(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036827
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240311BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240311BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20240311BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240311BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240311BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240311BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240311BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240311BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
H01L23/46 Z
H01L23/36 D
H05K7/20 Q
H05K7/20 B
H05K7/20 D
H05K7/20 F
H05K7/20 H
B60L3/00 J
B60L1/00 A
F28D15/02 101K
F28D15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141323
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】月成 勇起
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸人
(72)【発明者】
【氏名】村上 満洋
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5H125
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB10
5E322BB03
5E322DA01
5E322DA02
5E322DB02
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA04
5F136BA04
5F136BA14
5F136BC07
5F136CB07
5F136CB13
5F136DA27
5F136FA02
5H125AA05
5H125AC02
5H125BA09
5H125BB00
5H125CD06
5H125EE70
5H125FF23
5H770AA21
5H770AA29
5H770BA03
5H770HA01Z
5H770HA06Z
5H770PA12
5H770PA16
5H770PA17
5H770PA22
5H770PA32
5H770PA42
5H770QA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却システムのポンプ動力を低減できるとともに、低コスト化が可能な、電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1において、受熱部12の伝熱ブロックは、一方の主面に半導体モジュール11が取り付けられ、他方の主面に複数のフィン31bが形成される。多孔質体32は、伝熱ブロックに設けられる。第1流路35は、液相の作動冷媒100が流れる。第2流路36は、伝熱ブロックの複数のフィンの間に形成される複数の蒸気排出部36aを有し、気相の作動冷媒101が流れる。リザーバタンクは、作動冷媒を貯留する。熱交換部は、第2流路及びリザーバタンクに接続される。逆止弁は、熱交換部及びリザーバタンクの間に配置され、リザーバタンク側から熱交換部側への作動冷媒の移動を規制する。ポンプは、第1流路及びリザーバタンクに接続され、リザーバタンクの作動冷媒を第1流路に送出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールと、
一方の主面に半導体モジュールが取り付けられ、他方の主面に複数のフィンが形成される伝熱ブロック、前記伝熱ブロックに設けられる多孔質体、液相の作動冷媒が流れる第1流路、及び、前記伝熱ブロックの前記複数のフィンの間に形成される複数の蒸気排出部を有する気相の作動冷媒が流れる第2流路を具備する受熱部と、
前記作動冷媒を貯留するリザーバタンクと、
前記第2流路及び前記リザーバタンクに接続される熱交換部と、
前記熱交換部及び前記リザーバタンクの間に配置され、前記リザーバタンク側から前記熱交換部側への前記作動冷媒の移動を規制する逆止弁と、
前記第1流路及び前記リザーバタンクに接続され、前記リザーバタンクの前記作動冷媒を前記第1流路に送出するポンプと、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記伝熱ブロックは、前記複数のフィンの間に形成される複数の溝の表面に設けられた多孔質層を有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記伝熱ブロックは、一対設けられ、
前記半導体モジュールは、前記一対の伝熱ブロックの主面のそれぞれに設けられる、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記多孔質体は、前記一対の伝熱ブロックの間に設けられるとともに、前記第1流路を内部に形成し、
前記複数の蒸気排出部は、前記複数のフィンの間に形成される、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記多孔質体は、複数のフィンを有し、
前記伝熱ブロックに形成される前記複数のフィン、及び、前記多孔質体に形成される複数のフィンは、間に前記蒸気排出部を形成して交互に配置される、請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記受熱部の温度を検出する温度センサと、
前記第2流路、又は、前記第2流路及び前記熱交換部を接続する流路の圧力を検出する圧力センサと、
前記温度センサで検出した温度情報及び前記圧力センサで検出した圧力情報に基づいて前記作動冷媒の流量を制御する制御部を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記熱交換部に送風する送風機を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等に電力変換装置を用いる技術が知られている。このような電力変換装置は、半導体モジュールを含むシステムの冷却方式に循環方式である循環水冷システムを適用している。この電力変換装置の循環水冷システムは、例えば、受熱部と、熱交換器と、リザーバタンクと、ポンプと、を備える循環水冷システムを有する。受熱部は、半導体モジュールを実装し、そして冷却するヒートシンクブロックを有する。ポンプは、内部流体をリザーバタンクから受熱部、熱交換器に供給し、そして、熱交換器からリザーバタンクへ戻す。
【0003】
このような循環水冷システムは、流量を一定として作動冷媒を循環させるため、安定的な冷却性能を保持できる。しかし、パワーエレクトロニクス装置の中でも、負荷変動が大きくなるアプリケーションでは、流量を一定に循環させると、半導体素子を過冷却する状態が生じ、半導体素子の温度変化が大きくなる虞がある。また、冷却水冷システムは、電力変換装置のシステムの負荷変動に対する温度変動が増大する。また、循環水冷システムは、高熱流束化が求められている。しかし、循環水冷システムを高熱流束化するために高流量化が必要となり、圧力損失によるポンプ動力増大が課題となる。
【0004】
例えば、高熱流束に対応する冷却システムとして、作動冷媒等の相変化による蒸発潜熱を利用した沸騰冷却方式も知られている。しかし、沸騰冷却方式の冷却システムは、急峻な負荷に対する冷却即応性(安定性)が課題である。特に、複数のモジュールを並列で構成し、大容量化することが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6407542号公報
【特許文献2】特許第6693476号公報
【特許文献3】特許第6760214号公報
【特許文献4】特許第6461361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、冷却システムのポンプ動力を低減できるとともに、低コスト化が可能な、電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力変換装置は、半導体モジュールと、伝熱ブロックと、多孔質体と、第1流路と、第2流路と、リザーバタンクと、熱交換部と、逆止弁と、ポンプと、を備える。伝熱ブロックは、一方の主面に半導体モジュールが取り付けられ、他方の主面に複数のフィンが形成される。多孔質体は、前記伝熱ブロックに設けられる。第1流路は、液相の作動冷媒が流れる。第2流路は、前記伝熱ブロックの前記複数のフィンの間に形成される複数の蒸気排出部を有する、気相の作動冷媒が流れる。リザーバタンクは、前記作動冷媒を貯留する。熱交換部は、前記第2流路及び前記リザーバタンクに接続される。逆止弁は、前記熱交換部及び前記リザーバタンクの間に配置され、前記リザーバタンク側から前記熱交換部側への前記作動冷媒の移動を規制する。ポンプは、前記第1流路及び前記リザーバタンクに接続され、前記リザーバタンクの前記作動冷媒を前記第1流路に送出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図2】第1の実施形態に係る電力変換装置の冷却システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図3】第1の実施形態に係る電力変換装置の冷却システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図4】第1の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を模式的に示す説明図。
【
図5】第1の実施形態に係る受熱部の構成を分解して示す斜視図。
【
図6】第1の実施形態に係る受熱部の構成を示す断面図。
【
図7】第1の実施形態に係る受熱部の構成を拡大して示す断面図。
【
図8】第1の実施形態に係る受熱部の一部構成を示す断面図。
【
図9】第1の実施形態に係る受熱部の気液分離条件の説明図。
【
図10】第2の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図11】第2の実施形態に係る受熱部の構成を拡大して示す断面図。
【
図12】第3の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図13】第3の実施形態に係る受熱部の構成を拡大して示す断面図。
【
図14】第4の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図15】第4の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図16】第4の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る電力変換装置1について、
図1乃至
図9を用いて説明する。なお、各図において、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更するとともに、一部省略又は簡略化して説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る電力変換装置1の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、電力変換装置1の冷却システム2の構成であって、作動冷媒の沸騰発生時の作動冷媒の流れを模式的に示す説明図であり、
図3は、電力変換装置1の冷却システム2の構成であって、作動冷媒の非沸騰時の作動冷媒の流れを模式的に示す説明図である。
【0011】
図4乃至
図7は、電力変換装置1の受熱部12の構成を模式的に示しており、
図4は受熱部12の説明図であり、
図5は受熱部12の分解斜視図である、
図6及び
図7は受熱部12の断面図である。
図8は、受熱部12の多孔質体32に形成される第1流路35、並びに、第1流路35に設けられる受熱部流入口37及び受熱部流出口38の構成を示す断面図である。
図9は、受熱部12の気液分離条件の説明図である。
【0012】
電力変換装置1は、例えば、電気機関車等の鉄道車両に設けられる。電力変換装置1は、例えば、パンタグラフを介して架線から供給される直流電力を交流電力に変換する。
【0013】
図1に示すように、電力変換装置1は、半導体モジュール11と、受熱部12と、熱交換部13と、リザーバタンク14と、ポンプ15と、送風機16と、逆止弁17と、配管18と、温度センサ19と、圧力センサ20と、制御部21と、を備える。
図2及び
図3に示すように、電力変換装置1の受熱部12、熱交換部13、リザーバタンク14、ポンプ15及び逆止弁17は、配管18により接続され、冷却システム2を構成する。
【0014】
このような電力変換装置1は、配管18により、流体的に、受熱部12、熱交換部13、リザーバタンク14及びポンプ15が接続される。具体例として、受熱部12は、熱交換部13、リザーバタンク14及びポンプ15と配管18を介して流体的に接続される。熱交換部13は、逆止弁17を介してリザーバタンク14に流体的に接続される。リザーバタンク14は、ポンプ15と配管18を介して流体的に接続される。ポンプ15は、受熱部12と流体的に接続される。
【0015】
そして、
図2及び
図3に示すように、リザーバタンク14に貯留される液相の作動冷媒は、ポンプ15により送出されて、受熱部12、熱交換部13及びリザーバタンク14を循環する。また、
図2に示すように、受熱部12の温度により液相から相変化して気相となった作動冷媒は、受熱部12で液相の作動冷媒から気液分離され、熱交換部13へ移動し、熱交換部13において凝縮されて気相から液相へと相変化し、リザーバタンク14へ送出される。なお、作動冷媒は、電力変換装置に適用した飽和温度動作範囲のものを前提として、高い蒸発潜熱・表面張力・密度かつ低い粘性係数のものが望ましい。また、作動冷媒は、オゾン層破壊係数、地球温度化係数が小さい対環境性に配慮したものが望ましい。本冷却システムへの適用に際しては、作動冷媒は、適宜設定可能である。
【0016】
半導体モジュール11は、例えば、1つの受熱部12に単数又は複数取り付けられる。半導体モジュール11は、例えば、複数の半導体素子を1つのパッケージに収めたモジュールや、半導体素子に加えて制御回路、駆動回路及び保護回路等を含むモジュールであってもよい。また、半導体モジュール11は、半導体素子が直接的に受熱部12に取り付けられる構成であってもよく、また、半導体素子が他の部材を介して受熱部12に取り付けられる構成であってもよい。即ち、半導体モジュール11は、受熱部12に取り付けられることで、発熱したときに、受熱部12によって冷却できる構成であれば、構成部品の配置や取り付け方等については、適宜設定可能である。
【0017】
受熱部12は、液相の作動冷媒100を通過させる。受熱部12は、液相の作動冷媒100と、取り付けられた半導体モジュール11の熱によって液相の作動冷媒100の一部が相変化して気相となった作動冷媒101とを気液分離する。受熱部12は、液相の作動冷媒100をリザーバタンク14に送出するとともに、気相の作動冷媒101を熱交換部13に送出する。例えば、
図1に示すように、受熱部12は、複数設けられる。
【0018】
図4乃至
図7に示すように、受熱部12は、例えば、一対の伝熱ブロック31と、多孔質体32と、ヘッダー部材33と、を備える。また、受熱部12は、多孔質体32内に設けられ、液相の作動冷媒100が単相流で流通する第1流路35と、一対の伝熱ブロック31及び多孔質体32の間の隙間からヘッダー部材33内を気相の作動冷媒101が単相流で流通する第2流路36と、を有する。また、受熱部12は、第1流路35を配管18に接続する受熱部流入口37及び受熱部流出口38を有する。
【0019】
伝熱ブロック31は、一方の主面が平面状に形成され、他方の主面が櫛形フィン形状に形成された平板状に形成される。伝熱ブロック31は、多孔質体32と対向する面(他方の主面)に形成された、一方向に延びる複数の溝31aを有する。また、例えば、伝熱ブロック31は、複数の溝31aのそれぞれの表面に形成された多孔質層31cを有する。伝熱ブロック31は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料により形成される。一対の伝熱ブロック31の対向する主面間に多孔質体32が設けられる。また、一対の伝熱ブロック31は、互いに対向する主面と反対側の主面である外面に半導体モジュール11が取り付けられる。具体例として、一対の伝熱ブロック31は、それぞれの一方の主面(外面)に半導体モジュール11が取り付けられる。
【0020】
溝31aは、一方向に沿って延びる。溝31aは、溝31aの長手方向に直交する断面形状が、矩形状に形成される。複数の溝31aは、溝31aの延設方向に直交する方向において、複数の溝31aが等間隔で配置される。溝31aは、例えば、受熱部12を取り付ける姿勢で、上下方向に延びる。このような複数の溝31aが一面側に形成されることで、伝熱ブロック31は、多孔質体32と対向する面に一方向に延びる矩形状の複数のフィン31bが形成された、フィン形状に形成される。
【0021】
多孔質層31cは、溝31aの表面に接合される。換言すると、多孔質層31cは、フィン31bの周囲に形成される。溝31aの表面に形成された多孔質層31cは、溝31aを埋めず、その内側に空間を形成する。即ち、溝31aに形成された多孔質層31cは、その内部に、多孔質体32で覆われた、第2流路36の一部を構成する、蒸気を排出する蒸気の流路(気相領域)である蒸気排出部36aを形成する。多孔質層31cは、伝熱ブロック31から通過してきた液槽の作動冷媒100を通過させる複数の孔が形成される。多孔質層31cは、樹脂あるいは金属の繊維・粒子等の焼結体、フォーム体又はロータス型等であり、適切な熱伝導率及び適切な空隙率を有する。
【0022】
多孔質体32は、平板のプレート状に形成され、一対の伝熱ブロック31の間に設けられる。多孔質体32は、内部に液相の作動冷媒100が流れる第1流路35が形成される。また、多孔質体32は、伝熱ブロック31の溝31aを覆うことで、一対の伝熱ブロック31との間に、複数の蒸気排出部36aを形成する。また、多孔質体32は、第1流路35を流れる液相の作動冷媒100の一部を通過させるとともに、多孔質体32を挟んで第1流路35の液相及び蒸気排出部36aの気相の差圧レベルが多孔質体32の内部の最大毛細管力を下回る範囲となる複数の孔が形成される。これにより、
図6に示すように、多孔質体32は、第1流路35において液相の作動冷媒100を通過させるとともに、内部に形成された複数の孔によって、一部の液相の作動冷媒100を第1流路35から内部を介して外面側へと通過させる。また、多孔質体32は、蒸気排出部36aへの液相の作動冷媒100の移動を防止するとともに、多孔質層31cへ液槽の作動冷媒100を移動させる。そして、多孔質層31c及び多孔質体32は、多孔質体32の伝熱ブロック31と接触する部位、及び、多孔質層31cの伝熱ブロック31の溝31aとの接合部の界面において、作動冷媒100の気液分離を行い、第2流路36である複数の蒸気排出部36aにおいて気相の作動冷媒101を通過させる。
【0023】
なお、このような、多孔質層31c及び多孔質体32における気液分離成立条件は、以下となる。気相側の圧力(気圧)をPv、液相側の圧力をPl、作動媒体の表面張力をσ[N/m]、多孔質体32の平均細孔半径をr[m]とする。ここで、気相側の圧力Pvとは、蒸気排出部36a内の蒸気圧であり、液相側の圧力Plは、多孔質体32内に形成される第1流路35内に流通する作動冷媒100の圧力である。このとき、気液分離成立条件は、
Pv-Pl<2σ/r
となる。なお、この気液分離成立条件を満たすように、例えば、多孔質体32の空隙率や孔の形状に加えて、半導体モジュール11の発熱量、ポンプ15からの流量、作動媒体の種類等に基づいて、冷却システムが設定される。また、気液分離成立条件を満たすように、制御部21によってポンプ15が駆動制御される。
【0024】
多孔質体32は、例えば、樹脂あるいは金属の繊維・粒子等の焼結体、フォーム体又はロータス型等であり、適切な熱伝導率及び適切な空隙率を有する。
【0025】
また、多孔質体32は、一対の伝熱ブロック31と一体に成形されるか、または、一対の伝熱ブロック31と別体に形成され、そして、一部が一対の伝熱ブロック31と接触して一体に組み立てられるか、又は、接合される。
【0026】
ヘッダー部材33は、受熱部12を鉄道車両等に配置した姿勢で、受熱部12の上部に配置される。ヘッダー部材33は、複数の蒸気排出部36aの上端を覆い、複数の蒸気排出部36aとともに、第2流路36を構成する。ヘッダー部材33は、配管18が接続される開口33aを有する。
【0027】
第1流路35は、例えば、多孔質体32の内部に配置される。第1流路35は、液相の作動冷媒100が単相で流れる流路である。
図8に示すように、第1流路35は、一端が受熱部流入口37に接続され、他端が受熱部流出口38に接続される。第1流路35は、例えば、所定の流路長を得る為に、所定の流路幅に設定されるとともに、複数箇所で曲折する流路形状である。なお、第1流路35は、複数箇所で曲折せずに、受熱部流入口37及び受熱部流出口38と流体的に連続する室であってもよい。
【0028】
第2流路36は、気相の冷媒が単相で流れる流路である。第2流路36は、伝熱ブロック31の複数の溝31aに設けられた多孔質層31c及び多孔質体32の内部空間によって形成される複数の蒸気排出部36aにより構成される。第2流路36は、複数の溝31aに設けられた多孔質層31c、及び、複数のフィン31bに接触する多孔質体32から気液分離された気相の作動冷媒101が複数の蒸気排出部36aから上方のヘッダー部材33の内部空間へと流れる流路である。なお、第2流路36において、気相の作動冷媒101が蒸気排出部36aからヘッダー部材33の内部空間以外へと流れることがないよう、多孔質体32の伝熱ブロック31及びヘッダー部材33と対向する面以外の各側面や蒸気排出部36aの下端はカバー等によって閉塞される。
【0029】
熱交換部13は、気相の作動冷媒が内部を通過し、気相の作動冷媒を熱交換することで、気相の作動冷媒を凝縮し、液相の作動冷媒に相変化させる。
【0030】
リザーバタンク14は、液相の作動冷媒を貯留する。リザーバタンク14は、受熱部12に液相の作動冷媒を送出するとともに、受熱部12を通過した液相の作動冷媒及び熱交換部13で凝縮した液相の作動冷媒を回収する。
【0031】
ポンプ15は、リザーバタンク14の液相の作動冷媒を所定の圧力に増圧し、受熱部12に圧送する。また、ポンプ15は、吐出する作動冷媒の流量(圧力)を調整できる。
【0032】
送風機16は、熱交換部13に電力変換装置1の外部空気を送風する。例えば、送風機16は、風洞ダクト16aから外気を取り入れる。送風機16は、熱交換部13に送風することで、外部空気と熱交換部13を流れる気相の作動冷媒との熱交換を行う。
【0033】
逆止弁17は、リザーバタンク14から熱交換部13へ作動冷媒が流れる作動冷媒の逆流を防止する。即ち、逆止弁17は、熱交換部13側からリザーバタンク14側への作動冷媒の流れを許容し、リザーバタンク14側から熱交換部13側への作動冷媒の流れを規制する。
【0034】
配管18は、冷却システムの各構成品を接続し、作動冷媒の流路を構成する。具体例として、
図1乃至
図3に示すように、配管18は、受熱部流入管18aと、受熱部流出管18bと、蒸気流通管18cと、液還流管18dと、を備える。
【0035】
受熱部流入管18aは、ポンプ15を介してリザーバタンク14及び複数の受熱部12の第1流路35の一次側を接続する。具体的には、受熱部流入管18aは、リザーバタンク14及びポンプ15、並びに、ポンプ15及び複数の受熱部12の受熱部流入口37を接続する。例えば、受熱部流入管18aは、ポンプ15の二次側で複数の受熱部流入口37に接続される分岐管である。
【0036】
受熱部流出管18bは、複数の受熱部12の第1流路35の二次側及びリザーバタンク14を接続する。具体的には、受熱部流出管18bは、複数の受熱部12の受熱部流出口38及びリザーバタンク14を接続する。受熱部流出管18bは、複数の受熱部流出口38の二次側で合流する合流管である。
【0037】
蒸気流通管18cは、複数の受熱部12の第2流路36と熱交換部13を接続する。例えば、蒸気流通管18cは、複数の受熱部12と同数設けられる。複数の蒸気流通管18cは、受熱部12のヘッダー部材33の開口33aにそれぞれ接続され、気相の作動冷媒を熱交換部13内への流路を形成する。なお、蒸気流通管18cは、複数設ける構成ではなく、1つの合流管としてもよいが、このような構成とする場合には、受熱部12の第2流路36から他の受熱部12の第2流路36への移動を防止可能に構成される。
【0038】
液還流管18dは、熱交換部13及びリザーバタンク14を接続する。液還流管18dは、中途部に逆止弁17が配置される。
【0039】
温度センサ19は、例えば、受熱部12の温度を検出する。例えば、温度センサ19は、検出した温度に対応する電圧値である出力信号を制御部21に出力する。温度センサ19は、複数の受熱部12にそれぞれ設けられる構成であってもよく、いずれかの受熱部12に設けられる構成であってもよい。
【0040】
圧力センサ20は、気相の作動媒体が流れる流路の圧力を検出する。圧力センサ20は、例えば、蒸気流通管18cに設けられる。なお、圧力センサ20は、第2流路36に設けられる構成であってもよい。また、圧力センサ20は、各蒸気流通管18cに設けられる構成であってもよく、いずれかの蒸気流通管18cに設けられる構成であってもよい。
【0041】
制御部21は、例えば、温度センサ19で検出される温度、及び/又は、圧力センサ20で検出される気相の作動媒体の圧力に基づいて、多孔質体32における気液分離成立条件を満たすべく、ポンプ15を制御する。
【0042】
例えば、制御部21は、入力部41と、表示部42と、通信部43と、インターフェース44と、記憶部45と、プロセッサ46と、を備える。例えば、制御部21は、制御盤や処理端末等である。
【0043】
入力部41は、例えば、ボタンを含む操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス等のユーザ入力を受け付ける装置である。表示部42は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスである。通信部43は、プロセッサ46により制御され、有線通信技術又は無線通信技術を用いて、パーソナルコンピュータ等の外部端末や、管理システムと通信可能な任意の通信インターフェースである。
【0044】
インターフェース44は、外部機器と接続可能な端子又は回路である。例えば、インターフェース44は、温度センサ19及び圧力センサ20と接続される。
【0045】
記憶部45は、メモリ及びストレージを含む。記憶部45は、種々のデータを格納する。例えば、記憶部45は、ポンプ15の制御プログラム及び制御データなどを記憶する。記憶部45は、例えば、温度センサ19及び圧力センサ20で検出した温度及び圧力の情報を記憶する。なお、記憶部45は、これら温度及び圧力の情報を、日付及び時間、並びに、受熱部12の識別番号と紐付けて記憶してもよい。
【0046】
このような記憶部45は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NAND型フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等を含む。
【0047】
プロセッサ46は、処理回路を含む。プロセッサ46は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。なお、プロセッサ46は、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。また、プロセッサ46は、単数又は複数であり、例えば、マザーボード等の回路基板に実装される。
【0048】
プロセッサ46は、例えば、記憶部45に記憶された制御プログラムや制御データと、温度センサ19及び圧力センサ20で検出した温度及び圧力の情報に基づいて、ポンプ15を制御する。プロセッサ46は、ポンプ15を制御して、多孔質層31c及び多孔質体32における気液分離成立条件を満たすように、ポンプ15を駆動制御する。
【0049】
次に、このように構成された電力変換装置1の作用について説明する。また、以下の説明において、電力変換装置1が鉄道車両に設けられる例を用いて説明する。
例えば、鉄道車両を走行可能とすべく、パンタグラフから電力が供給されると、制御部21のプロセッサ46は、ポンプ15を駆動する。リザーバタンク14に貯留される液相の作動冷媒がポンプ15から送出された受熱部12の第1流路35を通過して、リザーバタンク14に回収される。また、第1流路35を流れる液相の作動冷媒100の一部は、毛細管力により多孔質体32の内部に浸透する。また、受熱部12に取り付けられた半導体モジュール11が電力変換装置の動作により発熱する。
【0050】
このとき、鉄道車両が走行している場合等には、半導体モジュール11は、受熱部12内部において液相の作動冷媒100が沸騰する温度まで上昇する。このため、半導体モジュール11の熱が受熱部12の一対の伝熱ブロック31から多孔質体32に伝熱する。そして、多孔質層31c及び多孔質体32において、複数の蒸気排出部36a近傍の、具体例として、
図7に示すように、複数の溝31aと多孔質層31cとの接合部近傍、及び、複数のフィン31bの先端面と多孔質体32との接合部近傍の液相の作動冷媒100が蒸気となる。即ち、液相の作動冷媒100が気相の作動冷媒101に相変化する。これにより、蒸気排出部36aに蒸気が誘起される。
【0051】
このとき、蒸気排出部36a内の気相の作動冷媒101の圧力Pvと多孔質体32の第1流路35内に流通する液相の作動冷媒100の圧力Plの差圧が、多孔質体32内における毛細管最大ヘッド(2σ/r)以下であれば、伝熱ブロック31と多孔質体32の接合部への作動冷媒の供給と蒸発の圧力バランスが保たれる。これにより、多孔質体32を隔てて、作動冷媒の気液が分離される。例えば、制御部21は、作動冷媒の供給と蒸発の圧力バランスが保たれるように、温度センサ19で検出される温度、及び、圧力センサ20で検出される圧力に基づいてポンプ15が駆動制御される。
【0052】
そして、
図2に示すように、蒸気排出部(気相領域)36aで発生した蒸気(気相の作動冷媒)は、受熱部12の上部のヘッダー部材33に送られ、蒸気流通管18cを経由し、熱交換部13に送出される。熱交換部13に設置された送風機16によって外部空気を送風し、熱交換部13で気相の作動冷媒を熱交換させることで、熱交換部13内部の気相の作動冷媒を凝縮させ、放熱させる。凝縮された作動冷媒は気相から液相に相変化し、液還流管18dを経由してリザーバタンク14に送出される。
【0053】
なお、このとき、逆止弁17は、熱交換部13とリザーバタンク14の圧力変動から、リザーバタンク14内の液相の作動冷媒が熱交換部13に逆流することを防止する。また、多孔質体32を介して気液分離された液相の作動冷媒は、受熱部流出管18bを経由してリザーバタンク14内に送出される。
【0054】
受熱部流出管18b内を流通する液相の作動冷媒は、多孔質層31c及び多孔質体32内の蒸発潜熱以外の顕熱による熱損失分を授受し熱輸送されるため、サブクール度が低い状態となりうる。なお、冷却システム2の熱バランスを保つためには、この熱損失分の配管とリザーバタンク14の熱容量が必要となる。
【0055】
このように、鉄道車両が走行している場合等における半導体モジュール11の高熱負荷時には、
図2に示すように、受熱部12内で作動冷媒を液相と気相に分離し、それぞれを還流させて、作動冷媒を循環させることによって冷却システムを正常に機能するように維持する。
【0056】
また、鉄道車両が停止している場合等においては、半導体モジュール11は、受熱部12内部において液相の作動冷媒が沸騰しない温度まで上昇する。このため、受熱部12において、液相の作動冷媒は、気相に相変化しない。よって、液相の作動冷媒は、多孔質体32の受熱部流出管18bを経由してリザーバタンク14内に送出される。このように、鉄道車両が停止している場合等の、半導体モジュール11の低熱負荷時には、
図3に示すように、受熱部12内を通過した液相の作動冷媒を還流させて、作動冷媒を循環させることによって冷却システムを正常に機能させる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置1は、ポンプ15により液相の作動冷媒を受熱部12に流通させるが、液相の作動冷媒を熱交換部13に流通させる必要がない。電力変換装置1は、熱交換部13における圧力損失が生じることがないことから、ポンプ動力を低減させることができる。よって、電力変換装置1は、ポンプ15の小型化及び省エネ化に寄与できる。また、液単相流で放熱させるよりも気相状態から作動冷媒を液化させたほうが温度差を小さくできるため、同一放熱条件で比較した場合、本実施形態の電力変換装置1は、熱交換部13の体積を、従来の循環水冷の熱交換部の体積よりも小さくすることができる。よって、電力変換装置1の小型化となることから、熱交換部13の設置の自由度の向上や、冷却システムの軽量化を図ることができる。
【0058】
また、電力変換装置1は、液相の作動冷媒が沸騰する通常動作では、沸騰冷却による蒸発潜熱を利用するため、高熱流束化が期待できるとともに、低流量時で液相の作動冷媒の沸騰状態が発生しない場合でも低いポンプ動力による熱輸送と放熱が可能となる。よって、電力変換装置1の冷却システムは、従来の循環水冷の冷却システムによって生じる過冷却や、従来の沸騰冷却の冷却システムによるオーバーシュート等による熱負荷の変動を小さくできる。このため、電力変換装置1は、温度変動抑制及び平準化が図れるため、半導体モジュール11に用いられる半導体素子の寿命を延ばすことができる。
【0059】
また、気相の作動冷媒が通過する蒸気排出部36aは、伝熱ブロック31の複数の溝31a及びこれら溝31aにそれぞれ形成された多孔質層31cで囲われた空間により形成される。よって、
図5に示すように、受熱部12の内部に配置される多孔質体32を簡素な形状であるプレート状とし、伝熱ブロック31をフィン形状とすることで、液供給圧力損失を抑え、多孔質体32の造形コストを削減でき、結果として、受熱部12のコスト低減につながる。また伝熱ブロック31のフィン31bの周囲(溝31aの表面)に多孔質層31cを設けることで、毛細管力によって供給した液を捕捉、伝熱面表面のドライアウト抑制が可能となる。
【0060】
上述したように、本実施形態の電力変換装置1によれば、受熱部12で作動冷媒の気液分離を可能とし、且つ、作動冷媒の沸騰において、液相及び気相の作動冷媒を還流させ、そして、作動冷媒の非沸騰において、液相の作動冷媒を還流させる。また、伝熱ブロック31の溝31aに多孔質層31cを設け、多孔質体32をプレート状にする。よって、電力変換装置1は、冷却システムのポンプ15のポンプ動力を低減できるとともに、低コスト化が可能となる。
【0061】
なお、実施形態は上述した例に限定されない。例えば、適用する作動冷媒や半導体モジュール11の熱負荷条件によって、多孔質層31c及び多孔質体32の材質や最適な空隙率、細孔径等が異なる。よって、
図10及び
図11に示す第2の実施形態に係る受熱部12Aのように、伝熱ブロック31及び多孔質体32の双方をフィン形状として交互にかみ合わせことによって、伝熱ブロック31及び多孔質体32の製造・造形コストも最適化する構成としてもよい。以下、第2の実施形態に係る電力変換装置1に用いられる受熱部12Aについて、
図10及び
図11を用いて説明する。なお、第2の実施形態に係る受熱部12Aの構成のうち、上述した第1の実施形態に係る受熱部12と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
受熱部12Aは、一対の伝熱ブロック31と、多孔質体32Aと、ヘッダー部材33と、を備える。また、受熱部12Aは、多孔質体32A内に設けられ、液相の作動冷媒が単相流で流通する第1流路35と、一対の伝熱ブロック31及び多孔質体32Aの間の隙間からヘッダー部材33内を気相の作動冷媒が単相流で流通する第2流路36と、を有する。また、受熱部12Aは、第1流路35を配管18に接続する受熱部流入口37及び受熱部流出口38を有する。
【0063】
伝熱ブロック31は、平板状に形成される。伝熱ブロック31は、多孔質体32Aと対向する面に形成された、一方向に延びる複数の溝31aを有する。なお、例えば、伝熱ブロック31は、多孔質層31cを有さない。
【0064】
溝31aは、一方向に沿って延びる。溝31aは、溝31aの長手方向に直交する断面形状が、矩形状に形成される。複数の溝31aは、溝31aの延設方向に直交する方向において、複数の溝31aが等間隔で配置される。溝31aは、例えば、受熱部12を取り付ける姿勢で、上下方向に延びる。このような複数の溝31aが一面側に形成されることで、伝熱ブロック31の多孔質体32と対向する面は、一方向に延びる矩形状の複数のフィン31bが形成されたフィン形状に形成される。なお、溝31aの長手方向に直交する方向の幅、換言すると、隣り合うフィン31bの間隔は、第2流路36の蒸気排出部36aが2つ配置できるとともに、多孔質体32Aの後述するフィン32aが配置できる幅に設定される。
【0065】
多孔質体32Aは、一対の伝熱ブロック31の間に設けられる。多孔質体32Aは、平板のプレート状に形成されるとともに、一対の伝熱ブロック31とそれぞれ対向する主面が、フィン形状に形成される多孔質フィンである、一対の伝熱ブロック31の間に設けられる。多孔質体32Aは、内部に液相の作動冷媒が流れる第1流路35が形成される。また、多孔質体32Aは、伝熱ブロック31と対向する一対の主面のそれぞれに、一方向の延びる矩形状の複数のフィン32aを有する。
【0066】
各フィン32aは、伝熱ブロック31の各溝31aの幅方向で中央に配置され、溝31aの内面に接合され、これにより、伝熱ブロック31の複数のフィン31b及び多孔質体32Aの複数のフィン32aが交互に配置され、隣り合うフィン31b及びフィン32aの間に、蒸気排出部36aが形成される。伝熱ブロック31の複数のフィン31bは、多孔質体32Aの主面(隣り合うフィン32aの間の溝)に接合され、そして、多孔質体32Aの複数のフィン32aは、伝熱ブロック31の複数の溝31aの幅方向で中央側の底面に接合される。
【0067】
このような受熱部12Aは、伝熱ブロック31及び多孔質体32Aは、双方の複数のフィン31b、32aを交互にかみ合わせる(配置する)形状とすることで、隣り合うフィン31b、32aの間に蒸気排出部36aが形成される。そして、伝熱ブロック31と多孔質体32Aが接触する部位、即ち、伝熱ブロック31のフィン31bと多孔質体32A、及び、多孔質体32Aのフィン32aと伝熱ブロック31との接合部の界面において、作動冷媒100の気液分離を行う。そして、第2流路36である複数の蒸気排出部36aを気相の作動冷媒101が通過する。これにより、受熱部12Aは、上述した第1の実施形態に係る受熱部12Aと同様の効果を奏する。
【0068】
また、受熱部12Aは、多孔質体32Aをプレート上とし、主面に複数のフィン32aを設ける構成であるが、複数のフィン32aのピッチ(間隔)は、伝熱ブロック31の複数のフィン31bの間に配置して、伝熱ブロック31の複数のフィン31bとともに蒸気排出部36aを形成できるピッチでよい。このため、複数のフィン32aの数及び間隔を、多孔質体の複数のフィンを隣り合わせて蒸気排出部36aを形成する構成に比べて、低減させることができる。よって、電力変換装置1は、冷却システムのポンプ15のポンプ動力を低減できるとともに、低コスト化が可能となる。
【0069】
また、実施形態は、上述した例に限定されない。例えば、
図12及び
図13に示す第3の実施形態に係る受熱部12Bに示すように、第2の実施形態に係る受熱部12Aの伝熱ブロック31の複数の溝31aに、第1の実施形態に係る受熱部12の伝熱ブロック31に設けた多孔質層31cを設ける構成としてもよい。受熱部12Bは、このような多孔質層31cを有する一対の伝熱ブロック31の間に、多孔質体32Aを設ける構成とすればよい。
【0070】
さらに、例えば、
図14乃至
図16に示す第4の実施形態に係る受熱部12に示すように、例えば、第1の実施形態乃至第3の実施形態に係る多孔質体32において、多孔質体32と伝熱ブロック31とが接触する接触界面付近における多孔質体32の空隙率を高めても良い。多孔質体32と伝熱ブロック31の接触界面付近では沸騰による蒸気発生が著しくなるため、蒸気を適正に排出しないとドライアウトによる急激な伝熱劣化につながる。そこで、
図14乃至
図16に示す各例のように、多孔質体32において、伝熱ブロック31と接触する接触界面付近に、多孔質体32の空隙率よりも空隙率が高い多孔質層32bを設けることにより、蒸気が抜ける圧力損失を低減させ、蒸気排出を促すことができる。
【0071】
以上のように構成されたいずれかの電力変換装置は、冷却システムのポンプ15のポンプ動力を低減できるとともに、低コスト化が可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1…電力変換装置、2…冷却システム、11…半導体モジュール、12、12A、12B…受熱部、13…熱交換部、14…リザーバタンク、15…ポンプ、16…送風機、16a…風洞ダクト、17…逆止弁、18…配管、18a…受熱部流入管、18b…受熱部流出管、18c…蒸気流通管、18d…液還流管、19…温度センサ、20…圧力センサ、21…制御部、31…伝熱ブロック、31a…溝、31b…フィン、31c…多孔質層、32、32A…多孔質体、32b…多孔質層、32a…フィン、33…ヘッダー部材、33a…開口、35…流路、36…流路、36a…蒸気排出部、37…受熱部流入口、38…受熱部流出口、41…入力部、42…表示部、43…通信部、44…インターフェース、45…記憶部、46…プロセッサ、100…作動冷媒(液相)、101…作動冷媒(気相)。