(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036992
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】鋼製防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20240311BHJP
E04H 17/14 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
E01F15/04 A
E04H17/14 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141599
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 知季
(72)【発明者】
【氏名】中安 誠明
(72)【発明者】
【氏名】清水 信孝
(72)【発明者】
【氏名】山下 悟
(72)【発明者】
【氏名】上野 晋
【テーマコード(参考)】
2D101
2E142
【Fターム(参考)】
2D101CA06
2D101DA04
2D101EA02
2D101FA11
2D101FA22
2D101FA27
2D101FB12
2E142AA01
2E142DD25
2E142DD28
2E142DD29
2E142HH03
2E142HH12
2E142HH22
(57)【要約】
【課題】軽量化とガードレールに求められる部材耐力の実現とを両立できる鋼製防護柵を提供する。
【解決手段】鋼製防護柵10は、支柱と、連結具と、連結具を介して支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部20と、連結部20の上下端から支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁21と、一対の第一壁21の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁22と、一対の第二壁22の先端から支柱の側に向かって延びる一対の第三壁23と、一対の第三壁23の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有する一対のリップ24と、を有する、1つの鋼板によって形成されたビーム16と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、
連結具と、
前記連結具を介して前記支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、前記連結部の上下端から前記支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、前記一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、前記一対の第二壁の先端から前記支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、前記一対の第三壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有する一対のリップと、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームと、
を備える、鋼製防護柵。
【請求項2】
一対の前記リップは、前記基部の先端から前記支柱の側に延びる末端部を有する、
請求項1に記載の鋼製防護柵。
【請求項3】
互いに連続する前記第一壁と前記第二壁との間の角度は、90度超、105度以下である、
請求項1又は2に記載の鋼製防護柵。
【請求項4】
互いに連続する前記第二壁と前記第三壁との間の角度は、90度超、105度以下である、
請求項1又は2に記載の鋼製防護柵。
【請求項5】
断面中で、前記連結部の長さがL2、前記第一壁の高さがh、前記第二壁の長さがL1、前記第三壁の高さがh1、前記リップの前記基部の長さがL3、と設定されたとき、
0.86≦h1/h≦0.98
0.43≦L1/L2≦0.91
0.32≦L3/L2≦0.49
1.34≦h/L2≦1.9
が満たされる、
請求項1又は2に記載の鋼製防護柵。
【請求項6】
支柱と、
連結具と、
前記連結具を介して前記支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、前記連結部の上下端から前記支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、前記一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、前記一対の第二壁の先端から前記支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームであって、互いに連続する前記第一壁と前記第二壁との間の角度と、互いに連続する前記第二壁と前記第三壁との間の角度とは、90度超、105度以下であるビームと、
を備える、鋼製防護柵。
【請求項7】
一対の前記第三壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有するリップを更に備える、
請求項6に記載の鋼製防護柵。
【請求項8】
一対の前記リップは、前記基部から前記支柱の側に延びる末端部を有する、
請求項7に記載の鋼製防護柵。
【請求項9】
前記連結部と、一対の前記第一壁と、一対の前記第二壁と、一対の前記第三壁とは、断面中で、前記連結部の上下方向における中心を通り前記支柱の径方向に沿って延びる仮想線を挟んで対称である、
請求項1、2、7、8のいずれか一項に記載の鋼製防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼製防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼製防護柵として特許文献1~特許文献5のように、ガードレールやガードフェンス等が知られている。鋼製防護柵のガードレールは、例えば車道の路側や中央分離帯等に、いわゆるインフラ設備として設置される。
【0003】
ガードレールは、一般的に、地面や床面等に立てられる支柱と、支柱に連結され車道等の進行方向に沿って延びる長板状のビームと、支柱とビームとを連結する接続金物等の連結具とを備える。ガードレールは、車道において交通事故が発生した際、自動車等の車両が車道の外の歩道側や対向車線側に飛び出すことを抑制する。また、ガードレールのビームは、車両との衝突時に加えられるエネルギーを吸収することによって、車両側が受ける衝撃を緩衝する。すなわち、ビームには、構造性能として、部材耐力とエネルギー吸収性能との両立が求められる。
【0004】
また、ガードレールにおいては、支柱は地面に埋め込むことで、半永久的に使用することを想定している。一方、ビームは、例えば、車両との接触による損耗や塩害地域での腐食等の影響によって老朽化が進んだ場合を考慮し、老朽化したビームを交換する作業が、定期的に発生することを想定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-31851号公報
【特許文献2】実全昭59-61316号公報
【特許文献3】特公昭47-44940号公報
【特許文献4】実公昭46-17310号公報
【特許文献5】特公昭50-6106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、使用されるビームは、通常、1枚あたり60kg程度の質量を有する鋼製部材である場合が多い。また、ビームの交換作業では、老朽化したビームが撤去された支柱の位置に新しいビームを搬送する必要が生じるが、老朽化したビーム及び新しいビームは、人力で持ち運ばれる場合が多いため、作業員の負荷が大きい。
【0007】
特に、交換作業の現場が例えば高速道路のような、作業現場への搬入スペースや作業スペースが限られる場合、人力に替わる大型重機等の搬送用機械を作業現場で使用することは困難である。結果、ビームの交換作業における作業員の負荷の割合が大きくなる。また、高速道路等における交換作業では、交通渋滞を可能な限り抑制する観点から、交換作業の迅速性も求められる。このため、作業員の負荷が、一層大きくなる。また、近年の少子高齢化の進行に伴い、作業員の人口の減少及び高齢化も進行しつつある。このため、ビームの交換作業における作業負荷を軽減できる技術が求められている。
【0008】
交換作業における作業負荷を軽減するため、例えば、ビームの板厚を薄くして材料強度を高めること、すなわち高強度化によるビームの薄肉化によって、ビームを軽量化する方法が考えられる。しかし、ビームを、板厚以外の仕様を変えることなく、単純に薄肉化するだけでは、ビームの対座屈性能が大幅に低下してしまい、ビームの部材耐力とエネルギー吸収性能とが低下する。すなわち、ビームの軽量化を単純に図るだけでは、ガードレールに求められる構造性能を実現することが難しい。
【0009】
この点、特許文献1には、ビームの上下の端部の表面上に掛け留め部材が設けられる技術が開示されている。しかし、特許文献1では、ビームの軽量化は、検討されていない。
【0010】
また、特許文献1の掛け留め部材は、表面上に重ねられたビーム同士の連結を円滑に行うために設けられる部材である。すなわち、特許文献1では、ビームの部材耐力の向上は検討されていない。仮に、掛け留め部材によって部材耐力が向上するとしても、特許文献1では、複数の掛け留め部材はビームの長手方向(すなわち、左右方向)において離散的に取り付けられるため、ビームの長手方向において掛け留め部材が存在しない部分では、部材耐力が低い状態である。
【0011】
また、特許文献1の掛け留め部材は、ビームとは別の部材である。よって、掛け留め部材を別途作製した上でビームと組み立てるという作業の複雑さが生じるため、現場での施工負荷も高まる。
【0012】
特許文献2の場合、ビームの上下の端部の表面上に補強金具が設けられることによって、ビームを補強する技術が開示されている。しかし、特許文献2においてもビームの軽量化は、検討されていない。また、補強金具は、ビームとは別の部材であるため、補強金具を別途作製した上でビームと組み立てるという作業の複雑さが生じる。
【0013】
特許文献3の場合、ビームと支柱との間の内部空間に砂粒子が充填されることによって、車両等の衝突の際の吸収エネルギーを高める技術が開示されている。しかし、特許文献3においてもビームの軽量化は、検討されていない。また、砂粒子をビームとは別途用意した上で内部空間に充填するという作業の複雑さが生じる。
【0014】
特許文献4の場合、厚み方向に沿って重ね合わせられた複数の鋼板製ビームの間にシート状の軟質合成樹脂を介在させると共に、外側に露出した鋼板製ビームの表面を軟質合成樹脂で被覆することによって、ビームの緩衝性を高める技術が開示されている。しかし、特許文献4においてもビームの軽量化は、検討されていない。また、シート状の軟質合成樹脂は、ビームとは別の部材であるため、シート状の軟質合成樹脂を別途作製した上でビーム間に介在させる又はビームの表面を被覆するという作業の複雑さが生じる。
【0015】
特許文献5の場合、金属製ガード板のビームの表面に、長手方向に沿って合成樹脂製の凸形状部材を接合することによって、機械的強度を高める技術が開示されている。しかし、特許文献5においても、ビームの軽量化は、検討されていない。また、凸形状部材は、ビームとは別の部材であるため、凸形状部材を別途作製した上でビーム間に介在させる又はビームの表面を被覆するという作業の複雑さが生じる。
【0016】
本開示では、軽量化とガードレールに求められる部材耐力の実現とを両立できる鋼製防護柵を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の第1の態様に係る鋼製防護柵は、支柱と、連結具と、連結具を介して支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、連結部の上下端から支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、一対の第二壁の先端から支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、一対の第三壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有する一対のリップと、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームと、を備える。
【0018】
第1の態様では、ビームの上下方向における両端部に、互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有するリップが設けられる。すなわち、リップの基部は、ビームの上下方向の両端部の位置における補剛部としての折り曲げ構造である。
【0019】
補剛部としての折り曲げ構造であるリップの基部によって、ビームの単位断面積あたりの耐力を向上でき、またビームに外力が作用した場合において、最大耐力到達後の耐力低下を抑制することができ、部材のエネルギー吸収性能が向上する。このため、薄肉化された鋼板が用いられたビームであっても部材耐力の低下を抑制できる。
【0020】
本開示の第2の態様に係る鋼製防護柵は、支柱と、連結具と、連結具を介して支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、連結部の上下端から支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、一対の第二壁の先端から支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームであって、互いに連続する第一壁と第二壁との間の角度と、互いに連続する第二壁と第三壁との間の角度とは、90度超、105度以下であるビームと、を備える。
【0021】
第2の態様では、ビームにおいて、第一壁と第二壁と第三壁とは、凸部を形成する。互いに連続する第一壁と第二壁との間の移行部と、互いに連続する第二壁と第三壁との間の移行部とはそれぞれ、凸部の肩部を形成する。すなわち、ビームの凸部の肩部は、補剛部としての折り曲げ構造である。
【0022】
補剛部としての折り曲げ構造である凸部の肩部の角度が、90度超、105度以下の範囲内に特定されることによって、ビームの単位断面積あたりの耐力を向上できる。このため、薄肉化された鋼板が用いられたビームであっても部材耐力の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、軽量化と、ガードレールに求められる部材耐力及びエネルギー吸収性能の実現とを両立できる鋼製防護柵を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施形態に係る鋼製防護柵を説明する正面図である。
【
図2】本実施形態に係る鋼製防護柵を説明する側面図である。
【
図3】本実施形態に係る鋼製防護柵を説明する平面図である。
【
図4】本実施形態に係る鋼製防護柵のビームを、
図2中の位置を90度回転させた状態で説明する、
図1中の4-4線断面図である。
【
図5】リップを有さないビームの例を、
図4中の位置と同じ位置で説明する断面図である。
【
図6】リブを有するビームの例を説明する断面図である。
【
図7】鋼製防護柵に外力としての荷重を負荷する状態を説明する図である。
【
図8】本実施形態に係る鋼製防護柵の解析モデルを説明する図である。
【
図9】比較例に係る鋼製防護柵のビームを説明する断面図である。
【
図10】第2解析例において傾斜角度と最大耐力との関係を説明するグラフである。
【
図11】第2解析例において傾斜角度と単位断面積あたりの最大耐力との関係を説明するグラフである。
【
図12】第2解析例において鋼製防護柵のビームのたわみ量と耐力との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本開示の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。ただし、図面における厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0026】
<鋼製防護柵の構成>
本実施形態に係る鋼製防護柵10を、
図1~
図12を参照して説明する。
図1に示すように、鋼製防護柵10は、支柱12と、連結具14と、ビーム16と、を備える。
【0027】
(支柱)
支柱12は、円筒状の鋼製部材である。支柱12の個数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。支柱12の個数が複数である場合、ビーム16は、複数の支柱12間に架け渡される。
図2に示すように、本明細書では、「上下方向」は、支柱12の延びる方向である。
図1中には、上側方向UDと下側方向LDとが例示されている。また、
図2中には、支柱12の径方向RDが例示されている。
【0028】
(連結具)
図3に示すように、連結具14は、ビーム16の連結部と支柱12とを連結する接続金物である。具体的には、連結部と支柱12との間、及び、連結部とビーム16との間は、ボルト等の締結具によって連結される。図中での締結具の符号の付記は省略する。
【0029】
(ビーム)
ビーム16は、1つの鋼板によって形成される。
図4に示すように、ビーム16の断面形状は、ビーム16の長手方向の全体に亘って、ほぼ同じである。なお、本明細書では、ビーム16の長手方向は、
図1中の左右方向である。ビーム16の板厚は、断面中、全体に亘って、ほぼ同じである。ビーム16は、連結部20と、一対の第一壁21と、一対の第二壁22と、一対の第三壁23と、一対のリップ24と、を有する。
【0030】
(連結部、第一壁、第二壁及び第三壁)
連結部20は、断面中、連結具14を介して支柱12に連結され上下方向に沿って延びる。一対の第一壁21は、断面中、連結部20の上下端から支柱12とは反対側に向かって延びる。一対の第二壁22は、断面中、一対の第一壁21の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる。一対の第三壁23は、断面中、一対の第二壁22の先端から支柱12の側に向かって延びる。
【0031】
本実施形態では、互いに連続する第一壁21と第二壁22との間の第一角度θ1は、90度超、105度以下である。第一角度θ1は、第一壁21の板厚方向の中心を通る直線と、第二壁22の板厚方向の中心を通る直線との間の角度である。なお、
図4中、板厚方向の中心を通る直線は、一点鎖線で例示されている。
【0032】
また、互いに連続する第二壁22と第三壁23との間の第二角度θ2は、90度超、105度以下である。第二角度θ2は、第二壁22の板厚方向の中心を通る直線と、第三壁23の板厚方向の中心を通る直線との間の角度である。
【0033】
第一壁21と第二壁22との間の第一角度θ1と、第二壁22と第三壁23との間の第二角度θ2とは、第一壁21と第二壁22と第三壁23とによって形成される凸部の2つの肩部を構成する。本開示では、2つの肩部のうち少なくとも一方の角度が特定されればよい。
【0034】
(リップ)
一対のリップ24は、基部24Aと末端部24Bとを有する。なお、
図5に示すように、本開示では、リップ24は必須ではない。
図5中に例示されたビーム16Aでは、リップ24が設けられない一方、
図4中に例示されたビーム16と同様に、補剛部としての折り曲げ構造である凸部の肩部の角度が、90度超、105度以下の範囲内に特定される。
図5中に例示されたビーム16Aの他の構成は、本実施形態の場合と同様であるため、重複説明を省略する。
【0035】
(基部及び末端部)
図4に示すように、基部24Aは、断面中、一対の第三壁23の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる。すなわち、本実施形態のリップ24の基部24Aは、連結部20とは反対側に延びるため、第三壁23との間に窪みが形成されない。このため、窪みに雨水等が溜まることを回避できる。
【0036】
なお、リップ24が連結部20の側に延びる場合、ビーム16が支柱12へ取り付けられた状態で、上側のリップ24には水が溜まり難い。このため、本開示では、上側のリップ24の延びる方向は、連結部20の側であってもよい。また、本開示では、一対のリップ24が、互いに近接する方向、すなわち連結部20の側にそれぞれ延びてもよい。
【0037】
末端部24Bは、基部24Aの先端から支柱12の側に延びる。なお、本開示では、末端部24Bは必須ではない。
【0038】
本実施形態では、連結部20と、一対の第一壁21と、一対の第二壁22と、一対の第三壁23と、一対のリップ24とは、断面中で、連結部20の上下方向における中心を通り支柱12の径方向RDに沿って延びる仮想線Xを挟んで対称である。なお、本開示では、一対のリップを除く、連結部20と、一対の第一壁21と、一対の第二壁22と、一対の第三壁23と、一対のリップ24とが、断面中で、仮想線Xを挟んで対称であってもよい。
【0039】
また、
図4に示すように、本実施形態では、断面中で、連結部20の長さがL2、第一壁21の高さがh、第二壁22の長さがL1、第三壁23の高さがh1、リップ24の基部24Aの長さがL3、と設定される。第二壁22の長さL1、連結部20の長さL2、リップ24の基部24Aの長さL3はいずれも、板厚方向の中心を通る直線の交点間の距離である。また、第一壁21の高さh、及び第三壁23の高さh1は、板厚方向の中心を通る直線間の距離である。
【0040】
本実施形態では、比率h1/h、比率L1/L2、比率L3/L2、及び比率h/L2の4つの比率について、
0.86≦h1/h≦0.98
0.43≦L1/L2≦0.91
0.32≦L3/L2≦0.49
1.34≦h/L2≦1.9
の関係が満たされるように、第二壁22の長さL1、連結部20の長さL2、リップ24の基部24Aの長さL3、第一壁21の高さh、及び、第三壁23の高さh1が設定される。4つの比率については、後で第4解析例において具体的に説明する。
【0041】
なお、
図6中には、ビーム16の第二壁22にリブ26が形成された場合が例示されている。また、第二壁22の平坦部において板厚方向の中心を通る直線が定義される。また、第二壁22で定義された直線と第一壁21で定義された直線との交点と、第二壁22で定義された直線と第三壁23で定義された直線との交点との間の距離によって、長さL1が設定される。すなわち、本開示では、第一壁21、第二壁22、第三壁23、及びリップ24には、リブ26のような凸部や、或いは凹部が形成されてもよい。凸部又は凹部が形成された場合であっても、平坦部において、板厚方向の中心を通る直線を定義できる。
【実施例0042】
(第1解析例:断面の薄肉化に伴う部材耐力とエネルギー吸収量について)
第1解析例では、断面の薄肉化によって影響を受けるガードレールの構造性能を解析的に評価した。
【0043】
ここで、ガードレールとしての鋼製防護柵に自動車が衝突する状態では、ビームに生じる曲げモーメントの分布形状を勘案すると、ガードレールには、自動車が衝突する部分と、衝突する部分の両端に位置する支柱の部分とのそれぞれにおいて塑性ヒンジが発生すると考えられる。なお、以下、自動車が衝突する部分を「正曲げ部」と称すると共に、衝突する部分の両端に位置する支柱の部分を「負曲げ部」と称する。
【0044】
具体的には、第1解析例では、
図7に示すように4本の支柱12で支持された3スパンのビーム16について、ビーム16の中央部18に外力としての荷重が負荷された状態で、3か所の塑性ヒンジが生じる場合を想定し、
図8に示す解析モデルでのフレーム解析を行った。なお、
図7中では、連結具14の接続金物、及び、ボルト等の締結具の図示は、省略されている。
【0045】
本解析における塑性ヒンジにおける回転角とモーメントとの関係性は、
図8に示すように、ビーム単体の有限要素法による弾塑性大変形解析を行うことによって、定量化された。なお、
図8中では、外力Pが作用する点の両端の支柱では、支柱が弾性的に変形することの影響が想定されることから、支柱の弾性変形に対応する弾性バネを解析モデルの支点に組み込むことによって、支柱の弾性変形の影響を考慮している。
【0046】
第1解析例では、2種類のビームについて、解析を行った。2つの解析モデルでは、
図9中の比較例に係る鋼製防護柵のビーム16Zのように、第一角度θ1と第二角度θ2とは、いずれも125度であった。また、ビーム16Zにはリップは設けられなかった。また、2つの解析モデルのうちの一方の第1モデルでは、板厚は、4mmであると共に、材料強度は、40k鋼の鋼板と同程度であった。第1モデルのビームの鋼板は、現在、ガードレールにおいて汎用的に使用されている。
【0047】
また、2つの解析モデルのうちの他方の第2モデルでは、板厚は、3mmであると共に、材料強度は、60k鋼の鋼板と同程度であった。板厚と材料強度以外の条件は、第1モデルと第2モデルの間で同じであった。すなわち、第2モデルでは、第1モデルに対し、板厚が薄肉化されても同等以上の断面性能を有するように、鋼板の材料強度が引き上げられた。
【0048】
ここで、断面性能とは、部材の断面形状から算出される塑性断面係数に材料の降伏強度を乗じた値である。第1解析例では、ビーム断面から求められる第2モデルの全塑性曲げ耐力が第1モデルの全塑性曲げ耐力以上となるように、第2モデルの材料強度と板厚とが決定された。
【0049】
解析の結果、断面性能が同等の条件の下で薄肉化された第2モデルのビーム部材の場合、ガードレールの最大耐力とエネルギー吸収性能、すなわち構造性能が、第1モデルより大幅に低下することが確認された。具体的には、耐力とエネルギー吸収量とが、いずれも低下した。エネルギー吸収量とは、外力と中央部のたわみ量との関係から求められる、外力の仕事量である。第1解析例では、たわみ量が200mmに達した時点での値が、エネルギー吸収量として算出された。
【0050】
第1解析例によって、現在、ガードレールにおいて汎用的に使用されているビームの構造の場合、軽量化のための薄肉化を単に行うだけでは、断面性能を維持できたとしても、ガードレールに求められる部材耐力を実現できないことが分かった。
【0051】
(第2解析例:角度の特定と耐力について)
第2解析例では、第一角度θ1と第二角度θ2とがガードレールの構造性能に及ぼす影響について解析を行った。
【0052】
具体的には、第一角度θ1と第二角度θ2とを同じ値で、90度、95度、105度、115度、125度の5パターンに変化させた解析モデルを設定した。また、連結部の長さL2、第一壁の高さh、第二壁の長さL1、及び第三壁の高さh1は、いずれも一定に設定した。また、角度以外の条件は、4パターンの間で同様に設定した。
【0053】
第一角度θ1と第二角度θ2とが95度である解析モデルの構造は、
図5中の鋼製防護柵のビーム16Aと同様である。また、第一角度θ1と第二角度θ2とが125度である解析モデルの構造は、
図9中の比較例に係る鋼製防護柵のビーム16Zと同様である。また、第2解析例では、ビームの材料強度は、40k鋼の鋼板と同程度である。
【0054】
図10に示すように、第一角度θ1と第二角度θ2とを、125度から90度に近付くように小さくすると、最大耐力Pmaxが変化した。第一角度θ1と第二角度θ2とが90度以上、125度より小さくても、125度の場合と同等以上の最大耐力Pmaxを得られた。
【0055】
なお、第2解析例では連結部の長さL2、第一壁の高さh、第二壁の長さL1、及び第三壁の高さh1がいずれも一定であるため、第一角度θ1と第二角度θ2とが小さくなるほど、鋼板の部材量が減少する。このため、第一角度θ1と第二角度θ2とが90度及び95度である場合の最大耐力は、第一角度θ1と第二角度θ2とが105度である場合の最大耐力より低く算出された。
【0056】
一方、
図11中の縦軸の値は、解析で得られた最大耐力Pmaxをビームの断面積Aで除した値である。すなわち、
図11中では、単位断面積Aあたりの最大耐力Pmaxを比較できる。
図11に示すように、第一角度θ1と第二角度θ2とを125度から小さくすると、単位断面積Aあたりの最大耐力Pmaxが上昇することが分かった。このため、第一角度θ1と第二角度θ2とを小さくすることによって、ガードレールの最大耐力を上昇できることが分かった。
【0057】
また、第一角度θ1と第二角度θ2とが105度以下になると、単位断面積Aあたりの最大耐力Pmaxは、ほぼ横ばいになった。すなわち、第一角度θ1と第二角度θ2とを105度以下とすることで、構造性能を最大化することができる。
【0058】
なお、実際のガードレールの構造を考えた場合、第一角度θ1と第二角度θ2とが90度になる場合、使用中、凸部の肩部を構成する角部に雨水等が溜まる状態が想定される。雨水等の滞留は、鋼板のビームにさびを発生させる要因となり得る。このため、角部におけるいわゆる水勾配を確保する観点から、第一角度θ1と第二角度θ2との下限値は、90度よりも大きいことが望ましい。
【0059】
(第3解析例:最大耐力及びエネルギー吸収量について)
第3解析例では、本実施形態に係る鋼製防護柵のビームの解析モデルを用いて、ビームに外力が負荷された場合における、最大耐力及びエネルギー吸収量が検討された。
【0060】
具体的には、第一角度θ1と第二角度θ2とがいずれも95度である、リップが設けられていない第1の解析モデルを設定した。また、第一角度θ1と第二角度θ2とがいずれも95度である、座屈補剛用のリップが設けられている第2の解析モデルを設定した。リップが設けられていない解析モデルの構造は、
図5中の鋼製防護柵のビーム16Aと同様である。また、リップが設けられている解析モデルの構造は、
図4中の本実施形態に係る鋼製防護柵のビーム16と同様である。また、第3解析例では、ビームの材料強度は、40k鋼の鋼板と同程度である。また、リップ以外の条件については、断面積及び板厚が同等であるように、2つの解析モデルの間で同様に設定した。
【0061】
図12中には、第1の解析モデルから得られたデータ点の軌跡が点線で例示されていると共に、第2の解析モデルから得られたデータ点の軌跡が実線で例示されている。
図12に示すように、第1の解析モデルでは、たわみ量δが100mm程度の位置で、耐力Pが最大耐力に到達した。また、たわみ量δが100mmを超えた後、耐力Pが低下しつつも、たわみ量δが200mmの位置までの間に、8.98kNm程度のエネルギー吸収量が達成された。なお、エネルギー吸収量は、
図12中のたわみ量δが0mmから200mmの位置までの間で、データ点の軌跡より下側の部分の面積で表される。
【0062】
また、第2の解析モデルでは、たわみ量δが100mmを超えても、耐力Pの低下が第1の解析モデルよりも抑制された。また、たわみ量δが200mmの位置までの間に、10.06kNm程度と、第1の解析モデルよりも高いエネルギー吸収量が達成された。
【0063】
第3解析例の結果より、ビームの断面崩れが抑制され、同一断面積を有する場合においても、リップで座屈補剛が行われることによって、耐力を同等としつつ、最大耐力到達後の耐力劣化が抑制されることが分かった。これにより、ガードレールとしてのエネルギー吸収量の上昇を期待できることが分かった。
【0064】
(第4解析例:断面形状について)
第4解析例では、
図4中の本実施形態に係る鋼製防護柵のビーム16と同様の解析モデル、すなわち、第一角度θ1と第二角度θ2とがいずれも95度である、座屈補剛用のリップが設けられている第2の解析モデルを用いて、ビームの最適形状が検討された。また、第4解析例では、ビームの材料強度は、40k鋼の鋼板と同程度である。
【0065】
ここで、ガードレールの崩壊機構を考えた場合、ビームには、正曲げと負曲げとの2種類の崩壊機構が発生するため、この双方について、安定的な荷重変形挙動を検討する必要がある。このため、第4解析例では、正曲げ時のモーメント-回転角度(M-θ)の関係から求められるエネルギー吸収量が最大となる断面形状Aと、負曲げ時のM-θ関係から求められるエネルギー吸収量が最大となる断面形状Bとを決定する。そして、断面形状Aと断面形状Bとの間にある中間的な断面形状を、ガードレールとしてのビームの望ましい断面形状として設定する。
【0066】
まず、第二壁22の長さL1、連結部20の長さL2、リップ24の基部24Aの長さL3、第一壁21の高さh、及び、第三壁23の高さh1に関し、比率h1/h、比率L1/L2、比率L3/L2、及び比率h/L2の4つの比率が検討された。
【0067】
(比率h1/hの検討)
正曲げを考えた場合、断面性能を十分に稼ぐ観点から、リップは、正曲げが作用するときの引張縁側に寄ることが望ましい。一方、負曲げの場合、負曲げ時の圧縮縁側(すなわち、正曲げ時の引張縁側)にリップが寄ると、外力がビームに負荷される際、リップが早期にゆがみ座屈を生じる。このため、存在応力を低減する観点から、正曲げ時と比べて、負曲げ時の引張縁側に寄ることが望ましい。
【0068】
(比率L1/L2の検討)
正曲げが作用する場合、圧縮縁側の板要素の局部座屈を抑制する観点から、正曲げ時の圧縮縁側の板要素の板幅は、引張縁側の板要素の板幅よりも狭くする必要がある。すなわち、比率L1/L2は、小さい値になる。一方、負曲げの場合、負曲げ時の圧縮縁(すなわち、正曲げ時の引張縁)側の板要素について、局部座屈を抑制する必要がある。このため、長さL2が小さくなると共に長さL1が大きくなる、すなわち、比率L1/L2は、正曲げ時よりも大きくなる。
【0069】
(比率L3/L2の検討)
正曲げが作用する場合、リップは引張縁側に寄るものと考えられる。またリップによる断面の開きを抑制する観点では、長さL3は、極力小さい値が望ましい。すなわち、比率L3/L2は、小さい値となる。一方、負曲げの場合、局部座屈を抑制する観点から長さL2の値が小さくなる。このため、長さL2の値が小さくなる分のフランジ幅を補うために、長さL3の値は、正曲げ時よりも大きくなる必要がある。
【0070】
(比率h/L2の検討)
前述の通り、正曲げ時に対して負曲げ時、リップが負曲げ時の圧縮縁側から引張縁側へ移動するため、フランジに要する板幅が少なくなる。このため、部材高さをより高くし、且つ、長さL2の幅を正曲げ時よりも小さくする必要がある。結果、負曲げ時の比率h/l2は、正曲げ時よりも大きくなる。
【0071】
次に、上記の4つの比率の検討を踏まえ、本解析では、正曲げが作用するビーム部材と、負曲げが作用するビーム部材とについて、差分進化法による最適断面の算出を行った。差分進化法による計算の実施においては、部材断面の板厚を3.2mmとし、部材の断面積を1310mm2とし、たて壁とよこ壁のなす角を93度とした。また、長さL1、長さL2、長さL3、高さh、及び高さh1を変数とした。
【0072】
そして、有限要素法による弾塑性大変形解析から、ビームに3点曲げが作用する場合について、外力とたわみ量(すなわち、変形量)との関係に基づき、部材のエネルギー吸収量を求めると共に、エネルギー吸収量の値が最大となる断面形状を算出した。
【0073】
解析の結果、表1に示す断面形状が得られた。表1中の断面形状Aが、正曲げが作用する場合について、エネルギー吸収量が最大となる断面形状である。また、断面形状Bが、負曲げが作用する場合について、エネルギー吸収量が最大となる断面である。
【0074】
【0075】
表1より、本開示では、長さL1、長さL2、長さL3、高さh、及び高さh1は、以下の範囲を満たすものであることが望ましいことが分かった。
【0076】
0.86≦h1/h≦0.98
0.43≦L1/L2≦0.91
0.32≦L3/L2≦0.49
1.34≦h/L2≦1.9
【0077】
(作用効果)
本実施形態では、1つの鋼板によって形成されたビーム16において、上下方向における両端部に、互いに離隔する方向に向かって延びる基部24Aを有するリップ24が設けられる。すなわち、リップ24の基部24Aは、ビーム16の上下方向の両端部の位置における補剛部としての折り曲げ構造である。
【0078】
補剛部としての折り曲げ構造であるリップ24の基部24Aによって、ビーム16の単位断面積あたりの耐力を向上でき、またビーム16に外力が作用した場合において、最大耐力到達後の耐力低下を抑制することができ、部材のエネルギー吸収性能が向上する。このため、薄肉化された鋼板が用いられたビーム16であっても部材耐力の低下を抑制できる。
【0079】
また、1つの鋼板だけを加工すれば済むので、別部材を用意する必要がない。よって、軽量化とガードレールに求められる部材耐力の実現とを簡易に両立できる。
【0080】
なお、軽量化によって、大型重機等の搬送用機械を用いる場合でも、搬送用機械からのカーボン排出量を低減することが可能になる。
【0081】
また、
図5中に例示されたビーム16においても、本実施形態に係るビーム16と同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、本実施形態では、末端部24Bによって、ビーム16の単位断面積あたりの耐力を一層向上できる。また、末端部24Bは、支柱12の側に延びる。すなわち、例えば鋼製防護柵10が車道に配置される場合、末端部24Bは、車両の通行領域とは反対側に突出する。このため、車両がビーム16に衝突しても、末端部24Bが車両を貫く状態を回避できる。
【0083】
また、
図5中に例示されたビーム16においても、本実施形態に係るビーム16と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、1つの鋼板によって形成されたビーム16において、第一壁21と第二壁22と第三壁23とは、凸部を形成する。互いに連続する第一壁21と第二壁22との間の移行部と、互いに連続する第二壁22と第三壁23との間の移行部とはそれぞれ、凸部の肩部を形成する。すなわち、ビーム16の凸部の肩部は、補剛部としての折り曲げ構造である。
【0085】
補剛部としての折り曲げ構造である凸部の肩部の角度が、90度超、105度以下の範囲内に特定されることによって、ビーム16の単位断面積あたりの耐力を向上できる。このため、薄肉化された鋼板が用いられたビーム16であっても部材耐力の低下を抑制できる。なお、部材耐力の低下を抑制できる効果は、2つの肩部の角度のうち少なくとも一方が特定されることによって得ることができる。
【0086】
また、1つの鋼板だけを加工すれば済むので、別部材を用意する必要がない。よって、軽量化とガードレールに求められる部材耐力の実現とを簡易に両立できる。
【0087】
また、
図5中に例示されたビーム16においても、本実施形態に係るビーム16と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、ビーム16が、仮想線Xを挟んで対称に構成される。すなわち、ビーム16が支柱12に連結された状態では、ビーム16は、仮想線Xを挟んで上下対称である。このため、ビーム16は、上側と下側とを任意に入替可能であるので、取り扱いが簡易になる。
【0089】
また、
図5中に例示されたビーム16においても、本実施形態に係るビーム16と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、連結部20の長さL2と第一壁21の高さhと第二壁22の長さL1と第三壁23の高さh1とリップ24の基部24Aの長さL3とが、上限値と下限値との2つの値の間の範囲内で特定される。上限値と下限値とは、ビーム16に外力が加えられた際の、正曲げの場合のエネルギー吸収性能が効果的に実現される範囲と負曲げの場合のエネルギー吸収性能が効果的に実現される範囲との重なり部分を用いて設定される。このため、正曲げの場合のエネルギー吸収性能と負曲げの場合のエネルギー吸収性能とを有効に両立できる。
【0091】
<その他の実施形態>
本開示は、上記の実施形態によって説明されたが、この説明は、本開示を限定するものではない。本開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0092】
例えば、
図1~
図12中に示した構成を部分的に組み合わせて、本開示を構成することもできる。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0093】
≪付記≫
本明細書からは、以下の態様が概念化される。
【0094】
すなわち、態様1は、
支柱と、
連結具と、
前記連結具を介して前記支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、前記連結部の上下端から前記支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、前記一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、前記一対の第二壁の先端から前記支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、前記一対の第三壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有する一対のリップと、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームと、
を備える、鋼製防護柵。
【0095】
態様2は、
一対の前記リップは、前記基部の先端から前記支柱の側に延びる末端部を有する、
態様1に記載の鋼製防護柵。
【0096】
態様3は、
互いに連続する前記第一壁と前記第二壁との間の角度は、90度超、105度以下である、
態様1又は2に記載の鋼製防護柵。
【0097】
態様4は、
互いに連続する前記第二壁と前記第三壁との間の角度は、90度超、105度以下である、
態様1~3のいずれかに記載の鋼製防護柵。
【0098】
態様5は、
断面中で、前記連結部の長さがL2、前記第一壁の高さがh、前記第二壁の長さがL1、前記第三壁の高さがh1、前記リップの前記基部の長さがL3、と設定されたとき、
0.86≦h1/h≦0.98
0.43≦L1/L2≦0.91
0.32≦L3/L2≦0.49
1.34≦h/L2≦1.9
が満たされる、
態様1~4のいずれかに記載の鋼製防護柵。
【0099】
態様6は、
支柱と、
連結具と、
前記連結具を介して前記支柱に連結され上下方向に沿って延びる連結部と、前記連結部の上下端から前記支柱とは反対側に向かって延びる一対の第一壁と、前記一対の第一壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる一対の第二壁と、前記一対の第二壁の先端から前記支柱の側に向かって延びる一対の第三壁と、を有する、1つの鋼板によって形成されたビームであって、互いに連続する前記第一壁と前記第二壁との間の角度と、互いに連続する前記第二壁と前記第三壁との間の角度とは、90度超、105度以下であるビームと、
を備える、鋼製防護柵。
【0100】
態様7は、
一対の前記第三壁の先端から上下方向に沿って互いに離隔する方向に向かって延びる基部を有するリップを更に備える、
態様6に記載の鋼製防護柵。
【0101】
態様8は、
一対の前記リップは、前記基部から前記支柱の側に延びる末端部を有する、
態様7に記載の鋼製防護柵。
【0102】
態様9は、
前記連結部と、一対の前記第一壁と、一対の前記第二壁と、一対の前記第三壁と、一対の前記リップとは、断面中で、前記連結部の上下方向における中心を通り前記支柱の径方向に沿って延びる仮想線を挟んで対称である、
態様1~8のいずれかに記載の鋼製防護柵。