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特開2024-36929積層成形システムの積層成形方法および積層成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036929
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】積層成形システムの積層成形方法および積層成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20240311BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141495
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】永井 岳志
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AG03
4F204AH37
4F204AJ09
4F204AM28
4F204AR11
4F204FA01
4F204FA15
4F204FB01
4F204FF36
4F204FG02
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ38
(57)【要約】
【課題】 積層成形品の積層成形の際の生産効率の向上、生産量の増加、エネルギー消費効率の向上の少なくとも一つを改善することのできる積層成形システムの積層成形方法および積層成形システムを提供する。
【解決手段】 積層成形システム11の制御方法は、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程と、第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程は、少なくとも真空積層装置12の埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、前記真空積層装置の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さを、前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%ないし160%の範囲に設定して積層成形品の成形を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システムの積層成形方法において、
前記真空積層装置による成形工程は、少なくともチャンバを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバ内を減圧しつつ積層成形品に熱を付与する待機工程と、加圧部材が作動開始されて積層成形品に加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とからなり、
前記第1の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第1の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、
前記第2の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第2の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、
前記第1の平坦化加圧工程と、前記第2の平坦化加圧工程は、少なくとも前記埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、
前記真空積層装置の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さを、
前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%ないし160%の範囲に設定して積層成形品の成形を行う、積層成形システムの積層成形方法。
【請求項2】
減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システムの積層成形方法において、
前記真空積層装置による成形工程は、少なくともチャンバを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバ内を減圧しつつ積層成形品に熱を付与する待機工程と、加圧部材が作動開始されて積層成形品に加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とからなり、
前記第1の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第1の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、
前記第2の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第2の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、
前記第1の平坦化加圧工程と、前記第2の平坦化加圧工程は、少なくとも前記埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、
前記真空積層装置の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さを20秒ないし48秒の範囲に設定し、
前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さを20秒ないし40秒の範囲に設定して積層成形品の成形を行う、積層成形システムの積層成形方法。
【請求項3】
真空積層装置の真空チャンバを開放する真空チャンバ開放工程の終了時間と、前記第1の平坦化プレス装置の型開工程の終了時間と、前記第2の平坦化プレス装置の型開工程の終了時間は略同一であって、該真空積層装置の真空チャンバ開放工程の終了後、第1の平坦化プレス装置の型開工程の終了後、および第2の平坦化プレス装置の型開工程の終了後に、移送手段を用いて真空積層装置で加圧成形を行った積層成形品を前記第1の平坦化プレス装置へ搬送し、第1の平坦化プレス装置で平坦化加圧成形を行った積層成形品Pを前記第2の平坦化プレス装置へ搬送し、前記第2の平坦化プレス装置で平坦化加圧成形を行った積層成形品Pを次のステージへ搬送する請求項1または請求項2に記載の積層成形システムの積層成形方法。
【請求項4】
減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システムにおいて、
少なくともチャンバを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバ内を減圧しつつ積層成形品に熱を付与する待機工程と、加圧部材が作動開始されて積層成形品に加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とを順に行う真空積層装置と、
少なくとも型閉工程と、第1の平坦化加圧工程と、型閉工程を順に行う第1の平坦化プレス装置と、
少なくとも型閉工程と、第2の平坦化加圧工程と、型閉工程を順に行う第2の平坦化プレス装置とが備えられ、
前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程を少なくとも前記埋め込み加圧工程とを過半の時間オーバーラップするように制御し、
前記第1の平坦化加圧工程と、前記第2の平坦化加圧工程は、少なくとも前記埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、
前記真空積層装置の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さを、
前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%ないし160%となるように制御する制御装置とを備えた、積層成形システム。
【請求項5】
前記真空積層装置に供給される積層成形品を予熱する予熱装置が配置された、請求項4に記載の積層成形システム。
【請求項6】
前記第1の平坦化プレス装置と前記第2の平坦化プレス装置は、同じ加圧機構を備える、請求項4または請求項5に記載の積層成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システムの積層成形方法および積層成形システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置(真空加圧式ラミネータ)とプレス装置が連続して配置された積層成形システムとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1においては、明細書の[0024]に「真空積層装置1による成形時間は60秒であるが、積層成形される積層材A1または被積層材A2に応じて、40秒ないし90秒程度の成形時間が設定される。」ことが記載され、明細書の[0028]平坦化プレス装置2は、真空積層装置1の成形時間と同じ時間(本実施形態では60秒)」と記載されている。前記特許文献1の記載において、成形時間とは型開閉時間や真空化時間を含むのかどうか明確ではないが、真空積層装置1と平坦化プレス装置2の成形時間を同じにするということが記載されていると読み取れる。
【0003】
また減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置(真空積層手段)と、第1の平坦化プレス装置(第1の平面プレス手段)と、第2の平坦化プレス装置(第2の平面プレス手段)が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システム(積層装置)としては、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2においては、[0049]に、真空積層手段にて吸引開始30秒後にワークを1Maの圧力で20秒間すること、次の第1の平面プレス手段では0.8MPaの圧力で30秒間加圧すること、次の第2の平面プレス手段では金属板の距離が仮積層体の厚みよりも20μm少なくなるように設定して、仮積層体を60秒間プレスすることが記載されている。
【0004】
従って特許文献2の積層成形システムについても、真空積層装置のチャンバの開閉時間、第1の平坦化プレス装置や第2の平坦化プレス装置の型開閉時間、積層成形品の移送時間は記載されておらず明確ではないが、真空積層手段の合計成形時間は50秒であり、第1の平面プレス手段のプレス時間は30秒であり、第2の平面プレス手段のプレス時間は60秒であることから、積層成形システム全体においても積層成形品が成形される間隔である成形サイクル時間は、成形時間が長い第2の平面プレス手段によって制限を受けることになる。より具体的には、前記第2の平面プレス手段のプレス時間60秒に、型開閉時間と積層成形品の移送を加算した時間が成形サイクル時間となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-66967号公報
【特許文献2】特開2020-28980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の特許文献1においては、実際には真空積層装置1と平坦化プレス装置2の両方の装置が同じ成形時間が必要な訳ではない。平坦化プレス装置においては、基板と積層されるフィルムの樹脂が溶融状態または軟化状態で加圧するために、強く押しすぎると基板外部への樹脂流出の可能性があることから成形時間を短縮できないという事情がある。そのため平坦化プレス装置において積層成形品を完全に平坦にするまでの成形時間は、真空積層装置において凹凸を有する基板に積層されるフィルムを加圧して埋め込む時間よりも長い時間が必要となっていた。また特許文献2のように真空積層装置の後工程に第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置される積層成形システムにおいても、それぞれの装置の成形時間が最適化されておらず、最も成形時間の長い真空積層装置または平坦化プレス装置の成形時間に拘束されて他の装置には無駄な待機時間が発生していた。
【0007】
そこで本発明では積層成形品の積層成形の際の生産効率の向上、生産量の増加、エネルギー消費効率の向上の少なくとも一つを改善することのできる積層成形システムの積層成形方法および積層成形システムを提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層成形システムの積層成形方法は、減圧可能なチャンバを備えた真空積層装置と、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置され、前記真空積層装置から第1の平坦化プレス装置へ、第1の平坦化プレス装置から第2の平坦化プレス装置へと移送手段を用いて積層成形品が移動される積層成形システムの積層成形方法において、前記真空積層装置による成形工程は、少なくともチャンバを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバ内を減圧しつつ積層成形品に熱を付与する待機工程と、加圧部材が作動開始されて積層成形品に加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とからなり、前記第1の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第1の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、前記第2の平坦化プレス装置による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第2の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、前記第1の平坦化加圧工程と、前記第2の平坦化加圧工程は、少なくとも前記埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、前記真空積装置の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さを、前記第1の平坦化加圧工程と第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%ないし160%の範囲に設定して積層成形品の成形を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示の積層成形システムの積層成形方法によれば、積層成形品の積層成形の際の生産効率の向上、生産量の増加、エネルギー消費効率の向上の少なくとも一つを改善することができる。また本開示の積層成形システムも同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
図2】第1の実施形態の積層成形システムの制御装置のブロック図である。
図3】第1の実施形態の積層成形システムの各装置の成形時間の関係を示す図である。
図4】従来の積層成形システムの各装置の成形時間の関係を示す図である。
図5】第1の実施位形態の積層成形システム、第2の実施形態の積層成形システム、第3の実施形態の積層成形システム、従来の積層成形システムの各装置の成形時間の一例を示す図である。
図6】第2の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
図7】第2の実施形態の積層成形システムの積層成形品Pと予熱装置のフィルム加熱部の位置関係を示す図である。
図8】第3の実施形態の積層成形システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
<真空積層システムの装置構成>
本発明の第1の実施形態の積層成形システム11について、図1を参照して説明する。積層成形システム11は、減圧可能なチャンバCを備えた真空積層装置12と、第1の平坦化プレス装置13と、第2の平坦化プレス装置14が連続して配置され、前記真空積層装置12から第1の平坦化プレス装置13へ、第1の平坦化プレス装置13から第2の平坦化プレス装置14へと移送手段であるキャリアフィルムF1,F2を用いて積層成形品Pが移動されるものである。
【0013】
また積層成形システム11は、真空積層装置12の前工程に移送手段のキャリアフィルム送出装置18を備えるとともに第2の平坦化プレス装置14の後工程に移送手段のキャリアフィルム巻取装置19を備えている。更に積層成形システム11は制御装置20を備えている。前記制御装置20は、真空積層装置12、第1の平坦化プレス装置13、第2の平坦化プレス装置14、キャリアフィルム送出装置18、およびキャリアフィルム巻取装置19に接続されていて積層成形システム11全体の制御を行う。なお制御装置20は、積層成形システム11の装置と離隔した位置に設けられたものでもよい。一例としては同じ建屋内においては積層成形システム11の装置部分と制御装置20は通信線で接続されていればどのような距離でもよい。また積層成形システム11の装置と制御装置は、無線通信により接続されるものでもよい。そして他のエリアにある積層成形システム11と制御装置20を少なくとも一部を共用してもよい。また積層成形システム11の製造メーカに制御装置20に少なくとも一部を持たせるようにしてもよい。
【0014】
前工程から順にまずキャリアフィルム送出装置18について説明する。凹凸を有する基板と積層フィルムからなる積層成形品Pの移送装置とフィルムのテンション装置を兼ねるキャリアフィルム送出装置18は、下側の巻出ロール21および従動ロール22を備えている。前記巻出ロール21から巻き出された下キャリアフィルムF1(搬送用フィルム)は従動ロール22の部分で水平状態に向きが変更される。下キャリアフィルムF1が水平状態となった部分に、前工程から重ねられて送られてくる前記積層成形品Pを載置する載置ステージ部23が設けられている。またキャリアフィルム送出装置18は、上側の巻出ロール24および従動ロール25を備えており、前記巻出ロール24から巻き出された上キャリアフィルムF2(搬送用フィルム)は従動ロール25の部分で積層成形品Pの上に重ねられる。これらキャリアフィルムF1,F2に挟まれて積層成形品Pが移送される。そして真空積層装置12、第1の平坦化プレス装置13、第2の平坦化プレス装置14において順番にキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形品Pに積層成形が行われた際に、積層フィルムの部分が溶融して装置部分に付着することを防止する。またキャリアフィルムF1,F2の使用は、特に第1の平坦化プレス装置13と第2の平坦化プレス装置14においては積層成形品(1次積層成形品と2次積層成形品)を加圧する際に一定の緩衝作用が付与されるという利点もある。
【0015】
次にキャリアフィルム送出装置18の後工程に配置される真空積層装置12について説明する。真空積層装置12は、減圧可能なチャンバCと弾性体シート43の加圧面を備えサーボモータ15による駆動力により積層成形品が加圧される。真空積層装置12は、減圧可能なチャンバC内において積層成形品Pを加圧して、1次積層成形品に積層成形するものである。真空積層装置12は、下方に設けられた略矩形のベース盤31と、前記ベース盤31の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤32の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ33を備えている。そして真空積層装置12は、略矩形の可動盤である下盤34がベース盤31と上盤32との間で昇降移動可能となっている。これら真空積層装置12のベース盤31、上盤32、下盤34およびタイバ33の間隔は、減圧可能なチャンバCを設けるために、第1の平坦化プレス装置13,第2の平坦化プレス装置14の上盤や下盤等よりも大きく設けられるケースが多い。また真空積層装置12は、サーボモータ15等の電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤31には加圧機構の駆動手段であるサーボモータ15が取付けられている。
【0016】
また真空積層装置12の加圧機構について、サーボモータ15は位置センサであるロータリエンコーダ35を備えるとともに、サーボアンプ36に接続され、サーボアンプ36は、上記制御装置20に接続されている。サーボモータ15の駆動軸には図示しない減速機を介してボールねじ37が接続されるか、または前記駆動軸自体がボールねじに直接接続されている。一方下盤34の下面にはボールねじ機構のボールねじナット38が固定され、前記ボールねじ37は、ボールねじナット38に挿通されている。更に下盤34とボールねじナット38の間には力検出手段であるロードセル39が取り付られている。より詳細には、ボールねじナット38は、ボールねじ37が上方に移動可能なようにブラケットを介して下盤34に取り付けられるか、または下盤34の下面にボールねじ38が挿入される凹部が設けられている。ブラケットを介する場合は、ブラケットとボールねじナット38の間か、ブラケットと下盤34の間にロードセル39が取り付けられる。なおロードセル39が取り付けられる部分は、プレス工程の加圧力が受けられる部分であれば限定されず、一例としてサーボモータ15の取り付け部分であってもよい。なお力検出手段は、タイバ33に取り付けられるタイバセンサなどでもよい。
【0017】
上記構造により真空積層装置12は、サーボモータ15の作動により下盤34が上盤32に対して昇降されるようになっている。なお真空積層装置12のボールねじ機構は、サーボモータ15の駆動軸に取り付けられたプーリとボールねじ37に取り付けられたプーリの間にベルトが掛け渡されベルトを介して駆動力が伝達されるものでもよい。ベルトを用いたものや、ウォームギアを用いた減速機を用いたもので、サーボモータ15の長手方向がボールねじ37と直列方向に取り付けられないものは、真空積層装置12の高さを低くする上で有利である。真空積層装置12は金属プレスなどと比較すると、下盤34の昇降ストロークは比較的小さく、加圧時間は比較的長いので、サーボモータ15の駆動力の伝達機構に減速機、ベルトなどの変速機構を用いることが望ましい。また減速機を使用した場合とベルトを使用した場合では減速機を使用した場合のほうが騒音、ベルトを使用した場合に発生する粉塵などの点で有利な場合が多い。更には真空積層装置12のボールねじ機構は、ベース盤31にボールねじナットが回転自在に取付られ、ボールねじが昇降するものでもよい。またボールねじ37の部分をカバーで覆うことによりグリースの拡散を防止できクリーンルーム内のクリーン度アップに寄与する。
【0018】
更に真空積層装置12は、トグル機構、クランク機構、クサビ機構などの倍力機構やそれに類する機構を用いたものでもよい。また上記の例では真空積層装置12は、1基のサーボモータ15を用いた加圧機構により加圧成形が行われるが、2基、3基、4基など2基以上の複数のサーボモータ15または2基以上のボールねじ機構を用いた複数の加圧機構が備えられたものであってもよい。サーボモータ15が2基の場合は、加圧ブロック40,41の有効加圧面が長方形の場合、その長辺の平行となる中央線に沿って2基の加圧機構を設けることが望ましい。またサーボモータ15が4基の場合、タイバ33の部分かタイバ33の内側の矩形のベース盤31の対角線に沿ってそれぞれ4基の加圧機構を設けることが望ましい。更にはサーボモータ15以外ではクローズドループ制御可能なリニアモータ等のモータを使用したものでもよい。更に加圧機構は油圧シリンダを用いたものでもよい。そしてまた、真空積層装置12は、上記のような加圧機構を用いて下盤34に対して上盤32が昇降されるものでもよい。
【0019】
上盤32の側面と下盤34の側面の間にはリニアスケール42等の位置センサがサーボモータ15のロータリエンコーダ35とは別に取り付けられている。リニアスケール42は、いずれかの一方の盤にスケール42aが取り付けられ、他方の盤に測定部であるスライダ42bが取り付けられている。上盤32に対する下盤34の位置(距離)は、サーボモータ15のロータリエンコーダ35でも検出できる。しかしボールねじ37とボールねじナット38の間には僅かなバックラッシが存在するし、タイバ33やボールねじ37には熱膨張が発生する。そのためリニアスケール42により直接的に加圧ブロック40,41の間の距離、上盤32に対する下盤34の位置(台盤間の距離)、ベース盤31と下盤34の間の距離のいずれかを測定したほうが望ましい場合も多い。リニアスケール42等の位置センサの分解能としては、一例として0.002mm以下のものが望ましく、更には0.001mm以下であって実用化されている分解能0.0001mmや分解能0.000025mmなど最小の分解能の単位以上のものがより一層望ましい。
【0020】
真空積層装置12に取り付けられるリニアスケール42等の位置センサは1基だけでもよいが、キャリアフィルムF1,F2の進行方向に対して上盤32と下盤34の両側側面に1基ずつ合計2基、または2基ずつ合計4基を取り付けてもよい。そしてキャリアフィルムF1,F2の進行方向に沿って2基の加圧機構が設けられる場合は、キャリアフィルムF1,F2の進行方向と平行になる一側側面において、一方の加圧機構がある位置に対応して1基の位置センサが設けられる。またキャリアフィルムF1,F2の進行方向と平行になる他側側面において他方の加圧機構がある位置に対応してもう1基の位置センサが設けられる。また両側側面に合計4基の位置センサを取付けるとともに4基のサーボモータを設ける場合は、それぞれの位置センサによりサーボモータを制御することにより、上盤32に対する下盤34の平行度を検出し上盤32に対して下盤34が平行になるように制御することができる。または位置センサを設ける位置は加圧ブロック40と加圧ブロック41を接続する位置や、ベース盤31と下盤34を接続する位置でもよい。更に真空積層装置12は、下盤34の位置が機械設計上の下降限界点や上昇限界点を超えないようにする等の目的で図示しないリミットスイッチまたは近接スイッチなどの位置を検出可能なセーフティスイッチを備えることが一般的である。
【0021】
真空積層装置12の上盤32と下盤34の各対向面には図示しない断熱板を介して加圧ブロック40と加圧ブロック41がそれぞれ取付けられている。加圧ブロック40,41の構造はそれぞれほぼ同じであるので、一方の加圧ブロック40について説明する。加圧ブロック40は、鉄等の金属ブロックであり、カートリッジヒータ47等の温度制御手段が内部に設けられるか、表面にラバーヒータ等が設けられている。加圧ブロック40の表面には、耐熱性のゴム膜からなる弾性体シート43が貼り付けられ厚さの薄い金属製プレート44が取り付けられている。上記において弾性体シート43は、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱性ゴムからなり、厚みは0.2mmないし5.0mmである。そして前記弾性体シート43が加圧面を構成する。
【0022】
次に真空積層装置12の減圧可能なチャンバCの構成について説明する。上盤32における加圧ブロック41が取り付けられた部分の周囲の部分にはチャンバCの一部を構成するための上側の外枠部45が下方に向けて取り付けられている。また下盤34の加圧ブロック40が取り付けられた部分の周囲の部分にはチャンバCの一部を構成するための下側の外枠部46が上方に向けて取り付けられている。そして前記外枠部45の当接面と、前記外枠部46の当接面とが当接した際に内部にチャンバCが形成可能となっている。なお少なくとも一方の外枠部45等はバネやゴム等の弾性体を用いることにより高さが変更可能となっている。また少なくとも一方の外枠部46等の当接面にはOリング等のシール部材が取り付けられている。更にチャンバCを形成する部材は、ゴム製のベローズなど別の手段でもよい。更に加圧機構のサーボモータ15の駆動によりチャンバCが構成されるものではなく、チャンバCを構成する部材の作動機構と、積層成形品Pの加圧機構は別の機構からなるものでもよい。真空積層装置12のチャンバCは管路を介して図示しない真空ポンプに接続され、チャンバC内の大気を吸引して真空状態のチャンバCが形成可能となっている。従って真空積層装置12は真空積層装置を構成する。なお本発明において減圧可能な状態のチャンバCの真空度は限定されない。
【0023】
次に前記真空積層装置12の後工程側に直列方向に連続して配設される第1の平坦化プレス装置13について説明する。第1の平坦化プレス装置13は、金属製プレスプレート65の加圧面を備えサーボモータ16による駆動力により積層成形品Pが加圧される。第1の平坦化プレス装置13は、真空積層装置12で加圧成形され凹凸部を有する基板と積層フィルムとからなり積層フィルムの側に凹凸が残った状態の積層成形品P(1次積層成形品)を更に加圧してより平坦な積層成形品P(2次積層成形品)に加圧成形するものである。第1の平坦化プレス装置13は、下方に設けられた略矩形のベース盤51と、前記ベース盤51の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤52の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ53を備えている。そして第1の平坦化プレス装置13は、略矩形の可動盤である下盤54がベース盤51と上盤52との間で昇降移動可能となっている。また第1の平坦化プレス装置13は、サーボモータ16等の電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤51には加圧機構の駆動手段であるサーボモータ16が取付けられている。
【0024】
また第1の平坦化プレス装置13の加圧機構について、サーボモータ16はロータリエンコーダ55を備えるとともに、サーボアンプ56に接続され、サーボアンプ56は、上記制御装置20に接続されている。サーボモータ16の駆動軸には図示しない減速機を介してボールねじ57が接続されるか、または前記駆動軸自体がボールねじ57に直接接続されている。一方下盤54の下面にはボールねじ機構のボールねじナット58が固定され、前記ボールねじ57は、ボールねじナット58に挿通されている。更に下盤54とボールねじナット58の間には力検出手段であるロードセル59が取り付られている。より詳細には、ボールねじナット58は、ボールねじ57が上方に移動可能なようにブラケットを介して下盤54に取り付けられるか、または下盤54の下面にボールねじ58が挿入される凹部が設けられている。ブラケットを介する場合は、ブラケットとボールねじナット58の間か、ブラケットと下盤54の間にロードセル59が取り付けられる。なおロードセル59が取り付けられる部分は、プレス工程の加圧力が受けられる部分であれば限定されず、一例としてサーボモータ16の取り付け部分であってもよい。なお力検出手段は、タイバ53に取り付けられるタイバセンサなどでもよい。
【0025】
上記構造により第1の平坦化プレス装置13は、サーボモータ16の作動により下盤54が上盤52に対して昇降されるようになっている。なお第1の平坦化プレス装置13のボールねじ機構は、サーボモータ16の駆動軸に取り付けられたプーリとボールねじ57に取り付けられたプーリの間にベルトが掛け渡されベルトを介して駆動力が伝達されるものでもよい。ベルトを用いたものやウォームギアを用いた減速機を用いたもので、サーボモータ16の長手方向がボールねじ57と直列方向に取り付けられないものは、第1の平坦化プレス装置13の高さを低くする上で有利である。第1の平坦化プレス装置13は金属プレスなどと比較すると、下盤54の昇降ストロークは比較的小さく、加圧時間は比較的長いので、サーボモータ16の駆動力の伝達機構に減速機、ベルトなどの変速機構を用いることが望ましい。またまた減速機を使用した場合とベルトを使用した場合では減速機を使用した場合のほうが騒音、ベルトを使用した場合に発生する粉塵などの点で有利な場合が多い。更には第1の平坦化プレス装置13のボールねじ機構は、ベース盤51にボールねじナットが回転自在に取付られ、ボールねじが昇降するものでもよい。またボールねじ57の部分をカバーで覆うことによりグリースの拡散を防止できクリーンルーム内のクリーン度アップに寄与する。更には第1の平坦化プレス装置13は、トグル機構、クランク機構、クサビ機構などの倍力機構やそれに類する機構を用いたものでもよい。また上記の例では第1の平坦化プレス装置13は、1基のサーボモータ16を用いた加圧機構により加圧成形が行われるが、2基、3基、4基など2基以上のサーボモータ16または2基以上のボールねじ機構を用いた加圧機構であってもよい。更にはサーボモータ以外ではクローズドループ制御可能なリニアモータ等のモータを使用したものでもよい。更に加圧機構は油圧シリンダを用いたものでもよい。そしてまた、第1の平坦化プレス装置13は、上記のような加圧機構を用いて下盤54に対して上盤52が昇降されるものでもよい。
【0026】
上盤52の側面と下盤54の側面の間には位置センサであるリニアスケール62がサーボモータ16のロータリエンコーダ55とは別に取り付けられている。リニアスケール62は、いずれかの一方の盤にスケール62aが取り付けられ、他方の盤に測定部であるスライダ62bが取り付けられている。上盤52に対する下盤54の位置(距離)は、サーボモータ16のロータリエンコーダ55でも検出できる。しかしボールねじ57とボールねじナット58の間には僅かなバックラッシが存在するし、タイバ53やボールねじ57には熱膨張が発生する。そのためリニアスケール62により直接的に加圧ブロック60,61の間の距離、上盤52に対する下盤54の位置(台盤間の距離)、ベース盤51と下盤54の間の距離のいずれかを測定したほうが望ましい場合も多い。リニアスケール62等の位置センサの分解能としては、一例として0.002mm以下のものが望ましく、更には0.001mm以下であって実用化されている分解能0.0001mmや分解能0.000025mmなど最小の分解能の単位以上のものがより一層望ましい。
【0027】
第1の平坦化プレス装置13に取り付けられるリニアスケール62等の位置センサは1基だけでもよいが、キャリアフィルムF1,F2の進行方向に対して上盤52と下盤54の両側側面に1基ずつ合計2基、または2基ずつ合計4基を取り付けてもよい。そして両側側面に合計4基の位置センサを取付けるとともに4基のサーボモータを設け、それぞれの位置センサによりサーボモータを制御することにより、上盤52に対する下盤54の平行度を検出し上盤52に対して下盤54が平行になるように制御することができる。または位置センサを設ける位置は加圧ブロック60と加圧ブロック61を接続する位置や、ベース盤51と下盤54を接続する位置でもよい。更に第1の平坦化プレス装置13は、下盤34の位置が機械設計上の下降限界点や上昇限界点を超えないようにする等の目的で図示しないリミットスイッチまたは近接スイッチなどの位置を検出可能なセーフティスイッチを備えることが一般的である。
【0028】
第1の平坦化プレス装置13の上盤52と下盤54の各対向面には図示しない断熱板を介して加圧ブロック60,61がそれぞれ取付けられている。加圧ブロック60,61の構造はそれぞれほぼ同じであるので、一方の加圧ブロック60について説明する。加圧ブロック60は、カートリッジヒータ63等の温度制御手段が内部に設けられるか、表面にラバーヒータ等が設けられている。加圧ブロック60の表面にはゴム、樹脂フィルム、繊維シート等の緩衝材64が取り付られている。前記緩衝材64の厚みは、一例として0.05mmないし3.00mmである。そして前記緩衝材64の表面には一例として0.2mmないし3.00mmの板厚の弾性変形可能なステンレス等の材質からなる金属製プレスプレート65が取り付けられている。そして前記金属製プレスプレート65の緩衝材64と接する面の反対側の表面が加圧面となっている。
【0029】
なお第1の平坦化プレス装置13の加圧面を構成する部材は、シリコーンゴムやフッ素ゴムシート等の耐熱性を備えた弾性体シートであってもよい。その場合、弾性体シートの硬度(ショアA硬度)は、これに限定されるものではないが一例として30ないし80、更に好ましくは40ないし70のものが用いられる。また図1においては第1の平坦化プレス装置13は、真空状態とすることが可能なチャンバを備えていないが、真空積層装置12と同様に真空状態にすることが可能なチャンバを備え、真空チャンバ内で加圧成形を行うものでもよい。
【0030】
次に前記第1の平坦化プレス装置13の後工程に直列方向に連続して配設される第2の平坦化プレス装置14について説明する。第2の平坦化プレス装置14は、第1の平坦化プレス装置13と、同じ構造(略同じ構造を含む)、同じ加圧機構(略同じ加圧機構を含む)を備えたプレス装置である。第2の平坦化プレス装置14は、金属製プレスプレート85の加圧面を備えサーボモータ17による駆動力により積層成形品Pが加圧される。第2の平坦化プレス装置14は、第1の平坦化プレス装置13で加圧成形され積層フィルムの側に凹凸が僅かに残っている状態か既に平坦にされた状態の積層成形品P(2次積層成形品)を更に加圧してより許容範囲内の平坦な最終の積層成形品P(3次積層成形品)に加圧成形するものである。第2の平坦化プレス装置14の構成は、基本的には第1の平坦化プレス装置13と同じである。第2の平坦化プレス装置14は、下方に設けられた略矩形のベース盤71と、前記ベース盤71の上方に位置する略矩形の固定盤である上盤72の四隅近傍の間にそれぞれ立設された4本のタイバ73を備えている。そして第2の平坦化プレス装置14は、略矩形の可動盤である下盤74がベース盤71と上盤72との間で昇降移動可能となっている。また第2の平坦化プレス装置14は、サーボモータ17等の電動モータを駆動源とするものであり、ベース盤71には加圧機構の駆動手段であるサーボモータ17が取付けられている。
【0031】
また第2の平坦化プレス装置14の加圧機構について、サーボモータ17はロータリエンコーダ75を備えるとともに、サーボアンプ76に接続され、サーボアンプ76は、上記制御装置20に接続されている。サーボモータ17の駆動軸には図示しない減速機を介してボールねじ77が接続されるか、または前記駆動軸自体がボールねじ77に直接接続されている。一方下盤54の下面にはボールねじ機構のボールねじナット78が固定され、前記ボールねじ77は、ボールねじナット78に挿通されている。更に下盤74とボールねじナット78の間には力検出手段であるロードセル79が取り付られている。より詳細には、ボールねじナット78は、ボールねじ77が上方に移動可能なようにブラケットを介して下盤74に取り付けられるか、または下盤74にボールねじ78が挿入される凹部が設けられている。ブラケットを介する場合は、ブラケットとボールねじナット78の間か、ブラケットと下盤74の間にロードセル79が取り付けられる。なおロードセル79が取り付けられる部分は、プレス工程の加圧力が受けられる部分であれば限定されず、一例としてサーボモータ16の取り付け部分であってもよい。なお力検出手段は、タイバ73に取り付けられるタイバセンサなどでもよい。
【0032】
上記構造により第2の平坦化プレス装置14は、サーボモータ17の作動により下盤74が上盤72に対して昇降されるようになっている。なお第2の平坦化プレス装置14のボールねじ機構は、サーボモータ17の駆動軸に取り付けられたプーリとボールねじ77に取り付けられたプーリの間にベルトが掛け渡されベルトを介して駆動力が伝達されるものでもよい。ベルトを用いたものやウォームギアを用いた減速機を用いたもので、サーボモータ17の長手方向がボールねじ57と直列方向に取り付けられないものは、第2の平坦化プレス装置14の高さを低くする上で有利である。第2の平坦化プレス装置14は金属プレスなどと比較すると、下盤74の昇降ストロークは比較的小さく、加圧時間は比較的長いので、サーボモータ17の駆動力の伝達機構に減速機、ベルトなどの変速機構を用いることが望ましい。またまた減速機を使用した場合とベルトを使用した場合では減速機を使用した場合のほうが騒音、ベルトを使用した場合に発生する粉塵などの点で有利な場合が多い。更には第2の平坦化プレス装置14のボールねじ機構は、ベース盤71にボールねじナットが回転自在に取付られ、ボールねじが昇降するものでもよい。またボールねじ77の部分をカバーで覆うことによりグリースの拡散を防止できクリーンルーム内のクリーン度アップに寄与する。更には第2の平坦化プレス装置14は、トグル機構、クランク機構、クサビ機構などの倍力機構やそれに類する機構を用いたものでもよい。また上記の例では第2の平坦化プレス装置14は、1基のサーボモータ17を用いた加圧機構により加圧成形が行われるが、2基、3基、4基など2基以上のサーボモータ17または2基、3基、4基など2基以上のボールねじ機構を用いた加圧機構であってもよい。更にはサーボモータ以外ではクローズドループ制御可能なリニアモータ等のモータを使用したものでもよい。更に加圧機構は油圧シリンダを用いたものでもよい。そしてまた、第2の平坦化プレス装置14は、上記のような加圧機構を用いて下盤74に対して上盤72が昇降されるものでもよい。
【0033】
上盤72の側面と下盤74の側面の間には位置センサであるリニアスケール82がサーボモータ17のロータリエンコーダ75とは別に取り付けられている。リニアスケール82は、いずれかの一方の盤にスケール82aが取り付けられ、他方の盤に測定部であるスライダ82bが取り付けられている。上盤72に対する下盤74の位置(距離)は、サーボモータ17のロータリエンコーダ75でも検出できる。しかしボールねじ77とボールねじナット78の間には僅かなバックラッシが存在するし、タイバ73やボールねじ77には熱膨張が発生する。そのためリニアスケール82により直接的に加圧ブロック80,81の間の距離、上盤72に対する下盤74の位置(台盤間の距離)、ベース盤71と下盤74の間の距離のいずれかを測定したほうが望ましい場合も多い。リニアスケール82等の位置センサの分解能としては、一例として0.002mm以下のものが望ましく、更には0.001mm以下であって実用化されている分解能0.0001mmや分解能0.000025mmなど最小の分解能の単位以上のものがより一層望ましい。
【0034】
第2の平坦化プレス装置14に取り付けられるリニアスケール82等の位置センサは1基だけでもよいが、キャリアフィルムF1,F2の進行方向に対して上盤72と下盤74の両側側面に1基ずつ合計2基、または2基ずつ合計4基を取り付けてもよい。そして両側側面に合計4基の位置センサを取付けるとともに4基のサーボモータを設ける場合は、それぞれの位置センサによりサーボモータを制御することにより、上盤72に対する下盤74の平行度を検出し上盤72に対して下盤74が平行になるように制御することができる。または位置センサを設ける位置は加圧ブロック80と加圧ブロック81を接続する位置や、ベース盤71と下盤74を接続する位置でもよい。更に第2の平坦化プレス装置14は、下盤74の位置が機械設計上の下降限界点や上昇限界点を超えないようにする等の目的で図示しないリミットスイッチまたは近接スイッチなどの位置を検出可能なセーフティスイッチを備えることが一般的である。
【0035】
第2の平坦化プレス装置14の上盤72と下盤74の各対向面には図示しない断熱板を介して加圧ブロック80,81がそれぞれ取付けられている。加圧ブロック80,81の構造はそれぞれほぼ同じであるので、一方の加圧ブロック80について説明する。加圧ブロック80は、カートリッジヒータ83等の温度制御手段が内部に設けられるか、表面にラバーヒータ等が設けられている。加圧ブロック80の表面にはゴム、樹脂フィルム、繊維シート等の緩衝材84が取り付られている。前記緩衝材84の厚みは、一例として0.05mmないし3.00mmである。そして前記緩衝材84の表面には一例として0.2mmないし3.00mmの板厚の弾性変形可能なステンレス等の材質からなる金属製プレスプレート85が取り付けられている。そして前記金属製プレスプレート85の緩衝材84と接する面の反対側の表面が加圧面となっている。
【0036】
なお第2の平坦化プレス装置14の加圧面を構成する部材は、シリコーンゴムやフッ素ゴムシート等の耐熱性を備えた弾性体シートであってもよい。その場合、弾性体シートの硬度(ショアA硬度)は、これに限定されるものではないが一例として30ないし80、更に好ましくは40ないし70のものが用いられる。また図1においては第2の平坦化プレス装置14は、真空状態とすることが可能なチャンバを備えていないが、真空積層装置12と同様に真空状態にすることが可能なチャンバを備え、真空チャンバ内で加圧成形を行うものでもよい。
【0037】
次に第2の平坦化プレス装置14の後工程に設けられるキャリアフィルム巻取装置19について説明する。キャリアフィルム巻取装置19は、キャリアフィルムF1,F2の移送装置とテンション装置を兼ねたものである。キャリアフィルム巻取装置19は、下側の巻取ロール91および従動ロール92を備えており、前記巻取ロール91により下キャリアフィルムF1が巻き取られる。またキャリアフィルム巻取装置19は、上側の巻取ロール93および従動ロール94を備えており、前記従動ロール94の部分で最終成形品である積層成形品Pから上キャリアフィルムF2が剥離され、上キャリアフィルムF2は前記上側の巻取ロール93に巻取られる。そして下キャリアフィルムF1のみが水平状態で送られる部分に積層成形品Pの取出ステージ部95が設けられている。なおキャリアフィルムF1,F2の移送装置としては、キャリアフィルムF1,F2の両側を把持して後工程に向けて引っ張る移載装置(いわゆるチャック装置)を設けてもよい。
【0038】
なお本発明は、第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置が連続して配置されるものであれば、第2の平坦化プレス装置の後工程に第3の平坦化プレス装置や冷却用のプレス装置が設けられたものでもよい。その場合、第3の平坦化プレス装置等も第1の平坦化プレス装置と、第2の平坦化プレス装置と略同一の成形時間でプレス工程が行われる。また各装置間の移送手段は、キャリアフィルム送出装置18およびキャリアフィルム巻取装置19によりキャリアフィルムF1,F2に載置された積層成形品Pを移送するものに限定されず、移送用ロボットやベルトコンベアなどを使用したものでもよい。
【0039】
次に積層成形システム11の制御装置20のブロック図について図2を参照して説明する。制御装置20は、統合制御部101、真空積層装置制御部102、第1の平坦化プレス装置制御部103,第2の平坦化プレス装置制御部104を備えている。なおここでは前記機能別のブロックとして判り易く説明するが、統合制御部101の機能は、各装置12,13,14に設けられた各装置の制御部102,103,104に分散して備えられていてもよいし、各装置の制御部の機能は、各装置12,13,14に設けられておらず、統合制御部101ともに一箇所に設けられていてもよい。
【0040】
統合制御部101は、各装置12,13,14の他、キャリアフィルム送出装置18とキャリアフィルム巻取装置19からなる搬送機構を含む積層成形システム11全体のシーケンス制御を司るシーケンス制御部105が設けられている。シーケンス制御部105には図示しないタイマが備えられ、タイマによって計時されてシーケンス制御が行われる。またシーケンス制御部105に接続されて記憶装置106が設けられている。記憶装置106は、各種の成形条件の保存、成形時の実測データの保存がされている。本発明との関連では、前工程のプレス装置の少なくとも加圧終了時に積層成形品Pの板厚を位置センサにより測定して記憶装置106に記憶し後工程のプレス装置の制御に用いるために設けられている。更に統合制御部101には設定表示装置107が設けられている。
【0041】
真空積層装置制御部102、第1の平坦化プレス装置制御部103、第2の平坦化プレス装置制御部104の内容はほぼ共通するので、第1の平坦化プレス装置13を制御する第1の平坦化プレス装置制御部103について説明する。第1の平坦化プレス装置制御部103には、シーケンス制御部108が設けられ、シーケンス制御部108は、プレス装置の熱膨張に対応して制御値に補正を行うための熱膨張補正部109に接続されている。更にシーケンス制御部108は、力指令信号出力部110と位置指令信号出力部111に接続されている。また力指令信号出力部110は、力・位置比較切換部112に接続されるが、その接続線の途中に加算器113が設けられ、加算器113はロードセル59に接続されており力指令信号に加減算がなされる。一方、位置指令信号出力部111も力・位置比較切換部112に接続されるが、その接続線の途中に加算器114が設けられ、加算器114はリニアスケール62に接続されており位置指令信号に加減算がなされる。そして力・位置比較切換部112は、指令信号生成部115に接続され、指令信号生成部115において、サーボアンプ56に送られる指令信号が生成される。
【0042】
また第1の平坦化プレス装置13は、駆動手段であるサーボモータ16とロータリエンコーダ55を備えている。そしてサーボモータ16はサーボアンプ56に接続され、サーボモータ16を駆動する電力がサーボアンプ56から供給される。またロータリエンコーダ55もまたサーボアンプ56に接続され、サーボモータ16の回転角度(パルス数)がロータリエンコーダ55により検出されてサーボアンプ56へ送られ、サーボアンプ56内の図示しない加算器にフィードバックされ、位置指令パルスと照合されるようになっている。なお真空積層装置12の制御ブロックは、第1の平坦化プレス装置13の制御ブロック以外にチャンバCを減圧するための機能を備えている。
【0043】
また真空積層装置12にはサーボモータ15等の機構とともに真空ポンプ48が設けられている。そして真空積層装置制御部102には真空ポンプ制御部116が設けられ、前記真空ポンプ制御部116により真空ポンプ48の回転数や回転のタイミング等の制御が行われる。或いは真空ポンプ制御部116によりチャンバC内の真空度の制御も行われる。
【0044】
次に第1の実施形態の積層成形システム11を用いた、積層成形品Pの積層成形方法について従来技術と比較しながら図3ないし図5を参照して説明する。近年ではビルドアップ基板を含む回路基板や半導体ウエハの導電部の細密化が進行しており、それに対して絶縁フィルムには誘電損失率を低下させるためシリカなどの無機質材料の比率(重量%または体積%)の高いものが増加している。しかしながら前記シリカなどの無機質材料の比率の高い絶縁フィルムは、樹脂の比率の高い絶縁フィルムよりも溶融状態の際の流動性が劣るか、または軟化態の際の変形性が劣っている。そのため従来の特許文献1のような1台しか平坦化プレスを備えない積層成形システムにおいても平坦化プレス装置における平坦化加圧工程の加圧時間が長く必要となってきている。具体的には平坦化プレス装置の平坦化加圧工程の加圧時間は、最低でも40秒以上の加圧時間が必要であり、望ましくは50秒以上の加圧時間が必要となるものが多い。
【0045】
そこで前記の平坦化プレスの加圧時間を最適に第1の平坦化プレス装置13と第2の平坦化プレス装置14に分配し、積層成形システム11の各装置の成形時間をなるべく平準化し、全体の成形サイクル時間を短縮することが望ましい。具体的には第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間の長さと前記第2の平坦化加圧工程の時間の長さは同一か或いはいずれか一方の平坦化加圧工程の時間の長さが他方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%以上の範囲に設定することが望ましい。そのことにより前記第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間の長さと前記第2の平坦化加圧工程の時間の長さは同一か或いはいずれか一方の平坦化加圧工程の時間を真空積層装置12の埋め込み加圧工程の時間をオーバーラップさせて全体の成形サイクル時間を短縮することが可能となる。
【0046】
また前記第1の平坦化加圧工程の時間の長さと、前記第2の平坦化加圧工程の時間の長さは、それぞれ20秒ないし40秒とすることが望ましく、更には25秒ないし35秒とすることがより一層望ましい。また前記真空積層装置12の埋め込み加圧工程の時間の長さは、12秒ないし40秒とすることが望ましく、更には15秒ないし30秒とすることがより一層望ましい。またチャンバC内を減圧しつつ積層成形品Pに熱を付与する待機工程の時間はチャンバC内が真空積層成形に最適な真空度と積層成形品Pの温度になるのであれば、なるべく短いほうが好ましい。そして前記待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間は、20秒ないし48秒の範囲に設定することが好ましく、上限についてはなるべき短いほうが好ましい。具体的には前記待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間が48秒であるのに対して、第1の平坦化加圧工程の時間の長さと前記第2の平坦化加圧工程の時間の長さのうち短い方の時間が30秒であれば、前者の時間は後者の160%となる。また待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間が45秒であるのに対して、前記短い方の平坦化加圧工程の時間が30秒であれば、前者の時間は後者の160%となる。これらの数値は160%でも従来技術よりも改善になるが、150%以下がより好ましく、140%以下がより一層好ましく、更には130%以下が更に一層好ましい。そして理想的には、真空積層装置12の前記待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間と、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間の長さと、第2の平坦化プレス装置14の第1の平坦化加圧工程の時間の長さは、同一か略同一であることが成形サイクル時間を短縮する上で好ましい。この点について時間差で言うと、待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間の方が前記短い方の平坦化加圧工程の時間よりも長い場合、18秒以内の範囲であればよく、時間差は例えば15秒差以内や、より一層望ましくは10秒以内など小さい方がよい。また待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間が前記短い方の平坦化加圧工程の時間よりも長い場合、4秒以内が実現可能な範囲となる。なお前記において、真空積層装置12の埋め込み加圧工程の時間は、真空化あれたチャンバC内で加圧のために弾性体シート43からなる加圧面が作動開始した時点からチャンバCの真空開放が開始されるまでの時間を指す。また平坦化加圧工程の加圧時間は、第1の平坦化プレス装置13の加圧面である金属製プレスプレート65や、第2の平坦化プレス装置14の加圧面である金属製プレスプレート85がキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形品Pに当接された時点から離型された時点までの時間を指し、型閉や型開に要した時間は加えていない。
【0047】
連続成形時の積層成形システム11では、制御装置20によるシーケンス制御により、真空積層装置12、第1の平坦化プレス装置13、第2の平坦化プレス装置14において同時に並行してバッチ処理的に積層成形が行われる。しかしここでは1ロット分の積層成形品Pの成形順序に沿って説明する。
【0048】
第1の実施形態において積層成形品Pの被積層材は、基板表面に接着された銅箔部分の凸部と銅箔が無い部分の凹部からなる凹凸部を有するビルドアップ用の回路基板である。銅箔の厚み(基板部分に対する高さ)はこれに限定されないが数umから数十um程度であって殆どの場合0.1mm以下である。前記回路基板の上下にそれぞれ積層フィルムが重ねられてビルドアップ成形用の積層成形物が構成される。また積層成形品Pの積層フィルムは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする層間絶縁フィルムであり、一例として無機質材であるSiOが35ないし75重量%含有され、積層フィルムが溶融状態となった場合の流動性が樹脂のみのケースよりも低くなっている。前記積層フィルムは前記回路基板の上側と下側の少なくとも一方に重ねられるが、第1の実施形態では両面側に重ねられている。前記積層成形品Pは、前工程から送られてきて、キャリアフィルム送出装置18の載置ステージ部23に載置される。なお図1では積層成形品Pは1個が記載されているが、同時に複数個数の積層成形品Pが載置ステージ部23に載置され、積層成形されるものでもよい。
【0049】
そして次に積層成形品移送工程が開始されると、載置ステージ部23に載置された前記積層成形品Pは、巻取ロール91,93の回転駆動ともに上下キャリアフィルムF1,F2とともに移動され、開放状態の真空積層装置12のチャンバC内に送られ位置決めされる。この積層成形品移送工程の際の上下キャリアフィルムF1,F2による積層成形品Pの移送時間は、一例として3秒であるが成形サイクル時間短縮のためにはなるべく早いほうが好ましいことは言うまでも無く、1秒ないし10秒の範囲で、キャリアフィルムF1,F2の移動が行われる。積層成形品P全体がキャリアフィルムF1,F2に対して位置ずれを起こしやすいものや、移動時に絶縁フィルムと基板の関係がずれやすいものなどは、比較的時間をかけてキャリアフィルムF1,F2を移動させるようにしてもよい。なお積層成形品移送工程では、後述する真空積層装置12から第1の平坦化プレス装置13への積層成形品Pの移送、第1の平坦化プレス装置13から第2の平坦化プレス装置14への積層成形品Pの移送、第2の平坦化プレス装置14から後工程の取出ステージ部95への積層成形品Pの移送も同じキャリアフィルムF1,F2の移動により行われる。そのため各装置間の積層成形品Pの移送時間は、載置ステージ部23から真空積層装置12への積層成形品Pの移動時間と同じである。
【0050】
前記真空積層装置12による成形工程は、少なくともチャンバCを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバ内を減圧しつつ積層成形品Pに熱を付与する待機工程と、加圧部材が作動開始されて積層成形品に加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とからなり、これらの工程が順に行われる。具体的には、真空積層装置12のチャンバC内に積層成形品Pが送られ成形位置に位置決めされると、最初にチャンバ形成工程が行われる。チャンバ形成工程では、加圧機構のサーボモータ15の駆動により下盤34が上昇させ、外枠部45の当接面と外枠部46の当接面がキャリアフィルムF1,F2を介して当接させてチャンバCが形成される。この際のチャンバ形成工程の時間は、図3に示されるように一例として2秒である。チャンバ形成工程の時間は、成形サイクル時間短縮のためにはなるべく早いほうが好ましいことは言うまでも無く、0.5秒ないし4秒の範囲でチャンバ形成が行われる。
【0051】
チャンバCが形成されると、一旦サーボモータ15は停止制御されて下盤34は停止され、次に待機工程に移行する。待機工程では、真空ポンプ48によりチャンバC内の真空化が行われ、予め設定された真空度まで減圧が行われる。この際に最初から真空ポンプ48の回転数を高回転とするとチャンバC内で急激な気流の変化が発生し、キャリアフィルムF1,F2に挟まれた積層成形品Pが位置ずれを起こしてしまう場合がある。そのため真空ポンプ48の回転数は、段階的または連続的に低回転から高回転に移行させていくことも望ましい。
【0052】
また待機工程では、チャンバCを所定の真空度まで減圧することと並行して積層成形品Pの成形前の予熱が行われる。真空積層装置12の加圧ブロック40,41の温度は、積層成形品Pの積層フィルムの材質によって異なるが、50℃ないし200℃、より好ましくは80℃ないし150℃に温度制御されている。真空積層装置12のチャンバC内に位置決めされた際の積層成形品PはキャリアフィルムF1,F2に挟まれてチャンバCの上下方向における中間位置にあり、まだ加圧ブロック40,41とは前記キャリアフィルムF1,F2を介しては当接していない。この状態で、加圧ブロック40,41から積層成形品Pに輻射熱が送られ、積層成形品Pの回路基板と積層フィルムが加熱される。そして積層フィルムは、上記したようにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とするケースが多いが、保管されていた温度から70ないし120℃程度まで昇温して加圧を開始する前に樹脂が軟化するか溶融する状態にしておくことが望ましい。
【0053】
待機工程では単に所定の真空度までチャンバC内を減圧するための時間よりも、積層成形品Pの回路基板と樹脂フィルムの間の空気を完全に脱気するとともに積層成形品Pを加熱して加圧開始できる状態とするまでの時間のほうが長く必要となるケースが多く、積層成形品Pの積層フィルムの種類によっても待機工程の時間は相違する。また後述する第1の平坦化プレス装置13や第2の平坦化プレス装置14の平坦化加圧工程の加圧時間によっても前記待機時間は左右される場合がある。即ち第1の平坦化プレス装置13や第2の平坦化プレス装置14の平坦化加圧工程のプレス時間が相対的に短い場合は、前記待機時間も出来る限り短くする必要があり、平坦化加圧工程のプレス時間が相対的に長い場合は、真空積層装置12の待機工程の時間は長く取れる場合がある。具体的に待機工程の時間は、図3図5に示されるように一例として15秒であるが、好ましくは8秒ないし25秒の範囲で設定される。待機工程の時間は後述する予熱装置が無いものでも25秒以下が望ましく、20秒以下がより一層望ましく、15秒以下が更に一層望ましく、10秒以下とできることが最も望ましい。
【0054】
真空積層装置12では待機工程が終了すると次に埋め込み加圧工程を開始する。埋め込み加圧工程においてはサーボモータ15を駆動させることにより更に下盤34が上昇されると外枠部45は収縮され、積層成形品Pの上面が上盤32に固定された加圧ブロック41の弾性体シート43からなる加圧面とキャリアフィルムF2を介して当接する。そして埋め込み加圧工程では、ロードセル39の値を検出してサーボモータ15を駆動して力制御によるクローズドループ制御が行われる。より詳しくは力指令信号出力部110から送られる力指令信号に対してロードセル39の値が加算器113で加減算され、力・位置比較切換部112を介して指令信号生成部115で指令信号とされ、サーボアンプ56に送信される。この際の加圧力(積層成形品に加えられる面積当たりの圧力(面圧))は一例として0.3MPaないし3.0MPaである。サーボモータ15の制御上は力制御となるが、表示画面等では圧力(面圧)としたほうが判り易い。そして加圧力が設定した所定の成形圧力に到達したことがロードセル39により検出されたら昇圧完了となり、所定の圧力を維持するようにクローズドループ制御がなされる。
【0055】
またこの際の真空積層装置12の加圧ブロック40,41の温度は、上記したように50℃ないし200℃、より好ましくは80℃ないし150℃に温度制御される。真空積層装置12では、上下両側の加圧面は上記した硬度と厚みを備えた弾性体シート43となっているので、基板の凸部の部分だけが強く押されることは抑止され、基板の凹部に積層フィルムが埋め込まれる形で基板と積層フィルムの接着が行われ、積層成形品P(1次積層成形品)が積層成形される。しかし真空積層装置12により積層成形された積層成形品P(1次積層成形品)の積層フィルムの表面はまだ基板の凹凸部の形状に倣って凹凸が残った状態となっている。埋め込み加圧工程の時間は、積層成形品Pの積層フィルムの材質により異なり、一例として20秒である。しかし埋め込み加圧工程の時間は望ましくは10秒ないし40秒、より一層望ましくは15秒ないし35秒の範囲で設定される。そして前記待機工程と前記埋め込み加圧工程を加えた時間は、一例として20秒ないし48秒に設定される。ただし前記時間は短いほうが好ましく45秒、またはより好ましくは40秒、更に好ましくは35秒に設定できればなおよい。また待機時間も短いほうが好ましいが、積層成形品Pの樹脂の種類等によっても時間短縮化には制限を受ける。
【0056】
なお埋め込み加圧工程にサーボモータ15の作動開始からキャリアフィルムF1,F2を介して加圧ブロック40,41が当接するまでの時間を含めているのは、極めて短い時間であることにもよるし、実際にどの時点でキャリアフィルムF1,F2を介して加圧ブロック40,41が当接したか確認が難しい場合があるからである。また埋め込み加圧工程の終了時にまだ弾性体シート43の加圧面と積層成形品Pが当接している場合もあるので、チャンバCを大気開放するまでの時間が埋め込み加圧工程の時間とする。例外的には大気開放されるまで、サーボモータ15の駆動により積層成形品Pへの加圧を継続または積層成形品Pと弾性体シート43がまだ当接されて離型されていない場合も想定されるが、その場合でも真空状態で加圧している時間を埋め込み加圧工程の時間と定義し、大気開放しながら加圧または当接を保っている時間は、次の真空チャンバ開放工程の時間に含めるものとする。
【0057】
埋め込み加圧工程が終了すると、次に真空チャンバ開放工程に移行する。真空チャンバ開放工程では、最初にチャンバC内を大気圧に戻し、次にサーボモータ15を更に駆動させて下盤を移動させてチャンバを開放し、積層成形品Pを次の第1の平坦化プレス装置13に送ることができるように下盤34と加圧ブロック40を移動させる。第1の実施径形態では、真空チャンバ開放工程の時間は3秒であるが、望ましくは1・5秒ないし8秒の範囲で真空チャンバ開放工程の時間が設定される。そして真空積層装置12全体の所要時間は図5に示されるように40秒となっており、その範囲は21秒ないし58秒となっている。
【0058】
真空積層装置12の真空チャンバ開放工程が終了すると、再び積層成形品移送工程に移行する。キャリアフィルムF1,F2は連続したものであり、積層成形品移送工程に要する時間は、いずれの装置間でも同じである。またキャリアフィルムF1,F2の送り量も同じである。従って各装置は前記キャリアフィルムF1,F2の送り量に一致させて等間隔に配設されている。積層成形品移送工程の時間は、一例として3秒であるが、1秒ないし10秒となっている。そして前記時間をかけてキャリアフィルムF1,F2により積層成形品Pが第1の平坦化プレス装置13の成形位置に移動され停止される。
【0059】
第1の平坦化プレス装置13による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第1の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、これらの工程が順に行われる。具体的には第1の平坦化プレス装置13の可動盤である下盤54と加圧ブロック60が上昇して型閉工程が開始される。型閉工程は、下盤54側の加圧ブロック60の表面の金属製プレスプレート65が下キャリアフィルムF1を介して積層成形品Pに当接し、更に積層成形品P等を押し上げて、積層成形品Pが上キャリアフィルムF2を介して上盤32側の加圧ブロック61の表面の金属製プレスプレート65に当接されるまでの間行われる。型閉工程に要する時間は一例として2秒であり、なるべく短い方が望ましいが、0.5秒ないし4秒の範囲内で行われる。
【0060】
型閉工程が終了すると第1の平坦化プレス装置13による第1の平坦化加圧工程が開始される。第1の平坦化プレス装置13の加圧ブロック60,61は、それぞれ50℃ないし200℃、より好ましくは80℃ないし150℃に加熱されている。そしてサーボモータ16が制御され積層成形品Pに対する加圧力(面圧)が0.3MPaないし3.0MPa、積層成形品Pの種類によっても相違するがより好ましくは0.5MPaないし1.5MPaとなるようにクローズドループ制御による加圧制御が行われる。なお第1の平坦化プレス装置13による第1の平坦化加圧工程の開始時からの所定の時間は上記のように加圧力の制御を行い、その後終了時までは位置制御(積層成形品Pの厚み制御)を行うように制御方式を途中で切り替えてもよい。いずれにしても第1の平坦化加圧工程では、真空積層装置12の埋め込み加圧工程では完全に平坦にできなかった積層成形品Pの表面の凹凸をより一層平坦に近づけるように加圧を行う。
【0061】
第1の実施形態における第1の平坦化加圧工程の時間は、一例として36秒であるが、望ましくは20秒ないし50秒、より一層望ましくは25秒ないし40秒である。第1の平坦化加圧工程が終了するとサーボモータ16が駆動され、下盤54等が待機位置で停止するまで下降される型開工程が行われる。型開工程に要する時間は一例として2秒であり、なるべく短い方が望ましいが、0.5秒ないし4秒の範囲内で行われる。図5に示されるように第1の平坦化プレス装置13全体の所要時間は40秒となっており、その範囲としては21秒ないし58秒となっている。型開工程が終了すると、第1の平坦化加圧工程の終了した積層成形品Pは、第1の平坦化プレス装置13の成形位置から第2の平坦化プレス装置14の成形位置に移送される。この際の積層成形品移送工程の時間もまた、一例として3秒であるが、1秒ないし10秒の範囲で行われる。なお第1の平坦化プレス装置の成形工程は前記以外に型開状態で待機する待機工程などを有するものでもよい。
【0062】
次の第2の平坦化プレス装置14による成形工程は、少なくとも型閉工程と、第2の平坦化加圧工程と、型閉工程とからなり、これらの工程が順に行われる。具体的には第2の平坦化プレス装置14においては、サーボモータ17による位置制御(または速度制御)により積層成形品Pに対する板厚のコントロールが行われる。そして第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程では完全に平坦にできなかった積層成形品Pの表面のゆるやかな凹凸を所望の平坦度になるように加圧制御が行われる。第2の平坦化プレス装置14の加圧ブロック80,81は、それぞれ50℃ないし200℃、より好ましくは80℃ないし150℃に加熱されている。または第1の平坦化プレス装置13の加圧ブロック60,61の温度よりも第2の平坦化プレス装置14の加圧ブロック81,81の温度を低く(一例として40℃以内の範囲で低く)してもよい。
【0063】
第2の平坦化プレス装置14における所要時間の長さは、第1の平坦化プレス装置13の所要時間の長さと略同じである。即ち型閉工程および型開工程の時間は、それぞれ一例として2秒であり、なるべく短い方が望ましいが、0.5秒ないし4秒の範囲内で行われる。また第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程の時間も一例として36秒であるが、望ましくは20秒ないし50秒、より一層望ましくは25秒ないし40秒の範囲内で行われる。従って図5に示されるように第2の平坦化プレス装置14全体の所要時間は40秒となっており、その範囲としては21秒ないし58秒となっている。また第1の平坦化加工工程の時間と第2の平坦化加工工程の時間は同じか略同一が望ましい。しかし第1の平坦化プレス装置13と第2の平坦化プレス装置14で加圧面の態様や加圧制御方式が異なっていて同じ加圧時間とできない場合もあるが、短い方の平坦化プレス装置の加圧時間は長い方の平坦化プレス装置の加圧時間の80%以上とすることが望ましい。また短い方の平坦化プレス装置の加圧時間は、20秒ないし40秒とすることが望ましい。この短い方の平坦化プレス装置の加圧時間は、真空積層装置12の待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の長さの80%ないし160%に相当する。
【0064】
いずれにしても第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程と第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程のプレス時間を略同一(略同一とは1秒以内の誤差を含む)にしておくことが積層成形システム11全体の成形サイクル時間短縮のために有利である。即ち特許文献1のように従来の平坦化プレス装置が1台の積層成形システムでは、図4に示されるように平坦化プレス装置での加圧時間が60秒となっており、成形サイクル時間が長くなる一因となっていた。そして前工程の真空積層装置もまた60秒となる。ここにおいてチャンバ形成工程2秒、待機工程25秒、埋め込み加圧工程30秒、真空チャンバ開放工程3秒程度と仮定するが、実際には埋め込み加圧工程20秒、待機工程15秒まで短縮できたとすると、特許文献1の真空積層装置においては20秒の短縮可能時間が存在することになる。それに対して第1の実施形態では、平坦化プレス装置を2台とし、必要な加圧時間をそれぞれ2分割することにより、積層成形システム全体の成形サイクル時間の短縮を実現できる。
【0065】
但し第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間の長さと前記第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程の時間の長さは略同一には限定されず、いずれか一方の平坦化加圧工程の時間の長さが他方の平坦化加圧工程の時間の長さの望ましくは80%以上、より一層望ましくは90%、更に一層望ましくは95%以上の範囲に設定されたものでもよい。例えば第1の平坦化プレス装置13にチャンバを設け、チャンバ内を真空化して成形を行う場合は、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間のほうが第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程の時間より短くなる場合もある。また第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程で所望の平坦度が実現され、早く積層成形品Pの温度を低下させたい場合などは、先に第2の平坦化プレス装置14を型開させて待機工程を設けることにより第2の平坦化加圧工程の時間のほうが第1の平坦化加圧工程の時間より短くなる場合もある。
【0066】
また前記真空積層装置12の埋め込み加圧工程の時間は、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程と第2の平坦化プレス装置14の第2の平坦化加圧工程とのオーバーラップしている。ここにおいてオーバーラップとは双方の工程の時間の過半の時間が重なっていればよく、望ましくは70%以上、より一層望ましくは80%以上、更に一層望ましくは完全に重なっていることが好ましい。従っていずれか一方の工程のみで加圧が行われているものもオーバーラップに含まれる。第1の実施形態の一例では、前記埋め込み加圧工程の時間は20秒であるが、埋め込み加圧工程の時間は望ましくは10秒ないし40秒、より一層望ましくは15秒ないし35秒の範囲で設定される。
【0067】
そして第2の平坦化プレス装置14による型開工程が終了すると、キャリアフィルム巻取装置19により積層成形品Pは、後工程の取出ステージ部95(次のステージ)に搬送される。この際の積層成形品移送工程の時間もまた、一例として4秒であるが、1秒ないし10秒の範囲で行われる。
【0068】
従って図5に示されるように、第1の実施形態の積層成形システム11の成形方法では、1ロットの積層成形品Pを成形するために必要な成形サイクル時間は、各装置の所要時間プラス1回分の積層成形品移送工程の時間であり、一例として44秒である。一方積層成形品移送の時間を同じだと仮定した場合における特許文献1の成形サイクル時間は63秒である。従って第1の実施形態の積層成形システム11の成形サイクル時間は、特許文献1の成形サイクル時間の69.8%(以下四捨五入)となり、第1の実施形態の積層成形システム11の生産効率が大幅に改善されることが判る。また第1の実施形態の積層成形システム11の成形方法の1ロットあたりの積層成形品Pを成形するための時間(載置ステージ部23をスタートしてから取出ステージ部95に停止するまで合計所要時間は、一例として129秒である。一方積層成形品移送の時間を同じだと仮定した場合における特許文献2の合計所要時間は201秒である。従って第1の実施形態の積層成形システム11の合計所要時間は、特許文献2の合計所要時間の64.1%(以下四捨五入)となる。また1時間当たりの成形回数は、第1の実施形態が83回(小数点以下切り捨て)であり、特許文献1は57回(小数点以下切り捨て)であるので、第1の実施形態の成形回数は特許文献1の成形回数の1.5倍(以下四捨五入)となる。従って第1の実施形態の積層成形システム11の生産効率が大幅に改善されることが判る。
【0069】
また上記の制御は全て制御装置2のうち主に統合制御部101からシーケンス制御により行われる。即ち制御装置20は、第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程を少なくとも前記埋め込み加圧工程とを過半の時間オーバーラップするように制御し、前記第1の平坦化加圧工程の時間の長さと前記第2の平坦化加圧工程の時間の長さが同一か或いはいずれか一方の平坦化加圧工程の時間の長さが他方の平坦化加圧工程の時間の長さの70%以上となるように制御し、前記埋め込み加圧工程の時間の長さは、前記第1の平坦化加圧工程と前記第2の平坦化加圧工程のうち時間の長い方の平坦化加圧工程の時間の長さの50%ないし100%となるように制御する。
【0070】
次に図6に示される第2の実施形態の積層成形システム201について、図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略し、図1と異なる部分についてのみ図6を参照して説明する。図6に示される積層成形システム201は、真空積層装置12の前工程側、即ち、キャリアフィルム送出装置18と真空積層装置12の間に予熱装置202が設けられている。予熱装置202は、真空積層装置12に供給する積層成形品Pを予め加熱し、真空積層装置12における積層成形品Pへの予熱時間(待機工程の時間)を短縮するためのものである。
【0071】
予熱装置202は、キャリアフィルムF1,F2よりも上方に、ヒータ等の加熱手段を備えた加熱板203が下面に取り付けられた上側チャンバ部204が配設されている。一方キャリアフィルムF1,F2よりも下方に、ヒータ等の加熱手段を備えた加熱板205が上面に取り付けられた下側チャンバ部206が備えられている。相対向する上側チャンバ部204に対して下側チャンバ部206は、昇降機構207により昇降されるようになっている。そして前記昇降機構207の作動により上側チャンバ部204に対して下側チャンバ部206が上昇して形成されたチャンバ208の内部が真空化できるように、図示しない真空ポンプから接続される管路がチャンバ208に接続されている。
【0072】
また図6および図7に示されるように下側チャンバ部206には積層成形品Pを平面視した場合、積層成形品Pの回路基板P1の外周よりも外側の外周全体を囲む形でフィルム加熱部209が形成されている。フィルム加熱部209は図示しないヒータ等により特にその先端部210が積層成形品Pの積層フィルムP2が溶融状態となる温度よりも高い温度に昇温されるようになっている。そして前記フィルム加熱部209は、下側チャンバ部206の上昇とともに上側チャンバ部204の加熱板203の下面に当接されるようになっている。または下側チャンバ部206に対してフィルム加熱部209のみが昇降されるものでもよく、フィルム加熱部209の機構は限定されない。
【0073】
次に予熱装置202を備えた第2の実施形態の積層成形システム201による積層成形方法について記載する。キャリアフィルム移動工程で載置ステージ部23に載置された積層成形品Pは、キャリアフィルムF1,F2の1ピッチ分の移動により予熱装置202に送り込まれる。第2の実施形態では積層成形品Pの積層フィルムP2は外周部分P2a同士を接着するために回路基板P1に対する大きさが第1の実施形態よりもやや大きくなっている。このことにより積層フィルムP2同士を接着した際の熱の影響が回路基板P1と対向する積層フィルムP2に及びにくくなっている。積層成形品移送工程の時間は第1の実施形態と同じである。予熱装置202では、昇降機構207が作動して、一例として2秒(または1秒ないし3秒)をかけてチャンバ208の閉鎖を行う。チャンバ208が閉鎖された時点では上側の加熱板203および下側の加熱板205は上下のキャリアフィルムF1,F2を介して積層成形品Pに当接していない。
【0074】
チャンバ208が形成されると予熱工程が開始され、図示しない真空ポンプによりチャンバ208内の真空化が行われ、同時に積層成形品Pの回路基板P1と積層フィルムP2の間も吸引される。また前記チャンバ208内の真空化と並行して加熱板203,205からの輻射熱により積層成形品Pが予熱される。積層成形品Pの温度は、積層フィルムP2が完全に溶融状態になっていないが軟化状態となる温度まで昇温しておくことが好ましい。エポキシ樹脂を含有する市販の絶縁フィルムを積層フィルムに用いる場合、真空積層装置12の埋め込み加圧工程において推奨される成形温度が100℃とすると、望ましくは60℃ないし95℃、より一層望ましくは80℃ないし90℃まで昇温させることが好ましい。即ち予熱装置202の加熱板203,205の温度は、真空積層装置12の加圧ブロック40,41の温度よりも望ましくは30℃ないし35度、より一層望ましくは20℃ないし10℃低温に制御されていることが好ましい。
【0075】
この予熱工程の時間は一例として28秒であるが、10秒ないし34秒の範囲で設定される。そして予熱工程が終了すると更にフィルム加熱部209を上昇させ、フィルム加熱部209の先端部210によりキャリアフィルムF1を介して回路基板P1の上下に重ね慣れた2枚の積層フィルムP2の回路基板P1よりも外周部分P2a(図7においてハッチングがされた部分)を加熱板203に向けて一例として5秒、押圧する。このことにより上下の積層フィルムP2は完全に溶着されて内部の回路基板の部分は、大気圧に戻しても真空状態が保たれるようになる。なお前記の積層フィルムP2を溶融させ接着する時間は予熱工程の時間に含まれる。そして一例として4秒、望ましくは3秒ないし5秒かけてチャンバ208を大気圧に戻し、昇降機構207の作動により下側チャンバ部206を下降させる。従って予熱装置202全体の所要時間は、一例として34秒、望ましくは19~52秒である。
【0076】
そして次の積層成形品移送工程により積層フィルムP2同士の溶着により内部が真空化された状態で予熱が終了した積層成形品Pが真空積層装置12の成形位置に送られる。この積層成形品移送工程の時間時間は、第1の積層成形システム11の積層成形品移送工程の時間と同じであってもよいが、積層フィルムP2の軟化の進行した積層成形品Pを移動させるので2秒以内の範囲で移送時間を長くしてもよい。真空積層装置12での成形は、積層成形品Pの予熱がほぼ完了しているので、待機工程は、チャンバCを真空化するためだけの時間でよくなり一例として9秒、望ましくは4秒ないし20秒、より一層望ましくは4秒ないし10秒まで短縮することができる。いずれにしても待機工程の時間は20秒以下が望ましく、15秒以下がより一層望ましく、10秒以下が更により一層望ましい。
【0077】
第2の実施形態では、上下の積層フィルムP2同士が接着され、キャリアフィルムF1,F2とも一部接着しているので、当初から真空ポンプ48の回転数を上昇させて急激に真空吸引を行っても積層成形品Pが位置ずれを起こす可能性が殆どなく、所定の真空度まで真空吸引する時間を短縮することができる。これらのため真空積層装置12による全体の成形工程の時間(チャンバ形成工程+待機工程+埋め込み加圧工程+真空チャンバ開放工程の合計時間)、第1の平坦化プレス装置13の全体の成形工程の時間(型閉工程+第1の平坦化加圧工程+型開工程の合計時間)、第1の平坦化プレス装置13の全体の成形工程の時間(型閉工程+第2の平坦化加圧工程+型開工程の合計時間)のいずれかに潜在的な待ち時間が殆ど発生しないようにすることができる。
【0078】
第2の実施形態の積層成形システム201の真空積層装置12の埋め込み加圧工程、真空チャンバ開放工程の全体の所要時間は、前記第1の実施形態と同じである。真空積層装置12の全体の成形工程の所要時間は、一例として34秒、その範囲は望ましくは19秒ないし52秒となっている。ただし第2の実施形態では、予熱装置を併用することにより、全体の成形工程時間における待機工程の時間を26.4%に短縮し、そのことが全体の成形工程の時間の短縮に繋がっている。真空積層装置12における待機工程の時間は、望ましくは10%ないし45%、より一層望ましくは20%ないし40%とすることが成形サイクル時間をより短縮する上で好ましい。また待機工程の時間は全体の成形工程の時間の35%以下にできれば更に一層望ましい。
【0079】
また第1の平坦化プレス装置13の型開工程、型閉工程の時間は、第1の実施形態の型開工程、型閉工程の時間と同じであり、第1の平坦化加圧工程の時間は、一例として34秒、望ましくは15秒ないし48秒である。従って第1の平坦化プレス装置13全体の所要時間は、一例として34秒、望ましくは19~52秒である。
【0080】
また第2の平坦化プレス装置14の型開工程、型閉工程の時間もまた、第1の実施形態の型開工程、型閉工程の時間と同じである。第2の平坦化プレス装置の第2の平坦化加圧工程の時間は、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間と同じであって、一例として34秒、望ましくは15秒ないし48秒である。従って第2の平坦化プレス装置14全体の所要時間は、第1の平坦化プレス装置13と略同一であって、一例として34秒、望ましくは19~52秒である。第2の実施形態では、上下の積層フィルムP1,P2が接着されている部分が大きいので、必要に応じて後工程に積層フィルムP1,P2の打ち抜き装置を設ける。
【0081】
第2の実施形態の積層成形システム201の積層成形方法の成形サイクル時間は、一例として各装置の所要時間の長さ34秒と積層成形品移送工程の所要時間の長さ4秒を加算して合計時間の長さは37秒である。従って特許文献1の成形サイクル時間の58.7%(以下四捨五入)となり大きな改善となる。また1時間当たりの成形回数は、第2の実施形態が97回(小数点以下切り捨て)であり、特許文献1は57回(小数点以下切り捨て)であるので、第1の実施形態の成形回数は特許文献1の成形回数の1.7倍(以下四捨五入)となる。従って第1の実施形態の積層成形システム11の生産効率が大幅に改善されることが判る。ただし第2の実施形態では積層成形システム201に予熱装置202が追加されているので、積層成形品Pの1ロットあたりの生産に要する合計所要時間は、151秒と第1の実施形態よりも長くなっている。
【0082】
次に第3の実施形態の積層成形システム301について図1および図6と同一部分には同一符号を付してその説明は省略し、図1および図6と異なる部分についてのみ図8を参照して説明する。図8に示される第3の実施形態の積層成形システム301も第2の実施形態の積層成形システム201と同じ位置(真空積層装置303とキャリアフィルム送出装置18の間であってそれぞれキャリアフィルムF1,F2の1ピッチ分の送り量だけ離間した位置)に予熱装置302が備えられている。
【0083】
予熱装置302は、真空化可能なチャンバを備えておらず、キャリアフィルムF1,F2よりも上側に設けられヒータ等により加熱される加熱板304と、キャリアフィルムF1,F2よりも下側に設けられヒータ等に加熱される加熱板305からなる。相対向する加熱板304、305は固定的に設けてもよいがキャリアフィルムF1,F2に対して間隔が変更できるように設けてもよい。いずれにしても加熱板304,305の間にキャリアフィルムF1,F2によって搬送された積層成形品Pが位置した際に、直接的にはキャリアフィルムF1,F2を介して加熱板304,305と積層成形品Pは当接せずに、加熱板304,305から輻射熱が積層成形品Pに付与できるものである。
【0084】
予熱装置302の後工程側の位置に設けられる真空積層装置303は、特許文献1の真空積層装置1と同様のものである。即ち相対向して設けられ弾性体シートの加圧面を備えた熱盤306が下面に取り付けられた上盤307と、熱盤308が上面に取り付けられた下盤309の間に昇降手段310により下盤309を上昇させることにより真空化可能なチャンバ312が形成可能となっている。そして上盤307と下盤309の少なくとも一方にはシリコーンゴム等の耐熱性のゴムからなり、図示しないエア供給手段により膨出される膜体311(ダイアフラム)が設けられている。そして前記膜体311の膨出により、真空化されたチャンバ312内で積層成形品PがキャリアフィルムF1,F2を介して加圧されるようになっている。
【0085】
第3の積層成形システム301の真空積層装置303の後工程側の位置に順次設けられる第1の平坦化プレス装置13、第2の平坦化プレス装置14、移送手段であるキャリアフィルム巻取装置19は第1の積層成形システム11等と同様であるので説明を省略する。
【0086】
次に第3の実施形態の積層成形システム301を用いて行う積層成形品の積層成形方法について特に各工程の時間について図5を参照して説明する。予熱装置302への積層成形品Pの移送工程は第2の実施形態と同じである。第3の実施形態では予熱装置302は真空化の可能なチャンバを備えていないので、積層成形品Pを予熱する際の温度は、第2の実施形態よりも低く抑えられる。大気圧の状態で積層成形品Pのうちの積層フィルムである絶縁フィルムを完全な溶融状態にしてしまうと基板と絶縁フィルムの間にボイド等が残る原因になるからである。第3の実施形態の積層成形システム301の場合、エポキシ樹脂を含有する市販の絶縁フィルムの場合、成形温度が100℃とすると、加熱板304,305の温度は一例として60℃、望ましくは30℃ないし80℃、より一層望ましくは40℃ないし70℃とすることが好ましい。
【0087】
キャリアフィルムF1,F2に挟まれた積層成形品Pは、予熱装置302の加熱板304,305の間に搬送されると停止される。そして積層成形品Pから一定距離を隔てた加熱板304,305からの輻射熱により予熱される。予熱時間をコントロールしたい場合は、加熱板304,305を可動式にし、積層成形品Pに加熱板304,305を近接させた際のみ予熱が行われるようにしてもよい。第3の実施形態において予熱装置302の予熱工程の時間は、一例として37秒、望ましくは23秒ないし55秒である。
【0088】
予熱装置302による予熱工程が完了すると積層成形品Pは積層成形品移送工程により真空積層装置303に送られる。真空積層装置303の上盤および下盤は、一例として100℃、積層成形品Pの種類により異なるが望ましくは50℃ないし200℃に加熱されている。真空積層装置303のチャンバ形成工程においては、昇降手段310の作動により真空化可能なチャンバが形成される。そして次の待機工程によりチャンバ内の積層成形品Pを予熱しつつ図示しない真空ポンプの駆動によりチャンバ内の真空化が行われる。ただし積層成形品Pはすでに予熱されているので、第1の実施形態の真空積層装置12における待機工程よりも待機工程の時間を短くすることができる。第3の実施形態の真空積層装置の待機工程の時間は、一例として12秒であり、望ましくは8秒ないし20秒の範囲で設定される。いずれにしても待機工程の時間は20秒以下が望ましく、15秒以下がより一層望ましく、10秒以下が更により一層望ましい。
【0089】
しかし第3の実施形態の積層成形システム301の積層成形方法のほうが、第3の実施形態の積層成形システム301の積層成形方法よりも積層成形品Pの温度が低く、更に加熱するのには待機工程に長く時間を必要とする。ただしそれでも予熱装置を備えない第1の実施形態の積層成形システムよりも真空積層装置12に待機工程の時間を短縮することができる。具体的には第3の実施形態では、予熱装置302を併用することにより、全体の成形工程時間における待機工程の時間の割合を32.4%に短縮しており、そのことが全体の成形工程の時間の短縮に繋がっている。この待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間は、第1の平坦化加圧工程と第2の平坦化加圧工程のうち時間の短い方の平坦化加圧工程の時間の長さの80%ないし160%とすることが望ましく、より望ましくは150%以下、更に望ましくは140%以下、更により一層望ましくは130%以下というように100%に近づけることが一番望ましい。また下限値が100よりも下である場合もサイクル短縮には殆ど貢献しないが、積層成形品Pの性質によっては、最初の加圧工程で長く加熱や加圧を行えない場合は、前記待機工程と埋め込み加圧工程を加えた時間の比率が100%よりも低くてもよい。また待機工程の時間は真空積層装置12の全体の成形工程の時間の35%以下にできれば更に一層望ましい。
【0090】
そして所定時間が経過すると次に埋め込み加圧工程に移行する。埋め込み加圧工程は、膜体311の裏面側に加圧空気を入れるためにバルブを切り替えた時点から開始されるものとし、実際に膜体311がキャリアフィルムF1.F2を介して積層成形品Pに当接してからではないものと定義する。その理由は、チャンバ312内での膜体311の積層成形品Pへの当接および加圧開始は視認できず、埋め込み加圧工程の開始時点が曖昧になる可能性があるからである。
【0091】
そして埋め込み加圧工程は一例として0.3MPaないし3.0MPaの加圧力(面圧)で、一例として20秒、望ましくは15秒ないし40秒間加圧が行われる。そして膜体311の側の加圧エアが抜かれて埋め込み加圧工程が終了すると、チャンバを大気圧に戻して引き続きチャンバを開放する真空チャンバ開放工程が行われる。真空チャンバ開放工程の時間は、一例として3秒、望ましくは2秒ないし6秒かけて行われる。従ってそして真空積層装置303の全体の所要時間の長さは、一例として37秒、その望ましい時間の長さの範囲は23秒ないし55秒となっている。
【0092】
また第1の平坦化プレス装置13の型開工程、型閉工程の時間は、第1の実施形態の型開工程、型閉工程の時間と同じであり、第1の平坦化加圧工程の時間は、一例として37秒、望ましくは18秒ないし51秒である。従って第1の平坦化プレス装置13全体の所要時間は、一例として37秒、望ましくは23~55秒である。
【0093】
また第2の平坦化プレス装置14の型開工程、型閉工程の時間もまた、第1の実施形態の型開工程、型閉工程の時間と同じである。第2の平坦化プレス装置の第2の平坦化加圧工程の時間は、第1の平坦化プレス装置13の第1の平坦化加圧工程の時間と同じであって、一例として37秒、望ましくは18秒ないし51秒である。従って第2の平坦化プレス装置14全体の所要時間は、第1の平坦化プレス装置13と略同一であって、一例として37秒、望ましくは23~55秒である。
【0094】
次に第1の実施形態ないし第3の実施形態に関連して真空積層装置12,303の待機工程の時間を短縮する機構について説明する。真空積層装置12の加圧ブロック40、41や、真空積層装置303の熱盤308は、遠赤外線ヒータを用いることにより効果的に積層成形品Pおよびその積層フィルムP2を加熱することができる。加圧ブロック40等に熱容量の小さいセラミックプレートを貼着し、待機工程の間、該セラミックプレートに通電することにより弾性体シート43を介して遠赤外線により積層成形品Pおよびその積層フィルムP2を加熱する。または加圧ブロック40等と弾性体シート43の間に抵抗加熱板を設けて抵抗加熱板に通電して、待機工程の間、加熱するかカートリッジヒータを加熱してもよい。そのことにより待機工程の時間を短縮することが可能となる。ただし次の埋め込み加圧工程の際の温度が所望の温度よりも高くなる場合には、加圧ブロック40等の内部に管路を形成し、前記管路に冷却水を通水して、埋め込み加圧工程の加圧ブロック40等の温度を最適な温度に温度制御するようにしてもよい。或いは待機工程において誘電加熱装置を用いて積層成形品Pおよびその積層フィルムP2を加熱するようにしてもよい。なおこれらの待機工程において加圧ブロック40等を加熱して積層成形品Pの予熱に必要な時間を短縮する技術は、真空積層装置12または真空積層装置303が単独で設置される積層成形装置にも応用可能であり積層成形時間を短縮できる。真空積層装置12または真空積層装置303の後に1台の平坦化プレス装置が設けられる積層成形システムでは、平坦化プレス装置の成形時間が長く必要となることから、積層成形システム全体の時間短縮が図れない場合も多いが、待機工程の時間を減らし埋め込み加圧工程の時間を相対的に長くするなどの対応が可能となるケースもある。
【0095】
また本発明の積層成形システム11、201,301の積層成形方法は、次のようなものも含まれる。減圧可能なチャンバCを備えた真空積層装置12または303と、第1の平坦化プレス装置13と、第2の平坦化プレス装置14が連続して配置され、前記真空積層装置12または303から第1の平坦化プレス装置13へ、第1の平坦化プレス装置13から第2の平坦化プレス装置14へとキャリアフィルムF1,F2を用いて積層成形品Pが移動される積層成形システム11、201,301の積層成形方法において、前記真空積層装置12または303による加圧成形は、少なくともチャンバCを形成するチャンバ形成工程と、該チャンバC内を減圧しつつ積層成形品Pに熱を付与する待機工程と、弾性体シート43や膜体311等の加圧部材が作動開始されて積層成形品Pに加圧を行う埋め込み加圧工程と、該埋め込み加圧工程終了後に減圧されたチャンバを大気開放する真空チャンバ開放工程とからなり、第1の平坦化プレス装置13による第1の平坦化加圧工程と、第2の平坦化プレス装置の加圧部材による第2の平坦化加圧工程は、少なくとも前記真空積層装置12または303の埋め込み加圧工程と過半の時間オーバーラップして行われ、第1の平坦化加圧工程の時間の長さと、第2の平坦化加圧工程の時間の長さは、それぞれ20秒ない40秒であり、前記真空積層装置12または303の埋め込み加圧工程の時間の長さは、15秒ないし40秒である、積層成形システム11,201,301の積層成形方法、であってもよい。
【0096】
更に本発明の積層成形システム11,201,301の積層成形方法は、次のようなものも含まれる。真空積層装置12、303の真空チャンバを開放する真空チャンバ開放工程の終了時間と、前記第1の平坦化プレス装置13の型開工程の終了時間と、前記第2の平坦化プレス装置14の型開工程の終了時間は略同一であって、該真空積層装置12または303の真空チャンバ開放工程の終了後、第1の平坦化プレス装置13の型開工程の終了後、および第2の平坦化プレス装置14の型開工程の終了後に、移送手段であるキャリアフィルムF1,F2を用いて真空積層装置12または303で加圧成形を行った積層成形品Pを前記第1の平坦化プレス装置13へ搬送し、第1の平坦化プレス装置13で平坦化加圧成形を行った積層成形品Pを前記第2の平坦化プレス装置14へ搬送し、前記第2の平坦化プレス装置14で平坦化加圧成形を行った積層成形品Pを次のステージへ搬送する積層成形システム11,201,301の積層成形方法であってもよい。
【0097】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した第1の実施形態、第2の実施形態、
ダ第3の実施形態の積層成形システム11,201,301とその積層成形方法に限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものや第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態の各記載を掛け合わせたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【0098】
上記の各実施形態では各工程が終了して次の工程が開始される際の各工程の切換のトリガは、制御装置20のタイマによる計時時間を用いることを原則としている。しかしながら各工程の切換のトリガは、上記したような成形時間を達成できるものであれば、別のトリガを用いるものであってもよい。具体例としては、真空積層装置12,303のチャンバC内が所定の真空度や温度に到達したことや、いずれかの成形装置の積層成形品Pが所定の状態(温度、板厚、形状など)到達したことにより各工程の切換を行うものでもよい。
【0099】
また積層成形システム11,201,301において積層成形される積層成形品Pは、ビルドアップ基板等の回路基板の他、半導体ウエハや太陽電池等の他の板状体であってもよく限定されない。
【符号の説明】
【0100】
11、201,301 積層成形システム
12、303 真空積層装置
13 第1の平坦化プレス装置
14 第2の平坦化プレス装置
15,16,17 サーボモータ
18 キャリアフィルム送出手段(移送手段)
19 キャリアフィルム巻取手段(移送手段)
20 制御装置
40,41,60,61,80,81 加圧ブロック
43 弾性体シート(加圧面)
65,85 金属製プレスプレート(加圧面)
202,302 予熱装置
C チャンバ
F1,F2 キャリアフィルム(移送手段)
P 積層成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8