(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036990
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141597
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】藤原 友秀
(57)【要約】
【課題】作動時に発生したアークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供する。
【解決手段】高電圧の電気回路において用いられる電気回路遮断装置であって、ハウジングに設けられた点火器と、点火器から受けるエネルギーによりハウジング内の収容空間に沿った所定の発射方向に向かって発射される発射体と、電気的に接続され且つ点火器が作動して発射体が発射されると電気的な接続が解除されるように配置された、一対の通電部と、所定領域に配置された消弧材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと
前記ハウジングに設けられた点火器と、
前記ハウジング内に形成され、一方向に延在する第1収容空間と、
前記点火器の作動前では前記第1収容空間の第1位置に位置決めされ、前記点火器の作動時に前記点火器から受けるエネルギーにより前記第1収容空間に沿った所定の発射方向に向かって発射される発射体であって、導電性を有する導電部材を含む発射体と、
前記ハウジングに設けられ、電気回路の一部を形成する一対の通電部であって、前記点火器の作動前では前記第1位置にある前記発射体の前記導電部材を介して電気的に接続され且つ前記点火器が作動して前記発射体が発射されると電気的な接続が解除されるように配置された、一対の通電部と、
前記点火器の作動前において、所定領域に配置された消弧材と、を備え、
前記点火器の作動時には前記発射体の発射により生じる衝撃によって前記消弧材が前記所定領域から放出されると共に放出された前記消弧材によって前記発射体の少なくとも一部が覆われるように、構成されている、
電気回路遮断装置。
【請求項2】
前記所定領域として前記第1収容空間の外側に形成され、前記ハウジング内に設けられる第2収容空間と、
前記第1収容空間と前記第2収容空間とを連通する第1連通部と、を備え、
前記点火器の作動前には前記第1位置にある前記発射体によって前記第1連通部が閉塞され、前記点火器の作動により前記発射体が発射されることで前記第1連通部が開通し、前記第2収容空間から前記第1収容空間へ前記消弧材が放出される、
請求項1に記載の電気回路遮断装置。
【請求項3】
前記第1収容空間のうち前記発射方向において前記発射体よりも先側の領域と前記第2収容空間とを連通する第2連通部を更に備える、
請求項2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項4】
前記点火器の作動により前記発射体が発射されると、前記第1収容空間のうち前記発射方向において前記発射体よりも手前側の領域に前記消弧材が収容される、
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項5】
前記一対の通電部は、前記発射方向において互いに離間して配置されており、
前記一対の通電部のうち前記発射方向の手前側の第1通電部は、前記発射方向に沿って延びる筒状の第1ソケットを有し、
前記一対の通電部のうち前記発射方向の先側の第2通電部は、前記発射方向に沿って延びる筒状の第2ソケットを有し、
前記第1ソケットと前記第2ソケットとによって前記第1収容空間が画定され、
前記点火器の作動前には、前記第1ソケットと前記第2ソケットとが前記導電部材を介して電気的に接続されるように、前記発射体が前記第1ソケット及び前記第2ソケットに嵌入されている、
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項6】
前記点火器の作動前において、前記導電部材は、前記第1ソケットと前記第2ソケットとのうち少なくとも何れか一方に対して圧入されている、
請求項5に記載の電気回路遮断装置。
【請求項7】
前記点火器の作動前において、前記導電部材は、前記第1ソケットと前記第2ソケット
とのうち少なくとも何れか一方に対して接着されている、
請求項5に記載の電気回路遮断装置。
【請求項8】
前記点火器の作動前において、前記第1ソケットと前記第2ソケットとのうち少なくとも何れか一方と前記導電部材とが一体に接続されている、
請求項5に記載の電気回路遮断装置。
【請求項9】
前記発射体は、前記発射方向において前記導電部材よりも手前側に配置されるピストンであって、前記点火器の作動時に前記点火器から受けるエネルギーにより前記発射方向に向かって発射されるピストンを含む、
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項10】
前記所定領域が、前記ピストンに含まれている、
請求項9に記載の電気回路遮断装置。
【請求項11】
前記消弧材は、無機酸化物により形成されている、
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項12】
前記消弧材は、ゼオライトにより形成されている、
請求項1又は2に記載の電気回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路には、その電気回路を構成する機器の異常時や、該電気回路が搭載されたシステムの異常時に作動することによって該電気回路での導通を緊急に遮断する遮断装置が設けられる場合がある。その一態様として、点火器等から付与されるエネルギーによって、導電性金属を電気回路の一部から分離して、該電気回路を遮断する電気回路遮断装置が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。また、近年では、高電圧の電源を搭載する電気自動車に適用される電気回路遮断装置の重要性が益々高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気回路遮断装置において、電気回路の一部を形成する導体を分離した際にアークが発生し易いのが実情である。アークが発生してしまうと電気回路を迅速に遮断することができないため、電気回路遮断装置においては発生したアークを迅速に消弧することが要求される。
【0005】
また、電気回路遮断装置の作動時において、点火器等から発生したガスは高温であり、イオン化している場合が多い。発生した高温ガスが導電性金属部分を覆うことが多く、導電性金属を分離してもイオン化ガスによって覆われることにより電気的に導通してしまうおそれがあった。
【0006】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作動時に発生したアークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る電気回路遮断装置は、ハウジングと前記ハウジングに設けられた点火器と、前記ハウジング内に形成され、一方向に延在する第1収容空間と、前記点火器の作動前では前記第1収容空間の第1位置に位置決めされ、前記点火器の作動時に前記点火器から受けるエネルギーにより前記第1収容空間に沿った所定の発射方向に向かって発射される発射体であって、導電性を有する導電部材を含む発射体と、前記ハウジングに設けられ、電気回路の一部を形成する一対の通電部であって、前記点火器の作動前では前記第1位置にある前記発射体の前記導電部材を介して電気的に接続され且つ前記点火器が作動して前記発射体が発射されると電気的な接続が解除されるように配置された、一対の通電部と、前記点火器の作動前において、所定領域に配置された消弧材と、を備え、前記点火器の作動時には前記発射体の発射により生じる衝撃によって前記消弧材が前記所定領域から放出されると共に放出された前記消弧材によって前記発射体の少なくとも一部が覆われるように、構成されている。
【0008】
また、本開示に係る電気回路遮断装置は、前記所定領域として前記第1収容空間の外側に形成され、前記ハウジング内に設けられる第2収容空間と、前記第1収容空間と前記第2収容空間とを連通する第1連通部と、を備え、前記点火器の作動前には前記第1位置に
ある前記発射体によって前記第1連通部が閉塞され、前記点火器の作動により前記発射体が発射されることで前記第1連通部が開通し、前記第2収容空間から前記第1収容空間へ前記消弧材が放出されてもよい。
【0009】
また、本開示に係る電気回路遮断装置は、前記第1収容空間のうち前記発射方向において前記発射体よりも先側の領域と前記第2収容空間とを連通する第2連通部を更に備えてもよい。
【0010】
また、前記点火器の作動により前記発射体が発射されると、前記第1収容空間のうち前記発射方向において前記発射体よりも手前側の領域に前記消弧材が収容されてもよい。
【0011】
また、前記一対の通電部は、前記発射方向において互いに離間して配置されており、前記一対の通電部のうち前記発射方向の手前側の第1通電部は、前記発射方向に沿って延びる筒状の第1ソケットを有し、前記一対の通電部のうち前記発射方向の先側の第2通電部は、前記発射方向に沿って延びる筒状の第2ソケットを有し、前記第1ソケットと前記第2ソケットとによって前記第1収容空間が画定され、前記点火器の作動前には、前記第1ソケットと前記第2ソケットとが前記導電部材を介して電気的に接続されるように、前記発射体が前記第1ソケット及び前記第2ソケットに嵌入されていてもよい。
【0012】
また、前記点火器の作動前において、前記導電部材は、前記第1ソケットと前記第2ソケットとのうち少なくとも何れか一方に対して圧入されていてもよい。
【0013】
また、前記点火器の作動前において、前記導電部材は、前記第1ソケットと前記第2ソケットとのうち少なくとも何れか一方に対して接着されていてもよい。
【0014】
また、前記点火器の作動前において、前記第1ソケットと前記第2ソケットとのうち少なくとも何れか一方と前記導電部材とが一体に接続されていてもよい。
【0015】
また、前記発射体は、前記発射方向において前記導電部材よりも手前側に配置されるピストンであって、前記点火器の作動時に前記点火器から受けるエネルギーにより前記発射方向に向かって発射されるピストンを含んでもよい。
【0016】
また、前記所定領域が、前記ピストンに含まれていてもよい。
【0017】
また、前記消弧材は、無機酸化物により形成されていてもよい。
【0018】
また、前記消弧材は、ゼオライトにより形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、作動時に発生したアークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電気回路遮断装置の作動前の状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る遮断装置の内部空間を説明するための縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電気回路遮断装置の作動後の状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の変形例1に係る電気回路遮断装置の縦断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例2に係る電気回路遮断装置の縦断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例3に係る電気回路遮断装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
[装置構成]
図1は、実施形態に係る電気回路遮断装置(以下、単に「遮断装置」という)1の作動前の状態を示す縦断面図である。
図1は、遮断装置1の作動前の状態を示している。遮断装置1は、例えば、自動車や家庭電化製品等に含まれる電気回路や、当該電気回路のバッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)を含むシステムの異常時に、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止するための装置である。本明細書においては、
図1に示す高さ方向(即ち、上下方向であって、後述する第1収容空間13が延在する方向)に沿った断面を遮断装置1の縦断面といい、縦断面に直交する断面を遮断装置1の横断面という。また、第1収容空間13に沿って、後述する発射体40が発射される方向を発射方向という。
図1に示すように、本実施形態では、高さ方向における下側に向かう方向(下方向)が発射方向となる。但し、本明細書において遮断装置1の上下方向とは、実施形態の説明の便宜上、遮断装置1における各要素における相対的な位置関係を示すものに過ぎない。
【0022】
遮断装置1は、ハウジング10、点火器20、通電部30、発射体40、消弧材50、等を含んでいる。ハウジング10は、上端側の第1端部11から下端側の第2端部12の上下方向に延在する第1収容空間13を有している。
図2は、実施形態1に係る遮断装置1の内部空間を説明するための縦断面図である。
図2では、発射体40及び消弧材50の図示を省略している。
図2に示すように、第1収容空間13は、発射体40が移動可能なように直線状に形成された円柱状の空間であり、遮断装置1の上下方向に沿って延在している。ハウジング10は、更に第1収容空間13の横方向外側に、第2収容空間14を有している。この第2収容空間14は、第1収容空間13を取り囲む環状の空間であり、本開示に係る「所定領域」の一例として形成されている。
図1に示すように、第2収容空間14には、消弧材50が収容されている。
図1に示す態様では、ハウジング10の内部に形成された第1収容空間13に、発射体40が収容されており、所定領域として画定される第2収容空間14には消弧材50が収容されている。また、第1収容空間13と前記第2収容空間14との間には、これらを連通する第1連通部16が形成されている。詳細については後述するが、遮断装置1(点火器20)の作動前初期状態では第1収容空間13の第1位置131に位置決めされた発射体40によって第1連通部16が閉塞され、遮断装置1(点火器20)の作動後は、発射体40が発射方向へ発射されることで第1連通部16が開通し、発射による衝撃によって消弧材50が第2収容空間14から第1収容空間13に放出される。
【0023】
[ハウジング]
ハウジング10は、ハウジングプレート100、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130、ベースプレート140、を含む。ハウジングプレート100には、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130、ベースプレート140がボルト150によって上下方向に結合されており、これによって一体のハウジング10が形成されている。
【0024】
ハウジング10は、例えば、概略角柱形状の外形を有している。但し、ハウジング10の形状は特に限定されない。また、ハウジング10に含まれる、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130には、上下方向に沿って円柱状の空洞部が形成されている。ハウジング10の上部には、ハウジングプレート100と第1ハウジング110とによって点火器収容部200が形成され、点火器収容部200には、後述する
点火器20が配置される。また、第1ハウジング110には第1通電部31を配置できるように構成されており、第3ハウジング130には第2通電部32を配置できるように構成されている。実施形態に係るハウジング10には、一対の第1保持孔300A、第2保持孔300Bが形成されている。第1保持孔300A、第2保持孔300Bは、ハウジング10の内部に形成され、上下方向に延在している以上のように構成される、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130は、例えば、合成樹脂等といった絶縁部材によって形成することができる。例えば、ポリアミド合成樹脂の一種であるナイロンによって形成されていてもよい。
【0025】
ハウジングプレート100には雌ねじが四隅に設けられており、ベースプレート140側からボルト150を挿通できるよう、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130にも穴が設けられており、ハウジングプレート100とベースプレート140によって第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130を挟み、ハウジングプレート100に設けられた雌ねじへボルト150を締結することで、ハウジングプレート100、第1ハウジング110、第2ハウジング120、第3ハウジング130、ベースプレート140を結合できるようにしている。上記のように構成されるハウジングプレート100は、例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、ハウジングプレート100を形成する材料は特に限定されない。また、ハウジングプレート100の形状についても上記態様は一例であり、他の形状を採用してもよい。
【0026】
ベースプレート140も金属素材によって形成されている。例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、ベースプレート140を形成する材料は特に限定されない。また、ベースプレート140の形状についても上記態様は一例であり、他の形状を採用してもよい。
【0027】
[点火器]
次に、点火器20について説明する。点火器20は、一対の導電ピン211を有する点火器本体21と、点火薬を含む点火部22を備えた電気式点火器である。点火器本体21は、例えば、絶縁樹脂によって包囲されている。また、点火器本体21における一対の導電ピン211の先端側は外部に露出しており、遮断装置1の使用時に電源と接続される。
【0028】
点火器20は、第1ハウジング110とハウジングプレート100とによって形成された点火器収容部200の内部に収容された点火器本体21と、点火部22と、を備えている。点火器20は、ハウジングプレート100と第1ハウジング110を組み立てる際に挟持する様に固定されている。また、第1ハウジング110の点火器設置面111には、Oリング設置溝を点火器本体21の周方向に沿って環状に形成し、この溝部にOリングを嵌め込んでもよい。Oリングを、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成してもよく、点火器収容部200における内周面と点火器本体21との間の気密性を高めるように機能してもよい。
【0029】
図1に示すように、点火器20の点火部22は、ハウジング10の第1収容空間13を臨むようにして第1収容空間13の上端部(第1端部11)に配置されている。点火部22は、例えば、点火器カップ内に点火薬を収容する形態として構成されている。例えば、点火薬は、一対の導電ピン211の基端同士を連結するように連架されたブリッジワイヤ(抵抗体)に接触した状態で点火部22における点火器カップ内に収容されている。点火薬としては、例えば、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・
タングステン・過塩素酸カリウム)、THPP(水素化チタン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等を採用してもよい。
【0030】
点火器20を作動させる際、点火薬を点火するための作動電流が電源から導電ピン211に供給されると、点火部22におけるブリッジワイヤが発熱する結果、点火器カップ内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、点火部22の点火器カップ内における点火薬の燃焼に伴って当該点火器カップ内の圧力が上昇し、点火部22の開裂面22Aが開裂し、点火器カップから燃焼ガスが第1収容空間13へと放出される。より具体的には、点火器カップからの燃焼ガスが、第1収容空間13内の第1位置131に配置された発射体40に含まれるピストン41における窪み部411に向かって放出される。
【0031】
[通電部]
次に、通電部30について説明する。通電部30は、遮断装置1を所定の電気回路に取り付けたときに当該電気回路の一部を形成する導電性の金属体である。通電部30は、上下方向(即ち、発射方向)に互いに離間して配置された一対の第1通電部31及び第2通電部32を備える。
【0032】
図1に示すように、第1通電部31は、第1バスバー311及び第1ソケット312を有している。また、第2通電部32は、第2バスバー321及び第2ソケット322を有している。第1ソケット312及び第2ソケット322は上下方向に延在する筒状に形成されており、第1ソケット312は第1保持孔300Aに配置され、第2ソケット322は第2保持孔300Bに配置されている。第1バスバー311及び第2バスバー321は片状に形成されており、第1バスバー311は第1ソケット312から横方向に延びてハウジング10の外部に突出し、第2バスバー321は第2ソケット322から横方向に延びてハウジング10の外部に突出している。第1バスバー311及び第2バスバー321におけるハウジング10の外部に突出した部分には、前述の電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)が接続される。
【0033】
通電部30は、例えば、銅(Cu)等の金属によって形成することができる。但し、通電部30は、銅以外の金属で形成されていてもよいし、銅と他の金属との合金で形成されてもよい。但し、通電部30は種々の形態を採用することができ、その形状は特に限定されない。
【0034】
[収容空間]
図2に示すように、点火器20と第1ハウジング110と第2ハウジング120と第3ハウジング130と第1ソケット312と第2ソケット322とによって、第1収容空間13が画定されている。第1収容空間13の上端部(第1端部11)は、点火器20によって構成されており、第1収容空間13の下端部(第2端部12)は、第3ハウジング130によって構成されている。第1収容空間13は、第1ソケット312の内部空間と第2ハウジング120の空洞部の中央部分と第2ソケット322の内部空間とを含んで、円柱状に形成されている。
【0035】
第1収容空間13の横方向外側には、後述する消弧材50が配置される所定領域としての第2収容空間14が、第1収容空間13を取り囲むように環状に形成されている。第2収容空間14は、第2ハウジング120の空洞部の中央部分(即ち、第1収容空間13に含まれる部分)を除く部分によって形成されている。
図1に示す作動前初期状態では、第1位置131に位置決めされた発射体40と第2ハウジング120とによって第2収容空間14が画定されている。また、
図2に示すように、第1収容空間13と第2収容空間14は、第1連通部16を介して連通している。第1連通部16は、第1ソケット312と第2ソケット322との間に形成された環状の隙間として構成されている。
【0036】
[発射体]
次に、
図1を参照して発射体40について説明する。発射体40は、ピストン41と、
当該ピストン41に接触して設置された導電部材であるロッド42を含んで構成されており、第1収容空間13に配置されている。ピストン41は、例えば、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されている。また、ロッド42は、例えば銅等の導電性の部材によって形成されている。
図1に示すように、第1収容空間13内部において、ピストン41は、ロッド42よりも第1端部11側(発射方向の手前側)に設置されている。なお、ロッド42は、作動前初期状態において第1ソケット312及び第2ソケット322が導通可能な限りにおいては、全体が導電性部材で形成されている必要はなく、適宜態様を変更してもよい。例えば、ロッド42は、非導電性部材が銅箔で覆われた構成であってもよい。そうすることで、ロッド42に用いる導電性部材の量を最小限に抑え、軽量化や低コスト化を実現することができる。
【0037】
図1では、ピストン41及びロッド42は概略円柱形状を有し、第1収容空間13の内径と概ね対応する外径を有している。また、発射体40におけるピストン41の上面には、例えば、円柱形状を有する凹部である窪み部411が形成されており、この窪み部411に点火部22を受け入れ可能に構成されている。窪み部411の底面は、点火器20の作動時に当該点火器20から受けるエネルギーを受圧部分として形成されている。また、ピストン41の下端側にはロッド42を装着するための装着凸部412が設けられている。更に、ロッド42上端側には、ピストン41の装着凸部412と嵌合する装着凹部421が設けられている。但し、ピストン41とロッド42は接着材等で接着されたり、一体成型で形成されていてもよい。
【0038】
上記のように構成された発射体40は、
図1に示す作動前初期状態において、ピストン41の装着凸部412にロッド42の装着凹部421が嵌合し装着された状態で第1収容空間13の第1位置131に配置される。
図1に示す例では、発射体40のピストン41が第1収容空間13における点火器20側(上端側)に位置付けられている。また、
図1に示す例では、通電部30の第1通電部31に含まれる第1ソケット312、及び第2通電部32に含まれる第2ソケット322に、発射体40のロッド42が挿通された状態で保持されている。ロッド42は、第1通電部31の第1ソケット312と第2通電部32の第2ソケット322に両端を保持された状態で嵌入されている。これにより、作動前初期状態では、通電部30に含まれる第1ソケット312及び第2ソケット322と、ロッド42で回路が導通し電気的に接続されている。但し、発射体40に含まれるロッド42は、第1ソケット312及び第2ソケット322の少なくとも何れか一方に対して嵌入、圧入、接着等に例示される何れの態様で設置されていたり、ロッド42が第1ソケット312及び第2ソケット322の少なくとも何れか一方と一体に接続されていてもよい。
【0039】
図1に示す、遮断装置1の作動前初期状態では、発射体40が第1位置131に位置決めされることで、第2ハウジング120において、第1収容空間13を画定している部分が発射体40によって閉塞されるため、第2収容空間14が画定される。
図3に示す、遮断装置1(点火器20)の作動後の状態では、発射体40が、第1収容空間13内において、第1位置131よりも発射方向の下端である第2端部12方向へ移動した位置、第2位置132へ移動する。
【0040】
[消弧材]
次に、ハウジング10における第2収容空間14に配置される消弧材50について説明する。消弧材50は、ロッド42と第1ソケット312及び第2ソケット322との電気的接続が解除された際に生じたアーク及び通電部30とロッド42の熱エネルギーを奪い、冷却することによって電流遮断時におけるアーク発生の抑制、或いは、発生したアークを消弧(消滅)させるための冷却材である。また、
図1に示す、遮断装置1の作動前初期状態では、消弧材50は、第2収容空間14に配置されている。対して、
図3に示す、遮断装置1(点火器20)の作動後の状態では、発射体40が第2位置132へ移動してお
り、消弧材50は発射体40の発射方向において、発射体40よりも手前側(第1端部11側)の第1収容空間13内の領域へ収容される。但し、消弧材50は発射体40の発射方向において、発射体40よりも手前側(第1端部11側)の第1収容空間13内の当該領域に充填されてもよい。
【0041】
消弧材50は遮断装置1(点火器20)の作動時において、第2収容空間14から第1連通部16を経て第1収容空間13に放出される。実施形態の一態様として、消弧材50は、粉末状のゼオライトである。消弧材50における上記態様は一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、消弧材50は無機酸化物によって形成されており、粒状であってもよい。また、消弧材50は固体状ではなく、液体状、ゲル状等に代表される流動性のある物質であってもよい。
【0042】
[動作]
次に、実施形態の遮断装置1の動作を説明する。
図1では実施形態に係る遮断装置1の作動前の状態を示し、
図3では作動後の状態を示している。以下では、
図1及び
図3を参照して、遮断装置1の作動時における動作内容を説明する。
【0043】
図1に示すように、遮断装置1の作動前においては、発射体40が第1位置131に位置決めされている。発射体40が第1位置131に配置されていることにより、第1通電部31の第1ソケット312と第2通電部32の第2ソケット322とがロッド42を介して電気的に接続され、電気回路が導通している。また、第1位置131に配置された発射体40によって第1連通部16が閉塞されている。そのため、作動前初期状態では、消弧材50が第2収容空間14に保持されている。
【0044】
図3に示す状態へ遮断装置1が作動すると、発射体40は第2位置132へ移動する。より具体的には、点火器20の動作によって、ピストン41の窪み部411が、点火器20に含まれる点火部22の開裂面22Aから発射されるガスによるエネルギーを受圧し、発射体40は発射方向へ発射され、第1収容空間13内の第1位置131から第2位置132へ移動する。すなわち、点火器20の作動時に点火器20から受けるエネルギーによって発射体40に含まれるピストン41が発射方向に向かって発射されることによって、発射体40が第1位置131から第2位置132へ移動することで、通電部30及び発射体40に含まれるロッド42に導通している電気回路が遮断される。このとき、発射体40が第1位置131から移動することで、第1収容空間13と第2収容空間14を連通する第1連通部16が開通する。更に、発射体40の発射により生じる衝撃が第2収容空間14に配置されていた消弧材50に作用することで、第2収容空間14に配置されていた消弧材50が第1連通部16を経て第1収容空間13内へ放出される。消弧材50が第1収容空間13に放出されることによって、放出された消弧材50によって発射体40の少なくとも一部が消弧材50によって覆われ、アークの迅速な消弧と点火器20から発生した高温ガスの迅速な冷却が行われる。また、消弧材50は、第2収容空間14から第1連通部16を経て、第1収容空間13の発射方向において発射体40よりも手前側の領域に収容されることによって、発射体40が第2位置132から第1位置131へ戻ることを抑制し、絶縁状態の保持をする。
【0045】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る遮断装置1によれば、電気回路を構成する機器の異常時や、該電気回路が搭載されたシステムの異常時に電気回路遮断をする際に、アークが発生した場合においても、アークを迅速に消弧することの可能な電気回路遮断装置を提供できる。更に、点火器から発生した高温ガスを迅速に冷却することができる。
【0046】
<実施形態の変形例1>
[装置構成]
図4は、実施形態の変形例1に係る遮断装置1Aの縦断面図である。
図4において、遮断装置1Aを側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図4を用いて実施形態の変形例1に係る遮断装置1Aについて説明する。なお、本変形例の説明では、
図1~3で説明した遮断装置1との相違点を中心に説明する。また、遮断装置1Aを構成する部材のうち、遮断装置1と共通する部材については同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0047】
図4に示すように、変形例1に係る遮断装置1Aは、遮断装置1の構成に加えて、第2ハウジング120及び第3ハウジング130において、空気や消弧材50が移動可能な第2連通部17を備えている。第2連通部17は、第2収容空間14と、発射方向において第1収容空間13内の発射体40よりも先端の領域(第2端部12側の領域)とを連通している。これにより、後述するように、遮断装置1Aの作動時に、発射体40の作動速度の向上や、消弧材50の拡散、放出の一助となる効果が期待できる。
【0048】
[動作]
上記のように構成される遮断装置1Aは、点火器20が動作した際に、発射体40が点火器20からのエネルギーによって発射方向へ発射される。この際に、発射方向において第1収容空間13内の発射体40より先端の領域(第2端部12側の領域)に存在する空気が、発射体40によって第2連通部17に向かって押し込まれることによって、第2収容空間14へ空気が送り込まれる。この動作により第2連通部17は、発射体40の動作の抵抗になりうる空気の抜け穴として機能し、更に、消弧材50が第1連通部16をより通過しやすくなることで第1収容空間13への消弧材50の放出がより活発になるので、より一層の動作の確実性を付与できたり、遮断装置1Aの動作を高速化したりできる。なお、第2連通部17における第1収容空間13側の開口や第2収容空間14側の開口を、点火器20の作動により破裂する、例えば金属箔で形成された破裂板で閉塞してもよい。破裂板を設けることで、点火器20の作動前に消弧材50が第2連通部17へ意図せず流入することを防止できる。また、
図3に示す態様は一例であり、遮断装置1Aにおける第2連通部17の様態はこの限りではない。
【0049】
<実施形態の変形例2>
[装置構成]
図5は、実施形態の変形例2に係る遮断装置1Bの縦断面図である。
図5において、遮断装置1Bを側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図5を用いて実施形態の変形例2に係る遮断装置1Bについて説明する。なお、本変形例の説明では、
図1~3で説明した遮断装置1との相違点を中心に説明する。また、遮断装置1Bを構成する部材のうち、遮断装置1と共通する部材については同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0050】
変形例2に係る遮断装置1Bでは、発射体40はロッド42のみを含んでいる。ロッド42の窪み部421Aは点火器20に含まれる点火部22の開裂面22Aから放出されるガスによるエネルギーを受圧する。
【0051】
[動作]
上記のように構成される遮断装置1Bは、発射体40が導電部材であるロッド42のみで構成されており、点火器20の作動時にはロッド42の点火器側である窪み部421Aが点火器20の発生するエネルギーを受圧することで、通電部30とロッド42の接続が解除され、電気回路が遮断される。
【0052】
<実施形態の変形例3>
[装置構成]
図6は、実施形態の変形例3に係る遮断装置1Cの縦断面図である。
図6において、遮断装置1Cを側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図6を用いて実施形態の変形例3に係る遮断装置1Cについて説明する。なお、本変形例の説明では、
図1~3で説明した遮断装置1との相違点を中心に説明する。また、遮断装置1Cを構成する部材のうち、遮断装置1と共通する部材については同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0053】
変形例3に係る遮断装置1Cでは、発射体40に含まれるピストン41に、本開示に係る「所定領域」である第3収容空間15が形成されている。
図6では、ピストン41に含まれる第3収容空間15内に、消弧材50が配置されている。但し、第3収容空間15はピストン41の一部に配置されたり、全てがピストン41によって構成されていてもよい。より具体的には、例えば、ピストン41の周囲や内部などの一部分に第3収容空間15が含まれる様態や、ピストン41が消弧材50で構成されている様態が挙げられる。なお、
図6に示す態様は一例であり、遮断装置1Cにおける第3収容空間15及び消弧材50の様態はこの限りではない。
【0054】
[動作]
上記のように構成される遮断装置1Cは、点火器20の作動時において発生するエネルギーを、ピストン41の窪み部411によって受圧する。この際、ロッド42を押し下げ電気回路を遮断すると共に、遮断装置1Cの作動時の衝撃によってピストン41に形成されている第2収容空間14から消弧材50が放出されロッド42及び通電部30にて発生するアークの消弧、及び点火器20から発生したガスの冷却を行う。
【0055】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 :電気回路遮断装置
10 :ハウジング
20 :点火器
30 :通電部
40 :発射体
50 :消弧材