、ポート創閉鎖用ガイド50から縫合糸7を解放する(図12G)。この状態で、このポート創に再度トロカールを挿入して、鉗子を挿入して、他のポート創の閉鎖を施す(図示せず)。
【0022】
最後に、縫合糸7の両端を牽引して、組織開口の両側の腹壁組織(第1の組織部分4_1と第2の組織部分4_2)を共に引き寄せ、腹壁組織近傍で結紮し、ポート創を閉鎖する(図12H)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6183485号明細書
【特許文献2】米国特許第5954734号明細書
【特許文献3】米国特許第5827299号明細書
【特許文献4】米国特許第5507758号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】大和田洋平他、”クローズシュアーシステムを用いたポートサイト閉鎖法の工夫”、Kitakanto Med.J.(2014)64,p.343-346.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、従来のポート創閉鎖用ガイド50を用いて、ポート創を閉鎖する場合、以下の問題があった。
【0026】
(1)ポート創の閉鎖は、他のポート創から挿入した腹腔鏡で体腔5側から観察しながら行う。ここで、縫合糸把持具(針)を第1の縫合経路を介して、体腔5側の組織壁においてガイド脇から挿出させるとき縫合糸把持具(針)がどの位置から挿出されるのか把握できない。そこで、外部から縫合糸把持具(針)を刺入するとき、想定外の方向から縫合糸把持具(針)が挿出される場合がある。このとき、縫合糸把持具(針)が腹腔5内の臓器に近い位置に挿出されれば、臓器を損傷する危険性がある。とくに、たとえば、側腹部では比較的臓器が近いので臓器を損傷する危険性が高い。
【0027】
(2)ポート創閉鎖用ガイド50において、フランジ側入出口と本体側入出口の位置が固定されているため、腹壁1の厚さによって縫合糸がかかる(捕捉する)筋膜の量(厚さ)が変化する。例えば、縫合糸が捕捉する筋膜の量(厚さ)が少ない場合には、結紮される領域が少ないので良好な閉鎖を形成できない。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上述したような課題を解決するために、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、中心軸に沿って延在する本体と、前記本体の一方の端部に配置されるフランジと、前記本体の他方の端部に配置される先端部と、斜め孔位置確認用マークとを備え、前記本体は、第1の斜め孔と、第2の斜め孔とを備え、前記第1の斜め孔と前記第2の斜め孔はそれぞれ、前記中心軸と所定の角度を有して配置され、前記第1の斜め孔は、前記フランジの底部に第1のフランジ側入出口を有し、前記本体の側面に第1の本体側入出口を有し、前記第2の斜め孔は、前記フランジの底部に第2のフランジ側入出口を有し、前記本体の側面に第2の本体側入出口を有し、前記斜め孔位置確認用マークの少なくとも1部が、前記第1の本体側入出口と前記第2の本体側入出口との少なくともいずれか一方と、前記先端部の先端とを結ぶ線上または前記線上の近傍に配置されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、前記斜め孔位置確認用マークが、前記先端部の先端と所定の間隔をもって配置されてもよい。
【0030】
また、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、前記斜め孔位置確認用マークが、目盛りを有してもよい。
【0031】
また、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、さらに目盛りが配置されてもよい。
【0032】
また、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、斜め孔位置調整治具を備えてもよい。
【0033】
また、本発明に係るポート創閉鎖用ガイドは、体表から体腔内に挿入されるポート創閉鎖用ガイドであって、中心軸に沿って延在する本体と、前記本体の一方の端部に配置されるフランジと、前記本体の他方の端部に配置される先端部と、斜め孔位置調整治具とを備え、前記本体は、第1の斜め孔と、第2の斜め孔とを備え、前記第1の斜め孔と前記第2の斜め孔はそれぞれ、前記中心軸と所定の角度を有し、前記中心軸に対して線対称の位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、外科手術においてトロカール等の抜去後のポート創を安全に閉鎖できるポート創閉鎖用ガイドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示す鳥瞰図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示す正面透視図と、上面図と、側面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示すA-A’断面図である。
図4A図4Aは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4B図4Bは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4C図4Cは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4D図4Dは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4E図4Eは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4F図4Fは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4G図4Gは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図4H図4Hは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図5A図5Aは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの効果を説明するための図である。
図5B図5Bは、本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの効果を説明するための図である。
図6A図6Aは、本発明の第2の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示す正面透視図(左図)と、側面図(右図)である。
図6B図6Bは、本発明の第2の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの効果を説明するための図である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態の変形例に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示す鳥瞰図である。
図8A図8Aは、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの構成を示す鳥瞰図である。
図8B図8Bは、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドにおける斜め孔位置調整治具の構成を示す鳥瞰図(左図)と上面図(右図)である。
図9A図9Aは、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの効果を説明するための図である。
図9B図9Bは、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドの効果を説明するための図である。
図10図10は、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドにおける斜め孔位置調整治具の構成の一例を示す鳥瞰図(左図)と上面図(右図)である。
図11A図11Aは、従来のポート創閉鎖用ガイドの構成を示す鳥瞰図である。
図11B図11Bは、従来のポート創閉鎖用ガイドの構成を示すB-B’断面図である。
図12A図12Aは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12B図12Bは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12C図12Cは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12D図12Dは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12E図12Eは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12F図12Fは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12G図12Gは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
図12H図12Hは、従来のポート創閉鎖用ガイドの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドについて、図1図5Bを参照して説明する。
【0037】
<ポート創閉鎖用ガイドの構成>
本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10は、図1図3に示すように、円柱状の本体11と、本体11の基端(一方の端部)に配置されるフランジ12と、本体11の先端(他方の端部)に先端部13を備える。
【0038】
本体11は、中心軸Cに沿って延在する。
【0039】
フランジ12は、上面に開口部を有し、底部が本体11の基端(一方の端部)に接続する。
【0040】
先端部13は、ポート創閉鎖用ガイド10をポート創から体腔5に容易に挿入するために、先端に向けて細くなる形状を有する。先端部13は、外形が直線的に先細るテーパ形状でもよく、図1に示すように、外形が緩く湾曲する砲弾形状でもよい。
【0041】
ここで、先端部13がテーパ形状の場合、先端が鋭くなるため、腹腔5内で臓器を損傷させる可能性がある。また、ポート創閉鎖用ガイド10の全長が長くなるため、腹腔5内で臓器に接触する可能性がある。また、体壁の孔の側壁に接する面積が小さいため、腹腔5内のガスの漏洩が生じる可能性がある。
【0042】
一方、先端部13が砲弾形状の場合、腹腔5内で臓器を傷つけず、全長が短くなるため腹腔5内で臓器に接触しない。また、体壁の孔の側壁に接する面積が大きいためポート創閉鎖用ガイド10を浅く挿入、設置しても、腹腔5内のガスの漏洩を抑制できる。
【0043】
本体11は、第1の斜め孔14と、第2の斜め孔15とを備える。第1の斜め孔14と第2の斜め孔15はそれぞれ、中心軸Cと所定の角度を有し、中心軸Cに対して線対称の位置に配置される。すなわち、第1の斜め孔14と第2の斜め孔15とのいずれか一方が0時方向に配置されるとき、他方が6時方向に配置される。
【0044】
第1の斜め孔14は、フランジ12の底部に第1の斜め孔14のフランジ側入出口(以下、「第1のフランジ側入出口」という。)14_1を有し、本体11の側面に第1の斜め孔14の本体側入出口(側孔)(以下、「第1の本体側入出口」という。)14_2を有する。
【0045】
一方、第2の斜め孔15は、フランジ12の底部に第2の斜め孔15のフランジ側入出口(以下、「第2のフランジ側入出口」という。)15_1を有し、本体11の側面に第2の斜め孔15の本体側入出口(側孔)(以下、「第2の本体側入出口」という。)15_2を有する。
【0046】
第1のフランジ側入出口14_1と第2のフランジ側入出口15_1はそれぞれ、フランジ12の底部の中心に対して対称の位置に配置される。また、第1の本体側入出口14_2と第2の本体側入出口15_2はそれぞれ、本体11の側面において中心軸Cに対して対向する位置(線対称の位置)に配置される。
【0047】
また、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2が、本体11から先端部13までの領域の表面において、ポート創閉鎖用ガイド10の先端部13の先端と、第1の本体側入出口14_2と第2の本体側入出口15_2それぞれとを結ぶ線上に配置される。すなわち、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2のいずれか一方が0時方向に配置されるとき、他方が6時方向に配置される。
【0048】
ここで、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の少なくとも一部が、ポート創閉鎖用ガイド10の先端部13の先端と、第1の本体側入出口14_2と第2の本体側入出口15_2それぞれとを結ぶ線上に配置されればよい。また、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の幅方向の中心が、上記結ぶ線の線上またはその近傍に配置されることが望ましい。
【0049】
または、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の少なくとも一部が、本体11から先端部13までの領域の表面において、ポート創閉鎖用ガイド10の先端部13の先端と、第1の本体側入出口14_2と第2の本体側入出口15_2それぞれとを結ぶ線上の近傍に配置されてもよい。例えば、これらの線の垂直方向(外周方向)に1~2mmの範囲に配置されてもよい。
【0050】
斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2は、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2から第1の本体側入出口14_2と第2の本体側入出口15_2それぞれの位置を把握できる程度の範囲に配置されればよい。
【0051】
斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2は、ポート創閉鎖用ガイド10の先端部13の先端から所定の長さで配置される。斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の長さ(中心軸方向の長さ)L10は、例えば、5~30mm程度である。
【0052】
また、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端と、第1の本体側入出口14_2および第2の本体側入出口15_2との間の間隔(中心軸方向の長さ)はL11である。
【0053】
ポート創閉鎖用ガイド10では、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2として先端部13に溝が形成される。斜め孔位置確認用マークは、これに限らず、円形、多角形などの所定の形状であってもよい。
【0054】
ポート創閉鎖用ガイド10は、ステンレスで構成される。その他、材料として、チタン等の金属や、ポリカーボネートやポリアミド等の樹脂を用いることができる。
【0055】
ポート創閉鎖用ガイド10の表面では、内視鏡光の反射が抑制されることが望ましく、シボ加工等の表面処理を施すことが望ましい。また、表面を緑色に着色してもよい。これにより、緑色が腹壁などの組織や血液の色(赤色)と補色なので、ポート創閉鎖用ガイド10と腹壁などの組織と容易に判別できる。また、内視鏡光のハレーション等を抑制できる。着色する色は緑色に限らず、青色、黒色等でもよく、体内で背景(組織など)と容易に判別でき、ハレーションしにくい明るくない色であればよい。
【0056】
ポート創閉鎖用ガイド10の全長は60~90mm程度、本体11の直径はポート創のサイズ(トロカールの外径)と同等程度(例えば、10~15mm程度)、フランジの直径は20~40mm程度である。
【0057】
<ポート創閉鎖方法>
本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10を用いたポート創閉鎖方法について、腹壁1のポート創の閉鎖を一例として、図4A~Hを参照して説明する。
【0058】
初めに、手術終了後にトロカールを抜去し、ポート創閉鎖用ガイド10を腹壁1のポートサイト(ポート創)6に挿入する(図4A)。
【0059】
次に、縫合糸把持具(針)8の先端で縫合糸7を把持して、ポート創閉鎖用ガイド10の第1のフランジ側入出口14_1から第1の斜め孔14を介して腹腔(体腔)5に挿通させる(図4B、C)。
【0060】
詳細には、縫合糸把持具8は、第1のフランジ側入出口14_1から挿入され、第1の本体側入出口14_2から挿出後、腹壁1に刺し入れられ、縫合糸把持具8の先端が腹腔5に刺し出される。その結果、縫合糸把持具8の先端が腹壁1の一部の組織(以下、「第1の組織部分」という。)4_1を刺通して、腹壁の腹腔側の表面3から挿出され、第1の組織部分4_1を、縫合糸7をかけて捕捉する。
【0061】
このとき、他のポート創のトロカールを介して挿入された腹腔鏡(図示せず)で、体腔5内から観察しながら縫合糸把持具8を挿通する。ここで、医師(術者)は、ポート創閉鎖用ガイド10の斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の近傍から縫合糸把持具8が挿出されることを把握できる。
【0062】
次に、縫合糸把持具8から縫合糸7を解放して、縫合糸把持具8を引き抜く(図4D)。その結果、縫合糸7が第1の組織4_1を挿通する。
【0063】
次に、縫合糸把持具8を第2のフランジ側入出口15_1から第2の斜め孔15を介して体腔5に挿通させ、体腔5内の縫合糸7を把持させる(図4E)。
【0064】
詳細には、縫合糸把持具8は、第2のフランジ側入出口15_1から挿入され、第2の本体側入出口15_2から挿出後、腹壁1に刺し入れられ、縫合糸把持具8の先端が腹腔5に刺し出される。その結果、縫合糸把持具8の先端が腹壁1の一部の組織(以下、「第2の組織部分」という。)4_2を刺通する。
【0065】
この縫合糸把持具8の先端に、さらなる他のポート創のトロカールを介して挿入された鉗子(図示せず)を用いて、縫合糸7を把持させる。
【0066】
次に、縫合糸7を把持した状態で、縫合糸把持具8を引き抜く(図4F)。その結果、縫合糸7は、順に、第1のフランジ側入出口14_1、第1の斜め孔14、第1の組織部分4_1、体腔5、第2の組織部分4_2、第2の斜め孔15、第2のフランジ側入出口15_1を挿通する。これにより、第2の組織部分4_2を、縫合糸をかけて捕捉する。
【0067】
次に、ポート創閉鎖用ガイド10を抜去して、ポート創閉鎖用ガイド10から縫合糸7を解放する(図4G)。この状態で、このポート創に再度トロカールを挿入して、鉗子を挿入して、他のポート創の閉鎖を施す(図示せず)。
【0068】
最後に、縫合糸7の両端を牽引して、組織開口の両側の腹壁組織(第1の組織部分4_1と第2の組織部分4_2)を共に引き寄せ、腹壁組織近傍で結紮し、ポート創を閉鎖する(図4H)。
【0069】
または、最後に、トロカールを介して腹腔鏡が挿入された他のポート創を、ポート創閉鎖用ガイド10を用いずに縫合して閉鎖してもよい。
【0070】
<効果>
上述のポート創閉鎖において、体腔内から腹腔鏡により観察しながら、縫合糸7を把持した縫合糸把持具(針)8をポート創閉鎖用ガイド10の第1の斜め孔14を介して体腔に挿通させる。
【0071】
従来のポート創閉鎖用ガイド50を用いる場合は、斜め孔位置確認用マークを有さず、術者は腹腔5内からの内視鏡画像で見ているので、ポート創閉鎖ガイド50の第1および第2の本体側入出口(側孔)の位置を認識できない。そこで、図5Aに示すように、腹壁の腹腔側の表面3において、例えば、ポート創閉鎖ガイド50の周囲のp、q、rのいずれの位置から縫合糸把持具(針)8が挿出されるかを認識できない。
【0072】
その結果、外部から縫合糸把持具(針)8を挿入するとき、腹壁の腹腔側の表面3において想定外の方向から縫合糸把持具(針)8が挿出される場合がある。このとき、縫合糸把持具(針)8が腹腔5内の臓器に近い位置に挿出されれば、臓器を損傷する危険性がある。
【0073】
一方、本実施の形態に係るポート創閉鎖ガイド10によれば、図5Bに示すように、斜め孔位置確認用マーク16により腹腔5内(の内視鏡画像)から縫合糸把持具(針)8が挿出される位置を認識できる。これにより、ポート創閉鎖ガイド10の向きを、縫合糸把持具(針)8が挿出される前に調整できる。
【0074】
例えば、斜め孔位置確認用マーク16が臓器の方向に位置する場合には、90度回転させるなど、臓器の方向に縫合糸把持具(針)8が挿出しないように調整できる。また、下腹部では頭尾側方向にポート創閉鎖ガイド10を回転させてもよい。
【0075】
ここで、縫合糸把持具(針)8が挿出される位置とポート創閉鎖ガイド10の側壁との距離Lnは、5~7mm程度であることが望ましい。
【0076】
したがって、外部から縫合糸把持具(針)を挿入するとき、臓器を損傷することなく、安全にポート創を閉鎖できる。
【0077】
また、本実施の形態に係るポート創閉鎖ガイド10では、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端(フランジ12側の端)をポート創閉鎖ガイド10の挿入の深さの目安にできる。
【0078】
例えば、腹壁1においてポート創閉鎖ガイドの挿入が深すぎると、ポート創閉鎖ガイドの第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2が最適な位置より腹腔5側に位置することになるため、縫合糸がかかる(捕捉する)腹壁(腹直筋後鞘などの腹腔5側の筋膜)すなわち第1および第2の組織部分4-1、4-2の厚さが少なくなる。
【0079】
また、逆に、腹壁1においてポート創閉鎖ガイドの挿入が浅すぎると、ポート創閉鎖ガイドの第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2が最適な位置より体表面2側に位置することになるため、必要以上に腹腔5側の筋膜を捕捉することになる。
【0080】
第1および第2の組織部分4-1、4-2(腹腔5側の筋膜)を一定で適切な厚さで、縫合糸をかけて捕捉するためには、腹壁の腹腔側の表面3から第1の本体側入出口(側孔)14_2および第2の本体側入出口(側孔)15_2までの距離が一定で適切であることが必要である。
【0081】
本実施の形態に係るポート創閉鎖ガイド10によれば、ポート創閉鎖ガイド10を挿入する際に、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端が現れたとき、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端とポート創閉鎖ガイド10の第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2との間の長さL11が、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離になる。すなわち、腹壁1における第1および第2の組織部分4-1、4-2の厚さになる。
【0082】
したがって、長さL11を腹腔5側の筋膜を捕捉する適切な厚さに設定することにより、ポート創閉鎖ガイド10を挿入する際に、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端が現れた位置にポート創閉鎖ガイド10を固定して縫合すれば、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで、縫合糸をかけて捕捉して縫合できる。
【0083】
さらに、上述のように、縫合糸把持具(針)8が挿出される位置とポート創閉鎖ガイド10の側壁との距離Lnは、例えば、5~7mm程度であることが望ましい。そこで、ポート創閉鎖ガイド10の挿入において、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端が現れた位置で縫合糸把持具(針)8を挿入、挿出するときに、距離Lnが適切な距離(例えば、5~7mm程度)程度なるようにL11が設定されることが望ましい。
【0084】
このように、本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10によれば、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離を正確に認識できるので、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合でき、ポート創の閉鎖を良好に施すことができる。
【0085】
また、ポート創閉鎖ガイド10の挿入において、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端(フランジ側の端)が腹壁に隠れてしまった場合、斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の長さL10より、おおよその挿入の位置を把握できる。
【0086】
また、本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10において、本体11の表面に目盛りが配置されてもよい。例えば、目盛りは、先端部13の先端周辺に配置されてもよい。
【0087】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドについて図6A、Bを参照して説明する。
【0088】
<ポート創閉鎖用ガイドの構成>
本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド20は、図6Aに示すように、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2は、ポート創閉鎖用ガイド20の先端部13の先端から離れた位置で、所定の長さ(中心軸方向の長さ)L20で配置される。すなわち、先端部13の先端と斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端(先端部13の先端側の端部)との間に間隔(中心軸方向の長さL21)を有する。L20は、例えば、5mm~30mm程度である。また、L21は、例えば、1mm~10mm程度である。
【0089】
また、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端と、第1の本体側入出口14_2および第2の本体側入出口15_2との間の間隔(中心軸方向の長さ)はL22である。
【0090】
その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0091】
<効果>
本実施の形態に係るポート創閉鎖ガイド20では、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端をガイドの挿入の深さの目安にできる。
【0092】
上述の通り、第1および第2の組織部分4-1、4-2(腹腔5側の筋膜)を一定で適切な厚さで、縫合糸をかけて捕捉するためには、腹壁の腹腔側の表面3から第1の本体側入出口(側孔)14_2および第2の本体側入出口(側孔)15_2までの距離が一定で適切であることが必要である。
【0093】
本実施の形態に係るポート創閉鎖ガイド20によれば、図6Bに示すように、ポート創閉鎖ガイド20を挿入する際に、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端が現れたとき、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端とポート創閉鎖ガイド20の第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2との間の長さL22が、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離になる。すなわち、腹壁1における第1および第2の組織部分4-1、4-2の厚さになる。
【0094】
したがって、長さL22を腹腔5側の筋膜を捕捉する適切な厚さに設定することにより、ポート創閉鎖ガイド20を挿入する際に、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端が現れた位置にポート創閉鎖ガイド20を固定して縫合すれば、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで、縫合糸をかけて捕捉して縫合できる。
【0095】
さらに、上述のように、縫合糸把持具(針)8が挿出される位置とポート創閉鎖ガイド20の側壁との距離Lnは、例えば、5~7mm程度であることが望ましい。そこで、ポート創閉鎖ガイド20の挿入において、腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端が現れた位置で縫合糸把持具(針)8を挿入、挿出するときに、距離Lnが適切な距離(例えば、5~7mm程度)程度なるようにL22が設定されることが望ましい。
【0096】
このように、本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド20によれば、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離を正確に認識できるので、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合でき、ポート創の閉鎖を良好に施すことができる。
【0097】
本実施の形態では、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端をガイドの挿入の深さの目安とする例を示したが、第1の実施の形態と同様に、斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の後端をガイドの挿入の深さの目安としてもよい。
【0098】
<変形例>
本実施の形態の変形例に係るポート創閉鎖用ガイド30では、図7に示すように、斜め孔位置確認用マーク36_1(図示せず)、36_2が目盛りを有する。
【0099】
ポート創閉鎖用ガイド30を用いる場合、初めに、ポート創閉鎖用ガイド30を腹壁1等のポートサイト(ポート創)6に挿入するときに、ポート創閉鎖用ガイド30の先端部13が腹壁(体腔)内に挿出する。このとき、斜め孔位置確認用マーク36_1、36_2の目盛りにより、ポート創閉鎖用ガイド30の先端部13が腹壁(体腔)内に挿出する長さを目視などにより把握できる。
【0100】
そこで、ポート創閉鎖用ガイド30の先端部13が腹壁(体腔)内に挿出する長さより、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離、すなわち、腹壁1における第1および第2の組織部分4-1、4-2の厚さを認識できる。
【0101】
これにより、第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2を適切な位置に設定して、腹腔5側の筋膜(第1および第2の組織部分4-1、4-2)を一定で適切な厚さで、縫合糸をかけて捕捉して縫合できる。
【0102】
さらに、上述のように、縫合糸把持具(針)8が挿出される位置とポート創閉鎖ガイド30の側壁との距離Lnは、5~7mm程度であることが望ましい。そこで、ポート創閉鎖ガイド30の挿入において、目盛りにより腹壁1における第1および第2の組織部分4-1、4-2の厚さを認識して、距離Lnを適切な距離(例えば、5~7mm程度)にできる。
【0103】
本変形例に係るポート創閉鎖用ガイド30によれば、腹壁の腹腔側の表面3から第1および第2の本体側入出口(側孔)14_2、15_2までの距離を正確に認識できるので、腹腔5側の筋膜(第1および第2の組織部分4-1、4-2)を一定で適切な厚さで捕捉して縫合でき、ポート創の閉鎖を良好に施すことができる。
【0104】
本変形例では、複数のラインからなる目盛りを用いる例を示したが、単一のラインからなる目盛りを用いて、ポート創閉鎖用ガイドの挿入の目安としてもよい。
【0105】
本変形例では、斜め孔位置確認用マーク36_1、36_2の全体を目盛りとする例を示したが、斜め孔位置確認用マーク36_1、36_2の一部を目盛りとしてもよく、斜め孔位置確認用マーク36_1、36_2に加えて、目盛りを有する構成としてもよい。
【0106】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドについて図8A図10を参照して説明する。
【0107】
<ポート創閉鎖用ガイドの構成>
本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド40は、図8A、Bに示すように、斜め孔位置調整治具41を備える。他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0108】
斜め孔位置調整治具41は、図8Bの鳥瞰図(左図)と上面図(右図)に示すように、リング形状を有し、上面から見て中心近傍に中空部411を備える。
【0109】
中空部411の直径は、ポート創閉鎖用ガイド40の本体11の直径と略同等である。これにより、斜め孔位置調整治具41は、ポート創閉鎖用ガイド40の本体11に脱着可能である。
【0110】
また、斜め孔位置調整治具41の直径(外径)は、例えば、20~50mm程度である。また、斜め孔位置調整治具41の厚さは、例えば、2~20mm程度である。
【0111】
また、斜め孔位置調整治具41は、ステンレスで構成される。その他、材料として、チタン等の金属や、ポリカーボネートやポリアミド等の樹脂を用いることができる。
【0112】
ポート創閉鎖用ガイド40をポート創に挿入するときに、斜め孔位置調整治具41の中空部411にポート創閉鎖用ガイド40の本体11が挿通され、斜め孔位置調整治具41はポート創閉鎖用ガイド40のフランジ12と体表面(例えば、腹壁表面)2との間に配置される。
【0113】
<効果>
従来のポート創閉鎖用ガイドまたは第1および第2の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10、20のみを用いてポート創を閉鎖するとき、対象の腹壁1が厚い場合には第1の斜め孔14と第2の斜め孔15とを介して十分に厚い腹壁(第1の組織部分4_1、第2の組織部分4_2)に縫合糸7を挿通できるので、ポート創の閉鎖を良好に施すことができる。
【0114】
しかしながら、対象の腹壁1が薄い場合には、図9Aに示すように、第1の斜め孔14と第2の斜め孔15とを介して十分に厚さの腹壁(第1の組織部分4_1、第2の組織部分4_2)に縫合糸7を挿通できないので、ポート創の閉鎖を良好に施すことができない。
【0115】
本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド40を用いれば、図9Bに示すように、斜め孔位置調整治具41により、第1および第2の本体側入出口14_2、15_2の位置を体表2側にシフトできる。その結果、十分に厚い腹壁(第1の組織部分4_1、第2の組織部分4_2)に縫合糸7を挿通できるので、ポート創の閉鎖を良好に施すことができる。
【0116】
また、本実施の形態における斜め孔位置調整治具41を、第1の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド10と組み合わせて用いることができる。ここで、ポート創閉鎖ガイド10を挿入して腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク16_1、16_2の後端が現れたときに、ポート創閉鎖ガイド10を十分に腹壁に挿入できない場合、例えば、フランジ12と腹壁に間に隙間が生じる場合には、適切な厚さの斜め孔位置調整治具41をフランジ12と腹壁に間に配置してポート創閉鎖ガイド10を固定して縫合すれば、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合できる。また、このとき、ポート創閉鎖ガイド10の側壁からの距離Lnを適切な距離(例えば、5~7mm程度)にして、縫合糸把持具(針)8を挿出させることができる。
【0117】
また、本実施の形態における斜め孔位置調整治具41を、第2の実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイド20と組み合わせて用いることができる。ここで、ポート創閉鎖ガイド20を挿入して腹壁の腹腔側の表面3から斜め孔位置確認用マーク26_1、26_2の先端が現れたときに、ポート創閉鎖ガイド20を十分に腹壁に挿入できない場合、例えば、フランジ12と腹壁に間に隙間が生じる場合には、適切な厚さの斜め孔位置調整治具41をフランジ12と腹壁に間に配置してポート創閉鎖ガイド20を固定して縫合すれば、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合できる。また、このとき、ポート創閉鎖ガイド20の側壁からの距離Lnを適切な距離(例えば、5~7mm程度)にして、縫合糸把持具(針)8を挿出させることができる。
【0118】
また、本実施の形態における斜め孔位置調整治具41を、第2の実施の形態の変形例に係るポート創閉鎖用ガイド30と組み合わせて用いることができる。ここで、斜め孔位置確認用マーク36_1、36_2の目盛りにより、ポート創閉鎖ガイド30の側孔と腹壁の腹腔側の表面3との間の長さを目盛りで測定でき、その長さに応じて厚さの異なる斜め孔位置調整治具21を選択できる。または、その長さに応じて、斜め孔位置調整治具21の数を決めてもよい。その結果、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合できる。また、このとき、ポート創閉鎖ガイド30の側壁からの距離Lnを適切な距離(例えば、5~7mm程度)にして、縫合糸把持具(針)8を挿出させることができる。
【0119】
または、所定の目盛りの位置までポート創閉鎖ガイド30を挿入したときに、ポート創閉鎖ガイド30が十分に腹壁に挿入されない場合、例えば、フランジ12と腹壁に間に隙間が生じる場合には、適切な厚さの斜め孔位置調整治具41をフランジ12と腹壁に間に配置してポート創閉鎖ガイド30を固定して縫合すれば、腹腔5側の筋膜を一定で適切な厚さで捕捉して縫合できる。また、このとき、ポート創閉鎖ガイド30の側壁からの距離Lnを適切な距離(例えば、5~7mm程度)にして、縫合糸把持具(針)8を挿出させることができる。
【0120】
また、本実施の形態に係るポート創閉鎖用ガイドを用いれば、第1および第2の本体側入出口14_2、15_2から組織に縫合糸把持具(針)8を刺し入れる角度が腹壁の厚さにかかわらず一定なので、良好な刺通性を腹壁の厚さに依らず確保できる。
【0121】
本実施の形態では、ポート創閉鎖用ガイドにおける斜め孔位置調整治具がリング形状である例を示したが、これに限らない。図10に示すように、斜め孔位置調整治具42が側面の一部に開口部を有して、例えばU字型の形状を有してもよい。ここで、開口部の幅は、ポート創閉鎖用ガイド40の本体11の直径と略同等である。これにより、ポート創閉鎖用ガイドをポート創に挿入した後に、ポート創閉鎖用ガイドの本体11の側方から、斜め孔位置調整治具42を嵌合させて、フランジと体表面との間に配置できる。
【0122】
ここで、ポート創閉鎖用ガイドにおける斜め孔位置調整治具が、U字型の形状である例を示したが、他の形状でもよく、側面の一部に開口部を有し、ポート創閉鎖用ガイドの本体11の側方から、斜め孔位置調整治具42を嵌合させて、フランジと体表面との間に配置できる形状であればよい。
【0123】
また、本実施の形態では、斜め孔位置調整治具の外形が円形である例を示したが、これに限らず、外形は多角形でもよい。
【0124】
本発明の実施の形態では、2本の斜め孔位置確認用マークが配置される例を示したが、1本の斜め孔位置確認用マークが、ポート創閉鎖用ガイド10の先端部13の先端と、第1の本体側入出口と第2の本体側入出口それぞれとを結ぶ線のいずれか一方の線上またはこの線上の近傍に配置されてもよい。
【0125】
ここで、1本の斜め孔位置確認用マークが配置される場合、通常の内視鏡画像では一方向から観察するので、1本の斜め孔位置確認用マークを見えるようにポート創閉鎖ガイドを回転させる場合には作業(施術)効率が低下する。
【0126】
一方、2本の斜め孔位置確認用マークがそれぞれ0時方向、6時方向に配置される場合、斜め孔位置確認用マークを見るためにポート創閉鎖ガイドを回転させる必要がないので作業(施術)効率が向上する。
【0127】
本発明の実施の形態では、複数(2個)の斜め孔位置確認用マークそれぞれが、同一の形状を有し、第1の本体側入出口、第2の本体側入出口に対して同じ位置に配置される例を示したが、異なる形状でもよく、第1の本体側入出口、第2の本体側入出口に対して同じ位置に配置されてもよい。
【0128】
本発明の実施の形態では、ポート創閉鎖用ガイドの構成などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。ポート創閉鎖用ガイドの機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、外科手術においてトロカール等の抜去後のポート創の閉鎖に用いる医療機器として、ポート創閉鎖用ガイドに適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
10、20、30、40 ポート創閉鎖用ガイド
11 本体
12 フランジ
13 先端部
14 第1の斜め孔
14_1 第1のフランジ側入出口
14_2 第1の本体側入出口
15 第2の斜め孔
15_1 第2のフランジ側入出口
15_2 第2の本体側入出口
16_1、16_2 斜め孔位置確認用マーク
41 斜め孔位置調整治具
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H