(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024036996
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】フレキシブルチューブを押出成形するための金型及びフレキシブルチューブの製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/32 20190101AFI20240311BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20240311BHJP
B29C 48/255 20190101ALI20240311BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240311BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20240311BHJP
【FI】
B29C48/32
B29C48/34
B29C48/255
B29C48/92
B29C48/154
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141604
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】591265611
【氏名又は名称】株式会社プラ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊澤 良治
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG14
4F207AH63
4F207AJ08
4F207AM23
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB18
4F207KL58
4F207KL93
(57)【要約】
【課題】ブレード線の表面に押し出す樹脂を切り替えた際に、切り替え前後の樹脂が混合した部分の長さを短くすることが可能な金型及びこれを用いたフレキシブルチューブの製造装置を提供する。
【解決手段】フレキシブルチューブを押出成形するための金型であって、一方端から挿入されたブレード線を他方端から繰り出す直線状の貫通孔と、貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、貫通孔の中心軸に対して直交する平面と平行な流路を有する第1の樹脂供給路と、第1の樹脂供給路と貫通孔との接続点よりも貫通孔の一方端側において貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、平面と平行な流路を有する第2の樹脂供給路とを備える、金型。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルチューブを押出成形するための金型であって、
一方端から挿入されたブレード線を他方端から繰り出す直線状の貫通孔と、
前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、前記貫通孔の中心軸に対して直交する平面と平行な流路を有する第1の樹脂供給路と、
前記第1の樹脂供給路と前記貫通孔との接続点よりも前記貫通孔の前記一方端側において前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、前記平面と平行な流路を有する第2の樹脂供給路とを備える、金型。
【請求項2】
前記金型は、
前記貫通孔の前記他方端を含み、前記他方端よりも前記貫通孔の前記一方端側に、前記平面と平行な第1の平坦面を有するダイスと、
前記ダイスの前記第1の平坦面に密着する第2の平坦面と、前記第2の平坦面と平行な第3の平坦面とを有する平板状の第1の板フランジと、
前記第3の平坦面に密着する第4の平坦面を有する平板状の第1のスペーサとを一体化することにより構成されており、
前記第1の樹脂供給路は、
前記第1の板フランジ及び前記第1のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第1の流路と、
前記第1の板フランジに設けられ、前記第1の平坦面との間に前記貫通孔と前記第1の流路とを接続する流路を形成する第1の溝とにより構成され、
前記第2の樹脂供給路は、
前記第2のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第2の流路と、
前記第1の板フランジに設けられ、前記第4の平坦面との間に前記貫通孔と前記第2の流路とを接続する流路を形成する第2の溝とにより構成される、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記第2の樹脂供給路と前記貫通孔との接続点よりも前記貫通孔の前記一方端側において前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に前記平面と平行な流路を有する第3の樹脂供給路を備える、請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記第1のスペーサは、前記第4の平坦面と平行な第5の平坦面を有し、
前記金型は、
前記第5の平坦面に密着する第6の平坦面と、前記第6の平坦面と平行な第7の平坦面とを有する平板状の第2の板フランジと、
前記第7の平坦面に密着する第8の平坦面を有する平板状の第2のスペーサとを更に含み、
前記第3の樹脂供給路は、
前記第2の板フランジ及び前記第2のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第3の流路と、
前記第2の板フランジに設けられ、前記第5の平坦面との間に前記貫通孔と前記第3の流路とを接続する流路を形成する第3の溝とにより構成される、請求項3に記載の金型。
【請求項5】
フレキシブルチューブの製造装置であって、
金型と、
第1の樹脂を前記金型に供給する第1の押出機と、
第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を前記金型に供給する第2の押出機と、
前記金型と前記第1の押出機の間に設けられ、前記第1の樹脂の供給を制御する第1のバルブと、
前記金型と前記第2の押出機の間に設けられ、前記第2の樹脂の供給を制御する第2のバルブとを備え、
前記金型は、
一方端から挿入されたブレード線を他方端から繰り出す直線状の貫通孔と、
前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、前記貫通孔の中心軸に対して直交する平面と平行な流路を有する第1の樹脂供給路と、
前記第1の樹脂供給路と前記貫通孔との接続点よりも前記貫通孔の前記一方端側において前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、前記平面と平行な流路を有する第2の樹脂供給路とを備える、フレキシブルチューブの製造装置。
【請求項6】
前記金型は、
前記貫通孔の前記他方端を含み、前記他方端よりも前記貫通孔の前記一方端側に、前記平面と平行な第1の平坦面を有するダイスと、
前記ダイスの前記第1の平坦面に密着する第2の平坦面と、前記第2の平坦面と平行な第3の平坦面とを有する平板状の第1の板フランジと、
前記第3の平坦面に密着する第4の平坦面を有する平板状の第1のスペーサとを一体化することにより構成されており、
前記第1の樹脂供給路は、
前記第1の板フランジ及び前記第1のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第1の流路と、
前記第1の板フランジに設けられ、前記第1の平坦面との間に前記貫通孔と前記第1の流路とを接続する流路を形成する第1の溝とにより構成され、
前記第2の樹脂供給路は、
前記第2のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第2の流路と、
前記第1の板フランジに設けられ、前記第4の平坦面との間に前記貫通孔と前記第2の流路とを接続する流路を形成する第2の溝とにより構成される、請求項5に記載のフレキシブルチューブの製造装置。
【請求項7】
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂の少なくとも一方と異なる第3の樹脂を前記金型に供給する第3の押出機と、
前記金型と前記第3の押出機の間に設けられ、前記第3の樹脂の供給を制御する第3のバルブとを備え、
前記金型は、前記第2の樹脂供給路と前記貫通孔との接続点よりも前記貫通孔の前記一方端側において前記貫通孔に接続され、前記貫通孔との接続点から所定範囲の部分に前記平面と平行な流路を有する第3の樹脂供給路を含む、請求項5に記載のフレキシブルチューブの製造装置。
【請求項8】
前記第1のスペーサは、前記第4の平坦面と平行な第5の平坦面を有し、
前記金型は、
前記第5の平坦面に密着する第6の平坦面と、前記第6の平坦面と平行な第7の平坦面とを有する平板状の第2の板フランジと、
前記第7の平坦面に密着する第8の平坦面を有する平板状の第2のスペーサとを更に含み、
前記第3の樹脂供給路は、
前記第2の板フランジ及び前記第2のスペーサを貫通し、前記貫通孔と平行に延びる第3の流路と、
前記第2の板フランジに設けられ、前記第5の平坦面との間に前記貫通孔と前記第3の流路とを接続する流路を形成する第3の溝とにより構成される、請求項7に記載のフレキシブルチューブの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレード線の外面を樹脂で被覆してなるフレキシブルチューブを押出成形するための金型及びこれを用いたフレキシブルチューブの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関において患者の生体内の所定部位に薬液や造影剤等を注入したり、生体内の体液等を取り出したりするためにカテーテルと呼ばれるチューブ状の医療器具が用いられている。このカテーテルは、屈曲した血管を通じて生体内に挿入されるため、先端側部分には、血管を傷つけることなく、血管の屈曲部分に沿って曲がりやすいように、柔軟性が求められる。一方、カテーテルのうち生体内に挿入されない部分には、カテーテルの操作がしやすくなるよう、適度な剛性が求められる。ただし、血管の一部には、屈曲が急な部分があり、この急な屈曲部分に追従して、柔軟な部分と硬い部分との境目で屈曲できるカテーテルが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、網組層上に押出成形する外層チューブを第1樹脂及び第2樹脂の2層で形成するカテーテル成型装置が記載されている。特許文献1に記載のカテーテル成型装置では、第1押出機から押し出される第1樹脂の流量と、第2押出機から押し出される第2樹脂の流量との比率を調整することにより、外層チューブを構成する内層と外層との厚みの比を変化させることが可能できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に記載のカテーテル成型装置を用い、第1樹脂及び第2樹脂の供給を切り替えることで、柔軟な樹脂で成形された外層チューブと、より硬い樹脂で成型された外層チューブとを隣接して形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら、金型に供給する樹脂を第1樹脂から第2樹脂に切り替えたとしても、第1樹脂の流路内にある第1樹脂に圧力が残存しているため、第1樹脂の供給はすぐに停止せず、第1樹脂の流路内にある第1樹脂が継続して押し出される。また、第2樹脂の押出しが開始してからしばらくは、第2樹脂によって第1樹脂の流路内に残存している第1樹脂が引き出されるという現象も確認されている。
【0007】
樹脂の流路は、網組層の外面の全周に同時に樹脂を供給できるように、金型の外周面の周方向全周に渡って設ける必要がある。特許文献1における金型は円錐形状(順テーパー形状)を有しているため、金型の外周面に設けられた樹脂の流路の容積が大きく、樹脂の切り替え後に押し出される第1樹脂の量が多くなる。したがって、特許文献1に記載の成形装置では、柔軟な樹脂と硬い樹脂との混合樹脂で成形される部分の長さを短くすることが難しく、柔軟な樹脂と硬い樹脂との境目で急に屈曲させる可能なカテーテルの製造には適していなかった。
【0008】
それ故に、本発明は、ブレード線の表面に押し出す樹脂を切り替えた際に、切り替え前後の樹脂が混合した部分の長さを短くすることが可能な金型及びこれを用いたフレキシブルチューブの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るフレキシブルチューブを押出成形するための金型は、一方端から挿入されたブレード線を他方端から繰り出す直線状の貫通孔と、貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、貫通孔の中心軸に対して直交する平面と平行な流路を有する第1の樹脂供給路と、第1の樹脂供給路と貫通孔との接続点よりも貫通孔の一方端側において貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、平面と平行な流路を有する第2の樹脂供給路とを備える。
【0010】
本発明に係るフレキシブルチューブの製造装置は、金型と、第1の樹脂を金型に供給する第1の押出機と、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を金型に供給する第2の押出機と、金型と第1の押出機の間に設けられ、第1の樹脂の供給を制御する第1のバルブと、金型と第2の押出機の間に設けられ、第2の樹脂の供給を制御する第2のバルブとを備える。金型は、一方端から挿入されたブレード線を他方端から繰り出す直線状の貫通孔と、貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、貫通孔の中心軸に対して直交する平面と平行な流路を有する第1の樹脂供給路と、第1の樹脂供給路と貫通孔との接続点よりも貫通孔の一方端側において貫通孔に接続され、貫通孔との接続点から所定範囲の部分に、平面と平行な流路を有する第2の樹脂供給路とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレード線の表面に押し出す樹脂を切り替えた際に、切り替え前後の樹脂が混合した部分の長さを短くすることが可能な金型及びこれを用いたフレキシブルチューブの製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るフレキシブルチューブ製造装置の概略構成を示す上面図
【
図2】
図1に示したII-IIラインから見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、樹脂層である内層チューブの外面にブレード(網組)を設け、更に、ブレードを樹脂層である外層チューブで覆った構成のフレキシブルチューブの製造装置に本発明を適用した例を説明する。このようなフレキシブルチューブの一例として、カテーテルシャフトを挙げることができる。しかしながら、カテーテルシャフトは、フレキシブルチューブの一例に過ぎず、本発明は、内視鏡に用いるフレキシブルチューブ等の他の用途のフレキシブルチューブの製造装置にも適用可能である。
【0014】
図1は、実施形態に係るフレキシブルチューブ製造装置の概略構成を示す上面図であり、
図2は、
図1に示したII-IIラインから見た断面図であり、
図3は、実施形態の金型の模式図である。
図3においては、図示の簡略化のため、各部材の回転位置が実際の構成とは異なる。
【0015】
フレキシブルチューブ製造装置100は、樹脂を用いてフレキシブルチューブ7を押出成形するための装置であり、金型9と、第1の押出機1と、第2の押出機2と、第3の押出機3と、第4の押出機4と、第1のバルブ21と、第2のバルブ22と、第3のバルブ23と、図示しない第4のバルブとを備える。尚、フレキシブルチューブ製造装置100は、台座を介して所定の架台等の上に固定される。また、図示は省略しているが、金型9の上流側及び下流側には、ブレード線6を供給するための供給装置や、押出成形されたフレキシブルチューブ7を冷却する冷却装置、フレキシブルチューブ7を引き取る引取装置等が適宜設けられる。ブレード線6は、フレキシブルチューブ製造装置100の後方側から前方側へと搬送される。ブレード線6は、樹脂製の内層チューブ28の外面にブレード(網組)27を設け、内層チューブ28の中空部に芯線(ガイドワイヤー)29を挿入したものである(
図3(b)参照)。フレキシブルチューブ7は、ブレード線6の表面に外層チューブ26を設けたものであり、外層チューブ26の成形後にブレード線6の芯線29を抜き取ることによって、カテーテルシャフトを得ることができる。
【0016】
金型9は、後方側の端部17aから挿入されたブレード線6を前方側の端部17bから繰り出す直線状の貫通孔16と、第1の樹脂供給路11と、第2の樹脂供給路12と、第3の樹脂供給路13と、第4の樹脂供給路14とを備える。第1の樹脂供給路11、第2の樹脂供給路12、第3の樹脂供給路13及び第4の樹脂供給路14はいずれも、貫通孔16に接続されている。第1の樹脂供給路11、第2の樹脂供給路12、第3の樹脂供給路13及び第4の樹脂供給路14には、第1の押出機1、第2の押出機2、第3の押出機3及び第4の押出機から、第1の樹脂、第2の樹脂、第3の樹脂及び第4の樹脂がそれぞれ供給される。金型9の構成の詳細については後述する。
【0017】
第1の押出機1、第2の押出機2、第3の押出機3及び第4の押出機4は、例えば、スクリュー押出機であり、樹脂のペレットを溶融させて、先端の吐出口から一定速度で押し出すことができる。第1の押出機1、第2の押出機2、第3の押出機3及び第4の押出機4には、第1の樹脂、第2の樹脂、第3の樹脂及び第4の樹脂がそれぞれ供給される。典型的には、第1~第4の樹脂は、互いに硬度が異なる樹脂である。ただし、第1~第4の樹脂の順に金型9への供給が順に切り替えられる場合、切り替え前後の樹脂の硬度が異なっていれば良く、第1~第2の樹脂のうちの2種が同じ硬度であっても良い。また、第1~第4の樹脂の硬度は、必ずしも切り替え順に大きくなっている(あるいは、小さくなっている)必要はなく、フレキシブルチューブ7の適用部位に応じて設定することができる。第1の押出機1、第2の押出機2、第3の押出機3及び第4の押出機4から押し出された溶融樹脂は、第1のバルブ21、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブを介して金型9に供給される。
【0018】
第1のバルブ21は、第1の押出機1と金型9の第1の樹脂供給路11との間に設けられる。第1のバルブ21は、第1の押出機1と第1の樹脂供給路11とが連通した状態と、第1の押出機1と第1の樹脂供給路11との間が遮断された状態とを切り替え可能である。同様に、第2のバルブ22は、第2の押出機2と金型9の第2の樹脂供給路12との間に設けられる。第2のバルブ22は、第2の押出機2と第2の樹脂供給路12とが連通した状態と、第2の押出機2と第2の樹脂供給路12との間が遮断された状態とを切り替え可能である。第3のバルブ23は、第3の押出機3と金型9の第3の樹脂供給路13との間に設けられる。第3のバルブ23は、第3の押出機3と第3の樹脂供給路13とが連通した状態と、第3の押出機3と第3の樹脂供給路13との間が遮断された状態とを切り替え可能である。また、
図1及び
図2には示されていないが、第4のバルブは、第4の押出機4と金型9の第4の樹脂供給路14との間に設けられる。第4のバルブは、第4の押出機4と第4の樹脂供給路14とが連通した状態と、第4の押出機4と第4の樹脂供給路14との間が遮断された状態とを切り替え可能である。
【0019】
第1のバルブ21、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブは、例えば、所定の回転軸周りに回転可能な円柱状の弁体と、弁体を収容するケースと、弁体を回転させるモータ等の駆動装置とを含む。弁体及びケースには、溝や貫通孔により形成された複数の流路が設けられており、弁体の回転位置に応じて、弁体及びケースに設けられた流路の接続状態が変化し、押出機と樹脂供給路とを接続した状態と、押出機と樹脂供給路とが遮断された状態とに制御することができる。第1のバルブ21、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブが、対応する押出機と対応する樹脂供給路との間を遮断した状態において、対応する押出機から供給された樹脂を外部に排出(廃棄)できることが好ましい。このように構成した場合、各押出機からバルブに供給される樹脂の内圧変動を抑制できるので、各バルブから金型9の樹脂供給路への樹脂供給を安定して行うことができる。尚、第1のバルブ21、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブは、上述した樹脂の供給制御を行える限り、構成や配置は特に限定されない。
【0020】
フレキシブルチューブ製造装置100は、更に、制御装置20を備える。制御装置20は、CPU、メモリ、記憶装置、通信インタフェース等を含むコンピュータを備え、図示しない信号線を介して、第1の押出機1、第2の押出機2、第3の押出機3、第4の押出機、第1のバルブ21、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブに接続される。制御装置20は、信号線を介して接続されたこれらの各装置の動作を制御する。また、制御装置20は、フレキシブルチューブ製造装置100の上流側及び下流側に配置される各種装置の制御を行っても良い。
【0021】
以下、
図2~
図7を参照しながら、本実施形態に係る金型9の構成例を詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る金型9は、ダイス10と、第1の板フランジ31と、第1のスペーサ41と、第2の板フランジ32と、第2のスペーサ42とをこの順に重ね合わせて、ボルト等により一体化することにより構成されている。
【0023】
図4、
図5、
図6及び
図7は、それぞれ
図2に示した第1の板フランジ、第1のスペーサ、第2の板フランジ及び第2のスペーサの平面図である。
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)及び
図7(a)は、
図3において矢印で示すA方向から見た図に相当し、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)及び
図7(b)は、
図3において矢印で示すB方向から見た図に相当する。
【0024】
ダイス10は、中央部にフレキシブルチューブ7を押し出す押出口(端部17b)を構成する貫通孔と、押出口(端部17b)よりも端部17b側において貫通孔16の中心軸Axと直交する第1の平坦面P1(
図3参照)とを有する。
【0025】
第1の板フランジ31は、平板状の部材であり、
図3及び
図4に示すように、第1の平坦面P1に密着する第2の平坦面P2と、第2の平坦面P2と平行な第3の平坦面P3とを有する。第1の板フランジ31には、貫通孔34a及び35aと、第2の平坦面P2側において貫通孔34a及び35aに接続される第1の溝112と、第3の平坦面P3側において貫通孔34aに接続される第2の溝122とが形成されている。
【0026】
第1のスペーサ41は、第1の板フランジ31と外形が同一の平板状の部材であり、
図3及び
図5に示すように、第1の板フランジ31の第3の平坦面P3に密着する第4の平坦面P4と、第4の平坦面P4と平行な第5の平坦面P5とを有する。第1のスペーサ41には、貫通孔34b、35b及び36aが形成されている。
【0027】
第2の板フランジ32は、第1の板フランジ31と外形が同一の平板状の部材であり、
図3及び
図6に示すように、第1のスペーサ41の第5の平坦面P5と密着する第6の平坦面P6と、第6の平坦面P6と平行な第7の平坦面P7とを有する。第2の板フランジ32には、貫通孔34c、35c、36b及び37aと、第5の平坦面P5側において貫通孔34c及び37aに接続される第3の溝132と、第6の平坦面P6側において貫通孔34cに接続される第4の溝142が形成されている。
【0028】
第2のスペーサ42は、第1の板フランジ31と外形が同一の平板状の部材であり、
図3及び
図7に示すように、第2の板フランジ32の第7の平坦面P7に密着する第8の平坦面P8と、第8の平坦面P8と平行な第9の平坦面P9とを有する。第1のスペーサ41には、貫通孔34d、35d、36c、37b及び38が形成されている。
【0029】
金型9において、ダイス10の貫通孔と、第1の板フランジ31の貫通孔34aと、第1のスペーサ41の貫通孔34bと、第2の板フランジ32の貫通孔34cと、第2のスペーサ42の貫通孔34dとによって、貫通孔16が構成される。
【0030】
上述した第1の樹脂供給路11、第2の樹脂供給路12、第3の樹脂供給路13及び第4の樹脂供給路14は、ダイス10、第1の板フランジ31、第1のスペーサ41、第2の板フランジ32及び第2のスペーサ42に設けられた貫通孔及び/または溝の組み合わせにより構成されている。
【0031】
第1の樹脂供給路11は、第1の板フランジ31の貫通孔35aと、第1のスペーサ41の貫通孔35bと、第2の板フランジ32の貫通孔35cと、第2のスペーサ42の貫通孔35dとによって構成される流路(第1の流路)と、第1の板フランジ31の第1の溝112によって構成され、ダイス10の第1の平坦面P1との間において貫通孔16と貫通孔35a(第1の流路)とを接続する流路とを含む。第1の溝112によって構成される流路は、第1の樹脂供給路11と貫通孔16との接続点から所定範囲の部分に設けられ、貫通孔16の中心軸Axに対して直交する平面と平行な方向に樹脂を流動させる流路である。
【0032】
第2の樹脂供給路12は、第1のスペーサ41の貫通孔36aと、第2の板フランジ32の貫通孔36bと、第2のスペーサ42の貫通孔36cとによって構成される流路(第2の流路)と、第1の板フランジ31の第2の溝122によって構成され、第1のスペーサ41の第4の平坦面P4との間において、貫通孔16と第1のスペーサ41の貫通孔36a(第2の流路)とを接続する流路とを含む。第2の溝122によって構成される流路は、第1の樹脂供給路11と貫通孔16との接続点よりも貫通孔16の端部17a側において貫通孔16に接続され、第2の樹脂供給路12と貫通孔16との接続点から所定範囲の部分において、貫通孔16の中心軸Axに対して直交する平面と平行な方向に樹脂を流動させる流路である。
【0033】
第3の樹脂供給路13は、第2の板フランジ32の貫通孔37aと、第2のスペーサ42の貫通孔37bによって構成される流路(第3の流路)と、第2の板フランジ32の第3の溝132によって構成され、第1のスペーサ41の第5の平坦面P5との間において貫通孔16と貫通孔37a(第3の流路)とを接続する流路とを含む。第3の溝132によって構成される流路は、第2の樹脂供給路12と貫通孔16との接続点よりも貫通孔16の端部17a側において貫通孔16に接続され、第3の樹脂供給路13と貫通孔16との接続点から所定範囲の部分において、貫通孔16の中心軸Axに対して直交する平面と平行な方向に樹脂を流動させる流路である。
【0034】
第4の樹脂供給路14は、第2のスペーサ42の貫通孔38によって構成される流路(第4の流路)と、第2の板フランジ32の第4の溝142によって構成され、第2のスペーサ42の第8の平坦面P8との間において貫通孔16と貫通孔38(第4の流路)とを接続する流路とを含む。第4の溝142によって構成される流路は、第4の樹脂供給路14と貫通孔16との接続点よりも貫通孔16の端部17a側において貫通孔16に接続され、第4の樹脂供給路14と貫通孔16との接続点から所定範囲の部分において、貫通孔16の中心軸Axに対して直交する平面と平行な方向に樹脂を流動させる流路である。
【0035】
以下、
図3を参照しながら、フレキシブルチューブ製造装置100を用いたフレキシブルチューブの押出成形方法を説明する。以下の説明では、第1の樹脂、第2の樹脂、第3の樹脂及び第4の樹脂の順に硬度が高く、硬度の低い樹脂から順に金型9の貫通孔16に樹脂を供給する例を説明する。
【0036】
まず、制御装置20は、第1のバルブ21を開状態とし、第2のバルブ22、第3のバルブ23及び第4のバルブを閉状態とし、第1の押出機1から押し出された第1の樹脂を第1の樹脂供給路11を通じて金型9の貫通孔16に供給する。第1の樹脂を金型9に供給しながら貫通孔16に挿入したブレード線6を押出口(貫通孔16の端部17b)から繰り出すことにより、ブレード線6の表面が第1の樹脂によって被覆される。
【0037】
次に、制御装置20は、第2のバルブ22を開状態とし、第1のバルブ21、第3のバルブ及び第4のバルブを閉状態とし、第2の押出機2から押し出された第2の樹脂を第2の樹脂供給路12を通じて金型9の貫通孔16に供給する。金型9に供給する樹脂を第1の樹脂から第2の樹脂に切り替えた直後は、貫通孔16内に第1の樹脂が残存しているため、ブレード線6を被覆する外層チューブ26には、第1の樹脂及び第2の樹脂の混合樹脂によって形成された部分(
図3(b)の網掛け部)が生じる。また、第2の樹脂の流動により、第1の溝112内の樹脂の一部が貫通孔16内に引き出される。ただし、本実施形態では、第1の樹脂供給路11のうち、貫通孔16との接続部から所定範囲の部分が、貫通孔16の中心軸Axに対して直交する平面と平行に形成されている。したがって、特許文献1のような円錐形状の金型を用いる場合と比べて、切り替え後に貫通孔16に流れ込む第1の樹脂の量を低減することができる。したがって、第1の樹脂及び第2の樹脂の混合樹脂により形成される部分の長さを短くすることができ、第1の樹脂からなる部分と第2の樹脂からなる部分との接続部で急に屈曲させることが可能なフレキシブルチューブ7を製造することができる。
【0038】
以降、同様に、制御装置20は、第3のバルブ23を開状態とし、第1のバルブ21、第2のバルブ22及び第4のバルブを閉状態とし、第3の押出機3から押し出された第3の樹脂を第3の樹脂供給路13を通じて金型9の貫通孔16に供給する。次に、制御装置20は、第4のバルブを開状態とし、第1のバルブ21、第2のバルブ22及び第3のバルブ23を閉状態とし、第4の押出機4から押し出された第4の樹脂を第4の樹脂供給路14を通じて金型9の貫通孔16に供給する。このように制御することにより、
図3(b)に示すように、第1の樹脂からなる部分、第2の樹脂からなる部分、第3の樹脂からなる部分及び第4の樹脂からなる部分を順に有し、段階的に硬度が変化する外層チューブ26を形成できる。第1の溝112と同様に、第2の溝122及び第3の溝123が中心軸Axと直交する平面に沿って形成されている。したがって、第2の樹脂から第3の樹脂への切り替え後に貫通孔16に流れ込む第2の樹脂の量、及び、第3の樹脂から第4の樹脂への切り替え後に貫通孔16に流れ込む第3の樹脂の量を低減できる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る金型9を用いることにより、ブレード線6の表面に押し出す樹脂を切り替えた際に、切り替え前後の樹脂が混合した部分の長さを短くすることができる。この結果、
図3(b)に示す3箇所の網掛け部において、急に屈曲させることが可能な(大きい曲率で屈曲させることが可能な)フレキシブルチューブ7を製造することができる。また、本実施形態に係る金型9においては、第1の溝112、第2の溝122、第3の溝132及び第4の溝142によって形成された流路から、貫通孔16の中心軸Axと直交する方向、すなわち、ブレード線6の径方向に樹脂が供給される。この場合、樹脂の注入圧力がブレード線6の径方向に加わり、外層チューブ26を形成するための溶融樹脂を内層チューブ28まで到達させることができるため、ブレード27に対する外層チューブ26の密着性を向上することもできる。
【0040】
尚、上記の実施形態では、4種類の樹脂を切り替えながら外層チューブ26を押出成形する例を説明したが、屈曲可能な部位の数に応じて以下のような変形例も可能である。
【0041】
【0042】
図8(a)に示す金型18は、ダイス10と、第1の板フランジ31と、第1のスペーサ41とによって構成される。金型18は、貫通孔16と、第1の樹脂供給路11と、第2の樹脂供給路12とを備える。各部材や樹脂供給路の構成は、上述したものと同じであるので繰り返しの説明を省略する。尚、
図8(a)に示す金型を用いてフレキシブルチューブの製造装置を構成する場合、第3の押出機、第4の押出機、第3のバルブ及び第4のバルブを省略できる。
【0043】
図8(a)に示す金型18に供給する樹脂を第1の樹脂から第2の樹脂に切り替えてフレキシブルチューブ7を押出成形した場合、
図8(b)に示すように1つの屈曲可能な部位を有するフレキシブルチューブ7を製造することができる。
【0044】
【0045】
図9(a)に示す金型19は、上記の実施形態に示した金型9において第4の樹脂供給路14を省略したものである。金型19は、
図6に示した第4の溝142を設けない第2の板フランジ32と、
図7に示した貫通孔38を設けない第2のスペーサ42とを用いて構成することができる。尚、
図9(a)に示す金型を用いてフレキシブルチューブの製造装置を構成する場合、第3の押出機及び第4のバルブを省略できる。
【0046】
図9(a)に示す金型19に供給する樹脂を第1の樹脂、第2の樹脂及び第3の樹脂の順に切り替えてフレキシブルチューブ7を押出成形した場合、
図9(b)に示すように2つの屈曲可能な部位を有するフレキシブルチューブ7を製造することができる。
【0047】
尚、上記の実施形態で示した第1~第4の樹脂供給路の構成は一例であり、第1~第4の樹脂供給路は必ずしもブレード線を通過させる貫通孔と平行に金型を貫通している必要はない。フレキシブルチューブの製造装置の他の構成に応じて、第1~第4の樹脂供給路の上流側の端部の位置を適宜変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、医療用のカテーテルの作製に用いるカテーテルシャフトや内視鏡に用いるチューブ等のフレキシブルチューブの製造装置として利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1の押出機
2 第2の押出機
3 第3の押出機
4 第4の押出機
6 ブレード線
7 フレキシブルチューブ
9 金型
10 ダイス
11 第1の樹脂供給路
12 第2の樹脂供給路
13 第3の樹脂供給路
14 第4の樹脂供給路
16 貫通孔
17a、17b 端部
18 金型
19 金型
21 第1のバルブ
22 第2のバルブ
23 第3のバルブ
31 第1の板フランジ
32 第2の板フランジ
41 第1のスペーサ
42 第2のスペーサ
112 第1の溝
122 第2の溝
132 第3の溝
142 第4の溝
P1~P9 平坦面