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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036915
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】簡易再封可能な包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
B65D77/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141471
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 英之
(72)【発明者】
【氏名】石田 聖二郎
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067BA10A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067BC07A
3E067CA01
3E067EA06
3E067EB17
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】
従来から販売されているトレーパックは、一度開封すると再封することは出来なかった。そのため、トレーパックを開封し、内容物の食品が余った場合には、別の容器に移し替える必要があった。
【解決手段】
被包装物が充填されたトレーと、前記トレーの開口部を覆う蓋材フィルムとからなる包装体において、前記トレーはフランジを備えており、前記蓋材フィルムは、前記トレーのフランジ天面において、ヒートシールされており、前記フランジの周縁端部は、前記蓋材フィルムに被覆されていることを特徴とする簡易再封可能な包装体。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物が充填されたトレーと、前記トレーの開口部を覆う蓋材フィルムとからなる包装体において、
前記トレーはフランジを備えており、
前記蓋材フィルムは、前記トレーのフランジ天面において、ヒートシールされており、
前記フランジの周縁端部は、前記蓋材フィルムに被覆されていることを特徴とする簡易再封可能な包装体。
【請求項2】
前記蓋材フィルムは、前記フランジの周縁端部から外側に5~30mm余分に長く設けられている余分Lを有しており、
前記フランジの周縁端部は、前記余分Lに被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項3】
前記蓋材フィルムの厚みは、10~80μmであることを特徴とする請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記蓋材フィルムは、少なくとも前記余分Lが収縮されていることを特徴とする請求項2に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項5】
前記蓋材フィルムは、熱収縮性フィルムに熱が加えられ収縮されたフィルムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項6】
前記熱収縮性フィルムは、100℃のグリセリン中に10秒間浸漬させた時の、縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも15%以上であることを特徴とする請求項5に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項7】
前記熱収縮性フィルムは、縦方向および横方向のヤング率が、200~2000MPaであることを特徴とする請求項5に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項8】
前記熱収縮性フィルムの厚みは、15~50μmであることを特徴とする請求項5に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項9】
前記フランジは、周縁端部が降下した降下フランジであることを特徴とする請求項1に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項10】
前記フランジ天面は、角を有しており、
前記角は、丸く面取りされていることを特徴とする請求項1または9に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項11】
前記角は、丸く面取りされた半径が5~40mmであることを特徴とする請求項10に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項12】
前記フランジは、幅が5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の簡易再封可能な包装体。
【請求項13】
下記(I)~(III)の工程を含むことを特徴とする簡易再封可能な包装体の製造方法。
(I)トレーに被包装物を充填する充填工程
(II)トレーの上方に熱収縮性フィルムを配置するように、前記トレーと熱収縮性フィルムとを同調させて搬送しながら、該トレーのフランジ天面に前記熱収縮性フィルムをヒートシールし、トレーのフランジの周縁端部から余分L’を設けるように熱収縮性フィルムをカットする収縮前包装体製造工程
(III)熱収縮性フィルムを熱収縮させながら、前記トレーのフランジ周縁端部を被覆する熱収縮被覆工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易再封可能な包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレーと蓋材フィルムとを用いて食品等の包装が行われている。例えば、蓋材フィルムをトレーのフランジ天面にシールして包装する所謂トレーシール包装が広く利用されている。
【0003】
トレーシール包装に使用される蓋材フィルムには、基材フィルムとシーラントフィルムを接着剤で貼り合せたラミネートフィルムや、異種原料を数台の押出機で溶融押出して金型(ダイス)内で積層する共押出積層フィルムなどが広く利用されている。
【0004】
さらに、特許文献1に記載のように、熱収縮性を有するフィルムを蓋材として使用し、包装する方法が開示されている。
【0005】
特許文献1は、トレーパックの周縁肩部(フランジに相当)において熱シール、又は高周波シール、又は超音波シールし、その後加熱することにより熱収縮性を有するフィルムを収縮させることにより、トレーの周縁肩部と熱収縮性を有するフィルムとを密着させることによって、汁のある食品であっても漏れることなく優れたディスプレイ効果を持たせることができることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、未開封状態であることを確実に確認可能なリクローズラベル、蓋材および包装体が開示されている。特許文献2の蓋材は、ベースフィルム(支持部材)にリクローズラベルが積層された部材であり、ベースフィルムは、収容容器の開口を塞ぐようにフランジ部に接合され、リクローズラベルは、包装体を開封および再封可能に、ベースフィルムに貼合されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54-53092
【特許文献2】特開2022-89307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から販売されているトレーパックは、一度開封すると再封することは出来なかった。そのため、トレーパックを開封し、内容物の食品が余った場合には、別の容器に移し替える必要があった。
【0009】
特許文献2の蓋材は、ベースフィルム(支持部材)およびリクローズラベルを有するものであるが、本発明は、ラベルなどの別部材を用いることなく、簡易再封可能な包装体を提供することを目的とする。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)被包装物が充填されたトレーと、前記トレーの開口部を覆う蓋材フィルムとからなる包装体において、
前記トレーはフランジを備えており、
前記蓋材フィルムは、前記トレーのフランジ天面において、ヒートシールされており、
前記フランジの周縁端部は、前記蓋材フィルムに被覆されていることを特徴とする簡易再封可能な包装体;
(2)前記蓋材フィルムは、前記フランジの周縁端部から外側に5~30mm余分に長く設けられている余分Lを有しており、
前記フランジの周縁端部は、前記余分Lに被覆されていることを特徴とする(1)に記載の簡易再封可能な包装体;
(3)前記蓋材フィルムの厚みは、10~80μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の包装体;
(4)前記蓋材フィルムは、少なくとも前記余分Lが収縮されていることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の簡易再封可能な包装体;
(5)前記蓋材フィルムは、熱収縮性フィルムに熱が加えられ収縮されたフィルムであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の簡易再封可能な包装体;
(6)前記熱収縮性フィルムは、100℃のグリセリン中に10秒間浸漬させた時の、縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも15%以上であることを特徴とする(5)に記載の簡易再封可能な包装体;
(7)前記熱収縮性フィルムは、縦方向および横方向のヤング率が、200~2000MPaであることを特徴とする(5)又は(6)に記載の簡易再封可能な包装体;
(8)前記熱収縮性フィルムの厚みは、15~50μmであることを特徴とする(5)乃至(7)に記載の簡易再封可能な包装体;
(9)前記フランジは、周縁端部が降下した降下フランジであることを特徴とする(1)に記載の簡易再封可能な包装体;
(10)前記フランジ天面は、角を有しており、
前記角は、丸く面取りされていることを特徴とする(1)に記載の簡易再封可能な包装体;
(11)前記角は、丸く面取りされた半径が5~40mmであることを特徴とする(1)又は(10)に記載の簡易再封可能な包装体;
(12)前記フランジは、幅が5mm以上であることを特徴とする(1)又は(9)に記載の簡易再封可能な包装体;
(13)下記(I)~(III)の工程を含むことを特徴とする簡易再封可能な包装体の製造方法
(I)トレーに被包装物を充填する充填工程
(II)トレーの上方に熱収縮性フィルムを配置するように、前記トレーと熱収縮性フィルムとを同調させて搬送しながら、該トレーのフランジ天面に前記熱収縮性フィルムをヒートシールし、トレーのフランジの周縁端部から余分L’を設けるように熱収縮性フィルムをカットする収縮前包装体製造工程
(III)熱収縮性フィルムを熱収縮させながら、前記トレーのフランジ周縁端部を被覆する熱収縮被覆工程;
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ラベルなどの別部材を用いることなく、簡易再封可能な包装体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る簡易再封可能な包装体の一実施形態を表す模式的断面図である。
図2】蓋材フィルムをトレーの開口部に配置した時の一実施形態を表す模式的断面図である。
図3】本発明の包装体に用いるトレーの一実施形態を表す模式的断面図である。
図4】本発明の包装体に用いるトレーの他の一実施形態を表す模式的断面図である。
図5】本発明の包装体に用いるトレーの一実施形態を表す模式的平面図である。
図6】本発明に係る簡易再封可能な包装体の製造方法を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳説するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない限り、同様の効果を奏する範囲において種々の形態をとることができる。
【0014】
なお、本明細書において、フランジの周縁端部は、厳密に制限されるものではなく、フランジ側面21t(図3および図4参照)の近傍部分を意味する。よって、フランジの周縁端部が蓋材フィルムに被覆されているというのは、少なくとも、フランジ天面21s(図3および図4参照)の一部、フランジ側面21t、およびフランジ裏面21u(図3および図4参照)の一部、が蓋材フィルムに被覆されていることを意味する。また、フランジ天面21sの一部、およびフランジ裏面21uの一部というのは、フランジ側面21t近傍のフランジ天面およびフランジ裏面であれば良い。
【0015】
[簡易再封可能な包装体]
図1は、本発明に係る簡易再封可能な包装体の一実施形態を表す模式的断面図である。
【0016】
図1に示す簡易再封可能な包装体1は、トレー2とトレーの開口部を覆う蓋材フィルム3と、被包装物4とからなる。
トレー2は、フランジ21を備えており、蓋材フィルム3は、トレー2のフランジ天面21s(図3および図4参照)において、ヒートシールされている。
また、フランジ21の周縁端部は、蓋材フィルム3に被覆されている。
【0017】
よって、蓋材フィルム3は、トレー2のフランジ天面21sにおいて、ヒートシールされており、フランジの周縁端部を被覆しているため、フランジ天面21s、フランジ側面21t、フランジ裏面21uの一部が被覆している状態となる。
【0018】
本発明の包装体1は、使用時に途中まで開封して使用する事が好ましい。即ち、使用時には、蓋材フィルム3をトレーのフランジ天面21sからすべて剥がさずに使用することが好ましい。
【0019】
蓋材フィルム3をトレーのフランジ天面21sからすべて剥がした場合、トレー2と蓋材フィルム3とが、完全に分離されることになる。よって、完全分離されたトレー2と蓋材フィルム3とを固定させて、簡易再封することが難しく手間がかかってしまう。
【0020】
よって、包装体1の開封時には、トレー2と蓋材フィルム3とが完全分離しないように、蓋材フィルム3を途中まで開封して使用する事が好ましい。ただし、本明細書において、「途中」というのは、厳密に限定されるものではないが、例えば、フランジ天面21sにヒートシールされた蓋材フィルム3を、フランジ天面21sから10~50%剥がして使用することが好ましく、さらには、25~50%がより好ましい。
【0021】
フランジ天面21sにヒートシールされた蓋材フィルム3を、フランジ天面21sから10%以上剥がして使用すると、簡易再封する際に、手間をかけることなく、簡単に簡易再封を行うことが出来る。また、50%以下であると、包装体1に収容された被包装物4を取り易くすることが出来るため好ましい。
【0022】
なお、包装体1の開封時に、蓋材フィルム3を途中まで開封して使用するために、蓋材フィルム3またはトレー2には、「開封しても良いのはここまで」という旨の記載をしていることが好ましい。これは、印刷によって記載しても良いし、その他の方法でも良く、特に制限されるものではない。
【0023】
[蓋材フィルム]
図2は、蓋材フィルムをトレーの開口部に配置した時の一実施形態を表す模式的断面図である。
【0024】
図2に示すように、蓋材フィルム3をトレー2の開口部に配置した時に、蓋材フィルム3は、フランジの周縁端部から外側に余分Lを有していることが好ましい。なお本明細書では、蓋材フィルムにおけるフランジの周縁端部から外側における余分を、余分Lと表記する。蓋材フィルム3が熱収縮性フィルムである場合には、熱収縮前の余分を余分L’と表記する。
【0025】
蓋材フィルム3は、余分Lを備えることで、フランジ21の周縁端部に余分Lを被覆させることができ、簡易再封可能な包装体とすることが出来る。
【0026】
余分Lは、5~30mmであることが好ましい。5mm以上であると、簡易再封する際、蓋材フィルムを無理に伸ばすことなく、フランジ21の周縁端部に余分Lを被覆し、簡易再封が可能となる。また、包装体1を開封する際に、フランジ21の周縁端部に被覆された蓋材フィルム3を掴みやすくすることが出来る。また、30mm以下であると、蓋材フィルムをフランジの周縁端部に被覆した際、余分Lが過剰でなく、美粧な包装体とすることが出来る。
【0027】
また、余分Lは、フランジの周縁端部全周における外側にあることが好ましい。フランジの周縁端部における外側の一部に余分Lがない箇所があると、該箇所は、蓋材フィルムをフランジの周縁端部に被覆することが出来ない。よって、簡易再封が困難となるため、余分Lは、フランジの周縁端部全周における外側にあることが好ましい。
【0028】
余分Lは、蓋材フィルムをトレーの開口部に配置した時に、フランジの周縁端部全周において均一である必要はない。例えば、フランジ天面21sの角(図5および図6参照)に位置する余分Lは、他の箇所よりも十分な余分Lを有していることが好ましい。このようにトレーの角に位置する余分Lを、他の箇所よりも十分な余分Lを設けることで、包装体を開封し易くすることが出来る。
【0029】
上述するように、蓋材フィルム3はフランジの周縁端部における外側において、一部分に十分な余分Lを設けることで、該十分な余分Lを包装体の開封起点(つまみ)とすることもできる。
【0030】
蓋材フィルム3の厚みは、10~80μmのものを使用することが好ましい。さらには、30~70μmであることが好ましく、35~50μmであることが特に好ましい。厚みが10μm以上であると、蓋材フィルムに十分な強度を与えることができる。また、厚みが80μm以下であると、蓋材フィルムを簡単に掴むことができ、フランジの周縁端部を被覆し易くすることが出来る。
【0031】
蓋材フィルムは、少なくとも余分Lが収縮されたフィルムであることが好ましい。例えば、熱収縮性フィルムを用いて余分Lのみを収縮させるには、トレー2の開口部を覆う蓋材フィルム3の上に熱伝導率の低い材料(スポンジ等)を重ね、余分Lのみに熱を加えて収縮させることが出来る。余分Lが収縮されていることで、余分Lをフランジ21の周縁端部の形に沿って、被覆することができ、美粧な包装体1とすることが出来る。
【0032】
さらに、蓋材フィルム3が、熱収縮性フィルムに熱が加えられ収縮されていることが好ましく、これによると、熱収縮性フィルムがフランジ21の周縁端部の形状に沿って収縮するため、美粧な包装体とすることが出来る。さらに、包装した時の跡が包装体の開封後にも蓋材フィルム3に残存するため、蓋材フィルム3がフランジ2の形状に沿って、形状維持される。つまり、再封時には、蓋材フィルム3に残存している跡に沿って、蓋材フィルム3を再度フランジの周縁端部に被覆することができ、簡易再封が行い易い包装体とすることが出来る。
【0033】
熱収縮性フィルムは、100℃のグリセリン中に10秒間浸漬させた時の、縦方向および横方向の熱収縮率のいずれも15%以上であることが好ましい。熱収縮率が15%以上あると、熱収縮性フィルムが収縮する際に、熱収縮性フィルムがフランジの周縁端部の形状に沿って収縮し、フランジの周縁端部に被覆することが出来るため好ましい。
【0034】
一方で、熱収縮性フィルムの熱収縮率が15%未満であると、蓋材フィルムに十分なハリを与えることが出来ず、見栄えの悪い包装体となる可能性がある。さらに、熱収縮率が15%未満であると、蓋材フィルム3をフランジ21の側面21tおよび裏面21uに被覆し難く、簡易再封を行うことが難しい。
【0035】
なお、熱収縮率はJISZ1709-1995に準拠し、熱溶媒はグリセリン、浸漬時間は10秒として、100℃における熱収縮率を測定するものとする。
【0036】
また、熱収縮性フィルムは、縦方向および横方向のヤング率が、200~2000MPaのものを使用することが好ましい。ヤング率が200~2000MPaの範囲のものを使用することで、伸びやすく、且つ、蓋材フィルムとして十分な強度を有している蓋材フィルム3とすることが出来る。
【0037】
なお、ヤング率はASTM D882-12に準拠して測定するものとする。本明細書において、熱収縮性フィルムのヤング率は、熱収縮性フィルムが収縮する前のヤング率を示す。
【0038】
また、熱収縮性フィルムの厚みは、15~50μmのものを使用することが好ましい。さらには、20~30μmであることが好ましい。厚みが15~50μmのものを使用することで、トレーのフランジ21の周縁端部に蓋材フィルムを被覆しやすく、且つ、蓋材フィルムとして十分な強度を与えることが出来る。厚みが15μm以上であると、トレーの開口部を覆う蓋材フィルムに十分な強度を与えることができる。また、厚みが50μm以下であると、蓋材フィルムがフランジの周縁端部を被覆した際に、熱収縮性フィルムがトレーを変形させることなく、美粧な包装体とすることが出来る。なお、本明細書において、熱収縮性フィルムの厚みは、熱収縮性フィルムが収縮する前の厚みを示す。
【0039】
蓋材フィルム3は、コシを有していることが好ましい。コシは、蓋材フィルム3のヤング率および厚みの積算によって決まる。蓋材フィルム3がコシを十分に有していると、蓋材フィルム3の余分Lを掴みやすくすることができ、簡単に簡易再封を行うことが出来る。また、簡易再封した時に、蓋材フィルムにハリを与えることができるため、包装体1を簡易再封した後に、蓋材フィルム3に外部から力が加えられたとしても、撓むことなく、長期間使用する事が出来る。
【0040】
なお、熱収縮性を有するフィルムは、公知の製膜方法にて製膜した後、これを延伸して熱収縮性を付与することによって製造することができる。
公知の製膜方法として、基材層用の樹脂とシーラント層用の樹脂とを、別々の押出機から一つの環状多層ダイに供給し、チューブ状のフィルムに製膜する「インフレーション共押出法」、線状多層ダイに供給し、フラットなフィルムに製膜する「Tダイ共押出法」などを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、延伸方法として、前記インフレーション共押出法においては、「チューブラー二軸延伸法」、およびTダイ共押出法においては、「テンター二軸延伸法」が挙げられる。
【0042】
蓋材フィルムの構成は特に制限されるものではなく、当業者が適宜適当なものを使用することが出来るが、蓋材フィルムは、トレーの開口部を覆った際に十分な強度を有していることが好ましく、基材層とシーラント層を有していることが好ましい。基材層としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体等のヤング率の高い樹脂を使用する事が好ましい。また、シーラント層は、ポリエチレン又はエチレンを主体とするα-オレフィンや酢酸などとの共重合体及びポリプロピレンなどを使用することが好ましい。
【0043】
[トレー]
トレーは、特に制限されるものではないが、従来、食品包装に用いられている発泡シートからなるもの、非発泡シートからなるもの、ガスバリア性を備えるもの等、公知のトレーを用いることができる。なお、ガス置換包装を行う場合には、ガスバリア性を備えるトレーを使用することが好ましい。
【0044】
図3は、本発明の包装体に用いるトレーの一実施形態を表す模式的断面図である。また、図4は、本発明の包装体に用いるトレーの他の一実施形態を表す模式的断面図である。
【0045】
図3及び図4に示すようにトレー2は、フランジ21を有している。フランジ21の形状は特に制限されるものではなく、図3に示すような水平フランジであっても良いし、図4に示すようなフランジ21の周縁端部が降下した降下フランジであっても良い。
【0046】
降下フランジを有するトレーを使用する場合、フランジの周縁端部を蓋材フィルム3で被覆し、且つ、フランジ裏面21uの下方領域2αに蓋材フィルム3を到達させることが好ましい。フランジが降下フランジである場合、降下フランジの下方領域2αの一部に蓋材フィルムを到達させることで、簡易再封後に、フランジの周縁端部を蓋材フィルム3で被覆した状態を長期間維持できるため好ましい。
【0047】
図5は、本発明の包装体に用いるトレーの一実施形態を表す模式的平面図である。
【0048】
トレー2の形は、特に制限されるものではないが、図5に示すように、四角い形状のトレーであることが好ましい。
【0049】
トレー2のフランジ天面21sは、角5を有していることが好ましい。フランジ天面21sが角5を有していると、角5が蓋材フィルム3を固定し、フランジ21の周縁端部を被覆した状態で維持し易いため、簡単に簡易再封が出来る。また、角5が蓋材フィルム3を固定するため、蓋材フィルム3にハリを与えられ、美粧な包装体とすることが出来る。
【0050】
角5は、丸く面取りされていることが好ましい。また、丸く面取りされた半径Rは、5~40mmであることが好ましい。半径Rが5~40mmであると、トレー2の角5においても、蓋材フィルムが撓むことなく、フランジの周縁端部を蓋材フィルムにて被覆された状態で維持することができるため好ましい。さらに、5mm以上であると、蓋材フィルムに張力がかかり、ハリのある蓋材フィルムとすることができる。40mm以下であると、フランジ周縁端部を蓋材フィルムで被覆した時に、蓋材フィルムが角5に引っかかり、フランジの周縁端部を被覆させた状態で維持し易く、簡易再封が行い易いため好ましい。
【0051】
トレーのフランジの幅は、5mm以上であることが好ましい。フランジ幅が5mm以上であると、フランジ天面に蓋材フィルムをシールし易くすることが出来る。さらに、フランジの幅が5mm以上あると、フランジの周縁端部を、蓋材フィルムにて被覆させた時に、蓋材フィルムがフランジに引っかかり、その状態で長期間維持することが出来るため好ましい。
【0052】
[簡易再封可能な包装体の製造方法]
本発明の簡易再封可能な包装体の製造方法を、図6を用いて説明する。なお、蓋材フィルムには、熱収縮性を有するフィルムを用いた。
【0053】
(充填工程)
トレーに被包装物を充填する(図示せず)。
【0054】
(収縮前包装体製造工程)
次いで被包装物が収納されたトレー2と、ロール状に巻き取られた熱収縮性フィルム原反6とを、同調させて打ち抜き領域βへ搬送する。打ち抜き領域βにて、蓋材フィルムとなる熱収縮性フィルムをトレーのフランジ天面にヒートシールした後、シール枠セット10により、熱収縮性フィルム原反6から蓋材フィルムとなる部分をトレー2のフランジの周縁端部に沿って、かつフランジの周縁端部から余分L’が出来るように打ち抜くことにより、収縮前包装体7を製造する。また熱収縮性フィルムの残部は巻き取りロール11によりロール状に巻き取られる。
【0055】
(熱収縮被覆工程)
次いで収縮前包装体7を熱収縮部8へ搬送し、蓋材フィルムとなる熱収縮性フィルム3を収縮させる。このとき、トレーのフランジ周縁端部を被覆するように熱収縮性フィルム3を熱収縮させ(図示せず)、本発明の包装体1を得る。なお、熱収縮性フィルム3は、トレー2のフランジ天面21sにヒートシールされた後に熱収縮されるため、トレー2の開口部を美粧に覆う。
【0056】
蓋材フィルムとなる熱収縮性フィルムを熱収縮させる時は、熱収縮フィルムがトレーのフランジに被覆するように熱収縮させることが好ましい。具体的には、トレーのフランジ天面に位置する熱収縮フィルムが熱収縮しないように熱風を充てることなく、フランジ側面21tおよび、フランジ裏面21に熱風を充てることが好ましい(図3及び図4参照)。このように蓋材フィルムとなる熱収縮性フィルムをフランジの形に沿わせながら熱収縮させることで、美粧な包装体とすることが出来る。この際、加熱手段は特に制限されるものではなく、熱風が噴き出す熱風トンネル等を使用することが出来る。
【0057】
熱風トンネルを使用し、熱収縮性フィルムを熱収縮させる際には、トレーのフランジ天面に位置する熱収縮性フィルムが熱収縮しないようにトレーの開口部を覆う蓋材フィルムの上に熱伝導率の低い材料(スポンジ等)を蓋材フィルムの上から重ねた後、トンネルの側面より熱風が噴き出す熱風トンネルの中に収縮前包装体7を通過させることが好ましい。これにより、熱収縮性フィルムをフランジの形状に沿わせながら熱収縮させることができ、美粧な包装体とすることが出来る。
【0058】
本発明の簡易再封可能な包装体の製造方法において、使用する蓋材フィルムは、熱収縮性である。
【実施例0059】
実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明の実施例において、トレーは表1に示すものを使用した。
【0061】
【表1】
【0062】
また、本発明の実施例において、熱収縮性フィルムは表2に示すものを使用した。
【0063】
【表2】
【0064】
[熱収縮率]
熱収縮率はJISZ1709-1995に準拠し、熱溶媒はグリセリン、浸漬時間は10秒として、100℃における熱収縮率を測定した。
【0065】
[ヤング率]
ASTMD882-12に準拠して、引張速度25mm/min、チャック間距離250mmで1%伸び時の引張弾性率を測定した。
【0066】
≪包装体の製作方法≫
実施例1~10(表3参照)では、表1に示すトレーおよび表2に示す熱収縮性フィルムを使用し、以下に示す方法で包装体を製作した。
まず、蓋材フィルムとなる熱収縮性フィルムをトレーのフランジ天面にシールし、熱収縮性フィルムをカットした。このとき、熱収縮性フィルムは、フランジ周縁端部より余分L’を有するようにした。次に、トレー開口部を覆っている熱収縮性フィルムはできるだけ収縮しないようにフランジ天面に断熱性のあるスポンジを配置した状態で、熱収縮性フィルムに熱風を当て、フランジ側面およびフランジ裏面に沿って熱収縮性フィルムを熱収縮させ、フランジの周縁端部が被覆された包装体を製作した。尚、熱収縮した後の蓋材フィルムは、フランジの周縁端部から外側へ余分Lを有するようにした。
【0067】
実施例1~10の包装体において、行った評価および評価方法は以下の通りである。
【0068】
<包装仕上がり評価>
製作した包装体の包装仕上がりを評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:余分Lがフランジ裏面21uの下方領域2α(図1参照)に到達しており、美粧な包装体である。
△:余分Lが過剰であり、包装体としての見栄えが若干劣る。
【0069】
<蓋材フィルムのハリ>
製作した包装体において、蓋材フィルムのハリを評価した。
◎:蓋材フィルムにハリが適度にあり、簡易再封が可能である。
〇:蓋材フィルムのハリが強く、若干のトレー変形が見られる。
△:蓋材フィルムのハリが若干弱い。
【0070】
<開封評価>
製作した包装体を、トレーの角(図5参照)からトレーの中間位置(図5参照)まで開封できるかを評価した。
◎:トレーの角に位置している蓋材フィルムを簡単に掴むことができ、トレーの中間位置まで開封できる。
〇:トレーの角に位置している蓋材フィルムを掴みにくいが、トレーの中間位置まで開封できる。
△:トレーの中間位置まで開封は出来るが、トレーの角に位置している蓋材フィルムを掴みにくく、トレーの中間位置まで開封するのに手間を要する。
【0071】
<再封評価>
製作した包装体をトレーの中間位置まで開封し、再封が可能であるかを評価した。評価基準は、
◎◎:トレーのフランジの周縁端部に簡単に被覆することができる。また、被覆後の蓋材フィルムにもハリがあり、蓋材としての機能も十分に果たす。
◎:蓋材フィルムをトレーのフランジの周縁端部に被覆した状態で維持することが出来るが、蓋材フィルムのハリが若干弱い。
〇:蓋材フィルムをトレーのフランジの周縁端部に被覆できるが、蓋材フィルムのハリが弱く、密閉性に少し劣る。
△: 蓋材フィルムをトレーのフランジの周縁端部に被覆することはできるが、再封に手間を要する。
とした。
【0072】
表3にて、実施例1~10で使用したトレー、蓋材フィルム、余分L、および実施例1~10の包装体の評価結果を示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3より、以下のことを確認することが出来た。
【0075】
実施例1~4において、トレーにおける角の面取りされた半径とフランジ幅が5mm以上である実施例1~3は、特に開封性および再封性が良好であることが分かる。
【0076】
実施例1および実施例5~8において、蓋材フィルムとして縦方向および横方向の熱収縮率が30%以上である実施例6は、特に再封性が良好となることが分かる。これは、熱収縮率の高い熱収縮性フィルムを使用する事で、トレーのフランジ周縁端部に被覆した時の跡が蓋材フィルムに残存し、再封を行う際にも、該跡に沿って、蓋材フィルムの余分Lをフランジ周縁端部に被覆できるためと考えられる。
【0077】
実施例1および7において、熱収縮性フィルムの厚みが20μm以上である実施例1は、特に蓋材フィルムのハリと開封性が良好であることが分かる。これは、熱収縮性フィルムの厚みが厚いことにより、蓋材フィルムにコシを持たせることが出来る。よって、蓋材フィルムにハリを与えることができ、かつ、蓋材フィルムの余分Lを掴みやすく、開封が行い易くなった為と考えられる。
【0078】
実施例1および8において、熱収縮性フィルムの厚みが50μm以下である実施例1は、特に再封性が良好であることが分かる。これは、蓋材フィルムに適度にコシを持たせることができ、蓋材フィルムの厚みが厚すぎることなく、フランジの周縁端部に被覆し易くすることが出来た為と考えられる。
【0079】
実施例1および9において、蓋材フィルムの余分Lが30mm以下である実施例1は、包装仕上がりが良好であることが分かる。
また、実施例1および10において、蓋材フィルムの余分Lが5mm以上である実施例1は特に開封性、再封性に好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0080】
1 簡易再封可能な包装体
2 トレー
21 フランジ
21s フランジ天面
21t フランジ側面
21u フランジ裏面
22s トレー底面
23s トレー側面
2α フランジ裏面21uの下方領域
3 蓋材フィルム
4 被包装物
5 角
6 熱収縮性フィルム原反
7 収縮前包装体
8 熱収縮部
9 繰り出しロール
10 シール枠セット
11 巻き取りロール
β 打ち抜き領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6