(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036865
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電解液及びそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20240311BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240311BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240311BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240311BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240311BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240311BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141389
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】西畑 良
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘行
(72)【発明者】
【氏名】木下 竣登
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H050AA09
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
(57)【要約】
【課題】 LiFSI等のスルホニルイミド化合物を含み、かつ、自己放電が抑制された電解液を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1);
MN(R1SO2)(R2SO2) (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を表す。R1、R2は、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)で表されるスルホニルイミド化合物と、リン酸ホウ素とを含むことを特徴とする電解液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
MN(R1SO2)(R2SO2) (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を表す。R1、R2は、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)で表されるスルホニルイミド化合物と、リン酸ホウ素とを含むことを特徴とする電解液。
【請求項2】
前記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を、0.01~5.0mol/Lの割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記リン酸ホウ素を電解液100質量%に対して、0.0005~1.5質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
更にM1PF6、M1BF4、M1PO2F2、M1FSO3(M1は、アルカリ金属原子を表す。)の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の電解液を備えて構成されることを特徴とする電池。
【請求項6】
前記電池は、下記式(2);
LiNixCoyMnzO2 (2)
(式中、x、y、zは、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を満たす数である。)で表される複合金属酸化物及び/又はLiFePO4を含む正極を備えて構成されることを特徴とする請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記電池は、Siを含有する負極活物質を備えて構成されることを特徴とする請求項5に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液及びそれを用いた電池に関する。より詳しくは、リチウムイオン電池等の電池を構成する電解液及びそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料からのエネルギー資源の転換が進んでおり、それとともに電池の重要性が高まり、需要増大が見込まれるところである。中でも、繰り返し充放電を行うことができる二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等、様々な分野においても使用がすすんでおり、各種二次電池や二次電池に用いられる材料について、研究、開発が行われている。特に、容量が大きく、軽量のリチウムイオン電池については、今後の利用の拡大が最も期待される二次電池であり、最も研究、開発が活発に行われている。
【0003】
例えばリチウムイオン二次電池に使用できる電解質について、リン酸ホウ素を含有することで充電状態で保存した場合の容量維持率の低下を抑制した非水電解質二次電池用非水電解質が開示されている(特許文献1参照)。また電解質に加えて、添加剤としてリン酸ホウ素を含むことで、高温環境下での電池性能を向上させた電解質が開示されている(特許文献2参照)。更にリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)等の特定の構造のスルホニルイミド化合物とフッ素を含有する別のアルカリ金属塩とを含む電解質とすることで電池のサイクル特性を向上させる技術(特許文献3参照)や、電解質とリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)等の特定の構造のスルホニルイミド化合物とを所定の割合で含み、カーボネート系溶媒を含む電解液とすることで低温環境下におけるイオン伝導度を向上させる技術や、が開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-168374号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0226685号明細書
【特許文献3】特開2013-84591号公報
【特許文献4】特開2013-101900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように電池に使用する電解質について、種々の技術が開示されているが、このうち、LiFSIを含む電解液は自己放電が大きいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、LiFSI等のスルホニルイミド化合物を含み、かつ、自己放電が抑制された電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、LiFSI等のスルホニルイミド化合物を含む電解液の自己放電を抑制する方法について検討し、スルホニルイミド化合物を含む電解液に、リン酸ホウ素を添加することで、電解液の自己放電を抑制することができることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0009】
〔1〕下記一般式(1);
MN(R1SO2)(R2SO2) (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を表す。R1、R2は、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)で表されるスルホニルイミド化合物と、リン酸ホウ素とを含むことを特徴とする電解液。
【0010】
〔2〕上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を、0.01~5.0mol/Lの割合で含むことを特徴とする〔1〕に記載の電解液。
【0011】
〔3〕上記リン酸ホウ素を電解液100質量%に対して、0.0005~1.5質量%の割合で含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の電解液。
【0012】
〔4〕更にM1PF6、M1BF4、M1PO2F2、M1FSO3(M1は、アルカリ金属原子を表す。)の少なくとも1種を含むことを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電解液。
【0013】
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電解液を備えて構成されることを特徴とする電池。
【0014】
〔6〕上記電池は、下記式(2);
LiNixCoyMnzO2 (2)
(式中、x、y、zは、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を満たす数である。)で表される複合金属酸化物及び/又はLiFePO4を含む正極を備えて構成されることを特徴とする〔5〕に記載の電池。
【0015】
〔7〕上記電池は、Siを含有する負極活物質を備えて構成されることを特徴とする〔5〕又は〔6〕に記載の電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電解液は、LiFSI等のスルホニルイミド化合物を含みながら、自己放電が抑制された電解液であるため、リチウムイオン二次電池等の電解液として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0018】
1.電解液
本発明の電解液は、上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物と、リン酸ホウ素とを含むことを特徴とする。リン酸ホウ素を添加することで上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の分解を抑制し、電解液の安定性が向上する。これにより電池として高温で保存した場合においても自己放電を抑制し、加えて低温サイクル時の容量維持率も向上することができる。
【0019】
本発明の電解液における上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の濃度は、0.01~5.0mol/Lであることが好ましい。スルホニルイミド化合物をこのような濃度で含むことで、電解液がよりイオン伝導性に優れたものとなる。スルホニルイミド化合物の濃度は、より好ましくは、0.05~2.5mol/Lであり、更に好ましくは、0.1~1.5mol/Lである。
上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の濃度として好ましくは、0.01~5.0mol/Kgであり、より好ましくは、0.05~2.5mol/Kgであり、更に好ましくは、0.1~1.5mol/Kgである。
【0020】
本発明の電解液におけるリン酸ホウ素の含有割合は、電解液全体100質量%に対して、0.0005~1.5質量%であることが好ましい。リン酸ホウ素をこのような割合で含むことで、電解液のイオン伝導性を良好なものとしつつ、電解液の自己放電をより充分に抑制することができる。リン酸ホウ素の含有割合は、より好ましくは、電解液全体100質量%に対して0.001~1.5質量%であり、更に好ましくは、0.001~1.0質量%であり、特に好ましくは、0.01~0.5質量%であり、最も好ましくは、0.05~0.3質量%である。
【0021】
本発明の電解液は、アルカリ金属塩として上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を含むものであるが、上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物以外のアルカリ金属塩を含んでいてもよい。
本発明の電解液における上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物以外のアルカリ金属塩の濃度は特に制限されないが、0~2.5mol/Lであることが好ましい。より好ましくは0~1.5mol/Lであり、更に好ましくは0.1~1.5mol/Lである。
上記スルホニルイミド化合物以外のアルカリ金属塩の濃度として好ましくは、0~2.5mol/Kgであり、より好ましくは0~1.5mol/Kgであり、更に好ましくは0.1~1.5mol/Kgである。
【0022】
本発明の電解液が上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物以外のその他のアルカリ金属塩を含む場合、電解液中の電解質(上記スルホニルイミド化合物及びこれ以外のアルカリ金属塩の合計)100モル%に対する上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の割合は、1~99モル%であることが好ましい。これによりリン酸ホウ素を含むことによる本発明の作用効果をより充分に発揮することができる。より好ましくは5~90モル%であり、更に好ましくは10~80モル%であり、特に好ましくは、20~80モル%である。
【0023】
本発明の電解液が含む溶媒の割合は、電解質(上記スルホニルイミド化合物及びこれ以外のアルカリ金属塩)100質量%に対して50~1500質量%であることが好ましい。より好ましくは150~800質量%であり、更に好ましくは300~700質量%である。
【0024】
本発明の電解液は、水分を1質量%以下の割合で含んでいてもよいが、水分量として好ましくは200質量ppm以下である。これにより本発明の作用効果をより充分に発揮することができる。水分量としてより好ましくは100質量ppm以下であり、更に好ましくは50質量ppm以下である。水分は、実質的に含まれていなくてもよい(0質量ppm程度でもよい)。上記水分量は、カールフィッシャー水分測定装置により測定することができる。
【0025】
本発明の電解液は、上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物やその他のアルカリ金属塩、リン酸ホウ素、溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分の含有量は、特に制限されないが、電解液100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下である。
【0026】
以下では、本発明の電解液に含まれる必須成分及び任意成分について更に説明する。
<スルホニルイミド化合物>
本発明の電解液は、下記式(1);
MN(R1SO2)(R2SO2) (1)
(式(1)中、Mはアルカリ金属を表す。R1、R2は、同一又は異なって、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)で表されるスルホニルイミド化合物を含む。
【0027】
上記式(1)において、Mで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムであり、より好ましくはリチウムである。
【0028】
上記R1、R2における炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基等の直鎖アルキル基;i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、i-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、t-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等の分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。中でも好ましくは直鎖アルキル基である。
【0029】
上記R1、R2におけるアルキル基の炭素数として好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、更に好ましくは1~2である。
【0030】
上記R1、R2における炭素数1~6のフルオロアルキル基は、炭素数1~6のアルキル基の炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されたものであればよい。上記アルキル基の具体例は上記のとおりである。
炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
上記R1、R2におけるフルオロアルキル基の炭素数として好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、更に好ましくは1~2である。
【0032】
上記スルホニルイミド化合物としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
中でも好ましくは、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドであり、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)である。
【0033】
<その他のアルカリ金属塩>
本発明の電解液が、上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物以外のその他のアルカリ金属塩を含む場合、その他のアルカリ金属塩としては、上記スルホニルイミド化合物以外のアルカリ金属塩であれば特に制限されないが、例えば、LiPF6、LiPO2F2等のフルオロリン酸のアルカリ金属塩;LiFSO3等のフルオロスルホン酸のアルカリ金属塩;LiCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩;LiN(CF3SO2)2等のイミド系アルカリ金属塩;LiC(CF3SO2)3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチドのアルカリ金属塩;LiPFa(CmF2m+1)6-a(0≦a≦6、1≦m≦2)等のフルオロリン酸塩;LiClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩;LiBFb(CnF2n+1)4-b(0≦b≦4、1≦n≦2)等のフルオロホウ酸塩;LiBOB等のオキサラトボレートのアルカリ金属塩;リチウムテトラシアノボレート等のシアノホウ酸塩;LiAsF6、LiI、LiSbF6等のアルカリ金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
上記その他のアルカリ金属塩として好ましくは、M1PF6、M1BF4、M1PO2F2、M1FSO3(M1は、アルカリ金属原子を表す。)であり、M1PF6、M1BF4、M1PO2F2、M1FSO3(M1は、アルカリ金属原子を表す。)の少なくとも1種以上を含むことは本発明の電解液の好適な実施形態の1つである。
M1PF6、M1BF4、M1PO2F2、M1FSO3におけるM1のアルカリ金属原子の具体例及び好ましい形態は、上記スルホニルイミド化合物におけるアルカリ金属原子と同様である。
【0035】
<溶媒>
本発明の電解液が含む溶媒は、非水系であって、上記電解質(スルホニルイミド化合物及びこれ以外のアルカリ金属塩)、リン酸ホウ素及び後述するその他の成分を溶解させることができる限り特に制限されないが、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン等のエーテル類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等のラクトン類;酢酸エチル、プロピオン酸メチルや酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル類;フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート等のフッ素化環状カーボネート;トリフルオロジメチルカーボネート、トリフルオロジエチルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート等のフッ素化鎖状カーボネート類;アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等の鎖状ニトリル等が挙げられる。これらの非水溶媒は、1種を使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。中でも好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート等の環状カーボネートである。
【0036】
<その他の成分>
本発明の電解液における、上記式(1)で表されるスルホニルイミド化合物やその他のアルカリ金属塩、リン酸ホウ素、溶媒以外のその他の成分としては、例えば、炭酸ビニレン、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、2-ビニル炭酸エチレン、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;1,3-プロパンサルトン、1,4-ブタンサルトン、1,5-ペンタンサルトン、1,4-へキサンサルトン、4,6-ヘプタンサルトン、メタンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル;スルホラン、3-メチルスルホラン、エチルメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン等のスルホン化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルスクシイミド等の含窒素化合物;スルファミン酸(アミド硫酸、H3NSO3);スルファミン酸塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩;アンモニウム塩;グアニジン塩等);モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩などのリン酸塩;フルオロスルホン酸リチウム(LiFSO3)、フルオロスルホン酸ナトリウム(NaFSO3)、フルオロスルホン酸カリウム(KFSO3)、フルオロスルホン酸マグネシウム(Mg(FSO3)2)等のフルオロスルホン酸化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン、シクロへキシルベンゼン、アミルベンゼン等の炭化水素化合物;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
2.電池
本発明はまた、本発明の電解液を含んで構成されることを特徴とする電池でもある。本発明の電解液は保存安定性が高く、本発明の電解液を含んで構成された電池は、自己放電が効果的に抑制された電池となる。
【0038】
本発明の電池の形状は特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V~数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
【0039】
本発明の電池は、アルカリ金属電池であることが好ましい。また電池としては、二次電池であることがより好ましく、リチウムイオン二次電池であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
以下に、本発明の電池を構成する正極、負極、セパレータについて説明する。
【0040】
上記電池を構成する正極としては特に制限されないが、正極活物質、導電助剤、結着剤および分散用溶媒等を含む正極活物質組成物が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0041】
正極の製造方法としては、例えば、正極集電体に正極活物質組成物をドクターブレード法等で塗工したり、正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布または流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸または多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
【0042】
正極集電体の材料としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS(ステンレス鋼)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であるという観点からは、アルミニウムが好ましい。
【0043】
正極活物質としては、イオンを吸蔵・放出可能であれば良く、従来公知の正極活物質が用いられる。具体的には、M2CoO2、M2NiO2、M2MnO2、M2NixCoyMnzO2やM2NixCoyAlzO2(x、y、zは、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を満たす数である。)で表される三元系酸化物等の複合金属酸化物、M2
pNiqMn(2-q)O4(0.9≦p≦1.1、0<q<1)で表されるニッケルマンガン酸、M3APO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のM2
2MnO3と、電気化学的に活性な層状のM2M”O([M”=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)(M2はアルカリ金属イオンを表す)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、または、複数を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも正極活物質としては、下記式(2);
LiNixCoyMnzO2 (2)
(式中、x、y、zは、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を満たす数である。)で表される複合金属酸化物及び/又はLiFePO4が好ましい。このような正極活物質を含む正極を含んで構成される電池は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0044】
導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相法炭素繊維等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
【0046】
導電助剤および結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
【0047】
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。これらの溶媒は組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
【0048】
上記電池を構成する負極としては特に制限されないが、負極活物質、分散用溶媒、結着剤および必要に応じて導電助剤等を含む負極活物質組成物が負極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
【0049】
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。なお、薄膜への加工が容易である観点からは、銅が好ましい。
【0050】
負極活物質としては、電池で使用される従来公知の負極活物質を用いることができ、イオンを吸蔵・放出可能なものであればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ金属-アルミニウム合金等の金属合金、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭,石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料を用いることができる。
これらの中でも負極活物質としては、Siを含有するSi系負極材料が好ましい。このような負極活物質を含む負極を含んで構成される電池は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0051】
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、負極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
【0052】
セパレータは正極と負極とを隔てるように配置されるものである。
上記電池を構成するセパレータは、特に制限されず、通常用いられるセパレータを使用することができる。
セパレータとしては、例えば、非水電解液を吸収・保持し得るポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータやセルロース系セパレータなど)、不織布セパレータ、多孔質金属体等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を有するため好適である。
【0053】
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体等が挙げられる。
【0054】
上記不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、非水電解液層に要求される機械的強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、または、混合して用いることができる。
【実施例0055】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0056】
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-2
ジメチルカーボネート(DMC)にLiFSI(日本触媒社製)を2.9mol/L(3.56mol/Kg)となるように溶解し、電解液を作成した。この電解液にリン酸ホウ素を0.1wt%添加し、実施例1-1の電解液を作製した。また、リン酸ホウ素を添加しない電解液を比較例1-1の電解液とした。電解液作成直後、40℃1か月、40℃3か月保存後の電解液をアニオンイオンクロマトで分析し、F-、SO4
-イオンを検量した。
同様に、市販のLiPF6と日本触媒社製のLiFSIを市販のエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(EC/EMC=3/7(vol/vol))にそれぞれが0.6mol/L(0.59mol/Kg)となるように溶解し、実施例1-2の電解液を作成した。また、リン酸ホウ素を添加しない電解液を比較例1-2の電解液とした。これも前記同様の保存安定性試験を行った。
電解液にリン酸ホウ素を添加すると、F-、SO4
-の増加が抑制されていた。その詳細メカニズムは不明であるが、FSIアニオンの安定性を改善させたためと想定される。
【0057】
【0058】
実施例2-1~2-25、比較例2-1~2-3
(1)ラミネート電池作製
三元系正極(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2 ユミコア)とアセチレンブラック(デンカブラック)、グラファイト(SP270)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF、♯1120)を100:3:3:3の質量比で秤量し、N-メチルピロリドン(NMP)に分散させスラリーを作成した。作成したスラリーをアルミ箔に片面塗工し、乾燥、ロールプレスを行い、正極を作成した。
グラファイト(SMG/SFG15=85/15):カーボンファイバー(VGCF):スチレンブタジエンゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=100:2:1.5:1.5組成(質量比)の水系スラリーを作成し、銅箔に片面塗工し、乾燥、ロールプレスを行い、負極を作成した。
得られた正負極をカットし、極性導出リードを超音波で溶接し、20μmのポリエチレン(PE)セパレータで対向させ、ラミネート外装で3方を封止した。
電解液は、EC/EMC=3/7(vol/vol)混合溶媒にLiFSIとLiPF6を表2に記載の所定の比率となるように溶解し、リン酸ホウ素を表2に記載の濃度で添加したものを使用した。
未封止の1方より実施例、比較例の電解液700μLを添加した。
注液後の電池を開封状態で0.2C(6mA)、2時間の予備充電を行った。その後真空封止して常温で3日間放置した。3日後0.5C(15mA)で4.2V、5時間充電→0.2C(6mA)、2.75V終止の充放電を行い、ラミネート1片を開裂し、再度真空封止する事でガス抜きを行った。
ガス抜き後の電池を以下の条件で充放電し、セルのコンディショニング工程とした。
[コンディショニング条件]
1サイクル目 充電:3mA 4.2V 定電流定電圧充電 0.3mA終止 ⇒ 放電:6mA 放電 2.75V終止
2サイクル目 充電:6mA 4.2V 定電流定電圧充電 0.6mA終止 ⇒ 放電:6mA 放電 2.75V終止
3サイクル目 充電:6mA 4.2V 定電流定電圧充電 0.6mA終止 ⇒ 放電:30mA 放電 2.75V終止
(2)低温サイクル試験
コンディショニング後の電池を使用し、-10℃サイクル試験を100サイクル行い、
放電容量維持率(%)=
100×(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
を求めた。
サイクル条件は定電流定電圧充電(CCCV)、4.2V 30mA(1C) 0.6mA(0.05C)終止 10分休止⇒ 定電流放電(CC):30mA(1C) 2.75V終止 10分休止とした。その結果を表2に示す。
(3)保存後の電圧
コンディショニング後のセルを、常温にて1C(30mA)、4.2Vで0.02C(0.6mA)終止の定電流定電圧充電を行い、満充電状態とし、65℃で31日保存し、保存後のセルの開路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
実施例3-1~3-5、比較例3-1~3-2
(1)電極の作製
(正極の作製)
三元系正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(北京当升製)、アセチレンブラック(AB、デンカ(株)製、製品名:デンカブラック(登録商標))、グラファイト(日本黒鉛工業(株)製、品番:SP270)、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF、(株)クレハ製、品番:KF1120)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散させて正極合材スラリー(正極活物質:AB:グラファイト:PVdF=93:3:3:3(固形分質量比))を作製した。続いて、得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔(正極集電体、日本製箔(株)製、厚み15μm)に対して、乾燥後の塗工重量が19.4mg/cm2となるようにアプリケーターで片面塗工し、110℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。さらに、110℃の真空乾燥炉で12時間乾燥させた。その後、ロールプレス機により密度3.1g/cm3となるまで加圧成形することにより、シート状の正極を得た。
(負極の作製)
負極活物質として酸化ケイ素(SiO)/黒鉛複合材料(BTR製、品番:BSO-600)、導電助剤(昭和電工(株)製、品番:VGCF-H(登録商標)および(イメリス製、品番:Super-P(登録商標)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR、結着剤)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、結着剤)を、超純水中に分散させて、負極合材スラリー(負極活物質:VGCF:Super-P:SBR:CMC=90:2:3:3:2(固形分質量比))を作製した。続いて、得られた負極合材スラリーを銅箔(負極集電体、福田金属箔粉工業(株)製、厚み15μm)に対して、乾燥後の塗工重量が6.8mg/cm2となるようにアプリケーターで片面塗工し、80℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。さらに、100℃の真空乾燥炉で12時間乾燥させた。その後、ロールプレス機により密度1.3g/cm3となるまで加圧成形することにより、シート状の負極を得た。
(2)特性評価
電解液は、EC/フルオロエチレンカーボネート(FEC)/EMC=2/1/7(vol/vol)混合溶媒にLiFSIとLiPF6を表3に記載の所定の比率となるように溶解し、リン酸ホウ素を表3に記載の濃度で添加した。この電解液と上記(1)で作製した正極、負極とを用いて実施例2-1~2-25、比較例2-1~2-3と同条件で電池評価を行った。結果を表3に示す。
【0061】
【0062】
実施例4-1~4-6、比較例4-1~4-2
(1)ラミネート電池の作製
正極活物質を市販のLiFePO4に変更し、アセチレンブラック(HS-100)、PVdF(クレハ#L7208)を100:9:6の組成比(質量比)で秤量し、NMPに分散させスラリーを作成した。作成したスラリーをアルミ箔に片面塗工(塗工重量20.20mg/cm2)し、乾燥、ロールプレスを行い、正極を作成した。
グラファイト(SMG/SFG15=85/15):VGCF:SBR:CMC=100:2:1.5:1.5組成(質量比)の水系スラリーを作成し、銅箔に塗工重量8.8mg/cm2で塗工し、乾燥、ロールプレスを行い、負極版を作成した。
電解液は、EC/EMC=3/7(vol/vol)混合溶媒にLiFSIとLiPF6を表4に記載の所定の比率となるように溶解し、リン酸ホウ素を表4に記載の濃度で添加した。作成した正負極を用いて前記と同様の部材、やり方で25mAhのラミネート電池を作成した。
注液後5mA、3時間の定電流充電を行い、1片を開裂して、再真空封止する事でガス抜きを行った。ガス抜き後のセルを25℃で48時間保管後、以下のコンディショニング条件で充放電させ、評価用電池を完成させた。
[コンディショニング条件]
1サイクル目 充電:2.5mA 3.6V 定電流定電圧充電 0.25mA終止 ⇒ 放電:5mA 放電 2.0V終止
2サイクル目 充電:2.5mA 3.6V 定電流定電圧充電 0.5mA終止 ⇒ 放電:5mA 放電 2.0V終止
3サイクル目 充電:2.5mA 3.6V 定電流定電圧充電 0.5mA終止 ⇒ 放電:25mA 放電 2.0V終止
(2)特性評価
上記(1)で得られたラミネート電池を用いて、以下の方法により、低温サイクル維持率、及び、高温保存後の自己放電容量率測定を行った。結果を表4に示す。
<低温サイクル維持率>
コンディショニング後の電池を使用し、-10℃サイクル試験を100サイクル行い、
放電容量維持率(%)=
100×(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
を求めた。
サイクル条件は定電流定電圧充電(CCCV)、3.6V 25mA(1C) 0.5mA(0.05C)終止 10分休止⇒ 定電流放電(CC):25mA(1C) 2.0V終止 10分休止とした。
<高温保存後の自己放電容量率測定>
自己放電量は65℃31日保存後の自己放電容量率として以下の式により算出した。
100×{(保存前の放電容量)―(保存後の放電容量)}/(保存前の放電容量)
完成電池を以下の条件(25℃)で充放電し、保存前の放電容量を確認した。
充電:3.6V 25mA 定電流定電圧充電0.5mA終止 ⇒ 定電流放電:2.5mA 2.0V終止
高温での保存は放電容量確認後のセルを、常温にて1C(25mA)、3.6Vで0.02C(0.5mA)終止の定電流定電圧充電を行い、満充電状態としたのち65℃で31日保存した。
保存後の放電容量は、31日保存後の電池を25℃にて2.5mA、2.0V終止の条件で定電流放電を行うことで求めた。
【0063】