(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036870
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電子制御式機械時計
(51)【国際特許分類】
G04G 3/02 20060101AFI20240311BHJP
G04G 19/00 20060101ALI20240311BHJP
G04C 10/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G04G3/02 A
G04G19/00 Y
G04C10/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141398
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平谷 栄一
【テーマコード(参考)】
2F002
2F101
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AC01
2F002AC02
2F002AE00
2F002CB02
2F002CB12
2F101DJ05
(57)【要約】
【課題】水晶振動子に経年劣化が生じても時刻精度を維持できる電子制御式機械時計を提供すること。
【解決手段】電子制御式機械時計は、機械的エネルギー源と、機械的エネルギー源のトルクが伝達され、時刻表示を行う時刻表示用輪列を備える時刻表示装置と、水晶振動子と、水晶振動子の発振周波数に基づいて時刻表示用輪列の回転速度を調整する電子制御回路と、複数の論理緩急設定パターンとが配置される回路基板と、論理緩急設定パターンと導通可能な導通部を有し、回路基板に対して回動することで導通部と導通する論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、を備え、電子制御回路は、水晶振動子を発振させる発振回路と、発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、導通部および論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて分周回路を制御する論理緩急回路と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的エネルギー源と、
前記機械的エネルギー源のトルクが伝達され、時刻表示を行う時刻表示用輪列を備える時刻表示装置と、
水晶振動子と、前記水晶振動子の発振周波数に基づいて前記時刻表示用輪列の回転速度を調整する電子制御回路と、複数の論理緩急設定パターンとが配置される回路基板と、
前記論理緩急設定パターンと導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回動することで前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、
を備え、
前記電子制御回路は、
前記水晶振動子を発振させる発振回路と、
前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、
前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて前記分周回路を制御する論理緩急回路と、
を備える電子制御式機械時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記ロータリースイッチは、時計ケースに収納されるムーブメントの外周部に設けられる電子制御式機械時計。
【請求項3】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、
前記機械的エネルギー源によって駆動されるローターを備える発電機と、
リューズの引き出し操作によって前記リューズの回転力の伝達先を切り換える切換機構と、
を備え、
前記ロータリースイッチは、平面視で、前記時刻表示用輪列、前記発電機、前記巻上輪列、前記切換機構と重ならない位置に設けられる電子制御式機械時計。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記時刻表示用輪列を保持する輪列受を備え、
前記ロータリースイッチは、軸部材と、前記軸部材に対して回転自在に設けられ、かつ、操作アームを有するスイッチレバーと、を備え、
前記操作アームの少なくとも一部は、平面視で前記輪列受の外周側に配置される電子制御式機械時計。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記時刻表示用輪列を保持する輪列受と、
前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、
前記巻上輪列を駆動する回転錘と、を備え、
前記回転錘は、錘体部と、前記錘体部の外周側に設けられて前記錘体部に比べて厚肉の重錘部と、を備え、
前記輪列受は、平面視で前記錘体部と重なり、且つ、前記重錘部と重ならないことを特徴とする電子制御式機械時計。
【請求項6】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記時刻表示用輪列を保持する輪列受と、
前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、
前記巻上輪列を駆動する回転錘と、を備え、
前記ロータリースイッチは、平面視で前記回転錘と重なる位置に配置される電子制御式機械時計。
【請求項7】
請求項1に記載の電子制御式機械時計において、
前記時刻表示用輪列を保持する輪列受を備え、
前記輪列受には、前記ロータリースイッチの回転領域に重なる位置に開口が設けられ、前記開口に沿って前記ロータリースイッチの設定位置を示す目盛が表記される電子制御式機械時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御式機械時計に関する。
【背景技術】
【0002】
ぜんまいが開放する時の機械的エネルギーによって発電機を駆動して発生させた電気的エネルギーを電源回路に充電し、当該電気的エネルギーにより水晶振動子および制動制御回路を作動し、水晶振動子の発振周波数に基づいて発電機のローターの回転を制御することにより、輪列に固定される指針を正確に駆動して正確に時刻を表示する電子制御式機械時計が知られている(特許文献1参照)。
この電子制御式機械時計では、水晶振動子の特性の個体差を補正する補正データが記憶され、水晶振動子の発振信号を分周する分周回路の各分周段に所定のタイミングでセットもしくはリセット信号を入力することで、デジタル的にクロック信号の周期を長くしたり、短くしたりする論理緩急回路が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水晶振動子には、製造による経年劣化により発振周波数が変動するため、製品出荷時に記憶した前記補正データを用いて論理緩急回路で時計の歩度を調整しても正しい時刻に補正することができず、時刻精度が低下する可能性がある。このため、ぜんまい等の機械的エネルギー源からのトルクによって時刻を表示する電子制御式機械時計において、水晶振動子に経年劣化が生じても時刻精度を維持できる電子制御式機械時計が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の電子制御式機械時計は、機械的エネルギー源と、前記機械的エネルギー源のトルクが伝達され、時刻表示を行う時刻表示用輪列を備える時刻表示装置と、水晶振動子と、前記水晶振動子の発振周波数に基づいて前記時刻表示用輪列の回転速度を調整する電子制御回路と、複数の論理緩急設定パターンとが配置される回路基板と、前記論理緩急設定パターンと導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回動することで前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、を備え、前記電子制御回路は、前記水晶振動子を発振させる発振回路と、前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて前記分周回路を制御する論理緩急回路と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の電子制御式機械時計を示す正面図である。
【
図2】前記電子制御式機械時計を示す裏面図である。
【
図3】前記電子制御式機械時計の裏蓋を外した状態を示す裏面図である。
【
図4】前記電子制御式機械時計のムーブメントの回転錘を外した状態を示す裏面図である。
【
図5】前記ムーブメントの輪列受を外した状態を示す裏面図である。
【
図6】前記ムーブメントの要部を示す断面図である。
【
図7】前記ムーブメントの回路基板の要部を示す平面図である。
【
図8】前記回路基板に設けられるロータリースイッチを示す斜視図である。
【
図9】前記ロータリースイッチを示す平面図である。
【
図10】前記電子制御式機械時計を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一実施形態の電子制御式機械時計1を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明において、平面視とは、文字板3に直交する方向つまり指針軸の軸方向から見た状態を意味し、側面視とは、指針軸に垂直な方向から見た状態を意味する。
図1は、電子制御式機械時計1を示す正面図であり、
図2は、電子制御式機械時計1を示す裏面図であり、
図3は裏蓋8を外した状態の裏面図である。
図2および
図3の上側が6時側、下側が12時側である。本実施形態の電子制御式機械時計1は、電子制御式機械時計1の裏面側からパワーリザーブ針5を視認可能なスケルトンタイプの時計である。
電子制御式機械時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋8で塞がれている。裏蓋8は、リング状の枠8Aと、枠8Aに取り付けられた裏蓋ガラス8Bとで構成されている。
【0008】
電子制御式機械時計1は、外装ケース2内に収容されたムーブメント10と、
図1に示す時刻情報を指示する時針4A、分針4B、秒針4Cと、
図2に示すぜんまいの巻上げ残量を指示するパワーリザーブ針5とを備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。
【0009】
図2、3に示す回転錘31には、開口314が形成され、回転錘31の位置によってパワーリザーブ針5が視認できないことが少なくなるように構成されている。
後述する輪列受12の裏面には、扇形の目盛部12Aが設けられている。この目盛部12Aをパワーリザーブ針5が指示することで、ぜんまいの巻上げ残量を表示できる。
【0010】
外装ケース2の側面には、りゅうず7が設けられている。りゅうず7は、電子制御式機械時計1の中心に向かって押し込まれた0段位置から1段位置および2段位置に引き出されて移動することができる。
りゅうず7を0段位置で回転すると、後述するように、ムーブメント10に設けた機械的エネルギー源であるぜんまい210を巻き上げることができる。ぜんまい210の巻上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。
りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、後述する切換機構50によってりゅうず7の回転が伝達される歯車が切り替わり、日車6を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、切換機構50によってりゅうず7の回転が伝達される歯車が切り替わり、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。切換機構50の構成や、りゅうず7による日車6や時針4A、分針4Bの修正方法は、従来の機械時計と同様であるため説明を省略する。
【0011】
[ムーブメント]
次に、ムーブメント10について、
図2および
図3に加えて、
図4~
図6も参照して説明する。
図4は、ムーブメント10の要部を裏蓋8側から見た裏面図であり、
図5は、輪列受12を取り外したムーブメント10の要部を裏蓋8側から見た裏面図である。
図4および
図5では、りゅうず7が取り付けられる巻真41が配置される3時側を上側、9時側を下側、12時側を右側、6時側を左側にしている。
図6はムーブメント10の要部の断面図である。
ムーブメント10は、
図6に示すように、地板11と、輪列受12と、二番受13とを備えている。二番受13は、地板11と輪列受12との間に配置されている。
地板11と輪列受12との間には、
図5に示すように、時刻表示用輪列20と、巻上機構30と、切換機構50と、パワーリザーブ機構60と、発電機70と、回路部80とを備えている。
【0012】
時刻表示用輪列20は、
図5および
図6に示すように、香箱車21と、二番車22と、三番車23と、四番車24と、五番車25と、六番車26とを備えている。香箱車21には、ぜんまい210が収納され、ぜんまい210の中心側の端縁は香箱真に取り付けられている。香箱真には、香箱真と一体に回転する角穴車211が取り付けられている。
このため、角穴車211を回転することで機械的エネルギー源であるぜんまい210を巻き上げることができ、このぜんまい210の巻き上げで蓄積される機械的エネルギーによって香箱車21が回転すると、二番車22、三番車23、四番車24、五番車25、六番車26が順次回転する。六番車26は、発電機70のローターかなに噛合しており、六番車26が回転すると、発電機70のローター71が回転する。なお、ローター71には、ローター71を安定して回転させるためのローター慣性円板72が取り付けられている。
図6に示すように、二番車22には筒かな28が取り付けられ、四番車24には秒針軸29が取り付けられている。また、筒かな28の外周には、図示略の日の裏車を介して筒かな28の回転が伝達される筒車27が配置されている。筒車27、筒かな28、秒針軸29には、それぞれ時針4A、分針4B、秒針4Cが取り付けられている。
【0013】
巻上機構30は、自動巻上機構と、手動巻上機構とを備えている。
自動巻上機構は、
図2、6に示す回転錘31、ベアリング32と、
図5に示す偏心車33、爪レバー34、伝え車35とを備える。
回転錘31は、錘体部311および重錘部312を備えている。錘体部311は、薄板状に形成され、ベアリング32に固定される中心軸部313と、開口314とを備えている。重錘部312は、錘体部311の外周に連続して形成され、錘体部311に比べて肉厚に形成されている。すなわち、回転錘31は、錘体部311および重錘部312が一体に形成されている。なお、錘体部311は平面視で輪列受12に重なるが、重錘部312は輪列受12に重ならないように構成されている。
ベアリング32は、回転錘31を回動自在に軸支する軸受であり、輪列受12に固定された内輪321と、回転錘31と一体で回転する外輪322と、内輪321および外輪322間に配置されたボールとを備えている。外輪322の外周面には歯車322Aが形成されている。
【0014】
偏心車33は、ベアリング32の歯車322Aに噛合しており、回転錘31の回動に連動して正逆両方向に回動する。また、偏心車33は、偏心車33の回転軸から偏心して設けられた偏心軸を備えている。
爪レバー34は、偏心車33の偏心軸に回動自在に取り付けられている。偏心車33が回転錘31に連動して回動すると、偏心車33に取り付けられた爪レバー34は、伝え車35に近づく方向および遠ざかる方向に進退運動し、伝え車35を一方向に回転する。
伝え車35のカナは、角穴車211に噛み合っており、角穴車211は伝え車35の回転に連動して一方向に回転する。角穴車211が回転すると、香箱真が回転し、ぜんまい210が巻き上げられる。
【0015】
手動巻上機構は、
図5に示すように、りゅうず7が取り付けられる巻真41と、図示略のつづみ車と、きち車43と、丸穴車44と、角穴第1伝え車45と、角穴第2伝え車46と、角穴第3伝え車47とを備える。角穴第2伝え車46は別体のカナと歯車が同軸に配置されて一体で回転し、角穴第3伝え車47は、伝え車35のカナに噛み合っている。このため、りゅうず7を回転することで、伝え車35を介して角穴車211および香箱真が回転し、ぜんまい210が巻き上げられる。
したがって、本実施形態の電子制御式機械時計1では、自動巻上機構および手動巻上機構のいずれによっても、ぜんまい210を巻き上げることができる。このため、ぜんまい210の巻上輪列は、自動巻上機構および手動巻上機構に含まれる外輪322の歯車322A、偏心車33、爪レバー34、伝え車35、角穴車211、つづみ車、きち車43、丸穴車44、角穴第1伝え車45、角穴第2伝え車46、角穴第3伝え車47を備えて構成される。
なお、電子制御式機械時計1としては、自動巻上機構または手動巻上機構の一方のみを設けてもよい。
【0016】
切換機構50は、りゅうず7の引き出し操作に応じて、りゅうず7の回転力の伝達先を切り換える機構であり、巻真41、つづみ車、きち車43、オシドリ、カンヌキ、カンヌキ押え、小鉄レバー、小鉄車等を備えている。これらの切換機構50の構成は、一般的な機械時計と同様であるため、説明を省略する。
【0017】
パワーリザーブ機構60は、駆動源であるぜんまい210の巻上げ残量を表示する機構である。パワーリザーブ機構60は、遊星歯車機構61と、巻上げ表示輪列62と、巻戻し表示輪列63と、巻印第1中間車64と、巻印第2中間車65と、巻印車66と、
図4に示す輪列受12上に配置された扇形の目盛部12Aと、パワーリザーブ針5とを備える。目盛部12Aには、パワーリザーブ針5が指示する略帯状の目盛が表示されている。なお、駆動源であるぜんまい210の巻上げ残量によって、電子制御式機械時計1の持続時間が推定できるため、目盛部12Aに持続時間を示す数字を印字すれば、パワーリザーブ針5で持続時間を指示できる。
【0018】
巻上げ表示輪列62は、香箱真に噛み合う歯車を含む複数の歯車で構成され、香箱真の回転、つまりぜんまい210の巻上げ操作に連動して回転する。この香箱真の回転は、巻上げ表示輪列62を介して遊星歯車機構61に伝達される。
巻戻し表示輪列63は、香箱車21に噛み合う歯車を含む複数の歯車で構成され、香箱車21の回転、つまりぜんまい210の巻き戻しに連動して回転する。この香箱車21の回転は、巻戻し表示輪列63を介して遊星歯車機構61に伝達される。
【0019】
遊星歯車機構61は、詳細は省略するが、ぜんまい210の巻き上げに連動して巻印第1中間車64を第1方向に回転し、ぜんまい210の巻き戻しに連動して巻印第1中間車64を第1方向とは逆の第2方向に回転するように構成されている。
巻印第1中間車64は、巻印第2中間車65を介して巻印車66を回転する。巻印車66の軸には、パワーリザーブ針5が取り付けられている。
【0020】
発電機70は、
図5に示すように、ローター71、ローター慣性円板72、コイルブロック73を備えて構成される。コイルブロック73は、各コアにコイルをそれぞれ巻線して構成されたものである。
したがって、発電機70は、外部からのトルクでローター71が回転すると、コイルブロック73によって誘起電力を発生し、電気エネルギーを出力する。また、コイルをショートさせることで、ローター71にブレーキを加えることができ、ブレーキ力を制御することで、ローター71の回転周期を一定に調速できる。
【0021】
回路部80は、回路基板500と、ICである電子制御回路100と、ロータリースイッチ600と、水晶振動子108と、整流回路、電源回路などの各種回路とを備えている。なお、本実施形態では、
図5に示すように、電子制御回路100と水晶振動子108とは、収納容器内に封止されて1つのパッケージ90として構成されている。なお、電子制御回路100と水晶振動子108とは、1つのパッケージ90内に封入されるものに限定されず、電子制御回路100と水晶振動子108とを別々に回路基板500に取り付けてもよい。
回路基板500は、
図6に示すように、地板11の裏面つまり裏蓋側の面に配置されている。この回路基板500には、パッケージ90等が取り付けられ、さらに、
図5および
図7に示すように、回路基板500の端部には、論理緩急値を設定するために用いられる論理緩急設定パターン510、520、530と、ダミーパターン540とが形成されている。ロータリースイッチ600は、回路基板500の各パターン510、520、530、540が形成された端部、すなわちムーブメント10の外周部に設けられている。さらに、ロータリースイッチ600は、ムーブメント10において、時刻表示用輪列20、巻上機構30、切換機構50、パワーリザーブ機構60、発電機70と平面視で重ならない位置に設けられている。一方で、ロータリースイッチ600は、平面視で回転錘31の回転軌跡と重なる位置に配置されている。
【0022】
第1論理緩急設定パターン510は、パッド511と、配線部512と、接点部515とを備えている。
パッド511は、パッケージ90と平面的に重なる位置に形成され、パッケージ90の端子を介して電子制御回路100と電気的に導通する。配線部512は、パッド511と接点部515とを電気的に接続する。接点部515は、回路基板500に形成された貫通孔550の周囲に環状扇形に形成されている。
【0023】
第2論理緩急設定パターン520は、パッド521と、第1配線部522と、第2配線部523と、第1接点部525と、第2接点部526とを備えている。
パッド521は、パッケージ90と平面的に重なる位置に形成され、パッケージ90の端子を介して電子制御回路100と電気的に導通する。第1配線部522は、パッド521と第1接点部525とを電気的に接続し、第2配線部523は、第1接点部525と第2接点部526とを電気的に接続する。第1配線部522は、配線部512にほぼ沿って形成されている。第2配線部523は、第1接点部525および第2接点部526の外周に沿って円弧状に形成されている。
【0024】
第3論理緩急設定パターン530は、パッド531と、第1配線部532と、第2配線部533と、第1接点部535と、第2接点部536とを備えている。
パッド531は、パッケージ90と平面的に重なる位置に形成され、パッケージ90の端子を介して電子制御回路100と電気的に導通する。第1配線部532は、パッド531と第1接点部535とを電気的に接続し、第2配線部533は、第1接点部535と第2接点部536とを電気的に接続する。第2配線部533は、第1接点部535および第2接点部536の外周に沿って円弧状に形成されている。
【0025】
ダミーパターン540は、配線部542と、第1接点部545と、第2接点部546と、第3接点部547とを備えている。第1接点部545は、第2配線部523の内周側、つまり第1接点部525および第2接点部526の間に形成されている。第2接点部546は、第2配線部533の内周側、つまり第1接点部535および第2接点部536の間に形成されている。第3接点部547は、接点部515と第1接点部535との間に形成されている。
配線部542は、貫通孔550の外周に沿って円弧状に形成され、さらに第1接点部545、第2接点部546、第3接点部547に電気的に接続されている。この配線部542は、回路基板500に形成された貫通孔560の位置まで延長されている。
【0026】
回路基板500に形成される各パターン510、520、530、540は、回路基板500の表面に銅箔および金メッキを積層して形成されている。また、回路基板500上に銅箔によってパターンを形成した際には、ダミーパターン540は、論理緩急設定パターン510に導通されている。この状態で銅箔上に金メッキを形成する。その後、貫通孔560を加工してダミーパターン540と論理緩急設定パターン510とを分離している。これにより、各パターン510、520、530、540に金メッキを同時に形成することができ、各パターン510、520、530、540の製造効率を向上できる。
【0027】
[ロータリースイッチ]
ロータリースイッチ600は、
図6に示すように、地板11に取り付けられた軸部材610と、軸部材610に回転自在に挿入された保持部品620と、保持部品620を回路基板500側に付勢するコイルばね630と、保持部品620に保持されるスイッチレバー700とを備えている。
【0028】
保持部品620は、
図8に示すように、円筒状に形成されて前記軸部材610に対して回動自在に取り付けられた回転軸部621と、回転軸部621の外周部分に形成されたフランジ部622とを備えて構成されている。
コイルばね630は、保持部品620のフランジ部622と、受け部品14との間に配置されている。受け部品14は、地板11と間隔を離して配置されて前記軸部材610の先端に対向配置される部品であり、
図4に示すように、輪列受12の外側であり、ムーブメント10の外周に沿って配置されている。受け部品14は、巻真41が配置された3時位置から12時位置を介して発電機70のコイルブロック73が配置された10時位置まで円弧状に形成され、輪列受12で覆われていない回路基板500の一部などを覆う位置に配置されている。受け部品14は、金属製の板材で構成されて、耐磁部品としても機能する。また、回路受け等の部品を介して回路基板500を押さえることもでき、この場合は、回路押さえ板としても機能する。
【0029】
スイッチレバー700は、
図6および
図8に示すように、回転軸部621の外周に嵌合される嵌合穴が形成された基部710と、基部710から互いに反対方向に延出された一対のスイッチアーム720と、基部710から互いに反対方向に延出された操作アーム730とを備えて構成されている。なお、
図8に示すように、スイッチアーム720と操作アーム730とは、平面視で互いに直交する方向に配置されているが、
図6では便宜上、互いに直交配置されるスイッチアーム720と操作アーム730を対向位置に表示している。
【0030】
各スイッチアーム720は、回路基板500の表面に沿って配置され、スイッチアーム720の先端には回路基板500に向かって突出する導通部721が形成されている。導通部721の表面は球面状に形成されている。
操作アーム730は、基部710から裏蓋側に延出され、さらに外周側に延出されている。操作アーム730の外周端部には、溝731が形成されている。輪列受12には、
図4および
図9に示すように、操作アーム730の裏蓋側に配置され、操作アーム730の移動軌跡に沿って円弧状に形成された目盛部951が形成されている。目盛部951には、30度間隔で6箇所に目盛952A~952Fが形成されている。さらに、輪列受12には、プラス記号と、マイナス記号も表記されている。このため、操作アーム730の先端は、輪列受12の目盛部951と平面視で重なる位置に設けられ、操作アーム730の先端以外は平面視で輪列受12の外周側に配置される。
また、受け部品14は、
図4に示すように、平面視で軸部材610に重なる部分を挟んで円弧状の溝が形成されている。この溝の外周は、輪列受12の目盛部951に連続しており、受け部品14および目盛部951間には操作アーム730が露出する円弧状の溝が形成されている。したがって、例えばピンセットのような治具を溝に差し込むことで、操作アーム730を移動して操作することができる。
【0031】
次に、電子制御式機械時計1の回路構成について
図10のブロック図を参照して説明する。
電子制御式機械時計1は、機械的エネルギー源としてのぜんまい210と、ぜんまい210のトルクを伝達するエネルギー伝達装置としての時刻表示用輪列20を備えて、時刻表示を行う時刻表示装置4と、前記時刻表示用輪列20を介して伝達されるトルクで駆動される発電機70と、整流回路106と、電源回路107と、水晶振動子108と、電子制御回路100とを備えている。
電子制御回路100は、SOI(Silicon on Insulator)プロセスによって製造されたICによって構成され、発振回路111、分周回路112、回転検出回路113、制動制御回路114、定電圧回路115および温度補償機能部120を備えて構成されている。
【0032】
時刻表示装置4は、時刻表示用輪列20と、時針4A、分針4B、秒針4Cの各指針と、日車6と、各指針の目盛および日窓を備える文字板3とを備えて構成されている。
発電機70は、ローター71が回転することで磁束が変化し、コイルに誘起電力を発生させて発電する。また、発電機70には、制動制御回路114で制御されるブレーキ回路が設けられている。ブレーキ回路は、発電機70の出力端子を短絡させてショートブレーキを掛けることで、発電機70を調速機としても機能させるものである。
発電機70には整流回路106が接続され、発電機70から供給された電気エネルギーは、整流回路106を介して、電源回路107の電源コンデンサーに充電され、電源コンデンサーの両端に発生する電圧(発電電圧)で電子制御回路100を駆動する。
整流回路106は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなり、発電機70からの交流出力を昇圧、整流して、電源回路107に充電供給するものである。
【0033】
発振回路111は、発振信号発生源である水晶振動子108を発振させる。そして、水晶振動子108の発振信号をフリップフロップからなる分周回路112に出力する。
分周回路112は、前記発振信号を分周して、複数の周波数(たとえば、2kHz~8Hz)のクロック信号を作成し、制動制御回路114や温度補償機能部120に必要なクロック信号を出力する。ここで、分周回路112から制動制御回路114に出力されるクロック信号は、後述するように、ローター71の回転制御の基準となる基準信号fs1である。
回転検出回路113は、発電機70に接続された図示しない波形整形回路とモノマルチバイブレーターとで構成され、発電機70のローター71の回転周波数を表す回転検出信号FG1を出力する。
【0034】
制動制御回路114は、回転検出回路113から出力される回転検出信号FG1と、分周回路112から出力される基準信号fs1とを比較し、発電機70の調速を行うための制動制御信号を発電機70のブレーキ回路に出力する。なお、基準信号fs1は、通常運針時のローター71の基準回転速度(例えば8Hz)に合わせた信号である。したがって、制動制御回路114は、ローター71の回転速度(回転検出信号FG1)と基準信号fs1との差に応じて制動制御信号のデューティー比を変更し、ブレーキ回路によるブレーキ力を調整し、ローター71の動きを制御する。
定電圧回路115は、電源回路107から供給される外部電圧を一定電圧(定電圧)に変換して供給する回路である。
【0035】
[温度補償機能部]
温度補償機能部120は、水晶振動子108等の温度特性を補償して発振周波数の変動を抑制するものであり、温度補償機能制御回路121と、温度補償回路130とを備える。
温度補償機能制御回路121は、所定のタイミングになると、温度補償回路130を動作させる。
温度補償回路130は、温度測定部である温度センサー131と、温度補正テーブル記憶部132と、個体差補正データ記憶部133と、演算回路135と、論理緩急回路136と、周波数調整制御回路137とを備える。
【0036】
温度センサー131は、電子制御式機械時計1が使用されている環境の温度に応じた出力を演算回路135に入力する。
温度補正テーブル記憶部132は、理想的な水晶振動子108、および、理想的な温度センサー131の場合に、ある温度でどれだけ歩度を補正すればよいかが設定された温度補正テーブルを記憶している。
しかし、水晶振動子108や温度センサー131には製造による個体差が生じるため、あらかじめ製造や検査の工程で測定した、水晶振動子108の特性や、温度センサー131の特性を基に、どれだけ個体差を補正すれば良いかを設定した個体差補正データが個体差補正データ記憶部133に書き込まれている。
【0037】
演算回路135は、温度センサー131の出力(温度)と、温度補正テーブル記憶部132に記憶された温度補正テーブルと、個体差補正データ記憶部133に記憶された個体差補正データとを利用して、歩度の補正量を計算し、その結果を、論理緩急回路136および周波数調整制御回路137に出力する。
本実施形態では、論理緩急回路136および周波数調整制御回路137の2つの方法で歩度の調整を行っている。
【0038】
論理緩急回路136は、分周回路112の各分周段に所定のタイミングでセットもしくはリセット信号を入力することで、デジタル的にクロック信号の周期を長くしたり、短くしたりする回路である。
周波数調整制御回路137は、発振回路111の付加容量を調整することにより、発振回路111の発振周波数そのものを調整する回路である。
【0039】
論理緩急回路136には、回路基板500に形成された第1論理緩急設定パターン510、第2論理緩急設定パターン520、第3論理緩急設定パターン530が接続され、これらの論理緩急設定パターン510~530に導通可能なロータリースイッチ600が設けられている。
【0040】
ロータリースイッチ600は、前述したように、ピンセット等の治具で操作アーム730を移動することで操作できる。そして、操作アーム730の溝731を各目盛952A~952Fの位置に合わせることで、スイッチアーム720の導通部721を6箇所の位置に移動して各パターン510~540に選択的に接触させることができる。すなわち、導通部721はロータリースイッチ600のスイッチレバー700を回転することで、スイッチレバー700の回転軸つまり回転軸部621や軸部材610の中心軸を中心とする円周上を摺動し、この円周上を摺動する導通部721の摺動領域において、各パターン510~540は同一円周上にそれぞれ形成されている。このため、導通部721は、ロータリースイッチ600のスイッチレバー700の回転によって、各パターン510~540に選択的に接触する。
そして、電子制御回路100の論理緩急回路136は、導通部721がどのパターン510~530と接触しているか、あるいは導通部721がダミーパターン540のみに接触してパターン510~530とは接触していないこと、つまり導通部721と論理緩急設定パターン510~530の導通状態を検出することで、表1に示すように、6段階で論理緩急ステップを調整する。
【0041】
【0042】
表1において、パターンAS1は第1論理緩急設定パターン510を示し、パターンAS2は第2論理緩急設定パターン520を示し、パターンAS3は第3論理緩急設定パターン530を示す。ステップは論理緩急の設定値であるステップを示し、例えば、-2から±0にステップをプラス方向に変化させた場合は、論理緩急は進み方向に補正され、マイナス方向に変化させた場合は遅れ方向に補正される。また、表1において、「1」は各パターン510~530が「VDD接続」または「オープン」とされた状態を示し、「0」は各パターン510~530が「VSS接続」となっていることを示す。本実施形態では、スイッチアーム720の電位はVSSに設定されているので、導通部721が接触したパターン510~530は「VSS接続」つまり「0」となり、接触していないパターン510~530は「1」となる。
【0043】
したがって、アフターサービスにおいて、裏蓋8を外し、回転錘31をロータリースイッチ600と重なる位置から移動すると、
図4に示すように、輪列受12の目盛部951と、受け部品14との間の溝からロータリースイッチ600が露出する。この溝部分に露出する操作アーム730を、ピンセットなどの治具を用いて操作することで、スイッチレバー700を回動できる。
操作アーム730の溝731を各目盛952A~952Fに合わせると、操作アーム730に対して直交する方向に延出された各スイッチアーム720の導通部721は、
図7の位置721A~721Fのいずれかの位置に移動する。これらの各位置721A~712Fに導通部721が移動することで、各導通部721は各パターン510、520、530、540に選択的に接触し、論理緩急値を設定することができる。したがって、水晶振動子108の経年劣化によって時刻精度が低下した場合には、アフターサービスにおいてロータリースイッチ600のスイッチレバー700を操作して論理緩急値を調整することで、電子制御式機械時計1の時刻精度を維持できる。
【0044】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、機械的エネルギー源であるぜんまい210からのトルクによって時刻を表示する電子制御式機械時計1において、ロータリースイッチ600を操作することで、論理緩急の設定値を変更することができる。このため、水晶振動子108のエージングにより歩度が年々変化した場合でも、販売後のアフターサービスにおいて、裏蓋8を外してスイッチレバー700を回転することで、歩度のエージング変化量を補正することができ、アフターサービスでの歩度調整作業を容易に行うことができる。したがって、ぜんまい210を駆動源としながら、時刻表示用輪列20の調速を電子制御で行うことで、機械時計に比べて高精度な電子制御式機械時計1の精度をアフターサービスで歩度を調整することで長期間維持することができる。
【0045】
ロータリースイッチ600をムーブメント10の外周部に設けたので、他の部品とレイアウト的に干渉することが少ないため、ムーブメント10の直径を大きくすることなく、ロータリースイッチ600を配置するスペースを十分に確保できる。
ロータリースイッチ600は、時刻表示用輪列20、巻上輪列、切換機構50、パワーリザーブ機構60、発電機70と平面視で重ならない位置に設けられているので、ムーブメント10つまり電子制御式機械時計1を薄型化できる。
【0046】
ロータリースイッチ600の軸部材610、保持部品620、コイルばね630は、平面視で輪列受12の外側に配置され、スイッチレバー700の操作アーム730の溝731が形成された先端部は平面視で輪列受12の目盛部951に重なるが、操作アーム730の少なくとも一部、具体的には、スイッチレバー700の基部710から裏蓋側に延出され、さらに外周側に延出された部分は、先端を除いて輪列受12の目盛部951の外周側に配置されているので、操作アーム730を受け部品14の位置から容易に操作できる。すなわち、輪列受12の裏蓋側の面から操作アーム730までの距離に比べて、受け部品14の裏蓋側の面から操作アーム730までの距離のほうが小さい。このため、ロータリースイッチ600を輪列受12で覆い、輪列受12に開口を形成してその開口から操作アーム730を操作する場合に比べて、ロータリースイッチ600の操作アーム730の少なくとも一部を輪列受12の外周側に配置すれば、受け部品14部分から操作アーム730を操作できるので、操作アーム730を容易に操作することができる。
【0047】
輪列受12は、回転錘31の錘体部311とは平面視で重なるが、厚肉の重錘部312とは重ならないように構成されているので、電子制御式機械時計1を薄型化できる。
また、ロータリースイッチ600は、回転錘31の回転軌跡と平面視で重なる位置に配置されているので、回転錘31の回転軌跡の外周側に配置する場合に比べて、電子制御式機械時計1を小型化できる。また、回転錘31は、回転方向に移動可能であるため、ロータリースイッチ600を操作する場合には、回転錘31を手動でロータリースイッチ600と重ならない位置に移動できるので、回転錘31に邪魔されることなく、ロータリースイッチ600を操作することができる。
【0048】
輪列受12には、ロータリースイッチ600の回転領域に重なる位置に開口が設けられ、この開口に沿って目盛部951が設けられて各目盛952A~952Fが表記されているので、ロータリースイッチ600の設定位置を適切に指示することができる。
また、ロータリースイッチ600の操作アーム730は、輪列受12の目盛部951と受け部品14との間の円弧状の開口に露出しているので、ムーブメント10の完成状態でロータリースイッチ600を操作することができる。このため、アフターサービスにおいても、裏蓋8のみを取り外すことでロータリースイッチ600を操作でき、論理緩急値の調整作業を容易に行うことができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
ロータリースイッチ600は、ムーブメント10の外周部に設けられていたが、他の部品と干渉しない場合には、例えば、回路基板500において電子制御回路100よりもムーブメント10の中心側の位置など、ムーブメント10の外周部以外の場所に設けてもよい。
ロータリースイッチ600は、平面視で、時刻表示用輪列20、発電機70、巻上機構30の巻上輪列、切換機構50と重ならない位置に設けられていたが、レイアウトおよび操作が可能であれば、時刻表示用輪列20、発電機70、巻上機構30の巻上輪列、切換機構50の一部と、ロータリースイッチ600の一部とが平面視で重なるレイアウトを採用してもよい。
【0050】
ロータリースイッチ600は、輪列受12の外周側に配置されるものに限定されず、輪列受12と平面視で重なる位置に配置されるものでもよい。この場合は、輪列受12にロータリースイッチ600を操作するための開口を形成すればよい。
ロータリースイッチ600は、平面視で回転錘31と重なる位置に配置されるものに限らず、回転錘31の回転軌跡の外側に配置してもよい。ただし、ロータリースイッチ600は、平面視で回転錘31と重なる位置に配置したほうが電子制御式機械時計1を小型化できる効果がある。
ロータリースイッチの構成は、前記実施形態に限定されず、例えば、操作アームを備えずにドライバーなどの治具で回転可能なスイッチレバーを用いてもよい。
【0051】
[本開示のまとめ]
本開示の電子制御式機械時計は、機械的エネルギー源と、前記機械的エネルギー源のトルクが伝達され、時刻表示を行う時刻表示用輪列を備える時刻表示装置と、水晶振動子と、前記水晶振動子の発振周波数に基づいて前記時刻表示用輪列の回転速度を調整する電子制御回路と、複数の論理緩急設定パターンとが配置される回路基板と、前記論理緩急設定パターンと導通可能な導通部を有し、前記回路基板に対して回動することで前記導通部と導通する前記論理緩急設定パターンを選択可能なロータリースイッチと、を備え、前記電子制御回路は、前記水晶振動子を発振させる発振回路と、前記発振回路から出力される発振信号を分周して基準信号を出力する分周回路と、前記導通部および前記論理緩急設定パターンの導通状態に基づいて前記分周回路を制御する論理緩急回路と、を備えることを特徴とする。
電子制御式機械時計において、ロータリースイッチを操作することで、論理緩急の設定値を変更することができる。このため、水晶振動子のエージングにより歩度が年々変化した場合でも、販売後のアフターサービスにおいて、裏蓋を外してスイッチレバーを回転することで、歩度のエージング変化量を補正することができ、アフターサービスでの歩度調整作業を容易に行うことができる。したがって、機械的エネルギー源によって駆動する時刻表示用輪列の調速を電子制御で行うことで、機械時計に比べて高精度な電子制御式機械時計の精度をアフターサービスで歩度を調整することで長期間維持することができる。
【0052】
本開示の電子制御式機械時計において、前記ロータリースイッチは、時計ケースに収納されるムーブメントの外周部に設けられることが好ましい。
ロータリースイッチをムーブメントの外周部に設けたので、他の部品とレイアウト的に干渉することが少ないため、ムーブメントの直径を大きくすることなく、ロータリースイッチを配置するスペースを十分に確保できる。
【0053】
本開示の電子制御式機械時計において、前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、前記機械的エネルギー源によって駆動されるローターを備える発電機と、リューズの引き出し操作によって前記リューズの回転力の伝達先を切り換える切換機構と、を備え、前記ロータリースイッチは、平面視で、前記時刻表示用輪列、前記発電機、前記巻上輪列、前記切換機構と重ならない位置に設けられることが好ましい。
ロータリースイッチは、時刻表示用輪列、巻上輪列、切換機構、パワーリザーブ機構、発電機と平面視で重ならない位置に設けられているので、ムーブメントつまり電子制御式機械時計を薄型化できる。
【0054】
本開示の電子制御式機械時計において、前記時刻表示用輪列を保持する輪列受を備え、前記ロータリースイッチは、軸部材と、前記軸部材に対して回転自在に設けられ、かつ、操作アームを有するスイッチレバーと、を備え、前記操作アームの少なくとも一部は、平面視で前記輪列受の外周側に配置されることが好ましい。
ロータリースイッチは、軸部材およびスイッチレバーを備え、スイッチレバーの操作アームの少なくとも一部は平面視で輪列受の外周側に配置されているので、操作アームを容易に操作できる。
【0055】
本開示の電子制御式機械時計において、前記時刻表示用輪列を保持する輪列受と、前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、前記巻上輪列を駆動する回転錘と、を備え、前記回転錘は、錘体部と、前記錘体部の外周側に設けられて前記錘体部に比べて厚肉の重錘部と、を備え、前記輪列受は、平面視で前記錘体部と重なり、且つ、前記重錘部と重ならないことが好ましい。
輪列受は、回転錘の錘体部とは平面視で重なるが、厚肉の重錘部とは重ならないように構成されているので、電子制御式機械時計を薄型化できる。
【0056】
本開示の電子制御式機械時計において、前記時刻表示用輪列を保持する輪列受と、前記機械的エネルギー源を巻き上げる巻上輪列と、前記巻上輪列を駆動する回転錘と、を備え、前記ロータリースイッチは、平面視で前記回転錘と重なる位置に配置されることが好ましい。
ロータリースイッチは、回転錘の回転軌跡と平面視で重なる位置に配置されているので、回転錘の回転軌跡の外周側に配置する場合に比べて、電子制御式機械時計を小型化できる。また、回転錘は、回転方向に移動可能であるため、ロータリースイッチを操作する場合には、回転錘を手動でロータリースイッチと重ならない位置に移動できるので、回転錘に邪魔されることなく、ロータリースイッチを操作することができる。
【0057】
本開示の電子制御式機械時計において、前記時刻表示用輪列を保持する輪列受を備え、前記輪列受には、前記ロータリースイッチの回転領域に重なる位置に開口が設けられ、前記開口に沿って前記ロータリースイッチの設定位置を示す目盛が表記されることが好ましい。
輪列受には、ロータリースイッチの回転領域に重なる位置に開口が設けられ、この開口に沿って目盛部が設けられて各目盛が表記されているので、ロータリースイッチの設定位置を適切に指示することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…電子制御式機械時計、2…外装ケース、3…文字板、4…時刻表示装置、7…りゅうず、8…裏蓋、10…ムーブメント、11…地板、12…輪列受、13…二番受、14…受け部品、20…時刻表示用輪列、30…巻上機構、31…回転錘、50…切換機構、60…パワーリザーブ機構、70…発電機、71…ローター、80…回路部、90…パッケージ、100…電子制御回路、108…水晶振動子、111…発振回路、112…分周回路、120…温度補償機能部、136…論理緩急回路、137…周波数調整制御回路、210…ぜんまい、311…錘体部、312…重錘部、314…開口、500…回路基板、510…第1論理緩急設定パターン、520…第2論理緩急設定パターン、530…第3論理緩急設定パターン、540…ダミーパターン、600…ロータリースイッチ、610…軸部材、620…保持部品、630…コイルばね、700…スイッチレバー、720…スイッチアーム、721…導通部、730…操作アーム、951…目盛部、952A…目盛。