(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036906
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】情報読取システム、制御装置、RFIDリーダ、及び情報読取プログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20240311BHJP
B65G 1/137 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G06K7/10 184
G06K7/10 144
G06K7/10 244
B65G1/137 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141452
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】角田 祥太
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522DD03
3F522DD22
3F522DD32
3F522DD33
3F522FF02
3F522FF03
3F522GG03
3F522GG16
3F522HH02
3F522HH12
3F522HH22
3F522LL36
3F522LL42
(57)【要約】
【課題】読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能な情報読取システムを提供する。
【解決手段】情報読取システム1は、所定の読取領域である倉庫10に設置される基準タグ3と、RFIDタグ2から情報を読み取るRFIDリーダ4と、制御装置5と、を備え、制御装置5は、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて読取領域外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、読取領域である倉庫10内の読取対象のRFIDタグ2からの情報を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の読取領域に設置される基準タグと、
RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する、
情報読取システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて、前記読取領域外のRFIDタグが前記RFIDリーダの受信可能範囲から外れるように前記RFIDリーダの電波強度を調整する、
請求項1に記載の情報読取システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記基準タグを読み取れる場合には、前記基準タグを読み取れなくなるまで前記RFIDリーダの電波強度を下げ、
前記基準タグを読み取れない場合には、前記基準タグを読み取れない範囲で前記RFIDリーダの電波強度を上げる、
請求項2に記載の情報読取システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記基準タグから受け取った電波の強さを閾値として、前記閾値以上または前記閾値より前記強さが大きいRFIDタグを読取対象のRFIDタグとして抽出する、
請求項1に記載の情報読取システム。
【請求項5】
前記読取領域は倉庫であり、
前記基準タグは前記倉庫の壁に少なくとも1つ設置され、
前記RFIDタグは、前記倉庫内に保管されている物品に貼付される、
請求項1に記載の情報読取システム。
【請求項6】
前記基準タグの識別情報と、前記基準タグに割り当てられる前記読取領域内のエリアを特定する情報と、前記エリア内に保管されている物品の情報と、を紐づけて記憶する記憶部を備え、
前記制御装置は、前記基準タグから前記識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報に基づき、前記記憶部から前記物品の情報を取得し、前記識別情報に係る前記エリアにおいて前記RFIDタグから読み取った情報を前記記憶部から取得した前記物品の情報と比較して、前記エリア内の棚卸の完了判定を行う、
請求項1~5のいずれか一項に記載の情報読取システム。
【請求項7】
所定の読取領域に設置される基準タグからのRFIDリーダによる読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する、制御装置。
【請求項8】
RFIDタグから情報を読み取る読取部と、
制御部を備え、
前記制御部は、所定の読取領域に設置される基準タグからの前記読取部による読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する、
RFIDリーダ。
【請求項9】
所定の読取領域に設置される基準タグと、
RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダと、
制御装置と、を備える情報読取システムにおける情報読取プログラムであって、
前記制御装置が、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する取得処理機能
をコンピュータに実行させる情報読取プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報読取システム、制御装置、RFIDリーダ、及び情報読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の物品に貼付されたRFID(Radio Frequency Identification)タグをRFIDリーダで読み取り棚卸を行う場合、RFIDリーダの電波が強すぎると室外のRFIDタグも読み取る虞がある。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、RFIDリーダの受信感度をユーザ入力により調整する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来手法では、RFIDリーダの電波は事前に手動で設定しておく必要があり、状況に応じて柔軟に電波変更することが困難である。このため、RFIDタグからの情報読取の精度にばらつきが生じる虞がある。
【0006】
本開示は、読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能な情報読取システム、制御装置、RFIDリーダ、及び情報読取プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の一観点に係る情報読取システムは、所定の読取領域に設置される基準タグと、RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する。
【0008】
この態様によれば、基準タグを読取対象のRFIDタグか否かを制御装置が判断するための判断基準として用いることができるので、例えば特許文献1などの従来技術のようにRFIDリーダの受信感度を事前に手動で調整することなく、読取対象外のRFIDタグを高精度に除外できる。この結果、この態様の情報読取システムは、読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能となる。
【0009】
本発明の実施形態の他の観点に係る情報読取システムでは、前記制御装置は、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて、前記読取領域外のRFIDタグが前記RFIDリーダの受信可能範囲から外れるように前記RFIDリーダの電波強度を調整する構成でもよい。
【0010】
この態様によれば、RFIDリーダの受信可能範囲に確実に読取対象のRFIDタグが含まれるようにRFIDリーダの電波強度を調整できるので、読取対象外のRFIDタグの除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0011】
本発明の実施形態の他の観点に係る情報読取システムでは、前記制御装置は、前記基準タグを読み取れる場合には、前記基準タグを読み取れなくなるまで前記RFIDリーダの電波強度を下げ、前記基準タグを読み取れない場合には、前記基準タグを読み取れない範囲で前記RFIDリーダの電波強度を上げる構成でもよい。
【0012】
この態様によれば、RFIDリーダが読み取ることができるRFIDタグを、所定の読取領域内のタグ、すなわち読取対象のRFIDタグのみに限定することが可能となる。これにより、読取対象外のRFIDタグの除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0013】
本発明の実施形態の他の観点に係る情報読取システムでは、前記制御装置は、前記基準タグから受け取った電波の強さを閾値として、前記閾値以上または前記閾値より前記強さが大きいRFIDタグを読取対象のRFIDタグとして抽出する構成でもよい。
【0014】
この態様によれば、RFIDリーダの電波強度の調整を行う必要なく、読取対象のRFIDタグの抽出を行うことが可能となるので、読取対象のRFIDタグからの情報の取得を高精度かつより短時間で行うことが可能となる。
【0015】
本発明の実施形態の他の観点に係る情報読取システムでは、前記読取領域は倉庫であり、前記基準タグは前記倉庫の壁に少なくとも1つ設置され、前記RFIDタグは、前記倉庫内に保管されている物品に貼付される構成でもよい。
【0016】
この態様によれば、基準タグは、所定の読取領域の境界部分である倉庫の側壁の壁面に貼付されるので、この基準タグを判断基準として用いれば、倉庫内の読取対象のRFIDタグと、倉庫外の読取対象外のRFIDタグとを確実に区別することが可能となる。これにより、読取対象外のRFIDタグの除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の実施形態の他の観点に係る情報読取システムは、前記基準タグの識別情報と、前記基準タグに割り当てられる前記読取領域内のエリアを特定する情報と、前記エリア内に保管されている物品の情報と、を紐づけて記憶する記憶部を備え、前記制御装置は、前記基準タグから前記識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報に基づき、前記記憶部から前記物品の情報を取得し、前記識別情報に係る前記エリアにおいて前記RFIDタグから読み取った情報を前記記憶部から取得した前記物品の情報と比較して、前記エリア内の棚卸の完了判定を行う構成でもよい。
【0018】
この態様によれば、RFIDリーダによるタグ情報の読み取り操作を行えば、所定の読取領域内の複数のエリアごとに、該当エリアに保管されている物品の棚卸作業の完了判定を精度良く行うことが可能となる。これにより、簡易かつ高精度に棚卸作業を行うことができる。
【0019】
本発明の実施形態の一観点に係る制御装置は、所定の読取領域に設置される基準タグからのRFIDリーダによる読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する。
【0020】
この態様によれば、基準タグを読取対象のRFIDタグか否かを制御装置が判断するための判断基準として用いることができるので、例えば特許文献1などの従来技術のようにRFIDリーダの受信感度を事前に手動で調整することなく、読取対象外のRFIDタグを高精度に除外できる。この結果、この態様の制御装置は、読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能となる。
【0021】
本発明の実施形態の一観点に係るRFIDリーダは、RFIDタグから情報を読み取る読取部と、制御部を備え、前記制御部は、所定の読取領域に設置される基準タグからの前記読取部による読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する構成でもよい。
【0022】
この態様によれば、利用者は、RFIDリーダという単一の装置を携帯するだけで、所定の読取領域内のタグ情報の読み取り制御と、棚卸制御とを纏めて実施することができる。これにより、棚卸作業を行う利用者の作業負荷を軽減できる。
【0023】
本発明の実施形態の一観点に係る情報読取プログラムは、所定の読取領域に設置される基準タグと、RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダと、制御装置と、を備える情報読取システムにおける情報読取プログラムであって、前記制御装置が、前記RFIDリーダによる前記基準タグの読取結果に応じて前記読取領域外のRFIDタグからの情報を除外するための処理を行い、前記読取領域内のRFIDタグからの情報を取得する取得処理機能をコンピュータに実行させる。
【0024】
この態様によれば、基準タグを読取対象のRFIDタグか否かを制御装置が判断するための判断基準として用いることができるので、例えば特許文献1などの従来技術のようにRFIDリーダの受信感度を事前に手動で調整することなく、読取対象外のRFIDタグを高精度に除外できる。この結果、この態様の情報読取プログラムは、読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、読取対象のRFIDタグから精度良く情報を読み取ることが可能な情報読取システム、制御装置、RFIDリーダ、及び情報読取プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係る情報読取システムの概略構成を示す模式図
【
図2】第1実施形態における読取対象のRFIDタグからの情報読取制御の概要を示す模式図
【
図3】第1実施形態に係る情報読取システムの機能ブロック図
【
図4】RFIDリーダ及び制御装置のハードウェア構成図
【
図5】第1実施形態におけるタグ読取制御のフローチャート
【
図7】第2実施形態における読取対象のRFIDタグからの情報読取制御の概要を示す模式図
【
図8】第2実施形態に係る情報読取システムの機能ブロック図
【
図9】第2実施形態におけるタグ読取制御のフローチャート
【
図10】第2実施形態における棚卸制御を説明する図
【
図11】第3実施形態に係る情報読取システムの概略構成を示す模式図
【
図12】第3実施形態における棚卸情報記憶部の構成の一例を示す図
【
図13】第3実施形態におけるタグ読取制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
[第1実施形態]
図1~
図6を参照して第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る情報読取システム1の概略構成を示す模式図である。
【0029】
情報読取システム1は、所定の読取領域の範囲内にあるRFID(Radio Frequency Identification)タグから、当該RFIDタグが貼付されている物品に関する情報を読み取るためのシステムである。
図1の例では、「所定の読取領域」の一例として、複数の物品11が保管されている倉庫10が例示されている。また、倉庫10内の複数の物品のそれぞれにはRFIDタグ2が貼付されている。
図1の例では、情報読取システム1は、倉庫10内の物品の棚卸作業を行うために用いられる。
【0030】
図1に示すように、情報読取システム1は、RFIDタグ2と、基準タグ3と、RFIDリーダ4と、制御装置5と、を備える。
【0031】
RFIDタグ2は、個々の物品11に貼付されており、貼付されている物品11に関する情報が記録されている。RFIDタグ2は、ICチップとICチップに電気的に接続されるアンテナとを備え、ICチップ内に情報を記録することができる。RFIDタグ2は、無線タグ、ICタグ、RF-IDタグ、RFタグと呼ばれることもある。
【0032】
なお、
図1の例では、RFIDタグ2が貼付される物品11として箱状の物体を例示しているが、対象の物品はこれに限られない。例えば医療現場で用いられる注射器や輸液バック、薬品容器などの医療用品や、工業用部品、電化製品、など箱状以外のさまざまな物品も含まれる。
【0033】
基準タグ3は、所定の読取領域である倉庫10内の読取対象のRFIDタグ2から情報を取得するための判断基準に用いられるタグである。情報読取システム1は、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて倉庫10外のRFID12(
図2参照)からの情報を除外するための処理を行い、倉庫10内のRFID2タグからの情報を取得することができる。例えば、RFIDリーダ4が基準タグ3と他のタグから受信する電波の強度の差異に基づき、基準タグ3と他のタグとの相対的な位置関係を把握することができる。
【0034】
基準タグ3は、所定の読取領域である倉庫10内に設置されるタグであり、各物品に貼付されるRFIDタグ2とは別に設けられる。ただし、基準タグ3は、記録されている情報が他のRFIDタグ2と異なればよく、基準タグ3の構造は他のRFIDタグ2と同様のものでもよい。基準タグ3に記録される情報は、例えば物品11に関する情報には含まれない識別情報であり、RFIDリーダ4が読み取ったタグ情報から基準タグ3を検知可能な情報であればよい。
【0035】
特に本実施形態では、基準タグ3は、所定の読取領域の内部にある読取対象のRFIDタグ2と、読取領域の外部にある読取対象ではない別のRFIDタグ12(
図2など参照)とを区別するために用いられる。このため、基準タグ3は、所定の読取領域の外縁の境界部分に設けられるのが好ましく、
図1の例では所定の読取領域の境界部分である倉庫10の側壁の壁面10Aに貼付されている。
【0036】
また、
図1に示すように、基準タグ3は、倉庫10の壁面10Aに複数個のタグ3A~3Dが設置されるのが好ましい。複数の基準タグ3A~3Dの設置位置の距離は、RFIDリーダ4の読み取り可能な範囲に応じて適宜設定すればよい。例えば、利用者Pが倉庫10内の任意の位置にいて、任意の方向に向けてRFIDリーダ4を操作したときに、複数の基準タグ3A~3Dのうち少なくとも1個のタグを読み取ることができるように複数の基準タグ3A~3Dが配置されるのが好ましい。
【0037】
RFIDリーダ4は、近距離通信の範囲内にあるRFIDタグ2から情報を読み取る。
図1の例では、RFIDリーダ4は、棚卸作業を行う利用者Pが携帯可能なハンディタイプであり、トリガ4bの操作により読み取りを行うことができるガングリップタイプである。ガングリップタイプの場合、RFIDリーダ4のグリップ4aを把持している利用者Pが物品11の周囲に接近してトリガ4bを引くことによって、周囲のRFIDタグ2の情報を読み取ることができる。RFIDリーダ4は、読み取った情報を制御装置5に送信する。
【0038】
なお、RFIDタグ2や基準タグ3と、RFIDリーダ4との間の通信は、通信距離を考慮すると短距離通信に適するHF帯を用いるのが好ましいが、タグのICチップの小型化に有利なUHF帯を用いてもよい。また、RFIDタグ2や基準タグ3は、RFIDリーダ4から放射された電波Wにより駆動するパッシブタグでもよいし、内部電源により駆動して通信するアクティブタグでもよい。
【0039】
制御装置5は、RFIDタグ2や基準タグ3からの情報読取や棚卸作業を制御する。制御装置5は、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて倉庫10外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、倉庫10内のRFIDタグ2からの情報を取得する。
図1の例では、制御装置5は、棚卸作業を行う利用者Pが携帯できるように、スマートフォンにインストールされるアプリケーションとして実装されている。制御装置5は、RFIDリーダ4と有線または無線により通信可能に接続されている。
【0040】
図1の例では、棚卸作業を行う利用者Pが携帯できるように、RFIDリーダ4にはガングリップタイプが適用され、制御装置5にはスマートフォンが適用されるが、この構成に限られない。例えば、RFIDリーダ4は、ガングリップタイプ以外のハンディタイプを適用してもよいし、移動可能なワゴンなどに載置される据え置き型を適用することもできる。制御装置5は、例えばタブレットなど、スマートフォン以外の携帯型の専用機でもよい。また、制御装置5は、PCなどの据え置き型の装置を適用して、利用者Pが携帯しない構成としてもよい。この場合、制御装置5は倉庫10の外に設置されてもよい。または、RFIDリーダ4に制御装置5の機能を内蔵する構成としてもよい。
【0041】
図2は、第1実施形態における読取対象のRFIDタグ2からの情報読取制御の概要を示す模式図である。
【0042】
図2(A)に示すように、所定の読取領域である倉庫10内では、利用者PがRFIDリーダ4を操作する位置と、その際のRFIDリーダ4の電波強度によっては、RFIDリーダ4から出力される電波W1が倉庫10の外部まで伝播される場合が生じ得る。このとき、倉庫10の外部、かつ、電波W1の範囲内に、読取対象外のRFIDタグ12(
図2中に「タグB」で示される)が存在すると、このタグ12の情報も読み取ることになる。従来のRFIDリーダ4によるタグ情報読取手法では、読取対象のRFIDタグ2(
図2中に「タグA」で示される)と、読取対象外のRFIDタグ12とを区別することはできない。
【0043】
そこで第1実施形態に係る情報読取システム1では、上述のように基準タグ3を設け、基準タグ3からの情報読取の状況に応じてRFIDリーダ4の電波強度を調整する制御を行う。より詳細には、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて、読取領域外のRFIDタグ12がRFIDリーダ4の受信可能範囲から外れるように、RFIDリーダ4の電波強度を調整する。
【0044】
例えば
図2(A)に示すように、基準タグ3を読み取ることができ、電波強度が必要以上に大きい場合には、
図2(B)に示すように、基準タグ3を読み取れなく程度に電波強度を下げるよう調整する制御を行う。この制御によって、
図2(B)に示すようにRFIDリーダ4が出力する電波W2は、基準タグ3から情報を受信できない程度の受信範囲に縮小される。つまり、基準タグ3よりもRFIDリーダ4に近い位置にあるタグAは受信範囲内に含まれ、その一方で、基準タグ3より遠い位置にあるタグBは受信範囲からは外れるようにRFIDリーダ4の電波強度が調整される。上述のように、基準タグ3は、読取領域の境界部分に配置されるので、この制御によって、RFIDリーダ4が読み取ることができるRFIDタグを、倉庫内10のタグのみに限定することが可能となる。
【0045】
同様に、基準タグ3を読み取れない場合には、基準タグ3を読み取れない範囲でRFIDリーダ4の電波強度を上げる制御を行うこともできる。この制御によっても、基準タグ3より遠い位置にあるタグBは受信範囲からは外れ、かつ、基準タグ3よりもRFIDリーダ4に近い位置にあるタグAは受信範囲内に含まれるようにRFIDリーダ4の電波強度が調整され、
図2に示す制御と同様の効果を奏する。
【0046】
図3は、第1実施形態に係る情報読取システム1の機能ブロック図である。
図2を参照して説明した情報読取制御を行うための機能として、RFIDリーダ4は、読取部41と、電波強度制御部42とを備える。また、制御装置5は、情報取得部51と、取得処理部52と、棚卸制御部53と、棚卸情報記憶部54と、表示制御部55と、を備える。
【0047】
RFIDリーダ4の読取部41は、RFIDリーダ4からの電波Wの出力と、RFIDタグ2からの情報の読み取りの制御を行う。読取部41は、RFIDタグ2や基準タグ3、または対象外のRFIDタグ12から読み取った情報を、制御装置5の情報取得部51に出力する。
【0048】
電波強度制御部42は、読取部41により出力する電波Wの強度の制御を行う。電波強度制御部42は、例えば制御装置5の取得処理部52から入力される制御指令に応じて、電波強度を増加または減少するように読取部41に制御指令を出力する。
【0049】
制御装置5の情報取得部51は、RFIDリーダ4の読取部41からRFIDタグ2等から読み取った情報を受け取り、取得処理部52へ出力する。
【0050】
取得処理部52は、情報取得部51から入力されたRFIDタグ2等のタグ情報に基づき、読取領域外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、読取対象のタグ情報を取得する。第1実施形態では、
図2を参照して説明したように、取得処理部52は、取得したタグ情報の中に基準タグ3のタグ情報が含まれているかに応じて、RFIDリーダ4の電波強度を増加または減少させる制御指令をRFIDリーダ4の電波強度制御部42に出力する。そして、電波強度の調整の結果、最終的に得られたタグ情報を読み取り結果として棚卸制御部53に出力する。
【0051】
棚卸制御部53は、棚卸作業の一連の制御を行う。棚卸制御の具体例については
図6を参照して後述する。
【0052】
棚卸情報記憶部54は、棚卸作業に関する各種情報を記憶する。第1実施形態では、棚卸情報記憶部54には、例えば、所定の読取領域である倉庫10の内部に保管されている物品11の識別情報、個数などの情報や、基準タグ3の識別情報などの各種情報が記憶されている。
【0053】
表示制御部55は、棚卸作業に関する情報を、制御装置5の画面56(
図6参照)に表示する。
【0054】
図4は、RFIDリーダ4及び制御装置5のハードウェア構成図である。
図4に示すように、RFIDリーダ4及び制御装置5は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0055】
図3を参照して説明したRFIDリーダ4及び制御装置5の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(情報読取プログラム)を読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る情報読取プログラムをコンピュータ上で実行させることで、RFIDリーダ4は、
図3の読取部41と、電波強度制御部42として機能し、制御装置5は、
図3の情報取得部51と、取得処理部52と、棚卸制御部53と、棚卸情報記憶部54と、表示制御部55として機能する。
【0056】
図5は、第1実施形態におけるタグ読取制御のフローチャートである。
【0057】
ステップS01では、RFIDリーダ4の読取部41により電波Wが出力される。読取部41は、出力した電波Wに対してRFIDタグ2等から受信した情報を、制御装置5の情報取得部51に出力する。情報取得部51は、取得した情報を取得処理部52に出力する。
【0058】
ステップS02では、制御装置5の取得処理部52により、ステップS01にて出力された電波Wに応じて取得された情報に基づき、検知したRFIDタグに関する情報が確認される。
【0059】
ステップS03では、制御装置5の取得処理部52により、ステップS02にて確認したタグの中で基準タグ3が検知されたか否かが判定される。取得処理部52は、例えば棚卸情報記憶部54から、棚卸作業の対象の倉庫10内の基準タグ3の識別情報を取得し、ステップS02にて取得したタグ情報と比較する。そして、基準タグ3の識別情報と一致するタグ情報が含まれている場合に、基準タグ3を検知したものと判定することができる。ステップS03の判定の結果、基準タグ3が検知されなかった場合には(ステップS03のNo)、ステップS04に進む。一方、基準タグ3が検知された場合には(ステップS03のYes)、ステップS05に進む。
【0060】
ステップS04では、ステップS03にて基準タグ3が検知されなかったとの判定結果に応じて、制御装置5の取得処理部52からRFIDリーダ4の電波強度制御部42に制御指令が送信される。この制御指令に基づき、電波強度制御部42により、基準タグ3を検知しない範囲でRFIDリーダ4の電波強度が上げられる。本ステップでは、例えば電波強度制御部42が段階的に電波強度を上げるように読取部41を制御する。その制御中には、電波強度を上げるたびに上述のステップS01~S03と同様の処理が行われて、基準タグ3が検知されるまで繰り返される。そして、最終的に基準タグ3が検知されるとき、そのときの電波強度から一段階下げることによって、基準タグ3を検知しない範囲で電波強度が最大となる値が設定される。
【0061】
または、ステップS04では、まずRFIDリーダ4の電波強度を最大値まで上げて、その後に基準タグ3が検知されなくなるまで電波強度を段階的に下げる制御を行う構成としてもよい。
【0062】
ステップS05では、ステップS03にて基準タグ3が検知されたとの判定結果に応じて、制御装置5の取得処理部52からRFIDリーダ4の電波強度制御部42に制御指令が送信される。この制御指令に基づき、電波強度制御部42により、基準タグ3を検知しなくなるまでRFIDリーダ4の電波強度が下げられる。本ステップでは、例えば電波強度制御部42が段階的に電波強度を下げるように読取部41を制御する。その制御中には、電波強度を下げるたびに上述のステップS01~S03と同様の処理が行われて、基準タグ3が検知されなくなるまで繰り返される。そして、最終的に基準タグ3が検知されなくなったとき、そのときの電波強度が、ステップS04と同様に基準タグ3を検知しない範囲での最大値となる。
【0063】
ステップS06では、ステップS04またはステップS05にてRFIDリーダ4の電波強度が調整された後に、上述のステップS01~S03と同様の処理が行われて、取得処理部52により、本ステップで検知されたタグの情報が読取結果(すなわち読取対象のRFIDタグ2の情報の組)として取得される。取得処理部52は、取得した読取結果の情報を棚卸制御部53に出力する。本ステップの処理が完了すると、本制御フローを終了し、引き続き棚卸制御部53による棚卸制御(
図6参照)が行われる。
【0064】
なお、ステップS04またはステップS05の処理において、複数の基準タグ3が検知される場合が生じ得る。例えば
図1の例において、RFIDリーダ4の電波Wの出力方向の基準タグ3Aと、その隣に配置される別の基準タグ3Dの両方を検知する場合が考えれる。このように複数の基準タグ3が検知された場合には、取得処理部52は、検知した複数の基準タグ3のすべてを電波強度の調整対象とすることができる。例えばステップS04では、まず、電波強度を段階的に上げる処理中に複数の基準タグ3が検知された場合には、次に、検知された複数の基準タグ3のすべてを検知しなくなるまで電波強度を段階的に下げる。また、例えばステップS05では、ステップS03にて複数の基準タグ3が検知された場合には、検知された複数の基準タグ3のすべてを検知しなくなるまで電波強度を段階的に下げる。
【0065】
また、ステップS04及びステップS05では、少なくとも読取領域外のRFIDタグ12がRFIDリーダ4の受信可能範囲から外れるようにRFIDリーダ4の電波強度を調整できればよい。例えばステップS04では、基準タグ3を検知するまでRFIDリーダ4の電波強度を上げる構成でもよい。また、ステップS05では、RFIDリーダ4の電波強度を、基準タグ3を検知可能な範囲の下限値に設定する構成でもよい。
【0066】
図6は、第1実施形態における棚卸制御を説明する図である。上述のように本実施形態では制御装置5の一例としてスマートフォンのアプリを例示している。このため、
図6に示すように、制御装置5はスマートフォンのタッチパネル56を、棚卸制御に関する情報を表示する表示部として利用したり、利用者Pの操作入力を受け付ける操作部として利用できる。
【0067】
図6では、棚卸制御の際にスマートフォンのタッチパネル56に表示される、棚卸作業に係る情報表示画面6の一例が示されている。情報表示画面6は、棚卸情報表示部61と、読取タグ数表示部62と、棚卸進捗表示部63と、タグ情報表示部64と、ソートボタン65と、リセットボタン66と、保存ボタン67とを有する。情報表示画面6の表示内容は、例えば棚卸制御部53からの制御指令に応じて、表示制御部55により制御される。第1実施形態では、
図6の情報表示画面6を利用して、利用者Pは棚卸制御を例えば次の手順で実施できる。
【0068】
(1)棚卸情報の選択
棚卸情報表示部61の名前欄をタップすることで、現在端末の棚卸情報記憶部54に保存されている棚卸情報が一覧表示される。棚卸情報は、例えばCSVファイルで保存されている。表示された中から利用者Pが棚卸対象の倉庫10に対応するCSVファイルを選択すると、
図6(A)に示すように、棚卸情報表示部61には選択された棚卸情報に係るCSVファイルのファイル名が表示される。また、タグ情報表示部64には、選択されたCSVファイルに登録されているタグ情報が表示される。タグ情報表示部64に表示されるタグ情報には、例えばタグに関連付けられる物品のアイテム名や、該当物品のJAN(Japanese Article Number)コード、個数などの情報が含まれる。
【0069】
読取タグ数表示部62には、RFIDリーダ4により読み取られたRFIDタグ2の個数が表示される。棚卸進捗表示部63には、タグ情報表示部64に表示されている商品のリストのうち、棚卸情報に記録されている物品の個数情報と、該当物品に関するRFIDタグ2の読み取り数とが一致した行の数が表示される。なお、
図6(A)では、RFIDリーダ4の操作前であり、RFIDタグ2の読み取り前の状態であるので、読取タグ数表示部62には読取タグ数は「0」と表示されている。また、棚卸進捗表示部63には、該当物品数が「51」行分であり、そのうち一致済の行数は「0」と表示されている。
【0070】
(2)タグ情報の読み取り
利用者PがRFIDリーダ4のトリガ4bを引くと、周辺にあるRFIDタグ2の読み取りが行われる。このとき、
図5を参照して説明した第1実施形態に係る情報読取制御が行われ、最終的な読取結果が
図6(B)に示すように情報表示画面6に表示される。
【0071】
タグの読取数がCSVリストに登録されている指定の数に達した際には、例えばそのタグの行の色をグレーに変更するなど、他の行と区別可能に表示態様が変更される。
図6(B)の例では、タグ情報表示部64に表示されている商品のリストのうち、上から2行目と3行目の商品が個数情報と同数読み取られたので、該当部分がグレー色に変更されている。
【0072】
また、タグ情報表示部64の2、3行目以外の他の行では、読み取り済の商品の個数が表示されている。読取タグ数表示部62には読取タグ数が「20」と表示され、棚卸進捗表示部63には、該当物品数「51」行分のうち一致済の行数が「2」行と表示されている。
【0073】
また、ソートボタン65を押すと、タグ情報表示部64に表示されているリストの表示順を適宜変更することができる。
【0074】
(3)リセット
リセットボタン66を押すことで、読み取ったタグの情報をすべて消去して最初から読み直すことができる。
【0075】
(4)保存
保存ボタン67を押すことで、読み取ったタグの情報をファイルに保存して端末内の所定のフォルダ(例えば棚卸情報記憶部54など)に書き出すことができる。
【0076】
次に第1実施形態の作用効果を説明する。第1実施形態に係る情報読取システム1は、所定の読取領域(
図1の例では倉庫10)に設置される基準タグ3と、RFIDタグ2から情報を読み取るRFIDリーダ4と、制御装置5と、を備える。制御装置5の取得処理部52は、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて読取領域外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、読取領域内の読取対象のRFIDタグ2からの情報を取得する。
【0077】
この構成により、基準タグ3を読取対象のRFIDタグ2か否かを制御装置5が判断するための判断基準として用いることができるので、例えば特許文献1などの従来技術のようにRFIDリーダ4の受信感度を事前に手動で調整することなく、読取対象外のRFIDタグ12を高精度に除外できる。この結果、第1実施形態の情報読取システム1は、読取対象のRFIDタグ2から精度良く情報を読み取ることが可能となる。
【0078】
また、第1実施形態に係る情報読取システム1では、制御装置5は、RFIDリーダ4による基準タグ3の読取結果に応じて、読取領域外のRFIDタグ12がRFIDリーダ4の受信可能範囲から外れるようにRFIDリーダ4の電波強度を調整する。
【0079】
この構成により、RFIDリーダ4の受信可能範囲に確実に読取対象のRFIDタグ2が含まれるようにRFIDリーダ4の電波強度を調整できるので、読取対象外のRFIDタグ12の除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0080】
また、第1実施形態に係る情報読取システム1では、制御装置5は、基準タグ3を読み取れる場合には、基準タグ3を読み取れなくなるまでRFIDリーダ4の電波強度を下げ、基準タグ3を読み取れない場合には、基準タグ3を読み取れない範囲でRFIDリーダの電波強度を上げるのが好ましい。
【0081】
この構成により、
図2を参照して説明したように、RFIDリーダ4が読み取ることができるRFIDタグを、所定の読取領域内のタグ、すなわち読取対象のRFIDタグ2のみに限定することが可能となる。これにより、読取対象外のRFIDタグ12の除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0082】
また、第1実施形態に係る情報読取システム1では、読取領域は倉庫10であり、基準タグ3は倉庫10の壁に少なくとも1つ設置され、RFIDタグ2は、倉庫10内に保管されている物品11に貼付される。
【0083】
この構成により、
図1、
図2を参照して説明したように、基準タグ3は、所定の読取領域の境界部分である倉庫10の側壁の壁面10Aに貼付されるので、この基準タグ3を判断基準として用いれば、倉庫10内の読取対象のRFIDタグ2と、倉庫10外の読取対象外のRFIDタグ12とを確実に区別することが可能となる。これにより、読取対象外のRFIDタグ12の除外をより高精度に行うことが可能となる。
【0084】
また、第1実施形態に係る情報読取システム1では、RFIDリーダ4は、RFIDタグ2から情報を読み取る読取部41と、制御部を備え、制御部は、所定の読取領域に設置される基準タグ3からの読取部41による読取結果に応じて読取領域外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、読取領域内の読取対象のRFIDタグ2からの情報を取得する構成でもよい。つまり、上述の制御装置5の機能が、RFIDリーダ4に「制御部」として内蔵される構成でもよい。
【0085】
この構成により、利用者Pは、RFIDリーダ4という単一の装置を携帯するだけで、所定の読取領域内のタグ情報の読み取り制御と、棚卸制御とを纏めて実施することができる。これにより、棚卸作業を行う利用者Pの作業負荷を軽減できる。
【0086】
[第2実施形態]
図7~
図10を参照して第2実施形態を説明する。
図7は、第2実施形態における読取対象のRFIDタグ2からの情報読取制御の概要を示す模式図である。
図7(A)に示す状況は、第1実施形態で説明した
図2(A)と同様である。
【0087】
図7(A)に示すように、RFIDリーダ4Aから出力される電波W1が倉庫10の外部まで伝播され、読取対象のRFIDタグ2(タグA)の他に、読取対象外のRFIDタグ12(タグB)も読み取る状況では、第2実施形態では第1実施形態と異なる制御によって読取対象のRFIDタグ2から情報を取得する。
【0088】
第2実施形態に係る情報読取システム1Aでは、基準タグ3のRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を閾値として設定し、この閾値よりRSSI値が大きいタグまたは閾値以上のタグを、読取対象のRFIDタグ2として抽出する制御を行う。ここでRSSI値とは、RFIDリーダ4Aが各RFIDタグから受け取る電波の強さ(電波の振幅の大きさ)を示す値である。つまり、基準タグ3のRSSI値より大きいタグとは、基準タグ3よりRFIDリーダ4Aに近い位置にあるタグであり、倉庫10内にある読取対象のRFIDタグ2であることを示す。一方、基準タグ3のRSSI値より小さいタグとは、基準タグ3よりRFIDリーダ4Aから遠い位置にあるタグであり、倉庫10の外部にある読取対象外のRFIDタグ12であることを示す。また、基準タグ3のRSSI値と同一のタグとは、RFIDリーダ4Aから基準タグ3と同一距離の位置にあるタグであり、このようなタグも倉庫10内にある読取対象のRFIDタグ2であると判定することもできる。
【0089】
上述のように、基準タグ3は、読取領域の境界部分に配置されるので、この制御によって、RFIDリーダ4Aが読み取ったRFIDタグの中から、読取対象の倉庫内10のRFIDタグ2を抽出することが可能となる。
【0090】
なお、第2実施形態では、読取対象のRFIDタグ2と、読取対象外のRFIDタグ12とを切り分ける判断基準(閾値)としてRSSI値を適用しているが、RSSI値と同様に各RFIDタグから受け取る電波の強さ、つまりRFIDリーダ4に対する各タグの距離に相当する情報であればよく、RSSI値以外の情報を判断基準として適用してもよい。
【0091】
図8は、第2実施形態に係る情報読取システム1Aの機能ブロック図である。
図7を参照して説明した情報読取制御を行うための機能として、RFIDリーダ4Aは、読取部41Aを備える。また、制御装置5Aは、情報取得部51Aと、取得処理部52Aと、棚卸制御部53と、棚卸情報記憶部54と、表示制御部55と、を備える。
【0092】
RFIDリーダ4Aの読取部41Aは、RFIDリーダ4Aからの電波の出力と、RFIDタグ2からの情報の読み取りの制御を行う。読取部41Aは、RFIDタグ2や基準タグ3、または対象外のRFIDタグ12から読み取った情報と、各タグから受信した電波のRSSI値の情報とを、制御装置5の情報取得部51Aに出力する。
【0093】
制御装置5Aの情報取得部51Aは、RFIDリーダ4Aの読取部41AからRFIDタグ2等から読み取った情報と、各タグのRSSI値の情報とを受け取り、取得処理部52Aへ出力する。
【0094】
取得処理部52Aは、情報取得部51Aから入力されたRFIDタグ2等のタグ情報とRSSI値の情報とに基づき、読取領域外のRFIDタグ12からの情報を除外するための処理を行い、読取対象のタグ情報を取得する。第2実施形態では、
図7を参照して説明したように、取得処理部52Aは、取得した各タグのRSSI値の情報を基準タグ3のRSSI値と比較して、基準タグ3よりRSSI値の大きいタグを読み取り対象のRFIDタグ2として抽出する。取得処理部52Aは、各タグの情報と、読取対象か否かの判定結果の情報とを、読み取り結果として棚卸制御部53に出力する。
【0095】
棚卸制御部53、棚卸情報記憶部54、表示制御部55の各機能は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0096】
図9は、第2実施形態におけるタグ読取制御のフローチャートである。
【0097】
ステップS11、S12、S13は、
図6に示した第1実施形態のステップS01、S02、S03と同様の処理であるので説明を省略する。なお、第2実施形態では倉庫10外のRFIDタグ12を検知してもよいので、ステップS11において、RFIDリーダ4Aの読取部41Aは、例えばRFIDリーダ4Aの電波強度を最大強度に設定してもよい。
【0098】
ステップS14では、ステップS13にて基準タグ3が検知されなかった(ステップS13のNo)ので、制御装置5Aの取得処理部52Aにより、ステップS12にて検知されたタグの情報が読取結果(すなわち読取対象のRFIDタグ2の情報の組)として取得される。基準タグ3が検知されない状況とは、現在のRFIDリーダ4Aの受信可能範囲が基準タグ3の位置より狭い範囲であると考えられるので、ステップS12にて検知されたタグのすべてが倉庫10内のRFIDタグ2であると判断できるためである。
【0099】
ステップS15では、ステップS13にて基準タグ3が検知された(ステップS13のYes)ので、制御装置5Aの取得処理部52Aにより、ステップS12にて検知されたタグの中から、基準タグ3よりRSSI値の大きいタグの情報が読取結果(すなわち読取対象のRFIDタグ2の情報の組)として抽出される。
【0100】
ステップS14またはステップS15の処理が完了すると、本制御フローを終了し、引き続き棚卸制御部53による棚卸制御(
図10参照)が行われる。
【0101】
なお、ステップS13の処理において複数の基準タグ3が検知された場合には、ステップS15では、取得処理部52Aは、検知した複数の基準タグ3のうちRSSI値が最大となるもの、すなわち最も近い位置にある1つの基準タグ3を選択することができる。そして、選択した1つの基準タグ3のRSSI値を閾値として読取対象のタグの抽出を行う。また、ステップS15では、RSSI値が基準タグ3のRSSI値以上となるタグを、読み取り対象のRFIDタグ2として抽出する構成でもよい。
【0102】
また、ステップS14では、
図5に示した第1実施形態のステップS04と同様に、基準タグ3を検知しない範囲で電波強度が上げられる処理を行い、その後に検知されたタグの情報が読取結果として取得される制御を行う構成としてもよい。これによりRFIDリーダ4Aの受信可能範囲を倉庫10内の境界まで広げることができ、より効率良くタグ情報の読み取りを行うことができる。
【0103】
図10は、第2実施形態における棚卸制御を説明する図である。
図10は、第1実施形態の
図6(B)に対応し、棚卸制御の際にスマートフォンのタッチパネル56に表示される、棚卸作業に係る情報表示画面6Aの一例が示されている。情報表示画面6Aは、
図6の情報表示画面6と同様に、棚卸情報表示部61と、読取タグ数表示部62と、棚卸進捗表示部63と、タグ情報表示部64と、ソートボタン65と、リセットボタン66と、保存ボタン67とを有する。情報表示画面6Aは、さらに、基準タグRSSI値表示部68を備える。基準タグRSSI値表示部68には、RFIDリーダ4の読取部41Aにより取得された基準タグ3のRSSI値の情報が表示される。また、タグ情報表示部64の各行には、該当タグのRSSI値を表示するRSSI値表示領域69が含まれる。情報表示画面6Aの表示内容は、例えば棚卸制御部53からの制御指令に応じて、表示制御部55により制御される。
【0104】
図10の例では、タグ情報表示部64には、倉庫10内にある読取対象のRFIDタグ2に加えて、読取対象外のRFIDタグ12のタグ情報も表示されている。また、
図10の例では、第2実施形態に係る情報読取制御の読取結果の情報に基づき、読取対象と読取対象外のタグとが区別して表示されている。
図10では、基準タグRSSI値表示部68に基準タグ3のRSSI値が20(dBm)であることが表示されている。一方、タグ情報表示部64の各行のRSSI値表示領域69には、上から順に各行のタグのRSSI値が18、21、21、22、22、13(dBm)であることが表示されている。そして、これらのRSSI値に基づき、基準タグ3よりRSSI値が小さい上から1行目と6行目のタグが読取対象外のRFIDタグ12と判断されて、
図10の例では背景に斜線模様が入れられて表示態様が区別されている。一方、2~5行目のタグは読取対象のRFIDタグ2であるので、
図6(B)と同様の表示態様となっている。
【0105】
なお、第2実施形態における棚卸制御では、情報表示画面6Aのタグ情報表示部64に、
図10とは異なり読取対象のRFIDタグ2のみを表示させる構成としてもよい。
【0106】
このように第2実施形態に係る情報読取システム1Aでは、制御装置5Aは、基準タグ3から受け取った電波の強さ(
図9などの例ではRSSI値)を閾値として、閾値以上または閾値より上述の電波の強さが大きいRFIDタグを読取対象のRFIDタグ2として抽出する。
【0107】
この構成により、第1実施形態のようにRFIDリーダ4Aの電波強度の調整を行う必要なく、読取対象のRFIDタグ2の抽出を行うことが可能となるので、読取対象のRFIDタグ2からの情報の取得を高精度かつより短時間で行うことが可能となる。
【0108】
[第3実施形態]
図11~
図13を参照して第3実施形態を説明する。
図11は、第3実施形態に係る情報読取システム1Bの概略構成を示す模式図である。
【0109】
図11に示すように、第3実施形態に係る情報読取システム1Bでは、所定の読取領域である倉庫10の内部において、さらに複数のエリアに区分して物品の管理や棚卸を行う。情報読取システム1Bでは、複数のエリアのそれぞれにおいて、少なくとも1個ずつ基準タグ3が関連付けて設置される。
【0110】
図11の例では、2つのエリアA、Bが図示されている。エリアAには、複数の物品11Aが保管されており、各物品11AにはRFIDタグ2Aが貼付されている。同様に、エリアBには、複数の物品11Bが保管されており、各物品11BにはRFIDタグ2Bが貼付されている。そして、エリアAには基準タグ3Aが配置され、基準タグ3AにはエリアAと関連付けられた情報が記録されている。また、エリアBには基準タグ3Bが配置され、基準タグ3BにはエリアBと関連付けられた情報が記録されている。
【0111】
第3実施形態に係る情報読取システム1Bの機能ブロックは、例えば
図3に示した第1実施形態のものや、
図8に示した第2実施形態のものと同様であり、制御装置5は両実施形態と同様の棚卸情報記憶部54(記憶部)を備える。
【0112】
図12は、第3実施形態における棚卸情報記憶部54の構成の一例を示す図である。
図12に示すように、第3実施形態では、棚卸情報記憶部54は「基準タグID」と、「エリアID」と、「物品ID」とを関連付けて記憶している。「基準タグID」は、倉庫10内に配置される複数の基準タグ3A~3Dのそれぞれの識別情報である。「エリアID」とは、
図11に示したエリアA、Bのように、倉庫10内で区分される複数のエリアのそれぞれの識別情報である。「物品ID」とは、各エリアに保管される物品11の識別情報である。
【0113】
RFIDタグ2A、2Bには、それぞれエリアA、Bに保管される物品11A、11Bの物品IDに相当する情報が記録されている。したがって、基準タグ3から読み取った基準タグIDの情報に基づき、棚卸情報記憶部54を参照することによって、棚卸の対象エリアと、対象エリアに保管されている物品の情報とを特定できる。
【0114】
図13は、第3実施形態におけるタグ読取制御のフローチャートである。なお、以下の説明では、各機能ブロックの符号に
図3に示した第1実施形態のものを用いるが、
図8に示した第2実施形態のものでも適用可能である。
【0115】
ステップS21では、制御装置5の取得処理部52により、基準タグ3の基準タグIDが検出される。基準タグ3が検知されない場合には、例えば
図5に示した第1実施形態のステップS01~S04と同様の処理が基準タグ3を検知するまで繰り返される。
【0116】
ステップS22では、制御装置5の取得処理部52により、読取対象のRFIDタグ2の情報が取得される。本ステップでも、例えば
図5に示した第1実施形態のステップS01、S02、S06と同様の処理が行われて、読み取られたタグのうち基準タグ3を除く他のタグが、読取対象のRFIDタグ2として取得される。取得処理部52は、取得したRFIDタグ2の情報を棚卸制御部53へ出力する。
【0117】
ステップS23では、制御装置5の棚卸制御部53により、ステップS21にて取得された基準タグIDに基づき、棚卸情報記憶部54からエリアIDと物品IDが取得される。これにより、ステップS21にて検出された基準タグ3が関連付けられるエリアと、このエリアに保管されている物品11の情報が得られる。
【0118】
ステップS24では、棚卸制御部53により、ステップS22にて読取対象のRFIDタグ2から読み取った物品IDと、ステップS23にて棚卸情報記憶部54から取得した物品IDとが比較される。
【0119】
ステップS25では、棚卸制御部53により、ステップS24の比較の結果、対象エリア内のすべての物品IDの読取が完了したか否かが判定される。例えばステップS23にて取得した物品IDに対して、ステップS22にて取得した物品IDに不足分がある場合には、対象エリア内のすべての物品IDの読取が完了していないと判定され(ステップS25のNo)ステップS26に進む。一方、ステップS22にて取得した物品IDとステップS23にて取得した物品IDとが一致する場合には、対象エリア内のすべての物品IDの読取が完了したと判定され(ステップS25のYes)ステップS27に進む。棚卸制御部53は、本ステップの判定結果の情報を表示制御部55に出力する。
【0120】
ステップS26では、制御装置5の表示制御部55により、ステップS25にてタグ読取が完了していないと判定されたため、同一エリアの再読取を行う旨の指示がユーザに提示される。表示制御部55は、例えばスマートフォンのタッチパネル56に再読取の指示を表示する。ユーザは、指示画面を確認すると、再度RFIDリーダ4を操作して、同一エリアのタグ読み取り操作を行う。ステップS25にて読み取り完了と判定されるまでステップS21~S26の処理が繰り返し実施される。
【0121】
ステップS27では、制御装置5の表示制御部55により、ステップS25にてタグ読取が完了したと判定されたため、該当エリアの棚卸が完了した旨の指示がユーザに提示される。表示制御部55は、例えばスマートフォンのタッチパネル56に棚卸完了の指示を表示する。ユーザは、指示画面を確認すると、棚卸作業を行っていない他のエリアがある場合には、そのエリアに移動してタグ読み取り操作を行う。一方、すべてのエリアの棚卸作業が完了した場合には作業を終了する。
【0122】
なお、ステップS21の処理において複数の基準タグ3が検知された場合には、ステップS22以降では、検知されたすべての基準タグ3と紐づけられる複数のエリアの物品11の読み取り判定を行うことができる。
【0123】
第3実施形態に係る情報読取システム1Bは、基準タグ3の識別情報(基準タグID)と、基準タグ3に割り当てられる読取領域(例えば
図11の倉庫10)内のエリア(例えば
図11のエリアA、B)を特定する情報(エリアID)と、エリア内に保管されている物品11A、11Bの情報(物品ID)と、を紐づけて記憶する棚卸情報記憶部54を備える。制御装置5は、基準タグ3から識別情報を読み取り、読み取った識別情報に基づき、棚卸情報記憶部54から物品11A、11Bの情報を取得し、識別情報に係るエリアにおいてRFIDタグ2A、2Bから読み取った情報を、棚卸情報記憶部54から取得した物品11A、11Bの情報と比較して、エリア内の棚卸の完了判定を行う。
【0124】
この構成により、RFIDリーダ4によるタグ情報の読み取り操作を行えば、所定の読取領域である倉庫10内の複数のエリアごとに、該当エリアに保管されている物品の棚卸作業の完了判定を精度良く行うことが可能となる。これにより、簡易かつ高精度に棚卸作業を行うことができる。
【0125】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0126】
上記実施形態では、読取対象のRFIDタグ2や基準タグ3が配置される「所定の読取領域」の一例として倉庫10を例示して、この倉庫10内にRFIDタグ2が貼付される複数の物品11が保管される構成を例示したが、「所定の読取領域」は倉庫10以外でもよい。例えば建物内の部屋など、倉庫10と同様に壁部等によって区画される空間でもよい。または、屋内または屋外において、例えば地面に描かれた線など壁部以外の要素によって外部と区画される領域でもよい。
【符号の説明】
【0127】
1、1A、1B 情報読取システム
2 RFIDタグ
3 基準タグ
4、4A RFIDリーダ
5、5A 制御装置
54 棚卸情報記憶部(記憶部)
10 倉庫(読取領域)
11 物品