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特開2024-3687通信装置、時刻同期方法、及び通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003687
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】通信装置、時刻同期方法、及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103005
(22)【出願日】2022-06-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】木村 知玄
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 奎介
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA18
5K047BB01
(57)【要約】
【課題】時刻同期の精度を高めることができる通信装置を提供する。
【解決手段】通信装置10は、計時部13及び処理部14を備える。処理部14は、通信相手102が計時している時刻を示す時刻データを要求する。処理部14は、計時部13が計時している時刻と時刻データとに基づいて第1伝送遅延時間hkを取得する。処理部14は、第1伝送遅延時間hkに重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間hcを取得する。処理部14は、時刻データと第2伝送遅延時間hcとに基づいて、計時部13が計時している時刻を通信相手102が計時している時刻に同期させる。通信相手102との通信に要する伝送遅延時間hは、ホップ数ごとに分布する。重みは、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布のうち、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布から第2伝送遅延時間hcを取得させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手と複数の通信経路を介して通信が可能な通信装置であって、
時刻を計時する計時部と、
前記通信相手が計時している時刻を示す時刻データを要求する要求信号を送信し、前記時刻データを示す応答信号を受信する通信部と、
重みを記憶する記憶部と、
前記計時部が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる時刻同期処理を実行する処理部と
を備え、
前記時刻同期処理は、
前記要求信号を送信することにより、前記応答信号を受信する第1処理と、
前記計時部が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて、前記通信相手との通信に要する時間を示す第1伝送遅延時間を取得する第2処理と、
前記第1伝送遅延時間に前記重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する第3処理と、
前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記計時部が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる第4処理と
を含み、
前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布し、
前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる、通信装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記重みづけを行うことにより、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布の平均値を取得する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布と、前記ホップ数ごとの伝送率とを変数として含み、前記伝送率は、前記伝送遅延時間に含まれる各時間が発生する割合を示す、請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
通信装置が計時している時刻を、前記通信装置の通信相手が計時している時刻に同期させる時刻同期方法であって、
前記通信装置は前記通信相手と複数の通信経路を介して通信が可能であり、
前記時刻同期方法は、
前記通信相手が計時している時刻を示す時刻データを要求する要求信号を送信することにより、前記時刻データを示す応答信号を受信する工程と、
前記通信装置が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて、前記通信相手との通信に要する時間を示す第1伝送遅延時間を取得する工程と、
前記第1伝送遅延時間に重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する工程と、
前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記通信装置が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる工程と
を包含し、
前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布し、
前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる、時刻同期方法。
【請求項5】
複数の通信装置により通信ネットワークが形成される通信システムであって、
前記複数の通信装置は、第1通信装置と、前記第1通信装置の通信相手である第2通信装置とを含み、前記第1通信装置は、前記第2通信装置と複数の通信経路を介して通信が可能であり、
前記第1通信装置は、
時刻を計時する計時部と、
前記第2通信装置が計時している時刻を示す時刻データを要求する要求信号を送信し、前記時刻データを示す応答信号を受信する通信部と、
重みを記憶する記憶部と、
前記計時部が計時している時刻を前記第2通信装置が計時している時刻に同期させる時刻同期処理を実行する処理部と
を備え、
前記時刻同期処理は、
前記要求信号を送信することにより、前記応答信号を受信する第1処理と、
前記計時部が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて、前記第2通信装置との通信に要する時間を示す第1伝送遅延時間を取得する第2処理と、
前記第1伝送遅延時間に前記重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する第3処理と、
前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記計時部が計時している時刻を前記第2通信装置が計時している時刻に同期させる第4処理と
を含み、
前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布し、
前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる、通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、時刻同期方法、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスタ装置とスレーブ装置との間で時刻同期を行う通信システムが開示されている。より具体的には、マスタ装置が時刻の同期元であり、スレーブ装置が時刻の同期先である。マスタ装置とスレーブ装置とは、第1の無線中継装置と、第2の無線中継装置とを介して通信を行う。第1の無線中継装置と第2の無線中継装置とは、無線通信を行う。マスタ装置とスレーブ装置とが時刻同期を行う際に、マスタ装置は時刻同期パケットを第1の無線中継装置へ送信する。時刻同期パケットは、第1の無線中継装置から第2の無線中継装置を経由してスレーブ装置へ送信される。
【0003】
詳しくは、時刻同期パケットは、補正値を含む。補正値は、第1の無線中継装置において時刻同期パケットが滞留した時間と、第2の無線中継装置において時刻同期パケットが滞留した時間との総和を示す。更に、時刻同期パケットの補正値は、第1の無線中継装置と第2の無線中継装置との間の伝送遅延時間により調整される。この結果、マスタ装置とスレーブ装置との間の時刻同期の精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/072038号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の通信システムは、マスタ装置とスレーブ装置との間で時刻同期を行う際の通信経路が固定されている。そのため、特許文献1の時刻同期方法は、複数の通信経路を介して互いに通信が可能な2つの通信装置の間で時刻同期を行うシステムに適用することができない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の通信経路を介して互いに通信が可能な2つの通信装置の間での時刻同期の精度を高めることができる通信装置、時刻同期方法、及び通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、通信装置は、通信相手と複数の通信経路を介して通信が可能である。当該通信装置は、計時部と、通信部と、記憶部と、処理部とを備える。前記計時部は、時刻を計時する。前記通信部は、要求信号を送信し、応答信号を受信する。前記要求信号は、前記通信相手が計時している時刻を示す時刻データを要求する。前記応答信号は、前記時刻データを示す。前記記憶部は、重みを記憶する。前記処理部は、時刻同期処理を実行する。前記時刻同期処理は、前記計時部が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる処理を示す。前記時刻同期処理は、第1処理と、第2処理と、第3処理と、第4処理とを含む。前記第1処理は、前記要求信号を送信することにより、前記応答信号を受信する処理を示す。前記第2処理は、前記計時部が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて第1伝送遅延時間を取得する処理を示す。前記第1伝送遅延時間は、前記通信相手との通信に要する時間を示す。前記第3処理は、前記第1伝送遅延時間に前記重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する処理を示す。前記第4処理は、前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記計時部が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる処理を示す。前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布する。前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる。
【0008】
ある実施形態において、前記処理部は、前記重みづけを行うことにより、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布の平均値を取得する。
【0009】
ある実施形態において、前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布と、前記ホップ数ごとの伝送率とを変数として含む。前記伝送率は、前記伝送遅延時間に含まれる各時間が発生する割合を示す。
【0010】
本発明の一局面によれば、時刻同期方法は、通信装置が計時している時刻を、前記通信装置の通信相手が計時している時刻に同期させる方法である。前記通信装置は前記通信相手と複数の通信経路を介して通信が可能である。当該時刻同期方法は、前記通信相手が計時している時刻を示す時刻データを要求する要求信号を送信することにより、前記時刻データを示す応答信号を受信する工程と、前記通信装置が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて、前記通信相手との通信に要する時間を示す第1伝送遅延時間を取得する工程と、前記第1伝送遅延時間に重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する工程と、前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記通信装置が計時している時刻を前記通信相手が計時している時刻に同期させる工程とを包含する。前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布する。前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる。
【0011】
本発明の一局面によれば、通信システムは、複数の通信装置により通信ネットワークが形成される通信システムである。前記複数の通信装置は、第1通信装置と、前記第1通信装置の通信相手である第2通信装置とを含む。前記第1通信装置は、前記第2通信装置と複数の通信経路を介して通信が可能である。前記第1通信装置は、計時部と、通信部と、記憶部と、処理部とを備える。前記計時部は、時刻を計時する。前記通信部は、要求信号を送信し、応答信号を受信する。前記要求信号は、前記第2通信装置が計時している時刻を示す時刻データを要求する。前記応答信号は、前記時刻データを示す。前記記憶部は、重みを記憶する。前記処理部は、時刻同期処理を実行する。前記時刻同期処理は、前記計時部が計時している時刻を前記第2通信装置が計時している時刻に同期させる処理を示す。前記時刻同期処理は、第1処理と、第2処理と、第3処理と、第4処理とを含む。前記第1処理は、前記要求信号を送信することにより、前記応答信号を受信する処理を示す。前記第2処理は、前記計時部が計時している時刻と前記時刻データとに基づいて、第1伝送遅延時間を取得する処理を示す。前記第1伝送遅延時間は、前記第2通信装置との通信に要する時間を示す。前記第3処理は、前記第1伝送遅延時間に前記重みを付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間を取得する処理を示す。前記第4処理は、前記時刻データと前記第2伝送遅延時間とに基づいて、前記計時部が計時している時刻を前記第2通信装置が計時している時刻に同期させる処理を示す。前記通信相手との通信に要する伝送遅延時間は、ホップ数ごとに分布する。前記重みは、前記ホップ数ごとの前記伝送遅延時間の分布のうち、最も前記ホップ数が小さい前記伝送遅延時間の分布から前記第2伝送遅延時間を取得させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る通信装置、時刻同期方法、及び通信システムによれば、複数の通信経路を介して互いに通信が可能な2つの通信装置の間での時刻同期の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る通信システムを示す図である。
図2】(a)は、要求信号の一例を示す図である。(b)は、応答信号の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る第1通信装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る第2通信装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る通信システムの一例を示す図である。
図6図5に示す通信システムに含まれる通信経路の一例を示すシーケンス図である。
図7図5に示す通信システムに含まれる通信経路の他例を示すシーケンス図である。
図8図5に示す通信システムに含まれる通信経路の他例を示すシーケンス図である。
図9図5に示す通信システムに含まれる通信経路の他例を示すシーケンス図である。
図10】本発明の実施形態に係る時刻同期方法を示す図である。
図11】伝送遅延時間を示す図である。
図12】(a)は、要求信号の他例を示す図である。(b)は、応答信号の他例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る通信システムの第1適用例を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る通信システムの第2適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面(図1図14)を参照して本発明の通信装置、時刻同期方法、及び通信システムに係る実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合がある。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0015】
図1は、本実施形態の通信システム100を示す図である。通信システム100は、所定の無線通信方式で無線通信を行う複数の通信装置10を含む。通信装置10は、例えば、パケット通信を行う。複数の通信装置10は、無線通信ネットワークNWを形成する。具体的には、無線通信ネットワークNWは、マルチホップ型ネットワーク又はメッシュ型ネットワークのような通信経路PTが動的に変化し得る通信ネットワークである。無線通信方式は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)方式、Zigbee方式、又はThread方式である。無線通信ネットワークNWは、例えば、bluetooth meshネットワーク、Zigbeeメッシュネットワーク、又はThreadメッシュネットワークである。
【0016】
本実施形態では、通信装置10はブロードキャスト方式で無線通信を行う。したがって、通信システム100に含まれる一の通信装置10が送信する信号(電波)は、通信システム100に含まれる他の通信装置10のうち、一の通信装置10の通信範囲内に位置する全ての通信装置10によって受信される。通信範囲は、通信装置10から送信される電波の到達範囲を示す。本実施形態では、通信システム100に含まれる通信装置10のそれぞれの通信範囲内に、通信システム100に含まれる他の全ての通信装置10が配置される。
【0017】
本実施形態において、複数の通信装置10は、第1通信装置101~第4通信装置104(4つの通信装置10)を含み、第2通信装置102は、基準時刻を保持している。基準時刻は、通信システム100に含まれる他の通信装置10が計時している時刻に対して基準となる時刻を示す。
【0018】
ここでは、第2通信装置102が計時している時刻が、第1通信装置101、第3通信装置103及び第4通信装置104が計時している時刻に対して基準となる。第2通信装置102は、例えば、データサーバのような外部サーバが管理している時刻に、自機が計時している時刻を同期させてもよい。この場合、第2通信装置102はゲートウェイ装置であってもよい。
【0019】
本実施形態において、第1通信装置101、第3通信装置103、及び第4通信装置104は、時刻同期処理を実行する。時刻同期処理は、他の通信装置10(通信相手)が計時している時刻に自機が計時している時刻を同期させる処理を示す。ここでは、第1通信装置101、第3通信装置103、及び第4通信装置104が、時刻同期処理により、自機が計時している時刻を第2通信装置102(通信相手)が計時している時刻(基準時刻)に同期させる。
【0020】
なお、第1通信装置101、第3通信装置103、及び第4通信装置104は、自機が計時している時刻を、第2通信装置102が計時している時刻に対して直接同期させてもよいし、間接的に同期させてもよい。例えば、第1通信装置101が、第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行し、第3通信装置103及び第4通信装置104が、第1通信装置101との間で時刻同期処理を実行してもよい。
【0021】
続いて、図1を参照して、時刻同期処理を更に説明する。時刻同期処理を実行する通信装置10は、通信相手の通信装置10を最終宛先とする要求信号RSを送信する。通信相手の通信装置10は、要求信号RSを受信したことに応じて、要求信号RSの送信元を最終宛先とする応答信号ASを送信する。要求信号RSは、通信相手に対し、通信相手が計時している時刻を示す時刻データを要求する命令を含む。応答信号ASには時刻データが含まれる。
【0022】
例えば、第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻を同期させる場合、すなわち、第1通信装置101が計時している時刻を、第2通信装置102が計時している時刻に同期させる場合、第1通信装置101から、第2通信装置102を最終宛先とする要求信号RSが送信され、第2通信装置102から、第1通信装置101を最終宛先とする応答信号ASが送信される。
【0023】
具体的には、時刻同期処理を実行する通信装置10と、通信相手の通信装置10とは、複数の通信経路PTを介して通信が可能である。したがって、要求信号RSは、複数の通信経路PTを介して通信相手に送信される。同様に、応答信号ASは、複数の通信経路PTを介して、時刻同期処理を実行する通信装置10に送信される。
【0024】
例えば、第1通信装置101と第2通信装置102との間で通信を行う場合、第1通信装置101と第2通信装置102との間の通信経路PTには、以下の表1及び表2に示す第1経路PT1~第10経路PT10が含まれる。表1は、要求信号RSの通信経路PT(往路)を示す。表2は、応答信号ASの通信経路PT(復路)を示す。表1に示すように、要求信号RSの通信経路PT(往路)には、第1経路PT1~第5経路PT5が含まれる。表2に示すように、応答信号ASの通信経路PT(復路)には、第6経路PT6~第10経路PT10が含まれる。
【表1】
【表2】
【0025】
第1経路PT1及び第6経路PT6は、第1通信装置101と第2通信装置102とが直接通信を行う経路である。第2経路PT2~第5経路PT5及び第7経路PT7~第10経路PT10において、第3通信装置103及び第4通信装置104は、中継装置(リレーノード)として機能する。つまり、第2経路PT2~第5経路PT5及び第7経路PT7~第10経路PT10は、第1通信装置101と第2通信装置102とが少なくとも一つの中継装置(他の通信装置10)を介して通信を行う経路である。したがって、第1通信装置101と第2通信装置102との間の通信経路PTには、中継装置を介さない経路(第1経路PT1及び第6経路PT6)と、少なくとも1つの中継装置を介する経路(第2経路PT2~第5経路PT5及び第7経路PT7~第10経路PT10)とが含まれる。
【0026】
以下の表3は、第1経路PT1~第10経路PT10のホップ数を示す。ホップ数は、通信経路PTに介在する中継装置の数を示す。表3に示すように、ホップ数は、0と、自然数とを含む。
【表3】
【0027】
第2通信装置102は、第1経路PT1~第5経路PT5を介して送信される要求信号RSのうち、最初に受信した要求信号RSに基づいて応答処理を実行し、他の要求信号RSについては、受信後に破棄する。同様に、第1通信装置101は、最初に受信した応答信号ASに基づいて所定の処理を実行し、他の応答信号ASについては、受信後に破棄する。
【0028】
なお、第2通信装置102は、基準時刻として、標準時刻を保持してもよい。具体的には、第2通信装置102は、NTPサーバから標準時刻を取得してもよい。この場合、第2通信装置102はゲートウェイ装置であってもよい。あるいは、第2通信装置102は、GPS衛星、GNSS衛星、又は電波時計送信局のような時刻送信局から標準時刻を取得してもよい。
【0029】
続いて、図2(a)及び図2(b)を参照して、要求信号RS及び応答信号ASを説明する。図2(a)は、要求信号RSの一例を示す図である。図2(b)は、応答信号ASの一例を示す図である。詳しくは、図2(a)は、第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する際に第1通信装置101から送信される要求信号RSを示す。図2(b)は、第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する際に第2通信装置102から送信される応答信号ASを示す。
【0030】
図2(a)に示すように、要求信号RSは、自機の識別情報DT1と、要求信号RSの送信元の識別情報DT2と、送信先(宛先)の識別情報DT3と、最終宛先の識別情報DT4と、命令情報DT5とを含む。識別情報DT1~DT4は、例えば、アドレス情報である。具体的には、識別情報DT1~DT4は、MACアドレスを示してもよい。命令情報DT5は、最終宛先の通信装置10(通信相手)が計時している時刻を示す時刻データを送信させる命令を示す。
【0031】
図2(a)に示す例では、自機の識別情報DT1は、第1通信装置101の識別情報を示す。要求信号RSの送信元の識別情報DT2は、第1通信装置101の識別情報を示す。図1を参照して説明したように、本実施形態の通信装置10は、ブロードキャスト方式で無線通信を行う。したがって、送信先(宛先)の識別情報DT3は、宛先のMACアドレスとして、すべてのビットが1であるアドレス(FFFF:FFFF:FFFF)を示す。最終宛先の識別情報DT4は、第2通信装置102の識別情報を示す。
【0032】
図2(b)に示すように、応答信号ASは、自機の識別情報DT11と、応答信号ASの送信元の識別情報DT12と、送信先(宛先)の識別情報DT13と、最終宛先の識別情報DT14と、時刻データDT15とを含む。識別情報DT11~DT14、例えば、アドレス情報である。具体的には、識別情報DT11~DT14は、MACアドレスを示してもよい。時刻データDT15は、最終宛先の通信装置10(通信相手)が計時していた時刻を示す。
【0033】
図2(b)に示す例では、自機の識別情報DT11は、第2通信装置102の識別情報を示す。応答信号ASの送信元の識別情報DT12は、第2通信装置102の識別情報を示す。既に説明したように、本実施形態の通信装置10は、ブロードキャスト方式で無線通信を行う。したがって、送信先(宛先)の識別情報DT13は、宛先のMACアドレスとして、すべてのビットが1であるアドレスを示す。最終宛先の識別情報DT14は、第1通信装置101の識別情報を示す。
【0034】
続いて、図3を参照して、第1通信装置101の構成を説明する。図3は、本実施形態の第1通信装置101の構成を示すブロック図である。図3に示すように、第1通信装置101は、通信部11と、記憶部12と、計時部13と、制御部14とを備える。
【0035】
通信部11は、同じ通信規格に準拠した通信機器と無線通信が可能である。具体的には、通信部11は、他の通信装置10との間で無線通信を行う。第1通信装置101が時刻同期処理を実行する際に、通信部11は、要求信号RSを送信し、応答信号ASを受信する。
【0036】
通信部11は、例えば、BLE、ZigBee、又はThreadのような近距離無線通信規格に準拠した無線通信を行う。通信部11は、例えば、無線LANアダプタを含む。なお、第1通信装置101が他の通信装置10の時刻同期元となる場合、通信部11は、要求信号RSを受信し、応答信号ASを送信する。
【0037】
記憶部12は、種々のコンピュータプログラム及び種々のデータを記憶する。種々のコンピュータプログラムは、例えば、時刻同期処理を実行するためのコンピュータプログラムを含む。種々のデータは、例えば、自機の識別情報と、通信相手(最終宛先)の識別情報と、重みf(h、p)を示す重みデータとを含む。重みf(h、p)は、時刻同期処理に用いられる。重みf(h、p)については、図11を参照して後述する。記憶部12は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びフラッシュメモリのような半導体メモリを有する。
【0038】
なお、無線通信方式がユニキャスト方式又はマルチキャスト方式である場合、記憶部12は、送信先(宛先)の識別情報を更に含む。この場合、記憶部12は、予め定められた通信経路PTを示す情報を更に記憶してもよい。
【0039】
計時部13は、時刻を計時する。制御部14は、計時部13が計時する時刻に基づいて、現在の時刻を取得する。計時部13は、例えば、水晶発振器を含む。
【0040】
制御部14は、自機の各要素を制御する。例えば、制御部14は、通信部11、記憶部12、及び計時部13を制御する。制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のようなプロセッサを有する。プロセッサは、記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、自機の各要素を制御する。なお、制御部14と記憶部12とによりマイクロコンピュータが構成されてもよい。
【0041】
制御部14は、種々の処理を実行する。具体的には、プロセッサが、記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを実行して、種々の処理を実行する。例えば、制御部14は、時刻同期処理を実行する。制御部14は、「処理部」の一例である。制御部14は、時刻同期処理を実行することにより、計時部13が計時している時刻を通信相手(ここでは、第2通信装置102)が計時している時刻に同期させる。
【0042】
なお、第3通信装置103及び第4通信装置104の構成は、第1通信装置101の構成と同様であるため、その説明は割愛する。
【0043】
続いて、図4を参照して、第2通信装置102の構成を説明する。図4は、本実施形態の第2通信装置102の構成を示すブロック図である。図4に示すように、第2通信装置102は、第1通信部21と、第2通信部22と、記憶部23と、計時部24と、制御部25とを備える。
【0044】
第1通信部21は、同じ通信規格に準拠した通信機器と無線通信が可能である。具体的には、第1通信部21は、他の通信装置10との間で無線通信を行う。第1通信装置101が時刻同期処理を実行する際に、第1通信部21は、要求信号RSを受信し、応答信号ASを送信する。第1通信部21は、例えば、BLE、ZigBee、又はThreadのような近距離無線通信規格に準拠した無線通信を行う。第1通信部21は、例えば、無線LANアダプタを含む。
【0045】
第2通信部22は、外部サーバGSとの間で通信を行う。外部サーバGSは、例えば、データサーバ又はNTPサーバであってもよい。第2通信部22は、例えば、4G網又は5G網のような広域の通信が可能な通信モジュールを含む。
【0046】
記憶部23は、種々のコンピュータプログラム及び種々のデータを記憶する。種々のコンピュータプログラムは、例えば、要求信号RSに基づいて応答処理を実行するためのコンピュータプログラムを含む。ここで、応答処理は、要求信号RSに基づいて応答信号ASを生成し、生成した応答信号ASを第1通信部21から送信させる処理を含む。種々のデータは、例えば、自機の識別情報と、通信相手(最終宛先)の識別情報とを含む。
【0047】
記憶部23は、例えば、ROM、RAM、及びフラッシュメモリのような半導体メモリを有する。なお、無線通信方式がユニキャスト方式又はマルチキャスト方式である場合、記憶部23は、送信先(宛先)の識別情報を更に含む。この場合、記憶部23は、予め定められた通信経路PTを示す情報を更に記憶してもよい。
【0048】
計時部24は、時刻を計時する。制御部25は、計時部24が計時する時刻に基づいて、現在の時刻を取得する。計時部24は、例えば、水晶発振器を含む。
【0049】
制御部25は、自機の各要素を制御する。例えば、制御部25は、第1通信部21、第2通信部22、記憶部23、及び計時部24を制御する。制御部25は、例えばCPU又はMPUのようなプロセッサを有する。プロセッサは、記憶部23に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、自機の各要素を制御する。なお、制御部25と記憶部23とによりマイクロコンピュータが構成されてもよい。
【0050】
続いて、制御部25が実行する処理について説明する。制御部25は、第1通信部21が要求信号RSを受信すると、応答処理を実行する。例えば、制御部25は、計時部24が計時する時刻に基づいて、要求信号RSを受信した時刻t1を取得する。更に、制御部25は、計時部24が計時する時刻に基づいて、応答信号ASを送信する直前の時刻t2を取得する。そして、制御部25は、時刻t1を示す第1時刻データと時刻t2を示す第2時刻データとを含む応答信号ASを第1通信部21から送信させる。
【0051】
なお、制御部25は、計時部24が計時している時刻を外部サーバGSが計時している時刻に同期させる処理を実行してもよい。例えば、外部サーバGSがNTPサーバである場合、第2通信装置102は、計時部24が計時している時刻を標準時刻に同期させることができる。
【0052】
続いて、図5図11を参照して、時刻同期処理を説明する。図5は、本実施形態の通信システム100の一例を示す図である。図5に示す通信システム100は、第1通信装置101~第3通信装置103を含む。
【0053】
図5に示す通信システム100において、第1通信装置101と第2通信装置102との間の通信経路PTには、以下の表4及び表5に示す第11経路PT11~第14経路PT14が含まれる。表4は、要求信号RSの通信経路PT(往路)を示す。表5は、応答信号ASの通信経路PT(復路)を示す。表4に示すように、要求信号RSの通信経路PT(往路)には、第11経路PT11及び第12経路PT12が含まれる。表5に示すように、応答信号ASの通信経路PT(復路)には、第13経路PT13及び第14経路PT14が含まれる。
【表4】
【表5】
【0054】
したがって、往復の通信経路PTには、以下の表6に示す4つの経路(第15経路PT15~第18経路PT18)が含まれる。ホップ数ごとに往復の通信経路PTを纏めた結果を表7に示す。表7に示すように、ホップ数0の通信経路PTには、第15経路PT15が含まれる。ホップ数1の通信経路PTには、第16経路PT16及び第17経路PT17が含まれる。ホップ数2の通信経路PTには、第18経路PT18が含まれる。
【表6】
【表7】
【0055】
続いて、図6図9を参照して、伝送遅延時間hを説明する。伝送遅延時間hは、2つの通信装置10間の通信に要する時間を示す。具体的には、伝送遅延時間hは、一の通信装置10から送信された要求信号RSが他の通信装置10(通信相手)によって受信されるまでの第1時間H1と、他の通信装置10(通信相手)から送信された応答信号ASが一の通信装置10によって受信されるまでの第2時間H2との合計時間を示す。図6は、図5に示す通信システム100に含まれる通信経路PTの一例を示すシーケンス図である。詳しくは、図6は、表6に示す第15経路PT15(ホップ数0)を示す。
【0056】
図6において、時刻t0は、第1通信装置101から要求信号RSが送信される際の時刻を示す。時刻t1は、図4を参照して説明したように、第2通信装置102が要求信号RSを受信した時刻を示す。時刻t2は、図4を参照して説明したように、第2通信装置102が応答信号ASを送信する直前の時刻を示す。時刻t3は、第1通信装置101が応答信号ASを受信した時刻を示す。なお、図7図9に示す時刻t0~時刻t3も同様である。
【0057】
図6に示すように、第1通信装置101は、時刻同期処理の実行時に、まず要求信号RSを送信する(ステップS1)。具体的には、制御部14が要求信号RSを生成し、生成した要求信号RSを通信部11に送信させる。更に、制御部14は、計時部13が計時する時刻に基づいて、要求信号RSを送信する際の時刻t0を取得する。そして、制御部14は、時刻t0を記憶部12に記憶させる。
【0058】
第15経路PT15において、第1通信装置101から送信された要求信号RSは、第2通信装置102によって直接受信される。第2通信装置102において、制御部25は、第1通信部21が要求信号RSを受信した際の時刻t1を、計時部24が計時する時刻から取得する。そして、制御部25は、応答処理を実行する(ステップS2)。この結果、制御部25は、応答信号ASを生成し、生成した応答信号ASを第1通信部21に送信させる。具体的には、制御部25は、応答信号ASを送信する直前の時刻t2を、計時部24が計時する時刻から取得し、時刻t1を示す第1時刻データと時刻t2を示す第2時刻データとを含む応答信号ASを第1通信部21から送信させる。
【0059】
第15経路PT15において、第2通信装置102から送信された応答信号ASは、第1通信装置101によって直接受信される(ステップS3)。制御部14は、通信部11が応答信号ASを受信した際の時刻t3を、計時部13が計時する時刻から取得する。その後、制御部14は、時刻t0~時刻t3に基づいて、計時部13が計時する時刻を、第2通信装置102の計時部24が計時する時刻に同期させる(ステップS4)。
【0060】
第15経路PT15において、伝送遅延時間hは、第1通信装置101から送信された要求信号RSが第2通信装置102(通信相手)によって受信されるまでに要した第1時間H1と、第2通信装置102(通信相手)から送信された応答信号ASが第1通信装置101によって受信されるまでに要した第2時間H2との合計時間を示す。
【0061】
したがって、伝送遅延時間hは、以下の式(1)で表すことができる。また、第1時間H1及び第2時間H2はそれぞれ以下の式(2)及び(3)で表すことができる。なお、表6に示す第16経路PT16~第18経路PT18の伝送遅延時間hも、第15経路PT15と同様に、以下の式(1)で表すことができる。
h=H1+H2=(t1-t0)+(t3-t2) ・・・ (1)
H1=t1-t0 ・・・ (2)
H2=t3-t2 ・・・ (3)
【0062】
伝送遅延時間hは、以下の式(4)で表すこともできる。すなわち、第1通信装置101(要求信号RSの送信元の通信装置10)が要求信号RSを送信してから応答信号ASを受信するまでの時間(t3-t0)から、第2通信装置102(通信相手)が応答処理を実行するのに要した時間(t2-t1)を除いた時間が、伝送遅延時間hである。なお、以下の説明において、第2通信装置102(通信相手)が応答処理を実行するのに要した時間を、「応答処理時間」と記載する場合がある。
h=t3-t0-(t2-t1) ・・・ (4)
【0063】
図7は、図5に示す通信システム100に含まれる通信経路PTの他例を示すシーケンス図である。詳しくは、図7は、表6に示す第16経路PT16(ホップ数1)を示す。
【0064】
図7に示すように、第1通信装置101が要求信号RSを送信すると(ステップS11)、第1通信装置101から送信された要求信号RSは、第15経路PT15と同様に、第2通信装置102によって直接受信される。その結果、第2通信装置102が応答処理を実行して(ステップS12)、応答信号ASを送信する。
【0065】
第16経路PT16において、第2通信装置102から送信された応答信号ASは、第3通信装置103によって受信される。第3通信装置103は、受信した応答信号ASを転送する(ステップS13)。詳しくは、第3通信装置103の制御部14は、応答信号ASから最終宛先の識別情報DT14を取得し、最終宛先の識別情報DT14が自機の識別情報と一致するか否かを判定する。第3通信装置103の制御部14は、最終宛先の識別情報DT14が自機の識別情報と一致しないと判定した場合、応答信号ASをブロードキャスト方式で送信する。
【0066】
第16経路PT16において、第3通信装置103よって転送された応答信号ASは、第1通信装置101によって受信される(ステップS14)。第1通信装置101は、応答信号ASを受信した際の時刻t3を、自機の計時部13が計時する時刻から取得する。その後、第1通信装置101は、時刻t0~時刻t3に基づいて、自機の計時部13が計時する時刻を、第2通信装置102の計時部24が計時する時刻に同期させる(ステップS15)。
【0067】
第16経路PT16の伝送遅延時間hは、第16経路PT16のホップ数(ホップ数1)が第15経路PT15のホップ数(ホップ数0)と比べて大きいため、第15経路PT15よりも長くなり易い。具体的には、復路(第14経路PT14)に中継装置(第3通信装置103)が含まれるため、第2時間H2が長くなり易い。
【0068】
図8は、図5に示す通信システム100に含まれる通信経路PTの他例を示すシーケンス図である。詳しくは、図8は、表6に示す第17経路PT17(ホップ数1)を示す。
【0069】
図8に示すように、第1通信装置101が要求信号RSを送信すると(ステップS21)、第17経路PT17では、第1通信装置101から送信された要求信号RSは、第3通信装置103によって受信される。第3通信装置103は、受信した要求信号RSを転送する(ステップS22)。
【0070】
第17経路PT17において、第3通信装置103よって転送された要求信号RSは、第2通信装置102によって受信される。その結果、第2通信装置102が応答処理を実行して(ステップS23)、応答信号ASを送信する。
【0071】
第17経路PT17において、第2通信装置102から送信された応答信号ASは、第15経路PT15と同様に、第1通信装置101によって直接受信される(ステップS24)。
【0072】
第1通信装置101は、応答信号ASを受信した際の時刻t3を、自機の計時部13が計時する時刻から取得する。その後、第1通信装置101は、時刻t0~時刻t3に基づいて、自機の計時部13が計時する時刻を、第2通信装置102の計時部24が計時する時刻に同期させる(ステップS25)。
【0073】
第17経路PT17の伝送遅延時間hは、第16経路PT16と同様に、第17経路PT17のホップ数(ホップ数1)が第15経路PT15のホップ数(ホップ数0)と比べて大きいため、第15経路PT15よりも長くなり易い。具体的には、往路(第12経路PT12)に中継装置(第3通信装置103)が含まれるため、第1時間H1が長くなり易い。
【0074】
図9は、図5に示す通信システム100に含まれる通信経路PTの他例を示すシーケンス図である。詳しくは、図9は、表6に示す第18経路PT18(ホップ数2)を示す。
【0075】
図9に示すように、第1通信装置101が要求信号RSを送信すると(ステップS31)、第1通信装置101から送信された要求信号RSは、第17経路PT17と同様に、第3通信装置103によって受信される。第3通信装置103は、受信した要求信号RSを転送する(ステップS32)。
【0076】
第18経路PT18において、第3通信装置103よって転送された要求信号RSは、第2通信装置102によって受信される。その結果、第2通信装置102が応答処理を実行して(ステップS33)、応答信号ASを送信する。
【0077】
第18経路PT18において、第2通信装置102から送信された応答信号ASは、第16経路PT16と同様に、第3通信装置103によって受信される。第3通信装置103は、受信した応答信号ASを転送する(ステップS34)。
【0078】
第18経路PT18において、第3通信装置103よって転送された応答信号ASは、第1通信装置101によって受信される(ステップS35)。第1通信装置101は、応答信号ASを受信した際の時刻t3を、自機の計時部13が計時する時刻から取得する。その後、第1通信装置101は、時刻t0~時刻t3に基づいて、自機の計時部13が計時する時刻を、第2通信装置102の計時部24が計時する時刻に同期させる(ステップS36)。
【0079】
第18経路PT18の伝送遅延時間hは、第18経路PT18のホップ数(ホップ数2)が第16経路PT16及び第17経路PT17のホップ数(ホップ数1)と比べて大きいため、第16経路PT16及び第17経路PT17よりも長くなり易い。具体的には、往路(第12経路PT12)及び復路(第14経路PT14)にそれぞれ中継装置(第3通信装置103)が含まれるため、第1時間H1及び第2時間H2がいずれも長くなり易い。
【0080】
続いて、図10を参照して、本実施形態の時刻同期方法を説明する。図10は、本実施形態の時刻同期方法を示す図である。図10に示す時刻同期方法は、例えば、第1通信装置101の制御部14が実行する。以下、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合を例に時刻同期方法を説明する。換言すると、以下では、図10を参照して、第1通信装置101の制御部14が実行する時刻同期処理を説明する。
【0081】
図10に示すように、時刻同期方法(時刻同期処理)は、第1工程S101(第1処理)、第2工程S102(第2処理)、第3工程S103(第3処理)、及び第4工程S104(第4処理)を含む。
【0082】
制御部14は、例えば、計時部13が計時している時刻を参照して、一定時間ごと(例えば、1時間ごと)に時刻同期処理を実行する。制御部14は、時刻同期処理を開始すると、第1工程S101において、要求信号RSを送信することにより、応答信号ASを受信する(第1処理)。ここでは、第2通信装置102が要求信号RSを受信して、応答信号ASを送信する。また、制御部14は、図6図9を参照して説明したように、要求信号RSを送信する際の時刻t0と、応答信号ASを受信した際の時刻t3とを記憶部12に記憶させる。
【0083】
制御部14は、第2工程S102において、自機(第1通信装置101)の計時部13が計時している時刻と、応答信号ASに含まれる時刻データとに基づいて、第1伝送遅延時間hkを取得する(第2処理)。具体的には、時刻データは、図4を参照して説明した第1時刻データと及び第2時刻データを含む。すなわち、時刻データは、図6図9を参照して説明した時刻t1及時刻t2を示す。制御部14は、応答信号ASから時刻t1及び時刻t2を取得し、時刻t0~時刻t3に基づいて、第1伝送遅延時間hkを計測してもよい。例えば、制御部14は、以下の式(5)に基づいて、第1伝送遅延時間hkを計測し得る。
hk=H1+H2=(t1-t0)+(t3-t2) ・・・ (5)
【0084】
制御部14は、第3工程S103において、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p)を付与する重みづけを行うことにより、第2伝送遅延時間hcを取得する(第3処理)。重みf(h、p)については、図11を参照して後述する。
【0085】
制御部14は、第4工程S104において、応答信号ASから取得した時刻データと、第2伝送遅延時間hcとに基づいて、自機(第1通信装置101)の計時部13が計時している時刻を第2通信装置102(通信相手)の計時部24が計時している時刻に同期させる(第4処理)。
【0086】
例えば、制御部14は、自機(第1通信装置101)の計時部13が計時している時刻と、第2通信装置102(通信相手)の計時部24が計時している時刻とのずれ量の推定値δpに基づいて、自機(第1通信装置101)の計時部13が計時している時刻を第2通信装置102(通信相手)の計時部24が計時している時刻に同期させてもよい。具体的には、制御部14は、ずれ量の推定値δpを以下の式(6)に基づいて取得してもよい。
δp=t1-t0-(hc/2) (6)
【0087】
なお、本実施形態において、制御部14は、式(5)に基づいて、第1伝送遅延時間hkを計測したが、制御部14は、以下の式(7)に基づいて、第1伝送遅延時間hkを計測してもよい。
hk=t3-t0-(t2-t1) ・・・ (7)
【0088】
式(7)に基づいて第1伝送遅延時間hkを計測する場合、応答処理時間(t2-t1)は、記憶部12に予め記憶されていてもよい。この場合、応答信号ASには、時刻データとして、時刻t1を示す第1時刻データと、時刻t2を示す第2時刻データとのうち、第1時刻データのみが含まれてもよい。つまり、第2通信装置102は、時刻t1と時刻t2とのうち、時刻t1のみを示す時刻データを含む応答信号ASを送信してもよい。
【0089】
続いて、図11を参照して、伝送遅延時間hを説明する。図11は、伝送遅延時間hを示す図である。詳しくは、図11は、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する際の伝送遅延時間hを示す。すなわち、図10は、表6に示す第15経路PT15~第18経路PT18の伝送遅延時間hを示す。
【0090】
図11において、横軸は伝送遅延時間hを示し、縦軸は伝送遅延時間hの伝送率pを示す。伝送率pは、伝送遅延時間hに含まれる各時間が発生する割合を示す。換言すると、伝送率pは、計測され得る各第1伝送遅延時間hkが発生する割合を示す。
【0091】
図11に示すように、伝送遅延時間hは、一定値ではなく、分布する。具体的には、伝送遅延時間hはホップ数ごとに分布する。例えば、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合、3つの分布(第1分布f0(h)、第2分布f1(h)、及び第3分布f2(h))が発生し得る。このように、伝送遅延時間hは、ホップ数ごとに一定値となるのではなく、ホップ数ごとに分布する。
【0092】
ここで、第1分布f0(h)は、ホップ数0の伝送遅延時間hの分布を示す。第2分布f1(h)は、ホップ数1の伝送遅延時間hの分布を示す。第3分布f2(h)は、ホップ数2の伝送遅延時間hの分布を示す。すなわち、第1分布f0(h)は、表7及び図6を参照して説明した第15経路PT15の伝送遅延時間hの分布を示す。第2分布f1(h)は、表7、図7及び図8を参照して説明した第16経路PT16及び第17経路PT17の伝送遅延時間hの分布を示す。第3分布f2(h)は、表7及び図9を参照して説明した第18経路PT18の伝送遅延時間hの分布を示す。伝送遅延時間hの分布は、例えば、正規分布である。
【0093】
図11に示すように、伝送遅延時間hには、隣り合う2つの分布に含まれる時間が存在する。例えば、第1伝送遅延時間hk1は、第1分布f0(h)と第2分布f1(h)とに含まれる。図11に示す例では、第1分布f0(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pと、第2分布f1(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pとが異なる。具体的には、第1分布f0(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pは「伝送率pk0」であり、第2分布f1(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pは「伝送率pk1」である。伝送率pk0は、伝送率pk1よりも大きい。このように、第1伝送遅延時間hkの伝送率pはホップ数によって異なることがある。
【0094】
続いて、図11を参照して重みf(h、p)を説明する。重みf(h、p)は、変数として、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布と、ホップ数ごとの伝送率pとを含む。つまり、重みf(h、p)は、変数として、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布と、伝送遅延時間hの分布ごとの伝送率pとを含む。
【0095】
例えば、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布は、第1分布f0(h)と、第2分布f1(h)と、第3分布f2(h)とを含む。ホップ数ごとの伝送率pは、第1伝送率p1と、第2伝送率p2と、第3伝送率p3とを含む。第1伝送率p1は、第1分布f0(h)に含まれる第1伝送遅延時間hkの伝送率pを示す。第2伝送率p2は、第2分布f1(h)に含まれる第1伝送遅延時間hkの伝送率pを示す。第3伝送率p3は、第3分布f2(h)に含まれる第1伝送遅延時間hkの伝送率pを示す。この場合、重みf(h、p)として、重みf(h、p1、p2、p3)が用いられる。つまり、第1通信装置101の記憶部12は、重みf(h、p1、p2、p3)を記憶する。
【0096】
重みf(h、p)は、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布のうち、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布から第2伝送遅延時間hcを取得させる。つまり、制御部14は、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p)を付与する重みづけを行うことにより、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布のうち、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布から第2伝送遅延時間hcを取得する。
【0097】
図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合、第1通信装置101の制御部14は、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p1、p2、p3)を付与する。図11に示すように、第1分布f0(h)と、第2分布f1(h)と、第3分布f2(h)とのうち、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布は、第1分布f0(h)である。したがって、第1通信装置101の制御部14は、第1分布f0(h)から第2伝送遅延時間hcを取得する。
【0098】
例えば、制御部14は、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p)を付与することにより、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布の平均値を取得してもよい。つまり、重みf(h、p)は、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布の平均値を取得させてもよい。
【0099】
図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合、第1通信装置101の制御部14は、例えば、以下の式(8)に基づいて、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p1、p2、p3)を付与してもよい。その結果、第1分布f0(h)の平均値h0cが取得される。
【数1】
【0100】
なお、図11に示すように、第1伝送遅延時間hkの伝送率pは、ホップ数が大きくなるにつれて小さくなる。したがって、伝送率pとして、最大の伝送率pと、最大の伝送率pの次に大きい伝送率pとを用いてもよい。すなわち、第1通信装置101の制御部14は、例えば、以下の式(9)に基づいて、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p1、p2)を付与して、第2伝送遅延時間hcを取得してもよい。
【数2】
【0101】
続いて、重みf(h、p)について、重みf(h、p1、p2)を例に説明する。既に説明したように、重みf(h、p)は、変数として、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布と、ホップ数ごとの伝送率pとを含む。例えば、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する場合、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布は、第1分布f0(h)と、第2分布f1(h)と、第3分布f2(h)とを含む。ホップ数ごとの伝送率pは、第1伝送率p1と、第2伝送率p2と、第3伝送率p3とを含む。
【0102】
図11に示すように、伝送遅延時間hの分布は、ホップ数が大きくなるにつれて小さくなる。よって、伝送遅延時間hの分布として、伝送遅延時間hが最も短い分布と、伝送遅延時間hが最も短い分布の次に短い分布とを用いてもよい。この場合、伝送率pも、最大の伝送率pと、最大の伝送率pの次に大きい伝送率pとを用いる。例えば、第1分布f0(h)、第2分布f1(h)、第1伝送率p1、及び第2伝送率p2を用いた重みf(h、p)として、以下の式(10)で表される重みf(h、p1、p2)を用いてもよい。
【数3】
【0103】
制御部14が、式(9)及び式(10)に基づいて、第1伝送遅延時間hkに重みf(h、p1、p2)を付与することにより、第2伝送遅延時間hcとして、第1分布f0(h)の平均値h0cが取得される。
【0104】
例えば、図11に示すように、第1伝送遅延時間hk1は第1分布f0(h)及び第2分布f1(h)の両者に含まれる。第1分布f0(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pは「伝送率pk0」であり、第2分布f1(h)に含まれる第1伝送遅延時間hk1の伝送率pは「伝送率pk1」であり、「伝送率pk0」は「伝送率pk1」よりも大きい。重みf(h、p)は、「伝送率pk0」の重みづけをより重くして、「伝送率pk1」の重みづけを、より軽くする。この結果、第2伝送遅延時間hcとして、第1分布f0(h)の平均値h0cが取得される。
【0105】
以上、図1図11を参照して説明したように、本実施形態によれば、複数の通信経路PTを介して互いに通信が可能な2つの通信装置10の間での時刻同期の精度を高めることができる。具体的には、図11を参照して説明したように、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布は、伝送率pが最も大きくなる。したがって、通信経路PTが動的に変化し得る無線通信ネットワークNWにおいて、2つの通信装置10間の通信経路PTのうち、最もホップ数が小さくなる通信経路PT以外の通信経路PTは、変則的な通信経路PTである。本実施形態によれば、計測した第1伝送遅延時間hkに対して重みづけを行うことで、変則的な通信経路PTの影響を抑制して、時刻同期の精度を高めることができる。
【0106】
例えば、図5に示す通信システム100において第1通信装置101が計時している時刻を第2通信装置102が計時している時刻に同期させる場合に、第1通信装置101が計時している時刻と第2通信装置102が計時している時刻とのずれ量の推定値δpを、第1伝送遅延時間hkの平均値を用いて取得した場合、第1伝送遅延時間hkの平均値は、第2分布f1(h)及び第3分布f2(h)の影響を受けて第1分布f0(h)の平均値h0cよりも大きくなるため、時刻同期の精度が低くなる可能性がある。また、伝送遅延時間hは一定値ではなく分布しているため、ずれ量の推定値δpを第1伝送遅延時間hkを用いて取得した場合、第1伝送遅延時間hkの計測結果に応じてずれ量の推定値δpが変動する。その結果、時刻同期の精度が低くなる可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、伝送率pが最も大きくなる第1分布f0(h)から取得される第2伝送遅延時間hcを用いてずれ量の推定値δpを求めるため、時刻同期の精度を高めることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、記憶部12に重みf(h、p)が記憶されたが、制御部14が重みf(h、p)を求めて、記憶部12に記憶させてもよい。この場合、通信装置10は、通信相手との間で要求信号RS及び応答信号ASの送受信を複数回(例えば、30回)実行し、複数の伝送遅延時間hを取得(計測)して、ホップ数ごとの伝送遅延時間hの分布と、ホップ数ごとの伝送率pを取得してもよい。
【0108】
あるいは、制御部14は、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布の伝送率p以外の伝送率pを、最もホップ数が小さい伝送遅延時間hの分布の伝送率pに基づいて取得してもよい。例えば、制御部14は、以下の式(11)に基づいて、第1伝送率p1から第2伝送率p2を取得してもよい。なお、式(11)において、「n」はノード数を示す。
【数4】
【0109】
また、本実施形態において、通信装置10の通信方式はブロードキャスト方式であるが、通信装置10の通信方式はマルチキャスト方式であってもよい。あるいは、通信装置10の通信方式は、ユニキャスト方式であってもよい。ここで、図1及び図12(a)及び図12(b)を参照して、通信装置10の通信方式がユニキャスト方式である場合の時刻同期処理について説明する。
【0110】
図12(a)は、要求信号RSの他例を示す図である。図12(b)は、応答信号ASの他例を示す図である。詳しくは、図12(a)は、第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する際に第1通信装置101から送信される要求信号RSを示す。図12(b)は、第1通信装置101が第2通信装置102との間で時刻同期処理を実行する際に第2通信装置102から送信される応答信号ASを示す。
【0111】
図12(a)に示す例では、第1通信装置101から第2通信装置102へ要求信号RSを送信する通信経路PTとして、表1に示す第2経路PT2が設定されている。したがって、送信先(宛先)の識別情報DT3は、第3通信装置103の識別情報を示す。その結果、要求信号RSは、第1通信装置101から第3通信装置103を経由して第2通信装置102へ送信される。その一方で、図1を参照して説明したように、第2通信装置102は、第1通信装置101の通信範囲内に配置されている。その結果、第2通信装置102は、第1通信装置101から送信された要求信号RSを直接受信することができる。
【0112】
よって、第2通信装置102は、第2経路PT2(第3通信装置103)を経由して要求信号RSを受信するとともに、第1通信装置101から要求信号RSを直接受信する。その結果、第2通信装置102は、最初に受信した要求信号RSが第1通信装置101から直接受信した要求信号RSである場合、第2経路PT2(第3通信装置103)を経由して受信した要求信号RSについては、受信後に破棄する。同様に、第2通信装置102は、最初に受信した要求信号RSが第2経路PT2(第3通信装置103)を経由して受信した要求信号RSである場合、第1通信装置101から直接受信した要求信号RSについては、受信後に破棄する。
【0113】
図12(b)に示す例では、第2通信装置102から第1通信装置101へ応答信号ASを送信する通信経路PTとして、表2に示す第8経路PT8が設定されている。したがって、送信先(宛先)の識別情報DT13は、第4通信装置104の識別情報を示す。その結果、応答信号ASは、第2通信装置102から第4通信装置104を経由して第1通信装置101へ送信される。その一方で、図1を参照して説明したように、第1通信装置101は、第2通信装置102の通信範囲内に配置されている。その結果、第1通信装置101は、第2通信装置102から送信された応答信号ASを直接受信することができる。
【0114】
よって、第1通信装置101は、第8経路PT8(第4通信装置104)を経由して応答信号ASを受信するとともに、第2通信装置102から応答信号ASを直接受信する。その結果、第1通信装置101は、最初に受信した応答信号ASが第2通信装置102から直接受信した応答信号ASである場合、第8経路PT8(第4通信装置104)を経由して受信した応答信号ASについては、受信後に破棄する。同様に、第1通信装置101は、最初に受信した応答信号ASが第8経路PT8(第4通信装置104)を経由して受信した応答信号ASである場合、第2通信装置102から直接受信した応答信号ASについては、受信後に破棄する。
【0115】
以上、図1及び図12(a)及び図12(b)を参照して説明したように、通信装置10の通信方式がユニキャスト方式であっても、第1通信装置101は第2通信装置102との間で複数の通信経路PTを介して通信可能である。したがって、通信装置10の通信方式がユニキャスト方式であっても、図1図11を参照して説明した時刻同期処理を実行することができる。
【0116】
続いて、図13を参照して、本実施形態の通信システム100の第1適用例を説明する。図13は、本実施形態の通信システム100の第1適用例を示す図である。詳しくは、図13は、本実施形態の通信システム100を含む基板処理システム1000を示す。通信システム100は、例えば、基板処理装置1に設けられている複数のセンサ2のセンサデータの収集に用いられてもよい。
【0117】
具体的には、図13に示すように、基板処理システム1000は、基板処理装置1と、データサーバ3と、通信システム100とを備える。基板処理装置1は、基板処理を実行して基板を処理する。基板処理は、例えば、エッチング処理、洗浄処理、露光処理、現像処理、又は成膜処理である。基板処理の対象となる基板には、例えば、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、及び光磁気ディスク用基板などの各種の基板を適用可能である。
【0118】
図13に示すように、基板処理装置1は、複数のセンサ2を備える。複数のセンサ2には、例えば、温度センサ、流量センサ、濃度センサ、差圧センサ、風量センサ、風速センサ、及びイメージセンサが含まれる。センサデータには、例えば、温度データ、流量データ、濃度データ、排気圧データ、風量データ、風速データ、及び画像データが含まれる。図13に示す例では、複数のセンサ2は、第1センサ2a~第3センサ2cを含む。
【0119】
通信システム100は、複数のセンサ2のセンサデータをデータサーバ3へ送信する。具体的には、通信システム100は、センサデータと、そのセンサデータを取得した時刻を示すデータとをデータサーバ3へ送信する。データサーバ3は、センサデータを収集して管理する。
【0120】
具体的には、通信システム100に含まれる複数の通信装置10のうちの一つがデータサーバ3との間で通信を行う。通信システム100に含まれる他の通信装置10はそれぞれ、対応するセンサ2からセンサデータを取得し、取得したセンサデータと、センサデータを取得した時刻を示すデータとを、データサーバ3との間で通信を行う通信装置10へ送信する。通信装置10は、自機の計時部13で計時している時刻に基づいて、センサデータを取得した時刻を取得する。
【0121】
図13に示す例では、第1通信装置101が第1センサ2aからセンサデータを取得する。同様に、第3通信装置103及び第4通信装置104はそれぞれ第2センサ2b及び第3センサ2cからセンサデータを取得する。第1通信装置101は、第1センサ2aのセンサデータと、第1センサ2aからセンサデータを取得した時刻とを含むセンサデータ信号を、第2通信装置102宛に送信する。つまり、センサデータ信号の最終宛先は、第2通信装置102である。同様に、第3通信装置103及び第4通信装置104はそれぞれ、最終宛先を第2通信装置102とするセンサデータ信号を送信する。
【0122】
図13に示す例では、第2通信装置102がデータサーバ3との間で通信を行う。つまり、第2通信装置102は、第1通信装置101,第3通信装置103、及び第4通信装置104との間で無線通信を行う機能と、データサーバ3との間で通信を行う機能とを有する。例えば、第2通信装置102は、インターネット回線のような公衆回線を介してデータサーバ3と通信を行ってもよいし、ローカルエリアネットワーク(LAN)を介してデータサーバ3と通信を行ってもよい。第2通信装置102は、例えば、ゲートウェイ装置であってもよい。
【0123】
第2通信装置102は、第1通信装置101からセンサデータ信号を受信すると、センサデータ信号から、第1センサ2aのセンサデータと、そのセンサデータが取得された時刻とを取得する。そして、第2通信装置102は、第1センサ2aのセンサデータとそのセンサデータが取得された時刻とを示す信号をデータサーバ3へ送信する。同様に、第2通信装置102は、第2センサ2bのセンサデータとそのセンサデータが取得された時刻とを示す信号をデータサーバ3へ送信する。また、第2通信装置102は、第3センサ2cのセンサデータとそのセンサデータが取得された時刻とを示す信号をデータサーバ3へ送信する。
【0124】
以上、図13を参照して、本実施形態の通信システム100の第1適用例を説明した。本実施形態によれば、通信システム100に含まれる各通信装置10が計時している時刻をデータサーバ3が計時している時刻に同期させることができる。したがって、データサーバ3においてセンサデータを精度よく管理することができる。
【0125】
なお、図13に示す例では、第2通信装置102は、基板処理装置1の外部に設けられているが、第2通信装置102は、基板処理装置1に設けられてもよい。この場合、第2通信装置102はセンサデータを取得してもよい。
【0126】
続いて、図14を参照して、本実施形態の通信システム100の第2適用例を説明する。図14は、本実施形態の通信システム100の第2適用例を示す図である。詳しくは、図14は、本実施形態の通信システム100を含む基板処理装置1を示す。通信システム100は、例えば、基板処理装置1に設けられている複数の移動体5の制御に用いられてもよい。
【0127】
図14に示すように、基板処理装置1は、複数の移動体5を備える。複数の移動体5はそれぞれ基板を搬送する。複数の移動体5には、例えば、搬送ロボット、又は基板搬送ステージが含まれる。図14に示す例では、複数の移動体5は、第1移動体5a~第4移動体5dを含む。
【0128】
第1通信装置101は、第1移動体5aに搭載される。したがって、第1通信装置101は、第1移動体5aの移動に伴って移動する。同様に、第2通信装置102~第4通信装置104はそれぞれ、第2移動体5b~第4移動体5dに搭載される。したがって、第2通信装置102~第4通信装置104はそれぞれ、第2移動体5b~第4移動体5dの移動に伴って移動する。
【0129】
第1通信装置101は、例えば、第1移動体5aの現在位置と自機(第1通信装置101)が計時している時刻(現在時刻)とを示す信号を第2通信装置102~第4通信装置104(他の通信装置10)へ送信する。同様に、第2通信装置102~第4通信装置104はそれぞれ、第2移動体5b~第4移動体5dの現在位置と自機が計時している時刻(現在時刻)とを示す信号を他の通信装置10へ送信する。これにより、第1移動体5a~第4移動体5dはそれぞれ、自機が計時している時刻と、他の通信装置10の現在位置と、他の通信装置10が計時している時刻とに基づいて、自機の動作タイミングを制御する。
【0130】
あるいは、第1通信装置101は、第2移動体5b~第4移動体5dのうちの少なくとも一台の動作を制御するコマンドと、自機(第1通信装置101)が計時している時刻(現在時刻)とを示す制御信号を送信してもよい。制御信号の最終宛先の通信装置10が搭載された移動体5は、自機に搭載されている通信装置10が計時している時刻と、制御信号とに基づいて、コマンドに応じた動作を行う。
【0131】
以上、図14を参照して、本実施形態の通信システム100の第2適用例を説明した。本実施形態によれば、通信システム100に含まれる各通信装置10が計時している時刻を同期させることができる。したがって、第1移動体5a~第4移動体5dの動作を精度よく協調させることができる。
【0132】
以上、図面(図1図14)を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0133】
図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0134】
例えば、図1図14を参照して説明した実施形態では、通信システム100に含まれる通信装置10のそれぞれの通信範囲内に、通信システム100に含まれる他の全ての通信装置10が配置されたが、通信システム100に含まれる通信装置10のそれぞれの通信範囲内に、通信システム100に含まれる他の一部の通信装置10が配置されてもよい。
【0135】
また、図1図14を参照して説明した実施形態において、通信システム100は、4つの通信装置10を含むが、通信装置10の数は4つに限定されない。通信システム100は、3つの通信装置10を含んでもよいし、5つ以上の通信装置10を含んでもよい。具体的には、通信システム100は、時刻同期処理を実行する通信装置10と通信相手の通信装置10との間で複数の通信経路PTを介して通信が可能となる数の通信装置10を含めばよい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、動的に通信経路が変化する通信ネットワークを構成する通信システムに有用である。
【符号の説明】
【0137】
10 :通信装置
11 :通信部
12 :記憶部
13 :計時部
14 :制御部
100 :通信システム
101 :第1通信装置
102 :第2通信装置
103 :第3通信装置
104 :第4通信装置
AS :応答信号
NW :無線通信ネットワーク
PT :通信経路
RS :要求信号
h :伝送遅延時間
hc :第2伝送遅延時間
hk :第1伝送遅延時間
p :伝送率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14