(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036868
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141396
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】濱田 由莉
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA18
2H199DA29
2H199DA48
(57)【要約】
【課題】光による画像照射部の温度上昇を抑制しながらも、汎用性を向上させて製造工程を簡略化することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置(10)であって、画像光を照射する画像照射部(12~14)と、画像光を反射して表示部を介して画像光を視点方向に照射する反射光学部(16,17)と、反射光学部(16,17)と画像照射部(12~14)を収容する筐体(11)と、画像照射部(12~14)の少なくとも一部を筐体(11)に保持する保持部(15)を有し、保持部(15)の少なくとも一部は、画像光の照射方向に沿って延伸されて保持遮光部(15a)を構成している画像投影装置(10)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置であって、
画像光を照射する画像照射部と、
前記画像光を反射して前記表示部を介して前記画像光を視点方向に照射する反射光学部と、
前記反射光学部と前記画像照射部を収容する筐体と、
前記画像照射部の少なくとも一部を前記筐体に保持する保持部を有し、
前記保持部の少なくとも一部は、前記画像光の照射方向に沿って延伸されて保持遮光部を構成していることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、前記投影画像を表示する画像表示部と、前記画像表示部に対して光を照射する光源部と、前記画像表示部から照射される前記画像光が透過する光学部材とを備え、
前記保持部は、前記画像表示部、前記光源部および前記光学部材の少なくとも何れか一つを保持することを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像投影装置であって、
前記画像光は、第1画像光および第2画像光を含み、
前記光学部材は、前記第1画像光と前記第2画像光の間で虚像の結像位置に差を生じさせる結像位置調整部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記結像位置調整部は反射プリズムであることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像投影装置であって、
前記反射プリズムは、第1入射部と、第2入射部と、反射部と、第1出射部と、第2出射部とを備え、
前記第1画像光は前記第1入射部から入射し、前記反射部で反射され、前記第1出射部から出射され、
前記第2画像光は前記第2入射部から入射し、前記第2出射部から出射されることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、前記第1画像光を照射する第1領域と、前記第2画像光を照射する第2領域を備え、
前記反射プリズムは、前記第1入射部が前記第1領域に対向して配置され、前記第2入射部が前記第2領域に対向して配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項3に記載の画像投影装置であって、
前記反射光学部での反射によって前記第1画像光と前記第2画像光の経路は、前記筐体内における交差領域で交差し、
前記保持遮光部は、前記交差領域に向かって延伸されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記筐体の一部が延伸して筐体遮光部を構成し、
前記筐体遮光部および前記保持遮光部は共に、前記反射光学部での前記画像光の経路上における画像光通過領域に向かって延伸されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記反射光学部は、前記画像照射部からの前記画像光が入射する第1反射部と、前記第1反射部で反射された前記画像光が入射する第2反射部を備え、
前記第1反射部で反射された前記画像光は、前記第1反射部と前記第2反射部の間における中間結像位置において、中間結像されることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)も提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
また、より多くの情報を提示するために、運転支援HUD装置を用いて複数の画像をウィンドシールドに投影することも提案されている。しかし、複数の画像を異なる距離に虚像として投影して結像するためには、画像照射部と自由曲面ミラーの組み合わせを複数備える必要があり、インストルメントパネル内に収容するためには設計の自由度が低いという問題があった。そこで、投影する二つの画像を一つの画像照射部の表示範囲内において表示し、共通の自由曲面ミラーで反射することで、部品点数の削減と省スペース化を図ることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のHUD装置では、表示部であるウィンドシールドを介して投影画像を照射するため、ウィンドシールドの下方から上方に向けて光を照射するための投影光学系を備えている。そのため、太陽光等の外光がウィンドシールドの上方から入射した場合には、画像を表示する画像照射部まで投影光学系を介して外光が到達してしまう。このとき、投影光学系を介して画像照射部まで到達する外光は、投影光学系の光学パワーによって集光され、温度上昇による劣化を引き起こすという問題があった。
【0007】
このような温度上昇を抑制するために、HUD装置の筐体に遮光部材を設けて、投影光の光路以外の経路から画像照射部に到達する外光をカットすることも提案されている。しかし、筐体の構造が複雑化して車種ごとの設計が必要になり、汎用性が低下するという問題があった。また、投影光の光路と遮光部材の先端の位置合わせをする必要があり、整合工程が煩雑化するとともに、製造誤差や取付誤差によって投影光がカットされる不具合が発生する可能性があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、外光による画像照射部の温度上昇を抑制しながらも、汎用性を向上させて製造工程を簡略化することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、虚像を表示するための表示部に対して投影画像を照射する画像投影装置であって、画像光を照射する画像照射部と、前記画像光を反射して前記表示部を介して前記画像光を視点方向に照射する反射光学部と、前記反射光学部と前記画像照射部を収容する筐体と、前記画像照射部の少なくとも一部を前記筐体に保持する保持部を有し、前記保持部の少なくとも一部は、前記画像光の照射方向に沿って延伸されて保持遮光部を構成していることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の画像投影装置では、保持部の少なくとも一部が、画像光の照射方向に沿って延伸されて保持遮光部を構成しているため、画像光の照射方向と保持遮光部の位置合わせが容易であり、外光による画像照射部の温度上昇を抑制しながらも、汎用性を向上させて製造工程を簡略化することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、前記投影画像を表示する画像表示部と、前記画像表示部に対して光を照射する光源部と、前記画像表示部から照射される前記画像光が透過する光学部材とを備え、前記保持部は、前記画像表示部、前記光源部および前記光学部材の少なくとも何れか一つを保持する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記画像光は、第1画像光および第2画像光を含み、前記光学部材は、前記第1画像光と前記第2画像光の間で虚像の結像位置に差を生じさせる結像位置調整部を備える。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記結像位置調整部は反射プリズムである。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記反射プリズムは、第1入射部と、第2入射部と、反射部と、第1出射部と、第2出射部とを備え、前記第1画像光は前記第1入射部から入射し、前記反射部で反射され、前記第1出射部から出射され、前記第2画像光は前記第2入射部から入射し、前記第2出射部から出射される。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、前記第1画像光を照射する第1領域と、前記第2画像光を照射する第2領域を備え、前記反射プリズムは、前記第1入射部が前記第1領域に対向して配置され、前記第2入射部が前記第2領域に対向して配置されている。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記反射光学部での反射によって前記第1画像光と前記第2画像光の経路は、前記筐体内における交差領域で交差し、前記保持遮光部は、前記交差領域に向かって延伸されている。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記筐体の一部が延伸して筐体遮光部を構成し、前記筐体遮光部および前記保持遮光部は共に、前記反射光学部での前記画像光の経路上における画像光通過領域に向かって延伸されている。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記反射光学部は、前記画像照射部からの前記画像光が入射する第1反射部と、前記第1反射部で反射された前記画像光が入射する第2反射部を備え、前記第1反射部で反射された前記画像光は、前記第1反射部と前記第2反射部の間における中間結像位置において、中間結像される。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、光による画像照射部の温度上昇を抑制しながらも、汎用性を向上させて製造工程を簡略化することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置10と結像される虚像の位置を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像投影装置10における、画像表示部13から照射される画像の表示領域を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態における反射プリズム14の構造を示す模式図である。
【
図5】筐体遮光部11bおよび保持遮光部15aの延伸方向と、第1画像光L1および第2画像光L2の光路の関係について説明する部分拡大図である。
【
図6】第2実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置10と結像される虚像の位置を示す模式図である。
【0022】
図1に示すように、画像投影装置10から投影された第1画像光L1と第2画像光L2は、ウィンドシールド20(表示部)を介して運転者の視点位置に照射され、ウィンドシールド20から所定の距離に虚像30,40が結像される。画像投影装置10は、表示部に対して投影画像を照射して、運転者等に対して虚像30,40を表示するための装置である。画像投影装置10の構成については後述する。
【0023】
ウィンドシールド20は、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールド20は、車両の内側面では画像投影装置10から入射した第1画像光L1および第2画像光L2を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールド20を用いた例を示したが、ウィンドシールド20とは別に表示部としてコンバイナーを用意し、画像投影装置10からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0024】
虚像30,40は、ウィンドシールド20で反射された第1画像光L1および第2画像光L2が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像30,40が結像される位置は、画像投影装置10から照射される第1画像光L1および第2画像光L2の光路長と、ウィンドシールド20で反射された後に視点方向に進行する際の拡がり角度とによって決まる。
図1に示した例では、後述するように画像投影装置10内部での第1画像光L1と第2画像光L2の光路長に差を生じさせ、搭乗者の視点位置からの虚像30と虚像40の結像位置が異なる場合を示している。
【0025】
図2は、本実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す模式図である。
図2に示すように画像投影装置10は、筐体11と、光源部12と、画像表示部13と、反射プリズム14と、保持部15と、自由曲面ミラー16,17とを備えている。ここで、自由曲面ミラー16、自由曲面ミラー17および反射プリズム14の組み合わせが本発明における反射光学部を構成している。
図2に示した例では、反射光学部として自由曲面ミラー16、自由曲面ミラー17および反射プリズム14の組み合わせを示したが、反射光学部の構成はこれに限定されない。一例としては、自由曲面ミラー16,17の他に反射鏡を用いるとしてもよく、紫外光や赤外光をカットする波長フィルタを用いるとしてもよい。また、光源部12、画像表示部13および反射プリズム14の組み合わせは、第1画像光L1と第2画像光L2を照射するため、本発明における画像照射部を構成している。
【0026】
画像投影装置10は、各部と情報通信可能に接続されて、各部を制御する制御部を備えている(図示省略)。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像表示部13に送出する。
【0027】
筐体11は、画像投影装置10の各部を収容して保持する部分であり、
図2に示した例では光源部12と、画像表示部13と、反射プリズム14と、保持部15と、自由曲面ミラー16,17が内部に収容されている。筐体11には、光を透過する投影口11aと、筐体遮光部11bが設けられている。筐体11を構成する材料は限定されないが、可視光を遮る樹脂材料や金属材料を用いることができる。
【0028】
投影口11aは、第1画像光L1と第2画像光L2を筐体11の内部から外部に向けて照射するための領域である。
図2に示した例では、投影口11aとして筐体11の一部に設けられた開口を示しているが、筐体11を構成する面の一部に透光性の材料で形成された領域を設けるとしてもよい。
【0029】
筐体遮光部11bは、筐体11の一部が内部方向に延伸して設けられた部分である。筐体遮光部11bが筐体11内部に向けて設けられていることで、太陽光などの外光が画像投影装置10の外部から投影口11aを介して筐体11の内部に到達しても、その一部を筐体遮光部11bでカットすることができる。
図2では筐体遮光部11bとして、筐体11と一体に形成された例を示しているが、別部材として構成されて筐体11の内壁に固定されるとしてもよい。また、
図2では投影口11aの外縁に筐体遮光部11bを設けた例を示しているが、投影口11aから離れた位置に設けるとしてもよい。また、
図2では筐体遮光部11bとして略平坦な板状のものを示しているが、形状は限定されず、複数設けるとしてもよい。また、筐体遮光部11bを設けないとしてもよく、その場合には筐体11の一部が筐体遮光部11bとして機能する。
【0030】
光源部12は、画像表示部13に対して照射光を照射する部分である。
図2に示した例では、透過型の画像表示部13の背面側に光源部12を配置して、画像表示部13を照射光が透過する構成を示しているが、反射型の画像表示部13を用いて表示面側から照射光を照射するとしてもよい。光源部12の具体的な構成は限定されず、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、レーザ光源を用いることができる。また、画像表示部13として有機EL表示装置を用いる場合には、光源部12と画像表示部13が一体で構成される。
【0031】
画像表示部13は、制御部からの画像情報に基づいて、投影画像を表示する部分である。画像表示部13の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置、光変調素子等の従来公知のものを用いることができる。
図2に示した例では、画像表示部13として液晶表示装置を用いたものを示している。後述するように、画像表示部13は、近方画像と遠方画像をそれぞれ表示する近方表示領域13bと遠方表示領域13cを含んで構成されている。遠方表示領域13cに表示された遠方画像は第1画像光L1として照射され、近方表示領域13bに表示された近方画像は第2画像光L2として照射される。
【0032】
反射プリズム14は、画像表示部13から照射される第1画像光L1を内部で反射した後に出射し、第2画像光L2をそのまま透過させる。反射プリズム14は、画像表示部13から照射される第1画像光L1と第2画像光L2が透過するため、本発明における光学部材に相当している。また、反射プリズム14の詳細な構造については後述するが、反射プリズム14の内部で第1画像光L1が反射されることにより、第1画像光L1と第2画像光L2との間で光路差が生じる。したがって反射プリズム14は、第1画像光L1と第2画像光L2の間で虚像30,40の結像位置に差を生じさせる結像位置調整部としての機能を有している。
図2に示した例では、光学部材として反射プリズム14を示しているが、第1画像光L1と第2画像光L2を透過して光路を決定するものであればレンズや導光部材等を用いるとしてもよい。
【0033】
保持部15は、反射プリズム14を保持して筐体11に固定する部分であり、その一部が延伸されて保持遮光部15aが構成されている。保持部15の構造は限定されないが、反射プリズム14の外周形状と略同一の枠体を用い、当該枠の内部に反射プリズム14を篏合させて保持することができる。また、保持部15の一部は筐体11の内壁にまで延長されており(図示省略)、反射プリズム14と筐体11の相対的な位置を決めて固定している。
図2に示した例では、反射プリズム14を保持部15で保持した例を示したが、画像照射部を構成する光源部12、画像表示部13および反射プリズム14の何れかを保持して筐体11に固定する部材が、本発明の保持部に相当する。
【0034】
保持遮光部15aは、第1画像光L1および第2画像光L2の照射方向に沿って保持部15の一部が延伸された部分であり、遮光性の材料で構成されている。
図2では保持遮光部15aとして保持部15と一体に形成された例を示しているが、保持遮光部15aを保持部15とは別体で構成して、保持部15に設けた取付部に保持遮光部15aを取り付けるとしてもよい。本実施形態の画像投影装置10では、保持部15が反射プリズム14を保持しているため、反射プリズム14と保持遮光部15aの相対的な位置関係が決まり、第1画像光L1および第2画像光L2の照射方向と、保持遮光部15aの延伸方向の相対的な位置関係も決まる。したがって、保持部15で反射プリズム14を保持するだけで、保持遮光部15aが第1画像光L1と第2画像光L2を遮らないように位置決めすることができる。
図2では、保持遮光部15aを第1画像光L1と第2画像光L2の光路に平行に延伸した例を示しているが、第1画像光L1と第2画像光L2の光路を遮らない形状と長さであれば、保持遮光部15aの形状や構造は限定されない。
【0035】
自由曲面ミラー16は、反射プリズム14を介して第1画像光L1および第2画像光L2が入射し、第1画像光L1および第2画像光L2を自由曲面ミラー17方向に反射する光学部材である。自由曲面ミラー16の反射面は、ウィンドシールド20を介して第1画像光L1および第2画像光L2を虚像30,40として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0036】
図2では、自由曲面ミラー16で反射された第1画像光L1および第2画像光L2は、中間結像位置F(図示省略)で結像された後に自由曲面ミラー17に到達する例を示している。ここで、中間結像位置Fは第1画像光L1および第2画像光L2の光路上であれば限定されないが、自由曲面ミラー16と自由曲面ミラー17の間に設定することで、保持遮光部15aを配置する空間を確保することが容易になるため好ましい。
【0037】
自由曲面ミラー17は、自由曲面ミラー16で反射された第1画像光L1および第2画像光L2が入射し、ウィンドシールド20方向に第1画像光L1および第2画像光L2を反射する光学部材である。自由曲面ミラー17の反射面は、ウィンドシールド20を介して第1画像光L1および第2画像光L2を虚像30,40として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0038】
図2に示した例では、反射プリズム14が画像表示部13の近方表示領域13bおよび遠方表示領域13cに重なるように配置している。ここで、反射プリズム14を画像表示部13に重ねて配置するとは、平面視において反射プリズム14を配置した領域が画像表示部13の画像表示領域と重複することを意味している。また、反射プリズム14と画像表示部13が接触している場合も非接触の場合も重ねて配置に含まれるものとする。また、反射プリズム14と画像表示部13の間に光を透過する他の光学部材や、両者の間隔を維持するための保持部15を介在させている場合も、重ねて配置に含まれる。
【0039】
図3は、本実施形態に係る画像投影装置10における、画像表示部13から照射される画像の表示領域を示す模式図である。全表示領域13aは、画像表示部13の画像を表示する領域全体である。全表示領域13aの一部は近方表示領域13bであり、他の一部は遠方表示領域13cである。遠方表示領域13cは第1画像が表示され、本発明における第1領域に相当している。近方表示領域13bは第2画像が表示され、本発明における第2領域に相当している。近方表示領域13bに表示される第2画像としては、速度と音量インジケータ、進行方向ガイド等が挙げられる。また、遠方表示領域13cに表示される第1画像としては、注意喚起の画像や緊急情報等の運転に関する補助的な情報が挙げられる。
【0040】
図4は、本実施形態における反射プリズム14の構造を示す模式図である。
図4に示すように反射プリズム14は、透光性の樹脂により形成されており、断面が平行四辺形の柱状に形成されている。反射プリズム14を構成する材料は限定されず、可視光を良好に透過するとともに屈折率が高いガラスや樹脂などの材料を用いることができる。
【0041】
反射プリズム14の一方の面は画像表示部13に対向して配置される面であり、画像表示部13から照射された第1画像光L1と第2画像光L2が入射する光入射面とされている。
図4に示すように、光入射面のうち遠方表示領域13cと対向する領域が第1入射部14aであり、近方表示領域13bと対向する領域が第2入射部14bである。光入射面と対向する面は光出射面であり、第1画像光L1と第2画像光L2が外部に出射する領域がそれぞれ第1出射部14cと第2出射部14dとなる。また、第1入射部14aと第2出射部14dに挟まれた面が第1反射部14eであり、第2入射部14bと第1出射部14cに挟まれた面が第2反射部14fである。第1反射部14eおよび第2反射部14fは、第1画像光L1を全反射する反射面とされており、本発明における反射部に相当している。ここで、第1反射部14eおよび第2反射部14fは、第1画像光L1を全反射せずともよく、全反射してもよい。反射プリズム14を構成する材料の屈折率と空気の屈折率との差により第1画像光L1を全反射するとしてもよく、表面に反射膜を形成することで第1画像光L1を全反射するとしてもよい。また、第1反射部14eおよび第2反射部14fに反射率を向上させる反射膜を形成してもよく、反射シートを貼り付けるとしてもよい。
【0042】
図4に示すように、第1入射部14aから反射プリズム14に入射した第1画像光L1は、第1反射部14eおよび第2反射部14fで反射されて、第1出射部14cから自由曲面ミラー16方向に照射される。それに対して、第2入射部14bから反射プリズム14内に入射した第2画像光L2は、反射プリズム14の内部を透過して第2出射部14dから自由曲面ミラー16方向に照射される。このとき第1反射部14eおよび第2反射部14fが第1入射部14aおよび第2出射部14dに対して45度傾斜している場合には、光入射面と光出射面の間隔をDとし、幅をWとすると、反射プリズム14内部での第1画像光L1の光路長がD+Wとなるのに対して、第2画像光L2の光路長はDとなる。したがって、反射プリズム14を介した第1画像光L1と第2画像光L2の照射では、第1画像光L1のほうがWだけ光路長が長い画像投影となる。
【0043】
本実施形態の画像投影装置10では、遠方表示領域13cおよび近方表示領域13bに重なる位置に、結像位置調整部である反射プリズム14を配置し、遠方表示領域13cからの第1画像光L1と近方表示領域13bからの第2画像光L2の経路を分岐させ、光路差を生じさせている。反射プリズム14の第1出射部14cおよび第2出射部14dから出射した第1画像光L1および第2画像光L2は、自由曲面ミラー16、自由曲面ミラー17およびウィンドシールド20を介して運転者の視点に到達する。第1画像光L1および第2画像光L2は、反射光学部に含まれる自由曲面ミラー16,17によって光径が拡大して視点に到達するため、運転者は第1画像光L1および第2画像光L2による虚像30,40が所定距離に結像されているように視認する。ここで、虚像30,40の結像位置は、第1画像のほうが第2画像よりも視点位置から遠いものとなっている。
【0044】
本実施形態では、反射プリズム14を結像位置調整部として用い、反射プリズム14を画像表示部13の全表示領域13aに対向させて配置し、第1画像光L1と第2画像光L2の光路に差を生じさせている。これにより、共通の画像表示部13と自由曲面ミラー16,17を用いて画像投影装置10の省スペース化を図りながらも、複数の虚像30,40の結像位置を異ならせることが可能となる。
【0045】
また反射プリズム14では、第1入射部14a、第1反射部14e、第2反射部14f、第1出射部14c、第2入射部14bおよび第2出射部14dの相対的な位置関係が予め外形により定まっている。これにより、1つの反射プリズム14を画像表示部13に対して位置合わせするだけで、複数回の反射による光路差を生じさせるとともに、第1画像光L1と第2画像光L2の光軸合わせも行うことができる。
【0046】
図2に示したように本実施形態の画像投影装置10では、筐体遮光部11bと保持遮光部15aは、第1画像光L1および第2画像光L2の光路を避けて設けられている。したがって、第1画像光L1および第2画像光L2は、筐体遮光部11bと保持遮光部15aに遮られずに両者の間に存在する空間を通過して投影される。また、ウィンドシールド20の上方から車両内部に入射してくる太陽光などの外光は、自由曲面ミラー17で反射されて自由曲面ミラー16方向に進行してきたとしても、筐体遮光部11bと保持遮光部15aによってその大部分が遮断される。これにより、筐体遮光部11bと保持遮光部15aで外光を効果的に遮って、画像表示部13まで到達する外光を低減させ、画像表示部13の温度上昇による劣化を抑制することができる。
【0047】
図2に示した例では、自由曲面ミラー16で反射された第1画像光L1と第2画像光L2は、自由曲面ミラー17に向けて折り返されて進行している。そのため、自由曲面ミラー16に入射する光路と、自由曲面ミラー17に入射する光路は一部が重なり、保持遮光部15aを配置できる空間が限定されている。しかし、保持遮光部15aを保持部15から光路に沿って延伸させることで、限られた空間に保持遮光部15aを容易に位置合わせでき、第1画像光L1および第2画像光L2の通過を妨げることがない。
【0048】
図5は、筐体遮光部11bおよび保持遮光部15aの延伸方向と、第1画像光L1および第2画像光L2の光路の関係について説明する部分拡大図である。
図5中に示した破線は第1画像光L1の光路を模式的に示し、一点鎖線は第2画像光L2の光路を模式的に示している。また、
図5中に示した二点鎖線は、それぞれ筐体遮光部11bと保持遮光部15aの延伸方向に沿った仮想的な延長線を示している。図中に示したように、第1画像光L1と第2画像光L2の光路(経路)が交差する位置を交差領域P1とする。また筐体遮光部11bと保持遮光部15aの先端間に設けられた空間を画像光通過領域P2とする。
【0049】
ここでは、第1画像光L1と第2画像光L2の光路を一本の直線として描いている。しかし、実際の第1画像光L1と第2画像光L2は、画像表示部13において所定の面積で表示されたものであり、進行方向に垂直な方向に所定の幅をもっている。また、第1画像光L1と第2画像光L2は、自由曲面ミラー16で反射されて光径が縮小されながら進行し、自由曲面ミラー16,17の間の中間結像位置F(図示省略)において中間結像されるとしてもよい。
【0050】
図5に示したように、画像光通過領域P2は筐体遮光部11bの先端と保持遮光部15aの先端の間に存在する空間であるため、第1画像光L1と第2画像光L2が遮られずに通過することが可能である。換言すると、画像光通過領域P2を経由しない光は筐体遮光部11bの先端と保持遮光部15aで遮られるため、外部から外光が入射してきても画像表示部13まで到達する光量を抑制することができる。したがって、画像光通過領域P2のサイズが小さくなるように筐体遮光部11bと保持遮光部15aを設計することが好ましい。
【0051】
図5に示した例では、筐体遮光部11bと保持遮光部15aは、自由曲面ミラー16,17の間において画像光通過領域P2に向かって延伸されており、筐体遮光部11bと保持遮光部15aの延長線が画像光通過領域P2で交差している。これにより、第1画像光L1と第2画像光L2を遮らない範囲で、画像光通過領域P2を小さくして、画像表示部13に到達する外光の光量を抑制し、画像表示部13の温度上昇による劣化を抑制することができる。
【0052】
図5では、交差領域P1と画像光通過領域P2が異なる例を示しているが、交差領域P1は第1画像光L1と第2画像光L2が交差する位置であるため、交差領域P1が画像光通過領域P2の範囲内となるように、保持遮光部15aを交差領域P1に向けて延伸させることが好ましい。この場合には、筐体遮光部11bも交差領域P1に向けて延伸させることがさらに好ましい。保持遮光部15aが交差領域P1に向けて延伸されていることで、画像光通過領域P2をさらに小さくすることができる。
【0053】
また、自由曲面ミラー16で反射された第1画像光L1と第2画像光L2を中間結像位置Fで結像させる場合には、第1画像光L1と第2画像光L2の通過する断面積は、自由曲面ミラー16,17の間の中間結像位置Fで最小となる。したがって、中間結像位置Fが画像光通過領域P2の範囲内となるように、保持遮光部15aを中間結像位置Fに向けて延伸させることが好ましい。この場合には、筐体遮光部11bも中間結像位置Fに向けて延伸させることがさらに好ましい。保持遮光部15aが中間結像位置Fに向けて延伸されていることで、画像光通過領域P2をさらに小さくすることができる。
【0054】
上述したように本実施形態の画像投影装置10では、保持部15の少なくとも一部が、第1画像光L1と第2画像光L2の照射方向に沿って延伸されて保持遮光部15aを構成しているため、第1画像光L1と第2画像光L2の照射方向と保持遮光部15aの位置合わせが容易であり、外光による画像表示部13の温度上昇を抑制しながらも、汎用性を向上させて製造工程を簡略化することが可能となる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る画像投影装置10の構造例を示す模式図である。
図6に示すように画像投影装置10は、筐体11と、光源部12と、画像表示部13と、反射プリズム14と、自由曲面ミラー16,17と、保持遮光部18を備えている。
【0056】
保持遮光部18は、遮光性の材料で構成されて、画像表示部13を保持して筐体11に固定する部分であり、その一部が第1画像光L1および第2画像光L2の照射方向に沿って延伸されている。したがって、保持遮光部18は本願発明の保持部の機能も備えている。
図6では画像表示部13を保持する構造については図示を省略している。保持遮光部18の構造は限定されないが、画像表示部13の外周形状と略同一の枠体を用い、当該枠の内部に画像表示部13を篏合させて保持することができる。また、保持遮光部18の一部は筐体11の内壁にまで延長されており(図示省略)、画像表示部13と筐体11の相対的な位置を決めて固定している。
【0057】
本実施形態の画像投影装置10では、保持遮光部18が画像表示部13を保持しているため、画像表示部13と保持遮光部18の相対的な位置関係が決まり、第1画像光L1および第2画像光L2の照射方向と、保持遮光部18の延伸方向の相対的な位置関係も決まる。したがって、保持遮光部18で画像表示部13を保持するだけで、保持遮光部18が第1画像光L1と第2画像光L2を遮らないように位置決めすることができる。
図6では、保持遮光部18を第1画像光L1と第2画像光L2の光路に平行に延伸した例を示しているが、第1画像光L1と第2画像光L2の光路を遮らない形状と長さであれば、保持遮光部18の形状や構造は限定されない。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では保持部15が反射プリズム14を保持する例を示したが、保持部15が光源部12を保持して筐体11に固定し、保持部15から保持遮光部15aが第1画像光L1および第2画像光L2の照射方向に沿って延伸されるとしてもよい。
【0059】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10…画像投影装置
20…ウィンドシールド
30,40…虚像
11…筐体
11a…投影口
11b…筐体遮光部
12…光源部
13…画像表示部
13a…全表示領域
13b…近方表示領域
13c…遠方表示領域
14…反射プリズム
14a…第1入射部
14b…第2入射部
14c…第1出射部
14d…第2出射部
14e…第1反射部
14f…第2反射部
15…保持部
15a,18…保持遮光部
16,17…自由曲面ミラー
L1…第1画像光
L2…第2画像光
P1…交差領域
P2…画像光通過領域