IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社ミライズテクノロジーズの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-基準電圧生成回路 図1
  • 特開-基準電圧生成回路 図2
  • 特開-基準電圧生成回路 図3
  • 特開-基準電圧生成回路 図4
  • 特開-基準電圧生成回路 図5
  • 特開-基準電圧生成回路 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036956
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】基準電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/22 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
G05F3/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141535
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA24
5H420NB02
5H420NB12
5H420NC18
(57)【要約】
【課題】実装が容易な構成で、電圧を調整できる基準電圧生成回路を提供する。
【解決手段】基準電圧生成回路1は、電流源2とグランドとの間に接続されるツェナーダイオード3、ツェナーダイオード3に並列に接続される電流生成回路5を備える。電流生成回路5は、電流を2つの経路に分岐させる分岐部を有し、抵抗素子R1~R3により分圧した電圧を出力する抵抗分圧回路、トランジスタ回路及び電圧制御回路を備える。トランジスタ回路は、コレクタが前記2つの経路にそれぞれ接続され、ベースが共通に接続される2つのNPNトランジスタBJT1、BJT2、トランジスタBJT1のエミッタとグランドとの間に接続される、抵抗素子R4及びR5を直列に接続した直列抵抗回路を有し、トランジスタBJT2のエミッタが抵抗素子R4及びR5の共通接続点に接続される。オペアンプ4はトランジスタBJT1、BJT2のそれぞれのコレクタ電位が等しくなるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源(2)とグランドとの間に接続されるツェナーダイオード(3)と、
このツェナーダイオードに並列に接続される、絶対温度に比例する正の温度依存性を有する電流を生成する電流生成回路(5~9)とを備え、
前記電流生成回路は、
電流を、2つの経路に分岐させる分岐部を有し、抵抗素子により分圧した基準電圧として出力する抵抗分圧回路(R~R)と、
コレクタが前記2つの経路にそれぞれ接続され、ベースが共通に接続される2つのNPNトランジスタ(BJT1,BJT2)と、これら2つのNPNトランジスタの一方のエミッタとグランドとの間に接続される、複数の抵抗素子を直列に接続した直列抵抗回路(R,R)と、を有し、他方のエミッタが、前記複数の抵抗素子の共通接続点に接続されるトランジスタ回路と、
前記2つのNPNトランジスタのそれぞれのコレクタ電位が等しくなるように制御する電圧制御回路(4)とを備える基準電圧生成回路。
【請求項2】
前記電圧制御回路は、2つの入力端子が前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタに接続され、出力端子が前記ベースに接続されるオペアンプで構成される請求項1記載の基準電圧生成回路。
【請求項3】
前記抵抗分圧回路は、前記ツェナーダイオードに並列に接続される、複数の抵抗素子を直列に接続した直列抵抗回路(R,R)を備え、
前記分岐部は、前記直列抵抗回路を構成する抵抗素子の何れかの共通接続点より、電流を2つの経路に分岐させる請求項1又は2記載の基準電圧生成回路。
【請求項4】
前記抵抗分圧回路は、前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタ電位を調整する電位調整回路を備えている請求項1又は2記載の基準電圧生成回路。
【請求項5】
前記電位調整回路は、複数の抵抗素子(R)を直列に接続した直列抵抗回路と、
一端が共通に接続され、他端が直列抵抗回路の個別の端子に接続される複数のスイッチ回路(SW1~SW4)とを備える請求項4記載の基準電圧生成回路。
【請求項6】
前記電流源と、生成した基準電圧を出力する端子との間の経路に、PN接合を有する半導体素子(BJT3)を備える請求項1又は2記載の基準電圧生成回路。
【請求項7】
前記半導体素子は、前記電流源と前記電流生成回路を構成する抵抗分圧回路との間に接続されている請求項6記載の基準電圧生成回路。
【請求項8】
前記半導体素子は、ベースが前記分岐部における分岐点に接続され、エミッタが前記基準電圧を出力する端子となるNPNトランジスタであり、
前記NPNトランジスタのコレクタに接続される電流源(42)を備える請求項6記載の基準電圧生成回路。
【請求項9】
前記抵抗分圧回路は、前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタ電位を調整する電位調整回路を備えている請求項7記載の基準電圧生成回路。
【請求項10】
前記電位調整回路は、複数の抵抗素子(R)を直列に接続した直列抵抗回路と、
一端が共通に接続され、他端が直列抵抗回路の個別の端子に接続される複数のスイッチ回路(SW1~SW4)とを備える請求項9記載の基準電圧生成回路。
【請求項11】
前記抵抗分圧回路は、前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタ電位を調整する電位調整回路を備えている請求項8記載の基準電圧生成回路。
【請求項12】
前記電位調整回路は、複数の抵抗素子(R)を直列に接続した直列抵抗回路と、
一端が共通に接続され、他端が直列抵抗回路の個別の端子に接続される複数のスイッチ回路(SW1~SW4)とを備える請求項11記載の基準電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧を生成する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
基準電圧を生成する回路については、様々な構成が提案されているが、例えば、以下のような構成の回路がある。カレントミラー回路により、バイポーラトランジスタの接合電圧に依存した、絶対温度に比例する正の温度特性をもつIptat(proportional to absolute temperature)電流を生成し、その電流に基いて生成される電圧を、ツェナーダイオードの生成電圧から減算する。その結果、ツェナーダイオードの生成電圧における正の温度依存性が補正され、温度に依存しない出力電圧が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国第20200218302号明細書
【特許文献2】米国特許第10955868号
【特許文献3】米国第20210124386号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の回路では、電流Iptatに誤差が生じ易い。すなわち、MOSカレントミラーで生成した電流Iptatと、ミラーの元となる電流との比率がばらつき易く、その比率で決まる電流Iptatに誤差が生じる。さらに、エミッタ接地増幅率が小さいトランジスタでは、ベースからの貫通電流が大きいため、電流Iptatには、その貫通電流分の誤差も生じる。
【0005】
また、電流Iptatを調整しようとすると、調整用のトリミング機構の実装が難しい。例えば、上記のような回路構成において、電流Iptatを生成する回路の抵抗をMOSスイッチでトリミングすることを想定すると、抵抗とMOSスイッチとを直列に接続することになる。したがって、MOSスイッチに電流が流れるため、MOSスイッチが有する抵抗分の影響を受けてしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、実装が容易な構成で、電圧を調整できる基準電圧生成回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の基準電圧生成回路によれば、電流源とグランドとの間に接続されるツェナーダイオードと、そのツェナーダイオードに並列に接続される、絶対温度に比例する正の温度依存性を有する電流を生成する電流生成回路とを備える。電流生成回路は、電流を、2つの経路に分岐させる分岐部を有し、抵抗素子により分圧した電圧を基準電圧として出力する抵抗分圧回路と、トランジスタ回路及び電圧制御回路とを備える。
【0007】
トランジスタ回路は、コレクタが前記2つの経路にそれぞれ接続され、ベースが共通に接続される2つのNPNトランジスタと、これら2つのNPNトランジスタの一方のエミッタとグランドとの間に接続される、複数の抵抗素子を直列に接続した直列抵抗回路と、を有し、他方のエミッタが、前記複数の抵抗素子の共通接続点に接続される。電圧制御回路は、2つのNPNトランジスタのそれぞれのコレクタ電位が等しくなるように制御する。
【0008】
このように構成すれば、上記の正の温度依存性を有する電流Iptatは、2つのNPNトランジスタのベースエミッタ間における電圧差ΔVBEに依存した電流であり、トランジスタのペアに流れるコレクタ電流は、抵抗分圧回路及び電圧制御回路により高精度に制御できる。抵抗分圧回路において2つの経路の抵抗比を変更することで、電流Iptatを調整できる。抵抗分圧回路で分圧した電圧を基準電圧とするので、カレントミラー回路を介すことなく、当該回路による誤差の影響がないので、基準電圧の温度依存性を精度良く補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態において、基準電圧生成回路を示す回路図
図2】第2実施形態において、基準電圧生成回路を示す回路図
図3】第3実施形態において、基準電圧生成回路を示す回路図
図4】電位調整回路の構成を示す図
図5】第4実施形態において、基準電圧生成回路を示す回路図
図6】第5実施形態において、基準電圧生成回路を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の基準電圧生成回路1では、電源Vccとグランドとの間に、電流源2及びツェナーダイオード3の直列回路が接続されている。ツェナーダイオード3のカソードには、抵抗素子Rの一端が接続され、抵抗素子Rの他端には、抵抗素子R及びRの一端が接続されている。抵抗素子Rと抵抗素子R及びRとの共通接続点が分岐部に相当する。バイポーラトランジスタであるBJT1及び2のベースは共通に接続され、BJT1及び2のコレクタは、それぞれ抵抗素子R及びRの他端に接続されている。
【0011】
BJT1のエミッタとグランドとの間には、抵抗素子R及びRの直列回路が接続され、それらの共通接続点には、BJT2のエミッタが接続されている。また、BJT1及び2のコレクタは、それぞれオペアンプ4の反転入力端子、非反転入力端子に接続されている。電圧制御回路に相当するオペアンプ4の出力端子は、BJT1及び2のベースに接続されている。
【0012】
以上において、抵抗素子R~Rは抵抗分圧回路に相当し、抵抗素子R及びRの直列回路は、抵抗直列回路に相当する。BJT1及び2並びに抵抗直列回路は、トランジスタ回路に相当する。ツェナーダイオード3に並列に接続されている回路部分は、電流生成回路5を構成している。
【0013】
次に、本実施形態の作用について説明する。ノード(1)~(7)を以下のように定義する。
・ノード(1):ツェナーダイオード3のカソード
・ノード(2):抵抗素子R1と抵抗素子R及びRの共通接続点
・ノード(3)、(4):BJT1、2のコレクタ
・ノード(5):BJT1及び2のベース
・ノード(6)、(7):BJT1、2のエミッタ
【0014】
基準電圧生成回路1は、基準電圧VREFを生成してノード(2)より出力する。基準電圧VREFは、以下のように生成される。抵抗R=Rとし、BJT1とBJT2との面積比をn:1とする。ノード(5)~(7)の電圧をV~Vとする。また、BJT1、2のベースエミッタ間電圧を、それぞれVBE1、VBE2とする。
BE1=V-V …(1)
BE2=V-V …(2)
抵抗素子R4に係る電位差(V-V)は(3)式となる。
-V=ΔVBE1=VBE2-VBE1=(kT/q)logn …(3)
はボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電荷素量である。
【0015】
電圧(V-V)は絶対温度に正比例しており、結果としてBJT1側には絶対温度に正比例した電流Iptat={kT/(qR)}lognが流れる。また、ノード(3)、(4)の電圧は、オペアンプ4の作用により等しくなる。そして、抵抗R=Rであるから、BJT2側にもBJT1側と同様に電流Iptatが流れる。
【0016】
以上から、ノード(1)の電圧をツェナー電圧Vとすると,ノード(2)の電圧Vは以下の(4)式で記述される。
=VREF=V-2Rptat
=V-2R{kT/(qR)}logn …(4)
(4)式において、電流Iptatの温度依存性を抵抗比で調整することで、ツェナー電圧Vの温度依存性を打ち消した電圧が得られていることが分かる。
【0017】
以上のように本実施形態によれば、基準電圧生成回路1は、電流源2とグランドとの間に接続されるツェナーダイオード3と、ツェナーダイオード3に並列に接続される電流生成回路5とを備える。電流生成回路5は、電流を2つの経路に分岐させる分岐部を有し、抵抗素子R~Rにより分圧した電圧を出力する抵抗分圧回路と、トランジスタ回路及び電圧制御回路とを備える。
【0018】
トランジスタ回路は、コレクタが前記2つの経路にそれぞれ接続され、ベースが共通に接続される2つのNPNトランジスタBJT1、BJT2と、トランジスタBJT1のエミッタとグランドとの間に接続される、抵抗素子R及びRを直列に接続した直列抵抗回路とを有し、トランジスタBJT2のエミッタが抵抗素子R及びRの共通接続点に接続される。オペアンプ4は、トランジスタBJT1、BJT2のそれぞれのコレクタ電位が等しくなるように制御する。
【0019】
このように構成すれば、上記の正の温度依存性を有する電流Iptatは、2つのNPNトランジスタBJT1、BJT2のベースエミッタ間における電圧差ΔVBEに依存した電流であり、トランジスタBJT1、BJT2のペアに流れるコレクタ電流は、抵抗分圧回路及びオペアンプ4により高精度に制御できる。抵抗分圧回路において2つの経路の抵抗比を変更することで、電流Iptatを調整できる。抵抗分圧回路で分圧した電圧を基準電圧VREFとするので、カレントミラー回路を介すことなく、当該回路による誤差の影響がないので、基準電圧VREFの温度依存性を精度良く補正できる。
【0020】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図2に示すように、第2実施形態の基準電圧生成回路11では、抵抗素子R及びRの直列回路が、ツェナーダイオード3に並列に接続されている。そして、抵抗素子Rの上端は、抵抗素子R及びRの共通接続点に接続されている。以上において、抵抗素子R及びRの直列回路に、第1実施形態の電流生成回路5に相当する構成を加えたものが、電流生成回路6を構成している。
【0021】
次に、第2実施形態の作用について説明する。電流Iptatについては、第1実施形態と同様である。抵抗素子R及びRの共通接続点をノード(2’)とすると、ノード(2’)の電圧V’は、以下の(5)式で記述される。
’=V+2Rptat
=V+2R{kT/(qR)}logn …(5)
【0022】
抵抗素子Rを流れる電流をI,抵抗素子Rを流れる電流をI’とすると、
I=I’+2Iptat …(6)
であり、抵抗素子Rの端子電圧RIを示す(7)式から、電流I’は(8)式のようになる。
I=V-RI’ …(7)
(I’+2Iptat)=V-RI’
I’=(V-2Rptat)/(R+R) …(8)
(V’=RI’)であるから、電圧V’は(9)式となる。
’=R(V-2Rptat)/(R+R) …(9)
【0023】
(5)式及び(9)式から、基準電圧生成回路11の出力電圧VREFを求めると、(10)式となる。
=VREF=R/(R+R
-2(R+R+R)Iptat/(R+R
…(10)
【0024】
以上のように第2実施形態によれば、(10)式において、電流Iptatの温度依存性を抵抗比で調整することで、ツェナー電圧Vの温度依存性を打ち消した基準電圧VREFを得ることができる。
【0025】
(第3実施形態)
図3に示す第3実施形態の基準電圧生成回路21では、ボックスで囲んだ抵抗素子R及びRを、図4に示すように、抵抗値を変更可能な構成としたものである。抵抗素子R及びRの上端を端子A,下端を端子Bとし、オペアンプ4の入力端子に接続されるノード(3’)、(4’)を端子Cとする。例えば4つの抵抗素子Rを直列に接続し、各抵抗素子の共通接続点及び端子Bと、端子Cとの間に4つのスイッチSW1~SW4を接続する。これらのスイッチSW1~SW4は、例えばMOSFETとする。以上において、抵抗素子RとスイッチSW1~SW4とは、電位調整回路に相当し、ツェナーダイオード3に並列に接続されている回路部分が電流生成回路7を構成している。
【0026】
次に、第3実施形態の作用について説明する。トランジスタBJT1,BJT2のベースエミッタ間電圧を、それぞれVBE1,VBE2とすると、これらは以下のように表わされる。
BE1=V-V …(11)
BE2=V-V …(12)
【0027】
これらより、抵抗素子Rの端子電圧である電位差(V-V)は、(13)式となる。尚、トランジスタBJT1,BJT2のコレクタ電流を、それぞれIC1,IC2とする。
-V=ΔVBE=VBE2-VBE1
=kT/q{logn+log(IC2/IC1)} …(13)
コレクタ電流IC1は、(14)式となる。
C1=kT/(qR){logn+log(IC2/IC1)} …(14)
【0028】
ノード(3’)、(4’)の電圧は、オペアンプ4の作用により等しくなるから、ノード(2)とノード(3’)との電位差と、ノード(2)とノード(4’)との電位差も等しくなる。したがって、抵抗素子R、Rの重み付けを変更することで、ノード(2)とノード(3’)との間、ノード(2)とノード(4’)との間の抵抗値をそれぞれR’、R’に調整すると、トランジスタBJT2に流れるコレクタ電流IC2は、(15)式となる。
C2=(R’/R’)IC1 …(15)
【0029】
ノード(1)の電圧はツェナー電圧VZであるから、ノード(2)の電圧V、つまり基準電圧生成回路21の出力電圧VREF、を求めると、(16)式となる。
=VREF=V-R(IC1+IC2
=V-kTR/(qR)(1+R’/R’)
×{logn+log(R’/R’)} …(16)
【0030】
以上のように構成される第3実施形態によれば、(16)式において、電流Iptatの温度依存性を抵抗比(R/R)で調整することで、ツェナー電圧Vの温度依存性を打ち消すことができる。また、抵抗比(R’/R’)を、抵抗素子R、Rの重み付けを変更して調整することで、電流Iptatのばらつきの影響を補正できる。
【0031】
(第4、第5実施形態)
図5に示す第4実施形態の基準電圧生成回路31は、第1実施形態の基準電圧生成回路1における電流源2と抵抗素子Rとの間に、ダイオード接続したNPNトランジスタBJT3を接続した構成である。ツェナーダイオード3に並列に接続されている回路部分が電流生成回路8を構成している。
【0032】
また、図6に示す第5実施形態の基準電圧生成回路41は、第1実施形態の基準電圧生成回路1におけるノード(2)にトランジスタBJT3のベースを接続している。トランジスタBJT3のコレクタには、電流源2と同様の電流源42が接続され、トランジスタBJT3のエミッタより電圧VREFが出力される。ツェナーダイオード3に並列に接続されている回路部分が電流生成回路9を構成している。
【0033】
次に、第4、第5実施形態の作用について説明する。トランジスタBJT3のベースエミッタ電圧をVBE3とする。基準電圧生成回路31、41の出力電圧VREFは、第1実施形態のツェナー電圧Vを、(V-VBE3)に置換えれば良い。
REF=(V-VBE3)-2R{kT/(qR)}logn …(17)
(17)式において、電流Iptatの温度依存性を抵抗比で調整することで、電圧(V-VBE3)の温度依存性を打ち消すことができる。
また、(17)式において、電圧VREFの応力依存性は、(18)式で表される。
【0034】
【数1】
【0035】
(18)式において、ツェナーダイオード2のカソード、アノード間の電圧Vの応力依存性に対して、非線形素子の電圧VBE3が有する応力依存性が同程度のものを選べばVREFの応力依存性を打ち消すことができる。
【0036】
(その他の実施形態)
スイッチ回路は、MOSFETに限らない。
電位調整回路を構成する抵抗素子及びスイッチ回路の数は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
第3実施形態の抵抗値を変更可能な構成を、第4、第5実施形態に適用しても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0037】
本件は、特許請求の範囲に記載の発明に加え、以下のような発明を含む。
[1]
電流源(2)とグランドとの間に接続されるツェナーダイオード(3)と、
このツェナーダイオードに並列に接続される、絶対温度に比例する正の温度依存性を有する電流を生成する電流生成回路(5~9)とを備え、
前記電流生成回路は、
電流を、2つの経路に分岐させる分岐部を有し、抵抗素子により分圧した基準電圧として出力する抵抗分圧回路(R1~R3)と、
コレクタが前記2つの経路にそれぞれ接続され、ベースが共通に接続される2つのNPNトランジスタ(BJT1,BJT2)と、これら2つのNPNトランジスタの一方のエミッタとグランドとの間に接続される、複数の抵抗素子を直列に接続した直列抵抗回路(R4,R5)と、を有し、他方のエミッタが、前記複数の抵抗素子の共通接続点に接続されるトランジスタ回路と、
前記2つのNPNトランジスタのそれぞれのコレクタ電位が等しくなるように制御する電圧制御回路(4)とを備える基準電圧生成回路。
[2]
前記電圧制御回路は、2つの入力端子が前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタに接続され、出力端子が前記ベースに接続されるオペアンプで構成される[1]記載の基準電圧生成回路。
[3]
前記抵抗分圧回路は、前記ツェナーダイオードに並列に接続される、複数の抵抗素子を直列に接続した直列抵抗回路(RA,RB)を備え、
前記分岐部は、前記直列抵抗回路を構成する抵抗素子の何れかの共通接続点より、電流を2つの経路に分岐させる[1]又は[2]記載の基準電圧生成回路。
[4]
前記電流源と、生成した基準電圧を出力する端子との間の経路に、PN接合を有する半導体素子(BJT3)を備える請求項[1]から[3]の何れか一つに記載の基準電圧生成回路。
[5]
前記半導体素子は、前記電流源と前記電流生成回路を構成する抵抗分圧回路との間に接続されている[4]記載の基準電圧生成回路。
[6]
前記半導体素子は、ベースが前記分岐部における分岐点に接続され、エミッタが前記基準電圧を出力する端子となるNPNトランジスタであり、
前記NPNトランジスタのコレクタに接続される電流源(42)を備える[4]記載の基準電圧生成回路。
[7]
前記抵抗分圧回路は、前記トランジスタ回路のそれぞれのコレクタ電位を調整する電位調整回路を備えている[1]から[6]の何れか一項に記載の基準電圧生成回路。
[8]
前記電位調整回路は、複数の抵抗素子(R)を直列に接続した直列抵抗回路と、
一端が共通に接続され、他端が直列抵抗回路の個別の端子に接続される複数のスイッチ回路(SW1~SW4)とを備える[7]記載の基準電圧生成回路。
【符号の説明】
【0038】
図面中、1は基準電圧回路、2は電流源、3はツェナーダイオード、4はオペアンプ、5は電流生成回路、R~Rは抵抗素子、BJT1及び2はNPNトランジスタを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6