(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036984
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】クレーン遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20240311BHJP
H04B 7/155 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B66C13/40 D
H04B7/155
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141582
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 不二男
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 航
【テーマコード(参考)】
5K072
【Fターム(参考)】
5K072BB13
5K072GG11
5K072HH01
(57)【要約】
【課題】配線を削減すると共に通信の質を向上できるクレーン遠隔操作システムを提供する。
【解決手段】クレーン遠隔操作システム100において、周波数調整部27は、クレーン1に設けられたカメラ21,23から無線通信で撮影情報を受信する。このように、クレーン1に設けられたカメラ21,23が無線通信で撮影情報を送信することができるため、カメラ21,23に接続される配線を削減することができる。また、周波数調整部27は、撮影情報の周波数を調整して、地上側の地上設備102と通信する。そのため、周波数調整部27は、混線などによる撮影情報の途切れを抑制できる周波数に調整した上で、撮影情報を地上設備へ送信することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、
前記クレーンに設けられた撮影部と、
前記クレーンに設けられ、前記撮影部から無線通信で受信した撮影情報の周波数を調整する周波数調整部と、
前記クレーンに設けられ、地上側の地上設備と通信するアンテナと、を備えるクレーン遠隔操作システム。
【請求項2】
前記周波数調整部は、前記撮影情報を4.9GHzの周波数に調整する、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項3】
前記撮影部と前記周波数調整部との間では、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われる、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項4】
前記アンテナは、前記地上設備から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信する、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項5】
前記撮影部は、前記クレーンのクレーン本体部に対して相対的に移動可能な可動部に設けられる、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項6】
前記クレーン本体部は、ガーダであって、
前記撮影部は、前記ガーダ上を横行可能なトロリに吊下げられた吊部に設けられる、請求項5に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項7】
前記地上設備のアンテナは、前記クレーンに対し、当該走行方向において対向する位置に設けられる、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
【請求項8】
対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、
前記クレーンに設けられた通信部を備え、
前記通信部は、地上側の地上設備との間で4.9GHzでの無線通信を行う、クレーン遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を吊るクレーンに設けられたカメラで取得した撮影情報を地上側の地上設備へ通信するシステム(例えば、特許文献1参照)が知られている。このシステムは、クレーン本体に設けられたカメラで撮影した撮影情報を所定の周波数で地上設備へ送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレーンを遠隔地から遠隔操作を行うことは、作業者の人的コストや運転手の負担を低減することができる。ここで、クレーンの遠隔操作を行う場合、対象物を見やすい位置からカメラで撮影する必要があるが、カメラの位置によっては配線が複雑化してしまい配線作業の負荷が増加する。また、撮影情報を地上側の地上設備へ無線通信する場合、撮影情報が途切れるなどの通信上の問題が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、配線を削減すると共に通信の質を向上できるクレーン遠隔操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーン遠隔操作システムは、対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、クレーンに設けられた撮影部と、クレーンに設けられ、撮影部から無線通信で受信した撮影情報の周波数を調整する周波数調整部と、クレーンに設けられ、地上側の地上設備と通信するアンテナと、を備える。
【0007】
クレーン遠隔操作システムにおいて、周波数調整部は、クレーンに設けられた撮影部から無線通信で撮影情報を受信する。このように、クレーンに設けられた撮影部が無線通信で撮影情報を送信することができるため、撮影部に接続される配線を削減することができる。また、周波数調整部が、撮影情報の周波数を調整し、アンテナが、地上側の地上設備と通信する。そのため、周波数調整部が、混線などによる撮影情報の途切れを抑制できる周波数に調整した上で、アンテナが、撮影情報を地上設備へ送信することができる。以上より、配線を削減すると共に通信の質を向上できる。
【0008】
周波数調整部は、前記撮影情報を4.9GHzの周波数に調整してよい。4.9GHzの周波数は、クレーンの建屋において用いられにくい周波数であるため、アンテナと地上設備との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。
【0009】
撮影部と周波数調整部との間では、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われてよい。互いの距離が近い撮影部と周波数調整部との間では、wifiで用いられる周波数である2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信を行うことで、撮影部周辺に特殊な通信機器を設ける必要がなくなる。
【0010】
アンテナは、地上設備から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信してよい。4.9GHzの周波数は、クレーンの建屋において用いられにくい周波数である。従って、アンテナは、地上設備から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信することで、アンテナと地上設備との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。以上より、通信の質を向上できる。
【0011】
撮影部は、クレーンのクレーン本体部に対して相対的に移動可能な可動部に設けられてよい。可動部に有線の撮影部を設ける場合、可動部の動作に対応できるようにするために配線が複雑になる。これに対し、無線の撮影部であれば、配線の複雑化を生じることなく可動部に設けることができる。
【0012】
クレーン本体部は、ガーダであって、撮影部は、ガーダ上を横行可能なトロリに吊下げられた吊部に設けられてよい。この場合、撮影部は、吊荷を撮影することができる。
【0013】
地上設備のアンテナは、クレーンに対し、当該走行方向において対向する位置に設けられてよい。この場合、クレーン内におけるアンテナと地上設備のアンテナとの位置関係が、走行方向において互いに対向する状態に保たれる。そのため、撮影情報の通信の質を向上できる。
【0014】
本発明に係るクレーン遠隔操作システムは、対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、クレーンに設けられた通信部を備え、通信部は、地上側の地上設備との間で4.9GHzでの無線通信を行う。
【0015】
4.9GHzの周波数は、クレーンの建屋において用いられにくい周波数である。従って、通信部が地上側の地上設備との間で4.9GHzでの無線通信を行うことで、周波数調整部と地上設備との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。以上より、通信の質を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線を削減すると共に通信の質を向上できるクレーン遠隔操作システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーン遠隔操作システム、及び操作対象となるクレーンを示す図である。
【
図2】クレーン遠隔操作システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
【
図4】複数のクレーンを有する建屋を示す図である。
【
図5】変形例に係るクレーン遠隔操作システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン遠隔操作システム100、及び操作対象となるクレーン1を示す図である。ここでは、クレーン1として天井クレーンが例示されている。
図1に示すように、クレーン1は、吊荷SL(対象物)を吊部6で保持して吊部材7で吊るし、当該吊部6及び吊部材7を吊荷SLと共に移動させる装置である。また、吊荷SLも特に限定されず、コイル、スラブ、結束棒鋼、鉄板など、様々な物品が採用されてもよい。
【0019】
図1に示すように、クレーン1は、地上に設けられたレール2上を走行するクレーン本体部10、クレーン本体部10に対して相対的に移動可能な吊部6等を備える。クレーン本体部10は、例えばガーダ3である。吊部6は、ガーダ3上を横行方向D2に移動可能なトロリ4に設けられてもよい。
【0020】
レール2は、ガーダ3及びトロリ4を介した吊部6の走行方向D1の移動をガイドする部材である。レール2は、横行方向D2に互いに離間すると共に、クレーン本体部10の走行方向D1に平行に延びる一対のガイド部材である。レール2は、クレーン1が設けられる建屋150に固定されている。ガーダ3は、トロリ4を介した吊部6の横行方向D2の移動をガイドする一対の部材である。ガーダ3は、走行方向D1に互いに離間すると共に、一対のレール2に架け渡されるように横行方向D2に平行に延びる一対のガイド部材である。ガーダ3は、走行装置によって、レール2に沿って走行方向D1へ走行可能である。トロリ4は、ガーダ3に支持された状態で、吊部6を吊り下げる。トロリ4は、横行装置によって、ガーダ3に沿って横行方向D2へ横行可能である。
【0021】
吊部6は、吊荷SLを吊ることによって保持する。吊部6は、吊部材7によってトロリ4から吊り下げられている。吊部6は、トロリ4に設けられた巻上装置8と吊部材7を介して接続されている。従って、巻上装置8は、吊部材7を巻き上げ、巻き下げることで、吊部6を昇降させることができる。吊部材7は、例えばワイヤロープである。
【0022】
クレーン遠隔操作システム100は、クレーン1上に設けられるクレーン設備101と、地上に設けられる地上設備102と、を備える。クレーン設備101は、撮影部108と、周波数調整部27と、通信部109と、アンテナ28を含む。周波数調整部27と通信部109とアンテナ28は、ガーダ3上に設けられる。そのため、便宜上、周波数調整部27と通信部109とアンテナ28を合わせてガーダ設備105と呼ぶことがある。なお、周波数調整部27と通信部109とアンテナ28は、その一部または全てが一体として構成されてもよい。撮影部108は、吊部6に設けられる吊部監視部103、トロリ4に設けられるトロリ監視部104、ガーダ3に設けられるガーダ設備105、のうち少なくとも1つに設けられる。本実施形態においては、撮影部108は後述のカメラ21,23,25を含み、通信部109は後述の通信部22,24,26を含む。
【0023】
図1及び
図2を参照して、クレーン遠隔操作システム100の詳細な構成について説明する。
図2は、クレーン遠隔操作システム100のブロック構成を示すブロック構成図である。吊部監視部103は、カメラ21(撮影部)と、通信部22と、を備える。これらの機器は吊部6に設けられる(
図1参照)。カメラ21は、撮影軸が下方へ向くように設けられている。カメラ21は、吊部6が吊荷SLを吊る作業を行うときに、吊荷SLを撮影することができる。カメラ21は、取得した撮影情報を通信部22へ送信する。通信部22は、ガーダ設備105の通信部26との間で無線通信を行う機器である。通信部22は、取得した撮影情報をガーダ設備105へ送信する。カメラ21と通信部22との間では有線通信が行われてもよい。なお、カメラ21自体が通信機能を有する場合には、通信部22は省略することができる。ここで、吊部6は、クレーン1のクレーン本体部10であるガーダ3に対して相対的に移動可能である。そのため、カメラ21は、クレーン1のクレーン本体部10に対して相対的に移動可能な可動部に設けられる。
【0024】
トロリ監視部104は、カメラ23(撮影部)と、通信部24と、を備える。これらの機器はトロリ4に設けられる。カメラ23は、例えば、巻上装置8が吊部材7を巻取る様子やトロリ4から見た吊荷SL周辺などの様子を撮影することができる。カメラ23は、取得した撮影情報を通信部24へ送信する。通信部24は、ガーダ設備105の通信部26との間で無線通信を行う機器である。通信部24は、取得した撮影情報をガーダ設備105へ送信する。カメラ23と通信部24との間では有線通信が行われてもよい。なお、カメラ23自体が通信機能を有する場合には、通信部24を省略することができる。ここで、トロリ4は、クレーン1のクレーン本体部10であるガーダ3に対して相対的に移動可能である。そのため、カメラ23は、クレーン1のクレーン本体部10に対して相対的に移動可能な可動部に設けられるといえる。
【0025】
ガーダ設備105は、カメラ25と、通信部26とを備える。これらの機器はガーダ3に設けられる(
図1参照)。カメラ25は、クレーン本体部10の車輪、トロリ全体、ガーダ3から見た吊荷SL周辺などの様子を撮影することができる。カメラ25は、取得した撮影情報を通信部26へ送信する。通信部26は、撮影部108から受信した撮影情報を周波数調整部27に送信する。
【0026】
周波数調整部27は、カメラ21,23から無線通信で受信した撮影情報、及びカメラ25から有線または無線通信で受信した撮影情報の周波数を調整する。周波数調整部27により周波数が調整された撮影情報は、地上設備102との間で無線通信を行うためのアンテナ28に送信される。アンテナ28は、周波数調整部27によって周波数が調整された撮影情報を地上設備102へ送信する。また、アンテナ28は、地上設備102からクレーン1の制御情報(以下、クレーン制御情報と呼ぶことがある。)を受信し、周波数調整部27へ送信する。周波数調整部27は、地上設備102から受信したクレーン制御情報を制御部29へ送信する。周波数調整部27と制御部29との間では、有線通信が行われる。
【0027】
制御部29は、クレーン1の各種機器を制御する機器である。入力部30は、作業者の操作によって制御部29に情報を入力するための入力機器である。入力部30は、例えばタッチパネルである。カメラ25と周波数調整部27との間、通信部26と周波数調整部27との間、周波数調整部27とアンテナ28(通信部)との間、周波数調整部27と制御部29との間、及び制御部29と入力部30との間では有線通信が行われる。
【0028】
図2に示すように、地上設備102は、アンテナ31と、周波数調整部32と、制御部33と、地上設備モニタ34と、入力部36と、を備える。アンテナ31は、クレーン設備101との間で無線通信を行うための通信器である。アンテナ31は、クレーン設備101から受信した撮影情報を地上設備モニタ34へ送信する。地上設備モニタ34は、クレーン設備101で取得された撮影情報を操作者へ出力する機器である。入力部36は、操作者の操作によって制御部33に情報を入力するための入力機器である。入力部36は、例えばタッチパネルである。制御部33は、入力された情報に基づき、クレーン1の制御情報を作成する。クレーン制御情報は、例えば、クレーン1の走行駆動部、横行駆動部、巻上駆動部などに対する指令値などを含む。周波数調整部32は、クレーン設備101へ送信するクレーン制御情報の周波数を調整する。周波数調整部32により周波数が調整されたクレーン制御情報は、アンテナ31により、クレーン設備101に送信される。アンテナ31と周波数調整部32との間、周波数調整部32と制御部33との間、周波数調整部32と地上設備モニタ34との間、制御部33と入力部36との間では有線通信が行われる。
【0029】
図1を参照して、地上設備102におけるアンテナ31及び周波数調整部32の配置の一例を示す。建屋150の壁部151の内面側には、クレーン設備101と通信するアンテナ31Aが設けられる。建屋150の壁部151の外面側には、操作室106と通信するアンテナ31Bが設けられる。アンテナ31Aとアンテナ31Bとの間には周波数調整部32Aが設けられる。操作室106には、建屋のアンテナ31Bと通信するアンテナ31Cが設けられる。アンテナ31Cは、操作室106の周波数調整部32Bと接続される。周波数調整部32Bは、地上設備モニタ34と接続される。なお、アンテナ31と操作室106の間の通信は、その一部または全てを有線通信で行うこともできる。
【0030】
図3を参照して、操作室106内の構成の一例について説明する。
図3に示すように、操作室106には、複数の地上設備モニタ34が設けられている。これにより、操作者は、各地上設備モニタ34において、あるクレーン1に設けられた複数のカメラの映像を確認することができる。また、操作室106には、複数の地上設備モニタ34の列の中に入力部36が設けられる。操作室106には、地上設備モニタ34及び入力部36の手前に操作器39が設けられる。なお、クレーン1の少なくとも一部の動作が自動化される場合には、操作者は複数のクレーン1のカメラの映像を切り替えることで、複数のクレーン1を操作してもよい。
【0031】
次に、クレーン設備101と通信するアンテナ31Aの配置について説明する。地上設備102のアンテナ31は、クレーン1に対し、当該走行方向D1において対向する位置に設けられる。例えば、
図4に示すように、建屋150の中には、横行方向D2に並ぶように複数のクレーン1A,1B,1Cが設けられている。建屋150は、吊荷SLが搬送されるコンベア部152と、吊荷SLが配置される吊荷配置部153と、吊荷SLを出庫する車両TLが通過する車両通路154と、を備える。各クレーン1に対して走行方向D1において対向する壁部のうち、コンベア部152側の壁部151の内面側には、地上設備102側のアンテナ31が設けられる。クレーン1Aに対するアンテナ31は、壁部151において、クレーン1Aと走行方向D1において対向する位置に設けられる。クレーン1Bに対するアンテナ31は、壁部151において、クレーン1Bと走行方向D1において対向する位置に設けられる。クレーン1Cに対するアンテナ31は、壁部151において、クレーン1Cと走行方向D1において対向する位置に設けられる。このような配置によると、クレーン1が走行方向D1に移動しても、アンテナ28とアンテナ31の相対角度は大きく変化することがないため、安定した通信が可能である。
【0032】
次に、
図1に戻り、クレーン遠隔操作システム100における無線通信について説明する。吊部監視部103の通信部22と、ガーダ設備105の通信部26との間では、無線通信が行われる。トロリ監視部104の通信部24と、ガーダ設備105の通信部26との間では、無線通信が行われる。通信部22,24,26は、wifiの通信器によって構成される。通信部22,24,26間での通信の周波数は特に限定されないが、例えば、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われてよい。そのため、吊部6に設けられたカメラ21と周波数調整部27との間、及びトロリ4に設けられたカメラ23と周波数調整部27との間では、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われる。なお、5.6GHzの周波数であれば、屋外でも利用可能である。吊部6に設けられた吊部監視部103と、ガーダ設備105との間には、撮影情報を伝達する配線は設けられていない。なお、カメラ21は、吊部6に対して電力を供給する既存の電力配線から電力を供給される。トロリ4に設けられたトロリ監視部104と、ガーダ設備105との間には、撮影情報を伝達する配線は設けられていない。なお、カメラ23は、トロリ4の駆動部に対して電力を供給する既存の電力配線から電力を供給される。
【0033】
ガーダ設備105のアンテナ28と地上設備102の壁部151の内面側のアンテナ31Aとの間では、無線通信が行われる。ガーダ設備105のアンテナ28は、周波数調整部27によって周波数が調整された撮影情報を送信する。地上設備102の壁部151の内面側のアンテナ31Aは、周波数調整部32Aによって周波数が調整されたクレーン制御情報を送信する。壁部151の外面側のアンテナ31Bと操作室106のアンテナ31Cとの間では、無線通信が行われる。地上設備102の壁部151の外面側のアンテナ31Bは、周波数調整部32Aによって周波数が調整された撮影情報を送信する。操作室106のアンテナ31Cは、周波数調整部32Bによって周波数が調整されたクレーン制御情報を送信する。周波数調整部27,32A,32Bは、マルチアクセスコンセントレータなどの機器によって構成される。なお、周波数調整部27,32A,32Bは、周波数を調整可能な機器によって構成されればよく、マルチアクセスコンセントレータ以外の機器で構成されてもよい。周波数調整部27,32A,32Bは、wifiで用いられる周波数とは異なる周波数に調整する。周波数調整部27,32A,32Bは、情報を4.9GHzの周波数に調整する。従って、周波数調整部27は、2.4GHz又は5.6GHzの周波数の撮影情報を4.9GHzに調整して、地上設備102へ送信する。また、地上設備102の周波数調整部32A,32Bは、クレーン制御情報を4.9GHzに調整してクレーン設備101側へ送信する。ただし、周波数調整部27,32A、32Bは、通信部22,24,26の周波数と異なる周波数であれば、4.9GHz以外の周波数に調整してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係るクレーン遠隔操作システム100の作用・効果について説明する。
【0035】
クレーン遠隔操作システム100において、周波数調整部27は、クレーン1に設けられたカメラ21,23から無線通信で撮影情報を受信する。このように、クレーン1に設けられたカメラ21,23が無線通信で撮影情報を送信することができるため、カメラ21,23に接続される配線を削減することができる。また、周波数調整部27が、撮影情報の周波数を調整して、アンテナ28が、地上側の地上設備102と通信する。そのため、周波数調整部27が、混線などによる撮影情報の途切れを抑制できる周波数に調整した上で、アンテナ28が、撮影情報を地上設備へ送信することができる。以上より、配線を削減すると共に通信の質を向上できる。
【0036】
周波数調整部27は、撮影情報を4.9GHzの周波数に調整してよい。4.9GHzの周波数は、クレーン1の建屋において用いられにくい周波数である。具体的に、4.9GHzの周波数は、取り扱いに免許が必要な周波数である。そのため、wifiで用いられる周波数とは異なり、建屋150において4.9GHzの周波数が用いられる場面は少ない。従って、アンテナ28と地上設備102との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。
【0037】
カメラ21,23と周波数調整部27との間では、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われてよい。互いの距離が近いカメラ21,23と周波数調整部27との間では、wifiで用いられる周波数である2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信を行うことで、カメラ21,23周辺に特殊な通信機器を設ける必要がなくなる。
【0038】
アンテナ28は、地上設備102から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信してよい。4.9GHzの周波数は、クレーン1の建屋において用いられにくい周波数である。従って、アンテナ28は、地上設備102から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信することで、アンテナ28と地上設備102との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。以上より、通信の質を向上できる。
【0039】
カメラ21,23は、クレーン1のクレーン本体部10に対して相対的に移動可能な可動部に設けられてよい。可動部に有線のカメラ21,23を設ける場合、可動部の動作に対応できるようにするために配線が複雑になる。これに対し、無線のカメラ21,23であれば、配線の複雑化を生じることなく可動部に設けることができる。
【0040】
クレーン本体部10は、ガーダ3であって、カメラ21は、ガーダ3上を横行可能なトロリ4に吊下げられた吊部6に設けられてよい。この場合、カメラ21は、吊荷SLを撮影することができる。
【0041】
地上設備102のアンテナ31は、クレーン1に対し、当該走行方向D1において対向する位置に設けられてよい。この場合、クレーン1内におけるアンテナ28と地上設備102のアンテナ31との位置関係が、走行方向D1において互いに対向する状態に保たれる。そのため、撮影情報の通信の質を向上できる。
【0042】
本実施形態に係るクレーン遠隔操作システム100は、吊荷SLを吊るクレーン1を遠隔操作するクレーン遠隔操作システム100であって、クレーン1に設けられた周波数調整部27及びアンテナ28による通信部50を備え、通信部50は、地上側の地上設備102との間で4.9GHzでの無線通信を行う。
【0043】
4.9GHzの周波数は、クレーン1の建屋150において用いられにくい周波数である。通信部50が地上側の地上設備との間で4.9GHzでの無線通信を行うことで、周波数調整部27と地上設備102との間の通信において、他の信号と混線することを抑制できる。以上より、通信の質を向上できる。
【0044】
ここで、本実施形態に係るクレーン遠隔操作システム100の効果の検証について説明する。まず、制御信号の遅延検証について説明する。地上設備102の制御部33とクレーン1の制御部29との間で、1スキャンに付き1ずつカウントアップするソフトを作成し、地上設備102の制御部33から制御信号を入力する。地上設備102の制御部33での入力時間とクレーン1の制御部29での出力時間をロガーで記録し、差分を通信の遅れ時間とする。当該実証実験では極わずかの遅延が発生したが、人が遠隔で操作を行う上で違和感なく操作を行うことが出来る範囲内のものである。
【0045】
また、カメラ23で撮影した撮影情報の遅延検証を行った。吊部6のカメラ21で地上に設置されたPCの画面に表示されたタイマーと、地上設備モニタ34の画面を同時に撮影し、表示されたタイマーの時間差を通信による遅延時間とした。地上設備モニタ34の表示されたタイマーに極わずかの遅延が発生したが、人が遠隔で操作を行う上では違和感なく状況を確認することが出来る範囲内のものである。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、クレーン1は、天井クレーンに限定されず、橋形クレーン、ジブクレーン、門型クレーン等であってもよい。
【0048】
図5は、橋形クレーン201を遠隔操作するためのクレーン遠隔操作システム200を示す図である。橋形クレーン201は、脚部202A,202Bと、橋部203と、トロリ204と、吊部206と、を備える。橋形クレーン201の脚部202Bには、カメラ121及び通信部122が設けられる。脚部202Aにおいて橋部203よりも高い延長部202Aaには、カメラ123及び通信部124が設けられる。トロリ204には、吊部206を撮影するカメラ126及び通信部127が設けられる。また、橋部203の後端部には、通信部129、周波数調整部130及びアンテナ128が設けられる。各カメラ121,123,126の撮影情報は、無線通信により周波数調整部130に送信される。
図1の建屋150の壁部151に代えて、固定架台160にアンテナ31A、周波数調整部32A及びアンテナ31Bが設けられる。
【0049】
[形態1]
対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、
前記クレーンに設けられた撮影部と、
前記クレーンに設けられ、前記撮影部から無線通信で受信した撮影情報の周波数を調整する周波数調整部と、
前記クレーンに設けられ、地上側の地上設備と通信するアンテナと、を備えるクレーン遠隔操作システム。
[形態2]
前記周波数調整部は、前記撮影情報を4.9GHzの周波数に調整する、請求項1に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態3]
前記撮影部と前記周波数調整部との間では、2.4GHz又は5.6GHzの周波数で通信が行われる、形態1又は2に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態4]
前記アンテナは、前記地上設備から4.9GHzの周波数に調整されたクレーン制御情報を受信する、形態1~3の何れか一項に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態5]
前記撮影部は、前記クレーンのクレーン本体部に対して相対的に移動可能な可動部に設けられる、形態1~4の何れか一項に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態6]
前記クレーン本体部は、ガーダであって、
前記撮影部は、前記ガーダ上を横行可能なトロリに吊下げられた吊部に設けられる、形態5に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態7]
前記地上設備のアンテナは、前記クレーンに対し、当該走行方向において対向する位置に設けられる、形態1~6の何れか一項に記載のクレーン遠隔操作システム。
[形態8]
対象物を吊るクレーンを遠隔操作するクレーン遠隔操作システムであって、
前記クレーンに設けられた通信部を備え、
前記通信部は、地上側の地上設備との間で4.9GHzでの無線通信を行う、クレーン遠隔操作システム。
【符号の説明】
【0050】
1…クレーン、21,24,121,123,127…カメラ(撮影部)、27,127…周波数調整部、50…通信部、100,200…クレーン遠隔操作システム。