(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036871
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】幅木、幅木構造体、および軟質部材収納物
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
E04F19/04 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141400
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】592048176
【氏名又は名称】ケージーパルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119389
【弁理士】
【氏名又は名称】門脇 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正
(57)【要約】
【課題】 適用現場での特性に有効性を備えた幅木または幅木構造体を提供し、また、幅木を収納した軟質部材収納物を提供する。
【解決手段】 幅木1は、壁面SWと壁面SWに続く床面SFとの交差部分を遮蔽する本体部10を備える。本体部10(幅木1)は、屈曲する軟質合成樹脂で形成され、長さ方向DLに内包されたガラス繊維12を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面と前記壁面に続く床面との交差部分を遮蔽する本体部を備える幅木であって、
前記本体部は、屈曲する軟質合成樹脂で形成され、長さ方向に内包されたガラス繊維を有すること
を特徴とする幅木。
【請求項2】
請求項1に記載の幅木であって、
前記ガラス繊維は、互いに離れて少なくとも2本あること
を特徴とする幅木。
【請求項3】
請求項2に記載の幅木であって、
前記ガラス繊維は、一方が前記本体部の垂直方向での上側に位置し、他方が前記本体部の垂直方向での下側に位置すること
を特徴とする幅木。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の幅木であって、
前記本体部は、前記床面の側に気密クッションを備える
ことを特徴とする幅木。
【請求項5】
請求項4に記載の幅木であって、
前記本体部および前記気密クッションは、露出表面に抗ウイルス抗菌表面軟質層を備える
ことを特徴とする幅木。
【請求項6】
壁面と、前記壁面に続く床面と、前記壁面および前記床面の間を遮蔽して前記壁面に固定される本体部を有する幅木と、を備える幅木構造体であって、
前記幅木は、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の幅木であることを特徴とする幅木構造体。
【請求項7】
軟質合成樹脂で形成された幅木を収納した軟質部材収納物であって、
略正方形の平面を表裏に有する扁平薄型の箱部を備え、前記幅木は、前記平面に向き合って渦巻き状に巻き込まれてあり、
前記幅木は、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の幅木であること
を特徴とする軟質部材収納物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質合成樹脂で形成された幅木、この幅木が適用された幅木構造体、およびこの幅木を収納した軟質部材収納体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築部材として、可撓性を有する合成樹脂で形成された幅木が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。可撓性を有する幅木は、輸送、運搬がしやすいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-129652号公報
【特許文献2】特開2014-218869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人においても可撓性の建材を提供することは輸送、運搬に限らず種々の利点が想定されることから採用を検討していた。しかし、上記した従来の技術においては現場の実態に不十分な事項があるという課題を見出した。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、可撓性を有する軟質合成樹脂を適用した幅木でありながら適用現場での特性に有効性を備えた幅木を提供することを目的とする。
また、本発明は、このような幅木を適用することにより適用現場での特性に有効性を備えた幅木構造体を提供することを他の目的とする。
また、本発明は、このような幅木を収納した軟質部材収納物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る幅木は、壁面と前記壁面に続く床面との交差部分を遮蔽する本体部を備える幅木であって、前記本体部は、屈曲する軟質合成樹脂で形成され、長さ方向に内包されたガラス繊維を有することを特徴とする。
したがって、本発明に係る幅木は、寸法変化が抑制されやすい。このため、幅木は、設置現場での美観および信頼性を向上する。
また、本発明の一実施の形態に係る幅木では、前記ガラス繊維は、互いに離れて少なくとも2本あることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係る幅木では、前記ガラス繊維は、一方が前記本体部の垂直方向での上側に位置し、他方が前記本体部の垂直方向での下側に位置することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係る幅木では、前記本体部は、前記床面の側に気密クッションを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係る幅木では、前記本体部および前記気密クッションは、露出表面に抗ウイルス抗菌表面軟質層を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る幅木構造体は、壁面と、前記壁面に続く床面と、前記壁面および前記床面の間を遮蔽して前記壁面に固定される本体部を有する幅木と、を備える幅木構造体であって、前記幅木は、本願発明に係る幅木であることを特徴とする。
したがって、本発明に係る幅木構造体は、寸法変化率の抑制された幅木構造体となり、使用環境に対する美観と信頼性を向上する。
また、本発明に係る軟質部材収納物は、軟質合成樹脂で形成された幅木を収納した軟質部材収納物であって、略正方形の平面を表裏に有する扁平薄型の箱部を備え、前記幅木は、前記平面に向き合って渦巻き状に巻き込まれてあり、前記幅木は、本願発明に係る幅木であることを特徴とする。
したがって、本発明に係る軟質部材収納物は、長さの長い幅木であっても、箱部に渦巻き状に収容されるので、専有面積を抑制しやすく、設置現場への運送提供を容易にし、現場での設置作業の効率化を図りやすい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る幅木は、適用現場での特性に有効性を実現するという効果を奏する。
また、本発明に係る幅木構造体は、適用現場での特性に有効性を実現するという効果を奏する。
また、本発明に係る軟質部材収納物は、設置現場への運送提供を容易にし、現場での設置作業の効率化を図りやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る幅木および幅木構造体を前方斜め上方から見た状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した幅木および幅木構造体の相関配置の下で、幅木の端面を拡大して示す拡大端面図である。
【
図3】本発明の実施の形態2に係る幅木を収納する軟質部材収納物を正面から透視して内部状態を示す透視正面図である。
【
図4】
図3に示した軟質部材収納物を前方斜め上方から見た状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面(
図1ないし
図4)を参照して本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1(
図1、
図2)は、幅木1および幅木構造体1sについて、実施の形態2(
図3、
図4)は、幅木1を収納した軟質部材収納物5について説明する。
【0010】
[実施の形態1](
図1、
図2)
図1は、本発明の実施の形態1に係る幅木1および幅木構造体1sを前方斜め上方から見た状態で示す斜視図である。
図1では、幅木1の一部を長さ方向DLで切断した状態で示し、端面10tを表示した状態で示す。つまり、端面10tでは、ガラス繊維12の端部が露出した状態となるが、長さ方向DLでは、本体部10に内包された状態となる。
図2は、
図1に示した幅木1および幅木構造体1sの相関配置の下で、幅木1の端面10tを拡大して示す拡大端面図である。なお、端面は任意の位置で抽出して示す。
本実施の形態に係る幅木1は、壁面SWと壁面SWに続く床面SFとの交差部分を遮蔽する本体部10を備える。本体部10(幅木1)は、屈曲する軟質合成樹脂で形成され、長さ方向DLに内包されたガラス繊維12を有する。
幅木1は、軟質合成樹脂で形成された本体部10を備え、本体部10は、内部に長さ方向DLに位置するガラス繊維12を備える。軟質合成樹脂は寸法変化を生じるが、長さ方向DLにガラス繊維12を内包するので、軟質合成樹脂の寸法変化が抑制されやすく、幅木1は、寸法変化が抑制されやすい。このため、幅木1は、設置現場での美観および信頼性を向上する。つまり、幅木1は、適用現場での特性に有効性を実現する。
幅木1に係る軟質合成樹脂は、例えば軟質PVC(ポリ塩化ビニル:polyvinyl chloride)であることが好ましい。本体部10に軟質PVCを適用したときの寸法変化率の実験データは次のとおりであった。
ガラス繊維12を内包した場合の幅木1の寸法変化率は、熱サイクル処理を施した直後で例えば-0.3%、30分後で例えば+0.1%となった。ガラス繊維12を内包しない従来品での寸法変化率は、熱サイクル処理後に直後で例えば-1.4%、30分後で例えば-1.0%であった。つまり、寸法変化率は、およそ4倍から10倍改善された。
熱サイクル処理は、約70℃×6時間、約-10℃×6時間の熱サイクル条件で2回処理を施した。測定条件は、処理直後は室温(約23℃)で、30分後は室温放置(同前)で測定した。
【0011】
幅木1において、ガラス繊維12は、互いに離れて少なくとも2本あることが好ましい。ガラス繊維12は、互いに離れて少なくとも2本位置するので、本体部10に対する作用をより効果的に奏しやすい。
ガラス繊維12は、ガラスの単繊維を複数撚り合わせたものであり、本実施の形態では、単繊維の呼び径は例えば9マイクロメートルであり、単繊維の総本数は例えば1200本である。ガラス繊維12は、ガラスヤーンとも呼ばれる撚線である。
幅木1において少なくとも2本としたガラス繊維12は、一方が本体部10の垂直方向DVでの上側に位置し、他方が本体部10の垂直方向DVでの下側に位置することが好ましい。
ガラス繊維12は、本体部10において、垂直方向DVの上側と下側に分かれて位置するので、本体部10に対して均等に寸法変化を抑制しやすい。
【0012】
幅木1の本体部10は、床面SFの側に気密クッション14を備えることが好ましい。
幅木1の本体部10は、床面SFの側に床面SFと接触する気密クッション14を備えるので、幅木1の気密性を維持しやすい。気密クッション14は、本体部10の床面SFの側に本体部10から突き出た状態で位置する。気密クッション14は、本体部10と別に成形する必要はなく、本体部10の一部として一体に成形されることが好ましい。気密クッション14は、本体部10より軟性を高くしても良い。
幅木1において、本体部10および気密クッション14は、露出表面に抗ウイルス抗菌表面軟質層16を備えることが好ましい。
本体部10と気密クッション14は、露出表面に抗ウイルス抗菌表面軟質層16を備えるので、本体部10および気密クッション14の機能を維持した状態で抗ウイルス性、抗菌性を向上しやすい。
抗ウイルス抗菌表面軟質層16は、軟質PVCであり、例えば、木目模様を有する。抗ウイルス抗菌表面軟質層16は、周囲環境における保健性を向上しやすい。抗ウイルス抗菌表面軟質層16は、本体部10および気密クッション14の変形にそのまま追従する特性を備える。つまり、抗ウイルス抗菌表面軟質層16は、本体部10および気密クッション14と一体に形成されることが好ましい。
なお、抗ウイルス抗菌表面軟質層16の厚みは、例えば300~400マイクロメートル程度が好ましい。
【0013】
本実施の形態に係る幅木構造体1sは、壁面SWと、壁面SWに続く床面SFと、壁面SWおよび床面SFの間を遮蔽して壁面SWに固定される本体部10を有する幅木1と、を備える。
幅木構造体1sに適用される幅木1は、本実施の形態に係る幅木1であることが好ましい。幅木構造体1sは、寸法変化率が抑制された幅木1を備えるので、寸法変化率の抑制された幅木構造体1sとなり、使用環境に対する美観と信頼性を向上する。つまり、幅木構造体1sは、適用現場での特性に有効性を実現する。
【0014】
[実施の形態2](
図3、
図4)
図3は、本発明の実施の形態2に係る幅木1を収納する軟質部材収納物5を正面から透視して内部状態を示す透視正面図である。
図4は、
図3に示した軟質部材収納物5を前方斜め上方から見た状態で示す斜視図である。
本実施の形態に係る軟質部材収納物5は、軟質合成樹脂で形成された幅木1を収納したものである。軟質部材収納物5は、略正方形の平面を表裏に有する扁平薄型の箱部50を備え、幅木1は、平面に向き合って渦巻き状に巻き込まれてあり、幅木1は、実施の形態1に係る幅木1である。
軟質部材収納物5に収納された幅木1は、長さの長い幅木1であっても、箱部50に渦巻き状に収容されるので、専有面積を抑制しやすく、設置現場への運送提供を容易にし、現場での設置作業の効率化を図りやすい。
軟質部材収納物5の中は、巻き付け部材56の周囲に渦巻き状に巻き込まれた幅木1が収納され、矩形状の平面を有する箱部50の頂点の一つは引出口52を備え、引出口52から幅木1が取り出される。引出口52は、取り出しと保存を容易にする開閉蓋54を備える。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、建築資材としての幅木に関し、また、建築構造物としての幅木構造体に関し、また、建築資材としての軟質部材収納物に係るので、それぞれが有効に産業上実用される。
【符号の説明】
【0016】
1 幅木
1s 幅木構造体
5 軟質部材収納物
10 本体部
10t 端面
12 ガラス繊維
14 気密クッション
16 抗ウイルス抗菌表面軟質層
50 箱部
52 引出口
54 開閉蓋
56 巻き付け部材
DL 長さ方向
DV 垂直方向
SC 天井
SF 床面
SW 壁面