(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036892
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】可変動弁装置
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F01L13/00 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141432
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】尾関 久志
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AB05
3G018AB18
3G018BA12
3G018CA19
3G018DA14
3G018DA18
3G018DA29
3G018DA51
3G018DA68
3G018DA69
3G018FA03
3G018GA23
(57)【要約】
【課題】ロッカーアームの大型化を抑えると共に、部品同士の片当たりによる摩耗を抑える。
【解決手段】可変動弁装置には、所定方向に離間した一対のカムハウジングと、一対のカムハウジングに支持されたロッカーシャフトと、ロッカーシャフトに支持された複数のロッカーアーム(51a、51b)と、ロッカーアーム(51b)のピン穴に設置された連結ピン(61)と、ロッカーアーム(51a)のピン穴に設置された戻しピン(62)と、連結ピンに戻しピンを押し込ませる押圧部材(63)と、戻しピンに連結ピンを押し戻させる反発部材(64)と、一対のカムハウジングに両持ち支持された上部ハウジング(70)と、が設けられている。上部ハウジングには、押圧部材が設置された第1の収容穴(82)と、反発部材が設置された第2の収容穴(83)と、が形成されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドにおいて吸気バルブ及び排気バルブのバルブ動作を変更可能な可変動弁装置であって、
前記シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジングと、
前記一対のカムハウジングの対向部分に支持されたロッカーシャフトと、
前記ロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアームと、
所定方向の一方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された連結ピンと、
所定方向の他方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された戻しピンと、
前記連結ピンに前記戻しピンを他方側に向けて押し込ませる押圧部材と、
前記戻しピンに前記連結ピンを一方側に向けて押し戻させる反発部材と、
前記一対のカムハウジングの上面に両持ち支持された上部ハウジングと、を備え、
前記上部ハウジングには、前記一方寄りのロッカーアームよりも一方側で前記押圧部材が設置された第1の収容穴と、前記他方寄りのロッカーアームよりも他方側で前記反発部材が設置された第2の収容穴と、が形成されていることを特徴とする可変動弁装置。
【請求項2】
前記上部ハウジングは、前記一対のカムハウジングに固定された一対のハウジング固定部と、前記シリンダヘッドの吸気側にて前記一対のハウジング固定部を接続する第1のブリッジ部と、を有し、
一方のハウジング固定部と前記第1のブリッジ部の接続箇所に前記第1の収容穴が形成され、他方のハウジング固定部と前記第1のブリッジ部の接続箇所に前記第2の収容穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置。
【請求項3】
前記第1のブリッジ部には、前記連結ピン、前記戻しピン、前記押圧部材、前記反発部材の接触箇所に潤滑油を供給する複数の供給穴が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項4】
前記第1のブリッジ部には、前記吸気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する供給穴が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の可変動弁装置。
【請求項5】
前記上部ハウジングは、前記シリンダヘッドの吸気側及び排気側の中間にて前記一対のハウジング固定部を接続する第2のブリッジ部を有し、
前記第1のブリッジ部と前記第2のブリッジ部の間で前記一対のハウジング固定部が前記一対のカムハウジングに固定されていることを特徴とする請求項2に記載の可変動弁装置。
【請求項6】
前記第2のブリッジ部には、前記複数のロッカーアームの潤滑油を供給する複数の供給穴が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の可変動弁装置。
【請求項7】
前記上部ハウジングは、前記シリンダヘッドの排気側にて前記一対のハウジング固定部を接続する第3のブリッジ部を有し、
前記第3のブリッジ部の両端で前記一対のハウジング固定部が前記一対のカムハウジングに固定されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の可変動弁装置。
【請求項8】
前記第3のブリッジ部には、前記排気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する供給穴が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の可変動弁装置。
【請求項9】
前記押圧部材が油圧で作動する油圧ピストンであり、
前記一対のカムハウジングと前記一対のハウジング固定部の合わせ面には前記油圧ピストンに作動油を供給するオイル通路が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の可変動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変動弁装置として複数のロッカーアームを連結させてバルブ動作を切り替えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の可変動弁装置には一対のロッカーアームが隣接して設置されており、一方のロッカーアームのピン穴に連結ピンが設置されている。連結ピンの一部が他方のロッカーアームのピン穴に押し込まれることで、一対のロッカーアームが連結されて一対のバルブが同時に作動される。連結ピンの一部が他方のロッカーアームのピン穴から抜け出すことで、一対のロッカーアームの連結状態が解除されて片側のバルブだけが作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の他方のロッカーアームのピン穴には、連結ピンを押し返すためのスプリングピンが設置されている。このため、ロッカーアームが大型化して動弁系の運動部の質量が大きくなり、上記の可変動弁装置が高速回転のエンジンには適さない。この場合、他方のロッカーアームのピン穴に戻しピンを設置し、他方のロッカーアームの外側にスプリングピンを設置する構造も考えられる。連結ピンは一方側から駆動ピンによって押し込まれており、この駆動ピンとスプリングピンの平行度が出難く、部品同士が片当たりして摩耗するおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ロッカーアームの大型化を抑えると共に、部品同士の片当たりによる摩耗を抑えることができる可変動弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の可変動弁装置は、シリンダヘッドにおいて吸気バルブ及び排気バルブのバルブ動作を変更可能な可変動弁装置であって、前記シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジングと、前記一対のカムハウジングの対向部分に支持されたロッカーシャフトと、前記ロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアームと、所定方向の一方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された連結ピンと、所定方向の他方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された戻しピンと、前記連結ピンに前記戻しピンを他方側に向けて押し込ませる押圧部材と、前記戻しピンに前記連結ピンを一方側に向けて押し戻させる反発部材と、前記一対のカムハウジングの上面に両持ち支持された上部ハウジングと、を備え、前記上部ハウジングには、前記一方寄りのロッカーアームよりも一方側で前記押圧部材が設置された第1の収容穴と、前記他方寄りのロッカーアームよりも他方側で前記反発部材が設置された第2の収容穴と、が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の可変動弁装置によれば、押圧部材によって連結ピンを介して戻しピンが他方側に押し込まれると、一方寄りのロッカーアームのピン穴から他方寄りのロッカーアームのピン穴に連結ピンが部分的に入り込んで複数のロッカーアームが連結される。反発部材によって戻しピンを介して連結ピンが一方側に押し戻されると、他方寄りのロッカーアームのピン穴から連結ピンが抜け出して複数のロッカーアームの連結が解除される。このように、簡易な構成によって複数のロッカーアームの連結状態及び解除状態を切り替えることができる。また、上部ハウジングに第1の収容穴及び第2の収容穴が形成されているため、部品同士の平行度が出易くなって部品同士の片当たりによる摩耗が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例のエンジン及び車体フレームの左側面図である。
【
図2】本実施例のシリンダヘッド内の斜視図である。
【
図4】本実施例の上部ハウジングの上面図及び下面図である。
【
図5】本実施例のシリンダヘッド内の上面図である。
【
図6】
図5のシリンダヘッドをA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図7】
図6のシリンダヘッドをB-B線に沿って切断した断面図である。
【
図8】
図5のシリンダヘッドをC-C線に沿って切断した断面図である。
【
図9】
図5のシリンダヘッドをD-D線に沿って切断した断面図である。
【
図10】
図5のシリンダヘッドをE-E線に沿って切断した断面図である。
【
図11】
図5のシリンダヘッドをF-F線に沿って切断した断面図である。
【
図12】
図5のシリンダヘッドをG-G線に沿って切断した断面図である。
【
図13】実施例の作動通路及びショートカット通路の模式図である。
【
図14】本実施例の可変動弁装置の連結動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の可変動弁装置は、シリンダヘッドにおいて吸気バルブ及び排気バルブのバルブ動作を変更している。シリンダヘッド内には一対のカムハウジングが所定方向に離間しており、一対のカムハウジングの対向部分にロッカーシャフトが支持されている。ロッカーシャフトには複数のロッカーアームが揺動可能に支持されており、所定方向の一方寄りのロッカーアームのピン穴に連結ピンが設置され、所定方向の他方寄りのロッカーアームのピン穴に戻しピンが設置されている。押圧部材によって連結ピンを介して戻しピンが他方側に押し込まれると、一方寄りのロッカーアームのピン穴から他方寄りのロッカーアームのピン穴に連結ピンが部分的に入り込んで複数のロッカーアームが連結される。反発部材によって戻しピンを介して連結ピンが一方側に押し戻されると、他方寄りのロッカーアームのピン穴から連結ピンが抜け出して複数のロッカーアームの連結が解除される。このように、簡易な構成によって複数のロッカーアームの連結状態及び解除状態を切り替えることができる。また、一対のカムハウジングの上面には上部ハウジングが両持ち支持されている。上部ハウジングには、一方寄りのロッカーアームよりも一方側の第1の収容穴に押圧部材が設置され、他方寄りのロッカーアームよりも他方側の第2の収容穴に反発部材が設置されている。上部ハウジングに第1の収容穴及び第2の収容穴が形成されているため、部品同士の平行度が出易くなって部品同士の片当たりによる摩耗が抑えられる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は本実施例のエンジン及び車体フレームの左側面図である。
図2は、本実施例のシリンダヘッド内の斜視図である。
図3は、本実施例の可変動弁装置の斜視図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。また、以下の説明では、シリンダヘッドの左右方向の中央側を一方側とし、シリンダヘッドの左右方向の外側を他方側として説明する。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両は、クレードル型の車体フレーム10にエンジン20や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11の上部から後方に延びた後に下方に屈曲したメインチューブ12と、ヘッドパイプ11の下部から下方に延びた後に後方に屈曲したダウンチューブ13とを有している。メインチューブ12の下端部にダウンチューブ13の後端部が接合されて車体フレーム10の内側にエンジン20の設置空間が形成されている。メインチューブ12によってエンジン20の後側が支持され、ダウンチューブ13によってエンジン20の前側及び下側が支持されている。
【0012】
エンジン20は、並列2気筒エンジンであり、クランクケース21と、クランクケース21上に設けられたシリンダ22と、シリンダ22上に設けられたシリンダヘッド23と、シリンダヘッド23上に設けられたシリンダヘッドカバー24とを有している。クランクケース21の左側面には、マグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー25が取り付けられている。マグネトカバー25の後方には、ドライブスプロケット(不図示)を側方から覆うスプロケットカバー26が取り付けられている。クランクケース21の右側面にはクラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー(不図示)が取り付けられている。
【0013】
エンジン20の前方には、エンジン20の冷却水を放熱するラジエータ15が設置されている。シリンダヘッドカバー24の外面には、可変動弁装置40への油圧を制御するオイルコントロールバルブ16が設置されている。オイルコントロールバルブ16にはクランクケース21のメインギャラリから外部配管17を通じてオイルが供給されている。シリンダヘッド23及びシリンダヘッドカバー24の内側には動弁室が形成されている。動弁室には、油圧によって吸気バルブ33(
図3参照)及び排気バルブ34(
図3参照)のバルブ動作を変化させる可変動弁装置40(
図3参照)が搭載されている。
【0014】
図2に示すように、エンジン20は4バルブの2気筒エンジンであり、2気筒の中間にカムチェーン31が設置されている。カムチェーン31はカムスプロケット32に巻き掛けられており、カムスプロケット32を挟んで左右の気筒毎に可変動弁装置40が設置されている。可変動弁装置40には、カムスプロケット32と一体に回転するカムシャフト41が設けられている。シリンダヘッド23内には気筒毎にカムハウジング42a、42bが左右方向(所定方向)に離間して設置されており、このカムハウジング42a、42bとシリンダヘッド23の合わせ面によってカムシャフト41が回転可能に支持されている。
【0015】
シリンダヘッド23内には、カムシャフト41の後側に4つの吸気バルブ33(
図3参照)が設置され、カムシャフト41の前側に4つの排気バルブ34が設置されている。吸気バルブ33は弁バネ35(
図3参照)によって閉弁方向に押し付けられており、排気バルブ34は弁バネ36によって閉弁方向に押し付けられている。カムシャフト41の外周面には低速カム43、高速カム44、排気カム45(いずれも
図3参照)が形成されている。各カム43-45はベース円の一部からカム山が突き出した板状に形成されている。低速カム43よりも高速カム44のバルブリフト量が大きくなるように、低速カム43よりも高速カム44のカム山が高くなっている。
【0016】
カムハウジング42a、42bの対向部分には吸気側のロッカーシャフト46及び排気側のロッカーシャフト47が支持されている。吸気側のロッカーシャフト46及び排気側のロッカーシャフト47はカムシャフト41よりも上方に位置しており、吸気側のロッカーシャフト46及び排気側のロッカーシャフト47がカムシャフト41と平行に延在している。また、シリンダヘッド23の左右の側壁が凹状に窪んでおり、シリンダヘッド23の窪みには一対のプラグカバー18が設置されている。シリンダヘッド23の後側には可変動弁装置40にオイルを供給するオイルコントロールバルブ16が設置されている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、吸気側のロッカーシャフト46には2種類のロッカーアーム51a、51bが揺動可能に支持され(
図3ではそれぞれ1つのみ図示)、排気側のロッカーシャフト47にはロッカーアーム52が揺動可能に支持されている(
図3では1つのみ図示)。吸気側のロッカーアーム51a及び排気側のロッカーアーム52は、力点と作用点を持ったシーソー状に形成されているが、吸気側のロッカーアーム51bはロッカーアーム51aの力点になるように形成されている。吸気側のロッカーアーム51a及び排気側のロッカーアーム52の左右両端は二股に分かれている。
【0018】
吸気側のロッカーアーム51aの一端には低速カム43に転接するローラ53aが回転可能に支持され、ロッカーアーム51aの二股に分かれた他端には一対の吸気バルブ33が連結されている。吸気側のロッカーアーム51bの一端には高速カム44に転接するローラ53bが回転可能に支持されており、ロッカーアーム51bの他端には吸気バルブ33は連結されていない。排気側のロッカーアーム52の一端には排気カム45に転接するローラ54が回転可能に支持され、ロッカーアーム52の二股に分かれた他端には一対の排気バルブ34が連結されている。ロッカーアーム51a、51bは連結可能に形成されている。
【0019】
エンジンの低回転時及び中回転時には、ロッカーアーム51a、51bが連結されていない。このため、低速カム43によってロッカーアーム51aが揺動され、高速カム44によってロッカーアーム51bが揺動される。ロッカーアーム51aには一対の吸気バルブ33が連結されているため、低速カム43の回転に応じて一対の吸気バルブ33が動かされる。低速カム43のカム山が低いため、一対の吸気バルブ33のバルブリフト量が低くなっている。なお、ロッカーアーム51bには吸気バルブ33が連結されていないため、高速カム44の回転に応じてロッカーアーム51bが空振りしている。
【0020】
エンジンの高回転時には、ロッカーアーム51a、51bが連結されている。このため、高速カム44によってロッカーアーム51a、51bが一体的に揺動される。ロッカーアーム51bにはロッカーアーム51aを介して一対の吸気バルブ33が連結されているため、高速カム44の回転に応じて一対の吸気バルブ33が動かされる。高速カム44のカム山が高いため、一対の吸気バルブ33のバルブリフト量が高くなっている。このように、ロッカーアーム51a、51bの連結状態が切り替わることによって、吸気バルブ33を動かす低速カム43と高速カム44が切り替えられている。
【0021】
各可変動弁装置40には、油圧によってロッカーアーム51a、51bの連結状態及び非連結状態を切り替える切替機構が設けられている。シリンダヘッド23の左右方向(所定方向)の一方寄り(中央寄り)のロッカーアーム51bのピン穴に連結ピン61が設置され、シリンダヘッド23の左右方向の他方寄り(外側寄り)のロッカーアーム51aのピン穴に戻しピン62が設置されている。ロッカーアーム51bよりも一方側に油圧ピストン(押圧部材)63が設置され、ロッカーアーム51aよりも他方側にバネ付きのスプリングピン(反発部材)64が設置されている。
【0022】
油圧ピストン63は連結ピン61に戻しピン62を他方側に向けて押し込ませ、スプリングピン64は戻しピン62に連結ピン61を一方側に向けて押し戻させている。油圧ピストン63によって連結ピン61が押し込まれることで、ロッカーアーム51bのピン穴からロッカーアーム51aのピン穴に連結ピン61の一部が入り込んでロッカーアーム51a、51bが連結される。スプリングピン64によって戻しピン62を介して連結ピン61が押し戻されることで、ロッカーアーム51aのピン穴から連結ピン61の一部が抜け出してロッカーアーム51a、51bの連結が解除される。
【0023】
ところで、油圧ピストン63とスプリングピン64が左右方向に大きく離間して設置されている。油圧ピストン63とスプリングピン64が別部材に設置されている場合には、油圧ピストン63とスプリングピン64の平行度が出難く、部品同士が片当たりして摩耗するおそれがある。そこで、本実施例の可変動弁装置40にはカムハウジング42a、42bの上面に上部ハウジング70が両持ち支持されて、上部ハウジング70に油圧ピストン63及びスプリングピン64が設置されている。油圧ピストン63及びスプリングピン64が同一部材に設置されることによって油圧ピストン63とスプリングピン64の平行度が確保されている。
【0024】
また、カムシャフト41からオイルを連続的に噴射して、オイルの飛沫によってロッカーアーム51a、51b、52を潤滑すると、エンジン20の油圧が低下して可変動弁装置40の動作回転数が得られないおそれがある。さらに、カムにオイルが付着することでメカニカルロスが増大すると共に、重要部品が十分に潤滑されずに摩耗するおそれがある。そこで、本実施例の上部ハウジング70がラダー形状に形成されて、ロッカーシャフト46、47及びカムシャフト41に沿った上部ハウジング70のブリッジ部分から動弁部品の必要な箇所に潤滑油が供給されている。
【0025】
以下、
図4から
図13を参照して、潤滑用及び作動用のオイル通路について説明する。
図4は本実施例の上部ハウジングの上面図及び下面図である。
図5は本実施例のシリンダヘッド内の上面図である。
図6は
図5のシリンダヘッドをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7は
図6のシリンダヘッドをB-B線に沿って切断した断面図である。
図8は
図5のシリンダヘッドをC-C線に沿って切断した断面図である。
図9は
図5のシリンダヘッドをD-D線に沿って切断した断面図である。
図10は
図5のシリンダヘッドをE-E線に沿って切断した断面図である。
図11は
図5のシリンダヘッドをF-F線に沿って切断した断面図である。
図12は
図5のシリンダヘッドをG-G線に沿って切断した断面図である。
図13は実施例の作動通路及びショートカット通路の模式図である。
【0026】
図4に示すように、上部ハウジング70は、前後に延びるハウジング固定部71a、71bと、左右に延びる第1-第3のブリッジ部72-74と、によってラダー形状に形成されている。ハウジング固定部71a、71bは、カムハウジング42a、42b(
図2参照)に固定されている。第1のブリッジ部72は、シリンダヘッド23の吸気側にてハウジング固定部71a、71bを接続している。第2のブリッジ部73は、シリンダヘッド23の吸気側及び排気側の中間にてハウジング固定部71a、71bを接続している。第3のブリッジ部74は、シリンダヘッド23の排気側にてハウジング固定部71a、71bを接続している。
【0027】
ハウジング固定部71a、71bには取付穴75a、75bが形成されている。取付穴75aによって第1のブリッジ部72と第2のブリッジ部73の間でハウジング固定部71a、71bがカムハウジング42a、42bに固定されている。取付穴75bによって第3のブリッジ部74の両端でハウジング固定部71a、71bがカムハウジング42a、42bに固定されている。第1、第2のブリッジ部72、73の間にボルトの締付箇所が確保され、第3のブリッジ部74の両端にボルトの締付箇所が確保されて、上部ハウジング70を大型化することなくカムハウジング42a、42bに固定できる。
【0028】
第1のブリッジ部72は吸気側のロッカーシャフト46(
図3参照)に沿って延びており、第1のブリッジ部72内には潤滑油が通る潤滑通路76k(
図9参照)が形成されている。第1のブリッジ部72の下面には複数の供給穴77cが形成されており、複数の供給穴77cは部品同士の接触箇所の上方に位置している。第1のブリッジ部72から吸気側に一対のノズル78が突き出しており、一対のノズル78の先端の供給穴77dは一対の吸気バルブ33(
図10参照)の上方に位置している。第1のブリッジ部72は接続部81a、81bを介してハウジング固定部71a、71bに接続されている。
【0029】
第1のブリッジ部72とハウジング固定部71aの接続箇所である接続部81aには油圧室(第1の収容穴)82(
図14参照)が形成されている。第1のブリッジ部72とハウジング固定部71bの接続箇所である接続部81bには収容穴(第2の収容穴)83(
図14参照)が形成されている。油圧室82には油圧ピストンとしての油圧ピストン63(
図9参照)が設置されており、収容穴83にはスプリングピン64(
図9参照)が設置されている。油圧室82及び収容穴83は同軸上に形成されており、油圧ピストン63とスプリングピン64の平行度が確保されている。油圧室82には潤滑油とは異なる油圧回路を通じて作動油が供給されている。
【0030】
第2のブリッジ部73はカムシャフト41(
図3参照)に沿って延びており、第2のブリッジ部73内には潤滑通路76n(
図12参照)が形成されている。第2のブリッジ部73の下面には複数の供給穴77eが形成されており、複数の供給穴77eはロッカーアーム51a、51b、52の上方に位置している。第3のブリッジ部74は排気側のロッカーシャフト47(
図3参照)に沿って延びている。第3のブリッジ部74から排気側に一対のノズル79が突き出しており、一対のノズル79の先端の供給穴77f(
図10参照)は一対の排気バルブ34(
図10参照)の上方に位置している。
【0031】
ハウジング固定部71aの吸気側にはオイル穴84が形成されており、オイル穴84にはオイルコントロールバルブ16から作動油が供給されている。ハウジング固定部71aの下面にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部71aがカムハウジング42aに固定されることで作動油が通る作動通路(オイル通路)85及びショートカット通路(オイル通路)86が形成される。作動通路85及びショートカット通路86は油圧ピストン63が設置された油圧室82(
図14参照)に連通しており、オイルコントロールバルブ16から作動通路85及びショートカット通路86を通じて油圧室82に作動油が供給されている。
【0032】
ハウジング固定部71aの中央にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部71aがカムハウジング42aに固定されることで潤滑通路76lが形成される。潤滑通路76lにはカムシャフト41側から潤滑油が入り込み、第2のブリッジ部73に潤滑油を送り出している。ハウジング固定部71bの下面にはオイル溝が形成されており、ハウジング固定部71bがカムハウジング42bに固定されることで潤滑通路76iが形成される。潤滑通路76iにはカムシャフト41側から潤滑油が入り込み、第1のブリッジ部72に潤滑油を送り出している。このように、上部ハウジング70には、潤滑油及び作動油の油圧回路が形成されている。
【0033】
図5から
図7に示すように、シリンダヘッド23がシリンダ22を介してクランクケース21に複数のヘッドボルト27で固定されている。排気側のヘッドボルト27とボルト穴の隙間は潤滑通路76aになっており、潤滑通路76aからカムシャフト41に潤滑通路76bが斜めに延びている。潤滑通路76a、76bを通じてクランクケース21からカムシャフト41の周囲に潤滑油が導かれ、カムシャフト41の周囲からカムシャフト41内の潤滑通路76cに潤滑油が導かれている。説明は省略するが、潤滑通路76cの潤滑油はカムシャフト41の周辺部品の潤滑に利用される。
【0034】
一方側(左右方向の中央側)のハウジング固定部71aがカムハウジング42aを介してシリンダヘッド23に一対のハウジングボルト28で固定されている。一対のハウジングボルト28とボルト穴の隙間はカムシャフト41の周囲からロッカーシャフト46、47に延びる潤滑通路76d、76eになっている。潤滑通路76d、76eを通じてロッカーシャフト46、47内の潤滑通路76f、76gに潤滑油が導かれている。ロッカーシャフト46の供給穴77aから吸気側のロッカーアーム51a、51bに潤滑油が供給され、ロッカーシャフト47の供給穴77bから排気側のロッカーアーム52に潤滑油が供給されている。
【0035】
図8に示すように、他方側(左右方向の外側)のハウジング固定部71bがカムハウジング42bを介してシリンダヘッド23に一対のハウジングボルト28で固定されている。吸気側のハウジングボルト28とボルト穴の隙間はロッカーシャフト46の潤滑通路76fの他端からハウジング固定部71bに延びる潤滑通路76hになっている。ハウジング固定部71bとカムハウジング42bの合わせ面の潤滑通路76iから第1のブリッジ部72に潤滑通路76jが斜めに延びている。潤滑通路76fの一端から他端に潤滑油が導かれ、潤滑通路76h-76jを通じて第1のブリッジ部72内の潤滑通路76kに潤滑油が導かれている。
【0036】
図9及び
図10に示すように、第1のブリッジ部72の複数の供給穴77cから油圧ピストン63、連結ピン61、戻しピン62、スプリングピン64の接触箇所に潤滑油が供給される。ピン部品同士の接触箇所が潤滑されて摩耗が抑えられている。第1のブリッジ部72から吸気側に一対のノズル78が突き出しており、一対のノズル78の供給穴77dがシリンダヘッドカバー24の内壁面に対向している。一対のノズル78の供給穴77dからシリンダヘッドカバー24の内壁面に潤滑油が吹き当てられ、シリンダヘッドカバー24の内壁面を伝って一対の吸気バルブ33のステムエンドに潤滑油が供給される。
【0037】
図11及び
図12に示すように、ハウジング固定部71aとカムハウジング42aの合わせ面の潤滑通路76lから第2のブリッジ部73に潤滑通路76mが斜めに延びている。潤滑通路76eを通じてカムシャフト41の周囲からハウジング固定部71aにオイルが導かれ、潤滑通路76l、76mを通じて第2のブリッジ部73内の潤滑通路76nに潤滑油が導かれている。第2のブリッジ部73の複数の供給穴77eからロッカーアーム51a、51b、52のローラ53a、53b、54に潤滑油が供給される。ロッカーアーム51a、51b、52がスムーズに動かされて、ピン部品同士を適切に接触させることができる。
【0038】
図8に示すように、ハウジング固定部71bがカムハウジング42bを介してシリンダヘッド23に一対のハウジングボルト28で固定されている。排気側のハウジングボルト28とボルト穴の隙間はロッカーシャフト46の潤滑通路76gの他端からハウジング固定部71bに延びる潤滑通路76oになっている。潤滑通路76gの一端から他端に潤滑油が導かれ、潤滑通路76oを通じて第3のブリッジ部74の一対のノズル79内の潤滑通路76rに潤滑油が導かれている。
【0039】
図10に示すように、第3のブリッジ部74から排気側に一対のノズル79が突き出しており、一対のノズル79の供給穴77fがシリンダヘッドカバー24のリブ29に対向している。シリンダヘッドカバー24のリブ29は一対の排気バルブ34の上方に位置している。一対のノズル79の供給穴77fからシリンダヘッドカバー24のリブ29に潤滑油が吹き当てられ、シリンダヘッドカバー24のリブ29を伝って一対の排気バルブ34のステムエンドに潤滑油が供給される。このように、上部ハウジング70には、可変動弁装置40の動弁部品を潤滑するための油圧回路が形成されている。
【0040】
図13に示すように、ハウジング固定部71a(
図4参照)では、オイルコントロールバルブ16からカムシャフト41に向かって作動通路85の上流側通路87aが延びており、カムシャフト41から油圧ピストン63に向かって作動通路85の下流側通路87bが延びている。上流側通路87aの下流端と下流側通路87bの上流端はカムシャフト41の外周面において同一円周上に位置付けられている。このカムシャフト41の外周面の円周上には周方向にオイル溝89が形成されている。オイル溝89は上流側通路87aと下流側通路87bと共に油圧ピストン63に対して作動油を供給する作動通路として機能している。
【0041】
オイル溝89を介して上流側通路87aと下流側通路87bが連通している間だけ、オイルコントロールバルブ16から油圧ピストン63にオイルが供給される。このとき、バルブリフトの終了タイミングで上流側通路87aと下流側通路87bが連通し、バルブリフトの開始前までに上流側通路87aと下流側通路87bを分断するようにオイル溝89が形成されている。すなわち、バルブリフトの終了タイミングでオイルコントロールバルブ16から油圧ピストン63にオイルが供給され始め、油圧ピストン63へのオイルの供給がバルブリフトの開始前までに終わるようにオイル溝89が形成されている。
【0042】
バルブリフトの終了タイミングで油圧ピストン63にオイルが供給され始めるため、バルブリフトによってロッカーアーム51a、51bの連結動作が阻害されることがない。また、バルブリフトの開始前にロッカーアーム51a、51bの連結動作が終了するため、バルブリフトの途中でロッカーアーム51a、51bが連結されることがない。よって、カムシャフト41の回転に伴って作動通路85を通じてオイルコントロールバルブ16から油圧ピストン63に断続的にオイルが供給され、連結ピン61を介してロッカーアーム51a、51bをスムーズに連結することができる。
【0043】
また、オイルコントロールバルブ16から油圧ピストン63にショートカット通路86がダイレクトに延びている。ショートカット通路86は、作動通路85よりも短く形成されている。作動通路85から油圧ピストン63にオイルが供給された後に、ショートカット通路86から油圧ピストン63にオイルが供給されるように、油圧ピストン63に対する段階的なオイルの供給構造が形成されている。作動通路85からの断続的なオイルの供給だけでは油圧ピストン63が動いてしまう恐れがあるが、ショートカット通路86からダイレクトにオイルが供給されることで油圧ピストン63が安定的に保持される。
【0044】
図14を参照して、可変動弁装置の連結動作について説明する。
図14は本実施例の可変動弁装置の連結動作の説明図である。また、
図14では説明の便宜上、
図13の符号を適宜用いて説明する。
【0045】
図14(A)に示すように、上部ハウジング70には、ロッカーアーム51bよりも一方側の接続部81aに油圧室82が形成され、ロッカーアーム51aよりも他方側の接続部81bに収容穴83が形成されている。油圧室82には油圧ピストン63が設置されており、収容穴83にはスプリングピン64が設置されている。油圧ピストン63はロッカーアーム51b内の連結ピン61に接触し、スプリングピン64はロッカーアーム51a内の戻しピン62に接触している。油圧ピストン63及びスプリングピン64の中心線が一致しており、部品同士の片当たりによる摩耗が抑えられている。
【0046】
エンジンの低回転時には、オイルコントロールバルブ16から油圧室82にオイルが供給されていない。油圧ピストン63から連結ピン61に押圧力が作用しておらず、スプリングピン64のバネ力が戻しピン62に作用している。戻しピン62がロッカーアーム51aに突き当てられ、戻しピン62が初期位置に位置付けられている。このとき、連結ピン61の他端65がロッカーアーム51a、51bの隙間の非連結位置P1で戻しピン62の一端66に接している。連結ピン61の他端65がロッカーアーム51b外に位置しており、ロッカーアーム51a、51bが分離している。
【0047】
図14(B)に示すように、エンジン回転数が所定回転数以上に増加すると、オイルコントロールバルブ16から油圧室82にオイルが供給され始める。カムシャフト41の回転に伴って、作動通路85の上流側通路87aと下流側通路87bがオイル溝89を通じて間欠的に連通され、作動通路85から油圧ピストン63にオイルが断続的に供給される。このとき、ロッカーアーム51a、51bの連結動作を阻害しないように、吸気バルブ33のバルブリフトの終了タイミングにオイルが供給され始める。このため、作動通路85からのオイルによって油圧ピストン63が進出方向にスムーズに押し出される。
【0048】
油圧ピストン63によって連結ピン61が押し込まれて、連結ピン61によって戻しピン62を介してスプリングピン64が他方側に動かされる。連結ピン61の他端65が非連結位置P1からロッカーアーム51a内の連結位置P2まで他方側に移動される。ロッカーアーム51aのピン穴55aに連結ピン61の一部が入り込むことで、連結ピン61を介してロッカーアーム51a、51bが連結される。油圧ピストン63の移動によってショートカット通路86の下流端が開放されて、ショートカット通路86からの連続的なオイル供給によって油圧ピストン63の位置が保持される。
【0049】
図14(A)に示すように、エンジン回転数が所定回転数未満に低下すると、油圧ピストン63からオイルコントロールバルブ16にオイルが戻される。油圧ピストン63による連結ピン61の押し込みが解除され、スプリングピン64の反発力によって戻しピン62が押し戻されて、戻しピン62によって連結ピン61が一方側に押し戻される。連結ピン61の他端65が連結位置P2から非連結位置P1まで一方側に移動される。そして、ロッカーアーム51aのピン穴55aから連結ピン61の一部が抜け出すことで、ロッカーアーム51a、51bの連結が解除される。
【0050】
以上、本実施例の可変動弁装置40によれば、油圧ピストン63によって連結ピン61を介して戻しピン62が他方側に押し込まれると、ロッカーアーム51bのピン穴からロッカーアーム51aのピン穴に連結ピン61が部分的に入り込んでロッカーアーム51a、51bが連結される。スプリングピン64によって戻しピン62を介して連結ピン61が一方側に押し戻されると、ロッカーアーム51aのピン穴から連結ピン61が抜け出してロッカーアーム51a、51bの連結が解除される。このように、簡易な構成によってロッカーアーム51a、51bの連結状態及び解除状態を切り替えることができる。また、上部ハウジング70に油圧室82及び収容穴83が形成されているため、部品同士の平行度が出易くなって部品同士の片当たりによる摩耗が抑えられる。
【0051】
なお、本実施例では、可変動弁装置の吸気側に一対のロッカーアームが備えられているが、可変動弁装置の吸気側に複数のロッカーアームが備えられていればよい。例えば、可変動弁装置の吸気側に3つ以上のロッカーアームが備えられていてもよい。
【0052】
また、本実施例では、押圧部材として油圧ピストンを例示しているが、押圧部材は連結ピンに戻しピンを他方側に向けて押し込ませる部材であればよい。
【0053】
また、本実施例では、反発部材としてスプリングピンを例示しているが、反発部材は戻しピンに連結ピンを一方側に向けて押し戻させる部材であればよい。
【0054】
また、本実施例では、上部ハウジングが第1-第3のブリッジ部を有しているが、上部ハウジングは一対のカムハウジングの上面に両持ち支持可能に形成されていればよい。
【0055】
また、本実施例では、上部ハウジングの一方側の接続部に油圧室(第1の収容穴)が形成されているが、上部ハウジングにおいて一方寄りのロッカーアームよりも一方側に油圧室が形成されていればよい。同様に、上部ハウジングの他方側の接続部に収容穴(第2の収容穴)が形成されているが、上部ハウジングにおいて他方寄りのロッカーアームよりも他方側に収容穴が形成されていればよい。
【0056】
また、本実施例では、連結ピン及び戻しピンにフランジピンが用いられているが、連結ピン及び戻しピンにはストレートピンが用いられていてもよい。
【0057】
また、本実施例では、シーソー式のロッカーアームを例示したが、ロッカーアームの種類は特に限定されず、フィンガーフォロアー式のロッカーアームでもよい。
【0058】
また、本実施例では、複数のロッカーアームが隣接しているが、複数のロッカーアームが離間していてもよい。
【0059】
また、本実施例では、上部ハウジングに作動通路とショートカット通路が形成されているが、シリンダヘッドには油圧ピストンに作動油を供給可能なオイル通路が形成されていればよい。
【0060】
また、本実施例の排気装置は上記の鞍乗型車両のエンジンに限らず、他の乗り物のエンジンに採用されてもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、エンジンが搭載された乗り物であればよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0061】
以上の通り、第1態様は、シリンダヘッド(23)において吸気バルブ(33)及び排気バルブ(34)のバルブ動作を変更可能な可変動弁装置(40)であって、シリンダヘッド内にて所定方向に離間した一対のカムハウジング(42a、42b)と、一対のカムハウジングの対向部分に支持されたロッカーシャフト(46)と、ロッカーシャフトに揺動可能に支持された複数のロッカーアーム(51a、51b)と、所定方向の一方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された連結ピン(61)と、所定方向の他方寄りのロッカーアームのピン穴に設置された戻しピン(62)と、連結ピンに戻しピンを他方側に向けて押し込ませる押圧部材(油圧ピストン63)と、戻しピンに連結ピンを一方側に向けて押し戻させる反発部材(スプリングピン64)と、一対のカムハウジングの上面に両持ち支持された上部ハウジング(70)と、を備え、上部ハウジングには、一方寄りのロッカーアームよりも一方側で押圧部材が設置された第1の収容穴(油圧室82)と、他方寄りのロッカーアームよりも他方側で反発部材が設置された第2の収容穴(収容穴83)と、が形成されている。この構成によれば、押圧部材によって連結ピンを介して戻しピンが他方側に押し込まれると、一方寄りのロッカーアームのピン穴から他方寄りのロッカーアームのピン穴に連結ピンが部分的に入り込んで複数のロッカーアームが連結される。反発部材によって戻しピンを介して連結ピンが一方側に押し戻されると、他方寄りのロッカーアームのピン穴から連結ピンが抜け出して複数のロッカーアームの連結が解除される。このように、簡易な構成によって複数のロッカーアームの連結状態及び解除状態を切り替えることができる。また、上部ハウジングに第1の収容穴及び第2の収容穴が形成されているため、部品同士の平行度が出易くなって部品同士の片当たりによる摩耗が抑えられる。
【0062】
第2態様は、第1態様において、上部ハウジングは、一対のカムハウジングに固定された一対のハウジング固定部(71a、71b)と、シリンダヘッドの吸気側にて一対のハウジング固定部を接続する第1のブリッジ部(72)と、を有し、一方のハウジング固定部と第1のブリッジ部の接続箇所(接続部81a)に第1の収容穴が形成され、他方のハウジング固定部と第1のブリッジ部の接続箇所(接続部81b)に第2の収容穴が形成されている。この構成によれば、第1の収容穴及び第2の収容穴の周辺の剛性が高められて第1の収容穴及び第2の収容穴の平行度が出易くなる。
【0063】
第3態様は、第2態様において、第1のブリッジ部には、連結ピン、戻しピン、押圧部材、反発部材の接触箇所に潤滑油を供給する複数の供給穴(77c)が形成されている。この構成によれば、連結ピン、戻しピン、押圧部材、反発部材の接触箇所を潤滑して摩耗を抑えることができる。
【0064】
第4態様は、第2態様又は第3態様において、第1のブリッジ部には、吸気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する供給穴(77d)が形成されている。この構成によれば、吸気バルブのステムエンドを潤滑することができる。
【0065】
第5態様は、第2態様から第4態様のいずれか一態様において、上部ハウジングは、シリンダヘッドの吸気側及び排気側の中間にて一対のハウジング固定部を接続する第2のブリッジ部(73)を有し、第1のブリッジ部と第2のブリッジ部の間で一対のハウジング固定部が一対のカムハウジングに固定されている。この構成によれば、第2のブリッジ部によって上部ハウジングの剛性を高めることができる。また、第1、第2のブリッジ部の間にボルトの締付箇所を確保して、上部ハウジングの大型化をすることなくカムハウジングに固定できる。
【0066】
第6態様は、第5態様において、第2のブリッジ部には、複数のロッカーアームの潤滑油を供給する複数の供給穴(77e)が形成されている。この構成によれば、ロッカーアームを潤滑することができる。ロッカーアームがスムーズに動くことで、ピン部品同士を適切に接触させることができる。
【0067】
第7態様は、第2態様から第6態様のいずれか一態様において、上部ハウジングは、シリンダヘッドの排気側にて一対のハウジング固定部を接続する第3のブリッジ部(74)を有し、第3のブリッジ部の両端で一対のハウジング固定部が一対のカムハウジングに固定されている。この構成によれば、第3のブリッジ部によって上部ハウジングの剛性を高めることができる。また、第3のブリッジ部の両端にボルトの締付箇所を確保して、上部ハウジングの大型化をすることなくカムハウジングに固定できる。
【0068】
第8態様は、第7態様において、第3のブリッジ部には、排気バルブのステムエンドに潤滑油を供給する供給穴(77f)が形成されている。この構成によれば、排気バルブのステムエンドを潤滑することができる。
【0069】
第9態様は、第2態様から第8態様のいずれか一態様において、押圧部材が油圧で作動する油圧ピストンであり、一対のカムハウジングと一対のハウジング固定部の合わせ面には油圧ピストンに作動油を供給するオイル通路(作動通路85、ショートカット通路86)が形成されている。この構成によれば、一対のカムハウジングと一対のハウジング固定部の合わせ面を利用してオイル通路をコンパクトに形成できる。
【0070】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0071】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。