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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003681
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】SAM基板の再利用方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/22 20060101AFI20240105BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20240105BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C30B29/22 A
C30B33/00
C23C16/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102994
(22)【出願日】2022-06-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】502209796
【氏名又は名称】株式会社福田結晶技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 承生
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕児
(72)【発明者】
【氏名】南部 十輝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏孝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 努
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴
(72)【発明者】
【氏名】星生 伸一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】只友 一行
(72)【発明者】
【氏名】井本 良
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC01
4G077FG11
4G077FG14
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA08
4K030BA38
4K030BB02
4K030CA05
4K030CA12
4K030DA02
4K030DA03
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA10
(57)【要約】
【課題】フレッシュな基板と同様の結果が従来より効率よくかつ得られるSAM再利用方法を提供すること。
【解決手段】ScAlMgO(以下「SAM」と記す。)基板上に、Ga化合物からなる層を気相成長させ、室温に戻したときに、前記Ga化合物からなる層とSAM基板とを分離し、分離したSAM基板を再加工することで、該SAM基板上に新たな層の成長を可能にするSAM基板の再利用方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ScAlMgO(以下「SAM」と記す。)基板上に、Ga化合物からなる層を気相成長させ、室温に戻したときに、前記Ga化合物からなる層とSAM基板とを分離し、分離したSAM基板を再加工することで、該SAM基板上に新たな層の成長を可能にするSAM基板の再利用方法。
【請求項2】
前記Ga化合物からなる層は、1又は複数の層からなる請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項3】
前記1又は複数の層は、InGaN、GaN、InN、InAIN、AIN、Gaのいずれかからなる層である請求項2記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項4】
前記気相成長はHVPE又はMOVPEである請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項5】
前記気相成長はMBEである請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項6】
前記再加工は、分離した前記SAMの表面層を研磨によってエピレディにする請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項7】
前記研磨による研磨量は、40~60μmである請求項6記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項8】
前記研磨による研磨量は、20~30μmである請求項6記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項9】
前記再加工は、前記SAMの表面から20~30μmの位置における劈開によりエピレディにする請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項10】
前記SAM基板のサイズは50mm以上である請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項11】
前記SAM基板の面方位は(000l)面、又は(0001)面に対してオフ角が±0.5度以内である請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【請求項12】
前記オフ角の精度は面方位に対して±0.1度以内である請求項1記載のSAM基板の再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAM基板の再利用方法に係る。
本発明は、GaN等化合物が成長可能にするSAM加工方法及び再加工基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN基板は、従来、異種基板サファイアを用いて、MOVPE法にて低温(≒600℃)でGaNのバッファ層を作成し、その上に約1000°Cで約3μmのGaN薄膜を成長させる。これをGaNテンプレートと呼び、この上にHVPE法で約lmmのGaN厚膜を成長させ、異種基板サファイアを分離してGaN自立基板を作製している。
問題点は、GaNとサファイアとの格子不整合率が18%と大きいため、(1)転位密度が高い、(2)ウエハサイズが直径2インチ以上になるとサファイアとGaNとの分離が困難でクラックがはいり易く良品歩留が10~20%と悪い、という点である。
サファイアと格子不整率が1.8%と小さいSAMに変えると、(1)転位密度が1桁以上小さくなる、(2)SAMとGaNは成長の冷却時に自然に分離(はくり)する。GaN自立基板の剥離は100%の高歩留まりである。
【0003】
この自立基板作製工程で、GaNとSAM基板とは冷却時に分離するため、SAM基板の再利用の可能性が非特許文献1において報告されている。また、分離後のSAM基板の劈開により、劈開後の面は新品SAM基板の面とほとんど同じであることが報告されている。すなわち、非特許文献2では、10mm×10mm角基板で、基板表面はナイフェッジにより、劈開を利用している。
【0004】
劈開面が棚状により、エピレディ条件を見たさない時は、研磨加工することも示唆された。
(非特許文献3)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K.0hnishi,eta1.,Applied Physics Express,10(10),101001.(2017)
【非特許文献2】KOhnishi,et a1., Japanese Journa1ofApplied Physics,58,SC1023(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フレッシュな基板と同様の結果が従来より効率よくかつ得られるSAM再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ScAlMgO(以下「SAM」と記す。)基板上に、Ga化合物からなる層を気相成長させ、室温に戻したときに、前記Ga化合物からなる層とSAM基板とを分離し、分離したSAM基板を再加工することで、該SAM基板上に新たな層の成長を可能にするSAM基板の再利用方法である。
請求項2に係る発明は、前記Ga化合物からなる層は、1又は複数の層からなる請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項3に係る発明は、前記1又は複数の層は、InGaN、GaN、InN、InAIN、AIN、Gaのいずれかからなる層である請求項2記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項4に係る発明は、前記気相成長はHVPE又はMOVPEである請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項5に係る発明は、前記気相成長はMBEである請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項6に係る発明は、前記再加工は、分離した前記SAMの表面層を研磨によってエピレディにする請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項7に係る発明は、前記研磨による研磨量は、40~60μmである請求項6記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項8に係る発明は、前記研磨による研磨量は、20~30μmである請求項6記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項9に係る発明は、前記再加工は、前記SAMの表面から20~30μmの位置における劈開によりエピレディにする請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項10に係る発明は、前記SAM基板のサイズは50mm以上である請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項11に係る発明は、前記SAM基板の面方位は(0001)面、又は(0001)面に対してオフ角が±0.5度以内である請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
請求項12に係る発明は、前記オフ角の精度は面方位に対して±0.1度以内である請求項1記載のSAM基板の再利用方法である。
【発明の効果】
【0008】
フレッシュな基板と同様の結果が従来よりも効率よく得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施するための形態に係るSAM基板の再利用プロセスを示す概念図である。
図2】実施例に係り、剥離したSAM基板の表面を示す写真である。
図3】実施例に係り、表面研磨した基板の表面を示す写真である。
図4】実施例5に係り、クラック無、無色透明な10mm-3.5インチのSAM単結晶を示す外観写真である。
図5】実施例5に係り、SAMのエピレディウエハを示す外観写真である。
図6】実施例5に係り、120mm径のルツボを用いた結晶をカットした表面のXRT写真及びX拡大図である。
図7】実施例5に係り、150mm径のルツボを用いた結晶をカットした表面のXRT写真及びX拡大図である。
図8図1の再掲図である。
図9】実施例5に係り、SAM及びサファイア基板上の作製自立GaNウエハ及び分離後のウエハの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、次の用語は、それぞれ以下に述べる意味として用いられる。
自立基板とは、異種基板上に成長したものではなく、単体で基板として存在できる基板である。
【0011】
転位密度は、転位密度の代わりにエッチングによって転位を表面にピットの形で形成してピットの密度を数値化したEPD(Etch Pit Density)を用いることがある。また、EPDは転位密度と同義で使われることがある。
【0012】
MOVPE(Meta1
Organic Vapor Phase Epitaxy)は、トリメチルガリウム等の有機金属を3属元素の原料に使った結晶成長装置あるいは結晶成長方法である。
HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)は、3属元素の塩化物(GaCl等)と5属元素の水素化物(NH等)を原料に使った結晶成長装置あるいは結晶成長法である。
エピタキシャル成長は、基板の結晶方位等の結晶情報を引き継いで基板上に結晶成長する方法である。
【0013】
本発明のGaN結晶自立基板の製造方法は、ScAlMgO(SAM)下地基板上にMOVPE法或いはMBE法による高結晶性のGaN薄膜の結晶成長を行い、次いでSiO等の誘電体のストライプ状、へキサゴナル状等のパターン形状のマスクを形成した後に、HVPE法による高速のGaN結晶成長を行うことで、クラックや破断の発生を抑制し、欠陥密度(CLで観測される暗点密度)が小さいGaNを得ることを特徴とする。さらに、SAM基板の劈開性により厚膜GaN結品がSAM基板から容易に自然剥離し、自立GaN基板として容易に得られ、自然剥離したSAM基板は再研磨により、基板として再利用が可能なことを特徴としている。
【0014】
尚、上記CLで観測される暗点密度は、結晶表面に表出している転位欠陥(貢通転位)を示すための指標となる物性値であり、走査型電子顕微鏡/力ソードルミネッセンス(SEM・CL)装置を用いて測定される。測定時の加速電圧は5kVとし、観察範囲は20μm×20μmとする。このとき、観察範囲内に観察された暗点の数より暗点密度を算出する。
【0015】
[SAM基板]
従来はGaNの結晶成長の下地基板としてサファイア基板が使用されているが、本発明で使用する下地基板は上記SAM基板であり、(0001)面を使用する。(0001)面の劈開性に特徴がある。SAM基板のオフ角(ミスカット角)はGaNの結品性を最大化するように最適化される。
【0016】
該SAM基板は、通常、厚みが0.3~1mm、直径が50~300mmの円盤状のものが使用される。目的とするGaN基板の直径より約10mm径の大きいものが望ましい。
【0017】
[GaN結晶と下地基板との分離SAMを使った自然剥離]
HVPE法による厚膜のGaN結品を育成した後、厚膜GaN結晶と下地基板との分離はGaN基板の生産歩留まりを左右する重要課題である。下地基板としてサファイア基板を使う場合は、レーザ一照射分離(レーザーリフトオフ)や研磨法、VAS法等の公知の方法により、下地基板との分離を行い、GaNの自立基板を得ている。
【0018】
しかしながら、レーザ一照射分離や研磨等の方法では、GaN結晶へのダメージが発生する恐れがあり、VAS法ではプロセスが複雑であり、コストァップの要因になるので、必ずしも効率的な分離方法ではない。
【0019】
該SAM基板を用いて、膜厚が100μm以上、好適には300μm以上のGaN結晶を成長した後、基板の冷却を行うと、特別に機械的応力を印加することなく、冷却時の熱応力のみにてSAMの劈開性により、GaN/SAMの界面或いは界面近傍のSAM結晶内で自然剥離が生じて分離できる。冷却は、例えば、低温ガス等を供給して強制的に行つてもよく、また、自然放冷によって行つてもよい。冷却によってGaN結晶J言の温度を20℃~150℃まで低下させる。冷却速度は、例えば、1~100℃/minである。
【0020】
本発明において、SAM下地基板は、GaN結晶成長後の冷却という簡単な操作でのGaN結晶の分離が可能であるので、自立GaN結晶の生産歩留まりの改善に役立つ。
【0021】
[マスクパターン]
マスクパターンニングの成膜手段はそれ自体公知であり、真空蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical
Vapor Deposition)等の方法により、下地GaN薄膜の表面に、SAMおよびGaN結晶に比較して熱膨張係数が小さな、SiO膜、SiNx膜、TiO膜、ZrO膜等を形成してパタ一二ングする方法が挙げられる。該マスク層の厚さは、通常0.001~3μm程度であり、マスクバターンの幅は3μm~1000μm、開口幅は3μm~1000μmの範囲で選択できる。
【0022】
マスクバターンの形成は通常のフォトリソグラフィー技術で行う。
上記GaN結晶層表面形成するマスク形状は特に制限されるものではなく、ストライプ状マスク、格子状マスク、ドット状マスク、へキサゴナル(ハニカム)状マスクなど様々な形状が採用される。格子状マスクの格子は、直交して良いし、所定の角度でクロスしてもよい。ドットの形状も特に制限はなく、円形、三角形、正方形、六角形などが具体的に挙げられる。
【0023】
また、ドットの配列パターン三角格子や正方格子等様々な形状が採用される。
上記マスクを構成するユニツト、例えば、前記ストライプ状マスクの場合は線、ドット状マスクの場合のドットは、相互に等間隔に存在することが好ましい。また、上記ユニツトは単一であってもよいし、複数の集合体であってもよい。例えば、ストライプ状マスクを構成する線は1本でもよいし、複数本の線の組み合わせでもよい。
このマスクパターンは、厚膜成長したGaNのクラック発生を抑制する効果を有する。
【0024】
[HVPE法]
HVPE法は、塩化ガリウムと、窒素源となるアンモニア等を、気相反応させて下地基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させる方法であり、それ自体公知の方法である。
結晶成長に用いられるHVPE装置は、大きくは反応管、加熱系、ガス供給系、及びガス排気系から構成される。ガス供給系はマスフローコントローラーによって、ガス供給量の精密な制御が可能である。加熱系は、石英製の反応管を抵抗加熱式のヒーターで覆い、反応管、及びその中に設置される基板やサセプタ、金属原料を加熱するホットウォール法が用いられている。ホットウォール法を用いることにより、 原料ガスを充分に加熱して基板表面に供給することができ、供給原料の飽和蒸気圧を高くすることができる。その結果、多量の原料供給が可能となり高速成長を実現できる。
【0025】
反応管の中は大きく金属原料部と基板加熱部に分けられる。金属原料部にはGa金属が置かれており、高温下にて、HClガスを供給することにより、Ga金属とHClガスとが反応し、GaClが生成する。生成したGaClガスは、石英製の配管を通り、基板加熱部へと運ばれる。基板加熟部には、ガスの流れに対して垂直に炭素製或いはSiC製のサセプタが配置され、サセプタは自転機構或いは自公転機構を有している。
【0026】
そして、そのサセプタ上にSAM下地基板上にGaN結品を成長させたテンプレート基板がセットされ、金属原料部で生成したGaClガス、及び、NHガスと、が基板上で反応することで、GaN結晶の成長が進行する。
結晶成長に(は原料ガスとして窒素原料であるNHガス、Ga源であるGaClを生成するためのHClガスが用いられる。GaCl生成には、HClガスの代わりにClガスを使用しても良い。またGa原料であるGa金属は装置内に設置される。原料ガスであるNHとHClガスの他に、HやNなどのキャリアガスが用いられる。
【実施例0027】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0028】
(実施例1)
〔GaN結晶層の形成〕
(0001)面SAMジャスト基板をCMP加工及び清浄化処理を行いエピレディのSAM基板を準備した。GaN結晶層の形成は、MOVPE法,MBE法などが選択されるが、ここではMOVPE法を使った。
【0029】
SAM基板を(0001)面が上向きになるように石英トレイに載せ、MOVPEリアクタ内にセットした。
SAM基板を載せた石英トレイをMOVPE内にセットした後、SAM基板を1100℃に加熱するとともに反応容器内の圧力を100kPaとし、また、反応容器内にキャリアガスとしてHを10L/minで流し、その状態を10分間保持することによりSAM基板のサーマルクリ一ニングを行った。
【0030】
次いで、反応管内に設置されたGa金属にHClガスを0.8L/min流通させた。また、NHガスを8L/min、キャリアガスであるHガスを4.1L/min流通し、720分間GaN結晶を成長させた。GaN結晶の膜厚は2000μmであった。
【0031】
その後、HClガスの流通を止めて、成長を終了させ、基板の冷却を行った。冷却はガスを流通させながら、自然放冷にて行った。冷却時、基板温度が600℃以下になるまではNHガスを5L/min流通し、600℃以下ではNガスを37L/min流通した。
基板温度が150℃以下になった時点で、装置内から基板を取り出したところ、その時点においてすでにSAM基板とGaN結晶層とは全面で自然剥離しており、自立GaN基板が得られた。自然剥離の歩留まりは100%であった。
【0032】
得られたGaN結晶自立基板の特性を、以下の方法で測定した。
【0033】
〔暗点密度評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、走査型電子顕微鏡/力ソードルミネッセンス(SEM/CL)装置(日本電子社製JSM-7600F/Gatan社製MonoCL4)を用いて、GaN結晶自立基板の表面の観察を行った。このときの加速電圧は5kV、観察範囲は20μm×20μmとし、観察範囲内に観察された暗点の総数から暗点密度を算出した。
【0034】
〔クラック本数評価〕
得られたGaN結晶自立基板について、高強度ハロゲン光を照射し、結晶内に存在するクラックの本数を測定した。
【0035】
〔表面状態〕
得られたGaN結晶自立基板について、ノマルスキー微分干渉顕微鏡を用いて表面状態の評価を行った。
【0036】
得られたGaN結晶は、HVPE炉から取り出した時にはSAM基板と自然剥離しており、(0001)面を主面とする、厚みが約2mmの自立GaN基板であった。基板にはクラックは確認できなかった。裏側の剥離面はGaN結晶側もSAM基板側も鏡面であり、SAM基板も割れることなく回収することができた。
【0037】
自然剥離の確率は、100%であり、SAM基板の回収率は80%であった。
自然剥離したGaN結晶の0002XRCの半値全幅は120arcsecであり、CL測定による暗点密度は1.0×106個/cmであった。
【0038】
(実施例2)
SAM 基板上にMOVPE法によりGaN等の窒化物半導体を形成した場合、基板の自然分離後、劈開加工を行うと、時として劈開による面剥がれが生じることがある(図2)。この場合、劈開加工のみでは、SAM基板の再利用は困難である。
そこで、40μm~60μmの表面研磨を行ったところ、エピレヂィのSAM基板が得られた。
【0039】
次いで、HVPE法でGaN層を形成したところ、新規のSAM基板と同等の転位が少ない品質の膜が得られた。
また、再利用は3階以上可能であった。
【0040】
(実施例3)
本例は、MBE法により作製したGaNテンプレートを用いたHVPE法GaN自立基板を作製した例である。
【0041】
〔SiOマスクパターンの形成〕
作製したGaN/SAMテンプレートのGaN結晶層(成長表面)上にレジストをスピンコートした。次いでフォトリソグラフィー法にてGaNのa軸或いはm軸方向にストライプ状或いはへキサゴナル状のパターンを形成した。
次いでスパッタリングによりSiOを200nm成膜した。成膜の後、レジストを洗浄除去することでGaN結晶層上にストライプ状の或いはへキサゴナル状のSiO層のパターンを形成した。
【0042】
〔GaN厚膜の形成〕
表面にSiOプマスクパターンを形成したGaNテンプレートは、HVPE装置内の炭素製試料固定治具(サセプター)にセットした。その後、反応管内にNガスを30min流し、反応管内をNガス雰囲気下とした。金属原料部が850℃、基板加熱部が1050℃となるように反応管を加熟し、設定温度到達後、25分問保持した。このとき、基板加熱部が500℃に達するまでは反応管内にはNガスを流通させ、500℃以上ではHガス、及び、NHガスを流通させた。
【0043】
(実施例4)
MBE法による直径50mmc面SAM基板上GaN成長
本例は、MBEを用いてSAM基板上に窒化物層を形成した例である。
Mercure Beam Epitaxy(MBE)法は高真空容器内の上部に成長面を下に向けて成長用基板を設置する。真空容器下部にGa金属を入れたるつぼを設置してヒーターにより過熱して金属蒸気を発生させる。同様に、真空容器下部に窒素ガスの導入孔から窒素ガスを噴霧し、これらのGa蒸気と窒素ガスを基板上で合流させて基板上にGaN単結晶を成長させる。原料となるGa金属は純度6Nで、Ga蒸気の供給量は過熱するヒーター温度で決定する。窒素ガスは、純度5Nで活性化させるためにプラズマセルを通して供給する。供給量はガス流量で決定し、活性化度はプラズマセルのパワーで決定する。
成長条件
雰囲気: 真空、1×10-6Pa以下
成長温度: 700°C
基板回転: 10rpm
Ga Flux量: 6×10-7Torr
窒素ガス流量: 2sccm
窒素ラジカル用プラズマパワー : 120W
成長時間: 4時間
【0044】
成長はRHEEDで観察しながら行った。その結果、SAM基板上全面に厚さ均一のGaN単結晶膜の成長に成功した。膜厚は1.0μmで膜厚測定は、分光光度計による非破壊膜厚計測で行った。
【0045】
図3に示すようにSAM基板上にバッファ層を介さずにGaNが直接成長していることが実証された。直径50mmのSAM基板上にバッファ層無しで約1μm膜厚のGaNプレートができた。
実際に使用した装置の内部構造を図4に示す。SAM基板としては直径50mm以上の基板を用いた。
MBE法で窒化物半導体を成長する場合、基板温度昇温後、一定時間真空中に放置する工程とラジカル化した窒素ガスを照射する工程を備えた単結晶成長方法で行った。
【0046】
1.前項において、基板直径が50mm以上のため、モリブデンサセプタとSAM基板の温度上昇速度が異なる。そのため、所定の基板温度に到達したのち、一定時間その温度で保持して、SAM基板の温度分布を均一化する。
2.その後、基板表面の状態を一定にするため、ラジカル化した窒素ガスを一定時間照射する。
3.窒素ガスを照射直後は、基板表面温度から熱が奪われるために、温度の不均一が生じる。 それを避けるために前項の行程を入れたのち、金属粒子を照射して地下物膜を生成させる。
【0047】
ヒーター径が1.5倍より大きい場合においては、基板とヒーターの間に基板の直径に対して1.2倍から1.5倍の穴の開いている熱遮蔽板が設置されたMBE法成長装置にする。MBE法成長装置を図5に示す。
【0048】
前項において、ヒーター径が設置するSAM基板の1.5倍より大きい時は、前項のヒーターとSAM基板の間に穴の開いた熱遮蔽板を設置し、その穴の直径が、基板の直径の1.2倍から1.5倍となっている。
【0049】
ヒーターからの輻射熱は熱遮蔽板で遮られるため、基板側から見て、ヒーター直径は前項と同じ効果が認められる。
1枚のモリブデンサセプタにSAM基板を複数枚設置して薄膜成長する場合、前項と同様に、設置する基板と同数の穴の開いた熱遮蔽板を設置する構造となっているMBE装置にする。装置を図6に示す。
【0050】
(実施例4)
MBE法による直径50mmc面SAM基板上lnGaN成長
上述した実施例と同様の構成で、Ga金属源に加えてln金属源を設置して、lnGaN結晶成長を実施した。ln金属の純度は5Nである。
成長条件
雰囲気: 真空、1×10-6Pa以下
成長温度: 600°C
基板回転: 10rpm
ln+Ga Flux量: 4.3×10-7Torr
ln/(ln+Ga)比: 0.4
窒素ガス流量: 2sccm
窒素ラジカル用プラズマシャワーパワー:110W
成長時間:4時間
【0051】
成長は、RHEEDで観察しながら行った。その結果、SAM基板上全面に厚さ均一のln0.17Ga0.83N単結晶膜の成長に成功した。膜厚は0.85μmで膜厚測定は、分光光度計による非破壊膜厚計側で行った。
MBE法にて本発明の方法によるGaNテンプレートln0.17Ga0.83で作成する場合、SAM基板は直径50mm以上で(0001)面(c面)を用いたが下記の条件も望ましい。
【0052】
(1)MBE法により空化物半導体育成に用いる(0001)ScAlMgO単結品において、直径50mmより大口径の基板において、全面に均一に六方品の室化物半導体膜を生成させるために、(0001)ScAlMgO基板のオフ角が、基板全面で0.5°以内であることを特徴とする単結品基板。
(2)上記基板において中心ではオフ角か0.1°以内である。
(3)上記基板の表面がAFMによりステップを観察できる状態である。
(4)MBE法で窒化物半導体を成長する場合、基板温度昇温後、一定時間真空中に放置する工程とラジカル化した窒素ガスを照射する工程を備えた単結品成長方法前記SAM基板は、CZ法により作成したものであり、融液とする出発原料の組成比(質量比)は図7を参照に、
27%≦Sc≦28%
45%≦MgO≦46%
26%≦Al≦28%
であり、
結品の組成比は、
26%≦Sc≦28%
49%≦MgO≦50%
であることが好ましい。
【0053】
実施例3,4ともにGaNとSAMとの剥離がウエハ全面であった。SAMを研磨したところ、10μm~20μmでエピレディウエハになった。5回以上の再利用が可能であった。MBE法によるGaNテンプレートの作製の場合、MOVPE法によるGaNテンプレート作製の場合より2倍以上の再利用が可能であることが確認された。
【0054】
(実施例5)
チョクラルスキー法による直径10mmから4インチ(c.a.101.6 nm)までのScAlMgOの単結晶成長を示した。直径2インチ(c、a、50.8 mm)の高品質のScAlMgO単結晶ブールは、転位なしで正常に成長した。これは、c面ウエハのX線ロッキングカーブとX線トポグラフィー測定によって明らかになった。有機金属気相エピタキシーを使用して、成長したScAlMgOブールから切り出した基板上にGaNテンプレートを形成した後、水素化物気相エピタキシー(HVPE)を使用して、テンプレート上に厚いGaN膜をエピタキシャル成長させた。
【0055】
HVPEプロセスでの成長後の冷却段階において、ScAlMgOの高い劈開性により、厚く成長したGaN膜がScAlMgO基板から単独で分離され、基板の再利用が可能になった。再利用されたScAlMgO基板上に成長した自立型GaNは、新しいScAlMgO基板上に製造されたGaNと同じ品質を示した。ScAlMgO基板の再利用は、GaN膜の製造コストを節約するのに役立つ。ScAlMgO基板上での直径2インチ、厚さ1mmの自立型GaN基板の製造は、サファイア基板上での製造よりも高収率であることが実証された。この研究で示された成長方法は非常に有望であり、それはGaN自立ウエハを取得し、GaNウエハの製造コストを削減するための効率的な道を開く。
【0056】
1994年にベル研究所のBrandleらによって、サファイア基板の代替として、六角形格子を有するc面ScAlMgO単結晶基板がGaNエピタキシャル成長の優れた基板候補として提案された。ScAlMgOのGaNへの格子不整合はα軸に対して1.8と小さく、これはGaNとサファイア基板間の不整合よりも約1桁小さいためである。GaNとScAlMgOの間の熱膨張係数の不一致も、GaNとサファイアの間の不一致よりも小さい。分子線エピタキシー(MBE)有機金属気相エピタキシー(MOVPE)、および水素化物気相エピタキシー(HVPE)が報告されており、ScAlMgO上のGaNおよびScAlMgO上のInGaNについても、LEDの製造と性能が試験されている。
【0057】
最近、GaN基板は、高出力および高周波デバイスで注目を集めている。しかし、GaN基板のコストは依然として非常に高く、デバイスの基板としての使用が拡大するのを妨げている。下にある基板からのGaNの分離は難しいため、製造プロセスでのGaN基板の歩留りも重要な問題である。問題を解決するために、ScAlMgOは、その熱膨張係数がGaNおよび面内劈開面に類似しているため1つの候補である。GaN成長プロセスの冷却段階で自発的な分離は、松岡らによって報告されている。チョクラルスキー(CZ)法により、直径2インチのScAlMgO単結晶と、高品質のHVPE技術によるScAlMgO上に直径2インチの高品質の自立型GaNを成長させることに我々は初めて成功した。
【0058】
ここでは、ScAlMgOウエハのバルク単結晶成長、成長ブール(boules)からのScAlMgOウエハの作製、及び、MOVPEによるパワーデバイス用のScAlMgOウエハ上での薄いGaN膜のエピタキシャル成長、およびHVPEによるGaNテンプレート上での厚いGaN膜のエピタキシャル成長が述べる。GaN自立ウエハのコスト削減の概念についても説明する。
【0059】
(ScAlMdOのバルク結晶成長)
バルクScAlMgO単結晶は、高周波誘導加熱炉を用いたCZ技術により成長させ、Sc、Al、および純度99.9%以上のMgOを原料として使用した。
それらを秤量し、モル濃度で27.0%≦Sc203≦30%、26.0%≦Al203≦29.0%および44.0%≦MgO≦46.5%と混合した。
原材料の組成は、Sc-Al-MgO状態図で決定された。多くの異なる組成が調べられ、この組成は、ScAlMgOの化学量論比から逸脱している点が重要である。混合材料を電気炉で1300~1500℃で焼結した後、調製した材料を、0~5vol%のOと混合したNのガス流下で、Irるつぼ内で溶融した。使用したるつぼのサイズは、直径80、100、120、150、180mmのもので、るつぼの周囲にジルコニアとアルミナの断熱材をセットした。<001>に沿った縦方向のScAlMgO単一結晶をシードとして使用した。シード温度は1800~1950℃、引張速度は0.5~2.5mm/h、回転速度は1~20rpmであった。
【0060】
直径2.0~2.5インチのScAlMgOの厚さ0.5mmのc面ウエハの結晶化度は、X線トポグラフィー(XRT)および高解像度X線ロッキングカーブ(XRC)測定を使用して評価した。XRT測定は、SAGA光源のBL09にあるシンクロトロンビームラインのXRTミクロンラボシステム(Rigaku corp。)とXRT施設によって実行され、Smart Lab(Rigaku corp.、9kW、CuKαl)によってXRC測定が実行した。
【0061】
(GaNエピタキシャル成長)
かみそりの刃でブールを劈開することにより、10mm四方のc面ScAlMgO4四角いプレート基板を準備した。基板を有機溶剤と精製水で洗浄した後、基板をMOVPEの雰囲気から保護するために、基板の側面と裏面とを、Arスパッタリングシステムを使用してSiOでコーティングした。
【0062】
MOVPEによるGaNテンプレートの成長手順の後に、通常の手順を続けた。NHのフローレートは5slm(標準litter/min)に保たれ、低温成長および2μm厚のGaN成長での成長プロセスでは、トリメチルガリウム(TMG)の流量はそれぞれ122および153μmol/min)である。次に、c面ScAlMgOプレート基板上のGaNテンプレートをHVPEリアクタに導入して、厚いGaN膜を成長させた。NHとGaClをそれぞれNとGaの前駆体として使用し、GaClは900℃でGa金属とHClガスを反応させて製造した。これらの前駆体は、1033℃に加熱されたScAlMgO正方形プレート基板上のGaNテンプレートの上に供給された。反応器の圧力は600Torrに保たれた。NHの流量は1slm、HClの流量は60sccm(標準cc/min)に維持された。成長速度は160μm/hに設定され、そのため、120分間で320μmの厚さのGaNが成長した。冷却段階で、成長したGaN膜はScAlMgO基板からそれ自体で分離された。
【0063】
自立型GaN膜を製造するために、スパッタSiOによってパターン化されたSiOマスクで覆われたGaNテンプレートを備えた直径2インチのScAlMgO基板とフォトリソグラフィーの両方を準備した。
自立型GaN膜は、HVPEでファセットおよびフラッタリング(FF成長)技術によって成長させた。
【0064】
自立型GaN膜を製造するために、スパッタSiOによってパターン化されたSiOマスクで覆われたGaNテンプレートを備えた直径2インチのScAlMgO基板とフォトリソグラフィーの両方を準備した。自立型GaN膜は、HVPEでファセットおよびフラッタリング(FF成長)技術によって成長した。
【0065】
直径10mmから4インチ(c.a、101.6mm)の亀裂のないScAlMgO単結晶は、ScとAlがわずかに豊富な溶融物から成長し、るつぼの直径は成長した結晶の直径に応じて選択した。図4に典型的な成長したままのScAlMgOを示す。
【0066】
直径150mmを超えるるつぼで成長した直径2.5~3.5インチの結晶は、(10-10)面(m面)と(1-102)面(r面)のファセットを持つ六角形の柱状の形状を示し、一方、直径120mm未満のるつぼで成長した直径10mmから2インチの結晶は典型的なボウル形状を示した。
【0067】
より大きな亀裂のない結晶を成長させるためには、熱応力を防ぐために、結晶と溶融物の界面でのより小さな温度勾配が必要である。溶融物からの結晶成長を促進するシード結晶からの熱損失は、るつぼのサイズに関係なく変化しないが、大径のるつぼの溶融物の熱容量は、小径のるつぼの熱容量よりも大きくなります。より大きな直径のるつぼにはより低い成長温度を使用する必要があり、結晶成長のための熱損失を高める。しかしながら、適切な温度よりも低い表面温度、すなわち固液界面でのより大きな温度勾配では、種結晶の周りの融液表面上に小さな結晶片が成長する。この現象は、この溶融物が過冷却されていると考えられる。
【0068】
ScAlMgO結晶をマルチワイヤーソーでスライスし、研磨してエピレディウエハを作成した。図5は、直径2インチ(c.a.50.8mm)、厚さ450μm、65mm、厚さ500μm、および4インチ(c.a. 101.6mm)、厚さ530μmのエピレディウエハを示している。原子間力顕微鏡(CAFM)で測定した表面粗さは算術平均粗さRa0.1nmであり、ウエハの反りはサファイア基板に匹敵する10μm未満だった。直径2インチのScAlMgOウエハの曲率半径は45mである。
【0069】
ウエハはXRTとXRCによって評価された。XRTの結果は、ウエハに転位がないことを示している。XRCのFWHMは7.2秒角であった。これらの結果は、石地らによって詳細に報告されている。
【0070】
転位のない結晶を得るための成長条件を明らかにするために、様々な条件下で多くの実験が行われた。図6は、直径120mmのるつぼを使用して成長させた、直径2インチ(c.a. 50.8mm)のScAlMgOバルク単結晶ブールから切り取ったウエハのXRT写真を示している。ウエハのXRT写真にストライエーションと結晶コアが観察された。
【0071】
図6の領域(1)に示すような多くの転位が結晶表面近くの周辺のマイナー領域で観察され、転位密度は104-5/cmであったが、図6の領域(2)では中央の主要領域でわずかな転位しか観察されなかった。図7は、直径150mmのるつぼで成長させた直径65mmのScAlMgOバルク単結晶ブールから切り出された直径60mmのウエハのXRT写真を示している。図7の領域(1)に示すように、中央の主要領域ではごくわずかな転位が観察される。結晶のコア(core)が観察されたが、縞模様ははっきりとは観察できなかった。転位のない領域を有するScAlMgO単結晶は、直径150mmのIrるつぼを使用して成長することが見出された。
【0072】
CZ成長中に核形成される転位の数は、シードの品質、シードタッチプロセスでの熱衝撃、ネッキングスケジュール、成長中の温度制御、および溶融結晶界面付近の温度勾配に依存する。転位密度が小さいScAlMgO結晶成長のメカニズムはまだ正確に解明されておらず、現在研究中である。しかし、高転位ウエハは従来、以前のGaNエピタキシャル実験に使用されてきたが、本発明では、高品質のウエハの低転位または転位のないものを提供する。
【0073】
(GaNエピトキシアル成長)
自立型GaN基板を製造するために、ScAlMgO基板上のMOVPE成長GaNテンプレート上でHVPEを使用して、320μmの厚さのGaN膜を成長させた。HVPE成長直後の冷却段階で、ScAlMgO基板の本体からGaN膜が自然に分離した。分離されたGaN膜の底には数マイクロメートルの厚さのScAlMgOが残っており、分離面がScAlMgO基板のわずかに内側にあることを示唆している。自己分離は、GaNとScAlMgOの間の熱膨張係数の小さな不一致によって生成されるせん断応力によって引き起こされると考えられる。熱膨張のミスマッチが大きいサファイア基板を使用すると、分離に亀裂が生じる。
【0074】
GaNエピタキシャル膜の転位密度は、2光子励起フォトルミネッセンス(2PPL)によって測定された。成長したGaNエピタキシャル膜の測定では、ScAlMgO基板上に成長した厚さ950μmのGaN膜の線状転位に対応するダークスポット密度は3xI0/cmと低く、サファイア基板上のGaN膜よりも約30%低かった。より厚い膜の場合、転位密度の減少が容易に期待できる。ScAlMgO上に成長したGaNエピタキシャル膜のダークスポット密度が低いのは、GaNとサファイアの間の格子不整合よりもGaNとScAlMgOの間の格子不整合が小さいためである。これらの結果は、サファイア基板の代わりにScAlMgO基板を使用すると、より低い線状転位密度(TDD)のGaNウエハが得られることを示している。劈開されたScAlMgO基板上に成長した320μmの厚さのGaN膜の線状転位密度は2.4x10cm-2であり、これは新しいScAlMgO基板上のものとほぼ同じである。
【0075】
図8にScAlMgOウエハの再利用プロセスのスキームを示す。図8の中央に示すように、GaNフィルムから分離してかみそりの刃で劈開した直後の10mm四方のScAlMgOの劈開面はAFMで測定したRa=0.08nmであった。図8(b-c)に示すように、劈開面が滑らかでない場合は研磨する。基板の5倍以上の使用が期待できる。これは、基板製造の大幅なコスト削減につながる。
【0076】
直径2インチの自立型GaN基板は、ScAlMgO基板とサファイア基板上に形成された両方のGaNテンプレート上において、HVPEでFF成長することによって製造された。GaNテンプレート用のMOVPEとGaN膜用のHVPEの成長条件は、以前に報告されたものと同様である[S. Fujimoto. H.
Ikekura, T. Tanikawa, N.Okada, K.Tadatomo, Growth of GaN and improvement of
lattice cuvature using symmetric hexagonal SiO2 patterns in HVPE
growth, Jpn. J. Appl., Phys. 58(2019) SC1049]。図9に示すように、ScAlMgO上で成長したすべてのGaN膜は、GaNとScAlMgOは、サファイア基板上に成長したGaN膜は容易に分離なかった。サファイア基板から得られたクラックのないGaN膜の割合は約20%であった。成長したGaN膜の厚さは約1mmであり、膜が厚くなると転位が減少すると予想される。さらに、GaNテンプレート無しで、ScAlMgO基板上に直接GaN膜をRF-MBE成長させると、GaNはGaN-ScAlMgO界面で発生した。これは、断面透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって実証された。
【0077】
現在、ScAlMgO結晶の製造コストは、Scの価格(1kgあたり1,000ドル)がAlよりも高いため、サファイア結晶の製造コストよりも比較的高くなっている。Scのクラーク数は地球の元素の予備量を示しているため、低価格で市販されているCoとほぼ同じであるため、Scの価格はCoと同じ価格に下がることが期待できる。自立型GaNウエハの製造コストを削減するために、ScAlMgO基板の再利用効果的であり、これは以前にすでに実証されている。
【0078】
直径10mmから4インチ(c.a. 101.6mm)までの単結晶ScAlMgO球戯の成長は、確立されたCZ技術によって実証された。直径2インチの転位のないScAlMgO結晶の成長にCZテクニック成功した。その結晶品質が高いことは、XRTとXRCのFWHMで7.2arcsecであることによって確認された。
【0079】
ScAlMgO基板を使用して製造されたGaNテンプレート上に、HVPEを使用して厚いGaNを成長させ。糸状転位密度は、GaN膜の厚さが増すにつれて減少した。 ScAlMgO上での直径2インチ、厚さ1mmの自立型GaN基板の高収率製造も実証された。この研究で説明したScAlMgO基板上でのGaN自立ウエハの製造方法は非常に有望であり、省エネデバイスで使用される高品質のGaN自立ウエハを高収率で製造することができる。さらに、ScAlMgO基板の再利用能力は、GaN自立ウエハの製造コスト削減に大きな利点がある。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9