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特開2024-36922作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036922
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20240311BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141480
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 高史
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB03
2D003AC04
2D003BA02
2D003BB04
2D003CA01
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】積込容器に適正に積み込むことができる作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法を提供する。
【解決手段】作業機3は、ベッセル301に荷300を積み込む。作業機アクチュエータは、本体に対し作業機3を駆動する。自動化コントローラ100は、作業機3の位置の検出値と、ベッセル301のホイールローダ1に対する位置の検出値とに基づいて作業機アクチュエータの駆動を指令する。自動化コントローラ100は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内で荷310を移動させる必要があるか否かを判定し、ベッセル301内で荷310を移動させる必要があると判定した場合にベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
本体と、
前記本体に取り付けられ、積込容器に荷を積み込む作業機と、
前記本体に対し前記作業機を駆動する作業機アクチュエータと、
前記作業機の位置の検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定し、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、作業機械。
【請求項2】
前記本体は走行体を有し、
前記走行体の進行状態を検出する走行センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記走行センサの検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記作業機アクチュエータの駆動を停止させながら前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記作業機はバケットを有し、
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記バケットの高さを維持しながら前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、請求項3に記載の作業機械。
【請求項6】
荷の積込状況を判断するために、前記作業機の姿勢を検出する作業機姿勢センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機姿勢センサにより検出された前記作業機の姿勢に基づいて前記作業機による前記積込容器への積込回数を算出し、算出した前記積込回数に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
荷の積込状況を判断するために、前記積込容器に積み込まれた荷の積込状況を検出する物体センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記物体センサにより検出された荷の積込状況に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
作業機械を含むシステムであって、
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられ、積込容器に荷を積み込む作業機と、
前記作業機械本体に対し前記作業機を駆動する作業機アクチュエータと、
前記作業機の位置の検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定し、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、システム。
【請求項9】
作業機械の制御方法であって、
積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得することと、
取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定することと、
前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させることと、を備えた、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016/152994号(特許文献1)には、ホイールローダの移動距離に応じて求められた目標位置にブームおよびバケットを移動させる制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/152994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダなどの作業機械によってダンプトラックのベッセルなどの積込容器に積込みを行う場合、通常、複数回の積込作業が行われる。この複数回の積込作業によりダンプトラックに積み込まれた荷の容量がダンプトラックの積載容量に達したときに、積み込まれた荷の積込状態(荷姿)が不適切であると、ダンプトラックの走行中に荷がこぼれるおそれがある。
【0005】
本開示では、積込容器に適正に積み込むことができる作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る作業機械および作業機械を含むシステムの各々は、本体と、作業機と、作業機アクチュエータと、コントローラとを備える。作業機は、本体に取り付けられ、積込容器に荷を積み込む。作業機アクチュエータは、本体に対し作業機を駆動する。コントローラは、作業機の位置の検出値と、積込容器の作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、作業機アクチュエータの駆動を指令する。コントローラは、積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定し、積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に積込容器の中心に向けて荷を移動させるように作業機械を動作させる。
【0007】
本開示のある局面に係る作業機械の制御方法は、積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得することと、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定することと、積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に積込容器の中心に向けて荷を移動させるように作業機械を動作させることと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法によると、積込容器に適正に積み込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図3】掘削積込作業を行うホイールローダの平面図である。
図4】ホイールローダの自動制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】自動制御によりバケットに積載した荷を積込目標に積み込む動作の流れを示すフローチャートである。
図6】荷押しの自動制御を示すフローチャートである。
図7】ダンプアプローチ開始時のベッセルとホイールローダとの配置を模式的に示す図である。
図8】積込動作時においてバケットの刃先が最下方に位置するときのホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。
図9】荷押し開始時のホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。
図10】荷押し終了時のホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。
図11】積込作業中のシリンダ長さの変化を示すグラフである。
図12】荷押しによりベッセル内の荷の姿勢の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0011】
<ホイールローダ1の全体構成>
実施形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。図1は、作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
【0012】
図1に示されるように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。ホイールローダ1の本体は、車体と、走行装置4とを有している。
【0013】
走行装置4は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪4a,4bを含んでいる。ホイールローダ1は、車体の左右方向の両側に走行用回転体として走行輪4a,4bを備える装輪車両である。ホイールローダ1は、走行輪4a,4bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。走行装置4は、「走行体」の一例に対応する。
【0014】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平坦な地面上にあるホイールローダ1を平面視したときに前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0015】
車体フレーム2は、前フレーム2aと後フレーム2bとを含んでいる。前フレーム2aは、後フレーム2bの前方に配置されている。前フレーム2aと後フレーム2bとは、互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。
【0016】
前フレーム2aと後フレーム2bとに亘って、一対のステアリングシリンダ11が取り付けられている。ステアリングシリンダ11は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ11がステアリングポンプからの作動油によって伸縮することによって、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更される。前フレーム2aと後フレーム2bとにより、アーティキュレート構造の車体フレーム2が構成されている。ホイールローダ1は、前フレーム2aと後フレーム2bとが屈曲動作可能に連結されたアーティキュレート式の作業機械である。
【0017】
前フレーム2aには、作業機3および一対の走行輪(前輪)4aが取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の本体の前方に取り付けられている。作業機3は、ホイールローダ1の車体によって支持されている。作業機3は、ブーム14と、バケット6とを含んでいる。バケット6は、作業機3の先端に配置されている。バケット6は、掘削・積込用の作業具である。刃先6aは、バケット6の先端部である。背面6bは、バケット6の外面の一部である。背面6bは、平面で形成されている。背面6bは、刃先6aから後方に延びている。
【0018】
ブーム14の基端部は、ブームピン9によって前フレーム2aに回転自在に取付けられている。バケット6は、ブーム14の先端に位置するバケットピン17によって、回転自在にブーム14に取付けられている。ブームピン9およびバケットピン17は、作業機3の「複数の関節」に対応する。
【0019】
作業機3は、ベルクランク18と、リンク15とをさらに含んでいる。ベルクランク18は、ブーム14のほぼ中央に位置する支持ピン18aによって、ブーム14に回転自在に支持されている。リンク15は、ベルクランク18の先端部に設けられた連結ピン18cに連結されている。リンク15は、ベルクランク18とバケット6とを連結している。
【0020】
前フレーム2aとブーム14とは、一対のブームシリンダ16により連結されている。ブームシリンダ16は、油圧シリンダである。ブームシリンダ16は、ブーム14を、ブームピン9を中心として上下に回転駆動する。ブームシリンダ16の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。ブームシリンダ16の先端は、ブーム14に取り付けられている。ブームシリンダ16は、ブーム14を前フレーム2aに対し上下に動作させる油圧アクチュエータである。ブーム14の昇降に伴って、ブーム14の先端に取り付けられたバケット6も昇降する。
【0021】
バケットシリンダ19は、ベルクランク18と前フレーム2aとを連結している。バケットシリンダ19の基端は、前フレーム2aに取り付けられている。バケットシリンダ19の先端は、ベルクランク18の基端部に設けられた連結ピン18bに取り付けられている。バケットシリンダ19は、バケット6をブーム14に対し上下に回動させる油圧アクチュエータである。バケットシリンダ19は、バケット6を駆動する作業具シリンダである。バケットシリンダ19は、バケット6を、バケットピン17を中心として回転駆動する。バケット6は、ブーム14に対し動作可能に構成されている。バケット6は、前フレーム2aに対し動作可能に構成されている。
【0022】
ブームシリンダ16と、バケットシリンダ19とは、作業機3を駆動する「作業機アクチュエータ」の一例に対応する。
【0023】
後フレーム2bには、オペレータが搭乗するキャブ5、および一対の走行輪(後輪)4bが取り付けられている。箱状のキャブ5は、ブーム14の後方に配置されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、ホイールローダ1のオペレータが着座するシート、および後述する操作装置8(図2)などが配置されている。
【0024】
<システム構成>
図2は、ホイールローダ1を制御する制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図2に示されるように、エンジン21は、作業機3および走行装置4(図1)を駆動するための駆動力を発生する駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。駆動源として、エンジン21に代えて、蓄電体により駆動するモータが用いられてもよく、またエンジンとモータとの双方が用いられてもよい。エンジン21の出力は、エンジン21のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。
【0026】
エンジン21の発生する駆動力は、トランスミッション23へ伝達される。トランスミッション23は、駆動力を適切なトルクおよび回転速度に変速する。トランスミッション23の出力軸に、アクスル25が接続されている。トランスミッション23で変速された駆動力は、アクスル25に伝達される。アクスル25から走行輪4a,4b(図1)に、駆動力が伝達される。これにより、ホイールローダ1が走行する。本実施形態のホイールローダ1においては、走行輪4aと走行輪4bとの両方が、駆動力を受けてホイールローダ1を走行させる駆動輪を構成している。
【0027】
エンジン21の駆動力の一部は、作業機ポンプ13に伝達される。作業機ポンプ13は、エンジン21により駆動され、吐出する作動油によって作業機3(図1)を作動させる油圧ポンプである。作業機3は、作業機ポンプ13からの作動油によって駆動される。作業機ポンプ13から吐出された作動油は、メインバルブ32を介して、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19に供給される。ブームシリンダ16が作動油の供給を受けて伸縮することによって、ブーム14が昇降する。バケットシリンダ19が作動油の供給を受けて伸縮することによって、バケット6が上下に回動する。
【0028】
ホイールローダ1は、車体コントローラ50を備えている。車体コントローラ50は、エンジンコントローラ60と、トランスミッションコントローラ70と、作業機コントローラ80とを含んでいる。
【0029】
車体コントローラ50は、一般的にCPU(Central Processing Unit)により各種のプログラムを読み込むことにより実現される。車体コントローラ50は、図示しないメモリを有している。メモリは、ワークメモリとして機能するとともに、ホイールローダ1の機能を実現するための各種のプログラムを格納する。
【0030】
操作装置8は、キャブ5に設けられている。操作装置8は、オペレータによって操作される。操作装置8は、オペレータがホイールローダ1を動作させるために操作する、複数種類の操作部材を備えている。操作装置8は、アクセルペダル41と、作業機操作レバー42とを含んでいる。操作装置8は、図示しないステアリングハンドル、シフトレバーなどを含んでいてもよい。
【0031】
アクセルペダル41は、エンジン21の目標回転数を設定するために操作される。エンジンコントローラ60は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、エンジン21の出力を制御する。アクセルペダル41の操作量(踏み込み量)を増大すると、エンジン21の出力が増大する。アクセルペダル41の操作量を減少すると、エンジン21の出力が減少する。トランスミッションコントローラ70は、アクセルペダル41の操作量に基づいて、トランスミッション23を制御する。
【0032】
作業機操作レバー42は、作業機3を動作させるために操作される。作業機コントローラ80は、作業機操作レバー42の操作量に基づいて、電磁比例制御弁35,36を制御する。
【0033】
電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を縮めて、バケット6がダンプ方向(バケット6の刃先が下がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁35は、バケットシリンダ19を伸ばして、バケット6がチルト方向(バケット6の刃先が上がる方向)に移動するように、メインバルブ32を切り換える。電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を縮めて、ブーム14が下がるようにメインバルブ32を切り換える。また電磁比例制御弁36は、ブームシリンダ16を伸ばして、ブーム14が上がるようにメインバルブ32を切り換える。
【0034】
機械モニタ51は、車体コントローラ50から指令信号の入力を受けて、各種情報を表示する。機械モニタ51に表示される各種情報は、たとえば、ホイールローダ1により実行される作業に関する情報、燃料残量、冷却水温度および作動油温度などの車体情報、ホイールローダ1の周辺を撮像した周辺画像などであってもよい。機械モニタ51はタッチパネルであってもよく、この場合、オペレータが機械モニタ51の一部に触れることにより生成される信号が、機械モニタ51から車体コントローラ50に出力される。
【0035】
<掘削積込作業>
本実施形態のホイールローダ1は、土砂などの掘削対象物を掬い取り、ダンプトラックなどの積込対象に掘削対象物を積み込む、掘削積込作業を実行する。図3は、掘削積込作業を行うホイールローダ1の平面図である。図3には、いわゆるVシェープ作業を行うホイールローダ1が示されている。
【0036】
図3(A)には、いわゆる空荷前進をするホイールローダ1が図示されている。ホイールローダ1は、土砂などの掘削対象物310へ向かって、掘削経路R1に沿って前進走行する。ホイールローダ1がバケット6を掘削対象物310へ突っ込み、前進走行を停止する。バケット6の刃先6a(図1)を掘削対象物310に食い込ませた状態でバケット6を上昇させることにより、バケット6に掘削対象物310の少なくとも一部を掬い取る掘削作業が実行される。
【0037】
図3(B)には、いわゆる積荷後進をするホイールローダ1が図示されている。バケット6内には、掘削対象物310が荷として積み込まれている。ホイールローダ1は、図3(A)で前進走行を開始した位置まで、掘削経路R1に沿って後進走行する。
【0038】
図3(C)には、いわゆる積荷前進をするホイールローダ1が図示されている。バケット6内に荷(掘削対象物310)が積み込まれた状態で、ホイールローダ1は、ダンプトラック300のベッセル301へ向かって前進走行する。ホイールローダ1は、図3(A)で前進走行を開始した位置から、ダンプトラック300へ向かって、積込経路R2に沿って前進走行する。ダンプトラック300に接近して所定位置に到達すると、ホイールローダ1は、バケット6内の荷310をベッセル301内に積み込む。ベッセル301は、バケット6内の荷310を積み込むための「積込容器」の一例に対応する。
【0039】
図3(D)には、いわゆる空荷後進をするホイールローダ1が図示されている。バケット6内の荷310をダンプトラック300のベッセル301に全て排出してバケット6内が空の状態で、ホイールローダ1は、図3(C)で前進走行を開始した位置まで、積込経路R2に沿って後進走行する。
【0040】
このように、ホイールローダ1は、掘削、後退、ダンプアプローチ、排土、後退という一連の作業を繰り返し行うことができる。
【0041】
<ホイールローダ1の自動制御システム>
ホイールローダ1によるダンプトラック300への積込作業を自動化するにあたり、ベッセル301に積み込まれた荷310がベッセル301からこぼれることを抑制するために、積込作業における熟練オペレータの作業機3の操作を自動制御によって再現することが望まれている。図4は、ホイールローダ1の自動制御システムの構成を示すブロック図である。
【0042】
自動化コントローラ100は、図2を用いて説明した車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。自動化コントローラ100はまた、外界情報取得部110との間で信号の送受信が可能に構成されている。外界情報取得部110は、知覚装置111と、位置情報取得装置112とを有している。知覚装置111と位置情報取得装置112とは、ホイールローダ1に搭載されている。
【0043】
知覚装置111は、ホイールローダ1の周囲の情報を取得する。知覚装置111は、図1に示されるように、たとえばキャブ5の上部前面に取り付けられている。知覚装置111は、ホイールローダ1の本体の周辺の物体を検出する「物体センサ」の一例に対応する。
【0044】
知覚装置111は、ホイールローダ1の外部の対象物の方向および対象物までの距離を、非接触で検出する。知覚装置111はたとえば、レーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)である。知覚装置111は、カメラを含む視覚センサであってもよい。知覚装置111は、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)であってもよい。知覚装置111は、赤外線センサであってもよい。
【0045】
位置情報取得装置112は、ホイールローダ1の現在位置の情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、衛星測位システムを利用して、地球を基準としたグローバル座標系におけるホイールローダ1の位置情報を取得する。位置情報取得装置112はたとえば、GNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)を用いるものであり、GNSSレシーバを有している。衛星測位システムは、GNSSレシーバが衛星から受信した測位信号により、GNSSレシーバのアンテナの位置を演算して、ホイールローダ1の位置を算出する。
【0046】
知覚装置111によるホイールローダ1の外界情報、および、位置情報取得装置112によるホイールローダ1の位置情報は、自動化コントローラ100に入力される。
【0047】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120との間で信号の送受信が可能に構成されており、車両情報取得部120が取得するホイールローダ1の情報の入力を受ける。車両情報取得部120は、ホイールローダ1に搭載されている各種のセンサにより構成されている。車両情報取得部120は、アーティキュレート角度センサ121、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123、バケット角度センサ124、およびブームシリンダ圧力センサ125を有している。
【0048】
アーティキュレート角度センサ121は、前フレーム2aと後フレーム2bとのなす角度であるアーティキュレート角度を検出し、検出したアーティキュレート角度の信号を発生する。アーティキュレート角度センサ121は、アーティキュレート角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0049】
車両速度センサ122は、たとえば、トランスミッション23(図2)の出力軸の回転速度を検出することにより、走行装置4(図1)によるホイールローダ1の移動速度を検出し、検出した車速の信号を発生する。車両速度センサ122は、車速の信号を車体コントローラ50に出力する。車両速度センサ122は、走行装置4(走行体)の進行状況を検出する「走行センサ」の一例に対応する。
【0050】
ブーム角度センサ123は、たとえば、ブーム14の車体フレーム2に対する取付部であるブームピン9に設けられたロータリーエンコーダで構成される。ブーム角度センサ123は、水平方向に対するブーム14の角度を検出し、検出したブーム14の角度の信号を発生する。ブーム角度センサ123は、ブーム14の角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0051】
バケット角度センサ124は、たとえば、ベルクランク18の回転軸である支持ピン18aに設けられたロータリーエンコーダで構成される。バケット角度センサ124は、ブーム14に対するバケット6の角度を検出し、検出したバケット6の角度の信号を発生する。バケット角度センサ124は、バケット6の角度の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0052】
ブーム角度センサ123と、バケット角度センサ124とは、作業機3の姿勢を検出する「作業機姿勢センサ」の一例に対応する。作業機姿勢センサは、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124に代えて、またはこれらに加えて、ベルクランク18の角度を検出する角度センサおよびリンク15の角度を検出する角度センサであってもよい。また作業機姿勢センサは、上記のロータリーエンコーダに限定されず、ストロークセンサ、IMU(Inertial Measurement Unit)、ポテンショメータ、視覚センサなどであってもよい。
【0053】
作業機姿勢センサとしてストロークセンサが用いられる場合、たとえばブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の各々にストロークセンサが取り付けられる。ストロークセンサにより各シリンダ16、19のストローク量を検出することができる。このストローク量によりブーム14およびバケット6の各々の姿勢を検出することができる。
【0054】
作業機姿勢センサとしてIMUが用いられる場合、たとえばブーム14およびバケット6の各々にIMUが取り付けられる。各IMUは、3軸の角度(または角速度)と加速度とを検出する。IMUにより検出された3軸の角度(または角速度)と加速度とによりブーム14およびバケット6の各々の姿勢を検出することができる。
【0055】
作業機姿勢センサとしてポテンショメータが用いられる場合、たとえばブームシリンダ16のブーム14側端部付近、バケットシリンダ19のベルクランク18側端部付近にポテンショメータが取り付けられる。各ポテンショメータにより、ホイールローダ1の本体に対するブーム14の回転角度、ブーム14に対するバケット6の回転角度の各々を検出することができる。これらの回転角度から作業機3の姿勢を検出することができる。
【0056】
作業機姿勢センサとして視覚センサが用いられる場合、視覚センサによりブーム14およびバケット6の状態が撮像される。視覚センサにより撮像された撮像情報から、ブーム14およびバケット6の各々の姿勢を検出することができる。視覚センサは、たとえばカメラなどの撮像装置である。
【0057】
ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームシリンダ16のボトム側の圧力(ブームボトム圧)を検出し、検出したブームボトム圧の信号を発生する。ブームボトム圧は、バケット6に荷が積まれた場合に高くなり、空荷の場合に低くなる。ブームシリンダ圧力センサ125は、ブームボトム圧の信号を車体コントローラ50に出力する。
【0058】
車体コントローラ50は、車両情報取得部120から入力された情報を、自動化コントローラ100へ出力する。自動化コントローラ100は、車体コントローラ50を介して、車両速度センサ122、ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124の検出値を入力される。
【0059】
アクチュエータ140は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。車体コントローラ50からの指令信号を受けて、アクチュエータ140が駆動する。アクチュエータ140は、走行装置4のブレーキを作動させるためのブレーキEPC(電磁比例制御弁)141と、ホイールローダ1の走行方向を調節するためのステアリングEPC142と、作業機3を動作させるための作業機EPC143と、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)144とを含んでいる。
【0060】
図2に示される電磁比例制御弁35,36は、作業機EPC143を構成している。図2に示されるトランスミッション23は、電子制御を活用したHMT144として実現される。トランスミッション23は、HST(Hydro-Static Transmission)であってもよい。エンジン21から走行輪4a,4bへ動力を伝達する動力伝達装置は、ディーゼル・エレクトリック方式などの電気式駆動装置を含んでもよく、HMT、HST、電気式駆動装置のいずれかの組み合わせを含んでもよい。
【0061】
車体コントローラ50は、トランスミッションコントローラ70と作業機コントローラ80とを有している。トランスミッションコントローラ70は、ブレーキ制御部71と、アクセル制御部72とを有している。ブレーキ制御部71は、ブレーキEPC141に対して、ブレーキの作動を制御するための指令信号を出力する。アクセル制御部72は、HMT144に対して、車速を制御するための指令信号を出力する。
【0062】
作業機コントローラ80は、ステアリング制御部81と、作業機制御部82とを有している。ステアリング制御部81は、ステアリングEPC142に対して、ホイールローダ1の走行方向を制御するための指令信号を出力する。作業機制御部82は、作業機EPC143に対して、作業機3の動作を制御するための指令信号を出力する。
【0063】
自動化コントローラ100は、位置推定部101と、パスプランニング部102と、経路追従制御部103と、荷押し判定部104とを有している。
【0064】
位置推定部101は、位置情報取得装置112が取得した位置情報によって、ホイールローダ1の自己位置を推定する。また位置推定部101は、知覚装置111が取得した外界情報によって、目標位置を認識する。目標位置は、たとえば、図3に示される掘削対象物310またはダンプトラック300の位置である。知覚装置111が目標位置を認識して自動化コントローラ100に入力してもよく、知覚装置111が検出した検出結果に基づいて位置推定部101が目標位置を認識してもよい。
【0065】
パスプランニング部102は、ホイールローダ1の自己位置と目標位置とを結ぶ最適経路を生成する。最適経路は、走行装置4による走行の経路と、作業機3の動作の経路とを含んでいる。
【0066】
経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に追従してホイールローダ1が走行するように、アクセル、ブレーキおよびステアリングを制御する。経路追従制御部103から、ブレーキ制御部71、アクセル制御部72およびステアリング制御部81に、ホイールローダ1を最適経路に沿って走行させるための指令信号が出力される。経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に沿って作業機3が動作するように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。経路追従制御部103から、作業機制御部82に、作業機3を最適経路に沿って移動させるための指令信号が出力される。
【0067】
インターフェース130は、車体コントローラ50との間で信号の送受信が可能に構成されている。インターフェース130は、自動化切替スイッチ131、エンジン緊急停止スイッチ132、およびモードランプ133を有している。
【0068】
自動化切替スイッチ131は、オペレータによって操作される。オペレータは、自動化切替スイッチ131を操作することにより、ホイールローダ1をマニュアルで操作するか、ホイールローダ1を自動制御するかを切り替える。エンジン緊急停止スイッチ132は、オペレータによって操作される。エンジン21を緊急停止させることが求められる事象が発生したとき、オペレータは、エンジン緊急停止スイッチ132を操作する。自動化切替スイッチ131およびエンジン緊急停止スイッチ132の操作の信号は、車体コントローラ50に入力される。
【0069】
モードランプ133は、ホイールローダ1が現在、オペレータによるマニュアル操作されるモードであるか、または自動制御されるモードであるか、を表示する。車体コントローラ50からモードランプ133に、ランプの点灯を制御するための指令信号が出力される。
【0070】
ホイールローダ1の自動制御システムは、積込作業における荷押しを自動化するにあたり、ベッセル301内における荷の積込状況(たとえば荷姿)に関する情報を取得する。またホイールローダ1の自動制御システムは、ベッセル301内における荷の積込状況に関する情報を検出する。またホイールローダ1の自動制御システムは、その検出した情報に基づいてホイールローダ1を動作させることによりベッセル301内の荷を移動させる(荷押しする)。このためホイールローダ1の自動制御システムは、ベッセル301内における荷の積込状況に関する情報を検出する「積荷センサ」を有している。
【0071】
上記「積荷センサ」は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報を検出する。積荷センサは、たとえば上記「物体センサ」および「作業機姿勢センサ」の少なくとも1つを含んでもよい。つまり積荷センサは、「物体センサ」単体であってもよく、「作業機姿勢センサ」単体であってもよく、「物体センサ」および「作業機姿勢センサ」の双方を含んでもよい。
【0072】
積荷センサが物体センサである場合、物体センサにより検出されたベッセル301内の荷310の積込状況を示す信号が、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報となる。この場合、物体センサの一例である知覚装置111によりベッセル301内における荷310の積込状況が検出される。具体的には知覚装置111の一例であるLiDAR、視覚センサ、Radar、赤外線センサなどのいずれかまたは任意の組み合わせにより、ベッセル301内の荷310の積込状況が検出される。
【0073】
積荷センサが作業機姿勢センサである場合、作業機姿勢センサにより検出された作業機3の姿勢を示す信号が、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報となる。この場合、作業機姿勢センサの一例であるロータリーエンコーダ、ストロークセンサ、IMU、ポテンショメータ、視覚センサなどのいずれかまたは任意の組み合わせにより、作業機3の姿勢を示す信号が検出される。
【0074】
ホイールローダ1の自動制御システムは、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内で荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する荷押し判定部104を有している。荷押し判定部104は、自動化コントローラ100に含まれている。
【0075】
荷押し判定部104は、積荷センサにより検出された情報に基づいてベッセル301内の荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する。物体センサ単体で積込状況に関する情報が検出される場合、荷押し判定部104は、たとえば知覚装置111が取得したベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内の荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する。
【0076】
この場合、自動化コントローラ100は、たとえばベッセル301内における荷310の積込状況と荷押しの要否との関係を示す関係データを記憶している。荷押し判定部104は、この関係データと知覚装置111が取得したベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報とを対比することにより、ベッセル301内の荷310を移動させる必要があるか否かを判定する。
【0077】
また作業機姿勢センサ単体で積込状況に関する情報が検出される場合、荷押し判定部104は、たとえば作業機姿勢センサが取得した作業機3の姿勢を示す信号から、作業機3によるベッセル301への荷310の積込回数を算出する。荷押し判定部104は、算出した積込回数が所定の回数(たとえば2回)以上の場合、ベッセル301内の荷310を荷押しする必要があると判定する。この場合、積込み回数を示す信号が、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に対応する。
【0078】
なお物体センサと作業機姿勢センサとの双方により積込状況に関する情報が検出されてもよい。この場合には、物体センサにより検出された積込状況に関する情報と、作業機姿勢センサにより検出された積込状況に関する情報との双方に基づいて、ベッセル301内の荷310を荷押しする必要があるか否かが判定される。
【0079】
荷押し判定部104がベッセル301内の荷310を荷押しする必要があると判定した場合、自動化コントローラ100は、ベッセル301の中心CLに向けて荷310を荷押しするようにホイールローダ1を動作させる。
【0080】
具体的には荷押し判定部104がベッセル301内の荷310を荷押しする必要があると判定した場合、ベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる経路をパスプランニング部102が生成する。そして経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した経路に追従してホイールローダ1が走行し、かつ作業機3が動作するように、アクセル、ブレーキ、ステアリング、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。
【0081】
<自動ダンプ積みフロー>
図5は、ホイールローダ1を自動制御することによりバケット6に積載した荷を積込目標に積み込む動作の流れを示すフローチャートである。
【0082】
図5に示されるように、まず事前準備として、積込作業を開始する前に、ステップS100において、積込目標であるダンプトラック300のベッセル301の形状を認識する。たとえば、知覚装置111であるLiDARで、ダンプトラック300の形状を取得する。LiDARからダンプトラック300にレーザ光を照射して、ダンプトラック300上の計測点の三次元座標値を示す点群データを取得する。ダンプトラック300を、前方、後方、右方および左方の四方から検知して、点群の情報からベッセル301の形状を認識することができる。認識されたベッセル301の形状が、自動化コントローラ100に入力される。
【0083】
ステップS101において、知覚装置111は、ダンプトラック300の基準点P(図7)を認識する。たとえば知覚装置111であるLiDARは、ダンプトラック300を検知する。自動化コントローラ100は、知覚装置111が検知した点群と、ベッセル301の形状を示すマスター点群とを比較して、ベッセル301の位置を認識する。自動化コントローラ100は、知覚装置111であるLiDARが認識したダンプトラック300のベッセル301の側面上端を、基準点Pとして設定する。
【0084】
ステップS102において、自動化コントローラ100は、自動制御により移動するバケット6の刃先6aの目標位置c、d、e(図7)の、基準点Pに対する座標を設定する。バケット6の刃先6aは、作業機3に設定される「特徴点」の一例に対応する。なお特徴点はバケット6の刃先6aに限定されず、作業機3の他の点が特徴点として設定されてもよい。
【0085】
ここで、基準点Pと目標位置c、d、eとについて説明する。図7は、ダンプアプローチ開始時のベッセル301とホイールローダ1との配置を模式的に示す図である。図7および後続の図8図10では、ダンプトラック300の前後方向から見たベッセル301が模式的に示されており、またダンプトラック300の左側または右側からベッセル301に接近するホイールローダ1の前側の一部が模式的に示されている。
【0086】
目標位置cは、ホイールローダ1がダンプトラック300へ向かって前進走行中に、バケット6の刃先6aが通過する位置として設定される。ホイールローダ1の前進走行中に、バケット6内の荷310をベッセル301に積み込むために、バケット6をダンプ方向へ移動させる作業機3の動作が行われる。積込動作時においてダンプさせたバケット6の刃先6aが最下方に位置するときの位置が、目標位置cである。
【0087】
目標位置dは、目標位置cを通過した後にバケット6の刃先6aが通過する位置として設定される。目標位置dは、目標位置cよりも基準点Pの近くに設定される。目標位置dは、バケット6のダンプ方向への動作を停止する位置である。バケット6の刃先6aが目標位置dにあるとき、バケット6はたとえばフルダンプ状態である。バケット6の刃先6aが目標位置dにあるとき、バケットシリンダ19の長さは最小である。目標位置dは、ベッセル301の上方にある。
【0088】
ベッセル301内に積み込まれた荷310の荷押しが必要であると荷押し判定部104が判定した場合、目標位置dは、荷押しを開始する位置となる。目標位置dは、バケット6がたとえばフルダンプ状態で維持されたまま作業機3の動作を停止する位置となる。
【0089】
目標位置eは、目標位置dを通過した後にバケット6の刃先6aが通過する位置として設定される。目標位置eは、目標位置dよりも基準点Pの遠くに設定される。目標位置dから目標位置eまでは、バケット6がたとえばフルダンプ状態で作業機3の動作が停止された状態が維持され、ホイールローダ1の前進走行が継続される。目標位置eは、ベッセル301の上方にある。
【0090】
図7に示されるように、基準点Pを原点としたxy座標系が設定される。x軸は、基準点Pを通るダンプトラック300の左右方向である。基準点Pを基準とした、ベッセル301から離れる方向が、+x方向である。y軸は、基準点Pを通る上下方向である。基準点Pからの上向き方向が、+y方向である。
【0091】
図7に示されるバケット角度θは、地面と、バケット6の背面6bとがなす角度である。バケット角度θは、バケット6の背面6bと車体基準の水平面とがなす角度であってもよい。
【0092】
目標位置c、d、eは、バケット6の刃先6aの、基準点Pを基準とした水平方向および鉛直方向の位置、すなわちx座標およびy座標を与えることによって、決定される。目標位置cは、バケット6内の荷310の排土中に刃先6aの高さ位置が最も低くなる(y座標が最小値となる)位置として設定される。目標位置cは、y座標がマイナス側の位置に設定される。目標位置d、eは、y座標がプラス側の位置に設定される。
【0093】
目標位置c、d、eは、x座標がマイナス側の位置に設定される。目標位置d、eは、たとえば互いに同じy座標に設定される。なお目標位置d、eにおいてバケット6は、フルダンプ状態でなくてもよく、バケット6内の荷310をベッセル301に積み込めるようなダンプ状態であればよい。また目標位置d、eが互いに同じy座標でなくてもよく、目標位置eは目標位置dよりも低い位置(-y方向の位置)であってもよい。
【0094】
バケット6の刃先6aが各目標位置にあるときのバケット角度θも設定される。各目標位置のx座標およびy座標と、各目標位置におけるバケット角度θとから、バケット6の刃先6aが各目標位置にあるときの作業機3の姿勢が決定される。自動化コントローラ100は、バケット6の刃先6aが各目標位置にあるときの作業機3の姿勢(目標姿勢)を記憶している。バケット6の刃先6aが各目標位置にあるときの目標姿勢に基づいて、バケット6の刃先6aが各目標位置にあるときのブームシリンダ16の長さとバケットシリンダ19の長さとが決定される。
【0095】
各目標位置のx座標およびy座標、ならびに各目標位置におけるバケット角度θは、熟練オペレータが積込作業を実行したときの刃先6aの軌跡を解析して特徴となる位置を抽出し、その特徴的位置における作業機3の姿勢を抽出することで、決定することができる。
【0096】
図8は、積込動作時においてバケットの刃先が最下方に位置するときのホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。図9は、荷押し開始時のホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。図10は、荷押し終了時のホイールローダの姿勢を模式的に示す図である。図8においては、バケット6の刃先6aは目標位置cにある。図9においては、刃先6aは目標位置dにある。図10においては、刃先6aは目標位置eにある。
【0097】
図11は、積込作業中のシリンダ長さの変化を示すグラフである。図11の横軸は時間の経過を示し、刃先6aが目標位置c、d、eを通過する時刻に補助線が引かれている。図11の縦軸は、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の長さを示す。
【0098】
図11および図7、8に示されるように、刃先6aが目標位置cに到達する前に、ホイールローダ1は前進走行している。ブームシリンダ16の長さが増大しており、したがってブーム14は上昇している。バケットシリンダ19の長さが減少し続けており、したがってバケット6はダンプ方向への動作を継続している。刃先6aが目標位置cに到達した時点で、積込動作時において刃先6aが最下方に位置する。
【0099】
図11および図8、9に示されるように、目標位置cから目標位置dまでの刃先6aの移動においては、ホイールローダ1は前進走行を継続している。ブームシリンダ16の長さが引き続き増大し、ブーム14は引き続き上昇する。バケットシリンダ19の長さは、引き続き減少し、したがってバケット6はダンプ方向への動作を継続している。刃先6aが目標位置dに到達した時点で、バケット6はフルダンプの姿勢となる。刃先6aが目標位置dに到達した時点で、バケットシリンダ19の長さが最小となっている。
【0100】
図11および図9、10に示されるように、目標位置dから目標位置eまでの刃先6aの移動においては、ホイールローダ1は前進走行を継続している。目標位置dから目標位置eまでの刃先6aの移動においては、作業機3の動作は停止している。このためブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の各々の長さは、目標位置dにおけるブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の各々の長さと同じである。したがって刃先6aが目標位置eに到達した時点で、バケット6はフルダンプの姿勢を維持し、バケットシリンダ19の長さが最小となっている。
【0101】
図11に示されるように、目標位置eに刃先6aが到達した時点で、ホイールローダ1は前進走行から後進走行に切り換えられる。目標位置eに到達した後の刃先6aの移動においては、所定時間の間、作業機3の動作は停止していてもよい。この場合、目標位置eに到達した後の所定時間の間、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の各々の長さは、目標位置eにおけるブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の各々の長さと同じである。
【0102】
また目標位置eに到達してから所定時間経過後に、ホイールローダ1は後進走行を継続し、ブームシリンダ16の長さが減少(ブーム14は下降)し、バケットシリンダ19の長さが増大(バケット6はチルト方向へ動作)してもよい。
【0103】
上記のようにバケット6の刃先6aを、目標位置c、dを順に通過するように移動させることで、バケット6内の荷310をベッセル301内に排土することができる。またバケット6の刃先6aを、目標位置d、eを順に通過するように移動させることで、ベッセル301内の荷310をバケット6により荷押しすることができる。たとえばベッセル301内の荷310をバケット6によりベッセル301の中心CLに向けて荷押しすることができる。このようにバケット6を移動させる自動制御をホイールローダ1に適用することで、熟練オペレータの操作による動作と同等の排土動作および荷押し動作を含むホイールローダ1の動作を実現することができる。
【0104】
図5に戻って、自動制御による積込作業の説明を続ける。ステップS103において、自動化コントローラ100は、ホイールローダ1および作業機3の現在位置を認識する。位置情報取得装置112でホイールローダ1の車体の現在位置を取得し、車体に対する作業機の姿勢をブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124により取得することで、グローバル座標系におけるホイールローダ1および作業機3の現在位置を認識することができる。グローバル座標系における、ホイールローダ1および作業機3の現在位置と、ダンプトラック300の現在位置とに基づいて、ダンプトラック300のベッセル301に対するバケット6の刃先6aの相対位置を算出することができる。
【0105】
または、知覚装置111を用いて、知覚装置111の配置位置に対するダンプトラック300のベッセル301の基準点Pの方向および距離を取得することで、基準点Pに対するバケット6の刃先6aの現在の相対位置を算出してもよい。
【0106】
作業機3の現在位置から、バケット6の刃先6aが各目標位置c~eに対してどの位置にあるのかを認識する。たとえば、刃先6aが目標位置cに未だ到達していない、刃先6aが目標位置cを通過して目標位置cと目標位置dとの間にある、刃先6aが目標位置dを通過して目標位置dと目標位置eとの間にある、などが認識される。さらに、刃先6aが次に向かう目標位置が認識される。たとえば、刃先6aが目標位置cに未だ到達していないのであれば次に向かうのは目標位置cであり、刃先6aが目標位置cと目標位置dとの間にあれば次に向かうのは目標位置dであり、刃先6aが目標位置dと目標位置eとの間にあれば次に向かうのは目標位置eである、などが認識される。
【0107】
ステップS104において、自動化コントローラ100は、現在位置におけるブームシリンダ16の長さおよびバケットシリンダ19の長さを認識する。ブーム角度センサ123により、ブーム14の角度を検出する。バケット角度センサ124により、バケット6の角度を検出する。ブーム14の角度とバケット6の角度とから、作業機3の姿勢が決定される。作業機3の姿勢に基づいて、現在位置におけるブームシリンダ16の長さとバケットシリンダ19の長さとが認識される。
【0108】
ブーム角度センサ123およびバケット角度センサ124に替えて、またはこれらに加えて、ベルクランク18の角度を検出する角度センサおよびリンク15の角度を検出する角度センサを設けてもよい。また作業機3の姿勢は、上記角度センサに代えて、またはこれらに加えて、ストロークセンサ、IMU、ポテンショメータ、視覚センサなどにより検出されてもよい。
【0109】
ステップS105において、自動化コントローラ100は、ステップS104で認識された現在位置におけるブームシリンダ16の長さとバケットシリンダ19の長さと、刃先6aが次に向かう目標位置におけるブームシリンダ16の長さとバケットシリンダ19の長さ(以下、目標シリンダ長さと称する)と、の差を算出する。自動化コントローラ100は、刃先6aが次の目標位置に到達するまでにシリンダ16、19をどれだけ動かすのかを計算する。
【0110】
ステップS106において、自動化コントローラ100は、現在の車速を参照し、刃先6aが次に向かう目標位置に到達したときに目標シリンダ長さとなる、目標シリンダストローク速度を決定する。自動化コントローラ100は、刃先6aが次に向かう目標位置に到達したとき、作業機3がその目標位置に対応する目標姿勢をとるように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。現在の車速は、車両速度センサ122により取得される。刃先6aの現在位置と、現在の車速とから、次の目標位置に到達するまでの時間が計算される。ステップS105で算出されたシリンダ長さの差を、次の目標位置に到達するまでの時間で割ることによって、目標シリンダストローク速度が決定される。
【0111】
ホイールローダ1が単位距離走行する間のシリンダストローク量が決定されてもよい。ホイールローダ1が単位距離走行したことは、車速から求められてもよく、知覚装置111で検知されてもよい。
【0112】
ステップS107において、自動化コントローラ100は、車体コントローラ50に対し、目標シリンダストローク速度に対応する指令電流を出力する。自動化コントローラ100は、作業機コントローラ80の作業機制御部82に対し、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を目標シリンダストローク速度で伸縮させる指令を出力する。作業機制御部82から作業機EPC143に、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を目標シリンダストローク速度で伸縮させる指令が出力される。
【0113】
ステップS108において、指令信号を受けた作業機EPC143が開度を調節することで、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19に適切な作動油が供給される。これにより、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19が動作する。
【0114】
ステップS109において、自動化コントローラ100は、ステップS104と同様に現在のブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の長さを認識する。自動化コントローラ100は、現在のブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の長さが、目標シリンダ長さに到達したか否かを判断する。
【0115】
ステップS109の判断において、目標シリンダ長さに到達したと判断されれば(ステップS109においてYES)、ステップS110に進み、自動化コントローラ100は、次の目標位置があるか否かの判断をする。
【0116】
ステップS109の判断において目標シリンダ長さに到達していないと判断される場合(ステップS109においてNO)、および、ステップS110の判断において次の目標位置があると判断される場合(ステップS110においてYES)、ステップS103に戻り、作業機3の現在位置に基づいてブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を伸縮させる処理が繰り返される。バケット6の刃先6aの現在位置に応じて、シリンダ速度は逐次変更される。前回の処理で設定されたシリンダ速度に基づいた位置から刃先6aの現在位置がずれていると、シリンダ速度が調整される。
【0117】
ステップS110の判断において、次の目標位置がないと判断されれば(ステップS110においてNO)、積込作業を終了する。本実施形態において、目標位置dの終了後、次の目標位置が設定されていない、ことに対応する。
【0118】
<荷押しの自動制御フロー>
次に、荷押しの自動制御フローについて図6などを用いて説明する。
【0119】
図6は、荷押しの自動制御を示すフローチャートである。図5に示される自動ダンプ積みの自動制御により、図9に示されるようにバケット6の刃先6aが目標位置dに到達する。刃先6aが目標位置dに到達したか否かについては、図5の自動制御フローにおいてブームシリンダ16およびバケットシリンダ19の長さが目標位置dの目標長さに到達したか否かにより自動化コントローラ100が判断する。この目標位置dに到達した時点でバケット6はフルダンプ状態となっている。このため、バケット6内の荷310のベッセル301への積込操作は終了する(ステップS201:図6)。
【0120】
自動化コントローラ100は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報を取得している。そして自動化コントローラ100は、バケット6の刃先6aが目標位置dに到達すると、ベッセル301内の荷310を荷押しするか否かを判定する(ステップS202:図6)。上記の積込状況に関する情報の取得および荷押し要否の判定は、自動化コントローラ100の荷押し判定部104により行われる。
【0121】
荷押し判定部104は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内で荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する。荷押し判定部104は、たとえば知覚装置111が取得したベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内の荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する。
【0122】
この場合、自動化コントローラ100は、ベッセル301内における荷310の積込状況と荷押しの要否との関係を示す関係データを記憶している。荷押し判定部104は、この関係データと知覚装置111が取得したベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報とを対比することにより、ベッセル301内における荷310の荷押し要否を判定する。
【0123】
また荷押し判定部104は、たとえば作業機姿勢センサが取得した作業機3の姿勢を示す信号から、作業機3によるベッセル301への荷310の積込回数を算出する。荷押し判定部104は、算出した積込回数が所定回数(たとえば2回)以上の場合、ベッセル301内における荷310の荷押しが必要であると判定する。
【0124】
ステップS202において荷押し判定部104がベッセル301内における荷310の荷押しが必要であると判定した場合、目標位置dから目標位置eへ刃先6aが移動するようにホイールローダ1を動作させる経路をパスプランニング部102が生成する。
【0125】
経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した経路に追従してホイールローダ1が走行するように、アクセル、ブレーキおよびステアリングを制御する。経路追従制御部103から、ブレーキ制御部71、アクセル制御部72およびステアリング制御部81に、ホイールローダ1を最適経路に沿って走行させるための指令信号が出力される。これによりホイールローダ1は、経路追従制御部103により目標位置dから目標位置eまで前進走行するように制御される。
【0126】
また経路追従制御部103は、パスプランニング部102が生成した最適経路に沿って作業機3が動作するように、ブームシリンダ16およびバケットシリンダ19を制御する。経路追従制御部103から、作業機制御部82に、作業機3を最適経路に沿って移動させるための指令信号が出力される。これにより作業機3は、経路追従制御部103により目標位置dから目標位置eまで動作を停止するように制御される。
【0127】
以上により、目標位置dから目標位置eに到達するまでホイールローダ1が前進走行し、作業機3が動作を停止するように経路追従制御部103により制御される(ステップS203:図6)。これによりベッセル301内における荷310をベッセル301の中心CLに向けて荷押しするようにホイールローダ1が動作される。そして刃先6aが目標位置eに到達すると、荷押し制御は終了する。
【0128】
またステップS202において荷押し判定部104がベッセル301内における荷310の荷押しが必要でないと判定した場合、荷押し制御は終了する。
【0129】
<荷押しによるベッセル301内の荷の移動>
次に、上記荷押しによるベッセル301内の荷の移動について図12(A)~図12(C)を用いて説明する。
【0130】
図12(A)に示されるように、ベッセル301内に1回目の積込みで荷310Aが積み込まれ、2回目の積込みで荷310Bが積み込まれる。たとえば2回目の積込みが終了した時点で、荷310がベッセル301内にて偏って積み込まれる場合がある。
【0131】
このようにベッセル301内の荷310の積込状況(荷姿)が不適切であると、ダンプトラック300の走行中に荷310がベッセル301からこぼれるおそれがある。荷310がベッセル301からこぼれることを抑制するために、本実施形態においてはバケット6が、ベッセル301内の荷310をベッセル301の中心CLに向けて移動させる。このように本実施形態では、たとえば2回目の荷310Bの積込みが終了した後にバケット6による荷押し制御が実施される。
【0132】
図12(B)に示されるように、荷押しは、バケット6の刃先6aをベッセル301の端部から中心CLに向かって移動させることにより行われる。これによりベッセル301内の荷310は、バケット6に押されてベッセル301の中心CLに移動させられる。
【0133】
図12(C)に示されるように、刃先6aが目標位置eに到達した時点で、ベッセル301内における荷310の偏りは改善される。これによりダンプトラック300の走行中に荷310がベッセル301からこぼれることが抑制される。
【0134】
刃先6aが目標位置eに到達した後には、ホイールローダ1が後進走行する。これによりバケット6はに310の頂点を作りながら後方へ移動してダンプトラック300から離れる。
【0135】
なおベッセル301の中心CLとは、積込動作時においてホイールローダ1がベッセル301に向かって前進走行する方向に沿ってベッセル301の断面を見た視点(図12(A)~(C)に示す断面視)において、ベッセル301幅方向の中心を意味する。
【0136】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0137】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報を取得する。また自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内における荷310の積込状況に関する情報に基づいてベッセル301内で荷310を荷押しする必要があるか否かを判定する。また自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内で荷310を移動させる必要があると判定した場合にベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる。
【0138】
このようにベッセル301内の荷310の積込状況に基づいて荷310をベッセル301の中心CLに向けて荷押しする。このためベッセル301内における荷310の偏りは改善される。これによりダンプトラック300の走行中に荷310がベッセル301からこぼれることが抑制される。
【0139】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内で荷310を移動させる必要があると判定した場合に、走行装置4を前進走行させることにより、ベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる。これによりバケット6によりベスる301内における荷310をベッセル301の中心CLに向けて荷押しすることができる。
【0140】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内で荷310を移動させる必要があると判定した場合に、作業機アクチュエータの駆動を停止させながら走行装置4を前進走行させることにより、ベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる。これにより荷押し時における作業機アクチュエータの動作制御が不要となり、動作制御の簡略化を図ることが可能となる。
【0141】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、ベッセル301内で荷310を移動させる必要があると判定した場合に、バケット6の高さを維持しながら走行装置4を前進走行させることにより、ベッセル301の中心CLに向けて荷310を移動させるようにホイールローダ1を動作させる。これにより荷押し時におけるバケット6の高さ制御が不要となり、動作制御の簡略化を図ることが可能となる。
【0142】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、作業機姿勢センサにより検出された作業機3の姿勢に基づいて作業機3によるベッセル301への積込回数を算出し、算出した積込回数に基づいてベッセル301内で荷310を移動させる必要があるか否かを判定する。これにより積込回数に基づいて簡易に荷押し要否を判定することが可能となる。
【0143】
本実施形態においては図4に示される自動化コントローラ100(荷押し判定部104)は、物体センサにより検出された荷310の積込状況に基づいてベッセル301内で荷310を移動させる必要があるか否かを判定する。これによりベッセル301内における荷310の実際の積込状況に応じて荷押し要否を判定できる。このためダンプトラック300の走行中に荷310がベッセル301からこぼれることをより正確に抑制することができる。
【0144】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0145】
(付記1)
作業機械であって、
本体と、
前記本体に取り付けられ、積込容器に荷を積み込む作業機と、
前記本体に対し前記作業機を駆動する作業機アクチュエータと、
前記作業機の位置の検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定し、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、作業機械。
【0146】
(付記2)
前記本体は走行体を有し、
前記走行体の進行状態を検出する走行センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記走行センサの検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令する、付記1に記載の作業機械。
【0147】
(付記3)
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、付記2に記載の作業機械。
【0148】
(付記4)
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記作業機アクチュエータの駆動を停止させながら前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、付記3に記載の作業機械。
【0149】
(付記5)
前記作業機はバケットを有し、
前記コントローラは、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に、前記バケットの高さを維持しながら前記走行体を前進走行させることにより、前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、付記3または付記4に記載の作業機械。
【0150】
(付記6)
荷の積込状況を判断するために、前記作業機の姿勢を検出する作業機姿勢センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機姿勢センサにより検出された前記作業機の姿勢に基づいて前記作業機による前記積込容器への積込回数を算出し、算出した前記積込回数に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定する、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業機械。
【0151】
(付記7)
荷の積込状況を判断するために、前記積込容器に積み込まれた荷の積込状況を検出する物体センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記物体センサにより検出された荷の積込状況に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定する、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業機械。
【0152】
(付記8)
作業機械を含むシステムであって、
作業機械本体と、
前記作業機械本体に取り付けられ、積込容器に荷を積み込む作業機と、
前記作業機械本体に対し前記作業機を駆動する作業機アクチュエータと、
前記作業機の位置の検出値と、前記積込容器の前記作業機械に対する位置の検出値とに基づいて、前記作業機アクチュエータの駆動を指令するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得し、取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定し、前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させる、システム。
【0153】
(付記9)
作業機械の制御方法であって、
前記積込容器内における荷の積込状況に関する情報を取得することと、
取得した荷の積込状況に関する情報に基づいて前記積込容器内で荷を移動させる必要があるか否かを判定することと、
前記積込容器内で荷を移動させる必要があると判定した場合に前記積込容器の中心に向けて荷を移動させるように前記作業機械を動作させることと、を備えた、作業機械の制御方法。
【0154】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、2a 前フレーム、2b 後フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a,4b 走行輪、5 キャブ、6 バケット、6a 刃先、6b 背面、8 操作装置、9 ブームピン、11 ステアリングシリンダ、13 作業機ポンプ、14 ブーム、15 リンク、16 ブームシリンダ、17 バケットピン、18 ベルクランク、18a 支持ピン、18b,18c 連結ピン、19 バケットシリンダ、21 エンジン、23 トランスミッション、25 アクスル、32 メインバルブ、35,36 電磁比例制御弁、41 アクセルペダル、42 作業機操作レバー、50 車体コントローラ、51 機械モニタ、60 エンジンコントローラ、70 トランスミッションコントローラ、71 ブレーキ制御部、72 アクセル制御部、80 作業機コントローラ、81 ステアリング制御部、82 作業機制御部、100 自動化コントローラ、101 位置推定部、102 パスプランニング部、103 経路追従制御部、104 判定部、110 外界情報取得部、111 知覚装置、112 位置情報取得装置、120 車両情報取得部、121 アーティキュレート角度センサ、122 車両速度センサ、123 ブーム角度センサ、124 バケット角度センサ、125 ブームシリンダ圧力センサ、130 インターフェース、131 自動化切替スイッチ、132 エンジン緊急停止スイッチ、133 モードランプ、140 アクチュエータ、141 ブレーキEPC、142 ステアリングEPC、143 作業機EPC、144 HMT、300 ダンプトラック、301 ベッセル、310 荷(掘削対象物)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12