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特開2024-36851シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036851
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/10 20060101AFI20240311BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240311BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20240311BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20240311BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240311BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C09J123/10
C09J7/35
C09J123/08
C09J123/06
B65D65/40 D
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141371
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】冨士野 葵
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 菜央
(72)【発明者】
【氏名】町屋 宏昭
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB74
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA27
3E086CA28
3E086CA35
3E086DA08
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK05A
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK41D
4F100AK63A
4F100AK66A
4F100AK70A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100EH20
4F100EH23
4F100EJ37
4F100GB15
4F100GB18
4F100JA04A
4F100JA13A
4F100JK06
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4F100JL12A
4F100YY00A
4J004AA07
4J004AB03
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE01
4J004FA06
4J040DA021
4J040DA031
4J040DA101
4J040JA09
4J040JB01
4J040LA11
4J040MA11
4J040MB03
4J040NA08
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造するシーラント用樹脂組成物と同等の接着性と易剥離性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(B)と、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)と、を含むシーラント用樹脂組成物であって、前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)と、
エチレン系重合体(B)と、
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)と、
を含むシーラント用樹脂組成物であって、
前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定したバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下であるシーラント用樹脂組成物。
【請求項2】
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記プロピレン系重合体(A)の含有量が10質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項3】
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が10質量%以上70質量%以下である、請求項1又は2に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項4】
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の含有量が5質量%以上50質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項5】
前記プロピレン系重合体(A)が、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含む、請求項1~4のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン系重合体(B)のJIS K 7112:1999に準拠して測定した密度が900kg/m以上である、請求項1~5のいずれかにに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項7】
前記プロピレン系重合体(A)が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスプロピレン系重合体を含む、請求項1~6のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、請求項1~7のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項9】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項10】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上25質量%以下である、請求項1~9のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項11】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の前記不飽和カルボン酸が、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~10のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項12】
前記プロピレン系重合体(A)と、前記エチレン系重合体(B)と、前記
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)との合計含有量が、前記シーラント用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、50質量%以上100質量%以下である、請求項1~11のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項13】
ラミネート層と、
中間層と、
シーラント層と、がこの順に積層してなる積層体であって、
前記シーラント層が請求項1~12のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
【請求項14】
前記ラミネート層の前記中間層とは反対側に基材層が積層されてなる、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の積層体を含む蓋材。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の積層体を含む包装体。
【請求項17】
蓋材と、被着体とを備え、
前記蓋材が、請求項15に記載の蓋材を含む包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品包装、ブリスター包装、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装として、ボトルやカップ、トレー状のプラスチック容器をプラスチックラミネートフィルムやアルミ箔フィルム等の蓋材でシールした包装形態が広く用いられている。
このような包装においては、製品の輸送、運搬中の振動や衝撃に耐え得る機械的強度、および、包装容器内部の製品を守る衛生性を保持できる密封性が要求される。さらに包装容器が最終製品として人の手で開封されることから、易開封性が求められる。また、スナック菓子、油揚げ等の、油分の多い食品を包装する場合には、耐油性や、100℃を超えても耐え得る耐熱性が求められる。
【0003】
このような包装としては、包装フィルムの最内層であるシーラント層に、易開封性(易剥離性やイージーピール性ともいう。)を特徴とするフィルムを用いて、袋や、蓋材とした包装体がよく利用されている。しかしこれまで広く用いられてきたシーラント層においては、密封性の指標となるヒートシール強度は高いが、開封時の易剥離性は十分ではないものがあった。また逆に、易開封性シール材料ではあるが、密封性に劣っていたり、ヒートシール面に夾雑物が入ると接着力が低下したり熱湯中で加熱されると接着力が低下するものもあった。このように、これまでの易開封性シーラント材料は、密封性と易開封性のバランスが十分ではなかった。ここで易開封性とは、単に開封性が容易であるだけでなく、開封後に、樹脂断片が開封部に付着残存する糸曳き現象や膜曳き現象が発生せず、開封部の外観が良好であることも含めた、開封時と開封後の総合評価である。
またさらに、ヒートシールする面を加熱してシールする際に、適度なシール強度範囲を示す温度範囲が狭いという問題点もあった。
【0004】
このような性能を有する包装容器は、これまで種々検討されている。
特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との樹脂混合物層と、高密度ポリエチレン層とが密着した易剥離部と、高密度ポリエチレン層と高密度ポリエチレン層とが密着した難剥離部を有する易開封性包装体が記載されている。
特許文献2には、ポリプロピレンとポリエチレンとをそれぞれ所定の範囲で含む接着性樹脂および支持層を備え、全体の厚さおよび接着層の厚さが所定の範囲である、ポリプロピレン容器の蓋材シーラントフィルムが記載されている。そして当該フィルムは、生産性とフィルムの強度を維持しつつ、易開封性と密封性のバランスに優れることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、所定の範囲の密度を有するエチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、低密度ポリエチレンを所定の範囲で含む易開封性ヒートシール用樹脂組成物が記載されている。そして当該易開封性ヒートシール用樹脂組成物は、ヒートシール性、耐熱性に優れ、剥離時に容器のヒートシール面に樹脂層の一部が付着残存することのないことが記載されている。
特許文献4には、シール層と、ポリオレフィン系樹脂からなる支持層で構成されている多層が記載されており、当該シール層は、ポリプロピレンおよび、所定の特性を持つエチレン・α-オレフィンランダム共重合体合わせて100質量部に対して、ポリエチレン樹脂を所定の比率で含む多層シートが記載されている。当該多層シートは、密封性と易開封性を両立しつつ、加熱殺菌条件に耐え、製品流通時における十分な耐性を良好とすることが記載されている。
【0006】
特許文献5には、メルトインデックスが0.5~100g/10分であるアイオノマー樹脂100重量部に対して、エチレン含有量が1~50重量部であるエチレン・プロピレン共重合体5~65重量部を混合してなるヒートシール層を有する、オレフィン系樹脂をヒートシール相手とする易開封性シール材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5-64593号公報
【特許文献2】特公平5-6513号公報
【特許文献3】特開平2-185547号公報
【特許文献4】特開2000-355358号公報
【特許文献5】特開昭60-239238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、このような包装容器に用いられる樹脂としては、化石燃料由来の樹脂が一般的である。しかしながら、化石燃料である石油は、その枯渇が危ぶまれるとともに、製品の製造工程及び製品となった後の廃棄過程等において多くの二酸化炭素を排出するため、地球温暖化への影響が懸念されている。
包装容器の構成成分のひとつであるシーラント用樹脂組成物についても、環境に配慮しながら製造していくことが求められている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造するシーラント用樹脂組成物と同等の接着性および易剥離性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、プロピレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(B)と、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)とを含むシーラント用樹脂組成物において、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることによって、従来の化石燃料由来の原料のみを使用して製造したシーラント用樹脂組成物と同等の接着性および易剥離性を有しながら、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
本発明は、以下のシーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体を提供する。
【0012】
[1]
プロピレン系重合体(A)と、
エチレン系重合体(B)と、
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)と、
を含むシーラント用樹脂組成物であって、
前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定したバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下であるシーラント用樹脂組成物。
[2]
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記プロピレン系重合体(A)の含有量が10質量%以上80質量%以下である、[1]に記載のシーラント用樹脂組成物。
[3]
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が10質量%以上70質量%以下である、[1]又は[2]に記載のシーラント用樹脂組成物。
[4]
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の含有量が5質量%以上50質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[5]
前記プロピレン系重合体(A)が、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[6]
前記エチレン系重合体(B)のJIS K 7112:1999に準拠して測定した密度が900kg/m以上である、[1]~[5]のいずれかにに記載のシーラント用樹脂組成物。
[7]
前記プロピレン系重合体(A)が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスプロピレン系重合体を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[8]
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[9]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[10]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上25質量%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[11]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の前記不飽和カルボン酸が、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[10]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[12]
前記プロピレン系重合体(A)と、前記エチレン系重合体(B)と、前記
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)との合計含有量が、前記シーラント用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、50質量%以上100質量%以下である、[1]~[11]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[13]
ラミネート層と、
中間層と、
シーラント層と、がこの順に積層してなる積層体であって、
前記シーラント層が[1]~[12]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
[14]
前記ラミネート層の前記中間層とは反対側に基材層が積層されてなる、[13]に記載の積層体。
[15]
[13]又は[14]に記載の積層体を含む蓋材。
[16]
[13]又は[14]に記載の積層体を含む包装体。
[17]
蓋材と、被着体とを備え、
前記蓋材が、[15]に記載の蓋材を含む包装体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化石燃料由来の樹脂のみを使用して製造された従来のシーラント用樹脂組成物と同等の接着性と易剥離性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
また、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種」を意味する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る積層体100の積層構造の一例を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の積層体100は、シーラント層10、中間層20およびラミネート層30が上記の順序で積層された積層体である。
【0017】
図2は、本実施形態に係る積層体100の積層構造の一例を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の積層体100は、シーラント層10、中間層20、ラミネート層30および基材層40が上記の順序で積層された積層体である。
【0018】
1.シーラント用樹脂組成物
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(B)と、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)と、を含み、前記シーラント用樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【0019】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物によれば、プロピレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(B)と、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)とを含み、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることで、化石燃料由来の原料のみを使用して製造された従来のシーラント用樹脂組成物と同等の接着性と易剥離性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供することができる。
【0020】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、プロピレン系重合体(A)の含有量は、広範囲な温度領域において適正なシール強度を維持し、また中間層20との共押出フィルム化の際に、中間層20とシーラント層10との間で起こる層間剥離の発生をより抑制する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、広範囲なシール温度領域において適正なシール強度を維持し、易剥離性をより良好とする観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0021】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン系重合体(B)の含有量は、得られる積層体100と被着体とをヒートシールする際の、シール強度をより良好とする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、広範囲なシール温度領域において適正なシール強度を維持し、易剥離性をより良好とする観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0022】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の含有量は、広範囲なシール温度領域において適正なシール強度を維持し、易剥離性をより良好とする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、シール強度の低下をより抑制する観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0023】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物中の、プロピレン系重合体(A)と、エチレン系重合体(B)と、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)との合計含有量は、シーラント用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、積層体100の易開封性、密封性、糸曳き性、および耐油性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、積層体100の易開封性、密封性、糸曳き性、および耐油性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0024】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)は、押出加工性、シール強度、耐熱性、および耐油性をより良好とする観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上、更に好ましくは1.5g/10分以上であり、押出加工性、シール強度、耐熱性、および耐油性をより良好とする観点から、好ましくは50.0g/10分以下、より好ましくは40.0g/10分以下、更に好ましくは10.0g/10分以下、更に好ましくは5.0g/10分以下である。
【0025】
以下、本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0026】
<プロピレン系重合体(A)>
プロピレン系重合体(A)は、ポリプロピレンまたはプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン系重合体(A)は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよく、好ましくは耐熱性とヒートシール性をより良好とする観点から、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含む。
プロピレン系重合体(A)がプロピレン・α-オレフィン共重合体である場合のプロピレンに由来する構成単位の含有量は、プロピレン系重合体(A)を構成する繰り返し単位の合計量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下、好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
プロピレン系重合体(A)がプロピレン・α-オレフィン共重合体である場合のプロピレン以外のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量は、プロピレン系重合体(A)を構成する繰り返し単位の合計量を100質量%としたとき、好ましくは0質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0027】
また、プロピレン系重合体(A)のJIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、易開封性とシール強度をより良好とする観点から、好ましくは880kg/m以上、より好ましくは890kg/m以上、更に好ましくは895kg/m以上であり、また、易開封性とシール強度をより良好とする観点から、好ましくは920kg/m以下、より好ましくは910kg/m以下、更に好ましくは905kg/m以下である。
【0028】
プロピレンの共重合体におけるプロピレン以外のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、炭素数が2~20個程度のα-オレフィンが挙げられる。また、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは、エチレンおよび1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数4~8のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはエチレンおよび1-ブテンからなる群から選択される少なくとも一種である。
このようなα-オレフィンとしては、1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン・α-オレフィン共重合体である場合、プロピレンに由来する構成単位の合計含有量は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を構成する繰り返し単位の合計量を100モル%としたとき、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは80.0モル%以上、より好ましくは90.0モル%以上、更に好ましくは92.0モル%以上、更に好ましくは95.0モル%以上であり、そして好ましくは99.9モル%以下、より好ましくは99.0モル%以下、更に好ましくは98.0モル%以下、更に好ましくは97.0モル%以下である。
プロピレン系重合体(A)がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である場合、プロピレン以外のα-オレフィン由来の構成単位の合計含有量は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を構成する繰り返し単位の合計量を100モル%としたとき、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上、更に好ましくは2.0モル%以上、更に好ましくは3.0モル%以上であり、そして好ましくは20.0モル%以下、より好ましくは10.0モル%以下、更に好ましくは8.0モル%以下、更に好ましくは5.0モル%以下である。
【0030】
プロピレン系重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、シーラント用材料として耐熱性とシーラント性をより良好にする観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは135℃以上、更に好ましくは140℃以上であり、またシーラント用材料として耐熱性とシーラント性をより良好にする観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下である。
また、プロピレン系重合体(A)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは2g/10分以上であり、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。
また、プロピレン系重合体(A)のJIS K 7210:1999、230℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは2g/10分以上、更に好ましくは3g/10分以上、更に好ましくは5g/10分以上であり、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは15g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0031】
このようなプロピレン系重合体(A)は、例えば、立体特異性触媒の存在下で、プロピレンを重合するか、またはプロピレンと1種以上のプロピレン以外のα-オレフィンを共重合することによって得られる。
【0032】
プロピレン系重合体(A)は、好ましくはバイオマス由来のプロピレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスプロピレン系重合体を含む。また、プロピレン系重合体(A)がプロピレン・α-オレフィン共重合体である場合、バイオマス由来のプロピレン以外のα-オレフィンを含んでもよい。
プロピレン系重合体(A)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またプロピレン系重合体(A)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のプロピレン、バイオマス由来のプロピレン以外のα-オレフィンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0033】
<エチレン系重合体(B)>
エチレン系重合体(B)は、ポリエチレンおよびエチレン・α-オレフィン共重合体(ただし、α-オレフィンからエチレンを除く)からなる群から選択される1種または2種である。エチレン系重合体(B)のエチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン系重合体(B)を構成する繰り返し単位の合計量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上でありより好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下である。
【0034】
エチレン系重合体(B)としては、シーラント層10の強度をより適切な範囲とする観点から、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくは高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される少なくとも一種であり、更に好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される少なくとも一種である。
また、エチレン系重合体(B)は、高圧法、中圧法または低圧法によって製造される。中圧法または低圧法によって製造されるのが好ましい。中圧法としてはフィリプス法が挙げられ、低圧法としてはチーグラー法が挙げられる。
これらエチレン系重合体(B)は、単一の重合体であっても、2種以上のエチレン系重合体の混合物であってもよい。
【0035】
エチレン系重合体(B)におけるエチレン以外のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、炭素数が4~20個程度のα-オレフィンが挙げられる。また、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数4~8のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテンおよび1-ヘキセンからなる群から選択される1種または2種である。
このようなα-オレフィンとしては、1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン系重合体(B)がエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ただし、α-オレフィンからエチレンおよびプロピレンを除く)である場合、エチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィン由来の構成単位の合計含有量は、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体を構成する繰り返し単位の合計量を100モル%としたとき、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは2モル%以上であり、そして好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは8モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
【0036】
エチレン系重合体(B)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む。また、エチレン系重合体(B)がエチレン・α-オレフィン共重合体である場合、バイオマス由来のエチレン以外のα-オレフィンを含んでもよい。
エチレン系重合体(B)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン系重合体(B)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンおよびバイオマス由来のエチレン以外のα-オレフィンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0037】
エチレン系重合体(B)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、シール強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは900kg/m以上、より好ましくは905kg/m以上、更に好ましくは910kg/m以上であり、またシール強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは980kg/m以下、より好ましくは970kg/m以下、更に好ましくは960kg/m以下、更に好ましくは955kg/m以下である。
【0038】
エチレン系重合体(B)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、シール強度および耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは95℃以上であり、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上であり、シール強度および耐熱性の観点から、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
また、エチレン系重合体(B)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、プロピレン系重合体(A)およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)と混合し、フィルムとして形成できる限り限定されないが、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上であり、そして、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。
【0039】
エチレン系重合体(B)として使用できる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)としては、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上であり、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。
【0040】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)>
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)は、エチレンと、不飽和カルボン酸との共重合体、および、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種である。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、生産性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0041】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)における不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノエチル等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の生産性及び衛生性をより向上させる観点から、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0042】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)は、少なくともエチレンと不飽和カルボン酸とが共重合した共重合体またはそのアイオノマーであり、さらに第3の共重合成分が共重合した3元以上の多元共重合体であってもよい。
第3の共重合成分としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
これらの中でも、第3の共重合成分としては、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1以上4以下)がより好ましい。
なお、これら他の共重合成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また不飽和カルボン酸のアイオノマーとしては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銀、水銀などの1価の金属イオン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉛、チタン、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、カドミウム、錫などの多価金属イオンなどが挙げられる。これらの金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、工業化製品の入手がより容易である観点から、ナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウムから選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、ナトリウム、亜鉛及びマグネシウムから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含むことが好ましく、ナトリウムおよび亜鉛がより好ましい。
また不飽和カルボン酸のアイオノマーとしては、上記金属イオンの他にも、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-ジメチルアミノシクロヘキサン等のアミノ化合物を含むものであってもよい。
【0044】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0045】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中の、エチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の全体を100質量%としたとき、耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性、生産性等をより向上させる観点から、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、透明性、柔軟性及び被着体に対する接着性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは92質量%以下である。
【0046】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中の、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の全体を100質量%としたとき、透明性、柔軟性及び被着体に対する接着性をより向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、シーラント層の加工性をより向上させる観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0047】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中の、エチレおよび不飽和カルボン酸以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の全体を100質量%としたとき、柔軟性等をより向上させる観点から、好ましくは0質量%以上であり、柔軟性等をより向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
【0048】
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)中のエチレンに由来する構成単位の含有量、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量およびエチレおよび不飽和カルボン以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT-IR)により測定することができる。
【0049】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度は、柔軟性や接着性、機械的強度、加工性等をより良好にする観点から、好ましくは80%以下である。また、透明性、接着性および加工性をより向上させる観点から、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度は、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下、更に好ましくは40%以下であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度の下限に制限は無いが、透明性や耐熱性、耐水性等をより良好にする観点から、例えば1%以上であり、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。
なお、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれる全カルボキシ基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシ基のモル数の割合(モル%)である。
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度は、例えば、焼却残渣分析法により測定することができる。
【0050】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、各重合成分を高温、高圧下でラジカル重合させることによって得ることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは、このようなエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体と金属イオンを含む酸化物、水酸化物、または炭酸塩等とを反応させることによって得ることができる。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは市販されているものを用いてもよい。
【0051】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、シール強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは900kg/m以上であり、より好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上であり、またシール強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは980kg/m以下、より好ましくは960kg/m以下、更に好ましくは940kg/m以下である。
【0052】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、シール強度および耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、シール強度および耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、成形性および加工安定性をより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは2g/10分以上であり、そして、耐熱性や機械的強度等をより向上させる観点から、好ましくは500g/10分以下、より好ましくは300g/10分以下、更に好ましくは100g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。
【0053】
<バイオマス由来エチレン>
本実施形態に係るバイオマス由来エチレンの製造方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。以下にバイオマス由来エチレンの製造方法の例を挙げる。
【0054】
「バイオマス」とは、主に動植物に由来する有機物である資源を指し、化石燃料を除いたものをいう。
バイオマス由来のエチレンの製造方法は、例えば、植物原料を微生物により発酵させてバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)を生産し、脱水して製造する方法と、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されるバイオマスナフサから抽出する方法がある。
前者の原料としては、非可食原料と可食原料とがある。非可食原料としては、例えば、パルプ、ケナフ、稲わら等のセルロース系作物、古紙、製紙残渣、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、工場煙道ガス、廃ガス等が例示できる。可食原料としては、例えば、サトウキビ、おから、トウモロコシ、イモ類、小麦、米等の炭水化物系作物、そば、および大豆等が例示できる。前者の原料として、これらからなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
後者の原料としては、各種廃棄物や未利用の資源、資源作物等を用いることができる。具体的には、菜種油、大豆油等の油脂、ユーカリ油等の精油、植物油粕等を用いることができる。
原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおける二酸化炭素発生量を削減する観点から、バイオマスナフサから抽出されたエチレンを用いることが好ましい。
【0055】
バイオマスナフサからのエチレンの抽出は、化石燃料由来のナフサからの抽出と同様に、加熱、分解、蒸留、精製といった公知の方法を用いることができる。
【0056】
バイオエタノールの製造方法は限定されず、例えば、サトウキビやトウモロコシ等の可食原料であるバイオマス原料に、酵母に代表されるエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させて、糖を発酵させることで、エタノールを生産させた後、エタノールを精製して得ることができる。エタノールの精製は、蒸留、膜分離、抽出等の従来公知の方法を用いることができる。
また、非可食原料をバイオマス原料として使用する製造方法としては、例えば、古紙や製紙残渣等のごみ資源である非可食原料を燃焼させて発生する合成ガス(一酸化炭素や水素を主成分とするガス)、工場等から排出される煙道ガスや廃ガスを炭素源とし、微生物に発酵させることにより、エタノールを得ることができる。
【0057】
上記のように得られたエタノールを脱水反応することにより、バイオマス由来エチレンを得ることができる。脱水反応には、触媒の種類、加熱温度、圧力等の条件が求められるが、従来公知の方法を用いることができる。
【0058】
このようにして得られるバイオマスエチレンの製造工程において、エタノール発酵工程や脱水工程中に、高級アルコールや高級アルケン不純物が生成され得る。このため、エタノールの脱水の前、または脱水後に、こうした副生物を取り除くことができる。
【0059】
また、バイオマス由来のエチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンについても、上述のバイオマス由来のエチレンを原料として、化石燃料由来のエチレンを原料とした場合と同様に製造することができる。
【0060】
<バイオマス由来プロピレン>
本実施形態に係るバイオマス由来プロピレンの製造方法は、限定されず、公知の方法を用いることができる。以下にバイオマス由来プロピレンの製造方法の例を挙げる。
【0061】
バイオマス由来のプロピレンの製造方法は、例えば、上述したバイオマスエチレンを出発原料として、メタセシス反応によって、プロピレンを製造することができる。また、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどから得られる澱粉や糖分などのバイオマス由来の成分に対し、発酵条件を調整する事で1,3-プロピレングリコールを製造し、これを脱水反応させる事でプロピレンを製造することができる。また、非可食植物を主体とするバイオマス原料から発酵によりイソプロパノール(IPA)を製造し、それを脱水することでプロピレンを製造することができる。
【0062】
<バイオマス度>
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度は、環境配慮性を向上させる観点から、0質量%を超え、好ましくは5質量%以上、より好ましく10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、またシーラント用樹脂組成物全体のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよい。
ASTM D6866においては、バイオマス由来の放射性炭素(14C)濃度を測定することにより、バイオマス度を算出する。化石燃料由来の炭素は放射性炭素(14C)が一定の値を示すため、バイオマス由来炭素との区別が可能である。
例えばポリエチレンにおいて、バイオマス度が0質量%を超えて100質量%未満である場合、バイオマス由来のエチレンと化石燃料由来のエチレンの双方を含むといえる。
【0063】
本実施形態において、バイオマス由来のプロピレンを含むプロピレン系重合体(A)、バイオマス由来のエチレンを含むエチレン系重合体(B)や、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)の重合方法は限定されず、化石燃料由来エチレンを原料とした場合と同様の従来公知の方法を用いることができる。プロピレン系重合体(A)が、プロピレン以外のα-オレフィンを含む場合や、エチレン系重合体(B)がエチレン以外のα-オレフィンを含む場合も、同様にバイオマス由来のプロピレン以外のα-オレフィンやバイオマス由来のエチレン以外のα-オレフィンを原料として、従来公知の方法で重合することができる。
【0064】
<その他の成分>
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤および顔料等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、例えば、プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)および任意の添加剤を、同時にまたは連続的に混合することによって調製することができ、その混合順序に制限はない。調製方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましい。
【0066】
<接着性ポリオレフィン樹脂(D)>
接着性ポリオレフィン樹脂(D)は、積層体100のラミネート層30に使用される。
接着性ポリオレフィン樹脂(D)は、積層体100のラミネート層30を形成することができるものであれば、制限は無いが、オレフィンの単独重合体および2種以上のオレフィンの共重合体からなる群から選択される少なくとも一種である。共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
接着性ポリオレフィン樹脂(D)におけるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1‐ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、炭素数が2~20個程度のα-オレフィンが挙げられる。
このようなオレフィンとしては、1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
また、接着性ポリオレフィン樹脂(D)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは5g/10分以上、更に好ましくは7g/10分以上であり、耐熱性および押出加工性をより良好にする観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下である。
【0068】
このような接着性ポリオレフィン樹脂(D)を積層体100のラミネート層30とすることで、積層体100に充分な剛性を付与すると共に、耐熱性、ヒートシール特性およびラミネート特性に優れた積層体100を形成することができる。
【0069】
2.積層体
本実施形態に係る積層体100は、本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物を含むシーラント層10を含む。
また、本実施形態に係る積層体100は、例えば、ラミネート層30と中間層20とシーラント層10と、がこの順に積層してなる積層体である。
例えば、ラミネート層30は、接着性ポリオレフィン樹脂(D)から構成され、中間層20は後述の熱可塑性樹脂から構成することができ、シーラント層10は、上記シーラント用樹脂組成物から構成される。
中間層20は、一層でも二層以上の多層であってもよい。
ラミネート層30の中間層20とは反対側に基材層40が積層されていてもよい。
また、中間層20およびラミネート層30は、前述したシーラント用樹脂組成物に任意で配合されてもよい各種添加剤を含んでもよい。
【0070】
中間層20としては、例えば、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のものが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル・1-ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、および、これらの混合物等からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、延伸性および透明性をより良好とする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドが好ましく、ポリプロピレンが更に好ましい。
また、このような熱可塑性樹脂フィルムからなる中間層20は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいし、1種または2種以上の共押し出し品、押出しラミ品、ドライラミ品等の積層体であってもよい。
【0071】
ラミネート層30に積層される基材層40としては、例えば、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、前述の中間層20に用いることのできる熱可塑性樹脂と同様のフィルム等を用いることができる。中でも、積層体100の機械的強度をより向上させる観点から、ポリエステルおよびポリエチレンからなる群から選択される1種または2種が好ましい。
【0072】
本実施形態に係る積層体100は、例えば油脂および脂肪性食品の用途において100℃を超えて使用可能な包装材料とすることができる観点から、厚生省告示370号に定められた条件で処理したn-ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量が、好ましくは30μg/mL以下であり、より好ましくは25μg/mL以下である。
【0073】
本実施形態に係る積層体100の厚さが三層構成の場合、シーラント層10の厚さは、ヒートシール性と易剥離性のバランスをより良好なものとする観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上であり、ヒートシール性と易剥離性のバランスをより良好なものとする観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
また中間層20の厚さは、各層の厚さのバランスをより良好なものとする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは12μm以上であり、各層の厚さのバランスをより良好なものとする観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
またラミネート層30の厚さは、積層体100の強度をより良好なものとする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、積層体100の強度をより良好なものとする観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
積層体100全体の厚さは、積層体100の機械的強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは12μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、積層体100の機械的強度と易剥離性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
【0074】
本実施形態に係る積層体100は、印刷性あるいは基材層40等との接着性をより良好とするために、ラミネート層30の表面に、表面活性化処理を行ってもよい。表面活性化処理とは、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等である。
【0075】
本実施形態に係る積層体100は、公知のフィルム形成方法によって製造することができる。
本実施形態に係る積層体100の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
その際、プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)および任意の添加剤を所定量計量して、ドライブレンドあるいは溶融混錬して、シーラント用樹脂組成物を用意してもよいし、プロピレン系重合体(A)、エチレン系重合体(B)、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)および任意の添加剤を所定量計量して、直接フィルム成形機に投入してもよい。
積層体100は、それぞれ別々に各層を成形後貼り合わせてもよいが、三層以上の多層ダイを用いて共押出成形による方法を用いることが好ましい。
【0076】
3.蓋材
本実施形態に係る積層体100は、本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物からなるシーラント層10を備えているため、易開封性、ヒートシール性、耐ブロッキング性、包装材料に好適な耐衝撃性、スリップ性、剛性、および透明性等を有する積層体として、そのままでも包装用フィルムとして用いることができるし、蓋材としても使用できる。
本実施形態に係る積層体100は、包装容器に対するシール性に優れているため、包装容器の蓋材として好適に用いることができる。特に食品包装用、中でも油脂および脂肪性食品の包装用フィルムとして好適に使用することができる。
また、本実施形態に係る積層体100は、前述したようにラミネート層30に基材層40を貼り合わせて、様々な用途に用いることができる。
【0077】
本実施形態に係る積層体100を、蓋材として用いる場合、積層体100をそのまま蓋材として用いてもよいし、積層体100に印刷したものを用いてもよい。また、積層体100に、印刷された紙、あるいは印刷されていない紙、またはアルミ箔等と貼り合わせて蓋材としてもよい。また、予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしてもよい。蓋材とする場合には、蓋材の強度を向上する観点から、ラミネート層30に基材層40を設けた積層体100を用いるのが好ましい。
【0078】
4.包装体
本実施形態に係る包装体は、本実施形態に係る積層体100を含む。
本実施形態に係る積層体100を包装材料として用いる場合、積層体100そのものを、折りたたんで三方シールするか、または、2枚の積層体100を四方シールして包装体としてもよい。また本実施形態に係る積層体100に、後述する熱シール層を形成して包装体としてもよい。
本実施形態に係る包装体の形状は、被包装材料の形状、形態あるいは用途に応じて種々の形状を取り得る。例えばフレキシブルな軟包装体としては、積層体100と熱シール層を備えたフィルムとからなる三方シール袋に、被包装材料を充填した後、口部をヒートシールしてなる四方包装体としてもよい。また、熱シール層を備えたシート、トレー、カップ、ボトル等に、被包装材料を充填した後、積層体100のシーラント層10を最内層としてなる蓋材で上面をシールしてなる包装体であってもよい。
【0079】
本実施形態に係る包装体は、蓋材と、被着体とを備え、前記蓋材が、本実施形態に係る蓋材を含む構成とすることができる。
本実施形態に係る包装体は、例えば、本実施形態に係る積層体100に各種被着体をヒートシールすることにより作製することができる。被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状を取り得る。
このような被着体としては、例えば、プロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、およびポリ塩化ビニルからなる群から選ばれる1種または2種以上の樹脂からなる成形体を挙げることができる。熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性等に優れる観点から、プロピレン系重合体からなる成形体を被着体とすることが好ましい。このようなプロピレン系重合体は、プロピレン系重合体(A)と同一の範疇のものであるが、物性は同一であっても異なっていてもよい。プロピレン系重合体からなる成形体としては、例えばプロピレン系重合体を被包装材料に合わせて公知の方法でフィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等の種々の形状に成形したものを使用することができる。フィルムまたはシートの場合は、本実施形態に係る積層体100と同様の方法で製造することができる。トレーまたはカップの場合は、本実施形態に係る積層体100と同様の方法でシートを製造した後、真空成形、圧空成形等の熱成形によりトレー、カップ等の容器とすることにより製造することができる。また、カップあるいはボトルの場合は射出成形、射出中空成形(インジェクションブロー)、中空成形等により容器として成形することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0081】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0082】
[材料]
積層体の各成分は、以下のものを用いた。メルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠して測定した。密度は、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。バイオマス度は、ASTM D6866に準拠して測定した。
【0083】
<プロピレン系重合体(A)>
・PP:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(プライムポリマー社製、F317DV、プロピレンに由来する構成単位の含有量:96.3質量%、エチレンに由来する構成単位の含有量:1.7質量%、ブテンに由来する構成単位の含有量:2.0質量%(プロピレンに由来する構成単位の含有量:96.0モル%、エチレンに由来する構成単位の含有量:2.5モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有量:1.5モル%)、MFR(190℃、2160g荷重):3.1g/10分、MFR(230℃、2160g荷重):7g/10分、密度:900kg/m、融点:147℃、バイオマス度:0質量%)
【0084】
<エチレン系重合体(B)>
・PE1:高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SGE7252NS、エチレンに由来する構成単位の含有量:100質量%、MFR(190℃、2160g荷重):2g/10分、密度:952kg/m、融点:131℃、バイオマス度:96質量%)
・PE2:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SLH218、エチレン・1-ヘキセン共重合体、MFR(190℃、2160g荷重):2.5g/10分、密度:916kg/m、バイオマス度:84質量%)
・PE3:直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、ネオゼックス3510F、エチレン・1-ブテン共重合体、MFR(190℃、2160g荷重):1.6g/10分、密度:933kg/m、融点:124℃、バイオマス度:0質量%)
【0085】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(C)>
・エチレン・メタクリル酸共重合体1(エチレンに由来する構成単位の含有量:91質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量:9質量%、MFR(190℃、2160g荷重):2.5g/10分、密度:930kg/m、融点:99℃、バイオマス度:0質量%)
【0086】
<接着性ポリオレフィン樹脂(D)>
・接着性ポリオレフィン樹脂1(三井・ダウポリケミカル株式会社製、CMPS V70、MFR(190℃、2160g荷重):9g/10分)
【0087】
[実施例1~2及び比較例1]
<シーラント用樹脂組成物の作製>
表1に示す配合割合で仕込み量が10kgとなるように予め混合し、スクリュー径65mmφの単軸押出機(スクリュー有効長:L/D=28)に投入し、加工温度210℃にて溶融混練することにより、シーラント用樹脂組成物(P)を作製した。シーラント用樹脂組成物(P)のMFRを表1に示す。
なお、表1に記載の材料の数値は、質量部を表す。
【0088】
<積層体の作製>
多層キャストフイルム成形機を用い、ラミネート層を接着性ポリオレフィン樹脂1、中間層をポリプロピレン(ホモタイプ、プライムポリマー社製、商品名:プライムポリプロF107BV)、シーラント層をシーラント用樹脂組成物(P)とし、加工温度230℃で、各層の厚み構成がラミネート層/中間層/シーラント層=20μm/15μm/10μmの溶融膜を作製した。上記溶融膜のラミネート層側に、予め作成しておいた延伸ポリエステルフィルム12μm(東レ社製、商品名:ルミラー)とポリエチレン15μm(三井・ダウ ポリケミカル社製、商品名:ミラソン11P)を積層した基材層を、当該基材層のポリエチレン側に貼り合わせるようにして、押出ラミネート加工することにより積層し、積層体を作製した。積層体の層構成および厚みは、延伸ポリエステルフィルム/ポリエチレン/ラミネート層/中間層/シーラント層=12μm/15μm/20μm/15μm/10μmである。
上記で使用した多層キャストフイルム成形機は、田辺プラスチックス機械社製の3種3層多層キャスト成形機であり、成形機はいずれもスクリュー径40mmφ、ダイ幅500mmの単軸押出機である。共押出フィードブロックはEDI社製である。
【0089】
<接着性評価>
[剥離強度]
上記で作製した積層体を、基材としての厚さ0.3mm、凹凸面の表面粗さ(Ra)0.5μmのポリプロピレン(PP)シート上に、上記積層体におけるシーラント層と基材とが接触する向きで重ね、下記の条件にてヒートシールして、延伸ポリエステルフィルム/ポリエチレン/ラミネート層/中間層/シーラント層/基材の層構成を有する試験用サンプルを得た。
<ヒートシール条件>
・シール装置:ヒートシールバー(テスター産業社製、商品名:TP701Cヒートシールテスター、シール幅:1mm×300mm長)
・シール温度:160℃、170℃、180℃の各温度
・シール時間:1.0秒
・シール圧:0.2MPa(実圧)
【0090】
次いで、上記で作製した試験用サンプルの端部から長手方向に、積層体をポリプロピレン(PP)シートから30mm剥離し、剥離時の剥離強度を測定し、3回測定時の平均値を剥離強度(N/mm)とした。
<剥離条件>
・剥離試験装置:島津製作所社製、オートグラフAG-X
・剥離速度:300mm/分
・剥離角度:180°
・温度:23℃
・湿度:50%RH
剥離強度は、上記で作製した積層体のTD方向に対してヒートシールしてMD方向に剥離する場合の剥離強度(以下、MD方向の剥離強度と略記する)と、MD方向に対してヒートシールしてTD方向に剥離する場合の剥離強度(以下、TD方向の剥離強度と略記する)について、それぞれ測定した。
平均の剥離強度は、以下の基準で評価した。基準は、MD方向の剥離強度とTD方向の剥離強度ともに共通である。
(基準)
良好:平均剥離強度が1N/mm以上5N/mm以下である
不良:平均剥離強度が1N/mm未満、あるいは、5N/mmを超える
【0091】
[MD方向の剥離強度とTD方向の剥離強度とのばらつき]
MD方向の剥離強度をTD方向の剥離強度で除した値(MD方向の剥離強度/TD方向の剥離強度)をMD方向の剥離強度とTD方向の剥離強度とのばらつきの指標とし、以下の基準で評価した。
(基準)
良好:0.5以上1.5以下
不良:0.5未満、あるいは、1.5を超える
【0092】
[剥離状態]
上記の剥離強度の測定に使用した剥離強度測定後の積層体(シーラント層とポリプロピレン(PP)シートとが剥離されたサンプル)のシーラント層側表面を顕微鏡で熟練した技術者が観察した。剥離状態は、以下の基準で評価した。
(基準)
良好(A):糸曳きおよび膜曳きがいずれも認められない。
不良(B):糸曳きおよび膜曳きの少なくともいずれかが認められる。
【0093】
【表1】
【0094】
表1から明らかなように、実施例1および2のシーラント用樹脂組成物(P)を用いた積層体は、バイオマス由来のエチレンが含まれているにも関わらず、剥離強度、剥離状態およびMD方向の剥離強度とTD方向の剥離強度とのばらつきが、いずれも化石燃料由来の原料のみを使用した積層体(比較例1)と同等の性能を有していた。
【符号の説明】
【0095】
10:シーラント層
20:中間層
30:ラミネート層
40:基材層
100:積層体
図1
図2