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特開2024-36907地震動推定装置、地震動推定システム、地震動推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036907
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】地震動推定装置、地震動推定システム、地震動推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/28 20060101AFI20240311BHJP
   G01V 1/01 20240101ALI20240311BHJP
【FI】
G01V1/28
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141453
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】福本 博文
(72)【発明者】
【氏名】小山 雅人
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE02
2G105MM01
(57)【要約】
【課題】安価なコストで地震動を推定する。
【解決手段】地震動推定装置は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得部と、取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算部と、層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得部と、演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得部と、
取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算部と、
層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得部と、
演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定部と
を備える地震動推定装置。
【請求項2】
地表に設置された地震センサが検出する地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報を取得する地震動情報取得部と、
前記地震動推定部により推定された前記地震動と、前記地震動情報取得部により取得された前記地震動情報とに基づいて、地震動分布を生成する地震動分布生成部と
を更に備える請求項1に記載の地震動推定装置。
【請求項3】
前記地震動推定部により地震動が推定された地点及び前記地震動情報取得部により前記地震動情報が取得された地点とは異なる地点における地震動を推定する内挿部を更に備え、
前記地震動分布生成部は、前記内挿部により内挿された前記地震動に更に基づき、前記地震動分布を生成する
請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項4】
前記内挿部は、逆距離荷重法により、前記地震動を推定する
請求項3に記載の地震動推定装置。
【請求項5】
前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には動画が含まれ、
前記層間変位演算部は、前記動画に含まれる複数の異なる瞬間における前記構造物が備える所定の物体の位置の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算する
請求項1又は請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項6】
前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物が備える所定の物体間の測距情報が含まれ、
前記層間変位演算部は、前記測距情報に示される前記構造物が備える所定の物体間の距離の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算する
請求項1又は請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項7】
前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物の壁面における角速度情報が含まれ、
前記層間変位演算部は、前記角速度情報の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算する
請求項1又は請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項8】
前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物が備える第1層において地震により生じた加速度と、前記構造物が備える第2層において地震により生じた加速度とについての情報を含む加速度情報が含まれ、
前記層間変位演算部は、前記加速度情報の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算する
請求項1又は請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項9】
前記変位情報取得部により取得される前記変位情報を提供する変位情報測定装置に関する装置情報を取得する装置情報取得部と、
前記装置情報に基づいた重み情報を演算する重み情報演算部とを更に備え、
前記地震動分布生成部は、前記重み情報演算部により演算された前記重み情報に基づいて、前記地震動分布を生成する
請求項2に記載の地震動推定装置。
【請求項10】
前記変位情報測定装置とは、動画を撮像可能なカメラであり、
前記重み情報は、前記カメラの画素数又はフレームレートの少なくともいずれかに応じて演算される
請求項9に記載の地震動推定装置。
【請求項11】
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を測定する変位情報測定装置と、
測定された前記変位情報を取得し、取得した前記変位情報に基づき前記地震動を推定する請求項1又は請求項2に記載の地震動推定装置と
を備える地震動推定システム。
【請求項12】
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を測定する変位情報測定装置と、
地表に設置され、地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報を測定する地震センサと、
測定された前記変位情報を取得し、取得した前記変位情報に基づき前記地震動を推定し、測定された前記地震動情報を取得し、推定された前記地震動と、取得した前記地震動情報とに基づき、前記地震動分布を生成する請求項2に記載の地震動推定装置と
を備える地震動推定システム。
【請求項13】
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得工程と、
取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算工程と、
層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得工程と、
演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定工程と
を有する地震動推定方法。
【請求項14】
コンピュータに、
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得ステップと、
取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算ステップと、
層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得ステップと、
演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定ステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震動推定装置、地震動推定システム、地震動推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震計の設置地点で観測された地震動と、地震計の設置地点及び地震計が設置されていない設置予定地点のそれぞれの地震動の増幅特性とに基づいて、当該設置予定地点の地震動を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-052814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術を用いて当該設置予定地点の地震動を推定する場合であっても、推定のためには高価な地震計を設置しなければならなかった。また、推定の精度を上げるには、より多くの地震計を設置しなければならなかった。そこで、従来技術による高価な地震計に代えて、又は加えて、より安価なコストで地震動を推定することに対する要望がある。
【0005】
そこで本発明は、安価なコストで地震動を推定することができる地震動推定装置、地震動推定システム、地震動推定方法及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得部と、取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算部と、層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得部と、演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定部とを備える地震動推定装置である。
【0007】
(2)また、本発明の一態様は、上記(1)に記載の地震動推定装置において、地表に設置された地震センサが検出する地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報を取得する地震動情報取得部と、前記地震動推定部により推定された前記地震動と、前記地震動情報取得部により取得された前記地震動情報とに基づいて、地震動分布を生成する地震動分布生成部とを更に備えるものである。
【0008】
(3)また、本発明の一態様は、上記(1)又は(2)に記載の地震動推定装置において、前記地震動推定部により地震動が推定された地点及び前記地震動情報取得部により前記地震動情報が取得された地点とは異なる地点における地震動を推定する内挿部を更に備え、前記地震動分布生成部は、前記内挿部により内挿された前記地震動に更に基づき、前記地震動分布を生成するものである。
【0009】
(4)また、本発明の一態様は、上記(3)に記載の地震動推定装置において、前記内挿部は、逆距離荷重法により、前記地震動を推定するものである。
【0010】
(5)また、本発明の一態様は、上記(1)から(4)のいずれかに記載の地震動推定装置において、前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には動画が含まれ、前記層間変位演算部は、前記動画に含まれる複数の異なる瞬間における前記構造物が備える所定の物体の位置の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算するものである。
【0011】
(6)また、本発明の一態様は、上記(1)から(5)のいずれかに記載の地震動推定装置において、前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物が備える所定の物体間の測距情報が含まれ、前記層間変位演算部は、前記測距情報に示される前記構造物が備える所定の物体間の距離の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算するものである。
【0012】
(7)また、本発明の一態様は、上記(1)から(6)のいずれかに記載の地震動推定装置において、前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物の壁面における角速度情報が含まれ、前記層間変位演算部は、前記角速度情報の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算するものである。
【0013】
(8)また、本発明の一態様は、上記(1)から(7)のいずれかに記載の地震動推定装置において、前記変位情報取得部により取得される前記変位情報には、前記構造物が備える第1層において地震により生じた加速度と、前記構造物が備える第2層において地震により生じた加速度とについての情報を含む加速度情報が含まれ、前記層間変位演算部は、前記加速度情報の変化に基づき、前記構造物の前記層間変位を演算するものである。
【0014】
(9)また、本発明の一態様は、上記(2)に記載の地震動推定装置において、前記変位情報取得部により取得される前記変位情報を提供する変位情報測定装置に関する装置情報を取得する装置情報取得部と、前記装置情報に基づいた重み情報を演算する重み情報演算部とを更に備え、前記地震動分布生成部は、前記重み情報演算部により演算された前記重み情報に基づいて、前記地震動分布を生成するものである。
【0015】
(10)また、本発明の一態様は、上記(9)に記載の地震動推定装置において、前記変位情報測定装置とは、動画を撮像可能なカメラであり、前記重み情報は、前記カメラの画素数又はフレームレートの少なくともいずれかに応じて演算されるものである。
【0016】
(11)また、本発明の一態様は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を測定する変位情報測定装置と、測定された前記変位情報を取得し、取得した前記変位情報に基づき前記地震動を推定する上記(1)から(10)のいずれかに記載の地震動推定装置とを備える地震動推定システムである。
【0017】
(12)また、本発明の一態様は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を測定する変位情報測定装置と、地表に設置され、地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報を測定する地震センサと、測定された前記変位情報を取得し、取得した前記変位情報に基づき前記地震動を推定し、測定された前記地震動情報を取得し、推定された前記地震動と、取得した前記地震動情報とに基づき、前記地震動分布を生成する上記(2)に記載の地震動推定装置とを備える地震動推定システムである。
【0018】
(13)また、本発明の一態様は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得工程と、取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算工程と、層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得工程と、演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定工程とを有する地震動推定方法である。
【0019】
(14)また、本発明の一態様は、コンピュータに、
地震により生じた構造物の変位を示す変位情報を取得する変位情報取得ステップと、取得した前記変位情報に基づき、前記構造物の層間変位を演算する層間変位演算ステップと、層間変位と地震動との関係を示す応答特性を取得する応答特性取得ステップと、演算された前記層間変位と、取得された前記応答特性とに基づき、前記構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する地震動推定ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安価なコストで地震動を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態に係る地震動推定システムによる地震動推定演算の概要を説明するための図である。
図2】第1の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る地震動推定装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】第2の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る地震動推定装置により生成される地震動分布の一例を示す図である。
図6】第3の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。
図7】第4の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の態様に係る地震動推定装置、地震動推定システム、地震動推定方法及びプログラムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。また、以下の図面においては、各構成を分かりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る地震動推定システムによる地震動推定演算の概要を説明するための図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る地震動推定システム1による地震動推定演算の概要について説明する。本実施形態に係る地震動推定演算は、地震動の引戻し計算及び増幅計算をすることにより行われる。地震動推定システム1は、複数のセンサ20を備えることにより、地表SFの複数の地点における地震動を測定する。センサ20は、互いに所定の間隔離して設置される。
【0024】
センサ20は、センサ設置住宅の敷地内に設置される。センサ20とは、具体的には、地震センサ30又は地震動推定センサ40のいずれかであってもよい。以下の説明において、地震センサ30又は地震動推定センサ40のいずれかを区別しない場合は、センサ20と記載する場合がある。図示する一例では、センサ20として、地震センサ30-1と、地震センサ30-2と、地震動推定センサ40とが記載されている。地震センサ30-1、地震センサ30-2及び地震動推定センサ40は、いずれも異なるセンサ設置住宅の敷地内に設置される。
【0025】
地震センサ30は、地表SFにおける地震動の変位、速度、加速度等を時間的に連続記録する。地震センサ30は、地表SFに独立して設置されてもよいし、センサ設置住宅の基礎部分に据え付けられてもよい。地震センサ30は、地震動を記録したタイミング毎に、計測震度、計測震度相当値、加速度応答スペクトル、平均加速度応答スペクトル、SI(Spectral Intensity)値などを計算し記録する。以下の説明において、地震センサ30が計算するこれらの情報を総称して地震動情報と記載する場合がある。地震動情報とは、地震動の大きさを示す情報と言うこともできる。本実施形態の一例では、地震センサ30は、所定の振幅よりも大きい地震動を感知した場合に、所定の通信ネットワークを介して地震動情報を出力するものとして説明する。
【0026】
ここで、加速度応答スペクトルについて簡単に説明する。地震動を示す入力波形は、複数の周期成分を含んでいる。入力波形をある固有周期の振子に入力した場合の振子の振れ幅が応答波形である。固有周期T1の振子に入力波形を入力した場合の応答波形の最大値を応答値A1という。固有周期T2の振子に入力波形を入力した場合の応答波形の最大値を応答値A2という。同様に、固有周期Tm(mは自然数。)の振子に入力波形を入力した場合の応答波形の最大値を固有周期Tmの応答値Amという。これら、固有周期T1~mと、応答値A1~mとの関係を示す関数を応答スペクトルという。入力波形を変位とした場合の応答スペクトルを変位応答スペクトルといい、入力波形を速度とした場合の応答スペクトルを速度応答スペクトルという。また、入力波形を加速度とした場合の応答スペクトルを加速度応答スペクトルという。
【0027】
地震動情報には、地震センサ30が設置された地表SFの加速度応答スペクトルが含まれている。被害推定情報生成部130は、地表面の加速度応答スペクトルを基盤BSの加速度応答スペクトルに引き戻し、基盤BSのある位置での振動の推定を行い、推定した振動を増幅演算することにより、当該位置の地表SFにおける位置(つまり、同図に示す位置31)における振動を推定する。
以下の説明において、地表SFの加速度応答スペクトルのことを地表面応答スペクトルともいう。また、基盤BSの加速度応答スペクトルのことを基盤応答スペクトルともいう。
また、地表面応答スペクトルから基盤応答スペクトルを計算する手段を地震動引き戻し計算(又は、単に「引き戻し」)ともいう。基盤応答スペクトルから地表面応答スペクトルを計算する手段を地震動増幅計算(又は、単に「増幅」)ともいう。
【0028】
地震動推定センサ40は、変位情報に基づき地震動を推定する。変位情報とは、地震により生じた構造物の変位を示す情報である。変位情報とは、具体的には、連続的に撮像された画像に基づいて算出される値であってもよいし、電波を用いた測距センサにより測定される値であってもよい。地震動推定センサ40による推定精度は変位情報の測定精度に依存し、地震センサ30による測定よりも精度が低くなる場合がある。したがって、地震動推定センサ40は、地震センサ30を補完するものということもできる。例えば、地震センサ30が所定の間隔で配置されている場合に、地震動推定センサ40を地震センサ30の間に配置することにより、地震センサ30による測定を補完することができる。なお、変位情報の測定を行う装置は、他の目的で備えられた装置であってもよく、地震動の推定のために専用で設けられたものでなくてもよい。したがって地震動推定センサ40は、高価な地震センサ30と比較して、安価に設置することができる。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、地震動推定センサ40の機能構成の一例について説明する。なお、以下の説明において地震動推定センサ40を含む装置の構成を、地震動推定装置10と記載する場合がある。地震動推定装置10は、地震動推定センサ40に加えて、その他の構成を含んでいてもよい。
【0030】
地震動推定センサ40は、変位情報取得部41と、層間変位演算部42と、応答特性取得部43と、地震動推定部44とを含んで構成される。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。具体的には、地震動推定センサ40は、バスで接続された不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)又はRAM(Random access memory)等の記憶装置等を備え、地震動推定プログラムを実行することによって各機能部を備える装置として機能する。
【0031】
なお、地震動推定センサ40の各機能の全てまたは一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。地震動推定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。地震動推定プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0032】
以下の説明において、変位情報測定装置51及び応答特性記憶部52が、地震動推定センサ40とは異なる装置として存在するものとして説明する。しかしながら地震動推定センサ40の構成はこの一例に限定されるものではなく、地震動推定センサ40は、変位情報測定装置51及び応答特性記憶部52を含んで構成されていてもよい。地震動推定センサ40は、変位情報測定装置51及び応答特性記憶部52と所定の通信方式で通信を行う。以下の説明において、地震動推定センサ40と、変位情報測定装置51と、応答特性記憶部52とをその機能として含む構成を、地震動推定システム1と記載する場合がある。
【0033】
変位情報測定装置51は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報DIを測定する。本実施形態に係る変位情報DIには、地震により生じた構造物の変位が示されていればよく、具体的な態様は限定されない。以下の説明においては、一例として、画像から構造物の変位を測定する場合の一例について説明する。この場合、変位情報測定装置51とは、構造物に固定された監視カメラ(防犯カメラ)であってもよい。当該監視カメラは、建物1階部分の天井に設置される。当該監視カメラは、地震発生時に、床上の特定場所の変位を撮像し、撮像した動画又は画像を変位情報DIとする。変位情報測定装置51は、測定した変位情報DIを地震動推定センサ40に出力する。
【0034】
変位情報取得部41は、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報DIを取得する。本実施形態において変位情報測定装置51は監視カメラであるため、変位情報DIには変位情報測定装置51により撮影された動画又は画像に関する情報が含まれる。変位情報取得部41は、取得した変位情報DIを層間変位演算部42に出力する。
【0035】
層間変位演算部42は、変位情報取得部41から変位情報DIを取得する。層間変位演算部42は、取得した変位情報DIに基づき、構造物の層間変位を演算する。層間変位演算部42は、構造物が備える所定の物体の位置の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。本実施形態においては、変位情報DIには、床上の特定場所の変位が撮像された動画又は画像が含まれるため、層間変位演算部42は、動画又は画像に含まれる複数の異なる瞬間における位置の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。層間変位演算部42は、具体的には、監視カメラの設置位置と、天井と、床との相対変位から、最大相間変位角を算出する。監視カメラの設置位置と、天井と、床との関係については、監視カメラの設置時において測定され、予め記憶されていてもよい。また、監視カメラの設置位置と、天井と、床との関係については、撮影された画像に基づく画像処理により求めてもよい。層間変位演算部42は、算出した相関変位角についての情報を相関変位情報CDIとして地震動推定部44に出力する。
【0036】
応答特性記憶部52は、応答特性RCを記憶する。応答特性RCには、構造物の相関変位と、地震動との関係式が示される。構造物の相関変位と地震動との関係式は、予め構造物の実台振動試験により算出されてもよい。また、構造物の相関変位と地震動との関係式は、構造データを用いた応答計算により、入力地震動の計測震度と、対応する構造物の最大層間変位角との関係を導き出してもよい。また、構造物の相関変位と地震動との関係式は、構造データを用いた応答計算により、入力地震動の変位応答スペクトルと、対応する構造物の変位応答スペクトルとの関係を用いて導き出してもよい。監視カメラによる相対変位の詳細な時刻歴を得ることができる場合は、構造物の変位応答スペクトルから地表面の変位応答スペクトルを算出してもよい。更には、変位応答スペクトルに代えて、加速度応答スペクトル又は速度応答スペクトルを用いてもよい。
【0037】
応答特性取得部43は、応答特性記憶部52に記憶された応答特性RCを取得する。応答特性取得部43は、取得した応答特性RCを地震動推定部44に出力する。
【0038】
地震動推定部44は、層間変位演算部42により演算された相関変位に関する情報を含む相関変位情報CDIを取得し、応答特性取得部43に記憶された応答特性RCを取得する。地震動推定部44は、相関変位情報CDIと、応答特性RCとに基づき、構造物が存在する地点の地震動を推定する。なお、構造物が存在する地点とは、実際に構造物が存在する地点より広い範囲である「構造物が存在する地点の近傍」であってもよい。「構造物が存在する地点の近傍」とは、センサ20が設置されたセンサ設置住宅の間隔に応じて定められてもよい。
【0039】
次に、変位情報DIのその他の具体例について説明する。変位情報DIの第2の具体例として、第1の具体例における監視カメラに代えて、ミリ波センサを用いた具体例について説明する。この場合、変位情報測定装置51とは、構造物に固定されたミリ波センサであってもよい。当該ミリ波センサは、建物1階の天井に設置される。当該ミリ波センサは、地震発生時に、床と天井との間の変位を測距する。すなわち変位情報DIの第2の具体例において、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、構造物が備える所定の物体間の測距情報が含まれる。層間変位演算部42は、測距情報に示される構造物が備える所定の物体間の距離の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。なお、当該ミリ波センサは、地震動測定のために専用で備えられたものでなくてもよく、例えば防犯上備えられたセンサ等であってもよい。
【0040】
次に、変位情報DIの第3の具体例として、第1の具体例における監視カメラに代えて、角速度センサを用いた具体例について説明する。この場合、変位情報測定装置51とは、構造物に固定された角速度センサであってもよい。当該角速度センサは、建物1階の柱に設置される。当該角速度センサは、地震発生時に、角速度の時刻歴を計測する。すなわち、変位情報DIの第3の具体例において、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、構造物の壁面における角速度情報が含まれる。層間変位演算部42は、角速度情報の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。なお、当該角速度センサは、地震動測定のために専用で備えられたものでなくてもよい。
【0041】
次に、変位情報DIの第4の具体例として、第1の具体例における監視カメラに代えて、加速度センサを用いた具体例について説明する。この場合、変位情報測定装置51とは、構造物に固定された複数の加速度センサであってもよい。当該加速度センサは、建物1階部分の床と、2階部分の床(又は1階部分の天井)に設置される。当該加速度センサは、地震発生時に、それぞれの設置地点における加速度を測定する。すなわち、変位情報DIの第4の具体例において、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、加速度情報が含まれる。当該加速度情報には、構造物が備える第1層(1階部分)において地震により生じた加速度と、構造物が備える第2層(2階部分)において地震により生じた加速度とについての情報が含まれる。層間変位演算部42は、加速度情報の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。なお、当該加速度センサは、地震動測定のために専用で備えられたものでなくてもよい。
【0042】
なお、上述した変位情報DIを測定するための変位情報測定装置51は、構造物に固定されている場合の一例に限定されない。変位情報測定装置51は、例えばスマートフォンやタブレット端末等に備えられていてもよい。すなわち、スマートフォンやタブレット端末等に備えられたセンサを、変位情報測定装置51として用いてもよい。
【0043】
以上、変位情報DIの具体的態様について、第1から第4の具体例を挙げて詳細に説明した。本実施形態に係る変位情報DIは、この一例に限定されるものでなく、地震により生じた構造物の変位が示されていればよく、その他の態様も広く含まれる。
【0044】
図3は、第1の実施形態に係る地震動推定装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。同図を参照しながら、地震動推定装置10の一連の動作の一例について説明する。なお、同図を参照しながら説明する処理は一例であって、本実施形態を限定するものではない。例えば、各処理の間に異なる処理が行われてもよいし、各処理の順番が異なっていてもよい。
【0045】
(ステップS110)変位情報取得部41は、変位情報測定装置51により測定された変位情報DIを取得する。当該ステップを、変位情報取得ステップ又は変位情報取得工程とも記載する。
(ステップS120)層間変位演算部42は、変位情報取得部41により取得された変位情報DIに基づき、構造物の層間変位を演算する。当該ステップを、層間変位演算ステップ又は層間変位演算工程とも記載する。
(ステップS130)応答特性取得部43は、応答特性記憶部52に記憶された応答特性RCを取得する。当該ステップを、応答特性取得ステップ又は応答特性取得工程とも記載する。
(ステップS140)地震動推定部44は、演算された構造物の層間変位と、取得された応答特性RCとに基づき、地震動を推定する。当該ステップを、地震動推定ステップ又は地震動推定工程とも記載する。
【0046】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、地震動推定装置10は、変位情報取得部41を備えることにより、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報DIを取得し、層間変位演算部42を備えることにより、取得した変位情報DIに基づき構造物の層間変位を演算し、応答特性取得部43を備えることにより、層間変位と地震動との関係を示す応答特性RCを取得し、地震動推定部44を備えることにより、演算された層間変位と、取得された応答特性RCとに基づき、構造物が存在する地点の近傍の地震動を推定する。すなわち、地震動推定装置10によれば、高価な地震センサ30を用いることなく、構造物の変位に基づいて地震動を推定することができる。よって、地震動推定装置10によれば、高価な地震センサ30を用いることを要しないため、安価なコストで地震動を推定することができる。
【0047】
また、上述した実施形態によれば、変位情報測定装置51は監視カメラであり、地震動推定装置10は監視カメラにより撮像された動画に基づき地震動を推定する。すなわち、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには動画像情報が含まれ、層間変位演算部42は当該動画像情報に含まれる複数の異なる瞬間における構造物が備える所定の物体の位置の変化に基づき構造物の層間変位を演算する。したがって、本実施形態によれば、監視カメラにより撮像された情報に基づき地震動を推定することができるため、地震センサ30を用いる場合より安価なコストで地震動を推定することができる。なお、監視カメラの本来の目的は、監視カメラが設置された地点における状態の監視であるため、地震動推定のために専用で設けられたものではない。したがって、本実施形態によれば、変位情報DIの測定のために既存の測定機器を流用することができ、安価なコストで地震動を推定することができる。なお、監視カメラを用いる場合の一例に代えて、変位情報測定装置51は、地震動推定のための専用のカメラであってもよい。
【0048】
また、上述した実施形態によれば、変位情報測定装置51はミリ波センサであり、地震動推定装置10はミリ波センサにより測距された測距情報に基づき地震動を推定する。すなわち、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、構造物が備える所定の物体間の測距情報が含まれ、層間変位演算部42は、測距情報に示される構造物が備える所定の物体間の距離の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。したがって、本実施形態によれば、ミリ波センサにより測距された測距情報に基づき地震動を推定することができるため、地震センサ30を用いる場合より安価なコストで地震動を推定することができる。なお、当該ミリ波センサは、防犯のために備えられているものを用いてもよく、地震動推定のために専用で設けられたものでなくてもよい。したがって、本実施形態によれば、変位情報DIの測定のために既存の測定機器を流用することができ、安価なコストで地震動を推定することができる。なお、当該ミリ波センサは、地震動推定のための専用のセンサであってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態によれば、変位情報測定装置51は角速度センサであり、地震動推定装置10は角速度センサにより測定された角速度情報に基づき地震動を推定する。すなわち、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、構造物の壁面における角速度情報が含まれ、層間変位演算部42は、角速度情報の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。したがって、本実施形態によれば、角速度センサにより測定された角速度情報に基づき地震動を推定することができるため、地震センサ30を用いる場合より安価なコストで地震動を推定することができる。
【0050】
また、上述した実施形態によれば、変位情報測定装置51には複数の加速度センサが含まれ、地震動推定装置10は複数の加速度センサにより測定された加速度情報に基づき地震動を推定する。すなわち、変位情報取得部41により取得される変位情報DIには、構造物が備える第1層において地震により生じた加速度と、構造物が備える第2層において地震により生じた加速度とについての情報を含む加速度情報が含まれ、記層間変位演算部42は、加速度情報の変化に基づき、構造物の層間変位を演算する。したがって、本実施形態によれば、複数の加速度センサにより測定された加速度情報に基づき地震動を推定することができるため、地震センサ30を用いる場合より安価なコストで地震動を推定することができる。
【0051】
また、上述した実施形態によれば、地震動推定システム1は、変位情報測定装置51を備えることにより、地震により生じた構造物の変位を示す変位情報DIを測定し、地震動推定装置10を備えることにより、測定された変位情報DIを取得し、取得した変位情報DIに基づき地震動を推定する。変位情報測定装置51及び地震動推定装置10は、地震センサ30よりも安価である。したがって、地震動推定システム1によれば、安価なコストで地震動を推定することができる。
【0052】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。まず、第2の実施形態の概要について説明する。第2の実施形態においては、地震センサ30により測定された情報と、地震動推定装置10Aにより推定された情報とに基づき、地震動分布を生成する点において第1の実施形態と異なる。
【0053】
なお、地震動推定装置10Aに含まれる地震動推定センサ40又は変位情報測定装置51は、地震センサ30の分布に基づき、地震センサ30の間を埋めるように配置される。地震センサ30が存在しないセンサ設置住宅には、変位情報測定装置51又は変位情報測定装置51及び地震動推定センサ40が備えられていれば、地震センサ30が存在しないセンサ設置住宅近傍の地震動を推定することができる。以下の説明においては、一例として、地震センサ30が存在しないセンサ設置住宅には、変位情報測定装置51のみが設定されている場合の一例について説明する。この場合、変位情報取得部41は、複数の変位情報測定装置51から変位情報DIを取得し、地震動推定部44は、複数の地点における地震動を推進する。
【0054】
図4は、第2の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第2の実施形態に係る地震動推定システム1Aの機能構成の一例について説明する。第2の実施形態に係る地震動推定システム1Aは、地震センサ30を更に備え、地震動推定装置10に代えて地震動推定装置10Aを備える点において地震動推定システム1とは異なる。地震動推定装置10Aは、地震動推定センサ40に加えて、地震動情報取得部45と地震動分布生成部46とを備える。地震動推定装置10Aの説明において地震動推定装置10と同様の構成については同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。
【0055】
地震動情報取得部45は、地震センサ30から地震動情報EMIを取得する。地震動情報EMIには、地震センサ30が検出する地震動の大きさについての情報が少なくとも含まれる。また、地震動情報EMIには、複数の地震センサ30によりそれぞれ測定された複数の地点における地震動の大きさについての情報が含まれている。地震動情報取得部45は、取得した地震動情報EMIを、地震動分布生成部46に出力する。
【0056】
地震動分布生成部46は、地震動推定センサ40から地震動推定情報EMEIを取得し、地震動情報取得部45から地震動情報EMIを取得する。地震動推定情報EMEIには、変位情報取得部41により測定された変位情報DIに基づき推定された地震動に関する情報が含まれる。また、地震動推定情報EMEIには、複数の地点にそれぞれ設置された変位情報測定装置51により測定された変位情報DIに基づき推定された、複数の地点における地震動に関する情報が含まれる。地震動分布生成部46は、地震動推定センサ40により推定された地震動と、地震動情報取得部45により取得された地震動情報EMIとに基づいて、地震動分布を生成する。
【0057】
図5は、第2の実施形態に係る地震動推定装置により生成される地震動分布の一例を示す図である。同図を参照しながら、地震動分布生成部46により生成される地震動分布の一例について説明する。地震動分布生成部46により生成される地震動分布は、地図データの上に、測定又は推定された地震動に応じた色が付されたヒートマップ形式であってもよい。この場合、地震動分布生成部46は、地震センサ30により測定された又は地震動推定センサ40により推定された震地震動に応じた色を地図データの上に付す。その結果、図示するように、地震動が大きい地点は濃い色により表示され、地震動が小さい地点は薄い色により表示される。なお、地震動分布生成部46により生成される地震動分布はこの一例に限定されず、その他の形式により地震動分布を表示してもよい。
【0058】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、地震動推定装置10Aは、地震動情報取得部45を備えることにより、地表に設置された地震センサ30が検出する地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報EMIを取得する。また、地震動推定装置10Aは、地震動分布生成部46を備えることにより、地震動推定部44により推定された地震動と、地震動情報取得部45により取得された地震動情報EMIとに基づいて、地震動分布を生成する。本実施形態によれば、地震動推定センサ40により推定された地震動と地震センサ30により測定された地震動とに基づいて地震動分布を生成するため、地震センサ30のみに基づく地震動分布と比べて、より精度の良い地震動分布を生成することができる。
【0059】
また、上述した実施形態によれば、地震動推定システム1Aは、地震センサ30を備えることにより、地震動の大きさについての情報を少なくとも含む地震動情報EMIを測定する。また、地震動推定システム1Aは、地震動推定装置10Aを備えることにより、測定された変位情報DIを取得し、取得した変位情報DIに基づき地震動を推定し、測定された地震動情報EMIを取得し、推定された地震動と、取得した地震動情報EMIとに基づき、地震動分布を生成する。したがって、本実施形態によれば、地震動推定センサ40により推定された地震動と地震センサ30により測定された地震動とに基づいて地震動分布を生成するため、地震センサ30のみに基づく地震動分布と比べて、より精度の良い地震動分布を生成することができる。
【0060】
[第3の実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。まず、第3の実施形態の概要について説明する。第2の実施形態においては、実際に地震センサ30又は地震動推定センサ40のいずれかのセンサ20が設置された地点の地震動に基づいて地震動分布を生成していた。しかしながら、これでは、センサ20が設置されていない地点における地震動が不明であった。換言すれば、センサ20が設置されていない地点の存在により、地震動分布の表示上、解像度が粗くなってしまう箇所があった。したがって、第3の実施形態においては、センサ20が設置されていない箇所についても地震動を推定し、地震動分布上に表示させようとするものである。
【0061】
図6は、第3の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第3の実施形態に係る地震動推定システム1Bの機能構成の一例について説明する。第3の実施形態に係る地震動推定システム1Bは、地震動推定装置10Aに代えて地震動推定装置10Bを備える点において地震動推定システム1Aとは異なる。地震動推定装置10Bは、更に内挿部47を備える。地震動推定装置10Bの説明において地震動推定装置10Aと同様の構成については同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。
【0062】
内挿部47は、地震動推定部44から地震動推定情報EMEIを取得し、地震動情報取得部45からEMIを取得する。内挿部47は、地震動推定部44により地震動が推定された地点及び地震動情報取得部45により地震動情報EMIが取得された地点とは異なる地点における地震動を推定する。すなわち、内挿部47が地震動を推定する地点とは、センサ20が設置されていない地点である。内挿部47により推定された地震動の値を内挿値とも記載する。また、内挿部47による演算を内挿とも記載する。内挿部47は算出した内挿値に関する情報を内挿情報IIとして地震動分布生成部46に出力する。地震動分布生成部46は、内挿部47から内挿情報IIを取得し、内挿部47により内挿された地震動に更に基づき、地震動分布を生成する。
【0063】
内挿部47は、具体的には、逆距離荷重法により、地震動を推定してもよい。逆距離荷重法では、内挿値を演算しようとしている地点(内挿地点)とセンサ20が設置された地点(測定地点)との間の距離を用いて演算を行う。内挿部47は、例えば最寄りのセンサ20との間隔が所定値以上となる地点を内挿地点として特定し、内挿地点における内挿値を演算していく。内挿地点と測定地点とを含めた地点間の距離が、全て所定値以下となった場合、内挿部47は、演算を終了する。
【0064】
[第3の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、地震動推定装置10Bは、内挿部47を更に備えることにより、地震動推定部44により地震動が推定された地点及び地震動情報取得部45により地震動情報EMIが取得された地点とは異なる地点における地震動を推定する。また、地震動分布生成部46Bは、内挿部47により内挿された地震動に更に基づき、地震動分布を生成する。したがって、地震動推定装置10Bによれば、センサ20が設置されていない箇所についても地震動を推定することができ、地震動分布上に表示することができる。よって、地震動推定装置10Bによれば、解像度の高い地震動分布を生成することができる。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、内挿部47は、逆距離荷重法により、地震動を推定する。したがって、地震動推定装置10Bによれば、センサ20が設置されていない箇所についても地震動を推定することができる。
【0066】
[第4の実施形態]
以下、本発明の第4の実施形態について説明する。まず、第4の実施形態の概要について説明する。第2の実施形態及び第4の実施形態においては、地震センサ30が設置されていない地点においても地震動を推定又は内挿し、地震動分布を生成することができた。しかしながら変位情報DIに基づく地震動の推定は、変位情報DIを測定する変位情報測定装置51の精度に依存してしまうといった問題があった。例えば、監視カメラにより撮影された動画に基づき変位情報DIを測定する場合、変位情報DIの精度は当該監視カメラにより撮影可能な動画の解像度やフレームレートに依存してしまう。変位情報DIの精度が悪いと、地震動の推定精度も悪くなり、その結果として地震動分布の精度が悪くなってしまうといった問題があった。したがって、第4の実施形態においては、変位情報測定装置51の精度に応じて地震動分布を生成しようとするものである。
【0067】
図7は、第4の実施形態に係る地震動推定装置の機能構成の一例を示す図である。同図を参照しながら、第4の実施形態に係る地震動推定システム1Cの機能構成の一例について説明する。第4の実施形態に係る地震動推定システム1Cは、地震動推定装置10Aに代えて地震動推定装置10Cを備える点において地震動推定システム1Aとは異なる。地震動推定装置10Cは、地震動分布生成部46に代えて地震動分布生成部46Cを備え、更に装置情報取得部48と重み情報演算部49とを備える。地震動推定装置10Cの説明において地震動推定装置10Aと同様の構成については同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。
【0068】
装置情報取得部48は、変位情報取得部41により取得される変位情報DIを提供する変位情報測定装置51に関する装置情報EIを取得する。装置情報EIには、変位情報測定装置51の性能に関する情報が含まれる。例えば変位情報測定装置51が監視カメラである場合、装置情報EIには、変位情報測定装置51の解像度やフレームレート等が含まれる。また、装置情報EIには、変位情報測定装置51自体の性能に加えて、変位情報測定装置51が取り付けられた構造物に関する情報が含まれていてもよい。変位情報測定装置51が取り付けられた構造物に関する情報とは、例えば変位情報測定装置51が監視カメラである場合、監視カメラから特定の地点(床や壁)までの距離や、監視カメラの取り付け角度等であってもよい。装置情報取得部48は、取得した装置情報EIを重み情報演算部49に出力する。
【0069】
重み情報演算部49は、装置情報取得部48から装置情報EIを取得する。重み情報演算部49は、取得した装置情報EIに基づいた重み情報を演算する。重み情報とは、すなわち変位情報測定装置51の精度に応じた重みを含む情報である。例えば、重み情報演算部49は、精度が良い(解像度及びフレームレートが高い)変位情報測定装置51については重みを大きくし、精度が悪い(解像度及びフレームレートが低い)変位情報測定装置51については重みを小さくする。変位情報測定装置51が監視カメラである場合、重み情報WIは、監視カメラの画素数又はフレームレートの少なくともいずれかに応じて演算される。重み情報WIの演算は、例えば装置情報EIに含まれるパラメータの値と重みとが予め対応付けられた表や関係式等に基づいて行われてもよい。重み情報演算部49は、算出した重みに関する情報を重み情報WIとして地震動分布生成部46Cに出力する。なお、その他の実施例として、重み情報が装置情報EIに依存しない場合も考えられる。例えば、重み情報には、演算におけるばらつき等が含まれていてもよい。演算におけるばらつきの一例としては、応答計算を行う場合における層間変形角から地震情報へ変換する際のばらつきを例示することができる。
【0070】
地震動分布生成部46Cは、重み情報演算部49から重み情報WIを取得する。地震動分布生成部46Cは、重み情報演算部49により演算された重みに関する情報が含まれる重み情報WIに基づいて、地震動分布を生成する。例えば、地震動分布生成部46Cは、逆距離荷重法により推定値に重みづけをする。例えば地震動分布生成部46Cは、重み情報WIに基づき、変位情報測定装置51の精度に応じて、距離を割り増して演算する。その結果、精度が良い変位情報測定装置51については、地震動分布により反映され易くなり、精度が悪い変位情報測定装置51については、地震動分布により反映され難くなる。
【0071】
[第4の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、地震動推定装置10Cは、装置情報取得部48を備えることにより、変位情報取得部41により取得される変位情報DIを提供する変位情報測定装置51に関する装置情報EIを取得し、重み情報演算部49を備えることにより、装置情報EIに基づいた重み情報WIを演算し、地震動分布生成部46Cを備えることにより、重み情報演算部49により演算された重み情報WIに基づいて、地震動分布を生成する。したがって、地震動推定装置10Cによれば、精度が悪い変位情報測定装置51がシステムに含まれる場合であっても、精度よく地震動分布を生成することができる。
【0072】
また、上述した実施形態によれば、変位情報測定装置51とは、動画を撮像可能なカメラであり、重み情報WIは、カメラの画素数又はフレームレートの少なくともいずれかに応じて演算される。したがって、地震動推定装置10Cによれば、画素数が小さくフレームレートが低い変位情報測定装置51がシステムに含まれる場合であっても、精度よく地震動分布を生成することができる。
【0073】
なお、上述した実施形態における地震動推定装置10が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0074】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0075】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。また、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…地震動推定システム、10…地震動推定装置、20…センサ、30…地震センサ、31…位置、40…地震動推定センサ、41…変位情報取得部、42…層間変位演算部、43…応答特性取得部、44…地震動推定部、45…地震動情報取得部、46…地震動分布生成部、47…内挿部、48…装置情報取得部、49…重み情報演算部、51…変位情報測定装置、52…応答特性記憶部、SF…地表、LS…地表所定位置、BS…基盤、LB…基盤所定位置、DI…変位情報、CDI…相関変位情報、RC…応答特性、EMI…地震動情報、EMEI…地震動推定情報、SID…地震動分布、II…内挿情報、EI…装置情報、WI…重み情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7