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特開2024-36975羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036975
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20240311BHJP
【FI】
G03B9/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141565
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【テーマコード(参考)】
2H081
【Fターム(参考)】
2H081AA19
2H081AA20
2H081AA21
2H081AA23
2H081AA24
2H081AA28
2H081BB38
2H081BB39
(57)【要約】
【課題】耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置を提供する。
【解決手段】羽根駆動装置1は、地板10と、羽根31~38と、羽根31~38に連結される連結部45,46を有し、地板10に設けられた回転軸21,23を中心として回転することで連結部45,46を移動経路に沿って移動させて羽根31~38を駆動する駆動レバー50,53と、地板10に設けられた支軸61,77を中心とする回転に対して制動力が作用するように構成されたブレーキ部材63,66,74,75とを備える。ブレーキ部材63,66,74,75は、駆動レバー50,53の連結部45,46の移動経路上で連結部45,46に接触可能な接触面を有する。ブレーキ部材63,66,74,75の接触面には、潤滑剤を貯留するための凹部635,665,745,755が少なくとも1つ形成される。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地板と、
少なくとも1つの羽根と、
前記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、前記地板に設けられた回転軸を中心として回転することで前記連結部を移動経路に沿って移動させて前記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、
前記地板に設けられた支軸を中心とする回転に対して第1の制動力が作用するように構成された第1のブレーキ部材であって、前記駆動レバーの前記連結部の前記移動経路上で前記連結部に接触可能な第1の接触面を有する第1のブレーキ部材と
を備え、
前記第1のブレーキ部材の前記第1の接触面には、潤滑剤を貯留するための第1の凹部が少なくとも1つ形成される、
羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1のブレーキ部材の前記第1の接触面には、前記第1の凹部が複数個形成される、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記複数個の第1の凹部には異なる潤滑剤が貯留される、請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記支軸を中心とする回転に対して第2の制動力が作用するように構成された第2のブレーキ部材であって、前記連結部の前記移動経路上で前記連結部に接触可能な第2の接触面を有する第2のブレーキ部材をさらに備え、
前記第2のブレーキ部材の前記第2の接触面には、潤滑剤を貯留するための第2の凹部が少なくとも1つ形成される、
請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第2のブレーキ部材の前記第2の接触面には、前記第2の凹部が複数個形成される、請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記複数個の第2の凹部には異なる潤滑剤が貯留される、請求項5に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1のブレーキ部材の前記第1の接触面と前記第2のブレーキ部材の前記第2の接触面とは対面するように配置される、請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項8】
前記第1のブレーキ部材を前記支軸周りに付勢して前記第1のブレーキ部材に前記第1の制動力を付与する付勢部材と、
前記第2のブレーキ部材との間で前記第2の制動力としての摩擦力が生じるように前記第2のブレーキ部材に接触して配置されるワッシャと
をさらに備える、
請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置の前記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子と
を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置に係り、特にカメラなどの撮像装置における羽根を駆動するための羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの撮像装置においては、シャッタ羽根を高速で移動させることによって露光開口を開閉し、撮像素子に対する露光を行っている。従来から、このようなシャッタ羽根を駆動する羽根駆動装置として、シャッタ羽根に連結された駆動レバーをアクチュエータによって移動させるものが知られている。近年、シャッタ動作がより高速になるにつれ、シャッタ羽根が移動終端位置で大きくバウンドして破損などしないように、移動終端位置近傍でシャッタ羽根を制動するブレーキ部材を設けることも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなブレーキ部材は、シャッタ羽根を駆動する駆動レバーと接触することでシャッタ羽根を制動するものであるが、ブレーキ部材と駆動レバーの摩耗を低減して耐久性を向上するために、ブレーキ部材と駆動レバーとの間にグリースなどの潤滑剤を塗布することがある。しかしながら、シャッタ動作を繰り返すうちに、振動などでブレーキ部材と駆動レバーとの間から潤滑剤がこれらの部材が接触しない箇所に次第に移動し、ブレーキ部材と駆動レバーとの間の潤滑剤が少なくなって十分な潤滑作用が得られなくなることも考えられる。この場合には、シャッタ動作の繰り返しにより部材の摩耗が進み、装置の耐久性が低下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-159650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置が提供される。羽根駆動装置は、地板と、少なくとも1つの羽根と、上記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、上記地板に設けられた回転軸を中心として回転することで上記連結部を移動経路に沿って移動させて上記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、上記地板に設けられた支軸を中心とする回転に対して第1の制動力が作用するように構成された第1のブレーキ部材とを備える。上記第1のブレーキ部材は、上記駆動レバーの上記連結部の上記移動経路上で上記連結部に接触可能な第1の接触面を有する。上記第1のブレーキ部材の上記第1の接触面には、潤滑剤を貯留するための第1の凹部が少なくとも1つ形成される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、上記羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す羽根駆動装置の一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、図1に示す羽根駆動装置が露光動作を完了したときの状態を示す正面図である。
図4図4は、図1に示す羽根駆動装置における先羽根制動機構の分解斜視図である。
図5図5は、図1に示す羽根駆動装置における後羽根制動機構の分解斜視図である。
図6A図6Aは、図4に示す先羽根制動機構の第1の先羽根ブレーキ部材の正面図である。
図6B図6Bは、図6Aの第1の先羽根ブレーキ部材の平面図である。
図7図7は、図4に示す先羽根制動機構の第2の先羽根ブレーキ部材の正面図である。
図8図8は、図5に示す後羽根制動機構の第1の後羽根ブレーキ部材の正面図である。
図9図9は、図5に示す後羽根制動機構の第2の後羽根ブレーキ部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る羽根駆動装置の実施形態について図1から図9を参照して詳細に説明する。図1から図9において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図9においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1を示す正面図、図2は、分解斜視図である。本実施形態における羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に組み込まれるフォーカルプレーンシャッタであるものとして説明するが、これは例示に過ぎず、本発明に係る羽根駆動装置はこのようなシャッタの用途に限られるもいのではない。図1は、カメラによるセット動作が完了したときの状態を示している。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態における羽根駆動装置1は、矩形状の開口10Aが形成された地板10と、地板10の開口10Aと略同一の形状の開口12Aが形成されたカバー板12と、地板10とカバー板12との間に形成される空間に収容される8枚の羽根31~38とを含んでいる。地板10の開口10Aとカバー板12の開口12Aにより露光開口部Sが形成されている。この羽根駆動装置1は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子(図示せず)を備えた撮像装置に組み込まれるものであり、図1の紙面奥側が被写体側である。被写体からの光は、羽根駆動装置1の露光開口部Sを通過して、羽根駆動装置1の図1の紙面手前側に配置された撮像素子に入射するようになっている。なお、カメラの構成によっては、図1の紙面手前側が被写体側となり、紙面奥側が撮像素子側となることもある。
【0012】
羽根31~38のそれぞれは、全体としてX方向に延びる薄板状の部材である。本実施形態では、羽根31~38のうち、順番に重ねられる羽根31~34が、フォーカルプレーンシャッタの先幕を構成する先羽根となり、順番に重ねられる羽根35~38が後幕を構成する後羽根となる。地板10とカバー板12との間には図示しない中間板が配置されており、先羽根31~34は中間板とカバー板12の間に形成される空間内に収容され、後羽根35~38は中間板と地板10との間に形成される空間内に収容される。
【0013】
また、羽根駆動装置1は、先羽根31~34に連結される先羽根アーム41,42と、後羽根35~38に連結される後羽根アーム43,44とを含んでいる。先羽根31~34は、リベットなどによりそれぞれ先羽根アーム41,42と連結され、先羽根31~34と先羽根アーム41,42とが互いに回転可能となっている。したがって、それぞれの先羽根31~34と先羽根アーム41,42とによってリンク機構が構成される。また、後羽根35~38は、リベットなどによりそれぞれ後羽根アーム43,44と連結され、後羽根35~38と後羽根アーム43,44とが互いに回転可能となっている。したがって、それぞれの後羽根35~38と後羽根アーム43,44とによってリンク機構が構成される。
【0014】
先羽根アーム41は回転軸21を中心として回転可能に構成され、先羽根アーム42は回転軸22を中心として回転可能に構成される。図2に示すように、地板10の+Z方向側には先羽根駆動レバー50が配置されている。この先羽根駆動レバー50は、回転軸21を中心として回転可能に構成されており、先羽根駆動レバー50の先端には連結部45が設けられている。地板10には、回転軸21を中心とする円弧に沿った円弧孔11が形成されており、先羽根駆動レバー50の連結部45はこの円弧孔11を通って先羽根アーム41の連結孔41Aに連結されている。
【0015】
また、後羽根アーム43は回転軸23を中心として回転可能に構成され、後羽根アーム44は回転軸24を中心として回転可能に構成される。図2に示すように、地板10の+Z方向側には後羽根駆動レバー53が配置されている。この後羽根駆動レバー53は、回転軸23を中心として回転可能に構成されており、後羽根駆動レバー53の先端には連結部46が設けられている。地板10には、回転軸23を中心とする円弧に沿った円弧孔13が形成されており、後羽根駆動レバー53の連結部46はこの円弧孔13を通って後羽根アーム43の連結孔43Aに連結されている。
【0016】
このような構成において、図示しない駆動機構によって先羽根駆動レバー50を回転軸21周りに回転させると、先羽根駆動レバー50の連結部45が移動経路としての円弧孔11に沿って移動し、この連結部45に連結された先羽根アーム41が回転軸21を中心として回転する。先羽根アーム41が回転軸21を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、先羽根アーム42も回転軸22を中心として回転し、先羽根31~34が互いに重なる領域を変化させつつ、XY平面(移動平面)上を主としてY方向に移動するようになっている。
【0017】
同様に、図示しない駆動機構によって後羽根駆動レバー53を回転軸23周りに回転させると、後羽根駆動レバー53の連結部46が円弧孔13に沿って移動し、この連結部46に連結された後羽根アーム43が回転軸23を中心として回転する。後羽根アーム43が回転軸23を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、後羽根アーム44も回転軸24を中心として回転し、後羽根35~38が互いに重なる領域を変化させつつ、XY平面(移動平面)上を主としてY方向に移動するようになっている。
【0018】
先羽根駆動レバー50は、例えばねじりコイルバネのような図示しない付勢部材によって、回転軸21を中心として図1の時計回りに付勢されており、後羽根駆動レバー53は、例えばねじりコイルバネのような図示しない付勢部材によって、回転軸23を中心として図1の時計回りに付勢されている。したがって、図1に示すセット動作の完了状態から駆動機構によって先羽根駆動レバー50及び後羽根駆動レバー53を駆動させると、先羽根駆動レバー50及び後羽根駆動レバー53がそれぞれ時計回りに回転し、先羽根31~34及び後羽根35~38がXY平面上を主として-Y方向に移動する。
【0019】
このとき、後羽根35は先羽根34からY方向に離れた状態で-Y方向に移動するようになっている。したがって、先羽根34と後羽根35との間には露光用のスリットが形成され。このスリットが先羽根31~34及び後羽根35~38の移動とともに-Y方向に移動し、撮像面に対する露光が行われる。図3は、この露光動作が完了したときの状態を示している。
【0020】
図1及び図3に示すように、円弧孔11の終端近傍には、先羽根31~34が移動終端位置で大きくバウンドして破損などしないように、先羽根駆動レバー50の連結部45(ひいては先羽根31~34)を制動する先羽根制動機構60が設けられている。図4は、この先羽根制動機構60の分解斜視図である。
【0021】
図4に示すように、先羽根制動機構60は、地板10に取り付けられる支軸61と、支軸61に取り付けられるねじりコイルバネ62(付勢部材)と、ねじりコイルバネ62によって付勢される第1の先羽根ブレーキ部材63(第1のブレーキ部材)と、第1の先羽根ブレーキ部材63の下方に配置されるスリーブ64と、スリーブ64の下方に配置されるワッシャ65と、ワッシャ65の下方に配置される第2の先羽根ブレーキ部材66(第2のブレーキ部材)と、第2の先羽根ブレーキ部材66の下方に配置されるワッシャ67とを含んでいる。
【0022】
第1の先羽根ブレーキ部材63及び第2の先羽根ブレーキ部材66は、支軸61を中心として回転可能となっているが、後述するように、これらの先羽根ブレーキ部材63,66が支軸61を中心として回転する際には回転方向に制動力が作用するようになっている。第1の先羽根ブレーキ部材63には、ねじりコイルバネ62による付勢力が制動力(第1の制動力)として作用し、第2の先羽根ブレーキ部材66には、ワッシャ65,67と第2の先羽根ブレーキ部材66との間に生じる摩擦力が制動力(第2の制動力)として作用するようになっている。
【0023】
第1の先羽根ブレーキ部材63は、ねじりコイルバネ62の一方の腕部62Aが係合するバネ係合部631と、先羽根駆動レバー50の連結部45の移動経路上でこの連結部45に接触可能な接触片632と、地板10に設けられたピン14(図1及び図3参照)に係合可能なストッパ633とを有している。第1の先羽根ブレーキ部材63は、ねじりコイルバネ62によって図1において反時計回りに付勢された状態となっており、ストッパ633がピン14に係合することで反時計回りの回転が規制されている。
【0024】
第2の先羽根ブレーキ部材66は、ねじりコイルバネ62の他方の腕部62Bが係合するバネ係合部661と、先羽根駆動レバー50の連結部45の移動経路上でこの連結部45に接触可能な接触片662を有している。この第2の先羽根ブレーキ部材66とワッシャ65との間及び第2の先羽根ブレーキ部材66とワッシャ67との間にはそれぞれ大きな摩擦力が生じるようになっている。
【0025】
同様に、図1及び図3に示すように、円弧孔13の終端近傍には、後羽根35~38が移動終端位置で大きくバウンドして破損などしないように、後羽根駆動レバー53の連結部46(ひいては後羽根35~38)を制動する後羽根制動機構70が設けられている。図5は、この後羽根制動機構70の分解斜視図である。
【0026】
図5に示すように、後羽根制動機構70は、スリーブ71と、スリーブ71に取り付けられるねじりコイルバネ72(付勢部材)と、スリーブ71の下方に配置されるバネプレート73と、ねじりコイルバネ72によって付勢される第1の後羽根ブレーキ部材74(第1のブレーキ部材)と、第1の後羽根ブレーキ部材74の上方に配置される第2の後羽根ブレーキ部材75(第2のブレーキ部材)と、第2の後羽根ブレーキ部材75とバネプレート73との間に配置されるワッシャ76と、第1の後羽根ブレーキ部材74及び第2の後羽根ブレーキ部材75を支持する支軸77と、第1の後羽根ブレーキ部材74と第2の後羽根ブレーキ部材75との間に配置されるワッシャ78と、第1の後羽根ブレーキ部材74と地板10との間に配置されるスリーブ79及びワッシャ80と、これらの部材を地板10に取り付けるネジ81とを含んでいる。
【0027】
第1の後羽根ブレーキ部材74及び第2の後羽根ブレーキ部材75は、支軸77を中心として回転可能となっているが、後述するように、これらの後羽根ブレーキ部材74,75が支軸77を中心として回転する際には回転方向に制動力が作用するようになっている。第1の後羽根ブレーキ部材74には、ねじりコイルバネ72による付勢力が制動力(第1の制動力)として作用し、第2の後羽根ブレーキ部材75には、ワッシャ76とワッシャ78との間に生じる摩擦力が制動力(第2の制動力)として作用するようになっている。
【0028】
第1の後羽根ブレーキ部材74は、ねじりコイルバネ72の一方の腕部72Aが係合するバネ係合部741と、後羽根駆動レバー53の連結部46の移動経路上でこの連結部46に接触可能な接触片742と、地板10に設けられたピン15(図1及び図3参照)に係合可能なストッパ743とを有している。第1の後羽根ブレーキ部材74は、ねじりコイルバネ72によって図1において反時計回りに付勢された状態となっており、ストッパ743がピン15に係合することで反時計回りの回転が規制されている。
【0029】
第2の後羽根ブレーキ部材75は、ねじりコイルバネ72の他方の腕部72Bが係合するバネ係合部751と、後羽根駆動レバー53の連結部46の移動経路上でこの連結部46に接触可能な接触片752を有している。この第2の後羽根ブレーキ部材75とワッシャ76との間及び第2の後羽根ブレーキ部材75とワッシャ78との間にはそれぞれ大きな摩擦力が生じるようになっている。
【0030】
露光動作前には、図示しない駆動機構が先羽根駆動レバー50のローラ51を押し、これにより、先羽根駆動レバー50が回転軸21を中心として反時計回りに回転し、連結部45が円弧孔11の+Y方向側の端部に移動する。このとき、先羽根駆動レバー50のプッシャ52が第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662に接触し、先羽根駆動レバー50が反時計回りに回転すると、第2の先羽根ブレーキ部材66が支軸61を中心として時計回りに回転する。これにより、第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の一部が先羽根駆動レバー50の連結部45の移動経路(円弧孔11)上に位置する。
【0031】
このとき、第1の先羽根ブレーキ部材63は、ねじりコイルバネ62によって反時計回りの方向に付勢されているため、ストッパ633がピン14に係合した状態で保持される。この状態では、第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の一部が先羽根駆動レバー50の連結部45の移動経路(円弧孔11)上に位置している。
【0032】
露光動作が開始すると、バネ(図示せず)の力などにより先羽根駆動レバー50が回転軸21を中心として時計回りに回転し、連結部45が円弧孔11に沿って移動する。これに伴い、連結部45に連結された先羽根アーム41も回転軸21を中心として回転するとともに、上述したリンク機構を介して先羽根アーム42も回転軸22を中心として回転する。これによって、先羽根31~34が互いに重なる領域を変化させつつ主として-Y方向に移動する。
【0033】
先羽根駆動レバー50の連結部45が移動終端位置に近づくと、連結部45が移動経路上に位置している第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632と第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662とに接触する。そして、連結部45は、ねじりコイルバネ62による付勢力に抗して第1の先羽根ブレーキ部材63を時計回りに回転させるとともに、第2の先羽根ブレーキ部材66とワッシャ65,67との間に生じる摩擦力に抗して第2の先羽根ブレーキ部材66を反時計回りに回転させることで移動速度を落として最終的に停止する。このようにして、先羽根制動機構60により先羽根駆動レバー50の連結部45及び先羽根31~34が制動される。
【0034】
後羽根制動機構70も先羽根制動機構60と同様の構成を有しており、先羽根制動機構60と同様の動作を行う。すなわち、後羽根駆動レバー53の連結部46が移動終端位置に近づくと、連結部46が移動経路上に位置している第1の後羽根ブレーキ部材74の接触片742と第2の後羽根ブレーキ部材75の接触片752とに接触する。そして、連結部46は、ねじりコイルバネ72による付勢力に抗して第1の後羽根ブレーキ部材74を時計回りに回転させるとともに、第2の後羽根ブレーキ部材75とワッシャ76,78との間に生じる摩擦力に抗して第2の後羽根ブレーキ部材75を反時計回りに回転させることで移動速度を落として最終的に停止する。このようにして、後羽根制動機構70により後羽根駆動レバー53の連結部46及び後羽根35~38が制動される。
【0035】
本実施形態では、第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の側面と第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の側面とが対面するように配置されているため、第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の側面と第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の側面との間に先羽根駆動レバー50の連結部45を挟み込むことができる。したがって、先羽根駆動レバー50をより効果的に制動することができる。同様に、第1の後羽根ブレーキ部材74の接触片742の側面と第2の後羽根ブレーキ部材75の接触片752の側面とが対面するように配置されているため、第1の後羽根ブレーキ部材74の接触片742の側面と第2の後羽根ブレーキ部材75の接触片752の側面との間に後羽根駆動レバー53の連結部45を挟み込むことができる。したがって、後羽根駆動レバー53をより効果的に制動することができる。
【0036】
本実施形態では、先羽根ブレーキ部材63,66と先羽根駆動レバー50の連結部45の摩耗を低減するために、先羽根駆動レバー50の連結部45が接触する第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の側面(第1の接触面)と第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の側面(第2の接触面)に潤滑剤が塗布されている。同様に、後羽根ブレーキ部材74,75と後羽根駆動レバー53の連結部46の摩耗を低減するために、後羽根駆動レバー53の連結部46が接触する第1の後羽根ブレーキ部材74の接触片742の側面(第1の接触面)と第2の後羽根ブレーキ部材75の接触片752の側面(第2の接触面)に潤滑剤が塗布されている。
【0037】
図6Aは、先羽根制動機構60の第1の先羽根ブレーキ部材63の正面図、図6Bは平面図である。図6A及び図6Bに示すように、上述した先羽根駆動レバー50の連結部45が接触する第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の側面には、上述した潤滑剤を貯留する凹部635が形成されている。このような凹部635を形成することで、振動などにより第1の先羽根ブレーキ部材63の接触片632の側面と先羽根駆動レバー50の連結部45との間から潤滑剤が移動したとしても、凹部635に貯留されている潤滑剤が凹部635から接触片632の側面に供給されるため、シャッタ動作により部材が摩耗してしまうことが抑制される。図6A及び図6Bに示す例では、凹部635が1つだけ形成されているが、このような凹部635を複数個形成してもよい。
【0038】
図7は、第2の先羽根ブレーキ部材66の正面図である。図7に示すように、先羽根駆動レバー50の連結部45が接触する第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の側面にも潤滑剤を貯留する凹部665が形成されている。このような凹部665を形成することで、振動などにより第2の先羽根ブレーキ部材66の接触片662の側面と先羽根駆動レバー50の連結部45との間から潤滑剤が移動したとしても、凹部665に貯留されている潤滑剤が凹部665から接触片662の側面に供給されるため、シャッタ動作により部材が摩耗してしまうことが抑制される。図7に示す例では、複数の凹部665が形成されているが、凹部665の数はこれに限られるものではない。
【0039】
図8は、第1の後羽根ブレーキ部材74の正面図、図9は、第2の後羽根ブレーキ部材75の正面図である。図8に示すように、後羽根駆動レバー53の連結部46が接触する第1の後羽根ブレーキ部材74の接触片742の側面にも潤滑剤を貯留する凹部745が形成され、図9に示すように、後羽根駆動レバー53の連結部46が接触する第2の後羽根ブレーキ部材75の接触片752の側面にも潤滑剤を貯留する凹部755が形成されている。このような凹部745,755を形成することで、振動などによりブレーキ部材74,75の接触片742,752の側面と後羽根駆動レバー53の連結部46との間から潤滑剤が移動したとしても、凹部745,755に貯留されている潤滑剤が凹部745,755から接触片742,752の側面に供給されるため、シャッタ動作により部材が摩耗してしまうことが抑制される。凹部745の数及び凹部755の数は図示のものに限られるものではない。
【0040】
上述したブレーキ部材63,66,74,75は、例えば金属から形成されるもので、例えば鍛造や鋳造により形成することができる。図7及び図9に示すように、ブレーキ部材66,75に複数の凹部665,755を形成する場合には、異なる凹部665,755に異なる潤滑剤を注入又は塗布してもよい。また、凹部635,665,745,755に貯留する潤滑剤と異なる潤滑剤を接触片632,662,742,752の側面に塗布してもよい。このように異なる潤滑剤を用いることで、それぞれの潤滑剤の特徴を有効に活用することができる。例えば、フッ素樹脂(PTFE)系の潤滑剤は、高い耐摩耗性能を発揮するが、その性能を長い時間にわたって発揮することは難しい。一方で、エステル系やオレフィン系の潤滑剤は、長い時間にわたって耐摩耗性能を発揮することができる。したがって、接触片632,662,742,752の側面にPTFE系の潤滑剤を塗布しておき、エステル系やオレフィン系の潤滑剤を凹部635,665,745,755に貯留しておくことで、結果的に長期間にわたって耐摩耗性能を発揮することができる。また、制動性能を高めるために、異なる凹部665,755に異なる粘度の潤滑剤を注入又は塗布してもよい。
【0041】
また、上述した凹部635,665,745,755の形状も図示のものに限られるものではなく、例えば円孔状の凹部であってもよく、また凹部の深さが変化するものであってもよい。
【0042】
上述した実施形態における羽根駆動装置1は、先幕としての先羽根31~34と後幕としての後羽根35~38とを有しているが、先幕と後幕のいずれか一方のみを備えるものであってもよい。また、上述した実施形態では、すべてのブレーキ部材63,66,74,75に潤滑剤を貯留するための凹部635,665,745,755を形成した例を説明したが、ブレーキ部材63,66,74,75のうちの少なくとも1つに上述した凹部を形成すればよい。
【0043】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置が提供される。具体的には、本発明に係る羽根駆動装置は、以下のような構成を採用することができる。
【0044】
(構成1)
羽根駆動装置は、地板と、少なくとも1つの羽根と、上記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、上記地板に設けられた回転軸を中心として回転することで上記連結部を移動経路に沿って移動させて上記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、上記地板に設けられた支軸を中心とする回転に対して第1の制動力が作用するように構成された第1のブレーキ部材とを備える。上記第1のブレーキ部材は、上記駆動レバーの上記連結部の上記移動経路上で上記連結部に接触可能な第1の接触面を有する。上記第1のブレーキ部材の上記第1の接触面には、潤滑剤を貯留するための第1の凹部が少なくとも1つ形成される。
【0045】
このような構成によれば、駆動レバーの連結部が接触する第1のブレーキ部材の第1の接触面に潤滑剤を貯留するための第1の凹部が形成されているため、振動などにより第1のブレーキ部材の第1の接触面と駆動レバーの連結部との間から潤滑剤が移動したとしても、第1の凹部に貯留されている潤滑剤が第1の凹部から第1の接触面に供給されるため、駆動レバーを高速動作させた場合にも部材が摩耗してしまうことが抑制される。
【0046】
(構成2)
上記構成1において、上記第1のブレーキ部材の上記第1の接触面には、上記第1の凹部が複数個形成されていてもよい。
【0047】
(構成3)
上記構成2において、上記複数個の第1の凹部には異なる潤滑剤が貯留されていてもよい。このように異なる潤滑剤を異なる第1の凹部に貯留することで、それぞれの潤滑剤の特徴を有効に活用することができる。
【0048】
(構成4)
上記構成1から3のいずれかにおいて、上記羽根駆動装置は、上記支軸を中心とする回転に対して第2の制動力が作用するように構成された第2のブレーキ部材をさらに備えていてもよい。上記第2のブレーキ部材は、上記連結部の上記移動経路上で上記連結部に接触可能な第2の接触面を有する。上記第2のブレーキ部材の上記第2の接触面には、潤滑剤を貯留するための第2の凹部が少なくとも1つ形成されていてもよい。このように、第1のブレーキ部材に加えて、第2のブレーキ部材を備えることで、駆動レバーをより効果的に制動することができる。また、駆動レバーの連結部が接触する第2のブレーキ部材の第2の接触面にも潤滑剤を貯留するための第2の凹部が形成されているため、振動などにより第2のブレーキ部材の第2の接触面と駆動レバーの連結部との間から潤滑剤が移動したとしても、第2の凹部に貯留されている潤滑剤が第2の凹部から第2の接触面に供給されるため、駆動レバーを高速動作させた場合にも部材が摩耗してしまうことが抑制される。
【0049】
(構成5)
上記構成4において、上記第2のブレーキ部材の上記接触面には、上記第2の凹部が複数個形成されていてもよい。
【0050】
(構成6)
上記構成5において、上記複数個の第2の凹部には異なる潤滑剤が貯留されていてもよい。このように異なる潤滑剤を異なる第2の凹部に貯留することで、それぞれの潤滑剤の特徴を有効に活用することができる。
【0051】
(構成7)
上記構成4から6のいずれかにおいて、上記第1のブレーキ部材の上記第1の接触面と上記第2のブレーキ部材の上記第2の接触面とは対面するように配置されていてもよい。このような構成によれば、第1のブレーキ部材の第1の接触面と第2のブレーキ部材の第2の接触面との間に駆動レバーの連結部を挟み込むことができるので、駆動レバーをより効果的に制動することができる。
【0052】
(構成8)
上記構成4から7のいずれかにおいて、上記羽根駆動装置は、上記第1のブレーキ部材を上記支軸周りに付勢して上記第1のブレーキ部材に上記第1の制動力を付与する付勢部材と、上記第2のブレーキ部材との間で上記第2の制動力としての摩擦力が生じるように上記第2のブレーキ部材に接触して配置されるワッシャとをさらに備えていてもよい。
【0053】
(構成9)
本発明の第2の態様によれば、上記構成1から8のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える撮像装置が提供される。
【0054】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 羽根駆動装置
10 地板
21~24 回転軸
31~34 先羽根
35~38 後羽根
41,42 先羽根アーム
43,44 後羽根アーム
45,46 連結部
50 先羽根駆動レバー
53 後羽根駆動レバー
60 先羽根制動機構
61,77 支軸
62 ねじりコイルバネ(付勢部材)
63 ブレーキ部材
63 第1の先羽根ブレーキ部材
64,71,79 スリーブ
65,67,76,78,80 ワッシャ
66 第2の先羽根ブレーキ部材
70 後羽根制動機構
72 ねじりコイルバネ(付勢部材)
73 バネプレート
74 第1の後羽根ブレーキ部材
75 第2の後羽根ブレーキ部材
631,661,741,751 バネ係合部
632,662,742,752 接触片
633,743 ストッパ
635,745 (第1の)凹部
665,755 (第2の)凹部
S 露光開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9