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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036963
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 371A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141543
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】師井 直紀
(57)【要約】
【課題】通過音の低減において改善の余地がある。
【解決手段】冷凍サイクル装置(1)は、冷媒回路(7)と過冷却回路(8)と制御部(6)とを備えている。冷媒回路(7)は、圧縮機(21)、室外熱交換器(24)、室内膨張弁(31a、31b)、及び室内熱交換器(32a、32b)が、この順に冷媒配管で接続されている。過冷却回路(8)は、過冷却熱交換器(27)と過冷却用膨張弁(28)とが接続されている。過冷却熱交換器(27)は、第1流路(27a)と第2流路(27b)とを有している。第1流路(27a)は、室内膨張弁(31a、31b)に流れ込む冷媒が流れる。第2流路(27b)は、第1流路(27a)の冷媒と熱交換を行う冷媒が流れる。過冷却用膨張弁(28)は、第2流路(27b)を流れる冷媒を減圧する。制御部(6)は、室内膨張弁(31a、31b)に流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁(28)の開度を大きくするとともに、圧縮機(21)の回転数を小さくする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内ユニット(3a)と、室外ユニット(2)と、を含む冷凍サイクル装置(1)であって、
圧縮機(21)、室外熱交換器(24)、室内膨張弁(31a)、及び室内熱交換器(32a)が、この順に冷媒配管で接続された冷媒回路(7)と、
前記室外熱交換器と前記室内膨張弁との間に配置され、前記室内膨張弁に流れ込む冷媒が流れる第1流路(27a)と、前記第1流路の冷媒と熱交換を行う冷媒が流れる第2流路(27b)とを有する過冷却熱交換器(27)と、前記第2流路を流れる冷媒を減圧する過冷却用膨張弁(28)と、が接続された過冷却回路(8)と、
前記室内膨張弁に流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、前記過冷却用膨張弁の開度を大きくするとともに、前記圧縮機の回転数を小さくする制御部(6)と、
を備える、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧縮機の回転数と、前記圧縮機に吸入される冷媒の温度または圧力と、に基づいて、前記第1冷媒量を演算する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記室内ユニットは、複数あり、
複数の前記室内ユニット(3a、3b)のそれぞれに前記室内膨張弁(31a、31b)が設けられており、
前記制御部は、各前記室内膨張弁の開度と、各前記室内ユニットにおける設定温度及び室内温度の乖離度と、に基づいて、前記所定量を変更する、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1冷媒量が前記所定量以下と判断した場合、前記過冷却熱交換器の前記第1流路から前記室内膨張弁に流れる冷媒の温度、及び、前記過冷却用膨張弁の出口側の冷媒の温度の少なくとも一方に基づいて、前記過冷却用膨張弁の開度を調整する、
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-86239号公報)には、冷媒の通過音を低減することを課題とした冷媒サイクル装置が開示されている。特許文献1の冷媒サイクル装置は、凝縮器と内部熱交換器との間の冷媒状態量に基づいて判断した冷媒の状態が気液二相状態である場合に、メイン流路から蒸発器を迂回するバイパス流路において内部熱交換器の上流側に設けられた膨張弁の開度を大きくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の冷凍サイクル装置では、通過音の低減において改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記特許文献1の冷凍サイクル装置において、蒸発器の上流側に設けられたメイン膨張弁を流れる冷媒の量が多い場合に、通過音が発生する問題があることに、本発明者は着目した。
【0005】
そこで、第1観点の冷凍サイクル装置は、室内ユニットと、室外ユニットと、を含む冷凍サイクル装置であって、冷媒回路と、過冷却回路と、制御部と、を備えている。冷媒回路は、圧縮機、室外熱交換器、室内膨張弁、及び室内熱交換器が、この順に冷媒配管で接続されている。過冷却回路は、過冷却熱交換器と、過冷却用膨張弁と、が接続されている。過冷却熱交換器は、第1流路と、第2流路と、を有している。第1流路は、室外熱交換器と室内膨張弁との間に配置され、室内膨張弁に流れ込む冷媒が流れる。第2流路は、第1流路の冷媒と熱交換を行う冷媒が流れる。過冷却用膨張弁は、第2流路を流れる冷媒を減圧する。制御部は、室内膨張弁に流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁の開度を大きくするとともに、圧縮機の回転数を小さくする。
【0006】
第1観点の冷凍サイクル装置によれば、制御部は、室内ユニットの室内膨張弁に流れる第1冷媒量が、通過音が生じる可能性のある所定量を超えたときに、室外ユニットの過冷却用膨張弁の開度を大きくするとともに、圧縮機の回転数を小さくする制御を行う。
【0007】
圧縮機の回転数を小さくすることで、冷媒回路を流れる冷媒量を減らすことができる。このため、冷媒の通過音を低減することができる。
【0008】
また、過冷却用膨張弁の開度を大きくすることで、過冷却回路において、第2流路を流れる冷媒によって、第1流路を流れる冷媒の過冷却を大きくできる。このため、室内熱交換器の能力の低下を抑制することができる。
【0009】
第2観点の冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置であって、制御部は、圧縮機の回転数と、圧縮機に吸入される冷媒の温度または圧力と、に基づいて、第1冷媒量を演算する。
【0010】
第2観点の冷凍サイクル装置では、制御部は、上記のように演算した第1冷媒量が所定値を超えたときに、通過音が生じる可能性があると判断して、過冷却用膨張弁及び圧縮機を制御する。このため、冷媒の通過音をより低減することができる。
【0011】
第3観点の冷凍サイクル装置は、第1観点または第2観点の冷凍サイクル装置であって、室内ユニットは、複数ある。複数の室内ユニットのそれぞれに室内膨張弁が設けられている。制御部は、各室内膨張弁の開度と、各室内ユニットにおける設定温度及び室内温度の乖離度と、に基づいて、所定量を変更する。
【0012】
第3観点の冷凍サイクル装置では、制御部は、複数の室内ユニットのそれぞれの室内膨張弁の開度と、各室内ユニットにおける乖離度とに基づいて、通過音が生じる可能性のある所定値を変更する。このため、冷媒の通過音をより低減することができる。
【0013】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第1観点から第3観点のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部は、第1冷媒量が所定量以下と判断した場合、過冷却熱交換器の第1流路から室内膨張弁に流れる冷媒の温度、及び、過冷却用膨張弁の出口側の冷媒の温度の少なくとも一方に基づいて、過冷却用膨張弁の開度を調整する。
【0014】
第4観点の冷凍サイクル装置では、第1冷媒量が所定量以下の場合、換言すると、通過音を考慮しなくても良い場合には、制御を異ならせている。具体的には、通過音を考慮しない場合に、過冷却熱交換器の第1流路から室内膨張弁に向かう冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁の開度を調整することによって、高い効率の運転を行うことができる。また、通過音を考慮しない場合に、過冷却用膨張弁の出口側の冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁の開度を調整することによって、第2流路から冷媒を戻す圧縮機を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】冷凍サイクル装置の制御ブロック図である。
図3】冷凍サイクル装置の室内ユニットの全てが暖房運転を行っている場合の冷媒の流れを示す図である。
図4】冷凍サイクル装置の室内ユニットの全てが冷房運転を行っている場合の冷媒の流れを示す図である。
図5】冷凍サイクル装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)空気調和装置の機器構成
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、ビル等の建物の室内の空調を行う空気調和装置である。冷凍サイクル装置1は、主として、室外ユニット2と、互いが並列に接続される複数(ここでは、2つ)の室内ユニット3a、3bと、室外ユニット2と室内ユニット3a、3bとを接続する液連絡配管4及びガス連絡配管5と、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3bの構成機器を制御する制御部6と、を備えている。
【0017】
冷凍サイクル装置1は、冷媒回路7と、過冷却回路8と、を備えている。冷媒回路7は、室外ユニット2と複数の室内ユニット3a、3bとを、液連絡配管4及びガス連絡配管5を介して接続することによって構成されている。具体的には、冷媒回路7は、圧縮機21、室外熱交換器24、室内膨張弁31a、31b、及び室内熱交換器32a、32bが、この順に冷媒配管で接続されている。過冷却回路8は、過冷却熱交換器27と過冷却用膨張弁28とを接続することによって構成されている。冷媒回路7及び過冷却回路8には、R32等の冷媒が充填されている。
【0018】
(1-1)室外ユニット
室外ユニット2は、室外(建物の屋上や建物の外壁面近傍等)に設置されている。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、アキュムレータ22と、四路切換弁23と、室外熱交換器24と、室外ファン25と、室外膨張弁26と、過冷却熱交換器27と、過冷却用膨張弁28と、液閉鎖弁29aと、ガス閉鎖弁29bと、を有している。圧縮機21と、アキュムレータ22と、四路切換弁23と、室外熱交換器24と、室外膨張弁26と、過冷却熱交換器27と、過冷却用膨張弁28と、液閉鎖弁29aと、ガス閉鎖弁29bとは、冷媒配管で接続されている。
【0019】
圧縮機21と、アキュムレータ22と、四路切換弁23と、室外熱交換器24と、室外膨張弁26と、過冷却熱交換器27の第1流路27aと、液閉鎖弁29aと、ガス閉鎖弁29bとは、液連絡配管4及びガス連絡配管5を介して、室内ユニット3a、3bに接続されており、冷媒回路7の一部を構成している。
【0020】
また、過冷却熱交換器27の第2流路27bと、過冷却用膨張弁28とは、冷媒配管で接続されている。過冷却熱交換器27の第2流路27bと、過冷却用膨張弁28とは、過冷却回路8の一部を構成している。冷房運転時には、過冷却回路8は、過冷却用膨張弁28及び過冷却熱交換器27の第2流路27bが、この順で接続されている。
【0021】
過冷却回路8は、室外熱交換器24から流出された冷媒の一部を分岐して、圧縮機21の吸入側に送るための回路である。過冷却回路8は、室外熱交換器24と過冷却熱交換器27との間と、圧縮機21の吸入側とを接続する。ここでは、過冷却回路8は、室外膨張弁26と過冷却熱交換器27との間の冷媒配管と、アキュムレータ22の入口側と四路切換弁23との間の冷媒配管と、を接続する。
【0022】
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機構である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。また、ここでは、圧縮機モータは、インバータ等により回転数(周波数)制御が可能になっており、これにより、圧縮機21の容量を制御できる。
【0023】
アキュムレータ22は、圧縮機21の吸入側に設けられる。アキュムレータ22は、圧縮機21に吸入される冷媒を一時的に溜める。換言すると、アキュムレータ22は、余剰冷媒を貯留する。
【0024】
四路切換弁23は、冷房運転と暖房運転との切換時に、冷媒の流れの方向を切り換えるための弁である。四路切換弁23は、冷房運転時には、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器24のガス側とを接続するとともに、ガス連絡配管5を介して室内熱交換器32a、32b(後述)のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する(図1における四路切換弁23の実線を参照)。また、四路切換弁23は、暖房運転時には、ガス連絡配管5を介して圧縮機21の吐出側と室内熱交換器32a、32bのガス側とを接続するとともに、室外熱交換器24のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する(図1における四路切換弁23の破線を参照)。
【0025】
室外熱交換器24は、冷房運転時には冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器24は、その液側が室外膨張弁26に接続されており、ガス側が四路切換弁23に接続されている。
【0026】
室外ファン25は、室外熱交換器24に熱源としての空気を通す。具体的には、室外ファン25は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器24に室外空気を供給した後に、室外ユニット2外に排出する。このため、室外熱交換器24は、室外空気を冷却源又は加熱源として、冷媒を放熱や蒸発させる。室外ファン25は、室外ファンモータによって回転駆動される。
【0027】
室外膨張弁26は、暖房運転時に室内熱交換器32a、32bにおいて放熱した高圧の液冷媒を室外熱交換器24に送る前に減圧することができる膨張機構である。ここでは、室外膨張弁26として、開度制御が可能な電動膨張弁が使用されている。
【0028】
過冷却熱交換器27は、室外熱交換器24と室内膨張弁31a、31bとの間に配置されている。過冷却熱交換器27は、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒を冷却する。本実施形態では、過冷却熱交換器27は、室内膨張弁31a、31bを冷媒が通過する音を抑制するために、過冷却を付けて循環量を減らす目的で使用されている。
【0029】
過冷却熱交換器27は、第1流路27aと、第2流路27bと、を有している。第1流路27aは、室内膨張弁31a、31bに流れ込む冷媒が流れる。ここでは、第1流路27aは、室外膨張弁26と室内膨張弁31a、31bとを接続する冷媒配管の一部を構成する。第2流路27bは、第1流路27aの冷媒と熱交換を行う冷媒が流れる。過冷却熱交換器27は、第2流路27bを流れる冷媒によって第1流路27aを流れる冷媒を冷却する熱交換器である。
【0030】
過冷却用膨張弁28は、第2流路27bを流れる冷媒を減圧する膨張機構である。ここでは、過冷却用膨張弁28として、開度制御が可能な電動膨張弁が使用されている。
【0031】
また、室外ユニット2と液連絡配管4との接続部には、液閉鎖弁29aが設けられている。室外ユニット2とガス連絡配管5との接続部には、ガス閉鎖弁29bが設けられている。液閉鎖弁29a及びガス閉鎖弁29bは、手動で開閉される弁である。
【0032】
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ41、圧縮機21の吸入温度を検出する吸入温度センサ42、圧縮機21の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ43、圧縮機21の吐出温度を検出する吐出温度センサ44、過冷却熱交換器27の第1流路27a出口温度を検出する過冷却熱交出口温度センサ45、及び過冷却用膨張弁28の出口側温度を検出する過冷却用膨張弁出口側温度センサ46が設けられている。本実施形態の過冷却用膨張弁出口側温度センサ46は、過冷却熱交換器27の第2流路27bの出口温度を検出する。
【0033】
(1-2)連絡配管
連絡配管4、5は、冷凍サイクル装置1を建物等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。液連絡配管4の一端は、室外ユニット2の過冷却熱交換器27の第1流路27a側に接続され、液連絡配管4の他端は、室内ユニット3a、3bの室内熱交換器32a、32bの液側に接続されている。ガス連絡配管5の一端は、室外ユニット2の四路切換弁23側に接続され、ガス連絡配管5の他端は、室内ユニット3a、3bの室内熱交換器32a、32bのガス側に接続されている。
【0034】
(1-3)室内ユニット
室内ユニット3a、3bは、室内(建物内)に設置されている。室内ユニット3a、3bは、上記のように、液連絡配管4及びガス連絡配管5を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路7の一部を構成している。
【0035】
室内ユニット3aと室内ユニット3bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット3aの構成のみ説明し、室内ユニット3bの構成については、それぞれ、室内ユニット3aの各部を示す添え字「a」の代わりに添え字「b」を付して、各部の説明を省略する。
【0036】
室内ユニット3aは、主として、室内膨張弁31aと、室内熱交換器32aと、室内ファン33aと、を有している。
【0037】
室内膨張弁31aは、冷媒を減圧しながら室内熱交換器32aを流れる冷媒の流量を調整する膨張機構である。室内膨張弁31aは、室内熱交換器32aの液側に対応して設けられている。ここでは、室内膨張弁31aは、開度制御が可能な電動膨張弁が使用されている。
【0038】
室内熱交換器32aは、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能する熱交換器である。室内熱交換器32aは、その液側が室内膨張弁31aに接続されており、ガス側がガス連絡配管5に接続されている。
【0039】
室内ファン33aは、室内熱交換器32aに熱源としての空気を通す。具体的には、室内ファン33aは、室内ユニット3a内に室内空気を吸入して、室内熱交換器32aに室内空気を供給した後に、室内ユニット3a外に排出する。このため、室内熱交換器32aは、室内空気を冷却源又は加熱源として、冷媒を放熱や蒸発させる。室内ファン33aは、室内ファンモータによって回転駆動される。
【0040】
また、室内ユニット3aには、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット3aには、室内ユニット3a内に吸入される室内空気の温度を検出する室内温度センサ34aが設けられている。
【0041】
(2)冷凍サイクル装置の制御構成
(2-1)全体構成
図2に示すように、冷凍サイクル装置1は、構成機器の運転制御を行うために、室外制御部20と室内制御部30a、30bとリモコン60a、60bとが伝送線や通信線を介して接続された制御部6を有している。室外制御部20は、室外ユニット2に設けられている。室内制御部30a、30bは、室内ユニット3a、3bに設けられている。リモコン60a、60bは、室内ユニット3a、3bが設置された室内に設けられている。なお、ここでは、室外制御部20、室内制御部30a、30b及びリモコン60a、60bが伝送線や通信線を介して有線接続されているが、無線接続されていてもよい。
【0042】
なお、冷凍サイクル装置1の室外制御部20、室内制御部30a、30b及びリモコン60a、60bの制御部は、各種演算及び処理を行い、例えば、CPU等の演算処理装置により実現される。
【0043】
(2-1-1)室外制御部
室外制御部20は、上記のように、室外ユニット2に設けられており、主として、室外CPU20aと、室外伝送部20bと、室外記憶部20cと、を有している。室外制御部20は、吸入圧力センサ41、吸入温度センサ42、吐出圧力センサ43、吐出温度センサ44、過冷却熱交出口温度センサ45、及び過冷却用膨張弁出口側温度センサ46の検出信号を受けることができるように構成されている。
【0044】
室外CPU20aは、室外伝送部20b及び室外記憶部20cに接続されている。室外伝送部20bは、室内制御部30a、30bとの間で制御データ等の伝送を行う。室外記憶部20cは、制御データ等を記憶する。そして、室外CPU20aは、室外伝送部20b及び室外記憶部20cを介して、制御データ等の伝送及び読み書きを行いつつ、室外ユニット2に設けられた構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、室外膨張弁26、室外ファン25、過冷却用膨張弁28等の運転制御を行う。
【0045】
(2-1-2)室内制御部
室内制御部30a、30bは、上記のように、室内ユニット3a、3bに設けられており、主として、室内CPU35a、35bと、室内伝送部36a、36bと、室内記憶部37a、37bと、室内通信部38a、38bと、を有している。室内制御部30a、30bは、室内温度センサ34a、34bの検出信号を受けることができるように構成されている。
【0046】
室内CPU35a、35bは、室内伝送部36a、36b、室内記憶部37a、37b及び室内通信部38a、38bに接続されている。室内伝送部36a、36bは、室外制御部20との間で制御データ等の伝送を行う。室内記憶部37a、37bは、制御データ等を記憶する。室内通信部38a、38bは、リモコン60a、60bとの間で制御データ等の送受信を行う。そして、室内CPU35a、35bは、室内伝送部36a、36b、室内記憶部37a、37b及び室内通信部38a、38bを介して、制御データ等の伝送、読み書き及び送受信を行いつつ、室内ユニット3a、3bに設けられた構成機器としての室内膨張弁31a、31b、室内ファン33a、33b等の運転制御を行う。
【0047】
(2-1-3)リモコン
リモコン60a、60bは、上記のように、室内に設けられており、主として、リモコンCPU61a、61bと、リモコン記憶部62a、62bと、リモコン通信部63a、63bと、リモコン操作部64a、64bと、リモコン表示部65a、65bと、を有している。
【0048】
リモコンCPU61a、61bは、リモコン記憶部62a、62b、リモコン通信部63a、63b、リモコン操作部64a、64b及びリモコン表示部65a、65bに接続されている。リモコン記憶部62a、62bは、制御データ等を記憶する。リモコン通信部63a、63bは、室内通信部38a、38bとの間で制御データ等の送受信を行う。リモコン操作部64a、64bは、居住者からの制御指令等の入力を受け付ける。リモコン表示部65a、65bは、運転表示等を行う。そして、リモコンCPU61a、61bは、リモコン操作部64a、64bを介して運転指令や制御指令等の入力を受け付けて、リモコン記憶部62a、62bに制御データ等の読み書きを行い、リモコン表示部65a、65bに運転状態や制御状態の表示等を行いつつ、リモコン通信部63a、63bを介して、室内制御部30a、30bに制御指令等を行う。
【0049】
このように、冷凍サイクル装置1は、構成機器の運転制御を行う制御部6を有している。そして、制御部6は、吸入圧力センサ41、吸入温度センサ42、吐出圧力センサ43、吐出温度センサ44、過冷却熱交出口温度センサ45、過冷却用膨張弁出口側温度センサ46、及び室内温度センサ34a、34bの検出信号等に基づいて構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、室外膨張弁26、室外ファン25、過冷却用膨張弁28、室内膨張弁31a、31b、室内ファン33a、33b等の制御を行い、冷房運転、暖房運転等の空調運転及び各種制御を行うことができるように構成されている。
【0050】
(2-2)詳細構成
制御部6は、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。本実施形態では、制御部6は、冷房運転(室外熱交換器24が凝縮器)時に、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。この制御は、冷媒の通過音を低減するための制御である。
【0051】
制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするタイミングと、圧縮機21の回転数を小さくするタイミングとを、ほぼ同時に実施する。例えば、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするタイミングと、圧縮機21の回転数を小さくするタイミングとのずれは、例えば5秒以内である。ここでは、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断すると、過冷却用膨張弁28に開度を大きくするための指令を送るとともに、圧縮機21に回転数を小さくするための指令を送る。そして、これらの指令を送るタイミングが、同時である。
【0052】
ここで、本実施形態のように、複数の室内ユニット3a、3bのそれぞれに室内膨張弁31a、31bが設けられている場合、制御部6は、複数の室内膨張弁31a、31bのうちの少なくとも1つの室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。図1では、制御部6は、室内膨張弁31aに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、及び、室内膨張弁31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、の少なくとも一方の場合に、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。このように、複数の室内ユニット3a、3bの少なくとも1つにおいて、冷媒の通過音が生じる場合に、制御部6は、この制御を実施する。このため、室外制御部20は、全ての室内制御部30a、30bから、室内ユニット3a、3bの情報を取得し、過冷却用膨張弁28の開度と、圧縮機21の回転数とを、決定する。
【0053】
具体的には、制御部6は、第1冷媒量を演算する。ここでは、室外制御部20は、圧縮機21の回転数と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度または圧力と、に基づいて、第1冷媒量を演算する。詳細には、室外制御部20は、圧縮機21に吸入される冷媒の温度または圧力として、吸入温度センサ42で検出される温度または吸入圧力センサ41で検出される圧力を取得して、蒸発温度を求める。また室外制御部20は、圧縮機21の回転数として、回転数計で検出される回転数をさらに取得する。そして、室外制御部20は、取得した圧縮機21の回転数と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度または圧力(蒸発温度)と、に基づいて、圧縮機21を通過する冷媒回路7全体を循環する冷媒量を求める。そして、室外制御部20は、室内制御部30a、30bから各室内膨張弁31a、31bの開度等を取得して、各室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量を演算する。
【0054】
なお、制御部6は、さらに圧縮機21から吐出される冷媒の温度または圧力に基づいて、第1冷媒量を算出してもよい。この場合、ここでは、室外制御部20は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度または圧力として、吐出圧力センサ43または吐出温度センサ44で検出される温度または圧力をさらに取得して、凝縮温度を求める。
【0055】
また、制御部6は、所定量を演算する。所定量は、室内ユニット3a、3bの室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒が、通過音を生じさせる可能性のある量である。本実施形態では、第1冷媒量は、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の通過音の対策が必要であると判断される量である。
【0056】
本実施形態のように、複数の室内ユニット3a、3bのそれぞれに室内膨張弁31a、31bが設けられている場合、所定量は、室内ユニット3a、3bに対して、それぞれ設けられる。所定量は、複数の室内ユニット3a、3bで同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
所定量は、例えば、室内ユニット3a、3bの運転状態、容量、タイプ、室内膨張弁31a、31bのサイズ等に応じて、設けられる。なお、運転状態は、サーモオン、サーモオフ等を含む。容量は、馬力等を含む。タイプは、天井埋め込み型、壁掛け型、床置き型等を含む。例えば、壁掛け型及び床置き型の場合の所定量は小さく、天井埋め込み型の場合の所定量は大きい。
【0058】
所定量は、一定値であってもよいが、ここでは変動値である。詳細には、制御部6は、例えば、各室内膨張弁31a、31bの開度、または、各室内ユニット3a、3bにおける設定温度及び室内温度の乖離度、に基づいて、所定量を変更する。本実施形態では、制御部6は、各室内膨張弁31a、31bの開度と、各室内ユニット3a、3bにおける設定温度及び室内温度の乖離度と、に基づいて、所定量を変更する。より詳細には、室内制御部30a、30bは、リモコン操作部64a、64bから受け付けた設定温度を、リモコン通信部63a、63bを介して取得する。また、室内制御部30a、30bは、室内温度センサ34a、34bで検出された室内温度を取得する。そして、室内制御部30a、30bは、取得した設定温度と室内温度との差である乖離度を算出し、さらに乖離度に基づいて所定量を演算する。室内制御部30a、30bは、所定量を常時演算してもよく、所定時間毎に演算してもよい。
【0059】
そして、室外制御部20は、室内制御部30a、30bから所定量を取得して、第1冷媒量が所定量を超えたか否かを判断する。なお、室外制御部20が、室内制御部30a、30bから設定温度及び室内温度を取得して、乖離度を算出して所定量を演算してもよい。
【0060】
室外制御部20は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28に開度を大きくする指令を送るとともに、圧縮機21に回転数を小さくする指令を送る。
【0061】
詳細には、制御部6は、冷房運転時に、室内熱交換器32a、32bの蒸発温度の目標値、及び、室内熱交換器32a、32bのガス側端における冷媒の過熱度の目標値の少なくとも一方を有している。そして、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくすることで、室内熱交換器32a、32bのエンタルピー差が大きくなった分、目標値を上げることによって、圧縮機21の回転数の指示値を補正する。これにより、圧縮機21の回転数を小さくすることができる。
【0062】
また、室外制御部20は、過冷却回路8を介して圧縮機21に戻る冷媒を気相にするために、過冷却熱交換器27の第2流路27bの出口側の冷媒の過熱度の下限値を有している。そして、室外制御部20は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過熱度の下限値を満たす条件において、過冷却用膨張弁28の開度が最大になるよう指示値を補正する。これにより、過冷却用膨張弁28の開度を大きくすることができる。
【0063】
このように、室外制御部20が圧縮機21の回転数を小さくすることによって、第1冷媒量を減らして通過音を低減させる。そして、室外制御部20が過冷却用膨張弁28の開度を大きくすることによって、冷媒回路7に流れる冷媒の循環量が減っても、室内熱交換器32a、32bに流入する冷媒の過冷却度を大きくして、室内熱交換器32a、32bの能力の低下を抑制する。この制御では、過冷却熱交換器27の第1流路27aから流出する冷媒の過冷却度を、例えば2℃~5℃下げる。
【0064】
なお、室内制御部30a、30bは、室外ユニット2から流出する冷媒を、各室内ユニット3a、3bの要求に応じて、室内膨張弁31a、31bの開度を調整することによって、各室内ユニット3a、3bへ流入する冷媒の量を分配する。このようにして、制御部6は、各室内膨張弁31a、31bに流れる第1冷媒量が所定以下になるように制御している。
【0065】
一方、室外制御部20は、第1冷媒量が所定量以下と判断した場合、冷媒の通過音を低減する制御が不要であるので、運転効率を優先させる。このため、本実施形態では、室外制御部20は、過冷却熱交換器27の第1流路27aから室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の温度、及び、過冷却用膨張弁28の出口側の冷媒の温度の少なくとも一方に基づいて、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。
【0066】
ここでは、室外制御部20は、冷房運転の効率を高めるために、室内膨張弁31a、31bに流れ込むれる冷媒の温度に基づいて、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。詳細には、室外制御部20は、過冷却熱交出口温度センサ45で検出される冷媒の温度を取得して、この冷媒の温度から過冷却度を求める。そして、室外制御部20は、求めた過冷却度が、室内ユニット3a、3bの要求に対応するように、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。
【0067】
また、ここでは、室外制御部20は、圧縮機21への液冷媒の流入防止のために、第2流路27bの出口側の冷媒の温度に基づいて、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。詳細には、室外制御部20は、第2流路27bの出口側の冷媒の温度として、過冷却用膨張弁出口側温度センサ46で検出される温度を取得する。そして、室外制御部20は、第2流路27bの出口側の冷媒の過熱度が一定値になるように、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。
【0068】
なお、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えると判断して、過冷却用膨張弁28に開度を大きくするとともに、圧縮機21に回転数を小さくした後、第1冷媒量が所定量以下になったと判断した場合、圧縮機21の回転数を大きくする。この場合、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えると判断したときに行っていた、蒸発温度または過熱度の目標値を上げて圧縮機21の回転数の指示値の一時的な補正を中止する。
【0069】
(3)運転動作
次に、冷凍サイクル装置1の運転動作について説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、空調運転として、暖房運転及び冷房運転を行う。なお、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、複数の室内ユニット3a、3bが個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能である。
【0070】
(3-1)暖房運転
暖房運転は、リモコン操作部64a、64bを介して暖房運転の指令を受け付けた制御部6が、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3bの構成機器としての圧縮機21、四路切換弁23、室外ファン25、室外膨張弁26、過冷却用膨張弁28、室内膨張弁31a、31b、室内ファン33a、33b等を運転制御することによって行われる。
【0071】
例えば、室内ユニット3a、3bの全てが暖房運転を行う際には、室外熱交換器24が冷媒の蒸発器として機能し、かつ、室内熱交換器32a、32bが冷媒の放熱器として機能する状態(図1の四路切換弁23の破線で示される状態)になるように、四路切換弁23が切り換えられる。
【0072】
このような状態の冷媒回路7において、図3に示すように、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23及びガス閉鎖弁29bを通じて、室外ユニット2から流出する。
【0073】
室外ユニット2から流出した冷媒は、ガス連絡配管5を通じて室内ユニット3a、3bに分岐して送られる。室内ユニット3a、3bに送られた冷媒は、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた高圧の冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって室内から供給される室内空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮する。この冷媒は、室内膨張弁31a、31bによって減圧されて、室内ユニット3a、3bから流出する。一方、室内熱交換器32a、32bにおいて加熱された室内空気は、室内に送られ、これにより、室内の暖房が行われる。
【0074】
室内ユニット3a、3bから流出した冷媒は、液連絡配管4を通じて合流して室外ユニット2に送られる。室外ユニット2に送られた冷媒は、液閉鎖弁29a及び過冷却熱交換器27の第1流路27aを通じて、室外膨張弁26に送られる。室外膨張弁26に送られた冷媒は、室外膨張弁26によって冷凍サイクルにおける低圧まで減圧された後に、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた冷媒は、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。この冷媒は、四路切換弁23及びアキュムレータ22を通じて圧縮機21に吸入される。
【0075】
なお、本実施形態では、制御部6は、過冷却用膨張弁28の開度を全閉状態で固定する制御を行い、液閉鎖弁29aを通った冷媒を、過冷却回路8を介して圧縮機21に流さないようにしている。
【0076】
(3-2)冷房運転
冷房運転は、リモコン操作部64a、64bを介して冷房運転の指令を受け付けた制御部6が、室外ユニット2及び室内ユニット3a、3bの構成機器として圧縮機21、四路切換弁23、室外ファン25、室外膨張弁26、過冷却用膨張弁28、室内膨張弁31a、31b、室内ファン33a、33b等を運転制御することによって行われる。
【0077】
例えば、室内ユニット3a、3bの全てが冷房運転を行う際には、室外熱交換器24が冷媒の放熱器として機能し、かつ、室内熱交換器32a、32bが冷媒の蒸発器として機能する状態(図1の四路切換弁23の実線で示される状態)になるように、四路切換弁23が切り換えられる。
【0078】
このような状態の冷媒回路7において、図4に示すように、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルにおける高圧まで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、室外熱交換器24に送られる。室外熱交換器24に送られた冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って凝縮する。この冷媒は、室外膨張弁26を通じて、過冷却熱交換器27の第1流路27aに送られる。過冷却熱交換器27でさらに冷却された冷媒は、液閉鎖弁29aを通じて室外ユニット2から流出する。
【0079】
なお、本実施形態では、制御部6は、室外膨張弁26の開度を全開状態で固定する制御を行い、室外熱交換器24から流出した冷媒を減圧しないようにしている。
【0080】
室外ユニット2から流出した冷媒は、液連絡配管4を通じて室内ユニット3a、3bに分岐して送られる。室内ユニット3a、3bに送られた冷媒は、室内膨張弁31a、31bによって冷凍サイクルにおける低圧まで減圧されて、室内熱交換器32a、32bに送られる。室内熱交換器32a、32bに送られた冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器32a、32bにおいて、室内ファン33a、33bによって室内から供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発する。この冷媒は、室内ユニット3a、3bから流出する。一方、室内熱交換器32a、32bにおいて冷却された室内空気は、室内に送られ、これにより、室内の冷房が行われる。
【0081】
室内ユニット3a、3bから流出した冷媒は、ガス連絡配管5を通じて室外ユニット2に合流して送られる。室外ユニット2に送られた冷媒は、ガス閉鎖弁29b、四路切換弁23及びアキュムレータ22を通じて圧縮機21に吸入される。
【0082】
上記の冷房運転の際に、制御部6は、過冷却熱交換器27及び過冷却回路8によって、冷媒回路7の第1流路27aを流れる冷媒を、第2流路27bを流れる冷媒で冷却して、液連絡配管4に送るようにしている。具体的には、室外膨張弁26を通った冷媒の一部を分岐して、過冷却回路8を通じて、圧縮機21に送る。その際に、過冷却用膨張弁28の開度を制御することで、第2流路27bを流れる冷媒の流量を調整している。
【0083】
ここで、図5を参照して、本実施形態の冷房運転時の制御について説明する。上記の冷房運転中に、制御部6によって、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量を演算する(ステップS1)。このステップS1では、上述したように、制御部6によって、圧縮機21の回転数と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度または圧力と、に基づいて、第1冷媒量を演算する。
【0084】
次に、制御部6によって、室内膨張弁31a、31bにおいて通過音が発生する可能性のある所定量を演算する(ステップS2)。このステップS2では、上述したように、各室内膨張弁31a、31bの開度と、各室内ユニット3a、3bにおける設定温度及び室内温度の乖離度と、に基づいて、所定量を演算する。
【0085】
次に、制御部6によって、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたか否かを判断する(ステップS3)。ステップS3において、第1冷媒量が所定量を超えたと判断された場合、通過音を考慮するために、ステップS4に移行する。一方、ステップS3において、第1冷媒量が所定量以下と判断された場合、通過音を考慮しなくても良いので、冷房運転の効率を高めるために、ステップS5に移行する。
【0086】
ステップS4では、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。圧縮機21の回転数を小さくすることによって、冷媒回路7を流れる冷媒量が減る。このため、室内膨張弁31a、31bで冷媒を減圧しても、室内膨張弁31a、31bを冷媒が通過する音を低減することができる。また、過冷却用膨張弁28の開度を大きくすることで、過冷却回路8において、第2流路27bを流れる冷媒によって、第1流路27aを流れる冷媒を冷却して、過冷却を大きくする。このため、室内熱交換器32a、32bに流入する冷媒量が減っても、その能力の低下を抑制することができる。
【0087】
ステップS5では、過冷却熱交換器27の第1流路27aから室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の温度、及び、過冷却用膨張弁28の出口側の冷媒の温度の少なくとも一方に基づいて、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。第1流路27aの出口側の冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁28の開度を調整することによって、過冷却回路8における第2流路27bを流れる冷媒による第1流路27aを流れる冷媒の冷却を行うことで、室内ユニット3a、3bで要求される能力に応じて、過冷却度を調整することができる。過冷却用膨張弁28の出口側の冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁28の開度を調整することによって、第2流路27bから過冷却回路8を介して圧縮機21に戻す冷媒の過熱度を調整することができる。
【0088】
ステップS4またはステップS5を実施した後、現在の冷房運転の状態に応じて、ステップS1~S5を繰り返す。本実施形態では、ステップS3において第1冷媒量が所定量以下になるまで、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくして(ステップS4)、通過音を低減するための制御を優先する。
【0089】
(4)特徴
(4-1)
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、室内ユニット3a、3bと、室外ユニット2と、を含む冷凍サイクル装置1であって、冷媒回路7と、過冷却回路8と、制御部6と、を備えている。冷媒回路7は、圧縮機21、室外熱交換器24、室内膨張弁31a、31b、及び室内熱交換器32a、32bが、この順に冷媒配管で接続されている。過冷却回路8は、過冷却熱交換器27と、過冷却用膨張弁28と、が接続されている。過冷却熱交換器27は、第1流路27aと、第2流路27bと、を有している。第1流路27aは、室外熱交換器24と室内膨張弁31a、31bとの間に配置され、室内膨張弁31a、31bに流れ込む冷媒が流れる。第2流路27bは、第1流路27aの冷媒と熱交換を行う冷媒が流れる。過冷却用膨張弁28は、第2流路27bを流れる冷媒を減圧する。制御部6(本実施形態では室外制御部20)は、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。
【0090】
本発明者は、室内膨張弁31a、31bを冷媒が通過する際に、冷媒量が多いことに起因して、通過音が発生するという問題に着目した。この問題に対して、本実施形態の冷凍サイクル装置1によれば、制御部6は、室内ユニット3a、3bの室内膨張弁31a、31bに流れる第1冷媒量が、通過音が生じる可能性のある所定量を超えたときに、圧縮機21の回転数を小さくする制御を行う。圧縮機21の回転数を小さくすることで、冷媒回路7を流れる冷媒量を減らすことができる。このため、冷媒の通過音を低減することができる。
【0091】
しかし、室内熱交換器32a、32bに流入する冷媒量を減らすと、能力の低下が懸念される。これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置1によれば、過冷却用膨張弁28の開度を大きくすることで、過冷却回路8において、第2流路27bを流れる冷媒によって、第1流路27aを流れる冷媒の過冷却を大きくできる。室内熱交換器32a、32b(蒸発器)の能力は、エンタルピー差と冷媒量との積であるため、冷媒量を減らしても、過冷却によるエンタルピー差を大きくできる。このため、室内熱交換器32a、32bの能力の低下を抑制できる。
【0092】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、通過音の低減と、蒸発能力の低下の抑制とを両立することができる。このため、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、長い冷媒配管を有する冷凍サイクル装置に好適に用いられる。
【0093】
なお、本実施形態では、冷房運転(室外熱交換器24が凝縮器)時に、制御部6は、室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の量である第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、過冷却用膨張弁28の開度を大きくするとともに、圧縮機21の回転数を小さくする。
【0094】
(4-2)
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)の冷凍サイクル装置であって、制御部6は、圧縮機21の回転数と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度または圧力と、に基づいて、第1冷媒量を演算する。
【0095】
ここでは、制御部6は、上記のように演算した第1冷媒量が所定値を超えたときに、通過音が生じる可能性があると判断して、過冷却用膨張弁28及び圧縮機21を制御する。このため、冷媒の通過音をより低減することができる。
【0096】
(4-3)
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)または(4-2)の冷凍サイクル装置であって、室内ユニット3a、3bは、複数ある。複数の室内ユニット3a、3bのそれぞれに室内膨張弁31a、31bが設けられている。制御部6は、各室内膨張弁31a、31bの開度と、各室内ユニット3a、3bにおける設定温度及び室内温度の乖離度と、に基づいて、所定量を変更する。
【0097】
ここでは、制御部6は、複数の室内ユニット3a、3bのそれぞれの室内膨張弁31a、31bの開度と、各室内ユニット3a、3bにおける乖離度とに基づいて、通過音が生じる可能性のある所定値を変更する。このため、冷媒の通過音をより低減することができる。
【0098】
(4-4)
本実施形態の冷凍サイクル装置1は、上記(4-1)~(4-3)のいずれかの冷凍サイクル装置であって、制御部6は、第1冷媒量が所定量以下と判断した場合、過冷却熱交換器27の第1流路27aから室内膨張弁31a、31bに流れる冷媒の温度、及び、過冷却用膨張弁28の出口側の冷媒の温度の少なくとも一方に基づいて、過冷却用膨張弁28の開度を調整する。
【0099】
ここでは、第1冷媒量が所定量以下の場合、換言すると、通過音を考慮しなくても良い場合には、通過音を考慮する場合と、制御を異ならせている。具体的には、通過音を考慮しない場合に、過冷却熱交換器27の第1流路27aから室内膨張弁31a、31bに向かう冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁28の開度を調整することによって、高い効率の冷房運転を行うことができる。また、通過音を考慮しない場合に、過冷却用膨張弁28の出口側の冷媒の温度に基づいて過冷却用膨張弁28の開度を調整することによって、第2流路27bから冷媒を戻す圧縮機21を保護することができる。
【0100】
(5)変形例
(5-1)変形例1
上述した実施形態では、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、圧縮機21の回転数を小さくするため、室内熱交換器32a、32bにおける蒸発温度または過熱度の目標値を上げることによって、圧縮機21の回転数の指示値を補正するが、これに限定されない。本変形例では、圧縮機21の回転数を小さくするため、制御部6は、第1冷媒量が所定量を超えたと判断した場合、室内膨張弁31a、31bの開度を小さくすることによって、圧縮機21の回転数の指示値を補正する。
【0101】
(5-2)変形例2
上述した実施形態では、過冷却用膨張弁28は、室外膨張弁26と過冷却熱交換器27との間から分岐した冷媒配管に設けられているが、これに限定されない。本変形では、過冷却用膨張弁28は、過冷却熱交換器27と液閉鎖弁29aとの間から分岐した冷媒配管に設けられる。この場合、過冷却熱交換器27の第1流路27aから流出した冷媒の一部を分岐して、過冷却回路8に送って、過冷却用膨張弁28で減圧された冷媒を過冷却熱交換器27の第2流路27bに流す。
【0102】
(5-3)変形例3
上述した実施形態では、複数の室内ユニット3a、3bが個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能な冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例の冷凍サイクル装置は、複数の室内ユニット3a、3bが個別に冷房運転または暖房運転を行うことが可能でない。この場合、例えば、室内ユニット3a、3bに共通の室内膨張弁が設けられている。
【0103】
(5-4)変形例4
上述した実施形態では、冷凍サイクル装置1は、2つの室内ユニット3a、3bを備えているが、室内ユニットの数は限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、3つ以上の室内ユニットを備えてもよく、1つの室内ユニットを備えてもよい。
【0104】
(5-5)変形例5
上述した実施形態では、冷房運転及び暖房運転を行う冷凍サイクル装置1を例に挙げて説明したが、本開示の冷凍サイクル装置は、冷房運転を行えば、これに限定されず、除湿運転等をさらに行ってもよい。本変形例の冷凍サイクル装置は、冷房専用の空気調和装置である。
【0105】
(5-6)変形例6
上述した実施形態では、冷凍サイクル装置1として空気調和装置を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本開示の冷凍サイクル装置は、給湯装置、床暖房装置、冷蔵装置等であってもよい。
【0106】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0107】
1 :冷凍サイクル装置
6,20,30a,30b:制御部
2 :室外ユニット
3a、3b :室内ユニット
7 :冷媒回路
8 :過冷却回路
21 :圧縮機
24 :室外熱交換器
27 :過冷却熱交換器
27a :第1流路
27b :第2流路
28 :過冷却用膨張弁
31a,31b :室内膨張弁
32a,32b :室内熱交換器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特開2019-86239号公報
図1
図2
図3
図4
図5