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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036860
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20240311BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141382
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
【テーマコード(参考)】
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J217JA02
3J217JA12
3J217JA13
3J217JA16
3J217JA38
3J217JA43
3J217JA47
3J217JB14
3J217JB26
3J217JB34
3J217JB56
3J217JB64
3J217JB89
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA77
3J701FA22
3J701FA23
3J701FA25
3J701FA26
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】ステータを含むセンサユニットの圧入時に押圧荷重が過剰になることを抑制し、センサユニットが変形なく容易に設置された軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受装置は、軸受と、センサユニット6とを備える。センサユニット6は軸受の固定輪3に固定され、軸受の状態を監視するセンサ15を保持する。センサユニット6は、側板部12Aと周部とを有する保持部材12を含む。保持部材12は、固定輪3と周部において嵌合される。周部のうち固定輪3と嵌合する第1の嵌合面12Caと、固定輪3のうち周部と嵌合する第2の嵌合面3aとは、一部が互いに接触し、一部以外の他の一部が互いに間隔をあけて配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪および転動体を含む軸受と、
前記外輪および前記内輪のいずれかである固定輪に固定され、前記軸受の状態を監視するセンサを保持するセンサユニットとを備え、
前記センサユニットは、
側板部と、前記側板部に交差するように延びる周部とを有する保持部材を含み、
前記保持部材は、前記固定輪と、前記周部において嵌合され、
前記周部のうち前記固定輪と嵌合する第1の嵌合面と、前記固定輪のうち前記周部と嵌合する第2の嵌合面とは、一部が互いに接触し、前記一部以外の他の一部が互いに間隔をあけて配置される、軸受装置。
【請求項2】
前記第1の嵌合面は、軸方向について前記側板部側よりも、前記側板部側と反対側の開口側の方が、径方向について前記固定輪の前記転動体と接触する面と反対側の面からの距離が小さくなるよう段差を有する、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記第2の嵌合面は、軸方向について前記転動体側よりも、前記転動体側と反対側の方が、径方向について前記固定輪の前記転動体と接触する面と反対側の面からの距離が大きくなるよう段差を有する、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記第2の嵌合面は、軸方向について前記転動体側よりも、前記転動体側と反対側の方が、径方向について前記固定輪の前記転動体と接触する面と反対側の面からの距離が小さくなるよう段差を有する、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記センサユニットは、前記固定輪の端面から軸方向の外側にはみ出さないように、前記固定輪に固定される、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記外輪および前記内輪のいずれかである回転輪に固定され、N極とS極とが交互に着磁された磁気リングと、
前記磁気リングと前記軸受の径方向に対向するよう前記固定輪に固定される前記保持部材を構成部品として含み、コイルを収納するステータと、
前記センサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路と、
前記磁気リングと前記ステータとで構成される発電機からの出力を調整可能な電源回路と、
前記センサ、前記ワイヤレス通信回路および前記電源回路を実装する回路基板とをさらに備える、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記磁気リング、前記コイル、前記回路基板は、前記軸受の径方向に沿って延びる仮想の直線の上に互いに間隔をあけて並ぶように配置されている、請求項6に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置保全のために転がり軸受の状態を監視する目的で、軸受に隣接する位置にセンサを設けた軸受装置が知られている。当該軸受装置は、発電機と、センサとを備える。なお当該軸受装置は、センサで検出されたデータを利便性高く送信する目的で、上記データを無線送信可能な構成を有してもよい。
【0003】
特開2003-269477号公報(特許文献1)には、車輪用軸受装置に適用可能な発電機付き転がり軸受が提案されている。特開2003-269477号公報では、発電機のコイルを収容するステータ(磁性体リング)の外周面が段差を有する構成が開示されている。すなわち特開2003-269477号公報では、ステータの外周面が、車輪用軸受の外方部材の内周面の形状に嵌合可能となるように、径方向に延びる部分と、それと交差する軸方向に延びる部分とを有するように屈曲する。この屈曲により、断面において、ステータの外周面が軸方向に延びる部分が階段のような段差を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-269477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2003-269477号公報では、少なくともステータの外周面が軸方向に沿って延びる。ステータの外周面が外方部材の内周面と接触する部分には段差を有さず、当該接触する部分はその全体がほぼフラットである。つまりステータの外周面が接触する部分は、その全体が外方部材と接触する。このためステータを外方部材にたとえば圧入により固定する際には、押圧荷重が過大になり、ステータが外方部材に対して傾くように変形する可能性がある。このようになれば、軸受装置の所望の特性が得られなくなる可能性がある。
【0006】
本開示は上記の課題に鑑みなされたものである。本開示の目的は、ステータを含むセンサユニットの圧入時に押圧荷重が過剰になることを抑制し、センサユニットが変形なく容易に設置された軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った軸受装置は、軸受と、センサユニットとを備える。軸受は、外輪、内輪および転動体を含む。センサユニットは外輪および内輪のいずれかである固定輪に固定され、軸受の状態を監視するセンサを保持する。センサユニットは、側板部と、側板部に交差するように延びる周部とを有する保持部材を含む。保持部材は、固定輪と、周部において嵌合される。周部のうち固定輪と嵌合する第1の嵌合面と、固定輪のうち周部と嵌合する第2の嵌合面とは、一部が互いに接触し、一部以外の他の一部が互いに間隔をあけて配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ステータを含むセンサユニットの圧入時に押圧荷重が過剰になることを抑制し、センサユニットが変形なく容易に設置された軸受装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1の軸受装置全体の斜視図である。
図2】実施の形態1の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
図3図2中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。
図4】実施の形態1の軸受装置をセンサユニット側から見た図である。
図5】実施の形態1におけるセンサユニットの分解斜視図である。
図6】実施の形態1におけるセンサユニットの組立て後の斜視図である。
図7】実施の形態2の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
図8図7中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。
図9】実施の形態3の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
図10図9中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。
図11】実施の形態4の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。
図12】実施の形態5の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
<軸受部材の構成>
図1は、実施の形態1の軸受装置全体の斜視図である。図1を参照して、本実施の形態の軸受装置1は、軸受2と、センサユニット6と、磁気リング7とを備える。軸受2は、外輪3と、内輪4とを含む。軸受2は、例えば、外輪3が固定輪となり、内輪4が回転輪となる。軸受2は、深溝玉軸受を一例として説明するが、軸受2の種類は深溝玉軸受に限定されない。
【0011】
ここで、軸受2は、軸受の主要寸法(内径、外径、幅など)が特定の規格に記載の標準軸受である。標準軸受とは、例えば、ISO規格・JIS規格に記載がある寸法の軸受である。軸受2は、ラジアル軸受であり、軸受2の主要寸法は、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法である。以下では、軸受2のことを標準軸受2とも称する。
【0012】
センサユニット6は、ステータ5と、蓋14とを含む。ステータ5の構造の詳細は後述する。蓋14は、センサユニット6の内部を保護する。磁気リング7は、N極とS極とを周方向に交互に着磁した磁性体部材である。ステータ5は、外輪3に固定され、磁気リング7は、内輪4に固定される。ステータ5と磁気リング7とによって発電機Gが構成される。発電機Gは、クローポール型の発電機であるが、他の構造の発電機であってもよい。図1の一点鎖線は、軸受2の回転軸Oである。
【0013】
図2は、実施の形態1の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図3は、図2中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。図2および図3を参照して、軸受2は、外輪3と、内輪4との他に、転動体8と、保持器9と、シール10とを含む。軸受2は、軸方向(図2の左右方向)についての端面11と転動体8との距離Wが、センサユニット6および磁気リング7を収納可能な標準軸受の型番のサイズから選択すればよい。端面11は、外輪3の端面でもある。
【0014】
転動体8は、軸受2の周方向(図2の奥行方向)に間隔をあけて複数配置される。それら複数の転動体8を保持するのが保持器9である。保持器9は、軸方向である図1の左右方向の一方の端面側(図2の右側)が開放されている。保持器9は、軸方向の他方の端面側(図2の左側)が連結された形状である。このため図2では、概ね転動体8の中心よりも左側の領域のみに保持器9が配置され、転動体8の中心よりも右側の領域には保持器9が配置されない。
【0015】
本実施の形態の軸受装置1を構成するセンサユニット6は、ステータ5、蓋14の他に、保持部材12と、回路基板13とを含む。保持部材12は、保持器9の、転動体8よりも一方の端面側(図2の右側)の位置に配置される。すなわち保持部材12は、軸方向について保持器9が開放され保持器9が配置されない側に配置される。保持部材12は、本来保持器9が配置されるべき位置に配置される。
【0016】
保持部材12は、側板部12Aと、外周部12Cと、内周部12Dとを有する。外周部12Cと内周部12Dとを併せて周部と呼ぶことにする。側板部12Aは、周方向に沿って、すなわち円環状を描くように延びている。すなわち側板部12Aは周方向に(1周分)連続するように延びている。周部は側板部12Aに交差するように延びている。
【0017】
側板部12Aは保持部材12のうち軸方向の最も転動体8に近い位置(軸受2内における内側)に、転動体8に隣接するように配置される。側板部12Aは転動体8と対向する側の裏面12bと、裏面12bと反対側(すなわち転動体8と対向しない側)の表面12fとを有する。言い換えれば裏面12bは軸受2の内側を向き、表面12fは軸受2の外側を向く。側板部12Aと外周部12Cと内周部12Dとにより、保持部材12は側板部12Aの表面12f上の領域が側板部12Aと外周部12Cと内周部12Dとに囲まれる。側板部12Aと外周部12Cと内周部12Dとに囲まれる領域を、ここではセンサユニット6の内部と考える。保持部材12は、側板部12Aと外周部12Cと内周部12Dとにより、C字(またはU字)型の断面形状を有するリング部材である。
【0018】
回路基板13は、保持部材12の側板部12Aの表面12fに固定される。回路基板13には、軸受2の状態を監視し検出するセンサが1つ以上実装されている。回路基板13には、センサとしてたとえば図2に示すように加速度センサ15が実装されている。加速度センサ15は軸受2の振動を検出する。回路基板13は、表面12fのうちたとえば比較的径方向の外側の領域(外周部12Cに近い領域)に寄せるように固定される。回路基板13の外縁の一部が外周部12Cの内壁に接触してもよい。
【0019】
保持部材12の外周部12Cは、外輪3の一方の端面側(図2の右側)の内周面に形成された第1の切欠き部3aに嵌合して固定される。なお、保持部材12は、圧入と接着とを併用して外輪3に固定されてもよいし、これら以外の方法で固定されてもよい。ここでの固定とは、互いに外れないような強固な固定に限らず、たとえば圧入された場合のように容易に取り外し可能だが一定以上の引き抜き力を有する状態を含むものとする。保持部材12を第1の切欠き部3aに固定した際、転動体8と保持部材12との間には一定の隙間が確保される。これにより、転動体8と保持部材12とは、軸方向の変位が生じた場合も隙間により転動体8と保持部材12とが接触しないようにすることができる。
【0020】
上記の通り、回路基板13と、回路基板13が固定される保持部材12とは、いずれもセンサユニット6を構成する。このため回路基板13に実装された加速度センサ15などのセンサは、センサユニット6に保持される。また保持部材12が外輪3に固定されるため、センサユニット6は外輪3に固定される。
【0021】
図2および図3においては、保持部材12が外輪3に嵌合される面である第1の嵌合面と、外輪3が保持部材12に嵌合される面である第2の嵌合面とは、段差を有している。この段差により、第1の嵌合面と、第2の嵌合面とは、一部が互いに接触し、他の部分が接触することなく互いに間隔をあけて配置される。ここでは第1の嵌合面と第2の嵌合面とが接触する部分よりも接触しない部分の面積が大きい(断面図において寸法が長い)ことがより好ましい。たとえば第1の嵌合面と第2の嵌合面とが接触する部分の面積は、第1の嵌合面の面積の45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。ただし保持部材12を固定輪に固定する観点から、上記接触する部分の面積は、第1の嵌合面の面積の20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。なお第1の嵌合面は、保持部材12の周部のうち固定輪である外輪3と嵌合する部分であり、図2および図3の外周部嵌合面12Caである。第2の嵌合面とは、外輪3のうち保持部材12の外周部12Cと嵌合する部分であり、図2および図3の第1の切欠き部3aである。
【0022】
具体的には、外周部嵌合面12Caは、軸方向について転動体8側(図2図3の左側)よりも、それと反対側の開口12g側(図2図3の右側)の方が、外輪3の径方向の最外部である最外表面3cからの距離が小さくなるように段差を有している。外周部嵌合面12Caは、嵌合面12Ca1と、嵌合面12Ca2とを有している。嵌合面12Ca1は転動体8側に、嵌合面12Ca2は開口12g側に形成されている。これらはいずれも軸方向に沿って拡がるが、これらの境界部には径方向について段差を有している。保持部材12を後述のようにプレス加工で形成する場合、嵌合面12Ca2をストレートな面とすることにより、当該プレス加工が容易となる。嵌合面12Ca2は、後述する切欠き部3a2よりも軸方向に沿う寸法が長いことが好ましい。
【0023】
嵌合面12Ca1と嵌合面12Ca2との段差の部分すなわち境界部分については次の通りである。図3に示すように、境界部分と嵌合面12Ca1,12Ca2のそれぞれとのなす角度が鈍角(たとえば120°以上150°以下)となるよう傾斜していてもよい。ただし上記鈍角は100°以上120°未満であってもよい。この境界部分は嵌合面12Ca1,12Ca2のいずれにも属さないと考えてもよい。
【0024】
外周部嵌合面12Caが上記のように段差を有するが、外周部12Cの径方向の厚みはその全体においてほぼ一定であり、領域間で大差はない。このため外周部嵌合面12Caに限らず、外周部嵌合面12Caおよびそれ以外の部分の双方を含む外周部12Cも段差を有する。具体的には、外周部12Cは、嵌合面12Ca1を含む第1外周部12C1と、嵌合面12Ca2を含む第2外周部12C2とを有する。第1外周部12C1よりも第2外周部12C2の方が、全体として径方向について最外表面3cからの距離が小さくなるように段差を有している。
【0025】
また第1の切欠き部3aは、軸方向について転動体8側(図2図3の左側)よりも、それと反対側の開口12g側(図2図3の右側であり端面11側)の方が、最外表面3cからの距離が大きくなるように段差を有している。第1の切欠き部3aは、切欠き部3a1と、切欠き部3a2とを有している。切欠き部3a1は転動体8側に、切欠き部3a2は開口12g側に形成されている。これらはいずれも軸方向に沿って拡がるが、これらの境界部には径方向について段差を有している。
【0026】
切欠き部3a1と切欠き部3a2との段差の部分すなわち境界部分は、図3に示すように、境界部分と切欠き部3a1,3a2のそれぞれとのなす角度が鈍角(たとえば120°以上150°以下)となっていてもよい。ただし上記鈍角は100°以上120°未満であってもよい。
【0027】
径方向について、嵌合面12Ca1と切欠き部3a1とは互いに間隔をあけて配置されるのに対し、嵌合面12Ca2と切欠き部3a2とは互いに接触している。以上により、径方向についての最外表面3cを基準としたときの、嵌合面12Ca1までの距離をL1とし、互いに接する嵌合面12Ca2および切欠き部3a2までの距離をL2とし、切欠き部3a1までの距離をL3とすれば、L1>L2>L3である。
【0028】
L3に対してL2は、L3の3%以上5%以下だけ大きくてもよく、L2に対してL1は、L2の3%以上5%以下だけ大きくてもよい。このような形状を有するため、嵌合面12Ca1と切欠き部3a1との径方向間隔L3-L1は、たとえば第1の切欠き部3aが段差を有さない場合の当該間隔L2-L1よりも大きい。間隔L3-L1が大きくなるのは、第1の切欠き部3aが切欠き部3a1において径方向外側に逃げるようにヌスミ3nを形成することによる。ヌスミ3nは第1の切欠き部3aの転動体8側および径方向最外側(図2図3の左上部)において外輪3を形成する材料が他の領域より大きく除去された部分である。図2図3のようにヌスミ3nが形成されてもよい。しかしヌスミ3nは形成されなくてもよい。
【0029】
ここで、第1の切欠き部3aを形成する面(裏面12bに接する面)と端面11との第1の距離は、ヌスミ3nを除き、たとえば外輪3の軸方向寸法の10%以上20%以下である。第1の切欠き部3aと外輪3の最も内輪4側(径方向内側)の内径面3dとの第2の距離は、ヌスミ3nを除き、たとえば外輪3の径方向寸法の20%以上30%以下である。上記第1の距離と第2の距離とは等しくてもよいし、第1の距離の方が大きくてもよいし、第2の距離の方が大きくてもよい。
【0030】
ステータ5は、ステータ5Aとステータ5Bとを含む。一方、異なる観点から見れば、ステータ5は、2つの磁性体部材21,22と、ボビン23と、コイル24とを含む。保持部材12の一部が、ステータ5のうちステータ5Aの磁性体部材21として用いられる。ステータ5のうちステータ5Bは、磁性体部材22として用いられる。つまりステータ5Aは保持部材12に相当し、磁性体部材21に相当する。ステータ5Bは磁性体部材22に相当する。言い換えれば、ステータ5Aと保持部材12と磁性体部材21とは同一であり、ステータ5Bと磁性体部材22とは同一である。
【0031】
ステータ5Aの内部、すなわち側板部12Aと外周部12Cと内周部12Dとに囲まれた領域内の比較的径方向内側の領域に、ボビン23に巻かれたコイル24が配置される。ボビン23とコイル24との少なくともいずれかの表面の一部が内周部12Dに接触してもよいし、側板部12Aに接触してもよい。ボビン23およびコイル24は、軸方向の端面11側(転動体8と反対側)から、ステータ5Bとしての磁性体部材22に覆われる。図2および図3の示す断面において、磁性体部材22は、外周部22Bと、端面部22Cとを有している。図2および図3においては見えないため示されないが、実際には磁性体部材22は上記の他に後述する内周部22Dをさらに有する。外周部22Bと端面部22Cとは互いにほぼ直交している。磁性体部材22は図2および図3において見えない部分を有するため、C字(U字)形状を有する。外周部22Bはステータ5Aの内部を径方向の外側の領域(回路基板13が配置される領域)と内側の領域(コイル24が配置される領域)とに分断する。端面部22Cは蓋14と並んでステータ5Aの内部を覆う。端面部22Cはステータ5Aの内部の径方向内側の領域を覆う。両者が並ぶように、ステータ5A内が端面11側から覆われている。ボビン23およびコイル24は、ステータ5Aの側板部12Aの一部(径方向内側の領域)と内周部12Dと、ステータ5Bの外周部22Bと端面部22Cとに取り囲まれる。
【0032】
以上を言い換えれば次の通りである。磁性体部材21が保持部材12の全体を占めるのに対し、磁性体部材22は保持部材12の径方向内側の領域に配置される。磁性体部材21のU字状の断面のうち径方向の内側の領域が、磁性体部材22のU字状の断面と互いに対向する。互いに対向する磁性体部材21,22の間に、磁性体部材21,22に囲まれるように、ボビン23を含むコイル24が装着される。
【0033】
蓋14は、図3のように、ステータ5のうち特にコイル24を囲むステータ5Aの一部およびステータ5B以外の、ステータ5Bよりも径方向外側の領域において、蓋14はステータ5Aの内部の領域を覆う。
【0034】
内輪4の一方の端面側(図2の右側)の外周面には、第1の切欠き部3aと対向するように段付きの第2の切欠き部4aが形成される。軸受2の軸方向において、外輪3から内輪4に亘り、第1の切欠き部3aおよび第2の切欠き部4aにより転動体8へ向けて切欠いた環状の凹部が形成される。
【0035】
第2の切欠き部4aは、端面11から軸方向に沿って、たとえば内輪4の軸方向寸法の5%以上10%以下の寸法分延びる。第2の切欠き部4aは、内輪4の最も外輪3側(径方向外側)の面から径方向に沿って、たとえば内輪4の径方向寸法の10%以上20%以下の寸法分延びる。第2の切欠き部4aの径方向寸法と軸方向寸法とは等しくてもよいし、径方向寸法の方が大きくてもよいし、軸方向寸法の方が大きくてもよい。
【0036】
磁気リング7は、芯金7aと、多極磁石7bとを含む。多極磁石7bは、例えば、磁性粉とゴムとを混錬した磁性体材料を芯金7aに加硫接着してから、N極とS極とを磁気リング7の周方向に交互に着磁したものである。磁気リング7の芯金7aは、剛性を高めるためにフランジ部7cを有している。磁気リング7は、内輪4の外径面4bに圧入または接着等により固定される。フランジ部7cは、内輪4に形成される第2の切欠き部4aに収まる。
【0037】
保持部材12は、外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように、圧入または接着される。保持部材12が外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように配置されることにより、保持部材12に固定された回路基板13も同様に、外輪3の端面11から軸方向の外側にはみ出さないように配置される。これにより、センサユニット6は、外輪3の端面から軸方向の外側にはみ出さないように、外輪3に固定される。また磁気リング7は、内輪4の端面20からはみ出さないように配置される。さらに保持器9の軸方向について開放される側にセンサユニット6および磁気リング7がはみ出さないようにされる。以上により、センサユニット6(保持部材12および回路基板13)および磁気リング7はいずれも、外輪3の端面11および内輪4の端面20から軸方向の外側にはみ出さないように固定(配置)される。このようにすれば、軸方向についてセンサユニット6を薄く製作でき、標準軸受と同じサイズの軸受装置1を提供できる。
【0038】
図3に示すように、第1の切欠き部3aおよび第2の切欠き部4aによる環状の凹部の内部には、磁気リング7、コイル24、および回路基板13が、軸受2の径方向に沿って延びる仮想の直線Lの上に互いに間隔をあけて並ぶように配置されている。言い換えれば、これらは軸受2の軸方向に沿って延びる仮想の直線の上に互いに間隔をあけて並ぶことのないように配置されている。図3では軸受2の径方向の内側から外側に、磁気リング7、コイル24、回路基板13の順に並ぶ。これにより、環状の凹部の内部に各部品を配置できるため軸受2の軸方向の厚みを抑えることができる。さらに、軸受装置1は、例えば、磁気リング7が内輪4に固定され、対向する位置の外輪3にステータ5(そのなかでも特にステータ5Aとステータ5Bとがボビン23、コイル24を囲む領域)が固定される。ステータ5と磁気リング7との径方向の隙間の変動は小さいため、発電機Gによって安定した発電量を確保することができる。
【0039】
次に、各部材の材質について説明する。保持部材12(ステータ5A・磁性体部材21)および磁性体部材22(ステータ5B)は磁性体材料であり、金属製である。蓋14は、非金属の樹脂製部材である。蓋14の代わりに樹脂封止材を用いて回路基板13を封止してもよい。
【0040】
図4は、実施の形態1の軸受装置をセンサユニット側から見た図である。図4では、センサユニット6の内部が分かるように蓋14の一部を省略して図示している。図4を参照して、回路基板13には、センサとして、加速度センサ15の他に、温度センサ16が実装される。加速度センサ15は、軸受2のたとえば径方向の加速度を検出可能である。また温度センサ16は軸受2の温度を正確に測定できる。
【0041】
回路基板13には、さらに、電源回路17と、ワイヤレス通信回路18とが実装されている。電源回路17は、内輪4の回転により発電機Gで生成される交流電力を整流して直流電力に変換する。つまり電源回路17は、電源すなわち本実施の形態における発電機G(電磁誘導式発電機)とはまったく別である。加速度センサ15、温度センサ16、およびワイヤレス通信回路18では、電源回路17によって変換された直流電力が使用される。回路基板13には、端子25が配置されている。ステータ5に含まれそこから引き出されたコイル24の巻き始めと巻き終わりとの図示しない各端部は、端子25に接続される。
【0042】
回路基板13は、円環状の側板部12Aの一部に固定されるため、概ね円弧状である。回路基板13の円弧形状の周方向には、加速度センサ15と温度センサ16とが実装される。加速度センサ15を挟むように、これとは間隔をあけて両側にねじ19が配置されてもよい。図4に示すように、回路基板13の周方向についての一方端から他方端へ、ワイヤレス通信回路18、加速度センサ15、電源回路17、端子25の順に、互いに間隔をあけて並んでもよい。
【0043】
ワイヤレス通信回路18は、アンテナ部18aを含む。ワイヤレス通信回路18は、軸受2の状態を監視する加速度センサ15および温度センサ16の出力をアンテナ部18aを用いて無線で外部に送信する。回路基板13は、複数のねじ19により保持部材12に固定されている。なお、回路基板13は、保持部材12に対し接着固定されてもよい。ワイヤレス通信回路18を実装した回路基板13は、樹脂製の蓋14と対向して配置される。これにより、ワイヤレス通信回路18は、金属などの導電性材料で密閉されない構造となる。このため、ワイヤレス通信回路18内のアンテナ部18aを用いて無線通信が可能となる。よって軸受装置1の軸受は、ワイヤレスセンサ付き軸受である。
【0044】
図5は、実施の形態1におけるセンサユニットの分解斜視図である。図6は、実施の形態1におけるセンサユニットの組立て後の斜視図である。なお図5および図6では蓋14が省略される。図5および図6を参照して、U字の断面形状を有する磁性体部材21(図5の左の部材)の内周部12Dには、複数の爪部21aが形成される。磁性体部材22の内周部22Dには、複数の爪部22aが形成される。ボビン23の円周方向に設けられた溝には、マグネットワイヤを複数回巻いたコイル24が配置される。ボビン23は省略してもよい。
【0045】
<ステータ5の組立方法>
ステータ5の組立方法について以下に述べる。再度図5および図6を参照して、まず、コイル24を巻いたボビン23を磁性体部材22の内部に挿入した状態で、磁性体部材21の複数の爪部21aと磁性体部材22の複数の爪部22aとが周方向に隙間を開けて交互に配置されるように組立てる。次いで、磁性体部材22の外周部22Bを、その端面(後述する凸部22eを除く)が磁性体部材21の側板部12Aの表面12fに接触するように固定する。このとき磁性体部材21と磁性体部材22との開口部が互いに対向し、その開口部内にボビン23およびコイル24が収納される。
【0046】
ここで図5に示すように、ステータ5A(保持部材12・磁性体部材21)の側板部12Aには、これを貫通する孔部12eが形成される。孔部12eは側板部12Aの径方向の内側の領域に形成される。またステータ5B(磁性体部材22)の外周部22Bのうち軸方向について保持部材12の側板部12A側の端部には、凸部22eが形成されている。凸部22eではそれ以外の部分に比べて保持部材12の側板部12A側の端部が側板部12A側に突起している。孔部12eおよび凸部22eは、周方向について間隔をあけて複数形成される。たとえば孔部12eおよび凸部22eは図5のように4つずつ形成されるが、これらは3つ以上ずつ形成されることが好ましい。それぞれの孔部12eおよび凸部22eは、保持部材12の円環形状の周に沿う円弧状を有している。孔部12eに凸部22eを挿入し、両者を嵌合させる。これにより図6に示すように、複数の爪部21aと複数の爪部22aとが周方向に隙間を開けて交互に配置されるように組立てられる。磁性体部材22は保持部材12の内周部12Dに取り付けられる。端面部22Cは軸方向の最外部(図5の最も右)を向くように、ステータ5Bがステータ5Aに結合される。このとき、側板部12A上に外周部22Bの端部(凸部22eを除く)が当接するように、磁性体部材21と磁性体部材22とが結合される。なお孔部12eと凸部22eとは、圧入、接着、溶接(たとえばレーザ溶接)などにより互いに拘束するように固定される。上記の固定手段から複数選択され組み合わせるように用いられてもよい。
【0047】
孔部12eおよび凸部22eを嵌合させることで、治具を用いることなく磁性体部材21と磁性体部材22との軸を合わせることができ、両者の組立が容易になる。また爪部21aと爪部22aとが周方向に交互に並ぶように位相合わせできる。ただし孔部12eおよび凸部22eは省略されてもよい。両者が省略される場合、図5および図6に示されない治具を用いて、磁性体部材21と磁性体部材22との軸を合わせ、爪部21aと爪部22aとの位相を合わせてもよい。この場合、側板部12Aと外周部22Bとが溶接(たとえばレーザ溶接)により当接および固定される。
【0048】
その後、側板部12Aの表面12fに回路基板13がねじ19で固定され、蓋14または樹脂封止材により回路基板13が保護される。なお、回路基板13と側板部12Aとの間に図示しない絶縁シート(たとえばポリイミドフィルム)が挿入され、回路基板13と保持部材12との絶縁性が確保されてもよい。
【0049】
複数の爪部21aおよび複数の爪部22aは、図3に示す磁気リング7の多極磁石7bとの隙間が確保された状態で、対向して配置される。ステータ5における磁性体部材21の複数の爪部21aおよび磁性体部材22の複数の爪部22aと磁気リング7とによって、ラジアルタイプのクローポール型の発電機Gが構成される。複数の爪部21a,22aを合わせた数は、多極磁石7bの極数(N極とS極を合わせた数)と等しい。ステータ5と磁気リング7とは、軸受2の径方向について互いに対向する。
【0050】
多極磁石7bのN極から出た磁束は、例えば、磁極である複数の爪部21a(または複数の爪部22a)から磁性体部材21(または磁性体部材22)に入り、コイル24の周りを回って隣接する複数の爪部22a(または複数の爪部21a)を経由し多極磁石7bのS極に戻る。内輪4の回転によって多極磁石7bのN極とS極との位置が入れ替わると磁束の向きが逆になる。このようにして発生する交番磁界により、コイル24の両端に交流電力が発生する。
【0051】
<作用効果>
本開示に係る軸受装置1は、外輪3、内輪4および転動体8を含む軸受2と、上記外輪3および内輪4のいずれかである固定輪に固定され、上記軸受2の状態を監視するセンサを保持するセンサユニット6とを備える。上記センサユニット6は、側板部12Aと、上記側板部12Aに交差するように延びる周部(外周部12Cおよび内周部12D)とを有する保持部材12を含む。保持部材12は、固定輪と、周部において嵌合される。周部のうち固定輪と嵌合する第1の嵌合面(外周部嵌合面12Ca)と、固定輪のうち周部と嵌合する第2の嵌合面(第1の切欠き部3a)とは、一部が互いに接触し、一部以外の他の一部が互いに間隔をあけて配置される。
【0052】
第1の嵌合面と第2の嵌合面とがたとえば軸方向の一部の領域のみにて互いに接触するため、第1の嵌合面と第2の嵌合面とが軸方向の全体にて互いに接触する場合に比べて、両者の嵌合する軸方向長さ(圧入幅)が短くなる。このため、保持部材12の圧入時に固定輪を押圧する領域が少なくなり、圧入時の押圧荷重が過剰になることが防止できる。したがって保持部材12の変形を防止できる。
【0053】
以上により、ステータ5を含むセンサユニット6の圧入時に押圧荷重が過剰になることを抑制し、センサユニット6が変形なく容易に設置された軸受装置を提供できる。
【0054】
上記軸受装置1において、外周部嵌合面12Caは、軸方向について側板部12A側よりも、側板部12A側と反対側の開口12g側の方が、径方向について固定輪の転動体8と接触する面(外輪軌道面3b)と反対側の面(最外表面3c)からの距離が小さくなるよう段差を有する。
【0055】
上記軸受装置1において、第1の切欠き部3aは、軸方向について転動体8側よりも、転動体8側と反対側(端面11側)の方が、径方向について固定輪の転動体8と接触する面と反対側の面(最外表面3c)からの距離が大きくなるよう段差を有する。
【0056】
これらにより上記と同様に、圧入時の過剰に大きい押圧荷重を抑制し、センサユニット6を変形なく容易に設置できる。
【0057】
たとえば図3のセンサユニット6を外輪3の第1の切欠き部3aに圧入する際には、始めに保持部材12の第1外周部12C1が、切欠き部3a2との間で隙間を保ちながら(切欠き部3a2と接触することなく)挿入できる。第1外周部12C1は第2外周部12C2よりも最外表面3cからの距離が大きくL1である。また切欠き部3a2と最外表面3cとの距離をL2とすれば、L1>L2である。したがって第1外周部12C1は切欠き部3a2と接触することなく挿入できる。このように保持部材12は切欠き部3a2からの干渉を受けずに挿入される。このため保持部材12を含むセンサユニット6は、切欠き部3a2に対して傾斜することなく、切欠き部3a2に沿って真っすぐ圧入できる。このためセンサユニット6の姿勢を安定させることができる。
【0058】
また保持部材12の第2外周部12C2側は端部に開口12gを有するため、第1外周部12C1側に比べて剛性が低い。このためたとえ切欠き部3a2が切欠き部3a1よりも最外表面3cからの距離が大きく、圧入時に切欠き部3a2が第2外周部12C2と接触したとしても、第2外周部12C2は第1外周部12C1よりも圧入による変形が容易である。このため上記構成により、圧入時の押圧荷重が過大になることを抑制できる。
【0059】
さらに保持部材12の変形が容易な第2外周部12C2は、第1外周部12C1よりも軸方向について外輪軌道面3bから離れた位置に配置される。このため保持部材12の圧入時の第2外周部12C2の変形に伴う外輪軌道面3bの変形を抑制できる。したがって外輪軌道面3bの変形に起因する軸受2の特性の変化などの影響を抑制できる。
【0060】
上記軸受装置1において、磁気リング7と、ステータ5と、ワイヤレス通信回路18と、電源回路17と、回路基板13とをさらに備えてもよい。磁気リング7は、外輪3および内輪4のいずれかである回転輪に固定され、N極とS極とが交互に着磁される。ステータ5は、磁気リング7と軸受2の径方向に対向するよう固定輪に固定される保持部材12を構成部品として含み、コイル24を収納する。ワイヤレス通信回路18は、センサの出力を無線で外部に送信する。電源回路17は、磁気リング7とステータ5とで構成される発電機Gからの出力を調整可能である。回路基板13は、センサ、ワイヤレス通信回路18および電源回路17を実装する。以上の特徴を有するため、軸受装置1は、発電機Gを電源として電力を生成可能であり、発電機Gの生成した電力を電源回路17にて調整できる。回路基板13に実装されたワイヤレス通信回路18およびセンサにより、センサの出力を無線で外部に送信できる。
【0061】
なお、電源回路17が発電機Gからの出力を調整可能であるとは、上記のようにたとえば発電機Gで生成される交流電力を整流して直流電力に変換することを意味する。あるいは上記の調整可能であるとは、昇圧降圧により電圧値を目的値となるよう制御することであってもよい。
【0062】
(実施の形態1の補足)
その他、上記軸受装置1において、ステータ5の一部(ステータ5A)は保持部材12であり、回路基板13は保持部材12に固定されてもよい。保持部材12にステータ5A(磁性体部材21)の機能を兼用させることで、部品点数を減少できるとともに、各部品のプレス成形が容易になる。
【0063】
(実施の形態2)
以降の各実施の形態における軸受装置の説明において、既出の実施の形態の軸受装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、特に構成および機能に差異がなければその説明を繰り返さない。図7は、実施の形態2の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図8は、図7中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。つまり図7図8は、実施の形態1の図2図3に対応する。図7および図8を参照して、本実施の形態においては基本的に実施の形態1と同様であるが、内輪4が固定輪であり、外輪3が回転輪である。このためステータ5を含むセンサユニット6は内輪4に固定される。そのために内輪4には実施の形態1の第1の切欠き部3aと同様の態様を有する第2の切欠き部4aが形成される。第2の嵌合面としての第2の切欠き部4aは、転動体8側の切欠き部4a1と、開口12g側の切欠き部4a2とを有している。内輪4の切欠き部4a1には、径方向外側に逃げるようにヌスミ4nが形成されている。
【0064】
磁気リング7は外輪3に固定される。そのために外輪3には実施の形態1の第2の切欠き部4aおよび外径面4bと同様の態様の第1の切欠き部3aおよび内径面3dが形成される。また保持部材12には実施の形態1の外周部12Cと同様の態様の内周部12Dが形成される。保持部材12の内周部12Dは、内輪4の一方の端面側(図2の右側)の外周面に形成された第2の切欠き部4aに嵌合して固定される。
【0065】
本実施の形態の内周部12Dは、第1の嵌合面として、内周部嵌合面12Daを有する。内周部嵌合面12Daは、嵌合面12Da1と、嵌合面12Da2とを有している。嵌合面12Da1は転動体8側に、嵌合面12Da2は開口12g側に形成されている。内周部12Dは、嵌合面12Da1を含む第1内周部12D1と、嵌合面12Da2を含む第2内周部12D2とを有する。
【0066】
上記軸受装置1において、内周部嵌合面12Daは、軸方向について側板部12A側よりも、側板部12A側と反対側の開口12g側の方が、径方向について固定輪の転動体8と接触する面(内輪軌道面4b2)と反対側の面(最内表面4c)からの距離が小さくなるよう段差を有する。
【0067】
上記軸受装置1において、第2の切欠き部4aは、軸方向について転動体8側よりも、転動体8側と反対側(端面20側)の方が、径方向について固定輪の転動体8と接触する面(内輪軌道面4b2)と反対側の面(最内表面4c)からの距離が大きくなるよう段差を有する。以上より、径方向についての最内表面4cを基準としたときの、嵌合面12Da1までの距離をL1とし、互いに接する嵌合面12Da2および切欠き部4a2までの距離をL2とし、切欠き部4a1までの距離をL3とすれば、L1>L2>L3である。このように、固定輪は外輪3および内輪4のいずれであってもよい。第1の嵌合面と第2の嵌合面とが一部にて互いに接触し他の一部にて接触しないという特徴を有する限り、本実施の形態でも実施の形態1と同様の、センサユニット6の姿勢を安定させる作用効果を奏する。
【0068】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3の軸受の回転軸を含む平面における断面図である。図10は、図9中の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。つまり図9図10は、実施の形態1の図2図3に対応する。図9および図10を参照して、本実施の形態においては基本的に実施の形態1と同様である。しかし本実施の形態の軸受装置1は、第1の切欠き部3aは、軸方向について転動体8側(図2図3の左側)よりも、それと反対側の端面11側(図2図3の右側)の方が、最外表面3cからの距離が小さくなるように段差を有している。また外周部嵌合面12Caは、嵌合面12Ca1と嵌合面12Ca2との間で段差を有さず、軸方向の全体において平坦になっている。この点において本実施の形態は実施の形態1と異なっている。
【0069】
なお実施の形態1と同様に、本実施の形態においても外輪3にヌスミ3nが形成されてもよいが、ヌスミ3nは形成されなくてもよい。また図10のように保持部材12が第1の切欠き部3aに嵌合された状態で嵌合面12Ca2と切欠き部3a2との隙間を確保できる限り、本実施の形態における外周部12Cも、側板部12A側より開口12g側の方が最外表面3cからの距離が小さくなるような段差を有してもよい。
【0070】
<作用効果>
本実施の形態の軸受装置1において、第1の切欠き部3aは、軸方向について転動体8側よりも、転動体8側と反対側(端面11側)の方が、径方向について固定輪の転動体8と接触する面と反対側の面(最外表面3c)からの距離が小さくなるよう段差を有する。
【0071】
本実施の形態の構成においても、第1の嵌合面と第2の嵌合面とがたとえば軸方向の一部の領域のみにて互いに接触するため、第1の嵌合面と第2の嵌合面とが軸方向の全体にて互いに接触する場合に比べて、両者の嵌合する軸方向長さ(圧入幅)が短くなる。このため、保持部材12の圧入時に固定輪を押圧する領域が少なくなり、圧入時の押圧荷重が過剰になることが防止できる。したがって保持部材12の変形を防止できる。
【0072】
たとえば図10のセンサユニット6を外輪3の第1の切欠き部3aに圧入する際には、始めに保持部材12の第1外周部12C1が、切欠き部3a2との間で隙間を保ちながら(切欠き部3a2と接触することなく)挿入できる。切欠き部3a2は切欠き部3a1よりも最外表面3cからの径方向の距離が小さいためである。このように保持部材12は切欠き部3a2からの干渉を受けずに挿入される。このため保持部材12を含むセンサユニット6は、切欠き部3a2に対して傾斜することなく、切欠き部3a2に沿って真っすぐ圧入できる。このためセンサユニット6の姿勢を安定させることができる。
【0073】
第1の嵌合面と第2の嵌合面とが一部にて互いに接触し他の一部にて接触しないという特徴を有する限り、本実施の形態でも実施の形態1と同様の、センサユニット6の姿勢を安定させる作用効果を奏する。
【0074】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。図11を参照して、本実施の形態においては基本的に図3の実施の形態1と同様の構成を有する。ただし本実施の形態では、保持部材12の外周部12Cについて、第1外周部12C1よりも第2外周部12C2の方が、径方向に薄く形成されている。この点において図11は、外周部12Cの径方向の厚みがその全体においてほぼ一定である図3と構成上異なる。ただし図11図3と同様に、外周部嵌合面12Caは、嵌合面12Ca1と嵌合面12Ca2との間で段差を有し、第1の切欠き部3aは、切欠き部3a1と切欠き部3a2との間で段差を有する。
【0075】
保持部材12を切削加工またはプレス加工により形成する場合、第2外周部12C2を第1外周部12C1よりも薄く形成することで、第2外周部12C2の剛性を低下させ、第2外周部12C2の圧入時に外輪3に対して加える圧入荷重を減らすようにしてもよい。
【0076】
たとえば、保持部材12をプレス加工で形成する場合、プレスの精度にもよるが、たとえば第2外周部12C2の寸法公差の幅は0.15mm以上0.2mm程度と比較的大きい。このため第2外周部12C2を第1の切欠き部3aに嵌合する際の締め代が大きくなる。このようになれば保持部材12の第1の切欠き部3aへの圧入加工が難しくなる可能性がある。そこで上記のように保持部材12のプレス加工時に外周部12Cの特に第2外周部12C2の板厚が薄くなるように、しごき加工を施してもよい。
【0077】
なお図示されないが、本実施の形態においては、図11の構成の代わりに、第1外周部12C1を含めて外周部12Cの全体の径方向の厚みを側板部12Aの厚みよりも薄くしてもよい。また図示されないが、第1の切欠き部3aの切欠き部3a1と切欠き部3a2との間の段差をなくし、図11における第1の切欠き部3aの全体が平坦であってもよい。さらに別の例として、保持部材12の嵌合面12Ca1と嵌合面12Ca2との間の段差をなくし、図11における外周部嵌合面12Caの全体が平坦であってもよい。
【0078】
保持部材12をプレス加工で形成する場合、図10では外周部嵌合面12Caのうち圧入部となる嵌合面12Ca1を、図11では外周部嵌合面12Caのうち圧入部となる嵌合面12Ca2を、ストレートな面とすることが好ましい。なお図10図11ともに、嵌合面12Ca1と嵌合面12Ca2との双方をストレートな面としてもよい。これにより、当該プレス加工が容易となる。外周部嵌合面12Caのうち圧入に寄与する部分は、第1の切欠き部3aのうち圧入に寄与する部分よりも軸方向に沿う寸法が長いことが好ましい。保持部材12の外周部嵌合面12Caのストレートな寸法を長くすることにより、当該外周部嵌合面12Caの形状が安定するためである。図10図11の形状を有する保持部材12は量産に適している。
【0079】
第1の嵌合面と第2の嵌合面とが一部にて互いに接触し他の一部にて接触しないという特徴を有する限り、本実施の形態でも実施の形態1と同様の、センサユニット6の姿勢を安定させる作用効果を奏する。
【0080】
(実施の形態5)
図12は、実施の形態5の特にセンサユニットおよび磁気リングの拡大断面図である。図12を参照して、本実施の形態においては基本的に図3の実施の形態1と同様の構成を有する。ただし本実施の形態では、第1の切欠き部3aは、切欠き部3a1と切欠き部3a2との間で段差を有さず、軸方向の全体において平坦になっている。この点において本実施の形態は、切欠き部3a1と切欠き部3a2との間で段差を有する実施の形態1(1~4)と異なっている。図12中のL1,L2は図3中のL1,L2と基本的に同様であるが、L2が最外表面3cから切欠き部3a2、嵌合面12Ca2までの距離に加え、切欠き部3a1までの距離をも表わす点が図3とは異なる。
【0081】
第1の嵌合面と第2の嵌合面とが一部にて互いに接触し他の一部にて接触しないという特徴を有する限り、本実施の形態でも実施の形態1と同様の、センサユニット6の姿勢を安定させる作用効果を奏する。
【0082】
(付記)
以下に、本明細書にて開示されるべき実施の形態について列挙する。
【0083】
(1) 外輪3、内輪4および転動体8を含む軸受2と、上記外輪3および上記内輪4のいずれかである固定輪に固定され、上記軸受2の状態を監視するセンサを保持するセンサユニット6とを備え、上記センサユニット6は、側板部12Aと、上記側板部12Aに交差するように延びる周部(外周部12C、内周部12D)とを有する保持部材12を含み、上記保持部材は、上記固定輪と、上記周部において嵌合され、上記周部のうち上記固定輪と嵌合する第1の嵌合面(外周部嵌合面12Ca、内周部嵌合面12Da)と、上記固定輪のうち上記周部と嵌合する第2の嵌合面(第1の切欠き部3a、第2の切欠き部4a)とは、一部が互いに接触し、上記一部以外の他の一部が互いに間隔をあけて配置される、軸受装置1。
【0084】
(2) 上記第1の嵌合面は、軸方向について上記側板部12A側よりも、上記側板部12A側と反対側の開口12g側の方が、径方向について上記固定輪の上記転動体8と接触する面(外輪軌道面3b、内輪軌道面4b2)と反対側の面(最外表面3c、最内表面4c)からの距離が小さくなるよう段差を有する、(1)に記載の軸受装置1。
【0085】
(3) 上記第2の嵌合面は、軸方向について上記転動体8側よりも、上記転動体8側と反対側(端面11,20側)の方が、径方向について上記固定輪の上記転動体8と接触する面と反対側の面からの距離が大きくなるよう段差を有する、(1)または(2)に記載の軸受装置1。
【0086】
(4) 上記第2の嵌合面は、軸方向について上記転動体8側よりも、上記転動体8側と反対側(端面11,20側)の方が、径方向について上記固定輪の上記転動体8と接触する面と反対側の面からの距離が小さくなるよう段差を有する、(1)または(2)に記載の軸受装置1。
【0087】
(5) 上記センサユニット6は、上記固定輪の端面11,20から軸方向の外側にはみ出さないように、固定輪に固定される、(1)~(4)のいずれか1つに記載の軸受装置1。
【0088】
(6) 上記外輪3および上記内輪4のいずれかである回転輪に固定され、N極とS極とが交互に着磁された磁気リング7と、上記磁気リング7と上記軸受2の径方向に対向するよう上記固定輪に固定される上記保持部材12を構成部品として含み、コイル24を収納するステータ5(そのうち特にコイル24を収納するのはステータ5Aの一部およびステータ5B)と、上記センサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路18と、上記磁気リング7と上記ステータ5とで構成される発電機Gからの出力を調整可能な電源回路17と、上記センサ、上記ワイヤレス通信回路18および上記電源回路17を実装する回路基板13とをさらに備える、(1)~(5)のいずれか1つに記載の軸受装置1。
【0089】
(7) 上記磁気リング7、上記コイル24、上記回路基板13は、上記軸受2の径方向に沿って延びる仮想の直線Lの上に互いに間隔をあけて並ぶように配置されている、(6)に記載の軸受装置1。
【0090】
(最後に)
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 軸受装置、2 軸受、3 外輪、3a 第1の切欠き部、3a1,3a2,4a1,4a2 切欠き部、3b 外輪軌道面、3c 最外表面、3d 内径面、3n,4n ヌスミ、4 内輪、4a 第2の切欠き部、4b 外径面、4b2 内輪軌道面、4c 最内表面、5,5A,5B ステータ、6 センサユニット、7 磁気リング、7a 芯金、7b 多極磁石、7c フランジ部、8 転動体、9 保持器、10 シール、11,20 端面、12 保持部材、12A 側板部、12b 裏面、12C,22B 外周部、12C1 第1外周部、12C2 第2外周部、12Ca 外周部嵌合面、12Ca1,12Ca2,12Da1,12Da2 嵌合面、12D,22D 内周部、12D1 第1内周部、12D2 第2内周部、12Da 内周部嵌合面、12e 孔部、12f 表面、12g 開口、13 回路基板、14 蓋、15 加速度センサ、16 温度センサ、17 電源回路、18 ワイヤレス通信回路、18a アンテナ部、19 ねじ、21,22 磁性体部材、21a,22a 爪部、22C 端面部、23 ボビン、24 コイル、25 端子、G 発電機、O 回転軸。
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