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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036904
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】不断流工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F16L55/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141447
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳和
(57)【要約】
【課題】掘削範囲を小さくして作業を簡素化することができる不断流工法を提供すること。
【解決手段】地中に埋設された既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に、該筐体10の上部開口10Cを開閉可能な作業弁5を設置し、筐体10内へのバタフライ弁14の取付け(制流体設置工程)、取外し及び該既設の流体管2の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、筐体10と作業弁5との間に延設部としてのスペーサ50を配設することで、該作業弁5を地面GLより上方に配置させる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設の流体管に対し密封状に取付けられた筐体の上方に、該筐体の上部開口を開閉可能な作業弁を設置し、前記筐体内への制流体の取付け、取外し及び前記既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、
前記筐体と前記作業弁との間に延設部を配設することで、該作業弁を地面より上方に配置させることを特徴とする不断流工法。
【請求項2】
前記延設部は、両端にフランジ部を有する筒状体からなることを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項3】
前記作業弁を構成する弁蓋の荷重を地面で支持する支持部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の不断流工法。
【請求項4】
前記支持部材は、高さ調整可能なジャッキを含むことを特徴とする請求項3に記載の不断流工法。
【請求項5】
前記筐体の上部に、該筐体の内外を連通する孔部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の不断流工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の流路への制流体の取付け、取外し及び既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の流路に、弁やプラグ等の制流体を設置する作業や、既設の流路に設置された制流体を経年劣化による故障の修理やメンテナンスの目的で引き抜いて再度設置する作業や、経年劣化により既設の流体管の一部を新たな流体管に更新したり、他の流路と接続する作業等を不断流状態で行うことがある。
【0003】
この種の作業を不断流状態で行う不断流工法として、例えば、流体管に対し密封状に筐体を取付け、該筐体の開口部に筐体内を開閉可能な作業弁を取付けるとともに、作業弁にカッタと駆動部とを有する切断機を設置し、作業弁を開けた状態で駆動部によりカッタを進入させて筐体内において不断流状態で流体管の一部を切断する工法が知られている。
【0004】
また、上記のような方法で流体管が切断された箇所に制流体を設置する工法として、例えば、筐体と、作業弁と、作業弁に取付けられる挿入機と、を備え、作業弁により筐体の内部を開放した状態で挿入機により制流体を進入させることにより、筐体内に不断流状態で制流体を設置するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-74122号(第11~14頁、第12~22図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の不断流工法にあっては、地中に埋設された流体管の所定部の周囲を掘削し、露出した部分に筐体を密封状に取付けるとともに、筐体の上方に作業弁や挿入機を取付けていくが、弁体を挿入機の進退移動方向に対し直交する水平方向に移動可能とする作業弁が筐体や挿入機から側方に突出していることで、作業弁を地面よりも下方に設置するために平面視における掘削範囲が広がって作業が大掛かりになるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、掘削範囲を小さくして作業を簡素化することができる不断流工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の不断流工法は、
地中に埋設された既設の流体管に対し密封状に取付けられた筐体の上方に、該筐体の上部開口を開閉可能な作業弁を設置し、前記筐体内への制流体の取付け、取外し及び前記既設の流体管の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、
前記筐体と前記作業弁との間に延設部を配設することで、該作業弁を地面より上方に配置させることを特徴としている。
この特徴によれば、延設部により作業弁を地面より上方に配置することで、作業弁の設置スペースを掘削により確保せずに済むため、掘削範囲を小さくして作業を簡素化することができる。
【0009】
前記延設部は、両端にフランジ部を有する筒状体からなることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体と作業弁とをフランジ部を介して容易に接続することができる。
【0010】
前記作業弁を構成する弁蓋の荷重を地面で支持する支持部材を配置することを特徴としている。
この特徴によれば、弁蓋の荷重を地面で安定して支持することができる。
【0011】
前記支持部材は、高さ調整可能なジャッキを含むことを特徴としている。
この特徴によれば、地面から弁蓋までの高さに応じて調整して支持することができる。
【0012】
前記筐体の上部に、該筐体の内外を連通する孔部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体の下部が露出するまで掘削しなくても、孔部により筐体の内外を連通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は実施例1における不断流工法において流体管の所定部の周囲を掘削した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図2】(a)は下部筐体を配置した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図3】筐体を示す底面図である。
図4】(a)は下部筐体に上部筐体を仮固定した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図5】(a)は図4(b)のX部分の拡大断面図、(b)は下部筐体に上部筐体を仮固定した状態を一部破断して示す側面図である。
図6】筐体の一部をコンクリートで埋設した状態を一部破断して示す正面図である。
図7】筐体にスペーサを取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
図8】スペーサに作業弁を取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
図9】本発明の変形例として、筐体にスペーサと弁箱とを取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
図10】本発明の変形例として、図9の弁箱に弁体を有する弁蓋を取付ける状態を一部破断して示す正面図である。
図11】(a)はスペーサに作業弁を取付けた状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図12】切除装置を用いて流体管の一部を切除した状態を一部破断して示す正面図である。
図13】挿入装置を用いたバタフライ弁挿入開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
図14】バタフライ弁設置後の状態を一部破断して示す正面図である。
図15】バタフライ弁設置後に掘削穴を埋め戻した状態を示す正面図である。
図16】(a)は実施例2における不断流工法において流体管の所定部の周囲を掘削した状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図17】挿入装置を用いたバタフライ弁除去開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
図18】挿入装置を用いたバタフライ弁除去終了時の状態を一部破断して示す側面図である。
図19】挿入装置を用いた中蓋挿入開始時の状態を一部破断して示す側面図である。
図20】挿入装置を用いた中蓋挿入終了後の状態を一部破断して示す側面図である。
図21】(a)は中蓋設置後の状態を示す平面図、(b)は一部破断して示す正面図である。
図22】本発明の変形例としての不断流工法について説明するための正面図である。
図23】本発明の変形例としての中蓋を示す要部拡大断面図である。
図24】本発明の変形例として、掘削穴を埋め戻さずに筐体の周囲に弁筐を設けた状態を一部破断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る不断流工法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例1に係る不断流工法として、既設の流路に制流体としてのバタフライ弁14を設置するための不断流工法を、図1図15に基づいて説明する。
【0016】
本実施例の不断流工法として、地中に埋設された既設の流路を構成している流体管2の所定箇所を筐体10内にて切除し、その切除箇所にバタフライ弁14を設置するまでの一連の流れについて説明する。尚、流体管内の流体は、本実施例では上水であるが、これに限らず、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0017】
また、本発明に係る流体管2は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円筒状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
まず、作業現場を整備する整備工程を行う。図1を参照して、整備工程では、地中に埋設された流体管2の所定部分、つまり、制流体としてのバタフライ弁14を設置する部分の周囲を掘削して掘削穴16を形成する。掘削穴16は、流体管2に沿うように長手方向に長寸の平面視長方形状に形成され、管軸方向の掘削穴16の長さ寸法L1は、管軸直交方向の長さ寸法L2よりも長寸とされているが(L1>L2、図1(a)参照)、形状は任意であり平面視円形状など種々に変更可能である。また、掘削前の地面GLから掘削穴16の底部までの深さ寸法L3は、流体管2と底部との間に空間が形成される程度とされている。
【0019】
次いで、図2に示されるように、掘削穴16の底部にコンクリートを打設して基礎Fを形成する。基礎Fの上面は露出した流体管2の管底部から上下方向に離間している。尚、基礎Fは、筐体10(図4(b)参照)の下部筐体30の荷重を支持可能であれば敷鉄板等であってもよい。
【0020】
次に、下部筐体30を配置する下部筐体配置工程を行う。下部筐体配置工程では、まず図示しないクレーンに吊支されるフックを備えた吊り具H及びワイヤWにより吊持した下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、荷重支持機能及び高さ調整機能を有する2つのジャッキ4,4(図2(b)及び図3参照)を下部筐体30と基礎Fとの間に配置する。以降、下部筐体配置工程について詳しく説明する。
【0021】
下部筐体30は、下方に向かって延び、有底円筒状に形成されている胴部31と、胴部31に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状に湾曲形成されている曲板状の半割腕部32,33を備える正面視T字状に形成されている。また、胴部31の下部には、ドレン管(図示略)が接続される排水筒35(図3参照)が開閉可能に設けられており、筐体10内の水を筐体10外部に排出できるようになっている。
【0022】
図3に示されるように、胴部31の底壁31aは、その下端に下方に向け突出形成されているX字状のリブ31bによって構造強度が高められている。また、底壁31aの外底面は、リブ31bによって4つの平坦面31c,31c,…に区画されており、各平坦面31cは略扇状となっている。
【0023】
図2(b)に示されるように、ジャッキ4は、台座を有する有底円筒状の基台4aに形成されている雌ネジにボルト4bが螺合されている、いわゆる機械式のジャッキである。また、ボルト4bの上端には、平坦な円板状の皿4cが載置されている。
【0024】
図3に示されるように、ジャッキ4,4を基礎F上に載置するにあたって、胴部31の底面視における中心を基準として外径側に離間した位置かつ管軸直交方向に離間した位置に、ジャッキ4,4を配置する(二点鎖線で示すジャッキ4,4の皿4c,4c参照)。
【0025】
これら皿4c,4cの上に、下部筐体30の平坦面31c,31cを載置する。このとき、ジャッキ4の皿4cの上端面を下部筐体30の平坦面31cに面当接させることにより、下部筐体30に設けられたリブ31bと干渉することなく、下部筐体30の荷重を分散して支持することができる。
【0026】
下部筐体30を流体管2に外嵌させるにあたって詳しくは、クレーンにて吊持している状態の下部筐体30を流体管2の下部に外嵌させ、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接するように吊り上げる。この際、下部筐体30の内周面と流体管2の外周面2aの当接箇所には、傷を防止するためにゴムシート等を挟み込んでもよい。そして、下部筐体30の平坦面31cと基礎Fの離間寸法に応じてジャッキ4,4の長さを調整し、平坦面31cと基礎Fの間にジャッキ4,4を配置する。
【0027】
これにより、下部筐体30の内周面が流体管2の外周面2aに当接された状態が保持されるため、言い換えれば下部筐体30が、流体管2及びジャッキ4,4によって上下方向に挟持されて安定した状態となるため、吊り具H及びワイヤWを下部筐体30から取外すことができる。
【0028】
次に、下部筐体30に筐体10の上部筐体20を密封状に連結する連結工程を行う。図4に示されるように、連結工程では、まず吊り具H及びワイヤWを介してクレーンで上部筐体20を吊り下ろし、上部筐体20を流体管2に外嵌させつつ、下部筐体30の割面30aに上部筐体20の割面20aを当接させて載置する。
【0029】
上部筐体20は、上方に向かって延び、略円筒状に形成されている首部21と、首部21に略直交して側方に延び、流体管2の軸方向から見て半円弧状の曲板状に形成されている半割腕部22,23を備える正面視倒立T字状に形成されている。首部21の上端には上部開口10Cが形成されている。また、首部21の周面には、後述する孔部71が2箇所に形成されている。
【0030】
また、上部筐体20の半割腕部22,23の及び下部筐体30に半割腕部32,33には、それぞれの割面20a,30aと略平行かつ外側に突出する矩形板状のフランジ(図示略)が形成されており、これらフランジをボルト・ナット(図示略)にて締結することにより、上部筐体20及び下部筐体30を仮固定することができる。
【0031】
そして、上部筐体20及び下部筐体30の割面20a,30a同士を密封状に溶接することで、筐体10が構成される。これに伴い、半割腕部22,32により筐体10における円筒状の腕部10Aが構成され、半割腕部23,33により筐体10における円筒状の腕部10Bが構成される。
【0032】
尚、上部筐体20及び下部筐体30の半割腕部等の適所には、径方向に進退可能な複数の図示しない調整ボルトが設けられ、これらの調整ボルトを適宜進退させることで、上部筐体20、下部筐体30若しくはこれらを溶接した後の筐体10を、流体管2に対し径方向に位置調整することができる。
【0033】
次に、筐体10と流体管2との間を密封する密封工程を行う。図5(a)に示されるように、密封工程では、まず流体管2の外周面2aにシールリング12を周方向に亘って配置し、半割状に形成された押輪13をそれぞれ流体管2に外嵌して連結し、腕部10Bのフランジと押輪13をT頭ボルトB2にナットN2で締結する。
【0034】
このとき、腕部10Bの中心が流体管2の管軸と位置合わせされていることから、腕部10Bの内周面と流体管2の外周面2aの間に、周方向に亘り略一定幅の環状の隙間が形成されている。これにより、腕部10Bと流体管2の間にシールリング12を軸方向に圧入しやすいばかりか、圧入されたシールリング12を周方向に亘って均一の力で腕部10Bの内周面及び流体管2の外周面2aに圧着させて密封することができる。
【0035】
さらに、周方向に等配されているボルト13A,13A,…を用いて、押輪13の内径側に配置されている爪部材13Bを流体管2の外周面2aに押しつける。尚、腕部10A側については、腕部10B側の説明と同様であるため、その説明は省略する。
【0036】
以上のように、流体管2に筐体10を外嵌するにあたって、ジャッキ4,4により筐体10を流体管2に対する移動代を確保した状態で配置することができる。これにより、流体管2に対する筐体10の位置合わせを確実に行うことができるため、施工を簡便にすることができる。
【0037】
また、下部筐体設置工程において、下部筐体30を流体管2及びジャッキ4,4により挟持させることができるため、同じクレーンを用いて上部筐体20の運搬、筐体10の吊持を行うことができる。
【0038】
次いで、直接の図示は省略するが、筐体10のフランジ部21a(図5(b)参照)に水圧テスト用のフランジ蓋を装着し、筐体10の内周面と流体管2の外周面2aとの密封した隙間に流体管2内と略同圧の水圧をかけてテストを行う。このとき、筐体10内に上水が満たされ、総重量が増大するものの、筐体10はジャッキ4,4によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0039】
また、筐体10は、流体管2が軸通されている状態にあるものの、平面視においてジャッキ4,4が流体管2の軸心から外径側に離間した位置かつ同軸心に対する直交方向に沿った位置に対向配置されているため、筐体10が流体管2を軸として管軸回りに回動する虞が防止されている。
【0040】
水圧テストの終了後、フランジ蓋を撤去し、流体管2及び筐体10と基礎Fとの間にコンクリートC1を打設する打設工程を行う。図6に示されるように、打設工程では、ドット柄で示すコンクリートC1を、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分、基礎Fを一体化させるように打設する。腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分についても同様である。この打設工程において上記したジャッキ4,4は筐体10等の荷重を下方で支持しているため、コンクリートC1が固まるまでの間、筐体10の位置を保持し続けることができる。
【0041】
次いで、流体管2を切除する切除工程を行う。図7及び図8に示されるように、切除工程では、まず、上部筐体20の上部に延設部としてのスペーサ50を取付ける。詳しくは、スペーサ50は、内径が上部筐体20の胴部31と同径をなす筒状管51からなり、筒状管51の管軸方向の両端側には、外径方向に向けてフランジ部52a、52bが突設されている。また、筒状管51の上下方向の長さ寸法L11は、掘削穴16の内部に固定された筐体10の上端から地面GLまでの上下方向の長さ寸法L12よりも長寸とされている(L11>L12)。
【0042】
このように構成されたスペーサ50をクレーンで上部筐体20の上部開口10Cに吊り下ろし、上部筐体20のフランジ部21aとスペーサ50のフランジ部52aとを図示しないボルト・ナットで締結する。尚、首部21のフランジ部21aとスペーサ50のフランジ部52aとの間には図示しないガスケットが介設されることで、上部筐体20とスペーサ50とは密封状態で接続される。
【0043】
次に、図8及び図11に示されるように、スペーサ50の上部に作業弁5を取付ける。詳しくは、作業弁5は、筐体10の上方に位置するとともに、上下方向に貫通する貫通路5dを有する弁箱5aと、該弁箱5aに側方に接続される弁蓋5bと、弁箱5aと弁蓋5bとの間で移動可能に設けられた弁体5cと、を有する。また、弁箱5aの貫通路5dの上下部には、外径方向に突出するフランジ部5e、5fが突設されている。更に弁蓋5bの側端には、弁蓋5b内部にて弁体5cと螺合した弁棒5gの端部が突出するとともに、この弁棒5gに回転駆動力を与える駆動部5hが設けられている。
【0044】
このように構成された作業弁5をクレーンでスペーサ50の上部開口に吊り下ろし、スペーサ50のフランジ部52bと弁箱5aのフランジ部5eとを図示しないボルト・ナットで締結する。尚、スペーサ50のフランジ部52bと弁箱5aのフランジ部5eとの間には図示しないガスケットが介設されることで、スペーサ50と弁箱5aとは密封状態で接続される。
【0045】
また、クレーンの吊り上げ能力が十分に満たされている場合は、作業弁5にスペーサ50を取付けた状態、つまり、作業弁5とスペーサ50とを一体化した状態でクレーンで吊り上げ、上部筐体20のフランジ部21aとスペーサ50のフランジ部52aとを図示しないボルト・ナットで締結してもよい。
【0046】
尚、本実施例では、作業弁5は、弁箱5aと弁蓋5bと弁体5cとが一体化された状態で吊り下ろされてスペーサ50に取付けられる形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スペーサ50の上部開口に作業弁5を構成する弁箱5aのみを取付けた後、該弁箱5aに弁蓋5bと弁体5cとを一体に吊る、または弁体5c、弁蓋5bの順に取付けることで作業弁5をスペーサ50上で組立てもよい。
【0047】
また、当該工程の変形例として図9に示されるように、予めスペーサ50に弁箱5aのみを接続し、これらスペーサ50及び弁箱5aを一体に吊り具H及びワイヤWにより吊持して、筐体10の上部開口10Cに取付けた後、図10に示されるように、弁蓋5b及び弁体5cを一体に吊り具H及びワイヤWにより吊持して、弁体5cを弁箱5a内に挿入するように取付けてもよい。または、弁箱5aに弁体5cを挿入した後、弁蓋5bの弁棒5gと弁体5cとを螺合させて、弁箱5aに弁蓋5bを取付けてもよい。このように、分割した作業弁5を組立てながら取付けることで、作業弁5を構成する弁箱5a、弁蓋5b及び弁体5cを全て一緒に吊持する場合と比較して、クレーンの荷重負荷を軽減することができる。
【0048】
尚、図10に示されるように、弁体5cは、弁棒5gにより、弁蓋5b内に収納される退避位置と弁蓋5bから突出して上部開口10Cを閉鎖可能な閉鎖位置との間で進退可能に取付けられており、弁蓋5b内に収納される退避位置において、弁体5cの一部(弁棒5gとは反対側(弁箱5a側)の端部)が弁蓋5bの開口部から突出している。
【0049】
図11(b)に戻って、作業弁5の弁箱5aがスペーサ50を介して上部筐体20に取付けられた状態において、弁蓋5bは、弁箱5aに対し側方(水平方向)に向けて突出している。詳しくは、筐体10の上部開口10Cを開閉可能とする作業弁5の弁体5cは、上部開口10Cを閉鎖可能な閉鎖位置(弁箱5aの内部)と、該閉鎖位置から側方に退避する退避位置(弁蓋5bの内部)との間で、流体管2の管軸方向に向けて水平移動可能に設けられることで、弁箱5aに対し弁蓋5bが側方に突出する。
【0050】
尚、本実施例では、弁蓋5bは、弁箱5aに対し流体管2の管軸方向に向けて突出している形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、弁箱5aに対し側方(水平方向)に突出していれば、流体管2の管軸方向とは異なる方向に向けて水平に突出していてもよい。
【0051】
そして、弁箱5aの外周面から弁蓋5bの先端までの水平方向の突出長さ寸法L13は、弁箱5aの外周面から掘削穴16の内周面までの水平方向の長さ寸法L14よりも長寸であるため(L13>L14)、作業弁5を地面GLよりも下方に設置する場合は地面GLを広く掘削する必要があるが、作業弁5は、スペーサ50を介して地面GLよりも上方位置に配置することができることで、掘削穴16の平面視における掘削範囲を広げなくても作業弁5を設置することができる。また、作業弁5の設置時若しくは設置後は、弁蓋5b周囲の地面GLを利用して容易且つ安全に弁蓋5b等にアプローチして各種作業(例えば、弁蓋5bの側端に設けられた駆動部5hの配線作業等)を行うことができる。
【0052】
また、地面GLから弁蓋5bまでの上下方向の離間寸法L15は、筒状管51の管軸方向の長さ寸法L11から筐体10の上部から地面GLまでの長さ寸法L12を減算した値となっている(L15=L11-L12)。尚、離間寸法L15は、弁箱5aとの間で所定の作業が可能な長さ寸法であることが好ましい。
【0053】
続けて、図12に示されるように、弁箱5aのフランジ部5fと取付フランジ筒6の下方のフランジ部6aを図示しないボルト・ナットで連結し、取付フランジ筒6の上方のフランジ部6aと切除装置7を図示しないボルト・ナットで連結する。尚、弁箱5aのフランジ部5fと取付フランジ筒6の下方のフランジ部6aとの間、取付フランジ筒6の上方のフランジ部6bと切除装置7との間にそれぞれガスケットが介設されることで、弁箱5aと取付フランジ筒6と切除装置7とは密封状態で接続される。
【0054】
このように、スペーサ50、作業弁5、取付フランジ筒6、及び切除装置7の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1によって支持されているため、流体管2に対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0055】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及びコンクリートC1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の上方に一体に立設され重心位置の高い作業弁5、取付フランジ筒6、及び切除装置7が転倒する虞がない。
【0056】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分は、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されており、腕部10B、流体管2における腕部10B側の露出部分は、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、流体管2に筐体10の総重量の大半が作用することが防止されている。そのため、切断される前の流体管2が撓むことを防止することができる。
【0057】
そして、作業弁5の弁箱5a内から弁体5cを後退させて開放状態とし、切除装置7のカッタ8により流体管2の一部を不断流状態で切断する。これにより、筐体10の内部に管内流体が流入する。
【0058】
このとき、筐体10は調整ボルト(図示略)によって流体管2に連結され、押輪13,13はボルト(図示略)によって流体管2の端部2H,2Tに連結されているため、流体管2を切断するにあたって生じる急激な流れの変化等が生じて流体管2が跳ね上がるような挙動が生じたとしても、筐体10及び押輪13,13から流体管2が抜け出すことを防止することができる。
【0059】
また、筐体10内に上水が満たされ、筐体10の総重量がさらに増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1によって支持されているため、切断された流体管2の端部2H,2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。
【0060】
これにより、端部2Hが傾動することを防止できるため、端部2Hに繋がる流路に意図しない負荷が及ぶことを防止できるばかりでなく、流体管2を切断後のカッタ8の抜出しに必要な開口面積を確保することができる。そのため、カッタ8を容易に抜出すことができる。
【0061】
また、筐体10は、ジャッキ4,4及びコンクリートC1により、流体管2の管軸回りに回動する虞が防止されているため、筐体10の総重量がさらに増大しても安定して支持されている。
【0062】
また、腕部10A、流体管2における腕部10A側の露出部分を含む端部2Hは、コンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び腕部10B側の露出部分を含む端部2Tについても同様である。
【0063】
尚、筐体10の底壁31aは、流体管2よりも十分に離間した位置に設けられているため、流体管2を切断するにあたってカッタ8の円筒部材8a及びセンタドリル8bが接触しにくくなっている。
【0064】
また、流体管2を接続するにあたって、胴部31の下部に設けられている排水筒35にドレン管(図示略)を接続しておくことにより、カッタ8により流体管2を切断する際に発生する切り粉を流体と共に外部へ排出することができる。
【0065】
その後、直接の図示は省略するが、カッタ8を流体管2の切片と共に引き上げ、作業弁5の弁体を弁箱5a内に進出させて閉塞状態とする。これにより、上水の漏水を防止して不断流状態を保ったまま切除装置7、取付フランジ筒6を作業弁5より取外すことができる。
【0066】
次いで、筐体10内に制流体としてのバタフライ弁14を設置する制流体設置工程を行う。図13に示されるように、制流体設置工程では、まず弁箱5aの上方のフランジ部5fと挿入装置9の筐体9aの下方のフランジ部9cとを図示しないボルト・ナットで連結する。続けて、作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構9bを操作して開放状態にあるバタフライ弁14を筐体10内に配置する。尚、弁箱5aのフランジ部5fと筐体9aのフランジ部9cとの間に図示しないガスケットが介設されることで、弁箱5aと筐体9aとは密封状態で接続される。
【0067】
このように、スペーサ50、作業弁5、挿入装置9、及びバタフライ弁14の重量が加わって、筐体10の総重量が増大しても、筐体10はジャッキ4,4及びコンクリートC1によって支持されているため、流体管2の端部2H、2Tに対して筐体10の総重量の大半が直接作用することを防止することができる。これにより、流体管2の端部2H,2Tが傾動することを防止できるため、バタフライ弁14を安定して挿入することができる。
【0068】
特に、バタフライ弁14の設置時には、挿入装置9によってバタフライ弁14を筐体10の内底面に向けて一時的に下方に押圧して荷重をかけるが、ジャッキ4,4及びコンクリートC1により、作業弁5、挿入装置9等の重量及び下方の荷重に抗して支持できる。
【0069】
また、腕部10A、流体管2における端部2Hは、腕部10Aと共にコンクリートC1によって基礎Fと一体化されて支持されていることから、筐体10の重量が変化しても、腕部10Aと位置合わせされた状態が保持される。これは、腕部10B及び端部2Tについても同様である。
【0070】
また、バタフライ弁14を筐体10内に挿入する前に、上部筐体20の上部に形成された孔部71と、筐体9aの下部に形成された孔部72とを接続管73にて接続して筐体10の内部と筐体9aの内部とを連通させ、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)からエアを抜きながら筐体9a内に流体管2内と略同圧の水圧をかけ、筐体9a内のエアが抜けたことを確認し、エア抜き用バルブ(図示略)を閉鎖し、筐体10の内部と筐体9aの内部を略同圧にした状態で作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構9bを操作してバタフライ弁14を下降させる。
【0071】
尚、筐体10の内部と筐体9aの内部を略同圧にする際は、排水筒35と孔部72とを連通してもよい。尚、孔部71,72には図示しない開閉弁が設けられている。
【0072】
そして、バタフライ弁14を筐体10内に挿入し、筐体10内に形成されている座面にパッキン40,41が圧着された状態で配置される。ここで、パッキン40は、弁体42と共に流体管2の端部2H,2T間を仕切るための仕切壁43の両側面及び底面に亘って固着されている。パッキン41は、筐体10の首部21を閉塞するための円板状の蓋部44の外周に亘って固着されている。これらパッキン40,41は連続するように接続されている。
【0073】
さらに、図14を参照して、首部21の周方向に配置されている複数の押さえボルト25を首部21の内径側に進出させる。押さえボルト25について詳しくは、首部21の周壁を貫通し、この周壁に形成された貫通部の雌ネジに螺合されている。押さえボルト25は所定方向に回動させることで首部21の内径側に進出するため、バタフライ弁14の蓋部44に当接させることで、蓋部44の抜け止めをなすことができる。尚、押さえボルト25のような押さえ手段は、貫通部の雌ネジに螺合される進出部材と、進出部材に従動して制流体に当接する当接部材が別体であってもよく、その数や配置を含め、適宜変更されてもよい。また、周壁内面に凹部が設けられ、プレート等を嵌め込んで固定する態様であってもよい。
【0074】
その後、孔部71,72(または排水筒35と孔部72)の開閉弁(図示略)を閉鎖し、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)を開放して、バタフライ弁14のパッキン41が止水できているかを確認して、接続管73、挿入装置9、作業弁5及びスペーサ50を筐体10から取外し、首部21の内周面と蓋部44に外嵌されたリング45との間にパッキン46を配置した後、首部21のフランジ部21aと蓋11を図示しないボルト・ナットにて締結する。これにより、首部21の内周面と蓋部44の間は密封される。尚、首部21のフランジ部21aと蓋11との間にガスケットを介設して密封することは言うまでもない。
【0075】
そして、図15に示されるように、掘削穴16を埋め戻すことで、制流体設置工程の作業が完了する。尚、弁操作部47の周辺領域は埋め戻さずに、弁筐48を設置し、該弁筐48の上面開口を閉塞する弁室用蓋48aを取外すことで、弁室49にて弁操作部47を操作できるようにすることが好ましい。
【0076】
また、図14に示される状態から掘削穴16を埋め戻すことはせず、弁室49の内部領域を広く設けてもよい。具体的には、図24に示されるように、掘削穴16を埋め戻さずに、掘削穴16の内周面に沿うように弁筐148を設置し、筐体10及び弁操作部47を覆うように弁室149を設けるとともに、地面GLに沿って弁室用蓋148aを設けて弁筐148の上面開口を閉塞する。このようにすることで、弁室用蓋148aを取外すことにより、弁室149を壊すことなくバタフライ弁14の引き抜き、または挿入が可能となり、また、弁操作部47を操作することが可能となる。また、弁室用蓋148aに弁室用蓋148aよりも小さな人孔蓋148bを設けることで、弁室用蓋148aを取外すことなく、人孔蓋148bを開放するだけで弁操作部47を操作することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、流体管2の所定箇所に不断流状態を保ちながらバタフライ弁14を設置する本実施例の不断流工法を行うことができる。
【0078】
尚、割面20a,30a同士を密封状にするには、溶接のみに限られず、シール部材を介在させた状態で、上部筐体20及び下部筐体30をボルト・ナットを用いて締結して密封状にしてもよい。また、上述したように蓋11を筐体10に取付けた後、ジャッキ4,4を取外してもよく、ジャッキ4,4を回収することで、他の施工において再度使用することができる。
【0079】
また、筐体10の保持手段としてクレーンを例に説明したが、これに限られず、ジャッキ4,4を保持手段として使用してもよい。すなわち、筐体10をジャッキ4,4に載置した状態のまま、ジャッキ4,4を伸縮させることにより、おおよその位置合わせを行ってもよい。
【0080】
また、制流体はバタフライ弁14であるとして説明したが、これに限られず、ゲート弁、ボール弁等他の種類の弁でもよいし、これらの弁に限らず仕切板やプラグ等であってもよく、適宜変更されてもよい。
【実施例0081】
次に、実施例2に係る不断流工法つき、図16図24を参照して説明する。尚、前記実施例1に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0082】
本実施例2の不断流工法は、実施例1にて説明した不断流工法にて流体管2に設置されたバタフライ弁14を、経年劣化による故障の修理やメンテナンスの目的で引き抜いた後、上部筐体20の上部開口10Cを中蓋60にて閉塞し、メンテナンスが完了した後、中蓋60を引き抜いてバタフライ弁14を再度設置するものである。尚、再度バタフライ弁14を設置せずに、上部筐体20の上部開口10Cを中蓋60にて閉塞したままとしてもよい。
【0083】
まず、図16に示されるように、流体管2においてバタフライ弁14が設置されている部分の周辺を掘削して掘削穴16Aを形成する。掘削穴16Aは、流体管2に沿うように平面視長方形状に形成され、流体管2の管軸方向の長さ寸法L1Aは、流体管2の管軸方向に対し直交する長さ寸法L2Aよりも長寸とされているが(L1A>L2A、図16(a)参照)、形状は任意であり平面視円形状など種々に変更可能である。
【0084】
ここで、本実施例2の掘削穴16Aは、前記実施例1の掘削穴16よりも小さくなっている。具体的には、流体管2の管軸方向に対し直交する長さ寸法L2Aは、前記実施例1の図1における長さ寸法L2とほぼ同寸法とされているが、流体管2の管軸方向の長さ寸法L1Aは、実施例1の図1における長さ寸法L1よりも短寸とされている(L1A<L1、L2A=L2)。
【0085】
つまり、以下に説明する制流体除去工程においては、コンクリートC1を打設する必要がなく、また、バタフライ弁14を引き出すために作業弁5を取付ける際に、スペーサ50を用いて作業弁5を地面GLよりも上方に設置することができるため、長さ寸法L1Aをより短くしている。
【0086】
また、地面GLから底部までの深さ寸法L3Aは、前記実施例1の図1における深さ寸法L3よりも短寸とされている(L3A<L3)。つまり、以下に説明する制流体除去工程においては、コンクリートC1を打設する必要がなく、また、後述するように、作業弁5の上方の筐体9a内に流体管2と略同圧の水圧をかける水漏れテストを行う際に、筐体10の下部に形成された排水筒35を使用することなく、筐体10の上部に形成された孔部71を用いることができるため、深さ寸法L3Aを孔部71が露呈する最小限の深さとしている。このように、平面視における掘削範囲を小さくするだけでなく浅くすることで、掘削範囲をより小さくすることができる。
【0087】
次いで、筐体10内に設置されている制流体としてのバタフライ弁14を引き抜く制流体除去工程を行う。図17に示されるように、制流体除去工程では、まず、上部筐体20の上方にスペーサ50を取付けた後、スペーサ50の上方に作業弁5を取付ける。このスペーサ50が介在することにより、作業弁5が地面GLよりも上方に配置される(図7図12参照)。
【0088】
そして、弁箱5aのフランジ部5fと挿入装置9の筐体9aのフランジ部9cとを図示しないボルト・ナットにて連結し、作業弁5の上方に挿入装置9を取付け、挿入装置9の駆動機構9bを操作して、流体管2内に設置されているバタフライ弁14に接続する。その後、特に図示しないが、上部筐体20の上部に形成された孔部71と、筐体9aの下部に形成された孔部72とを接続管73にて接続する。筐体10の内部と筐体9aの内部とスペーサ50の内部と作業弁5の内部とを連通させ、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)からエアを抜きながら、スペーサ50の内部から筐体9a内に流体管2内と略同圧の水圧をかけ、筐体9a内のエアが抜けたことを確認し、エア抜き用バルブ(図示略)を閉鎖し、筐体10の内部と筐体9aの内部を略同圧にした状態にする。尚、孔部71,72には図示しない開閉弁が設けられている。
【0089】
次いで、図18に示されるように、筐体10の内部とスペーサ50の内部と筐体9aの内部とを略同圧にした状態で、挿入装置9の駆動機構9bを操作してバタフライ弁14を筐体10内から上方に引き抜き、作業弁5の弁体5cを弁箱5a内に進出させて閉鎖状態とした後、孔部71,72の開閉弁(図示略)を閉鎖し、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)を開放し、内圧が抜けたことを確認し、孔部71,72から接続管73を取外し、孔部72から水を抜き、孔部72の開閉弁を開放状態にして筐体9aの内部圧力が抜けた後、筐体9aを作業弁5から取外してバタフライ弁14を除去する。
【0090】
次いで、筐体10内に制流体としての中蓋60を設置する制流体設置工程を行う。図19に示されるように、駆動機構9bに中蓋60を取付け、再び筐体9aのフランジ部9cと弁箱5aのフランジ部5fとを図示しないボルト・ナットにて連結する。ここで、上部筐体20の上部に形成された孔部71と、筐体9aの下部に形成された孔部72とを接続管73にて接続して筐体10の内部と筐体9aの内部とを連通させ、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)からエアを抜きながら筐体9a内に流体管2内と略同圧の水圧をかけ、筐体9a内のエアが抜けたことを確認し、エア抜き用バルブ(図示略)を閉鎖し、筐体10の内部と筐体9aの内部を略同圧にした状態で作業弁5を開放状態とし、挿入装置9の駆動機構9bを操作して、中蓋60を降下させて筐体10内に挿入する(図20参照)。
【0091】
また、上部筐体20における首部21の内周面上部には、中蓋60の下方移動を規制するためのストッパ75が周方向の複数個所に突設されているため、首部21の上部に中蓋60を設置することができる。
【0092】
そして、首部21の周方向に配置されている複数の押さえボルト25を首部21の内径側に進出させることで、中蓋60に当接させることで抜け止めをなすことができる(図14参照)。
【0093】
尚、本実施例では、中蓋60の下方移動を規制するためのストッパ75が設けられた形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図23に示されるように、中蓋60の側周面に複数の凹部62を形成し、中蓋60を降下させて筐体10内に挿入したときに押さえボルト25を首部21の内径側に進出させることで、凹部62の周面上部が押さえボルト25に当接して中蓋60の下方移動が規制されるとともに、凹部62の周面下部が押さえボルト25に当接して抜け止めがなされるようにしてもよい。
【0094】
図21に戻って、その後、孔部71,72の開閉弁(図示略)を閉鎖し、筐体9aの上部に設けたエア抜き用バルブ(図示略)を開放し、内圧が抜けたことを確認し、孔部71,72から接続管73を取外した後、孔部72の開閉弁(図示略)を開放状態にして筐体9aの内部の水を抜き、挿入装置9、作業弁5、スペーサ50を取外し、上蓋61を取付ける。
【0095】
このように中蓋60を設置した後、バタフライ弁14を再度筐体10内に設置する場合は、図17及び図18にて説明したバタフライ弁14を引き抜く制流体除去工程と同じように、筐体10の上方にスペーサ50、作業弁5、筐体9aを取付けて中蓋60を引き抜く制流体除去工程を行った後、図13及び図14にて説明した制流体設置工程と同じように、バタフライ弁14を設置する制流体設置工程を行うことで、メンテナンスが終了したバタフライ弁14を筐体10内に設置することができる。
【0096】
以上説明したように、本発明の実施例1、2としての不断流工法は、地中に埋設された既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に、該筐体10の上部開口10Cを開閉可能な作業弁5を設置し、筐体10内へのバタフライ弁14の取付け(制流体設置工程)、取外し及び前記既設の流体管2の切断のうち少なくとも1つの作業を不断流状態で行う不断流工法であって、筐体10と作業弁5との間に延設部としてのスペーサ50を配設することで、該作業弁5を地面GLより上方に配置させる。これによれば、スペーサ50により作業弁5を地面GLより上方に配置することで、作業弁5の設置スペースを掘削により確保せずに済むため、掘削範囲を小さくして作業を簡素化することができる。
【0097】
尚、図24にて説明したように、掘削穴16を埋め戻すことはせず、広い弁室149を設けた場合は、弁室149を壊すことなく、弁室用蓋148aを取外すことで作業を行うことができる。
【0098】
また、作業弁5の弁体5cを閉鎖位置と開放位置との間で移動させる操作などの作業を、掘削穴16内に降りて行うことなく、地面GL上で行うことができるため、作業性が向上する。
【0099】
また、前記延設部は、両端にフランジ部52a、52bを有する筒状管51(筒状体)からなることで、筐体10と作業弁5及び作業弁5と筐体9aとをフランジ部52a、52bを介して容易に接続することができる。
【0100】
また、前記実施例1、2では、管軸方向の長さ寸法L11のスペーサ50のみを不断流工法に適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、管軸方向の長さ寸法が異なる複数のスペーサを用意しておき、現場における筐体10の上端から地面GLまでの長さ寸法L12に応じて、複数のうちから最適なスペーサを選択して適用することができるようにしてもよく、このようにすることで、筐体10の上端から地面GLまでの長さ寸法L12が現場ごとに異なる場合でも、スペーサを変えるだけで容易に対応することができる。
【0101】
また、筐体10の上部に、該筐体10の内外を連通する孔部71が設けられていることで、筐体10の下部が露出するまで掘削しなくても、孔部71により筐体10の内外を連通させることができるため、掘削深さをより浅くすることができる。
【0102】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0103】
例えば、前記実施例1、2では、スペーサ50の上方に作業弁5を取付けたときに、弁蓋5bが地面GLの上方に配置される形態を例示したが、図22に示されるように、弁蓋5bが地面GLの上方に配置された状態において、作業弁5を構成する弁蓋5bの荷重を地面GLで支持する支持部材としてのジャッキ140を配置するようにしてもよい。このようにすることで、側方に突出する弁蓋5bの荷重を地面GLで安定して支持することができる。
【0104】
また、このような支持部材として、高さ調整可能なジャッキ140を適用することで、地面GLから弁蓋5bまでの高さに応じて調整して支持することができる。尚、支持部材は、必ずしも高さ調整機能を有するものでなくてもよく、高さ調整不能な台座などであってもよい。
【0105】
また、前記実施例1では、不断流工法として、既設の流体管2の切断作業を不断流状態で行う切除工程(図11及び図12)と、既設の流体管2内への制流体としてのバタフライ弁14の取付け作業を不断流状態で行う制流体設置工程(図13及び図14)とが例示され、前記実施例2では、既設の流体管2内からの制流体としてのバタフライ弁14の取外し作業を不断流状態で行う制流体除去工程(図17及び図18)と、既設の流体管2内への制流体としての中蓋60の取付け作業を不断流状態で行う制流体設置工程(図19図21)とが例示されていたが、本発明の不断流工法は、これら切除工程(図11及び図12)、制流体設置工程(図13及び図14)、制流体除去工程(図17及び図18)、制流体設置工程(図19図21)といった複数の作業のうち少なくともいずれか1の作業を行う場合に適用可能である。
【0106】
例えば、上記切除工程(図11及び図12)の作業のみを行う場合に、既設の流体管2に対し密封状に取付けられた筐体10の上方に、該筐体10の上部開口10Cを開閉可能な作業弁5を設置する際に、筐体10と作業弁5との間に延設部を配設することで作業弁を地面GLより上方に配置させるものでもよい。
【0107】
また、制流体は、上記バタフライ弁14や中蓋60に限らず、流体を制御可能なものであれば、ゲート弁やボール弁、あるいは仕切板やプラグ等であってもよい。
【0108】
また、前記実施例1、2では、作業弁5の全てが地面GLよりも上方に配設されている形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、作業弁5のうち少なくとも一部(例えば弁蓋5b先端の弁体5cの操作部)が地面GLよりも上方に配置されていればよく、その他の部分(例えば弁蓋5b基端側の下方に突出した部分)が地面GLよりも下方に形成した浅い掘削凹部に配設されていてもよい。
【0109】
また、前記実施例1、2では、延設部として、両端にフランジ部52a、52bが形成された筒状管51からなるスペーサ50が適用された形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、延設部は、弁箱5aの下面から下方に延設される筒状部にて構成されていてもよいし、筐体10の上部開口10Cから上方に延設される筒状部にて構成されていてもよい。つまり、延設部は、弁箱5aまたは筐体10のいずれかに一体に設けられていてもよい。
【0110】
また、前記実施例1、2では、延設部として、両端にフランジ部52a、52bが形成された筒状管51からなる1個のスペーサ50が適用された形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、延設部は、スペーサ50を管軸方向(上下方向)に複数連結することにより構成されてもよい。
【0111】
また、前記実施例1、2では、流体管と筐体との間はシール部材により密封される構成として説明したが、これに限られず、溶接により密封されてもよく、いわゆるサイドリングが流体管及び筐体にそれぞれ溶接されて密封されてもよく、適宜変更されてもよい。
【0112】
また、前記実施例1、2では、切除装置は、カッタを有するホールソーであるとして説明したが、これに限られず、穿孔機であってもよく、エンドミルであってもよく、適宜変更されてもよい。すなわち、流路を構成する流体管は、切断されることに限定されるものではなく、少なくとも一部が切除された箇所を通じて流体が流通可能となればよい。
【符号の説明】
【0113】
2 流体管
5 作業弁
5a 弁箱
5b 弁蓋
5c 弁体
5d 貫通路
5e、5f フランジ部
7 切除装置
8 カッタ
9 挿入装置
9a 筐体
9b 駆動機構
9c フランジ部
10 筐体
10A、10B 腕部
10C 上部開口
14 バタフライ弁(制流体)
16、16A 穴
20 上部筐体
25 押さえボルト
30 下部筐体
35 フランジ筒
42 弁体
50 スペーサ(延設部)
51 筒状管(筒状体)
52a、52b フランジ部
60 中蓋(制流体)
71,72 孔部
73 接続管
140 ジャッキ(支持部材、高さ調整手段)
C1 コンクリート
F 基礎
GL 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24