(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036913
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】マイクロ流路デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240311BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240311BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B81B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141464
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一平
【テーマコード(参考)】
2G058
3C081
【Fターム(参考)】
2G058DA05
2G058DA07
2G058EA19
3C081AA13
3C081BA01
3C081BA06
3C081BA23
3C081BA24
3C081DA06
3C081DA10
3C081EA29
(57)【要約】
【課題】本流路の試験液を回収する回収部に試験液を排出した後に、当該回収部から本流路へ試験液が逆流するのを防止する。
【解決手段】マイクロ流路デバイス2は、試験液を受ける開口22と、開口22と連通する本流路23と、本流路23の出口側端部23bに設けられた回収部40とを備える。回収部40は、試験液を貯留するプール42と、プール42と出口側端部23bとを繋ぐ接続流路44と、本流路から排出される試験液を受けて接続流路の内壁との間に当該接続流路を塞ぐ気泡を生じさせるように接続流路44に配置された突起物46とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を含む試験液と薬剤とを作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスであって、
前記試験液を受ける開口と、
前記開口と連通する本流路と、
前記本流路に連通する複数のマイクロ流路と、
前記本流路において前記開口と連通する入口側端部と反対側に位置する出口側端部に設けられ、前記試験液の一部を回収する回収部と、を備え、
前記回収部は、
前記本流路から排出された試験液を貯留するプールと、
前記プールと前記出口側端部とを繋ぐ接続流路と、
前記本流路から排出される試験液を受けて前記接続流路の内壁との間に当該接続流路を塞ぐ気泡を生じさせるように当該接続流路に配置された突起物と、を含む、マイクロ流路デバイス。
【請求項2】
前記接続流路は、当該接続流路の外側に向かって傾斜する傾斜面が形成された傾斜流路を有し、
前記傾斜面から延びる流路面に対する当該傾斜面の傾斜角は、90度未満である、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
各流路を構成する壁面のうち、前記開口が設けられた面に対向する面は平坦である、請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記接続流路を構成する壁面のうち、前記開口が設けられた側の壁面に形成されている、請求項2または請求項3に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項5】
前記突起物は、前記傾斜流路に設けられている、請求項2または請求項3に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項6】
前記突起物は、前記出口側端部に向かって先細りした形状を有する、請求項1または請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項7】
前記接続流路は、前記出口側端部から前記プールに向かって流路幅が広くなるテーパ部を有し、
前記テーパ部のテーパ角は、180度未満である、請求項1~請求項3のうちいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検体を含む試験液と薬剤とを作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌薬に対する細菌の感受性などを試験するためマイクロ流路デバイスを用いて試験する方法が知られている。例えば、特開2017-67620号公報(特許文献1)では、外部に連通する導入口および排出口と、導入口から供給された試験液が排出口側に流れる流路と、を備えるマイクロ流路デバイスに、導入口から流路の内部に空気を圧入して先に導入した試験液を微細な流路に押し込む。流路には、導入口から供給された試験液が貯留される反応部が設けられ、当該反応部に配置された薬剤が細菌に作用する。
【0003】
特開2022-044563号公報(特許文献2)には、複数のマイクロ流路に試験液を圧入し、マイクロ流路に試験液を圧入した後、空気圧を付与して複数のマイクロ流路につながる本流路の試験液を回収部に回収させる試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-67620号公報
【特許文献2】特開2022-044563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された試験装置によれば、本流路に残った試験液を回収部に排出することで、複数のマイクロ流路の各々を独立させ、流路内で発生する試験液の流れを抑えることができる。すなわち、複数のマイクロ流路の各々を独立させるために、本流路から回収部へ試験液を確実に排出し、回収部に回収された試験液を回収部内にとどまらせておくことが求められている。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、回収部に排出された試験液を回収部内にとどまらせておくことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液と薬剤とを作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスである。マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける開口と、開口と連通する本流路と、本流路に連通する複数のマイクロ流路と、本流路において開口と連通する入口側端部と反対側に位置する出口側端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、を含む。回収部は、本流路から排出された試験液を貯留するプールと、プールと出口側端部とを繋ぐ接続流路と、本流路から排出される試験液を受けて接続流路の内壁との間に当該接続流路を塞ぐ気泡を生じさせるように当該接続流路に配置された突起物と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
上記のマイクロ流路デバイスによれば、突起物を設けることで生じた気泡によって、回収部から本流路への試験液の逆流を防止でき、その結果、試験液を回収部内にとどまらせておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】試験装置の制御を説明するためのブロック図である。
【
図4】試験装置の圧入方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】試験装置によって試験液を圧入したときの、試験液の流れを説明するための図である。
【
図9】試験液を排出する前後における回収部の状態を模式的に示した図である。
【
図10】試験液を回収部に排出した後の状態を示す画像である。
【
図11】比較例における、試験液を回収部に排出した後の状態を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[試験装置の装置構成]
図1および
図2を参照して、マイクロ流路デバイスに試験液を注入するための試験装置100について説明する。
図1は、試験装置の全体構成例を示す図である。
図2は、試験装置の制御を説明するためのブロック図である。なお、本実施の形態に従う試験装置は、マイクロ流路デバイスのマイクロ流路に検体を含む試験液を圧入して試験液を測定する装置であり、抗菌薬(薬剤)に対する細菌の感受性を測定するために試験液をマイクロ流路に圧入する例を一例として以下説明する。試験液は、検体を含む。検体は、菌(具体例では病原菌)であってもよい。具体例では、試験液は、細菌の懸濁液であってもよい。もちろん、試験液は、試験装置がマイクロ流路デバイスのマイクロ流路に圧入する試験液であれば、上述の試験液に限定されない。
【0012】
図1および
図2を参照して、試験装置100は、試験液設置部10、ピペットノズル駆動部12、テーブル駆動部13、ポンプ14、ピペットノズル15、テーブル16、開閉部30、開閉駆動部31、塗布部32、ポンプ33、塗布駆動部34および制御部50を含む。
【0013】
試験液設置部10は、試験液を収容した試験液容器5を複数並べることができるラックである。試験液設置部10は、試験装置100に対してラック単位で複数の試験液容器5をセットすることができる。
【0014】
ピペットノズル15は、着脱可能なピペットチップ1を取り付け、ピペットチップ1の先端部を通じて試験液容器5から試験液を吸引または排出する。
【0015】
ピペットノズル駆動部12は、ピペットノズル15と、ピペットノズル15に接続されたポンプ14と、開閉部30と、塗布部32と、塗布部32に接続されたポンプ33とを水平移動させる。また、ピペットノズル駆動部12は、ピペットノズル15と、ピペットノズル15に接続されたポンプ14とを昇降移動させる。ピペットノズル駆動部12は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってピペットノズル15を自在に移動させることができる。
【0016】
テーブル16は、マイクロ流路デバイス2(
図3参照)を載置するための支持部材である。テーブル16は、平板状に形成され、マイクロ流路デバイス2を上面に固定する。テーブル駆動部13は、テーブル16を水平方向に移動させることができる。テーブル駆動部13は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってテーブル16を自在に移動させることができる。もちろん、テーブル駆動部13は、テーブル16を昇降移動させるようにして、ピペットノズル15を昇降移動させないようにしてもよい。なお、少なくともピペットノズル駆動部12およびテーブル駆動部13は、ピペットノズル15とマイクロ流路デバイス2との相対位置を変更するための移動機構である。
【0017】
ポンプ14は、図示していないが、例えばシリンジと、シリンジ内を往復動作可能なプランジャと、プランジャを駆動する駆動モータとを含む。ポンプ14は、配管を介してピペットノズル15に接続した状態で、プランジャを往復運動させることによって、ピペットチップ1内の空気圧を調整して試験液をピペットチップ1内に吸入させたり、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出させたりすることができる。また、ポンプ14は、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出した状態で、さらにプランジャをシリンジ内に押し込む方向に移動させることで、ピペットチップ1外に空気を送り出すことができる。
【0018】
開閉部30は、後述するマイクロ流路デバイス2に形成された開口29(
図3参照)を開閉する機構である。開閉部30は、棒状の支持部の先に設けられた弾性部材30aを備える。弾性部材30aは、例えば、シリコーン樹脂である。開閉駆動部31は、開閉部30を駆動し、弾性部材30aを昇降移動させる。開閉駆動部31は、開口29の真上に移動した弾性部材30aを昇降移動させることで、開口29を覆うガス透過膜27aに弾性部材30aを押し当てたり、離したりする。これにより、弾性部材30aを備える開閉部30は、開口29を開閉する。
図1では、開閉部30がピペットノズル15と同じ移動機構に設けられる構成で図示されているが、開閉部30をピペットノズル15と異なる移動機構に設け、開閉駆動部31で塗布部32を移動させてもよい。
【0019】
塗布部32は、マイクロ流路デバイス2に形成された開口などに封止材を塗布する。塗布部32は、例えばシリコーンオイルなどの封止材を開口などに排出するノズルであり、ポンプ33によって当該ノズルで封止材を開口などに塗布する。塗布部32の構成はこれに限定されず、ブラシなどで封止材を開口などに塗布する機構でもよい。
【0020】
塗布駆動部34は、封止材を塗布する位置に塗布部32を移動させ、ポンプ33を駆動する。
図1では、塗布部32がピペットノズル15と同じ移動機構に設けられる構成で図示されているが、塗布部32をピペットノズル15と異なる移動機構に設け、塗布駆動部34で塗布部32を移動させてもよい。
【0021】
制御部50は、試験装置100の動作を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random access memory)のようなメモリーを備える。メモリーは、制御プログラムを記憶する。プロセッサーが、制御プログラムを実行することによって、試験装置100の動作を制御する。なお、制御部50のメモリーが、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0022】
図2に示すように、制御部50は、試験液設置部10、ピペットノズル駆動部12、テーブル駆動部13、ポンプ14、開閉駆動部31、ポンプ33、および塗布駆動部34を制御する。制御部50は、これらを制御することで、テーブル16に載置されたマイクロ流路デバイス2に試験液を注入したり、マイクロ流路デバイス2に形成された開口などに封止材を塗布する。なお、試験装置100の具体的な動作については、
図4を参照して後述する。
【0023】
なお、制御部50には、使用者が試験装置100を管理するために利用するコンピュータなどの演算処理装置が接続されていてもよい。演算処理装置は、例えば、テーブル16の移動量、マイクロ流路デバイス2に注入する試験液の量などの入力を受け付ける。
【0024】
[マイクロ流路デバイスの構成]
図3は、マイクロ流路デバイスの平面図である。マイクロ流路デバイス2は、試験装置100のテーブル16に載置される。なお、以降の説明において、マイクロ流路デバイス2の開口22が設けられた面をXY平面とし、XY平面に対して直交する軸をZ軸とする。また、以下では、開口22が設けられている側の面を上面、当該上面と対向する面を底面とし、Z軸の正方向を上、負方向を下と称する場合がある。
【0025】
マイクロ流路デバイス2は、開口22が設けられていない底面を設置面としてテーブル16に載置される。
図3に示すように、マイクロ流路デバイス2は、板状部材20と、流路構造とを備える。流路構造は、開口22、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26、および開口29の設けられた回収部40を備える。
【0026】
開口22は、本流路23の一方の端部である入口側端部23aに接続され、本流路23と連通している。流体圧を用いて試験液が開口22から本流路23へと圧入される。本流路23に圧入された試験液は、さらにマイクロ流路24へと圧入される。本実施の形態において、流体圧として空気圧が用いられる。開口22は、例えば、断面が円形状に形成される。開口22の直径は、例えば5μm~5mmである。本実施の形態において、開口22に1本の本流路23が接続される。1本の本流路23は、複数のマイクロ流路24の外側を囲む位置に配置されている。
【0027】
本流路23は、開口22と連通する入口側端部23aと、入口側端部23aと反対側に位置する出口側端部23bとを有する。開口22から延びた本流路23は、さらに複数のマイクロ流路24に分岐する。本流路23は、複数のマイクロ流路24に対して試験液が流動可能に接続されている。開口22から流入した試験液は、本流路23を経て分岐した複数のマイクロ流路24に流動する。本流路23およびマイクロ流路24の断面は矩形状であり、本流路23およびマイクロ流路24の幅は、例えば1μm~1mmである。しかし、本流路23とマイクロ流路24とで深さ(高さ)が異なる。例えば、本流路23の深さが0.5mmであるのに対して、マイクロ流路24の深さが0.025mmと小さい。そのため、本流路23に比べマイクロ流路24の流路抵抗が大きくなっている。本流路23に比べマイクロ流路24の流路抵抗を大きくすることで、後述するように開口22から流入した試験液が、一旦本流路23を満たした後に、複数のマイクロ流路24に対してほぼ一斉に流入することができる。
【0028】
なお、本実施の形態において、X軸方向に並んで配置され32本のマイクロ流路24を1つのグループとし、Y軸方向に2つのグループが並んで配置されている。つまり、マイクロ流路デバイス2は、Y軸の正方向側の第1グループと、Y軸の負方向側の第2グループとを有している。複数のマイクロ流路24は、それぞれ、本流路23に連通する第1側端部24a、および、第1側端部24aと反対側に位置する第2側端部24bを有する。
【0029】
第1グループに含まれる複数のマイクロ流路24は、マイクロ流路デバイス2のY軸の正方向側に配置された本流路23にそれぞれ接続されている。また、第1グループに含まれる複数のマイクロ流路24は、それぞれ、第1側端部24aがY軸の正方向側に、第2側端部24bがY軸負方向側に位置するように本流路23に接続されている。そのため、本流路23から第1グループに含まれる複数のマイクロ流路24へ分岐した試験液は、Y軸の負方向に流入する。
【0030】
一方、第2グループに含まれる複数のマイクロ流路24は、マイクロ流路デバイス2のY軸の負方向側に配置された本流路23にそれぞれ接続されている。また、第2グループに含まれる複数のマイクロ流路24は、それぞれ、第1側端部24aがY軸の負方向側に、第2側端部24bがY軸の正方向側に位置するように本流路23に接続されている。そのため、本流路23から第2グループに含まれる複数のマイクロ流路24へ分岐した試験液は、Y軸の正方向に流入する。
【0031】
本流路23から複数のマイクロ流路24に分岐した後、マイクロ流路24の途中に貯留部25がそれぞれ設けられている。そのため、開口22から流入した試験液は、本流路23、マイクロ流路24を経て、各々の貯留部25に流動することになる。
【0032】
貯留部25は、薬剤が配置され、本流路23およびマイクロ流路24を介して開口22と接続され、開口22から流入した試験液を貯留する。貯留部25において、試験液は薬剤と反応する。薬剤は、例えば、抗菌薬である。薬剤は、固体であってもよいし、液体であってもよい。薬剤は、貯留部25に、予め載置される。すなわち、貯留部25に試験液が流入する前に、薬剤は貯留部25に載置される。本実施の形態において、薬剤は貯留部25の全体に塗布されている。
【0033】
貯留部25は、直方体状に形成される。貯留部25の一辺の長さは、例えば10μm~10mmである。
【0034】
図3では、板状部材20に64個(=32個×2)の貯留部25が形成されている。56個の貯留部25に貯留される試験液の容量は互いに同一である。一方、64個の貯留部25に載置される薬剤の種類および薬剤の量は、互いに同一であってもよいし、互いに相違してもよい。
【0035】
貯留部25から、さらに開口26までの間にマイクロ流路24が配置されている。このマイクロ流路24は、Y軸方向に沿って配置され、一方の端部が貯留部25に接続され、他方の端部(第2側端部24b)が開口26に接続されている。このマイクロ流路24は、貯留部25に流入した試験液をさらに開口26まで流動させる。
【0036】
開口26は、マイクロ流路24の他方の端部(第2側端部24b)に接続される。開口26は、例えば、断面が円形状に形成される。開口26の直径は、例えば5μm~5mmである。
【0037】
開口26は、ガス透過膜27で覆われる。具体的に、
図3では、Y軸の正方向側に配置された第1グループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26と、Y軸の負方向側に配置された第2グループに含まれる複数のマイクロ流路24に接続された32個の開口26とが各々向かい合うように配置されている。そのため、64個(=32個×2)の開口26がマイクロ流路デバイス2の中央部分でX軸方向に沿って配置される。この64個の開口26が1枚のガス透過膜27で覆われている。なお、ガス透過膜27は、64個の開口26を1枚で覆うのではなく、上段のグループに含まれる32個の開口26と、下段のグループに含まれる32個の開口26とに分けて2枚で覆ってもよい。また、ガス透過膜27は、64個の開口26のうち少なくとも1つを覆ってもよい。
【0038】
ガス透過膜27は、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有する。ガス透過膜27の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27は、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27の厚みは、1mm以下である。
【0039】
ガス透過膜27は、板状部材20に、接着剤による接着、超音波融着等で固定される。接着剤としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、感圧性樹脂等が挙げられる。
【0040】
回収部40は、本流路23の出口側端部23bに設けられている。回収部40は、開口22から本流路23に流入した試験液の一部を回収する。
【0041】
回収部40の上部には、開口29が設けられている。開口29は、ガス透過膜27aに覆われている。開口22から回収部40までは、本流路23により試験液が流動可能に構成される。ガス透過膜27aの上から試験装置100の開閉部30の弾性部材30aを押し当てたり離したりすることで、開口29を開閉できる。
【0042】
回収部40に設けられた接続流路44(
図7参照)の流路断面積は、マイクロ流路24および本流路23の各流路断面積よりも広い。そのため、マイクロ流路24および本流路23に比べて回収部40の流路抵抗が小さくなっている。マイクロ流路24および本流路23に比べて回収部40の流路抵抗を小さくすることで、開口29を開けた状態で、開口22から空気を送ると、本流路23内に残った試験液が回収部40に排出されることになる。
【0043】
すなわち、試験装置100は、開口29を閉じることで、本流路23に流入した試験液が回収部40に排出されないようにし、開口29を開けることで本流路23に残った試験液を回収部40に排出させて回収する。
【0044】
ガス透過膜27aは、開口26を覆うガス透過膜27と同じ材料でも、異なる材料でもよく、気体を透過させ、かつ液体を透過させない機能を有していればよい。ガス透過膜27aの材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27aは、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27の厚みは、1mm以下である。ガス透過膜27aは、板状部材20に、接着剤による接着、超音波融着等で固定される。接着剤としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、感圧性樹脂等が挙げられる。
【0045】
ガス透過膜27aを設けることで、回収部40に試験液を排出させる際に試験液が開口29から溢れ出てしまうリスクを下げることができる。なお、回収部40の大きさを十分に確保し、開口29から試験液が溢れ出る可能性が低い場合、ガス透過膜27aを設けなくともよい。
【0046】
また、本流路23は、複数のマイクロ流路24のうち出口側端部23bに最も近い位置にあるマイクロ流路24との接続部24cと、出口側端部23bとの間に封止部28を備える。封止部28は、回収部40に試験液が排出された後、封止される。これにより、本流路23と回収部40とを物理的に遮断し、互いに独立させることで、回収部40に排出された試験液が本流路23(マイクロ流路24)に逆流してしまうことを確実に防止できる。封止部28を封止する方法は特に限定されない。例えば、封止材であるシリコーンオイルを注入することで封止してもよく、また、封止用の部品を封止部28に嵌め込むことで封止してもよい。本実施の形態においては、一例として、塗布部32によって塗布される封止材が、封止部28に注入される。なお、開口22等を封止する方法と、封止部28を封止する方法とが異なる場合、試験装置100は、各封止方法を実現するための機能を有する。
【0047】
また、本流路23は、複数のマイクロ流路24のうち入口側端部23aに最も近い位置にあるマイクロ流路24との接続部と、入口側端部23aとの間に封止部をさらに備えていてもよい。入口側端部23aの近傍に設けられた封止部は、封止部28と同様、回収部40に試験液が排出された後、封止される。これにより、開口22と本流路23とを物理的に遮断し、互いに独立させることで、開口22に向かって本流路23の試験液が流れてしまうことを確実に防止できる。なお、封止方法は、特に限定されない。
【0048】
[試験装置の圧入方法]
図4は、試験装置の圧入方法を説明するためのフローチャートである。
図4を参照して、本実施の形態に従う試験装置100の圧入方法を説明する。まず、試験装置100の制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、所定の試験液容器5の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液容器5内の試験液をピペットチップ1の先端部から吸引する(ステップS11)。制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、マイクロ流路デバイス2の開口22の位置にピペットノズル15を移動させる(ステップS12)。
【0049】
ここで、ピペットノズル15に対する開閉部30の位置は、マイクロ流路デバイス2の開口22に対する回収部40の開口29の位置に応じて予め定められている。より具体的には、ピペットノズル15を開口22の位置に移動させたときに、開閉部30の弾性部材30aが開口29の上に位置するように、開閉部30の位置は予め定められている。そのため、ステップS12でピペットノズル15をマイクロ流路デバイス2の開口22の位置に合わせると、開閉部30の弾性部材30aは、回収部40の開口29の真上の位置まで移動する。なお、開閉部30は、ピペットノズル15を移動させる移動機構(ピペットノズル駆動部12)とは異なる移動機構によって移動させるようにしてもよい。
【0050】
制御部50は、開閉駆動部31を制御して、弾性部材30aを回収部40の開口29を塞ぐ位置まで移動させる(ステップS13)。より具体的には、制御部50は、弾性部材30aをガス透過膜27aに押し当てることで、開口29の全体を弾性部材30aで塞ぐ。
【0051】
開口29を閉じた後、制御部50は、ポンプ14を制御して試験液をピペットチップ1の先端部から排出して、マイクロ流路デバイス2の流路(本流路23、マイクロ流路24)へ試験液を圧入する(ステップS14)。
【0052】
制御部50は、すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入したか否かを判断する(ステップS15)。なお、制御部50は、例えば、マイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入する時間、ピペットチップ1内の試験液の残量に基づきすべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入したか否かを判断する。すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入していない場合(ステップS15でNO)、制御部50は、処理をステップS14に戻す。
【0053】
すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入した場合(ステップS15でYES)、制御部50は、開閉駆動部31で弾性部材30aを、開口29を塞ぐ位置から移動させて、開口29を開く(ステップS16)。制御部50は、ポンプ14を制御してピペットチップ1の先端部から空気を排出して、本流路23内に残った試験液を回収部40に排出する(ステップS17)。
【0054】
制御部50は、ピペットノズル駆動部12および塗布駆動部34を制御して、封止部28に封止材を注入する(ステップS18)。より具体的には、制御部50は、ピペットノズル駆動部12を制御して塗布部32を封止部28の真上に移動させる。その後、制御部50は、塗布駆動部34を制御して、封止部28に封止材を注入可能な位置に塗布部32を移動させる。その後、制御部50は、ポンプ33を駆動させて、封止部28に封止材を注入する。
【0055】
制御部50は、ピペットノズル駆動部12を制御して、開口22,26,29の位置に塗布部32を移動させ、塗布駆動部34を制御して、開口22,26,29に封止材を塗布する(ステップS19)。
【0056】
以上の処理に従って制御を行なうことによって、試験装置100は、マイクロ流路デバイス2に試験液を圧入するとともに、試験液を回収部40へ排出させて、マイクロ流路デバイス2に形成された開口などに封止材を塗布する。
【0057】
図5は、試験装置によって試験液を圧入したときの、試験液の流れを説明するための図である。試験装置100は、開口29を閉じる一方、開口26を開けた状態で、開口22から本流路23へ試験液を圧入する。本流路23に試験液が流入されると、本流路23に比べ各々のマイクロ流路24の流路抵抗が大きいため、
図5の上段に示すように、まず、本流路23が試験液で満たされる。本流路23がすべて試験液で満たされた後、
図5の中段に示すように、各々のマイクロ流路24に試験液が流入する。このとき、開口26が開いている一方で開口29が閉じられているため、試験液は、回収部40に流入することなく、各マイクロ流路24および貯留部25に流入する。
【0058】
各マイクロ流路24および貯留部25が試験液で満たされた後、試験装置100は、開口29を塞いでいる開閉部30の弾性部材30aを取り除き、開口29を開いた状態で開口22から空気を送り込む。その結果、
図5の下段に示すように、本流路23内に残った試験液が回収部40に排出される。なお、開口22から送り込む空気は、試験液を圧入するためにピペットチップ1から排出する空気を利用することができる。
【0059】
ここで、開口26は開いているものの、マイクロ流路24の流路抵抗が回収部40の流路抵抗よりも大きいため、本流路23内の試験液はマイクロ流路24へ押し出されることなく、回収部40へ排出される。
【0060】
マイクロ流路デバイス2において、ピペットチップ1から流入された試験液は、開口22、本流路23を経てマイクロ流路24、貯留部25、および開口26を満たす。マイクロ流路デバイス2は、複数のマイクロ流路24が本流路23を介して連通している。そのため、試験液を圧入した場合、各流路間もしくは開口22から各流路に至る部分において液面の高さ(液頭)に差が生じると、当該差により各流路内で試験液に流れが発生する。例えば複数のマイクロ流路24間で液頭に差が生じると、当該差を解消するために各流路間で試験液に流れが発生する。その結果、マイクロ流路24の貯留部25内で試験液に流れが発生し、正しい結果を観察することができなくなる可能性がある。
【0061】
本実施の形態に従う試験装置100は、マイクロ流路デバイス2の流路(本流路23、マイクロ流路24)へ試験液を圧入した後、本流路23内に残った試験液を回収部40に排出する。これにより、複数のマイクロ流路24の各々を独立させることができる。その結果、複数のマイクロ流路24間で液面の高さに差が生じたとしても、当該高さの差によって発生してしまう試験液の流れを防止できる。
【0062】
[回収部の構成]
図6は、回収部の斜視図である。
図7は、回収部の断面図である。
図8は、回収部の平面図である。
図6~
図8を参照して、回収部40の構成について説明する。
図6においては、流路の底面、すなわち開口が設けられた面と対向する面を構成する部材(
図7中の第2板状部材20b)を取り外した状態で、回収部40を底面側から見たものとする。また、
図8においては、便宜上、ガス透過膜27aの記載を省略している。
【0063】
回収部40は、試験液を貯留するプール42と、プール42と出口側端部23bとを繋ぐ接続流路44と、接続流路44に設けられた突起物46とを備える。
【0064】
プール42の上部には、開口29が設けられている。開口29は、ガス透過膜27aに覆われている。プール42は、本流路23から排出された試験液を貯留する空間である。プール42の容積は、本流路23全体の容積よりも大きい。そのため、本流路23に残った試験液をすべてプール42内に回収できる。例えば、本流路23の深さが0.01mm~0.05mmであり、幅が0.1mm~1mmである場合、プール42の直径は10mm~15mm、深さは1mm~5mmである。一例として、本流路23の深さが0.03mmであり、幅が0.5mmである場合、プール42の直径は8mm、深さは2.5mmである。
【0065】
接続流路44は、出口側端部23bから延びる直線流路450と、直線流路450に連通する傾斜流路440とを含む。傾斜流路440は、直線流路450からプール42に向かって、すなわち、出口側端部23bからプール42に向かって流路断面積が大きくなるように構成されている。
【0066】
傾斜流路440には、傾斜流路440の外側に向かって傾斜する少なくとも1の傾斜面442が形成されている。本実施の形態においては、傾斜流路440には3つの傾斜面442が形成されている。より具体的には、傾斜面442は、傾斜流路440の側面を構成する2面と、開口29および開口22が形成された側の面とに形成されている。
【0067】
具体的には、傾斜流路440には、開口29および開口22が形成された側の面に形成された第1傾斜面444、ならびに、出口側端部23bからプール42に向かって流路幅が広くなるテーパ部を構成する第2傾斜面446および第3傾斜面448が形成されている。例えば、傾斜流路440について、直線流路450側の端部の幅が0.1mm~1mm、深さが0.01mm~0.05mm、プール42側の端部の幅が5~6mm、深さが1mm~5mm、本流路23側の端部からプール42側の端部までの長さが2~6mmである。
【0068】
傾斜面442から延びる流路面に対する傾斜角θaは、90度未満である。より具体的には、水平面452に対する第1傾斜面444の傾斜角θ1は、90度未満である。第1側面454に対する第2傾斜面446の傾斜角θ2は、90度未満である。さらに、第2側面456に対する第3傾斜面448の傾斜角θ3は、90度未満である。また、第2傾斜面446および第3傾斜面448によって構成されるテーパ部のテーパ角θbは、180度未満である。傾斜角θaは、例えば、15度~45度である。なお、傾斜角θ1と、傾斜角θ2と、傾斜角θ3とは、同じ角度であっても、それぞれ異なる角度であってもよい。
【0069】
突起物46は、本流路23から排出される試験液を受けて接続流路44の内壁との間に当該接続流路44を塞ぐ気泡を生じさせるように当該接続流路44に配置されている。開口22から空気を送り、本流路23内に残った試験液を回収部40に排出させると、試験液と空気とが突起物46に衝突し、接続流路44における試験液と空気との境界部分であって、接続流路44の内壁と突起物46との間に気泡が生じる。突起物46と接続流路44の内壁との間の流路の流路断面積が小さいため、当該気泡によって、接続流路44が塞がれる。また、気泡は、表面張力により接続流路44にとどまる。その結果、この気泡によって、排出した試験液が本流路23に逆流してしまうことを防止できる。
【0070】
本実施の形態において、突起物46は、傾斜面442を設置面として傾斜流路440に設けられている。より具体的には、突起物46の設置面は、第1傾斜面444である。突起物46は、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合に、出口側端部23bに向かって先細りした形状を有する。突起物46は、傾斜流路440の流路を完全には塞がない程度の大きさを有する。
【0071】
例えば、突起物46は、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合に、突起物46の両側に直線流路450または本流路23の幅と同程度の幅の流路が形成されるような大きさを有する。たとえば、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合に、突起物46と傾斜流路440の内壁との間の距離が0.1mm~1mmとなるような大きさを突起物46は有する。より具体的には、傾斜流路440について、本流路23側の端部の幅が0.5mm、深さが0.03mm、プール42側の端部の幅が5.5mm、深さが2.5mm、本流路23側の端部からプール42側の端部までの長さが4mmである場合の突起物46の大きさは、一例として、次の通りである。突起物46は、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合に一辺が1mmの正三角形となる四角錐である。この場合に、マイクロ流路デバイス2を平面視した場合に、突起物46の両側に幅0.5mmの流路が形成されることなる。
【0072】
突起物46を設けることで十分な大きさの気泡ができることに加えて、突起物46の周囲の流路断面積および、直線流路450の流路断面積が十分に小さいことにより、突起物46により生じる気泡は、接続流路44を塞ぐことができ、また、表面張力により接続流路44にとどまることとなる。
【0073】
板状部材20は、複数の開口および、流路構造が形成された第1板状部材20aと、第1板状部材20aに積層される第2板状部材20bとを備える。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~3mmに設定される。なお、第2板状部材20bは、超音波溶融により第1板状部材20aに直接固定されるが、接着剤を介して固定されてもよい。
【0074】
第1板状部材20aおよび第2板状部材20bは、透明な材料で形成され、マイクロ流路デバイス2を上から見た場合に矩形板状に形成される。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの材料としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂のようなアクリル樹脂、ガラスなどが挙げられる。
【0075】
第1板状部材20aには、開口および流路構造が形成される。より具体的には、第1板状部材20aには、開口22、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26、および開口29の設けられた回収部40が形成される。
【0076】
第2板状部材20bは、平坦な部材であって、各流路の底面として機能する。より具体的には、開口22、本流路23、マイクロ流路24、貯留部25、開口26、および回収部40の下面として機能する。具体的には、マイクロ流路デバイス2の各流路を構成する壁面のうち、開口22が形成された面と対向する面(第2板状部材20bが構成する面)は、平坦である。
【0077】
図9は、試験液を排出する前後における回収部の状態を模式的に示した図である。
図10は、試験液を回収部に排出した後の状態を示す画像である。
図11は、比較例における、試験液を回収部に排出した後の状態を示す画像である。比較例における接続流路90には、突起物が設けられていない。
【0078】
試験装置100は、ピペットチップ1の先端部から空気を排出して本流路23内に残った試験液を回収部40に排出する。試験液を排出する際に付与された空気圧が開放されると、接続流路44内の試験液が毛細管現象により本流路23内に逆流してしまうことがあり、回収部40内に試験液をとどまらせておくことが求められる。
【0079】
開口22から空気を送り、本流路23内に残った試験液をプール42に排出するときに、開口22から送られた空気と試験液とが突起物46に衝突することで、試験液と空気との境界部分に気泡Aが生じる。
図9の下段に示すように、生じた気泡Aは、接続流路44を塞ぐ程度の大きさを有する。より具体的には、
図10に示すように、突起物46を設けた接続流路44には、接続流路44を塞ぐ程度に大きな気泡Aが生じる。一方、
図11に示すように、突起物を設けていない接続流路90には、小さな気泡は生じるものの、
図10に示すような接続流路44を塞ぐほど大きな気泡Aは生じない。また、
図10に示すように、突起物46が接続流路44に配置されているため流路断面積が小さく、生じた気泡によって、突起物46と接続流路44の内壁との間の流路が塞がれる。
【0080】
このように、本流路23から試験液を排出したときに、突起物46により、接続流路44を塞ぐことが可能な気泡Aが生じる。発生した気泡Aは、表面張力により接続流路44にとどまる。接続流路44内にとどまる気泡Aによって、回収部40から本流路23への試験液の逆流を防止でき、その結果、回収部40内に試験液をとどまらせておくことができる。
【0081】
気泡Aが接続流路44内にとどまっている間は、試験液の逆流を防止できる。しかし、気泡Aが接続流路44内からプール42または本流路23に移動してしまうと、当該効果が得られなくなる。本実施の形態において、試験装置100は、試験液を回収部40に排出した後、開口26,29の各々に封止材を塗布する前に、すなわち、できるだけ早いタイミングで封止部28に封止材を注入する。これにより、試験液が本流路23へ逆流してしまうことを確実に防止できる。
【0082】
さらに、回収部40は、本流路23の試験液を回収する目的を達成するため、本流路23の容積よりも大きいプール42を備える。本流路23よりも容積の大きいプール42を板状部材20に形成しようとする場合、マイクロ流路デバイス2の小型化および流路抵抗を下げるために、プール42の断面積を大きくする必要がある。そのため、接続流路44は、深さ方向または幅方向に流路を広げた形状となる。本実施の形態において、回収部40は、傾斜角θaが90度未満の傾斜面442が形成された傾斜流路440を備えることで、出口側端部23bからプール42に向けて流路断面積を広げる。
【0083】
ここで、水平面452に対する第1傾斜面444の傾斜角θ1が90度以上である場合、第1傾斜面444と流路の上面とからなる角度は90度未満となる。そのため、第1傾斜面444と流路の上面との距離が近くなる。その結果、第1傾斜面444と流路の上面との境界部分に試験液が溜まってしまうことがある。本実施の形態において、傾斜角θaは90度未満である。そのため、傾斜面442と、傾斜面442から延びる流路面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路44に残ることを防止でき、その結果、回収部40から本流路23への試験液の逆流を防止できる。
【0084】
さらに、本実施の形態において、突起物46は、出口側端部23bに向かって先細りした形状を有する。その結果、突起物46と突起物46の設置面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路44に残ることを防止でき、その結果、回収部40から本流路23への試験液の逆流を防止できる。
【0085】
また、本実施の形態において、突起物46は、接続流路44のうち、傾斜面442が形成された傾斜流路440に設けられている。傾斜流路440は、流路断面積の広がった流路である。そのため、突起物46を容易に設けることができる。
【0086】
第2板状部材20bは、平坦な部材であって、各流路の底面として機能する。すなわち、マイクロ流路デバイス2の各流路を構成する壁面のうち、開口22が形成された面と対向する面、すなわち第2板状部材20bが構成する面は、平坦である。そのため、流路構造を単純にすることができ、マイクロ流路デバイス2の製造を容易にできる。
【0087】
また、本実施の形態に従う接続流路44は、第2傾斜面446および第3傾斜面448から構成されたテーパ部を備える。テーパ部のテーパ角θbは、180度未満であるため、テーパ部とテーパ部から延びる流路面との境界部分、すなわち、第2傾斜面446と第2傾斜面446から延びる流路面との境界部分、および、第3傾斜面448と第3傾斜面448から延びる流路面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路44に残ることを防止でき、その結果、回収部40から本流路23への試験液の逆流を防止できる。
【0088】
また、本実施の形態においては、第1傾斜面444の形成された傾斜流路440にテーパ部をさらに設けることで、流路断面積を急激に広げることができる。そのため、接続流路44の長さを短くでき、その結果、マイクロ流路デバイス2の小型化の実現に寄与する。
【0089】
[変形例]
上記実施の形態において、接続流路44には、傾斜角θaが90度未満の傾斜面442が形成されている。なお、接続流路44は、傾斜角θaが90度の傾斜面を備えていてもよい。
図12は、変形例にかかる回収部の断面図である。回収部40aは、傾斜角θaが90度の傾斜面442aを備えていてもよい。傾斜角θaが90度であっても、突起物46を設けることで、気泡が形成され、発生した気泡によって本流路23とプール42との間の流路が塞がれ、回収部40から本流路23への試験液の逆流を防止できる。
【0090】
上記実施の形態において、突起物46は、傾斜面442に形成されている。なお、突起物46は、プール42と出口側端部23bとの間の接続流路44に設けられていればよく、例えば、直線流路450に設けられていてもよい。
【0091】
上記実施の形態において、傾斜流路440は、第2傾斜面446および第3傾斜面448から構成されたテーパ部を備える。なお、傾斜流路440は、テーパ部を備えていなくともよい。
【0092】
上記実施の形態において、開口29は、プール42の上部に設けられていた。なお、開口29は、プール42に別の流路をさらに連通させ、当該流路に設けられていてもよい。また、この場合も、開口29はガス透過膜27aで覆われていることが好ましい。
【0093】
[態様]
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(第1項)一態様に係るマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液と薬剤とを作用させる試験に用いる板状のマイクロ流路デバイスである。マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける開口と、開口と連通する本流路と、本流路に連通する複数のマイクロ流路と、本流路において開口と連通する入口側端部と反対側に位置する出口側端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、を含む。回収部は、本流路から排出された試験液を貯留するプールと、プールと出口側端部とを繋ぐ接続流路と、本流路から排出される試験液を受けて接続流路の内壁との間に当該接続流路を塞ぐ気泡を生じさせるように当該接続流路に配置された突起物と、を含む。
【0095】
第1項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、突起物を設けることで生じた気泡によって、回収部から本流路への試験液の逆流を防止でき、その結果、回収部内に試験液をとどまらせておくことができる。
【0096】
(第2項)第1項に記載のマイクロ流路デバイスにおいて、接続流路は、当該接続流路の外側に向かって傾斜する傾斜面が形成された傾斜流路を含む。傾斜面から延びる流路面に対する当該傾斜面の傾斜角は、90度未満である。
【0097】
第2項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、傾斜角が90度未満であるため、傾斜面と傾斜面から延びる流路面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路に残ることを防止でき、その結果、回収部から本流路への試験液の逆流を防止できる。
【0098】
(第3項)第2項に記載のマイクロ流路デバイスにおいて、各流路を構成する壁面のうち、開口が設けられた面に対向する面は平坦である。
【0099】
第3項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、流路構造を単純にすることができ、マイクロ流路デバイスの製造を容易にできる。
【0100】
(第4項)第2項または第3項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、傾斜面は、接続流路を構成する壁面のうち、開口が設けられた側の壁面に形成されている。
【0101】
第4項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、傾斜面と傾斜面から延びる流路面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路に残ることを防止でき、その結果、回収部から本流路への試験液の逆流を防止できる。
【0102】
(第5項)第2項~第4項のうちいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、突起物は、傾斜流路に設けられている。
【0103】
第5項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、傾斜流路は、流路断面積の広がった流路であるため、突起物を容易に設けることができる。
【0104】
(第6項)第1項~第5項のうちいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスにおいて、突起物は、出口側端部に向かって先細りした形状を有する。
【0105】
第6項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、突起物と突起物の設置面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路に残ることを防止でき、その結果、回収部から本流路への試験液の逆流を防止できる。
【0106】
(第7項)第1項~第6項のうちいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスにおいて、接続流路は、出口側端部からプールに向かって流路幅が広くなるテーパ部を含む。テーパ部のテーパ角は、180度未満である。
【0107】
第7項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、テーパ部とテーパ部から延びる流路面との境界部分に試験液が溜まってしまうことを防止できる。すなわち、試験液が接続流路に残ることを防止でき、その結果、回収部から本流路への試験液の逆流を防止できる。
【0108】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 ピペットチップ、2 マイクロ流路デバイス、5 試験液容器、10 試験液設置部、12 ピペットノズル駆動部、13 テーブル駆動部、14,33 ポンプ、15 ピペットノズル、16 テーブル、20 板状部材、20a 第1板状部材、20b 第2板状部材、22,26,29 開口、23 本流路、23a 入口側端部、23b 出口側端部、24 マイクロ流路、24a 第1側端部、24b 第2側端部、24c 接続部、25 貯留部、27,27a ガス透過膜、28 封止部、30 開閉部、30a 弾性部材、31 開閉駆動部、32 塗布部、34 塗布駆動部、40,40a 回収部、42 プール、44,90 接続流路、46 突起物、50 制御部、100 試験装置、440 傾斜流路、442,442a 傾斜面、444 第1傾斜面、446 第2傾斜面、448 第3傾斜面、450 直線流路、452 水平面、454 第1側面、456 第2側面。