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  • 特開-タイヤ用カラーゴム組成物及びタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036909
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】タイヤ用カラーゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240311BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240311BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/013
C08K5/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141456
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東盛 大樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002BB151
4J002BB181
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD207
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物において白色化を防止する。
【解決手段】実施形態に係るタイヤ用カラーゴム組成物は、ゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対して0.2~20質量部の白黒以外の顔料と、前記ゴム成分100質量部に対して10~150質量部の白色充填剤と、前記白色充填剤100質量部に対して0.5~12質量部の有機シランを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、
前記ゴム成分100質量部に対して0.2~20質量部の白黒以外の顔料、
前記ゴム成分100質量部に対して10~150質量部の白色充填剤、及び、
前記白色充填剤100質量部に対して0.5~12質量部の有機シラン、
を含む、タイヤ用カラーゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分が、天然ゴム、ブチル系ゴム、及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む、請求項1に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
【請求項3】
前記白色充填剤が、クレー、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
【請求項4】
前記白色充填剤が、クレーを50質量%以上含む、請求項1に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
【請求項5】
前記有機シランが硫黄含有シランカップリング剤である、請求項1に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用カラーゴム組成物を含むタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用カラーゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォールなどのサイド部において、例えば装飾などのために黒色以外のカラーゴムを設けることがあり、種々提案されている(特許文献1~4参照)。非黒色のカラーゴム組成物では、充填剤としてカーボンブラックは配合されず、白色充填剤が配合されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、色ゴム層を形成するゴム組成物が、ブチルゴム及び/又はハロゲン化ブチルゴムを含むゴム成分、及び、白色充填剤を含むことが記載されている。特許文献1にはまた、白色充填剤に代えて又は白色充填剤とともに、青色、赤色等の有色顔料を配合してもよいことが記載されている。特許文献1にはまた、色ゴム層のゴム組成物にシランカップリング剤を配合してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-168616号公報
【特許文献2】特開2002-301904号公報
【特許文献3】特開平7-228727号公報
【特許文献4】特開2008-56785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物において、経年変化により白く変色することがあり、このような白色化を抑制することが求められる。特許文献1には、上記のように色ゴム層のゴム組成物にシランカップリング剤を配合してもよいことは記載されている。しかしながら、特許文献1には、白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物において、白黒以外の顔料及び白色充填剤とともにシランカップリング剤を配合することは記載されておらず、またそれにより経年による白色化を抑制できることも記載されていない。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物において白色化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ゴム成分、前記ゴム成分100質量部に対して0.2~20質量部の白黒以外の顔料、前記ゴム成分100質量部に対して10~150質量部の白色充填剤、及び、前記白色充填剤100質量部に対して0.5~12質量部の有機シラン、を含む、タイヤ用カラーゴム組成物。
[2] 前記ゴム成分が、天然ゴム、ブチル系ゴム、及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む、[1]に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
[3] 前記白色充填剤が、クレー、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
[4] 前記白色充填剤が、クレーを50質量%以上含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
[5] 前記有機シランが硫黄含有シランカップリング剤である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のタイヤ用カラーゴム組成物。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載のタイヤ用カラーゴム組成物を含むタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物において白色化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例で作製したタイヤの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係るタイヤ用カラーゴム組成物(以下、カラーゴム組成物ともいう。)は、ゴム成分、白黒以外の顔料、白色充填剤、及び、有機シランを含む。カラーゴム組成物とは、白色又は黒色以外の色彩を持つゴム組成物をいい、該色彩としては、例えば青色、赤色、黄色、緑色などが挙げられ、特に限定されない。
【0011】
本発明者は、白黒以外の色彩を持つカラーゴム組成物の白色化を防止するべく鋭意検討する中で、カラーゴム組成物からなるゴムサンプルを屋外暴露して分析した。その結果、白色化したゴム表面の析出物からワックスとともにクレーなどの白色充填剤が検出された。このことから、カラーゴム組成物が白色化する原因は、経年により白色充填剤がゴム表面に出てくるためであると考えた。ゴム表面が白色充填剤で覆われ白色化することを防止するためには、白色充填剤をゴム組成物中に分散させた状態に維持することが有効である。そこで、カラーゴム組成物に有機シランを配合することを案出した。有機シランを配合することにより、白色充填剤がゴム組成物中に分散した状態に維持され、ゴム表面への移行が抑制されるので、ゴム表面の白色化を抑制することができる。また、有機シランを配合することにより、白色充填剤の分散性が良好になるため、カラーゴム組成物の発熱が抑制されて、転がり抵抗を低減することができる。
【0012】
上記ゴム成分としては、特に限定されず、タイヤ用ゴム組成物において通常使用される各種ゴム成分を用いることができる。ゴム成分の具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのジエン系ゴム、ブチル系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などの非ジエン系ゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、いずれか一種用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。ブチル系ゴムは、ブチルゴム(IIR)とハロゲン化ブチルゴム(例えば、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)など)を包括する概念であり、ブチルゴムのみを用いてもよく、ハロゲン化ブチルゴムのみを用いてもよく、ブチルゴムとハロゲン化ブチルゴムを併用してもよい。
【0013】
一実施形態において、ゴム成分は、ジエン系ゴム及びブチル系ゴムを含んでもよく、ジエン系ゴム、ブチル系ゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含んでもよい。ゴム成分中におけるこれらのゴムの含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部中、ジエン系ゴムは20~60質量部が好ましく、より好ましくは30~50質量部である。ゴム成分100質量部中、ブチル系ゴムは20~60質量部が好ましく、より好ましくは30~50質量部である。ゴム成分100質量部中、エチレンプロピレンジエンゴムは0~30質量部が好ましく、より好ましくは5~20質量部である。ゴム成分は、ジエン系ゴム、ブチル系ゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムのみで構成されてもよい。
【0014】
一実施形態において、ゴム成分は、天然ゴム、ブチル系ゴム、及びエチレンプロピレンジエンゴムを含むことが好ましい。より好ましくは、ゴム成分100質量部が、天然ゴム20~60質量部、ブチル系ゴム20~60質量部、及びエチレンプロピレンジエンゴム5~30質量部を含むことである。更に好ましくは、ゴム成分100質量部が、天然ゴム30~50質量部、ブチル系ゴム30~50質量部、及びエチレンプロピレンジエンゴム10~20質量部を含むことである。なお、これら天然ゴム、ブチル系ゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムに加えて、他のジエン系ゴムや非ジエン系ゴムを含んでもよい。
【0015】
上記白黒以外の顔料(以下、有色顔料という。)は、本実施形態に係るカラーゴム組成物が白黒以外の色彩を示すために用いられる着色剤であり、白色顔料及び黒色顔料以外の顔料が用いられる。白色顔料については、白色充填剤として配合されるが、ここでいう有色顔料には含まれない。一方、カーボンブラックなどの黒色顔料については、これを添加すると、有色顔料の色彩が表示されないので、カラーゴム組成物には配合しないことが好ましい。
【0016】
有色顔料としては、特に限定されず、青色、赤色、黄色、緑色などの様々な色の顔料が挙げられる。有色顔料として、具体的には、無機顔料、多環顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、蛍光顔料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、群青、紺青、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄が挙げられる。多環顔料としては、例えば、フタロシアニン、アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ペリレンが挙げられる。レーキ顔料としては、例えば、塩基性染料系レーキ、酸性染料系レーキが挙げられる。これらの有色顔料はいずれか一種用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
なお、有色顔料を配合する場合、ゴム成分とともに予めマスターバッチ化したものを用いて分散性を向上してもよい。
【0018】
カラーゴム組成物における有色顔料の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.2~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~15質量部であり、更に好ましくは1~10質量部であり、更に好ましくは2~8質量部である。
【0019】
上記白色充填剤としては、各種の白色の無機充填剤が用いられ、例えば、クレー、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び炭酸カルシウム等が好ましく用いられる。これらはいずれか一種用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
一実施形態において、白色充填剤はクレーを50質量%以上含むことが好ましい。すなわち、白色充填剤100質量%のうちクレーの含有量が50質量%以上であることが好ましい。クレーは、有機シランとともに配合することで補強性を発揮することができる。クレーとしては、例えば、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、イライト、ハロイサイト、セリサイト等の含水ケイ酸アルミニウムを主成分とするものが挙げられる。一実施形態において、カオリナイトを主成分とするカオリンクレーを用いてもよい。白色充填剤100質量%におけるクレーの含有量は、より好ましくは60~90質量%であり、更に好ましくは70~85質量%である。
【0021】
一実施形態において、白色充填剤は、酸化マグネシウムを0.1~5質量%含むことが好ましい。酸化マグネシウムは、カラーゴム組成物にステアリン酸を配合する場合に、当該ステアリン酸との界面活性効果を持つ。白色充填剤100質量%における酸化マグネシウムの含有量は、より好ましくは0.5~3質量%であり、更に好ましくは0.7~2質量%である。
【0022】
一実施形態において、白色充填剤は、酸化亜鉛を1~10質量%含むことが好ましい。酸化亜鉛は、加硫促進助剤としての作用を持つ。白色充填剤100質量%における酸化亜鉛の含有量は、より好ましくは3~8質量%であり、更に好ましくは4~7質量%である。
【0023】
一実施形態において、白色充填剤は、シリカを5~30質量%含んでもよい。シリカは、有機シランとともに配合することで補強性を発揮することができる。白色充填剤100質量%におけるシリカの含有量は、10~25質量%であることが好ましく、より好ましくは13~20質量%である。
【0024】
一実施形態において、白色充填剤は、酸化チタンを5~30質量%含んでもよい。酸化チタンは遮蔽効果が大きいことから発色効果(特に青色の発色効果)に優れる。白色充填剤100質量%における酸化チタンの含有量は、10~25質量%であることが好ましく、より好ましくは13~20質量%である。
【0025】
一実施形態において、白色充填剤は、炭酸カルシウムを5~30質量%含んでもよい。炭酸カルシウムは、カラーゴム組成物の色味を調整するために配合することができる。
【0026】
白色充填剤100質量%は、クレー50~90質量%(より好ましくは60~90質量%、更に好ましくは70~85質量%)と、シリカ及び/又は酸化チタン5~30質量%(より好ましくは10~25質量%、更に好ましくは13~20質量%)を含有してもよい。その場合、更に、酸化マグネシウム0.1~5質量%(より好ましくは0.5~3質量%、更に好ましくは0.7~2質量%)と、酸化亜鉛1~10質量%(より好ましくは3~8質量%、更に好ましくは4~7質量%)を含有してもよい。
【0027】
カラーゴム組成物における白色充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、10~150質量部であることが好ましく、より好ましくは30~130質量部であり、更に好ましくは50~120質量部であり、更に好ましくは70~110質量部であり、更に好ましくは80~100質量部である。一実施形態において、ゴム成分100質量部に対して、クレー40~100質量部(より好ましくは50~90質量部、更に好ましくは60~80質量部)と、シリカ及び/又は酸化チタン5~25質量部(より好ましくは10~20質量部)を含有してもよい。その場合、更に、酸化マグネシウム0.1~5質量部(より好ましくは0.5~3質量部)と、酸化亜鉛1~10質量部(より好ましくは3~7質量部)を含有してもよい。
【0028】
上記有機シランとしては、白色充填剤と反応する加水分解性基と、ゴム成分と反応又は相互作用する有機基とを持つものが用いられる。有機シランとしては、シランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤としては、ゴム成分と反応し化学結合することができる反応性官能基を持つものが好ましく用いられ、好ましくは硫黄含有シランカップリング剤を用いることである。硫黄含有シランカップリング剤を配合することにより、硫黄含有シランカップリング剤を介して白色充填剤がゴム成分に結合される。そのため、白色充填剤がより強固にゴム成分中に保持されるので、ゴム表面への移行抑制効果を高めることができる。
【0029】
硫黄含有シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシランカップリング剤、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基含有シランカップリング剤が挙げられる。これらはいずれか一種用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カラーゴム組成物における有機シラン(好ましくは硫黄含有シランカップリング剤)の含有量は、白色充填剤100質量部に対して0.5~12質量部である。該含有量が0.5質量部以上であることにより、ゴム表面の白色化を抑制することができる。また、有機シランにより白色充填剤の分散性が良くなり、カラーゴム組成物の発熱性を低減して、それを用いたタイヤの転がり抵抗を低減することができる。また、該含有量が12質量部以下であることにより、カラーゴム組成物の引き裂き力の低下を抑えることができる。白色充填剤100質量部に対する有機シランの含有量は、1~11質量部であることが好ましく、より好ましくは2~10質量部であり、更に好ましくは3~8質量部である。
【0031】
本実施形態に係るカラーゴム組成物には、上記成分の他に、例えば、ステアリン酸、ワックス、オイル、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合してもよい。
【0032】
ステアリン酸を配合する場合、カラーゴム組成物におけるステアリン酸の含有量は特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.5~10質量部でもよく、1~8質量部でもよく、2~5質量部でもよい。
【0033】
ワックスとしては、例えば、飽和炭化水素からなる石油ワックスが好ましく用いられる。ワックスの含有量は特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.3~10質量部でもよく、0.5~8質量部でもよく、1~5質量部でよい。
【0034】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0035】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか一種用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0036】
本実施形態に係るカラーゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、有色顔料、白色充填剤、及び有機シランとともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合する。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0037】
本実施形態に係るカラーゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途の空気入りタイヤに用いることができる。タイヤにおける使用部位としては、特に限定されない。一実施形態として、サイドウォールなどのサイド部において、例えば文字、記号、図形などを表示するために用いることができ、タイヤの装飾性、デザイン性を向上することができる。従って、好ましい一実施形態に係るタイヤ(空気入りタイヤ)は、上記カラーゴム組成物により形成されたカラーゴム部をサイドウォールなどのサイド部に備える。該カラーゴム部は、サイドウォールゴムの全体でもよく、一部でもよい。
【0038】
タイヤの製造方法は、特に限定されない。例えば、上記カラーゴム組成物は、常法に従い、押出加工等によって所定の形状に成形されて、未加硫のカラーゴム部材が得られる。該カラーゴム部材を他のタイヤ部材と組み合わせることにより、未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)が作製される。その後、例えば140~180℃で加硫成形することにより、タイヤを製造することができる。
【実施例0039】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例および比較例で使用した各成分は以下の通りである。
・天然ゴム:SIR20
・塩素化ブチルゴム:日本ブチル株式会社製「クロロブチル1066」
・EPDM:JSR株式会社製「EP33」
【0041】
・赤色顔料MB:アゾ化合物からなる赤色顔料50質量%とSBR(スチレンブタジエンゴム)30質量%と鉱油20質量%を混合したマスターバッチ
・青色顔料MB:銅フタロシアニンからなる青色顔料50質量%とSBR(スチレンブタジエンゴム)30質量%と鉱油20質量%を混合したマスターバッチ
【0042】
・クレー:竹原化学株式会社製「ハードブライト」
・シリカ:エボニック社製「Ultrasil VN3」
・酸化チタン:堺化学工業株式会社製「AT-190」
・酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社「キョーワマグ150」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業株式会社製「酸化亜鉛2種」
【0043】
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋株式会社製「OZOACE-0355」
【0044】
・加硫促進剤1:大内新興化学工業製「ノクセラーDM-P」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業製「ノクセラーD」
・加硫促進剤3:ARKEMA製「VULTAC5」
・硫黄:鶴見化学工業株式会社製「粉末硫黄」
【0045】
[実施例1~3及び比較例1~3]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練した(排出温度=90℃)。これによりカラーゴム組成物を調製した。
【0046】
得られた各カラーゴム組成物について、160℃×30分間加硫して試験片を作製し、屋外暴露による色目変化と、引き裂き力を評価した。
【0047】
また、各カラーゴム組成物をサイドウォールゴムの一部として用いて195/65R15の試作タイヤを作製し、転がり抵抗を評価した。試作タイヤは、カラーゴム組成物の配合を除いて特開2008-56785号公報に記載の構成に準拠し作製した。詳細には、試作タイヤは、図1に示す断面構造を持ち、左右一対のビード部10及びサイドウォール12と、両サイドウォール12間にまたがるトレッド14とを備える。サイドウォール12におけるカーカスプライ16の外側にサイドウォールゴム18が設けられている。サイドウォールゴム18の半径方向中央部がカラーゴム組成物からなるカラーゴム部20であり、その上下両側が通常の黒色ゴム部22,22である。カラーゴム部20の半径方向中央部を除いてその表面には黒色のカバーゴム層24が覆設されている。カバーゴム層24により覆設されていないカラーゴム部20の表面が外部に露出し、これによりカラーゴム部20による装飾がタイヤ外面に表示される。
【0048】
各評価方法は以下の通りである。
・色目変化:コニカミノルタ製分光測色計「CR-200」を用いて、6か月間屋外暴露試験した試験片の色彩を測定した。色差ΔEを求め、下記基準で色目変化を評価した。ΔEの値が小さいほど屋外暴露前後での色目変化(白色化)が小さく、外観は良好である。
A:ΔEが5.0未満
B:ΔEが5.0以上10.0未満
C:ΔEが10.0以上
【0049】
・引き裂き力:JIS K6252-1:2015に規定のクレセント形で打ち抜き、くぼみ中央に0.50±0.08mmの切れ込みを入れた厚さ2mmの試験片を作製した。該試験片を、(株)島津製作所製の引張試験機によって500mm/minの引っ張り速度で引き裂き試験を行い、引き裂き力を求め、比較例1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど引き裂き力が大きい。
【0050】
・転がり抵抗:試作タイヤを用いて、空気圧230kPa、荷重450kgf(4413N)、温度23℃、80km/hの条件にて、転がり抵抗測定ドラムで転がり抵抗を測定し、比較例1の値を100として指数で表示した。数値が小さい方ほど転がり抵抗が小さく、良好である。
【0051】
【表1】
【0052】
結果は表1に示すとおりである。シランカップリング剤を配合していない比較例1では、屋外暴露後に白変し、色目変化が大きかった。比較例2では、シランカップリング剤を配合したが、その配合量が少なく、白色化の抑制効果に劣っていた。これに対し、実施例1~3であると、屋外暴露後の白変が抑えられ、色目変化が小さかった。実施例1~3であると、転がり抵抗が低減されており、また、引き裂き力の低下が小さく許容範囲内であった。一方、比較例3では、シランカップリング剤の配合量が多すぎて、引き裂き力が低下した。
【0053】
[実施例4~6及び比較例4~6]
下記表2に示す配合(質量部)に従い、その他は実施例1と同様にしてカラーゴム組成物を調製した。得られた各カラーゴム組成物について、実施例1と同様にして色目変化と引き裂き力と転がり抵抗を評価した。評価方法は上記のとおりである。但し、引き裂き力及び転がり抵抗については、比較例4の値を100とした指数で表示した。
【0054】
【表2】
【0055】
結果は表2に示すとおりである。有色顔料として青色顔料を用いた場合も、表1に示す赤色顔料を用いた場合と同様、実施例4~6であると、シランカップリング剤を規定量配合することにより、屋外暴露後の白変が抑えられた。また、実施例4~6であると、引き裂き力の低下を抑えながら、転がり抵抗が低減されていた。
【0056】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
10…ビード部、12…サイドウォール、14…トレッド、16…カーカスプライ、18…サイドウォールゴム、20…カラーゴム部、22…黒色ゴム部、24…カバーゴム層

図1