(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036849
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電動消防ポンプ装置、消防車、及び電動消防車
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141369
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】関 修治
(72)【発明者】
【氏名】藤川 基
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大貴
(72)【発明者】
【氏名】元野 等
(72)【発明者】
【氏名】神代 斉
(72)【発明者】
【氏名】田仁 宏典
(72)【発明者】
【氏名】栢野 航
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA04
2E189AD00
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費のロスを抑えた電動消防ポンプ装置、消防車、及び電動消防車を提供すること。
【解決手段】電動消防ポンプ装置30は、バッテリを電源とするモータ33により駆動され圧力水を吐出する水ポンプ31と、モータ33を制御する制御装置37を備え、制御装置37は、モータ33の回転数を、水ポンプ31の二次側圧力を所定値まで上昇させる運転準備の間は放水時の回転数である運転回転数よりも低い運転準備回転数とし、運転準備の完了後に運転準備回転数よりも低いアイドリング回転数とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを電源とするモータにより駆動され圧力水を吐出する水ポンプと、
前記モータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記モータの回転数を、前記水ポンプの二次側圧力を所定値まで上昇させる運転準備の間は放水時の回転数である運転回転数よりも低い運転準備回転数とし、前記運転準備の完了後に前記運転準備回転数よりも低いアイドリング回転数とすることを特徴とする電動消防ポンプ装置。
【請求項2】
前記アイドリング回転数が50rpm以上700rpm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記アイドリング回転数となってからの継続時間が所定値を超えたとき、前記モータの回転を停止することを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項4】
前記水ポンプ又は前記モータに対する制御操作が行われる操作盤と、
前記操作盤から所定範囲内における人の存在を検知する人検知器を備え、
前記制御装置は、前記モータが前記アイドリング回転数で回転している状態において、前記人検知器により前記人が検知されないとき、前記モータの回転を停止することを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記モータが前記アイドリング回転数で回転している状態又は前記アイドリング回転数での回転後に停止した状態において、前記水ポンプにおける落水の兆候を検出したとき、前記モータを前記アイドリング回転数よりは高く前記運転準備回転数よりは低い落水防止回転数で回転させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記放水が一時中断されたとき、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えるまでは前記モータを一時中断前の前記運転回転数で回転させ、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えたとき、前記モータの回転数を前記運転回転数よりは低く前記アイドリング回転数よりは高い放水待機回転数とすることを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記バッテリの残量が所定値未満になったとき、前記放水時における前記運転回転数の上限を前記バッテリの残量が所定値以上であるときの上限よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項8】
前記制御装置が前記放水時における前記モータの時間当たりの消費電力量をリアルタイムに算出し、
表示装置に前記消費電力量がリアルタイムに表示されることを特徴とする請求項1に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項9】
前記制御装置が前記放水時における前記バッテリの残量と前記モータの時間当たりの消費電力量とに基づいて前記消火水ポンプの運転継続可能時間をリアルタイムに算出し、
前記表示装置に前記運転継続可能時間がリアルタイムに表示されることを特徴とする請求項8に記載の電動消防ポンプ装置。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか一項、請求項6、又は請求項7に記載の電動消防ポンプ装置を備えたことを特徴とする消防車。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の電動消防ポンプ装置と、前記モータの電源としても用いる車両駆動用バッテリを備えた電動の消防車であって、
前記制御装置は、待機場所から現場までの往路における前記車両駆動用バッテリの消費電力に基づき前記現場から前記待機場所までの復路における前記車両駆動用バッテリの必要電力を算出し、
前記放水時において前記必要電力に対する前記車両駆動用バッテリの残量が所定値以下となったとき前記車両駆動用バッテリの残量に関する警告が前記表示装置に表示されることを特徴とする電動消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動消防ポンプ装置、並びに当該電動消防ポンプ装置を備えた消防車及び電動消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の消防ポンプ車は、エンジン駆動の車両に搭載した水ポンプ(消防ポンプ)をPTOにより動作させるものが主流である。例えば特許文献1には、過給機を設けたエンジンと、エンジンを冷却するラジエ-タと、過給機で圧縮された空気を冷却する空冷式インタークーラーと、エンジンの後方に配置されるトランスミッションとを有し、トランスミッションと荷台側の後輪車軸との間にスプリットシャフトPTOを取り付け、スプリットシャフトPTOに接続した水ポンプドライブシャフトによって水ポンプを駆動する消防ポンプ車が開示されている。
一方、特許文献2には、電池装置と、電池装置により駆動される電動モータと、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する車輌走行部と、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する消防用機器とを備えた電気駆動式の消防車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-171902号公報
【特許文献2】特開2013-5932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水ポンプを電動駆動式とすることで排気ガスや騒音を低減することができる。しかし、車両に搭載できるバッテリの容量には限りがあるため、従来のエンジン-PTO駆動式の水ポンプに比べると消火作業時における長時間の運用性が劣る場合もあり得る。特許文献2には、電池装置の長寿命化のため負荷に応じて二つのメイン電池を並列使用可能とすることが記載されているが、モータに対する制御によりバッテリの長寿命化を図るものではない。
そこで本発明は、モータに対する制御方法の工夫によりエネルギー消費のロスを抑えた電動消防ポンプ装置、消防車、及び電動消防車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の電動消防ポンプ装置30は、バッテリを電源とするモータ33により駆動され圧力水を吐出する水ポンプ31と、モータ33を制御する制御装置37を備え、制御装置37は、モータ33の回転数を、水ポンプ31の二次側圧力を所定値まで上昇させる運転準備の間は放水時の回転数である運転回転数よりも低い運転準備回転数とし、運転準備の完了後に運転準備回転数よりも低いアイドリング回転数とすることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、アイドリング回転数が50rpm以上700rpm以下であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37は、アイドリング回転数となってからの継続時間が所定値を超えたとき、モータ33の回転を停止することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、水ポンプ31又はモータ33に対する制御操作が行われる操作盤41と、操作盤41から所定範囲内における人の存在を検知する人検知器49を備え、制御装置37は、モータ33がアイドリング回転数で回転している状態において、人検知器49により人が検知されないとき、モータ33の回転を停止することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3又は請求項4に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37は、モータ33がアイドリング回転数で回転している状態又はアイドリング回転数での回転後に停止した状態において、水ポンプ31における落水の兆候を検出したとき、モータ33をアイドリング回転数よりは高く運転準備回転数よりは低い落水防止回転数で回転させることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37は、放水が一時中断されたとき、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えるまではモータ33を一時中断前の運転回転数で回転させ、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えたとき、モータ33の回転数を運転回転数よりは低くアイドリング回転数よりは高い放水待機回転数とすることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37は、バッテリの残量が所定値未満になったとき、放水時における運転回転数の上限をバッテリの残量が所定値以上であるときの上限よりも低くすることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37が放水時におけるモータ33の時間当たりの消費電力量をリアルタイムに算出し、表示装置38に消費電力量がリアルタイムに表示されることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の電動消防ポンプ装置30において、制御装置37が放水時におけるバッテリの残量とモータ33の時間当たりの消費電力量とに基づいて消火水ポンプ31の運転継続可能時間をリアルタイムに算出し、表示装置38に運転継続可能時間がリアルタイムに表示されることを特徴とする。
請求項10記載の本発明の消防車は、請求項1から請求項4のいずれか一項、請求項6、又は請求項7に記載の電動消防ポンプ装置30を備えたことを特徴とする。
請求項11記載の本発明の電動消防車は、請求項8又は請求項9に記載の電動消防ポンプ装置30と、モータ33の電源としても用いる車両駆動用バッテリを備えた電動の消防車であって、制御装置37は、待機場所から現場までの往路における車両駆動用バッテリの消費電力に基づき現場から待機場所までの復路における車両駆動用バッテリの必要電力を算出し、放水時において必要電力に対する車両駆動用バッテリの残量が所定値以下となったとき車両駆動用バッテリの残量に関する警告が表示装置38に表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エネルギー消費のロスを抑え実用的な時間にわたって消火作業に用いることのできる電動消防ポンプ装置、消防車、及び電動消防車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】同バッテリ装置と電動消防ポンプ装置のブロック図
【
図4】同放水前における制御装置による省エネモードの制御フロー
【
図5】同放水時における制御装置による省エネモードの制御フロー
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置は、バッテリを電源とするモータにより駆動され圧力水を吐出する水ポンプと、モータを制御する制御装置を備え、制御装置は、モータの回転数を、水ポンプの二次側圧力を所定値まで上昇させる運転準備の間は放水時の回転数である運転回転数よりも低い運転準備回転数とし、運転準備の完了後に運転準備回転数よりも低いアイドリング回転数とするものである。
本実施の形態によれば、運転準備が完了したら回転数を下げることで、運転準備回転数のまま放水開始に備える場合よりも消費電力を節約してバッテリの使用可能時間を延ばすことができる。また、モータの回転数を下げることで電動消防ポンプ装置の運転音が小さくなるため、騒音の少ない作業環境を実現できる。また、モータを停めるのではなく低回転で回転させ続けることで、停止状態からモータを起動させる場合よりも放水開始時における起動電流を抑制し電流の消費を少なくすることができる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、アイドリング回転数を50rpm以上700rpm以下としたものである。
本実施の形態によれば、モータや水ポンプの挙動が不安定となることを抑制しつつ、節電効果を高めることができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置は、アイドリング回転数となってからの継続時間が所定値を超えたとき、モータの回転を停止するものである。
本実施の形態によれば、アイドリング状態が所定時間継続した場合は自動的にモータを止めることで消費電力を効果的に節約できる。また、モータを止めることでアイドリング時よりも静粛性を向上させることができる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、水ポンプ又はモータに対する制御操作が行われる操作盤と、操作盤から所定範囲内における人の存在を検知する人検知器を備え、制御装置は、モータがアイドリング回転数で回転している状態において、人検知器により人が検知されないとき、モータの回転を停止するものである。
本実施の形態によれば、アイドリング中に操作盤の傍に人の存在が検知されない場合は自動的にモータを止めることで消費電力を効果的に節約できる。また、モータを止めることでアイドリング時よりも静粛性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第3又は第4の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置は、モータがアイドリング回転数で回転している状態又はアイドリング回転数での回転後に停止した状態において、水ポンプにおける落水の兆候を検出したとき、モータをアイドリング回転数よりは高く運転準備回転数よりは低い落水防止回転数で回転させるものである。
本実施の形態によれば、落水の兆候を検知した場合はモータの回転数を自動的に上昇させることで、落水させることなく省エネ運転を行うことができる。
【0013】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置は、放水が一時中断されたとき、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えるまではモータを一時中断前の運転回転数で回転させ、一時中断開始からの継続時間が所定値を超えたとき、モータの回転数を運転回転数よりは低くアイドリング回転数よりは高い放水待機回転数とするものである。
本実施の形態によれば、一時中断状態が所定時間継続した場合は自動的に回転数を下げることで、運転回転数のまま放水再開に備える場合よりも消費電力を節約してバッテリの使用可能時間を延ばすことができる。また、モータの回転数を下げることで電動消防ポンプ装置の運転音が小さくなるため、騒音の少ない作業環境を実現できる。
【0014】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置は、バッテリの残量が所定値未満になったとき、放水時における運転回転数の上限をバッテリの残量が所定値以上であるときの上限よりも低くするものである。
本実施の形態によれば、バッテリの減少速度を落として放水可能時間を延ばすことができる。
【0015】
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置が放水時におけるモータの時間当たりの消費電力量をリアルタイムに算出し、表示装置に消費電力量がリアルタイムに表示されるものである。
本実施の形態によれば、表示された消費電力量を省エネの目安とすることができる。
【0016】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による電動消防ポンプ装置において、制御装置が放水時におけるバッテリの残量とモータの時間当たりの消費電力量とに基づいて消火水ポンプの運転継続可能時間をリアルタイムに算出し、表示装置に運転継続可能時間がリアルタイムに表示されるものである。
本実施の形態によれば、消防隊員は、放水時に表示された運転継続可能時間に基づいて、可能な範囲で運転継続可能時間を延ばすような操作を心掛けたり、他の消防車に応援を要請したりすることができる。
【0017】
本発明の第10の実施の形態による消防車は、第1から第4のいずれか一つ、第6、又は第7の実施の形態による電動消防ポンプ装置を備えたものである。
本実施の形態によれば、静音性に優れ、かつバッテリを電源としながらも放水可能時間の長い消防車を実現することができる。
【0018】
本発明の第11の実施の形態による電動消防車は、第8又は第9の実施の形態による電動消防ポンプ装置と、モータの電源としても用いる車両駆動用バッテリを備えた電動の消防車であって、制御装置は、待機場所から現場までの往路における車両駆動用バッテリの消費電力に基づき現場から待機場所までの復路における車両駆動用バッテリの必要電力を算出し、放水時において必要電力に対する車両駆動用バッテリの残量が所定値以下となったとき車両駆動用バッテリの残量に関する警告が表示装置に表示されるものである。
本実施の形態によれば、可能な範囲での節電を消防隊員に促し、バッテリの残量不足による帰着遅れを極力少なくすることができる。
【実施例0019】
以下、本発明の一実施例による電動消防ポンプ装置及び消防車について説明する。
図1は本実施例による消防車のイメージ図である。なお、
図1ではバッテリ装置と電動消防ポンプ装置以外の架装品等については記載を省略している。
消防車は、車両前部に位置し運転席を有するキャビン1と、キャビン1よりも後方に位置する荷台2と、走行用のディーゼルエンジン等とを備えた車両をベースとし、バッテリ装置10及び電動消防ポンプ装置30が荷台2に架装されている。
電動消防ポンプ装置30は荷台2の後端に配置されており、消火ホースが車両後方側から接続される。バッテリ装置10は電動消防ポンプ装置30よりも前方に配置されており、電力ケーブルを介して電動消防ポンプ装置30へ電力を供給する。
【0020】
図2はバッテリ装置と電動消防ポンプ装置のブロック図である。
バッテリ装置10は、複数の高電圧バッテリパックからなる水冷式の高電圧バッテリ11と、バッテリ制御ユニット(BCU:Battery Control Unit)12と、バッテリ温調システム(BTMS:Battery Thermal Management System)13と、高電圧を低電圧に変換するDCDCコンバータ14と、高電圧用ジャンクションボックス(HVJB:High Voltage Junction Box)15と、低電圧用ジャンクションボックス(LVJB:Low Voltage Junction Box)16と、制御用の低電圧バッテリ17と、高電圧バッテリ11の普通充電用(AC入力-DC出力)の充電器18と、高電圧バッテリ11の高速充電用(DC入力-DC出力)の高速充電口19と、バッテリ装置10を制御するバッテリ制御装置20を備える。
図1に示すようにバッテリ装置10は一つのユニットとしてまとめられており、このまま車両のシャシフレームに載せて固定することができるため、車体への取り付け工数が少なくて済む。
バッテリ装置10を設けることで、エンジン駆動等の車両に対しても電動消防ポンプ装置30を架装することが可能となる。
【0021】
電動消防ポンプ装置30は、消火に用いる圧力水を吐出する水ポンプ(消防ポンプ)31と、水ポンプ31のケーシングや給水管を呼び水で満たすのに用いる真空ポンプ32と、バッテリ装置10を電源とし水ポンプ31及び真空ポンプ32を駆動するPMモータ等のモータ33と、モータ33の動力を水ポンプ31に伝達するための歯車が複数配置されたギヤケース34と、モータ33の回転数を変化させるインバータ35と、バッテリ装置10と電線で接続されるジャンクションボックス(JB:Junction Box)36と、電動消防ポンプ装置30を制御する制御装置37と、放水圧やバッテリ残量等といった各種情報が表示されるモニタを有する表示装置38と、圧力計39と、連成計40と、人により操作される制御スイッチや制御ダイヤル等を備える操作盤41と、モータ33、ギヤケース34及びインバータ35を冷却する冷却装置42と、複数の吐水口43を備える。
ジャンクションボックス36は、高電圧/低電圧電源接続口と制御線接続口を有し、インバータディスチャージ回路を内蔵している。
冷却装置42は、LLCを冷却水として用いる水冷式であり、電動ウォータポンプ44、ラジエタ45及びファン46を有する。
【0022】
図3は電動消防ポンプ装置の外観図である。
電動消防ポンプ装置30は、上述した機器や装置等の他、吐水口43ごとに設けられた吐水弁47と、給水口48と、操作盤41から所定範囲内における人の存在を検知する人検知器49を備える。操作盤41、表示装置38、圧力計39、連成計40、四つの吐水口43、吐水弁47、及び給水口48は、電動消防ポンプ装置30を荷台2に設置したときに車両後面側となる位置に設けられている。
表示装置38、圧力計39及び連成計40は、操作盤41よりも上方に配置されている。表示装置38、圧力計39及び連成計40が設けられている位置の地上からの高さは概ね160cm~180cm程度、操作盤41及び吐水弁47が設けられている位置の地上からの高さは概ね100cm~120cm程度である。これにより、立位姿勢の消防隊員の目線高さ付近に表示装置38等が位置し、腰の高さ付近に操作盤41等が位置するため、表示装置38等に対する視認性や、操作盤41等に対する操作性が向上する。
モータ33は車両の走行用の駆動源としては用いないため、水ポンプ31と接続するにあたりPTOは不要である。また、走行に与える影響を基本的に考慮しなくてよいので、モータ33の制御方法を電動消防ポンプ装置30に特化して定めることができる。なお、本実施例の車両は上述のように例えばディーゼルエンジンを駆動源とするものである。
図1及び
図3に示すように電動消防ポンプ装置30は一つのユニットとしてまとめられており、このまま車両のシャシフレームに載せて固定することができるため、車体への取り付け工数が少なくて済む。
【0023】
図4は放水前における制御装置による省エネモードの制御フローを示している。
モータ33は制御装置37により制御される。制御装置37は、モータ33に対する制御の一つとして省エネモードを有する。この省エネモードは、消費電力を抑えてバッテリの使用時間を延ばすものである。
火災現場等において放水を開始するにあたっては、水ポンプ31の運転準備として、全ての吐水弁47を閉じた状態でモータ33を起動し水ポンプ31の二次側圧力を所定値まで上昇させる(ステップS1)。
防火水槽等から吸水する場合は、水ポンプ31自体は吸水する能力を持たないため水ポンプ31への揚水を行う必要があり、真空ポンプ32を作動し給水管及び水ポンプ31内の空気を排出して呼び水で満たす。なお、真空ポンプ32はモータ33にベルト等で連結されており、モータ33により駆動する。一方、消火栓又は他の消防車から水の供給を受ける場合のように有圧水が供給される場合は真空ポンプ32の作動は要しない。
制御装置37は、水ポンプ31を駆動するモータ33の回転数を、水ポンプ31の運転準備中は、放水時の回転数である運転回転数よりも低い運転準備回転数とする。例えば、運転回転数は約3000rpm、運転準備回転数は約1300rpm等である。
【0024】
制御装置37は、水ポンプ31の運転準備が完了すると(ステップS2)、モータ33の回転数を運転準備回転数よりも低いアイドリング回転数に下げる(ステップS3)。これにより、運転準備回転数のまま放水開始に備える場合よりも消費電力を節約してバッテリの使用可能時間を延ばすことができる。また、モータ33の回転数を下げることで電動消防ポンプ装置30の運転音が小さくなるため、騒音の少ない作業環境を実現でき、消防隊員同士が意思疎通しやすくなる。さらに、モータ33を停めるのではなく低回転で回転させ続けることで、停止状態からモータ33を起動する場合よりも放水開始時における起動電流(突入電流)を抑制し電流の消費を少なくすることができる。
アイドリング回転数は、50rpm以上700rpm以下であることが好ましく、100rpm以上500rpm以下であることがより好ましい。これにより、モータ33や水ポンプ31の挙動が不安定となることを抑制しつつ、節電効果を高めることができる。なお、特にモータ33の回転数を約100rpm以下の超低回転とする場合は、トルク制御を利用することも可能である。
【0025】
制御装置37は計時機能を備えており、アイドリング回転数としてからの継続時間をカウントする。そして、アイドリング回転数となってからの継続時間が所定値を超えると(ステップS4)、モータ33の回転を停止する(ステップS5)。
モータ33はアイドリング時間が長くなると再起動させるよりもエネルギーの消費量が増えてしまう場合があるため、放水が再開されずアイドリング状態が所定時間継続した場合は自動的にモータ33を止めることで消費電力を効果的に節約できる。また、モータ33を止めることでアイドリング時よりも静粛性を向上させることができる。
【0026】
操作盤41から所定範囲内における人の存在検知を行う人検知器49は、例えば、人感センサ又はカメラ等により構成されたもの、或いは、操作盤41近くに配置されている表示装置38等に対する操作が所定時間内になされたか否かにより人を検知するものである。
制御装置37は、モータ33の回転数がアイドリング回転数であって、操作盤41から所定範囲内において人が検知されないとき(ステップS6)は、ステップS5に移行しモータ33の回転を停止する。
操作盤41の近くに消防隊員(ポンプ操作員)が居ないときは放水が直ちに行われる可能性が低いため、アイドリング中に操作盤41の傍に人の存在が検知されない場合は自動的にモータ33を止めることで消費電力を効果的に節約できる。また、モータ33を止めることでアイドリング時よりも静粛性を向上させることができる。
なお、制御装置37は、ステップS6からステップS5に移行した場合において、その後に操作盤41から所定範囲内に人が検知されたときはモータ33を再起動してアイドリング回転数とするようにしてもよい。
【0027】
制御装置37は、水ポンプ31における落水の兆候を監視する落水兆候監視機能を備えており、モータ33の回転数がアイドリング回転数であるときに落水の兆候を検出すると(ステップS7)、モータ33の回転数を上げて落水防止回転数とする(ステップS8)。
落水防止回転数は、アイドリング回転数よりは高く運転回転数よりは低い回転数であり、例えば約800rpmである。落水の兆候検知は、例えば、連成圧センサ等で取得される圧力値が所定範囲内にあれば落水の兆候なし、所定範囲外であれば落水の兆候ありと判断する。
水ポンプ31はモータ33の回転数がアイドリング回転数のときは低速回転となり落水の可能性があるため、本実施例のように落水の兆候を監視して兆候を検知した場合はモータ33の回転数を自動的に上昇することで、水ポンプにおける落水を生じさせることなく省エネ運転を行うことができる。
【0028】
制御装置37は、ステップS5でモータ33の回転を停止した後も同様に落水の兆候を監視し、落水の兆候を検出すると(ステップS9)、モータ33を起動し(ステップS10)、ステップS8に移行して落水防止回転数とする。
これにより、モータ33が停止しているときに水ポンプ31において落水が生じることを防止できる。
制御装置37は、落水防止回転数に上げた後に落水の兆候が検出されなくなると(ステップS11)、ステップS3へ移行しモータ33の回転数をアイドリング回転数に下げる。
【0029】
図5は放水時における制御装置による省エネモードの制御フローを示している。
モータ33が停止中又はアイドリング回転数など運転回転数よりも低い回転数で運転されているときに吐水弁47を開ける等の放水操作が行われると、制御装置37は、モータ33の回転数を所定の運転回転数まで上昇させる(ステップS21)。所定の運転回転数は、消防隊員が操作盤41等を用いて設定したモータ33又は水ポンプ31の設定回転数や設定流量等に基づく。
放水開始後には放水が一時中断されることがある(ステップS22)。制御装置37は、放水の一時中断を、例えば、吐水弁47の開閉状態、吐水流量、送水圧、及び放水銃のオン/オフ操作の少なくとも一つにより検知する。
制御装置37は、放水が停止されてからの継続時間を計時機能によりカウントし、放水が停止されてからの継続時間が所定以上継続したとき(ステップS23)、モータ33の回転数を下げて放水待機回転数とする(ステップS24)。
これにより、締切圧を防止できると共に、運転回転数のまま放水再開に備える場合よりも消費電力を節約してバッテリの使用可能時間を延ばすことができる。また、モータ33の回転数を下げることで電動消防ポンプ装置30の運転音が小さくなるため、騒音の少ない作業環境を実現でき、消防隊員同士が意思疎通しやすくなる。放水待機回転数は、落水防止回転数よりは高く運転回転数よりは低い回転数であり、例えば約1300rpmである。放水待機回転数を運転回転数の上限の1/3以上とすることで、放水を再開する際に元の運転回転数に復帰するまでの時間を短縮し消防隊員に違和感を与えないようにすることができる。また、中断を検知して自動でモータ33の回転数を下げるため、ポンプ操作を行っている消防隊員(ポンプ操作員)の負担も軽減できる。
制御装置37は、放水が再開されたとき(ステップS25)、瞬時にステップS21に移行して所定の送水圧まで上がるようモータ33の回転数を運転回転数へ上昇させる。
なお、制御装置37は、放水待機回転数としてからの継続時間を計時機能によりカウントし、その継続時間が所定値を超えた場合はモータ33の回転を停止するようにしてもよい。この場合は、バッテリ消費をより一層抑制できる。
【0030】
制御装置37は、放水中にバッテリの残量が所定値未満になると(ステップS26)、モータ33の運転回転数の上限を、バッテリの残量が所定値以上であるときの上限よりも下に設定変更する(ステップS27)。例えば、モータ33が性能上は3000rpmまで回せるとしても、バッテリの残量が20%未満になると2500rpmまでしか回せないように制限する。これにより吐水流量は減少するものの、バッテリの減少速度を落として放水可能時間を延ばすことができる。
【0031】
制御装置37は、放水が行われているときにモータ33の時間当たりの消費電力量をリアルタイムに算出する機能を備える。算出された時間当たりの消費電力量は表示装置38にリアルタイムに表示される。
これにより消防隊員は、表示された消費電力量(電費)を省エネの目安とすることができる。
【0032】
制御装置37は、放水が行われているときにバッテリの残量とモータ33の時間当たりの消費電力量とに基づいて水ポンプ31の運転継続可能時間(放水可能時間)をリアルタイムに算出する機能を備える。算出された運転継続可能時間は表示装置38にリアルタイムに表示される。
これにより消防隊員は、表示された運転継続可能時間に基づいて、可能な範囲で運転継続可能時間を延ばすような操作を心掛けたり、他の消防車に応援を要請したりすることができる。
【0033】
このように、省エネモードを有する電動消防ポンプ装置30を備えることで、静音性に優れ、かつバッテリを電源としながらも放水可能時間の長い消防車(消防ポンプ車)を実現することができる。
なお、省エネモードのON/OFFスイッチを設け、省エネモードの全て又は一部の機能を利用するか否かを消防隊員が選択可能とすることもできる。
【0034】
次に、本発明の他の実施例による電動消防ポンプ装置及び電動消防車について説明する。
本実施例においては、電力取り出しが可能なバッテリ駆動の電気自動車(EVトラック等)をベース車両とする。架装する電動消防ポンプ装置30は上記した実施例と同様であるが、バッテリ装置10は架装せず、車両の走行に用いる車両駆動用バッテリから電動消防ポンプ装置30へ給電する。電動消防ポンプ装置30のジャンクションボックス36には、車両駆動用バッテリからの電線が接続する。
【0035】
本実施例の制御装置37も、モータ33に対する制御の一つとして上記した実施例と同様の省エネモードを有する。また、制御装置37が、放水が行われているときにモータ33の時間当たりの消費電力量をリアルタイムに算出する機能、及び水ポンプ31の運転継続可能時間をリアルタイムに算出する機能を備え、表示装置38に消費電力量や運転継続可能時間をリアルタイムに表示できる点も同じである。
これらに加えて本実施例における制御装置37は、電動消防車の待機場所(消防署等)から火災現場など出動先の現場までの往路における車両駆動用バッテリの消費電力に基づいて、現場から待機場所に戻るまでの復路における車両駆動用バッテリの必要電力を算出し、放水中に車両駆動用バッテリの残量から当該必要電力を引いた値が所定値以下となると、車両駆動用バッテリの残量が復路での必要電力に近づいていることを示す警告を表示装置38に表示させる。なお、制御装置37は、待機場所からの出発及び出動先への到着を、例えば、イグニッションスイッチに対する操作、電動消防ポンプ装置30に対する操作、又はGPS情報等により検知するか、あるいは出発時と到着時に消防隊員から入力されること等により把握する。また、復路での必要電力は、単純に往路での消費電力と同じとすることもできるが、往路と復路とでの通行可能道路の違いや上り坂と下り坂の違い、渋滞状況の違い等を考慮することが好ましい。
このような警告を表示することにより、可能な範囲での節電を消防隊員に促し、バッテリの残量不足による帰着遅れを極力少なくすることができる。
また本実施例において表示装置38に表示する運転継続可能時間は、バッテリの残量から復路の必要電力を引いた値とモータ33の時間当たりの消費電力量とに基づいて算出する事が好ましい。