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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036973
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電源装置、及び電圧生成方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240311BHJP
【FI】
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141562
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩文
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA06
5H770EA01
5H770GA19
5H770HA03Y
5H770HA04Y
5H770HA05Z
(57)【要約】
【課題】電力系統の状態に応じて柔軟に出力電圧を生成することが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】出力電圧の周波数を制御することによって電力系統との間で電力を入出力する電源装置であって、
前記電力系統に出力する目標となる第1電力と、前記電力系統に実際に入出力される第2電力と、所定の設定周波数とに基づいて、前記出力電圧に対する指令周波数を計算する計算部と、前記指令周波数を補正する補正部と、補正後の前記指令周波数に基づいて、生成された前記出力電圧を、前記電力系統に出力する出力部とを備え、前記補正部は、前記第1電力と、前記第2電力とが、定常状態において一致するよう、定常状態において得られた、補正前の前記指令周波数と、前記出力電圧の実際の周波数との誤差に基づいて、前記出力電圧を制御するための制御信号を生成する生成部と、前記制御信号に基づいて前記指令周波数を補正する、電源装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を有する同期発電機を模擬し、出力電圧の周波数を制御することによって電力系統との間で電力を入出力する電源装置であって、
前記電力系統に出力する目標となる第1電力と、前記電力系統に実際に入出力される第2電力との第1の差を計算する減算部と、
前記第1の差と、前記回転体の慣性を示す慣性定数と、前記回転体の回転の減衰を示す制動定数と、前記電力系統の定格周波数と、所定の設定周波数とに基づいて、前記出力電圧に対する指令周波数を計算する周波数計算部と、
計算された前記指令周波数と、計算された前記指令周波数及び前記慣性定数の第1の関係を示す第1の情報と、を用いて、前記慣性定数を調整する第1調整部と、
前記指令周波数に基づいて、前記出力電圧を制御するための制御信号を生成する生成部と、
前記制御信号に基づいて生成された前記出力電圧を、前記電力系統に出力する出力部と
を備える、電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記第1の関係は、
計算された前記指令周波数が前記定格周波数に近いほど小さくなる特性を有する、
電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置であって、
前記第1の関係は、
前記定格周波数に対して対称となる特性を有する、
電源装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電源装置であって、
計算された前記指令周波数と、計算された前記指令周波数及び前記制動定数の第2の関係を示す第2の情報と、を用いて、前記制動定数を調整する第2調整部を更に有する、
電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置であって、
前記第2の関係は、
計算された前記指令周波数が前記電力系統の定格周波数に近いほど小さくなる特性を有する、
電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置であって、
前記第2の関係は、
前記定格周波数に対して対称となる特性を有する、
電源装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電源装置であって、
前記周波数計算部は、
計算された前記指令周波数が、前記設定周波数よりも小さい所定の下限値よりも大きく、前記設定周波数よりも大きい所定の上限値よりも小さい場合に、前記回転体の回転の減衰の影響を排除して、前記指令周波数を再度計算する
電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電源装置であって、
計算された前記指令周波数を前記上限値及び前記下限値で制限して出力する制限部を更に備え、
前記周波数計算部は、
前記制限部から出力される前記指令周波数が前記上限値より小さく前記下限値より大きい場合、前記第1の差及び前記慣性定数に基づいて、前記指令周波数を計算し、前記制限部から出力される前記指令周波数が前記上限値または前記下限値である場合、前記制限部から出力される前記指令周波数及び計算された前記指令周波数の第2の差と、前記制動定数と、前記第1の差と、前記慣性定数と、に基づいて前記指令周波数を計算する、
電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電源装置であって、
前記上限値と前記設定周波数との差は、前記設定周波数と前記下限値との差に等しく設定されている、
電源装置。
【請求項10】
回転体を有する同期発電機を模擬し、出力電圧の周波数を制御することによって電力系統との間で電力を入出力する電源装置が、
前記電力系統に出力する目標となる第1電力と、前記電力系統に実際に入出力される第2電力との第1の差を計算するステップと、
前記第1の差と、前記回転体の慣性を示す慣性定数と、前記回転体の回転の減衰を示す制動定数と、前記電力系統の定格周波数と、所定の設定周波数とに基づいて、前記出力電圧に対する指令周波数を計算するステップと、
計算された前記指令周波数と、計算された前記指令周波数及び前記慣性定数の第1の関係を示す第1の情報と、を用いて、前記慣性定数を調整するステップと、
前記指令周波数に基づいて、前記出力電圧を制御するための制御信号を生成する生成するステップと、
前記制御信号に基づいて生成された前記出力電圧を、前記電力系統に出力するステップと
を含む、電圧生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、及び電圧生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同期発電機は、回転体が有する慣性により、電力系統の周波数の維持に貢献する。近年、インバータの出力を制御することにより、同期発電機を模擬する擬似同期発電機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7023430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された擬似同期発電機においては、模擬すべき同期発電機の回転体の慣性定数や制動係数(制動定数)といったパラメータは固定値である。
【0005】
これらのパラメータが固定値であると、電力系統の状態に応じて柔軟に出力電圧を生成することは困難である。
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、電力系統の状態に応じて柔軟に出力電圧を生成することが可能な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一の発明は、回転体を有する同期発電機を模擬し、出力電圧の周波数を制御することによって電力系統との間で電力を入出力する電源装置であって、前記電力系統に出力する目標となる第1電力と、前記電力系統に実際に入出力される第2電力との第1の差を計算する減算部と、前記第1の差と、前記回転体の慣性を示す慣性定数と、前記回転体の回転の減衰を示す制動定数と、前記電力系統の定格周波数と、所定の設定周波数とに基づいて、前記出力電圧に対する指令周波数を計算する周波数計算部と、計算された前記指令周波数と、計算された前記指令周波数及び前記慣性定数の第1の関係を示す第1の情報と、を用いて、前記慣性定数を調整する第1調整部と、前記指令周波数に基づいて、前記出力電圧を制御するための制御信号を生成する生成部と、前記制御信号に基づいて生成された前記出力電圧を、前記電力系統に出力する出力部とを備える、電源装置である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力系統の状態に応じて柔軟に出力電圧を生成することが可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な電源装置5が設けられた電力系統1の一例を説明する図である。
図2】一般的な電源装置5が設けられた電力系統1の一例を説明する図である。
図3】一般的な電源装置5の計算部50を説明する図である。
図4】実施形態の電源装置2を説明するための図である。
図5】実施形態の電源装置2の計算部30を説明する図である。
図6】計算された指令周波数及び慣性定数の関係の一例を示す図である。
図7】計算された指令周波数及び制動定数の関係の一例を示す図である。
図8】計算された指令周波数及び慣性定数の関係の他の例を示す図である。
図9】計算された指令周波数及び制動定数の関係の他の例を示す図である。
図10】実施形態の電源装置の計算部40を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
==第1実施形態==
<<一般的な電源装置5>>
図1は、一般的な電源装置5が設けられた電力系統1の一例を説明する図である。ここでは、本実施形態の電源装置2(後述)の説明をする前に、一般的な電源装置5の説明をする。一般的な電源装置5は、電圧制御(GFM:Grid-ForMing)方式により、回転体を有する同期発電機を模擬する所謂擬似同期発電機である。
【0011】
具体的には、電源装置5は、出力電圧voutの周波数を制御することによって電力系統1との間で電力Poutを入出力する装置である。なお、電力Poutは、正の場合が電源装置5から電力系統1へ出力される電力であり、負の場合が電力系統1から電源装置5に入力される電力である。
【0012】
電源装置5は、電力系統1との間に線路リアクタンスXを介して電力系統1に連系される。
【0013】
電源装置5は、制御装置7と、出力部20とを備える。以下では、先ず、制御装置7のハードウェア構成について説明し、次いで、電源装置5の機能ブロックについて説明する。
【0014】
<制御装置7のハードウェア構成>
制御装置7は、DSP(Digital Signal Processor)35と、記憶装置36とを備える(図1)。
【0015】
[DSP35]
DSP35は、記憶装置36に記憶された所定のプログラムを実行することにより、制御装置7が有する様々な機能を実現する。
【0016】
[記憶装置36]
記憶装置36は、DSP35によって、実行または処理される各種データを格納する非一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置を含む。
【0017】
記憶装置36は、更に、例えばRAM(Random-Access Memory)等(後述するメモリ36a)を有し、様々なプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0018】
<電源装置5の機能ブロック>
図2は、一般的な電源装置5が設けられた電力系統1の一例を説明する図であって、特に電源装置5の機能ブロックを説明する図である。DSP35が所定のプログラムを実行した結果、制御装置7には、計算部50と、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33とが実現される。
【0019】
これによって、電源装置5は、計算部50と、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33と、出力部20とを備える。以下、それぞれについて説明する。
【0020】
なお、図面に示したブロックに同じ符号が付されている場合、それらのブロックは同一である。
【0021】
[計算部50]
計算部50は、GFM方式により同期発電機を模擬することにより、電力系統1に出力される出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する。
【0022】
具体的には、計算部50は、電力系統1に入出力する目標となる電力Pref(「第1電力」に相当)と、電力系統1に実際に入出力される電力Pout(「第2電力」に相当)と、所定の設定周波数fn,refとに基づいて、出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する。
【0023】
以下の説明では、計算部50が模擬する同期発電機が有する回転体の慣性定数をHとし、制動定数をDとする。
【0024】
慣性定数Hは、回転体の慣性を示すパラメータである。つまり、慣性定数Hは、外力に対する回転体の応答しにくさを模擬するためのパラメータである。回転体は、慣性定数Hが大きいほど所定の軸の回りの回転速度が変化しにくく、加速や減速がしにくい。なお、慣性定数Hは、慣性モーメントに相当するパラメータである。
【0025】
制動定数Dは、回転体の回転の減衰を示すパラメータである。制動定数Dは、例えば摩擦等により、回転体が回転に逆らう向きに受ける抵抗を模擬するためのパラメータである。つまり、制動定数Dが大きいほど、回転体の回転周波数は減衰しやすい。
【0026】
図3は、一般的な電源装置5の計算部50を説明する図である。計算部50は、加算器300,301,305と、乗算器302,303,306,307と、積分器304とを有する。
【0027】
詳細は後述するが、図3の乗算器302から積分器304までの処理において、計算部50は、慣性定数Hに応じて、指令周波数frefを出力する。このとき、慣性定数Hが大きいほど回転体は外力に対して回転速度、すなわち周波数が変化しにくいことから、指令周波数frefの変動は小さく抑えられる。
【0028】
また、図3の加算器305から加算器301までの処理において、計算部50は、制動定数Dに応じて、指令周波数frefと、設定周波数fn,refとの差に応じた電力Pを計算して出力する。このとき、制動定数Dが大きいほど、電力Pの絶対値は大きい。
【0029】
また、加算器300から加算器301まので処理において、計算部50は、PH,in(=Pref-Pout-P)を計算し、乗算器302に出力する。ここで、PH,inが正の値であれば、指令周波数frefは増加する。また、PH,inが負の値であれば、指令周波数frefは減少する。
【0030】
以下、計算部50のそれぞれの構成要素が実行する処理について説明する。
【0031】
加算器300は、電力Prefから、電力Poutを減じる演算を実行する。これによって、加算器300は、電力Prefと、電力Poutとの差(電力Pref-Pout)を出力する。
【0032】
加算器301は、加算器300の出力である電力Pref-Poutから、後述する乗算器307の出力である電力Pを減じる演算を実行することにより、電力PH,in(=Pref-Pout-P)を出力する。
【0033】
乗算器302は、加算器300からの入力である電力PH,inに対し、1/2Hを乗算する演算(つまり、2Hで除する演算)を実行する。ここで、Hは慣性定数である(上述)。
【0034】
乗算器は303、乗算器302からの入力に対し、電力系統1の定格周波数fを乗ずる演算を実行する。電力系統1の定格周波数fは、例えば日本国内においては、東日本は50Hzであり、西日本は60Hzである。
【0035】
積分器304は、乗算器303からの入力に対し、所定期間に亘って時間積分する演算を実行する。この演算によって、積分器304は、電力系統1に出力される出力電圧voutの周波数の指令値である指令周波数frefを出力する。
【0036】
加算器305は、積分器304からの入力である指令周波数frefから、設定周波数fn,refを減じる演算を実行することにより、Δfrefを出力する。
【0037】
乗算器306は、加算器305からの入力であるΔfrefに対し、電力系統1の定格周波数fで除する演算を実行する。
【0038】
乗算器307は、乗算器306からの入力に対し、Dを乗じる演算を実行することにより、前述のPを出力する。ここで、Dは、GFM制御方式における制動定数である(上述)。
【0039】
[積分器31]
図2の積分器31は、計算部50からの入力である指令周波数frefに対し、所定期間に亘って時間積分する演算を実行する。この演算によって、積分器31は、出力部20から出力される出力電圧voutの位相の指令値である位相θrefを出力する。
【0040】
[瞬時電圧制御部32]
瞬時電圧制御部32は、積分器31からの入力である位相θrefと、出力電圧voutの振幅の指令値である指令振幅Vrefとに基づいて、PWM制御における基本波としての正弦波状の信号を生成する。正弦波状の信号は、PWMパルス生成部33に出力される。
【0041】
[PWMパルス生成部33]
PWMパルス生成部33は、例えば三角波で実現される搬送波と、瞬時電圧制御部32からの入力である基本波との交点を検出する。これによって、PWMパルス生成部33は、PWMパルスのデューティ比を決定し、決定したデューティ比を有するPWMパルスを生成する。PWMパルスは、出力部20に出力され、出力部20のインバータ回路(後述)が駆動される。
【0042】
[出力部20]
出力部20は、直流電源200と、複数のスイッチング素子を含むインバータ回路(図示せず)とを有する。インバータ回路は、直流電源200からの直流電圧を交流電圧に変換し、電力系統1に出力電圧voutとして出力する。このとき、インバータ回路は、PWMパルス生成部33からの出力であるPWMパルスに基づいて、出力電圧voutを出力する。
【0043】
以上説明した電源装置5の各構成要素の処理により、出力部20から電力系統1へ出力電圧voutが出力される。
【0044】
一般的な電源装置5においては、慣性定H及び制動定数Dは、それぞれ固定値である。これらのパラメータが固定値であると、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することは困難である。
【0045】
以下では、本実施形態の電源装置2について説明する。詳細は後述するが、本実施形態の電源装置2は、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能な電源装置である。
【0046】
<<電源装置2>>
図4は、本実施形態の電源装置2を説明するための図である。電源装置2は、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能な電源装置2である。
【0047】
電源装置2は、制御装置3と、出力部20とを備える。なお、制御装置3のハードウェア構成については上述の一般的な電源装置5の制御装置7と同様であるため、これについての詳細な説明は省略する。
【0048】
<電源装置2の機能ブロック>
本実施形態では、DSP35が所定のプログラムを実行した結果、制御装置3には、計算部30と、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33とが実現される。
【0049】
これによって、電源装置2は、計算部30と、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33と、出力部20とを備える。
【0050】
なお、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33とをまとめたものは、「生成部」に相当する。つまり、「生成部」は、出力電圧voutを制御するための制御信号を生成する。
【0051】
ここで、積分器31と、瞬時電圧制御部32と、PWMパルス生成部33と、出力部20とはそれぞれ、上述した一般的な電源装置5のそれぞれと同様の構成であるため、以下ではこれらの説明を省略する。
【0052】
つまり、電源装置2は、一般的な電源装置5と比べると、計算部30の構成が異なる。以下では、計算部30について詳細に説明する。
【0053】
[計算部30]
計算部30は、上述した計算部50と同様に、GFM方式により同期発電機を模擬することにより、電力系統1に出力される出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する。そして、計算部30は、計算した指令周波数frefを積分器31に出力する。
【0054】
図5は、本実施形態の電源装置2の計算部30を説明する図である。計算部30は、加算器300,301,305と、乗算器302,303,306,307と、積分器304と、調整部308,309とを有する。
【0055】
ここで、加算器300,301,305と、乗算器302,303,306,307と、積分器304とはそれぞれ、上述した一般的な電源装置5の計算部50のそれぞれと同様の構成であるため、以下ではこれらの説明を省略する。
【0056】
なお、加算器300は、「減算部」に相当する。つまり、減算部は、電力Pref及び電力Poutの差(「第1の差」に相当)を計算する。
【0057】
また、加算器301,305と、乗算器302,303,306,307と、積分器304とは、「周波数計算部」に相当する。つまり、周波数計算部は、電力Pref及び電力Poutの差と、慣性定数Hと、制動定数Dと、電力系統1の定格周波数fと、所定の設定周波数fn,refとに基づいて、出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する。
【0058】
つまり、計算部30は、一般的な電源装置5の計算部50と比べると、調整部308,309を更に備えている点で異なる。なお、調整部308は「第1調整部」に相当し、調整部309は「第2調整部」に相当する。以下では、調整部308,309について詳細に説明する。
【0059】
[調整部308]
調整部308は、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係(「第1の関係」に相当)を示す情報(「第1の情報」に相当)と、を用いて、慣性定数Hを調整する。
【0060】
図6は、計算された指令周波数fref(横軸)及び慣性定数H(縦軸)の関係の一例を示す図である。この図に示す関係は、電源装置2の設計者又は運用者等によって予め設定されたものである。
【0061】
この例では、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係は、計算された指令周波数frefが定格周波数fに近いほど小さくなる特性を有する。
【0062】
具体的には、慣性定数Hの値は、Hdefault又はHminのいずれかを取り得る。Hdefaultは、例えば、一般的な電源装置5において用いられる慣性定数Hと同じか同程度の値とすればよい。Hminは、Hdefaultよりも小さい。
【0063】
また、fは、電力系統1の定格周波数である(前述)。fDB,Lは、所定の下限値f-fDB,Lを設定するためのパラメータであり、fDB,Hは、所定の上限値f+fDB,Hを設定するためのパラメータである。fDB,L及びfDB,Hの値は、いずれも正である。
【0064】
この例では、計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,L以上であり、上限値f+fDB,H以下である場合に、慣性定数Hの値はHminである。計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,Lより小さいか、上限値f+fDB,Hより大きい場合に、慣性定数Hの値はHdefaultである。
【0065】
また、この例では、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係は、定格周波数fに対して対称となる特性を有する。つまり、fDB,L及びfDB,Hは等しい。
【0066】
調整部308は、調整した慣性定数Hを、乗算器302に出力する。これによって、乗算器302は、調整された慣性定数Hを用いて演算を行う。
【0067】
以下では、調整部308が図6に示した関係を用いて慣性定数Hを調整することの効果について説明する。
【0068】
電力系統1の出力電圧の周波数は、常時定格周波数fであることが理想である。しかし、電力系統1の正常時においても、電力系統1の出力電圧の周波数は、様々な要因や誤差等により、定格周波数fから微弱な変動を示す場合がある。
【0069】
一般的な電源装置5は、このような周波数の微弱な変動に対し、出力電圧voutの周波数を瞬時に同期させることができない場合がある。これは、一般的な電源装置5が模擬すべき同期発電機が有する回転体が、その慣性や受ける抵抗により、外力に対して瞬時に応答できないことに起因している。
【0070】
電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動に対し、電源装置5の出力電圧voutの周波数が瞬時に同期しないと、電力系統1の出力電圧の位相と、電源装置5の出力電圧voutの位相とが互いに乖離するように変動する。
【0071】
そうすると、電力Poutが電力Prefに対して乖離し、不要な電力Poutの入出力が生じる。このような不要な電力Poutの入出力を抑制するため、調整部308は、図6に示す関係を用いて、慣性定数Hを調整する。以下、詳細に説明する。
【0072】
図6に示すように、計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,HLから上限値f+fDB,Hまでの範囲内である場合、慣性定数Hは、Hminに調整される。Hminは、一般的な電源装置5において用いられる慣性定数Hに比べて小さい値である。
【0073】
この場合、電源装置2が模擬すべき同期発電機の回転体の慣性定数が小さくなり、回転体は回転しやすくなることに相当する。つまり、模擬すべき同期発電機の出力電圧は、電力系統1の出力電圧に同期しやすくなることに相当する。
【0074】
これによって、計算部30によって計算される指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。
【0075】
これによって、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動が生じ、指令周波数frefが下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hまでの範囲である場合に、不要な電力Poutの入出力が抑制される。
【0076】
換言すると、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動に対し、入出力される電力Poutの変化が抑制される領域(不感帯)を設けることができる。この例の不感帯は、指令周波数frefが下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hまでの範囲である。
【0077】
以上のことから、図6の関係を用意するための設定パラメータであるfDB,L、fDB,H及びHminについては以下のことがいえる。
【0078】
DB,L及びfDB,Hは、電力系統1の出力電圧の周波数の、正常時における定格周波数fからの変動幅程度であることが好ましい。このように設定することにより、電力系統1の出力電圧の周波数が変動幅の範囲内である場合に、不要な電力Poutの入出力を抑制することができる。
【0079】
また、Hminは小さく、0(零)に近いほど好ましい。Hminが小さいほど、電力系統1の出力電圧の周波数が変動幅の範囲内である場合に、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に同期しやすくなる。
【0080】
なお、慣性定数Hは、乗算器302において逆数として乗算される。そのため、Hminは数値計算上不安定な解が出力されない範囲において、可能な限り小さく設定されることが好ましい。
【0081】
[調整部309]
調整部309は、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係(「第2の関係」に相当)を示す情報(「第2の情報」に相当)と、を用いて、制動定数Dを調整する。
【0082】
図7は、計算された指令周波数fref(横軸)及び制動定数D(縦軸)の関係の一例を示す図である。この図に示す関係は、電源装置2の設計者又は運用者等によって予め設定されたものである。
【0083】
この例では、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係は、計算された指令周波数frefが電力系統1の定格周波数fに近いほど小さくなる特性を有する。
【0084】
具体的には、制動定数Dの値は、Ddefault又はDminのいずれかを取り得る。Ddefaultは、例えば、一般的な電源装置5において用いられる制動定数Dと同じか同程度の値とすればよい。Dminは、Ddefaultよりも小さい。
【0085】
また、定格周波数f、fDB,L及びfDB,Hは、図6及び調整部308の説明で述べたものと同様である。
【0086】
この例では、計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,L以上であり、上限値f+fDB,H以下である場合に、制動定数Dの値はDminである。計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,Lより小さいか、上限値f+fDB,Hより大きい場合に、慣性定数Dの値はDdefaultである。
【0087】
また、この例では、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係は、定格周波数fに対して対称となる特性を有する。
【0088】
調整部309は、調整した制動定数Dを、乗算器307に出力する。これによって、乗算器307は、調整された制動定数Dを用いて演算を行う。
【0089】
以下では、調整部309が図7に示した関係を用いて制動定数Dを調整することの効果について説明する。
【0090】
一般的な電源装置5において、電力系統1の出力電圧の周波数に微弱な変動が生じると、電力Poutが電力Prefに対して乖離し、不要な電力Poutが入出力されることは上述した通りである。
【0091】
このような不要な電力Poutの入出力を更に抑制するため、調整部309は、図7に示す関係を用いて、制動定数Dを調整する。以下、詳細に説明する。
【0092】
図7に示すように、計算された指令周波数frefが、下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hまでの間である場合、制動定数Dは、Dminに調整される。Dminは、一般的な電源装置5において用いられる制動定数Dに比べて小さい値である。
【0093】
この場合、電源装置2が模擬すべき同期発電機の回転体の制動定数が小さくなり、回転体は減衰しにくくなることに相当する。つまり、模擬すべき同期発電機の出力電圧は、電力系統1の出力電圧に同期しやすくなることに相当する。
【0094】
これによって、計算部30によって計算される指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。
【0095】
これによって、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動が生じた場合に、不要な電力Poutの入出力が抑制される。
【0096】
換言すると、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動に対し、入出力される電力Poutの変化が抑制される領域(不感帯)を設けることができる。この例の不感帯は、指令周波数frefが下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hまでの範囲である。
【0097】
以上のことから、図7の関係を用意するための設定パラメータであるDminについては以下のことがいえる。
【0098】
minは小さく、0(零)に近いほど好ましい。Dminが小さいほど、電力系統1の出力電圧の周波数が変動幅の範囲内である場合に、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に同期しやすくなる。なお、Dminは、0(零)であってもよい。
【0099】
==変形例==
第1実施形態において、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係の一例を、図6に示した。また、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係の一例を、図7に示した。しかし、これらの関係は、図6及び図7に示したものに限られない。
【0100】
計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係の他の例として、図8に示した関係を用いてもよい。この図においては、2つの例((A)及び(B))が示されている。
【0101】
図8(A)は、指令周波数frefが定格周波数fから上限値f+fDB,Hの範囲では、慣性定数Hは傾きが正の一次関数である。指令周波数frefが定格周波数fに等しい場合に、慣性定数Hの値はHminである。指令周波数frefが上限値f+fDB,Hに等しい場合に、慣性定数Hの値はHdefaultである。更に、慣性定数Hは、定格周波数fに対して対称である。
【0102】
図8(B)は、指令周波数frefが定格周波数fから上限値f+fDB,Hの範囲では、慣性定数Hは下に凸の二次関数である。指令周波数frefが定格周波数fに等しい場合に、慣性定数Hの値はHminである。指令周波数frefが上限値f+fDB,Hに等しい場合に、慣性定数Hの値はHdefaultである。更に、慣性定数Hは、定格周波数fに対して対称である。
【0103】
これらの例のように、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係は、下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hの範囲の慣性定数Hの値が、他の範囲の慣性定数Hの値に比べて小さければよい。
【0104】
また、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係の他の例として、図9に示した関係を用いてもよい。この図においては、2つの例((A)及び(B))が示されている。
【0105】
図9(A)は、指令周波数frefが定格周波数fから上限値f+fDB,Hの範囲では、制動定数Dは傾きが正の一次関数である。指令周波数frefが定格周波数fに等しい場合に、制動定数Dの値はDminである。指令周波数frefが上限値f+fDB,Hに等しい場合に、制動定数Dの値はDdefaultである。更に、慣性定数Dは、定格周波数fに対して対称である。
【0106】
図9(B)は、指令周波数frefが定格周波数fから上限値f+fDB,Hの範囲では、制動定数Dは下に凸の二次関数である。指令周波数frefが定格周波数fに等しい場合に、制動定数Dの値はDminである。指令周波数frefが上限値f+fDB,Hに等しい場合に、慣性定数Dの値はDdefaultである。更に、慣性定数Dは、定格周波数fに対して対称である。
【0107】
これらの例のように、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係は、下限値f-fDB,Lから上限値f+fDB,Hの範囲の制動定数Dの値が、他の範囲の制動定数Dの値に比べて小さければよい。
【0108】
本変形例のような計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係、又は計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係を用いても、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能となる。
【0109】
なお、第1実施形態及び本変形例において。上限f+fDB,H及び下限値f-fDB,Lが、慣性定数H及び制動定数Dについて同様の値を用いたが、これに限られるものではない。上限f+fDB,H及び下限値f-fDB,Lは、慣性定数H及び制動定数Dのそれぞれについて異なる値としてもよい。
【0110】
==第2実施形態==
本実施形態の電源装置は、一般的な電源装置5に対し、計算部50(図2)に代えて、計算部40を備える点で異なっている。図10は、本実施形態の計算部40を説明する図である。
【0111】
本実施形態の計算部40は、計算部50(図3)に比べると、電力Prefと、電力Poutと、所定の設定周波数fn,refと、周波数幅fDB,Hと、周波数幅fDB,Lとに基づいて、出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する点で異なっている。
【0112】
つまり、計算部40には、周波数幅fDB,Hと、周波数幅fDB,Lとが更に入力される。周波数幅fDB,H及び周波数幅fDB,Lは、本実施形態の電源装置の運用者等によって予め設定された値である。
【0113】
更に、計算部40は、計算部50(図3)に比べると、調整部308と、加算器310,311と、制限部312とを更に備える点で異なっている。
【0114】
調整部308については、第1実施形態と同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。以下では、加算器310,311と、制限部312とについて詳細に説明する。
【0115】
加算器310は、設定周波数fn,refに対し、周波数幅fDB,Lを減じる演算を実行することにより、下限値fn,ref-fDB,Lを制限部312に出力する。
【0116】
加算器311は、設定周波数fn,refに対し、周波数幅fDB,Hを加える演算を実行することにより、上限値fn,ref+fDB,Hを制限部312に出力する。
【0117】
なお、周波数幅fDB,Lは、下限値fn,ref-fDB,Lが、設定周波数fn,refよりも小さい所定の値となるように予め設定されるものである。また、周波数幅fDB,Hは、上限値fn,ref+fDB,Hが、設定周波数fn,refよりも大きい所定の値となるように予め設定されるものである。
【0118】
制限部312は、計算された指令周波数frefを上限値fn,ref+fDB,H及び下限値fn,ref-fDB,Lで制限して出力する。
【0119】
つまり、計算された指令周波数frefが上限値fn,ref+fDB,Hより小さく下限値fn,ref-fDB,Lより大きい場合、制限部312は、指令周波数frefをそのまま加算器305に出力する。
【0120】
一方、計算された指令周波数frefが上限値fn,ref+fDB,Hより大きい場合、制限部312は、上限値fn,ref+fDB,Hを加算器305に出力する。計算された指令周波数frefが下限値fn,ref-fDB,Lより小さい場合、制限部312は、下限値fn,ref-fDB,Lを加算器305に出力する。
【0121】
加算器305は、本実施形態では、制限部312から出力される指令周波数及び計算された指令周波数frefの差(「第2の差」に相当)をΔfrefとして出力する。
【0122】
なお、「計算された指令周波数frefが上限値fn,ref+fDB,Hより小さく下限値fn,ref-fDB,Lより大きい場合」とは、「制限部312から出力される指令周波数が上限値fn,ref+fDB,Hより小さく下限値fn,ref-fDB,Lより大きい場合」ともいえる。
【0123】
以下の説明において、この場合を、「計算された指令周波数frefが上下限の範囲内である場合」と称する場合がある。
【0124】
また、「計算された指令周波数frefが下限値fn,ref-fDB,Lより小さい場合、または、計算された指令周波数frefが上限値fn,ref+fDB,Hより大きい場合」とは、「制限部312から出力される指令周波数が上限値fn,ref+fDB,Hまたは下限値fn,ref-fDB,Lである場合」ともいえる。
【0125】
以下の説明において、この場合を、「計算された指令周波数frefが上下限の範囲外である場合」と称する場合がある。
【0126】
以下では、加算器305から後段の処理について、計算された指令周波数frefが上下限の範囲内である場合と、計算された指令周波数frefが上下限の範囲外である場合に分けて説明する。
【0127】
・計算された指令周波数frefが上下限の範囲内である場合
電力系統1の出力電圧の周波数の変動が微弱であり、計算された指令周波数frefが上下限の範囲内となった場合が相当する。
【0128】
この場合、加算器305が出力するΔfrefは、0(零)となる。そうすると、乗算器307から出力され、加算器301に入力される電力Pは0(零)となる。
【0129】
つまり、この場合、計算部40は、加算器305から乗算器307までの処置において、回転体の回転の減衰の影響を排除して、指令周波数frefを再度計算することになる。
【0130】
従って、この場合、計算部40は、電力Pref及び電力Poutの差及び慣性定数Hに基づいて、指令周波数frefを計算する(加算器301から積分器304までの処理)。
【0131】
また、この場合、回転体の回転の減衰の影響が排除されるため、計算部40によって計算される指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に同期しやすくなる。
【0132】
そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。
【0133】
従って、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動が生じた場合であって、指令周波数frefが上下限値の範囲内である場合に、不要な電力Poutの入出力が抑制される。
【0134】
換言すると、電力系統1の出力電圧の周波数の微弱な変動に対し、入出力される電力Poutの変化が抑制される領域(不感帯)を設けることができる。この例の不感帯は、指令周波数frefが下限値f-fDB,L以上であり、上限値f+fDB,H以下である範囲である。
【0135】
・計算された指令周波数frefが上下限の範囲外である場合
電力系統1の出力電圧の周波数の変動が無視できず、計算された指令周波数frefが上下限の範囲外となった場合が相当する。
【0136】
この場合のうち、計算された指令周波数frefが上限値fn,ref+fDB,Hより大きい場合、加算器305が出力するΔfrefは、fref-fn,ref-fDB,Hとなる。一方、計算された指令周波数frefが下限値より小さい場合、加算器305が出力するΔfrefは、fref-fn,ref+fDB,Lとなる。つまり、いずれの場合も、加算器305が出力するΔfrefは、一般に0(零)とならない。
【0137】
従って、この場合、計算部40は、制限部312から出力される指令周波数及び計算された指令周波数frefの差Δfrefと、制動定数Dと、電力Pref及び電力Poutの差と、慣性定数Hと、に基づいて指令周波数frefを計算する。
【0138】
つまり、この場合、計算部40は、電力系統1の出力電力の周波数を定格周波数fに維持するための指令周波数frefを再計算する。
【0139】
なお、本実施形態では、上限値fn,ref+fDB,Hと設定周波f数との差は、設定周波数fと下限値fn,ref-fDB,Lとの差に等しく設定されている。
【0140】
本実施形態の電源装置を用いても、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能となる。
【0141】
==まとめ==
以上、実施形態の電源装置2は、回転体を有する同期発電機を模擬し、出力電圧voutの周波数を制御することによって電力系統1との間で電力を入出力する電源装置2であって、電力系統1に出力する目標となる電力Prefと、電力系統1に実際に入出力される電力Poutとの差を計算する減算部と、電力Pref及び電力Poutとの差と、回転体の慣性を示す慣性定数とH、回転体の回転の減衰を示す制動定数Dと、電力系統1の定格周波数fと、所定の設定周波数fn,refとに基づいて、出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算する周波数計算部と、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係を示す情報と、を用いて、慣性定数Hを調整する調整部308と、指令周波数frefに基づいて、出力電圧voutを制御するための制御信号を生成する生成部と、制御信号に基づいて生成された出力電圧voutを、電力系統1に出力する出力部とを備える。
【0142】
このような構成によれば、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能となる。
【0143】
電源装置2において、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係は、計算された指令周波数frefが定格周波数fに近いほど小さくなる特性を有する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に更に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。これによって、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、不要な電力Poutの入出力を抑制することができる。
【0144】
電源装置2において、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係は、定格周波数fに対して対称となる特性を有する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fに対して高く変動した場合であっても、低く変動した場合であっても、不要な電力Poutの入出力を抑制することができる。
【0145】
電源装置2は、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係を示す情報と、を用いて、制動定数Dを調整する調整部309を更に有してもよい。このような構成によれば、電力系統1の状態に応じて更に柔軟に出力電圧voutを生成することが可能となる。
【0146】
電源装置2において、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係は、計算された指令周波数frefが電力系統1の定格周波数fに近いほど小さくなる特性を有する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に更に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。これによって、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、不要な電力Poutの入出力を更に抑制することができる。
【0147】
電源装置2において、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び制動定数Dの関係は、定格周波数fに対して対称となる特性を有する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fに対して高く変動した場合であっても、低く変動した場合であっても、不要な電力Poutの入出力を抑制することができる。
【0148】
第2実施形態の電源装置において、周波数計算部は、計算された指令周波数frefが、設定周波数fよりも小さい所定の下限値よりも大きく、設定周波数fよりも大きい所定の上限値よりも小さい場合に、回転体の回転の減衰の影響を排除して、指令周波数frefを再度計算する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に更に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。これによって、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、不要な電力Poutの入出力を更に抑制することができる。
【0149】
第2実施形態の電源装置において、計算された指令周波数frefを上限値及び下限値で制限して出力する制限部312を更に備え、周波数計算部は、制限部312から出力される指令周波数frefが上限値より小さく下限値より大きい場合、電力Pref及び電力Poutの差及び慣性定数Hに基づいて、指令周波数frefを計算し、制限部312から出力される指令周波数frefが上限値または下限値である場合、制限部312から出力される指令周波数及び計算された指令周波数frefの差Δfrefと、制動定数Dと、電力Pref及び電力Poutの差と、慣性定数Hと、に基づいて指令周波数frefを計算する。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、制限部312から出力される指令周波数及び計算された指令周波数frefの差Δfrefが0(零)となる。そうすると、回転体の回転の減衰の影響が排除されるため、指令周波数frefは、電力系統1の出力電圧の周波数に更に同期しやすくなる。そうすると、電源装置2の出力電圧voutの位相と、電力系統1の出力電圧の位相との乖離が抑制される。これによって、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、不要な電力Poutの入出力を更に抑制することができる。
【0150】
第2実施形態の電源装置において、上限値と設定周波数fとの差は、設定周波数fと下限値との差に等しく設定されている。このような構成によれば、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fを中心に微弱な変動を示した場合に、電力系統1の出力電圧の周波数が定格周波数fに対して高く変動した場合であっても、低く変動した場合であっても、不要な電力Poutの入出力を抑制することができる。
【0151】
実施形態の電圧生成方法は、回転体を有する同期発電機を模擬し、出力電圧voutの周波数を制御することによって電力系統1との間で電力を入出力する電源装置2が、電力系統1に出力する目標となる電力Prefと、電力系統1に実際に入出力される電力Poutとの差を計算するステップと、電力Pref及び電力Poutとの差と、回転体の慣性を示す慣性定数Hと、回転体の回転の減衰を示す制動定数Dと、電力系統1の定格周波数fと、所定の設定周波数fn,refとに基づいて、出力電圧voutに対する指令周波数frefを計算するステップと、計算された指令周波数frefと、計算された指令周波数fref及び慣性定数Hの関係を示す情報と、を用いて、慣性定数Hを調整するステップと、指令周波数frefに基づいて、出力電圧voutを制御するための制御信号を生成する生成するステップと、制御信号に基づいて生成された出力電圧を、電力系統1に出力するステップとを含む。
【0152】
このような方法によれば、電力系統1の状態に応じて柔軟に出力電圧voutを生成することが可能となる。
【符号の説明】
【0153】
電力系統 1
電源装置 2
出力部 20
直流電源 200
制御装置 3
計算部 30
加算器 300
加算器 301
乗算器 302
乗算器 303
積分器 304
加算器 305
乗算器 306
乗算器 307
調整部 308
調整部 309
制限部 310
積分器 31
瞬時電圧制御部 32
PWMパルス生成部 33
電源装置 5
制御装置 7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10