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特開2024-36853シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体
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  • 特開-シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体 図1
  • 特開-シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036853
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240311BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 57/02 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20240311BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20240311BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240311BHJP
   C09J 7/28 20180101ALI20240311BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240311BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20240311BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240311BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240311BHJP
   C09J 123/20 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/04
C08L57/02
C08L25/02
C09J7/22
C09J7/29
C09J7/28
C09J7/35
C09J123/08
B65D65/40 D
B32B27/32 102
C09J123/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141373
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】五戸 久夫
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA27
3E086CA28
3E086CA35
3E086DA08
4F100AB01B
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4F100AK06A
4F100AK06G
4F100AK62A
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4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA16A
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4F100JD02B
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4J040KA26
4J040LA11
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA06
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造するシーラント用樹脂組成物と同等のアルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、エチレン系重合体(B)と、を含むシーラント用樹脂組成物であって、前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、
エチレン系重合体(B)と、
を含むシーラント用樹脂組成物であって、
前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下であるシーラント用樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)をさらに含む、請求項1に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・α-オレフィン共重合体を含む、請求項2に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項4】
粘着付与樹脂(D)をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂(D)がバイオマス由来の粘着付与樹脂を含む、請求項4に記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項6】
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項7】
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上49質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項9】
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む請求項1~8のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項10】
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、請求項1~9のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項11】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記シーラント用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、請求項1~10のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項12】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、請求項1~11のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項13】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の前記不飽和カルボン酸がアクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~12のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
【請求項14】
バリア層と、
シーラント層と、
を含む積層体であって、
前記シーラント層が、請求項1~13のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
【請求項15】
前記バリア層が金属箔を含む、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
基材層と、
シーラント層と、
を含む積層体であって、
前記シーラント層が、請求項1~13のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
【請求項17】
前記基材層が紙を含む、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
請求項14~17のいずれかに記載の積層体を含む蓋材。
【請求項19】
開口を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口に蓋をする蓋材と、
を備える包装体であって、
前記蓋材が請求項18に記載の蓋材を含む包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品包装、ブリスター包装、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装として、ボトルやカップ、トレー状のプラスチック容器をプラスチックラミネートフィルムやアルミ箔フィルム等の蓋材でシールした包装形態が広く用いられている。
【0003】
食品包装の蓋材として、例えば、外側から、印刷紙層/ポリエチレン層/アルミニウム箔/シーラント層の順に構成される構成が使用されている。
【0004】
このような食品容器において、容器本体には発泡ポリスチレンやポリプロピレンが多く用いられている。このため、蓋材と発泡ポリスチレンやポリプロピレンとのヒートシール強度を適正な範囲とする必要がある。ヒートシール強度が強すぎると、開封が困難となり不便である。一方ヒートシール強度が弱すぎると、密封性に劣ることが考えられる。
【0005】
特許文献1には、ポリプロピレンとポリエチレンとをそれぞれ所定の範囲で含む接着性樹脂および支持層を備え、全体の厚さおよび接着層の厚さが所定の範囲である、ポリプロピレン容器の蓋材シーラントフィルムが記載されている。そして当該フィルムは、生産性とフィルムの強度を維持しつつ、易開封性と密封性のバランスに優れることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、所定の範囲の密度を有するエチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、低密度ポリエチレンを所定の範囲で含む易開封性ヒートシール用樹脂組成物が記載されている。そして当該易開封性ヒートシール用樹脂組成物は、ヒートシール性、耐熱性に優れることが記載されている。
特許文献3には、シール層と、ポリオレフィン系樹脂からなる支持層で構成されている多層が記載されており、当該シール層は、ポリプロピレンおよび、所定の特性を持つエチレン・α-オレフィンランダム共重合体合わせて100質量部に対して、ポリエチレン樹脂を所定の比率で含む多層シートが記載されている。当該多層シートは、密封性と易開封性を両立しつつ、加熱殺菌条件に耐え、製品流通時における十分な耐性を良好とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5-6513号公報
【特許文献2】特開平2-185547号公報
【特許文献3】特開2000-355358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、このような包装容器に用いられる樹脂としては、化石燃料由来の樹脂が一般的である。しかしながら、化石燃料である石油は、その枯渇が危ぶまれるとともに、製品の製造工程及び製品となった後の廃棄過程等において多くの二酸化炭素を排出するため、地球温暖化への影響が懸念されている。
包装容器の構成成分のひとつであるシーラント用樹脂組成物についても、環境に配慮しながら製造していくことが求められている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化石燃料から得られる樹脂のみを使用して製造するシーラント用樹脂組成物と同等のアルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、エチレン系重合体(B)とを含むシーラント用樹脂組成物において、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることによって、従来の化石燃料由来の原料のみを使用して製造したシーラント用樹脂組成物と同等のアルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性を有しながら、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
本発明は、以下のシーラント用樹脂組成物、積層体、蓋材および包装体を提供する。
【0012】
[1]
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、
エチレン系重合体(B)と、
を含むシーラント用樹脂組成物であって、
前記シーラント用樹脂組成物全体のASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下であるシーラント用樹脂組成物。
[2]
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)をさらに含む、[1]に記載のシーラント用樹脂組成物。
[3]
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(C)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・α-オレフィン共重合体を含む、[2]に記載のシーラント用樹脂組成物。
[4]
粘着付与樹脂(D)をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[5]
前記粘着付与樹脂(D)がバイオマス由来の粘着付与樹脂を含む、[4]に記載のシーラント用樹脂組成物。
[6]
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[7]
前記シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、
前記エチレン系重合体(B)の含有量が1質量%以上99質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[8]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量が、1質量%以上49質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[9]
前記エチレン系重合体(B)が、低密度ポリエチレンを含む[1]~[8]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[10]
前記エチレン系重合体(B)がバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[11]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量が、前記シーラント用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、2質量%以上100質量%以下である、[1]~[10]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[12]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む、[1]~[11]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[13]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の前記不飽和カルボン酸がアクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[12]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物。
[14]
バリア層と、
シーラント層と、
を含む積層体であって、
前記シーラント層が、[1]~[13]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
[15]
前記バリア層が金属箔を含む、[14]に記載の積層体。
[16]
基材層と、
シーラント層と、
を含む積層体であって、
前記シーラント層が、[1]~[13]のいずれかに記載のシーラント用樹脂組成物を含む積層体。
[17]
前記基材層が紙を含む、[16]に記載の積層体。
[18]
[14]~[17]のいずれかに記載の積層体を含む蓋材。
[19]
開口を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口に蓋をする蓋材と、
を備える包装体であって、
前記蓋材が[18]に記載の蓋材を含む包装体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、化石燃料由来の樹脂のみを使用して製造された従来のシーラント用樹脂組成物と同等のアルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
また、本実施形態において、アルミ接着性とは、アルミ箔にシーラント用樹脂組成物を押出ラミネートして作製した積層体における、アルミ箔とシーラント層との層間接着強度のことを表す。ヒートシール性とは、積層体のシーラント層を、例えば、ポリプロピレンまたは発泡ポリスチレンと接するように重ねて加熱することで、積層体のシーラント層を溶融させた後に冷却固化し、積層体とポリプロピレン、または積層体と発泡ポリスチレンとをヒートシールした際の接着強度のことを表す。
【0016】
図1は、本実施形態係る積層体100の積層構造の形態を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の積層体100は、シーラント層10、バリア層20が積層された積層体である。
図2は、本実施形態係る積層体100の積層構造の別の形態を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の積層体100は、シーラント層10、基材層30が積層された積層体である。
【0017】
1.シーラント用樹脂組成物
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、エチレン系重合体(B)と、を含み、シーラント用樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度が0質量%を超えて100質量%以下である。
【0018】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物によれば、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、エチレン系重合体(B)とを含みつつ、各成分の少なくとも一部に、バイオマス由来の原料を使用して製造した成分を用いることで、化石燃料由来の原料のみを使用して製造された従来のシーラント用樹脂組成物と同等のアルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性を有しつつ、環境配慮性が向上したシーラント用樹脂組成物を提供することができる。
【0019】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の含有量は、アルミ接着性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下である。
【0020】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン系重合体(B)の含有量は、押出ラミネート加工適性および耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、アルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0021】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量は、アルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と、前記エチレン系重合体(B)との合計含有量の上限について制限はないが、例えば、100質量%以下である。
【0022】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、ヒートシール性、押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)をさらに含む。
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、ヒートシール性、押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0023】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、ヒートシール性をより良好とする観点から、好ましくは、粘着付与樹脂(D)をさらに含む。
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物の樹脂成分の全体を100質量%としたとき、ヒートシール性をより良好とする観点から、粘着付与樹脂(D)の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、更に好ましくは9質量%以上であり、積層体100のアルミ接着性、ヒートシール性、押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0024】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、JIS K 7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、メルトマスフローレート(MFR)は、アルミ接着性、ヒートシール性、および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上、更に好ましくは5.0g/10分以上、更に好ましくは10.0g/10分以上、更に好ましくは15.0g/10分以上、更に好ましくは20.0g/10分以上であり、押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは60.0g/10分以下、より好ましくは50.0g/10分以下、更に好ましくは40.0g/10分以下、更に好ましくは35.0g/10分以下である。
【0025】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)>
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)は、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、および、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種である。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、押出ラミネート加工適性を考慮すると2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体又は3元ランダム共重合体である。
【0026】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)における不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノエチル等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の押出ラミネート加工適性及び衛生性をより向上させる観点から、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0027】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)は、少なくともエチレンと不飽和カルボン酸とが共重合した共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種であり、さらに第3の共重合成分が共重合した3元以上の多元共重合体とすることが好ましい。
第3の共重合成分としては、例えば、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
これらの中でも、第3の共重合成分としては、ポリスチレンに対するヒートシール性をより良好とする観点から、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1以上4以下)がより好ましい。
なお、これら他の共重合成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また不飽和カルボン酸のアイオノマーとしては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銀、水銀などの1価の金属イオン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉛、チタン、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、アルミニウム、鉄、カドミウム、錫などの多価金属イオンなどが挙げられる。これらの金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、工業化製品の入手がより容易である観点から、ナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウムから選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、ナトリウム、亜鉛及びマグネシウムから選ばれる少なくとも一種の金属イオンを含むことが好ましく、ナトリウムおよび亜鉛がより好ましい。
また不飽和カルボン酸のアイオノマーとしては、上記金属イオンの他にも、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-ジメチルアミノシクロヘキサン等のアミノ化合物を含むものであってもよい。
【0029】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種を含む。
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0030】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中の、エチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の全体を100質量%としたとき、耐熱性や機械的強度、押出ラミネート加工適性等をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、ヒートシール性、押出ラミネート加工適性および透明性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0031】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中の、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の全体を100質量%としたとき、アルミ接着性、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、押出ラミネート加工適性および耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは49質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0032】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中の、エチレンおよび不飽和カルボン酸以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の全体を100質量%としたとき、ポリスチレンに対するヒートシール性をより良好とする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0033】
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)中のエチレンに由来する構成単位の含有量、不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量およびエチレおよび不飽和カルボン以外のモノマーに由来する構成単位の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT-IR)により測定することができる。
【0034】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度は、柔軟性、アルミ接着性、ヒートシール性および加工性等をより良好にする観点から、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下、更に好ましくは40%以下であり、またエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度の下限に制限は無いが、透明性および機械的強度をより良好にする観点から、例えば1%以上であり、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上である。
なお、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれる全カルボキシ基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシ基のモル数の割合(モル%)である。
ここで、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの中和度は、例えば、焼却残渣分析法により測定することができる。
【0035】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、各重合成分を高温、高圧下でラジカル重合させることによって得ることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは、このようなエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体と金属イオンを含む酸化物、水酸化物、または炭酸塩等とを反応させることによって得ることができる。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは市販されているものを用いてもよい。
【0036】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより良好とする観点から、好ましくは900kg/m以上であり、より好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上であり、また押出ラミネート加工適性および柔軟性をより良好とする観点から、好ましくは980kg/m以下、より好ましくは960kg/m以下、更に好ましくは950kg/m以下である。
【0037】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点は、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、ヒートシール性をより良好とする観点から、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
また、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、成形性および加工安定性をより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは5g/10分以上、更に好ましくは10g/10分以上、更に好ましくは20g/10分以上、更に好ましくは30g/10分以上であり、そして、耐熱性や機械的強度等をより向上させる観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは80g/10分以下、更に好ましくは60g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは40g/10分以下である。
【0038】
<エチレン系重合体(B)>
エチレン系重合体(B)は、ポリエチレンまたはエチレンと極性モノマーとの共重合体である(なお、エチレン系重合体(B)から、後述のエチレン・α-オレフィン共重合体(C)に該当するものを除く)。シーラント層10の強度をより適切な範囲とする観点から、エチレン系重合体(B)は好ましくはポリエチレンを含む。
【0039】
エチレン系重合体(B)としては、シーラント層10の強度をより適切な範囲とする観点から、好ましくはポリエチレンを含み、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、更に好ましくは高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)および直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)を含む。
また、エチレン系重合体(B)は、高圧法、中圧法または低圧法によって製造される。高圧法によって製造されることが好ましい。
これらエチレン系重合体(B)は、単一の重合体であっても、二種以上のエチレン系重合体の混合物であってもよい。
【0040】
エチレンと極性モノマーとの共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0041】
エチレン系重合体(B)は、好ましくはバイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマスエチレン系重合体を含む。
エチレン系重合体(B)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上であり、またエチレン系重合体(B)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0042】
エチレン系重合体(B)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、機械的強度をより良好とする観点から、好ましくは900kg/mを超え、より好ましくは905kg/m以上、更に好ましくは910kg/m以上、更に好ましくは915kg/m以上、更に好ましくは920kg/m以上であり、またヒートシール性をより良好とする観点から、好ましくは940kg/m以下、より好ましくは930kg/m以下、更に好ましくは925kg/m以下であり、すなわち、低密度ポリエチレンの範囲に入るものが好ましい。
【0043】
また、エチレン系重合体(B)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)と混合し、フィルムとして形成できる限り限定されないが、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは3g/10分以上であり、そして、好ましくは100g/10分以下であり、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。
【0044】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(C)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体である(ただし、エチレン系重合体(B)に該当するものを除く)。共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。好ましくはヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより向上させる観点から、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体である。
【0045】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)におけるエチレン以外のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどの、炭素数が3~10個程度のα-オレフィンが挙げられる。シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲にする観点から、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~8個のα-オレフィンであり、より好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択される少なくとも一種であり、更に好ましくはプロピレンおよび1-ブテンからなる群から選択される少なくとも一種である。
このようなα-オレフィンとしては、一種単独または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、またエチレン・α-オレフィン共重合体(C)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス由来のエチレンおよびエチレン以外のα-オレフィンの製造方法およびバイオマス度については後述する。
【0047】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の、JIS K 7112:1999に準拠して測定される密度は、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは860kg/m以上、より好ましくは865kg/m以上、更に好ましくは870kg/m以上、更に好ましくは875kg/m以上、更に好ましくは880kg/m以上であり、ヒートシール性をより良好とする観点から、900kg/m以下であり、より好ましくは895kg/m以下、更に好ましくは890kg/m以下である。
【0048】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)としては、例えば、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、
エチレン・1-オクテンランダム共重合体が挙げられる。好ましくは、エチレン・1-ブテンランダム共重合体である。
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のエチレン含有量は、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)全体を100質量%としたとき、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは76質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、シーラント用樹脂組成物の柔軟性をより適切な範囲とする観点から、好ましくは92質量%以下、より好ましくは88質量%以下である。
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定される吸熱曲線から求められる融点が、耐熱性をより良好とする観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
上記のような低結晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。
【0049】
また、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のJIS K 7210:1999、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、ヒートシール性および押出ラミネート加工適性をより良好とする観点から、好ましくは0.01g/10分以上であり、より好ましくは0.1g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上、更に好ましくは3g/10分以上であり、そして好ましくは100g/10分以下であり、より好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは30g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5g/10分以下である。
このようなエチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、遷移金属化合物触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンを共重合することによって得られる。
【0050】
<粘着付与樹脂(D)>
粘着付与樹脂(D)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系炭化水素樹脂、及びクマロン・インデン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種などを挙げることができる。
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物を、飲食品包装用の易開封性シーラント材料として用いる場合には、無臭性、食品衛生性、および他成分との混和性をより良好とする観点から、例えば、脂環族系炭化水素樹脂およびポリテルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、脂環族系炭化水素樹脂がより好ましい。
【0051】
脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば1-ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレンなどの炭素数4~5のモノまたはジオレフィンからなる群から選択される少なくとも一種以上を重合して得られる樹脂が挙げられる。
脂環族系炭化水素樹脂としては、例えば、スペントC~C留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂および芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂からなる群から選択される少なくとも一種などを挙げることができる。
脂環族系炭化水素樹脂の市販品としては、例えば、アルコンP140(荒川化学社製、軟化点140℃)、アルコンP125(荒川化学社製、軟化点125℃)、アルコンP115(荒川化学社製、軟化点115℃)、アルコンP100(荒川化学社製、軟化点100℃)、アルコンP90(荒川化学社製、軟化点90℃)、アルコンM135(荒川化学社製、軟化点135℃)、アルコンM115(荒川化学社製、軟化点115℃)、アルコンM100(荒川化学社製、軟化点100℃)、アルコンM90(荒川化学社製、軟化点90℃)などが挙げられる。
【0052】
芳香族系炭化水素樹脂の例として、例えば、ビニルトルエン、インデンおよびα-メチルスチレンなどのC~C10のビニル芳香族炭化水素からなる群から選択される少なくとも一種以上を重合して得られる樹脂、およびこれらと上記脂肪族炭化水素を共重合して得られる樹脂からなる群から選択される少なくとも一種などを挙げることができる。
ポリテルペン系樹脂の例としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α-ピネン・フェノール共重合体、及びこれらの水素添加物からなる群から選択される少なくとも一種などを挙げることができる。
【0053】
ロジン類としては、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物からなる群から選択される少なくとも一種などが挙げられる。変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。
スチレン系炭化水素樹脂としては、例えば、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の一種又は二種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0054】
粘着付与樹脂(D)は、好ましくはバイオマス由来の粘着付与樹脂を含む。
粘着付与樹脂(D)のバイオマス度は、環境配慮性をより向上させる観点から、0質量%を超えることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、また粘着付与樹脂(D)のバイオマス度の上限に制限は無いが、好ましくは100質量%以下である。
バイオマス度については後述する。
バイオマス由来の粘着付与樹脂としては、上述の、ポリテルペン系樹脂およびロジン類からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
バイオマス由来の粘着付与樹脂の市販品としては、例えばヤスハラケミカル社製の「YSレジン」シリーズや「YSポリスター」シリーズが挙げられる。
【0055】
<バイオマス由来エチレン>
本実施形態に係るバイオマス由来エチレンの製造方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。以下にバイオマス由来エチレンの製造方法の例を挙げる。
【0056】
「バイオマス」とは、主に動植物に由来する有機物である資源を指し、化石燃料を除いたものをいう。
バイオマス由来のエチレンの製造方法は、例えば、植物原料を微生物により発酵させてバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)を生産し、脱水して製造する方法と、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されるバイオマスナフサから抽出する方法がある。
前者の原料としては、非可食原料と可食原料とがある。非可食原料としては、例えば、パルプ、ケナフ、稲わら等のセルロース系作物、古紙、製紙残渣、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、工場煙道ガス、廃ガス等が例示できる。可食原料としては、例えば、サトウキビ、おから、トウモロコシ、イモ類、小麦、米等の炭水化物系作物、そば、および大豆等が例示できる。前者の原料として、これらからなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
後者の原料としては、各種廃棄物や未利用の資源、資源作物等を用いることができる。具体的には、菜種油、大豆油等の油脂、ユーカリ油等の精油、植物油粕等を用いることができる。
原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおける二酸化炭素発生量を削減する観点から、バイオマスナフサから抽出されたエチレンを用いることが好ましい。
【0057】
バイオマスナフサからのエチレンの抽出は、化石燃料由来のナフサからの抽出と同様に、加熱、分解、蒸留、精製といった公知の方法を用いることができる。
【0058】
バイオエタノールの製造方法は限定されず、例えば、サトウキビやトウモロコシ等の可食原料であるバイオマス原料に、酵母に代表されるエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させて、糖を発酵させることで、エタノールを生産させた後、エタノールを精製して得ることができる。エタノールの精製は、蒸留、膜分離、抽出等の従来公知の方法を用いることができる。
また、非可食原料をバイオマス原料として使用する製造方法としては、例えば、古紙や製紙残渣等のごみ資源である非可食原料を燃焼させて発生する合成ガス(一酸化炭素や水素を主成分とするガス)、工場等から排出される煙道ガスや廃ガスを炭素源とし、微生物に発酵させることにより、エタノールを得ることができる。
【0059】
上記のように得られたエタノールを脱水反応することにより、バイオマス由来エチレンを得ることができる。脱水反応には、触媒の種類、加熱温度、圧力等の条件が求められるが、従来公知の方法を用いることができる。
【0060】
このようにして得られるバイオマスエチレンの製造工程において、エタノール発酵工程や脱水工程中に、高級アルコールや高級アルケン不純物が生成され得る。このため、エタノールの脱水の前、または脱水後に、こうした副生物を取り除くことができる。
【0061】
<バイオマス由来α-オレフィン>
本実施形態に係るバイオマス由来α-オレフィン(エチレン以外)の製造方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、バイオマス由来のプロピレン製造方法は、上述したバイオエチレンを出発原料として、メタセシス反応によって、プロピレンを製造することができる。また、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモなどから得られる澱粉や糖分などのバイオマス由来の成分に対し、発酵条件を調整する事で1,3-プロピレングリコールを製造し、これを脱水反応させる事でプロピレンを製造することができる。また、非可食植物を主体とするバイオマス原料から発酵によりイソプロパノール(IPA)を製造し、それを脱水することでプロピレンを製造することができる。
【0062】
<バイオマス度>
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物において、シーラント用樹脂組成物全体の、ASTM D6866に準拠して測定されるバイオマス度は、環境配慮性を向上させる観点から、0質量%を超え、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、またシーラント用樹脂組成物全体のバイオマス度の上限に制限は無いが、100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
ASTM D6866においては、バイオマス由来の放射性炭素(14C)濃度を測定することにより、バイオマス度を算出する。化石燃料由来の炭素は放射性炭素(14C)が一定の値を示すため、バイオマス由来炭素との区別が可能である。
例えばポリエチレンにおいて、バイオマス度が0質量%を超えて100質量%未満である場合、バイオマス由来のエチレンと化石燃料由来のエチレンの双方を含むといえる。
【0063】
本実施形態において、バイオマス由来のエチレンを含むエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)、バイオマス由来のエチレンを含むエチレン系重合体(B)およびバイオマス由来のエチレンおよびバイオマス由来のα-オレフィンを含むエチレン・α-オレフィン共重合体(C)の重合方法は限定されず、化石燃料由来エチレンを原料とした場合と同様の従来公知の方法を用いることができる。
【0064】
<その他の成分>
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、シリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤および顔料等からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物は、例えば、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)、エチレン系重合体(B)および任意の添加剤を、同時にまたは連続的に混合することによって調製することができ、その混合順序に制限はない。調製方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましい。
【0066】
2.積層体
本実施形態に係る積層体100は、本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物を含むシーラント層10を含む。
また、本実施形態に係る積層体100は、例えばバリア層20と、シーラント層10とを含む積層体である。
また、本実施形態に係る積層体100の別の形態としては、例えば基材層30と、シーラント層10とを含む積層体である。
また、本実施形態に係る積層体100の別の形態としては、例えば基材層30と、バリア層20と、シーラント層10とを含む積層体である。
シーラント層10は、上記シーラント用樹脂組成物から構成される。
バリア層20は、一層でも二層以上の多層であってもよい。
基材層30は、一層でも二層以上の多層であってもよい。
また、本実施形態の積層体100は、シーラント層10、バリア層20および基材層30以外の層を有していてもよい。例えば、積層体100が、バリア層20と基材層30とを有する場合、バリア層20と基材層30の間に、その他の層を有していてもよいし、バリア層20又は基材層30とシーラント層10との間に、その他の層を有していてもよい。
その他の層としては、例えば、接着層、無機物層、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、防汚層、アンカーコート層等を挙げることができる。各層の層間の接着性をより良好とするため、接着層を有することが好ましい。その他の層は一層単独で用いてもよいし、二層以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
バリア層20としては、例えば、一軸延伸ないし二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンなどの延伸フィルム、若しくは当該延伸フィルム上に、アルミニウムなどの無機物や酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの無機化合物の薄膜を物理蒸着あるいは化学蒸着などの蒸着法により20~100nm程度の厚さに設けた無機化合物蒸着プラスチックフィルム、金属箔(銅箔、アルミニウム箔等)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム、塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等が挙げられる。必要に応じて、これらを積層して用いてもよい。これらの中でも、機械的強度やバリア性等に優れていることから、金属箔(銅箔、アルミニウム箔等)が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0068】
基材層30としては、例えば、紙、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステル等からなる板状材(シートまたはフィルム)等が挙げられる。必要に応じて、これらを積層して用いてもよい。これらの中でも紙を含むことが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る積層体100は、例えば油脂および脂肪性食品の用途において100℃以下で使用可能な包装材料とできる観点から、厚生省告示370号に定められた条件で処理したn-ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量が、好ましくは150μg/mL以下である。
【0070】
シーラント層10の厚さは、ヒートシール性をより良好とする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、n-ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量を低減する観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。
またバリア層20の厚さは、バリア性をより良好なものとする観点から、好ましくは5μm以上であり、積層体100の柔軟性をより良好なものとする観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
また基材層30の厚さは、機械的強度をより良好とする観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、柔軟性をより良好なものとする観点から、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。
積層体100全体の厚さは、積層体100の機械的強度、柔軟性およびヒートシール性のバランスをより良好とする観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、更に好ましくは100μm以上、更に好ましくは120μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは200μm以下、更に好ましくは170μm以下である。
【0071】
積層体100が接着層を有する場合、接着層の形成方法は限定されるものではなく、例えば、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法等の公知の方法を用いることができる。
押出ラミネート法に使用する樹脂として具体的には、低密度ポリエチレン等を使用することができる。
また、接着層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0072】
本実施形態に係る積層体100は、印刷性あるいはシーラント層10等とのヒートシール性を改良するために、バリア層20や基材層30の表面に、表面活性化処理を行ってもいい。表面活性化処理とは、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等である。
【0073】
本実施形態に係る積層体100は、公知のフィルム形成方法によって製造することができる。
本実施形態に係る積層体100の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出ラミネート成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
その際、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)、エチレン系重合体(B)、および任意の添加剤を所定量計量して、ドライブレンドあるいは溶融混錬して、シーラント用樹脂組成物を用意してもよいし、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)、エチレン系重合体(B)、および任意の添加剤を所定量計量して、直接フィルム成形機に投入してもよい。
積層体100は、それぞれ別々に各層を成形後貼り合わせてもよいが、バリア層20又は基材層30に押出ラミネート成形法によってシーラント層10を直接積層する方法を用いることが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る積層体100は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装材として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装材として好適に用いることができる。
【0075】
3.蓋材
本実施形態に係る積層体100は、本実施形態に係るシーラント用樹脂組成物からなるシーラント層10を備えているため、ヒートシール性、柔軟性、機械的強度、耐熱性、および透明性等を有する積層体として、そのままでも包装用フィルムとして用いることができるし、蓋材としても使用できる。
本実施形態に係る積層体100は、包装容器に対するヒートシール性に優れているため、包装容器の蓋材と構成する蓋材として好適に用いることができる。特に食品包装用、中でも油脂および脂肪性食品の包装用フィルムとして好適に使用することができる。
【0076】
本実施形態に係る積層体100を、蓋材として用いる場合、積層体100をそのまま蓋材として用いてもよいし、積層体100に印刷したものを用いてもよい。また、積層体100に、印刷された紙、あるいは印刷されていない紙、印刷されたアルミ箔、あるいは印刷されていないアルミ箔等と貼り合わせて蓋材としてもよい。また、予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしてもよい。
【0077】
4.包装体
本実施形態に係る包装体は、例えば、開口を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口に蓋をする蓋材と、を備え、上記蓋材は、本実施形態に係る蓋材である。
【0078】
また、開口を有する容器本体としては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の容器が挙げられる。好ましくは、ポリスチレンおよびポリプロピレンからなる群から選択される一種または二種である。容器本体の樹脂は発泡していても発泡していなくてもよい。
本実施形態に係る包装体は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装体として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装体として好適に用いることができる。
【0079】
本実施形態に係る包装体に収容する内容物としては限定されないが、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等が挙げられる。
また、本実施形態に係る包装体は、本実施形態に係る蓋材を備えるため、容器本体に対するヒートシール性および押出ラミネート加工適性のバランスに優れている。そのため、包装体の容器本体に収容する内容物としては、衛生性の求められる食品や医薬品が好ましい。
【0080】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0081】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0082】
[材料]
各成分は、以下のものを用いた。メルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210:1999に準拠して測定した。密度は、JIS K 7112:1999に準拠して測定した。バイオマス度は、ASTM D6866に準拠して測定した。
【0083】
<エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびそのアイオノマーから選択される少なくとも一種(A)>
・エチレン・メタクリル酸共重合体1(エチレンに由来する構成単位の含有量:80質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量:10質量%、アクリル酸イソブチルに由来する構成単位の含有量:10質量%、MFR(190℃、2160g荷重):36g/10分、密度:940kg/m、融点:86℃、バイオマス度:0質量%を超える)
・エチレン・メタクリル酸共重合体2(エチレンに由来する構成単位の含有量:80質量%、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量:10質量%、アクリル酸イソブチルに由来する構成単位の含有量:10質量%、MFR(190℃、2160g荷重):36g/10分、密度:940kg/m、融点:86℃、バイオマス度:0質量%)
【0084】
<エチレン系重合体(B)>
・PE1:低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、SPB681、MFR(190℃、2160g荷重):3.8g/10分、密度:922kg/m、バイオマス度:95質量%)
・PE2:低密度ポリエチレン(MFR(190℃、2160g荷重):4.5g/10分、密度:923kg/m、融点:111℃、バイオマス度:0質量%)
【0085】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(C)>
・エチレン・α-オレフィン共重合体1(三井化学社製、タフマーA4085S、MFR(190℃、2160g荷重):3.6g/10分、エチレン含有量:84質量%、密度:885kg/m、融点:66℃、バイオマス度:0質量%)
【0086】
<粘着付与樹脂(D)>
・粘着付与樹脂1:合成樹脂系粘着付与樹脂(脂環族系炭化水素樹脂、荒川化学工業社製、アルコンP115、バイオマス度:0質量%)
【0087】
[実施例1~3及び比較例1]
<シーラント用樹脂組成物の作製>
表1に示す配合割合で各材料を予め混合し、スクリュー径65mmφの単軸押出機に投入し、下記の押出条件ないし溶融混練条件で溶融混練し、造粒してシーラント用樹脂組成物(P)のペレットを作製した。シーラント用樹脂組成物(P)のMFRを測定した。得られた結果を表1に示す。
【0088】
上記単軸押出機における押出条件ないし溶融混練条件は、次の通りである。
・スクリュー有効長L/D:28
・押出機設定温度(℃):C1(90)、C2(130)、C3(160)、C4(160)、C5(160)、H(160)、D(160)
・スクリュー回転数:45rpm
・スクリーンメッシュ:60/120/60
・押出量:48kg/h
【0089】
<支持体の作製方法>
スクリュー径65mmφの押出ラミネーター(住友重機械モダン社製)を用いたサンドイッチラミネート法にて、片面アート紙(三菱製紙社製、坪量79g/m、厚み95μm)とアルミ箔(UACJ社製、1N30、厚み7μm)との間に、接着層として低密度ポリエチレン(三井・ダウ ポリケミカル社製)を厚み15μmとなるよう、ダイ下樹脂温度320℃で押し出し、片面アート紙(95μm)/低密度ポリエチレン(15μm)/アルミ箔(7μm)の積層構造を有する支持体を作製した。
【0090】
<積層体の作製方法>
スクリュー径40mmφの押出ラミネーター(田辺プラチック機械社製)を用いて、上記支持体(片面アート紙/低密度ポリエチレン/アルミ箔)のアルミ箔上に、下記の押出条件で上記シーラント用樹脂組成物(P)をフィルム状に押出ラミネート成形することで、片面アート紙/低密度ポリエチレン(15μm)/アルミ箔(7μm)/シーラント層(25μm)の構成を有する積層体を作製した。
<ヒートシール性樹脂組成物(P)の押出条件>
・ダイ下樹脂温度:250℃
・加工速度:25m/分
・エアーギャップ:90mm
・スクリュー回転数:100rpm
・スクリーンメッシュ:60/120/60
【0091】
シーラント用樹脂組成物(P)の押出ラミネート加工適性は、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):以下の(i)~(iii)の全てを満たす
B(不良):以下の(i)~(iii)の中で満たさない項目が1つ以上ある
(i)加工中にシーラント用樹脂組成物(P)の吐出量や製膜幅の変動が少なく、外観が平滑で安定している
(ii)加工時にシーラント用樹脂組成物(P)から著しい臭気がしない
(iii)加工時にシーラント用樹脂組成物(P)から著しい発煙が見られない
【0092】
<シーラント層のアルミ接着性の評価方法>
次いで、上記積層体から15mm幅で切り出したものを試験片とした。上記試験片を23℃、50%RHの環境下に1日保管した。JIS K 7161-1:2014に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所社製、EZ-SX,100N)を用いて、試験片のシーラント層を、引張速度300mm/minでMD方向にT型剥離したときの接着強度(N/15mm)を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0093】
シーラント層のアルミ接着性は、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):接着強度が2N/15mm以上
B(不良):接着強度が2N/15mm未満
【0094】
<シーラント層のポリプロピレン(PP)ヒートシール性の評価>
上記で作製した各積層体を、厚さ0.3mmのポリプロピレン(PP)シートの上に、シーラント層と接するように置き、下記の条件にてヒートシールし、PPヒートシール性評価用サンプルを作製した。PPヒートシール性評価用サンプルの積層構造は、片面アート紙/低密度ポリエチレン/アルミ箔/シーラント層/PPシートである。上記PPヒートシール性評価用サンプルから15mm幅で切り出したものをPPヒートシール性評価用試験片とした。上記PPヒートシール性評価用試験片を23℃、50%RHの環境下に1日保管した。JIS K 7161-1:2014に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所社製、EZ-SX,100N)を用いて、PPヒートシール性評価用試験片のPPシートから積層体を、引張速度300mm/minで180°剥離したときの接着強度(N/15mm)を求めた。接着強度は、上記積層体のTD方向に対して上記PPをヒートシールしてMD方向に剥離する場合の接着強度とした。得られた結果を表1に示す。
<ヒートシール条件>
・シール装置:ヒートシーラー(テスター産業社製、商品名:TP701Cヒートシールテスター、シール幅:10mm幅)
・シール温度:140℃、160℃
・シール時間:1秒
・シール圧:0.2MPa
【0095】
シーラント層のPPヒートシール性は、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):シール温度:140℃および160℃のいずれの場合も、接着強度が2N/15mm以上
B(不良):シール温度:140℃および160℃の少なくとも1条件以上で、接着強度が2N/15mm未満
【0096】
<シーラント層の発泡ポリスチレンペーパー(PSP)ヒートシール性の評価>
上記で作製した各積層体を、厚さ0.4mmの発泡ポリスチレンペーパー(PSP)の上に、シーラント層と接するように置き、下記の条件にてヒートシールし、PSPヒートシール性評価用サンプルを作製した。PSPヒートシール性評価用サンプルの積層構造は、片面アート紙/低密度ポリエチレン/アルミ箔/シーラント層/PSPである。上記PSPヒートシール性評価用サンプルから15mm幅で切り出したものをPSPヒートシール性評価用試験片とした。上記PSPヒートシール性評価用試験片を23℃、50%RHの環境下に1日保管した。JIS K 7161-1:2014に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所社製、EZ-SX、100N)を用いて、PSPヒートシール性評価用試験片のPSPから積層体を、引張速度300mm/minで180°剥離したときの接着強度(N/15mm)を求めた。接着強度は、上記積層体のTD方向に対して上記PSPをヒートシールしてMD方向に剥離する場合の接着強度とした。得られた結果を表1に示す。
<ヒートシール条件>
・シール装置:ヒートシーラー(テスター産業社製、商品名:TP701Cヒートシールテスター、シール幅:10mm幅)
・シール温度:100℃、120℃、140℃、160℃
・シール時間:0.5秒
・シール圧:0.5MPa
【0097】
シーラント層のPSPヒートシール性は、以下の基準で評価した。
(基準)
A(良好):シール温度:100℃、120℃、140℃、160℃のいずれの場合も、接着強度が2N/15mm以上
B(不良):シール温度:100℃、120℃、140℃、160℃の少なくとも1条件以上で、接着強度が2N/15mm未満
【0098】
【表1】
【0099】
表1から明らかなように、実施例1~3のシーラント用樹脂組成物(P)は、バイオマス由来の原料が含まれているにも関わらず、押出ラミネート加工適性、アルミ接着性、PPヒートシール性、およびPSPヒートシール性が、いずれも化石燃料由来の原料のみを使用したシーラント用樹脂組成物(P)(比較例1)と同等の性能を有していた。
【符号の説明】
【0100】
10:シーラント層
20:バリア層
30:基材層
100:積層体
図1
図2