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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000037
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231225BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20231225BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20231225BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F04B39/00 106A
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098554
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】島田 透
(72)【発明者】
【氏名】柏原 辰樹
【テーマコード(参考)】
3H003
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB01
3H003AC03
3H003CF02
5H611BB06
5H611TT01
5H611TT02
5H611UA04
5H770AA05
5H770AA21
5H770BA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA04
5H770DA22
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA09X
5H770PA11
5H770PA24
5H770PA26
5H770PA41
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA09
5H770QA14
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】スイッチング素子の損失/発熱を均一化でき、更には、寸法を拡大すること無く、ワイドレンジ化に対応することを可能とした電動圧縮機を提供する。
【解決手段】電動圧縮機1は、複数のスイッチング素子18A~18Fを有してモータ8に給電するインバータ16を備える。モータが内蔵されたモータ室4とインバータが取り付けられるインバータ収容部6が構成されたハウジング2と、モータ室とインバータ収容部との隔壁3と、一端がモータに電気的に接続され、モータから隔壁方向に突出して設けられた複数の接続端子10A、10Bを備え、各接続端子は分散して設けられ、隔壁を貫通して他端がインバータに電気的に接続される。スイッチング素子は、各接続端子に対応するかたちで、分散して隔壁に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有してモータに給電するインバータを備えた電動圧縮機において、
前記モータが内蔵されたモータ室、及び、前記インバータが取り付けられるインバータ収容部が構成されたハウジングと、
前記モータ室と前記インバータ収容部との隔壁と、
一端が前記モータに電気的に接続され、当該モータから前記隔壁方向に突出して設けられた複数の接続端子を備え、
各接続端子は分散して設けられ、前記隔壁を貫通して他端が前記インバータに電気的に接続されると共に、
前記スイッチング素子は、前記各接続端子に対応するかたちで、分散して前記隔壁に設けられていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、前記各接続端子の近傍に位置して前記隔壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記各接続端子は、前記モータの円周方向に等間隔で分散して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記接続端子は3本設けられると共に、前記インバータは6個の前記スイッチング素子を備え、前記各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつ前記スイッチング素子を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記接続端子は4本設けられると共に、前記インバータは8個の前記スイッチング素子を備え、前記各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつ前記スイッチング素子を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記接続端子は6本設けられると共に、前記インバータは7個の前記スイッチング素子と1個のダイオードを備え、前記各接続端子に対応するかたちで、前記スイッチング素子と前記ダイオードを分散して配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記接続端子は6本設けられると共に、前記インバータは12個の前記スイッチング素子を備え、前記各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつ前記スイッチング素子を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスイッチング素子を有してモータに給電するインバータを備えた電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電動車両の空気調和装置に用いられる冷媒圧縮機としては、ハウジングに形成されたインバータ収容部にインバータを取り付けたインバータ一体型の電動圧縮機が用いられている。この場合、ハウジングのモータ室には三相のモータが収容され、モータ室とインバータ収容部との隔壁には、ガラス製のハーメチックプレート(クラスタ)が設けられる。
【0003】
また、隔壁にはインバータを構成する6個のスイッチング素子(IGBT等)を設けてインバータの回路基板に接続する。これにより、スイッチング素子は隔壁を介してモータ室を流れる低温冷媒により冷却される。即ち、ハウジング自体がスイッチング素子のヒートシンクとなる。そして、ハーメチックプレートに並んで取り付けられた三本のハーメチックピンを、インバータの回路基板に電気的に接続する構造とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-183668号公報
【特許文献2】特許第4804381号公報
【特許文献3】特許第6574044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のようにハーメチックプレートにハーメチックピンが設けられた構造では、ハーメチックピンと各スイッチング素子との距離が異なるため、モータの各相への配線長が相によって異なってくる。そのため、サージ電圧が各相によって変化するため、スイッチング素子の損失/発熱が均一でなくなり、制御が困難となると共に、損失/発熱の多いスイッチング素子から先に劣化してしまう等の問題が生じる。
【0006】
また、近年この種の電動圧縮機においても電圧のワイドレンジ化が進められている。例えば、モータの中性点を束ねずに、ハーフブリッジで対抗させることにより、電圧をワイドレンジ化したインバータも開発されている(例えば、特許文献2参照)。その場合は、12個のスイッチング素子をハウジングの隔壁に配置しなければならないが、従来の如くハーメチックプレートにハーメチックピンを取り付けた構造では、スイッチング素子の配置に自由度が無く、また、ハーメチックピンの数も増えるため、絶縁耐圧と冷却効率を考慮すると、ハウジングの寸法を拡大しなければ全てを隔壁に配置することが困難となり、改善が望まれていた。
【0007】
一方、モータから3本の通電ピン(接続端子)を突出させ、ハウジングの隔壁を貫通させてインバータに接続する電動圧縮機も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、スイッチング素子の損失/発熱を均一化でき、更には、寸法を拡大すること無く、ワイドレンジ化に対応することを可能とした電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動圧縮機は、複数のスイッチング素子を有してモータに給電するインバータを備えたものであって、モータが内蔵されたモータ室、及び、インバータが取り付けられるインバータ収容部が構成されたハウジングと、モータ室とインバータ収容部との隔壁と、一端がモータに電気的に接続され、当該モータから隔壁方向に突出して設けられた複数の接続端子を備え、各接続端子は分散して設けられ、隔壁を貫通して他端がインバータに電気的に接続されると共に、スイッチング素子は、各接続端子に対応するかたちで、分散して隔壁に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の電動圧縮機は、上記発明においてスイッチング素子は、各接続端子の近傍に位置して隔壁に設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の電動圧縮機は、請求項1の発明において各接続端子は、モータの円周方向に等間隔で分散して設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の電動圧縮機は、上記各発明において接続端子は3本設けられると共に、インバータは6個のスイッチング素子を備え、各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の電動圧縮機は、請求項1乃至請求項3の発明において接続端子は4本設けられると共に、インバータは8個のスイッチング素子を備え、各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明の電動圧縮機は、請求項1又は請求項2の発明において接続端子は6本設けられると共に、インバータは7個のスイッチング素子と1個のダイオードを備え、各接続端子に対応するかたちで、スイッチング素子とダイオードを分散して配置したことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明の電動圧縮機は、請求項1乃至請求項3の発明において接続端子は6本設けられると共に、インバータは12個のスイッチング素子を備え、各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のスイッチング素子を有してモータに給電するインバータを備えた電動圧縮機において、モータが内蔵されたモータ室、及び、インバータが取り付けられるインバータ収容部が構成されたハウジングと、モータ室とインバータ収容部との隔壁と、一端がモータに電気的に接続され、当該モータから隔壁方向に突出して設けられた複数の接続端子を備えており、各接続端子を分散して設け、隔壁を貫通した他端をインバータに電気的に接続すると共に、スイッチング素子を各接続端子に対応するかたちで、分散して隔壁に設けるようにしたので、モータの各相への配線長を等しい値、或いは、それに近い値とすることができるようになり、各相におけるサージ電圧を等しくして、各スイッチング素子の損失/発熱を均一化することが可能となる。
【0017】
また、スイッチング素子の配置に自由度が増すため、接続端子やスイッチング素子の数が増加した場合にも、ハウジングの寸法を拡大すること無く、絶縁耐圧と冷却効率を満足した状態でそれらを配置することが可能となる。それにより、電圧のワイドレンジ化にも円滑に対応することができるようになる。
【0018】
この場合、請求項2の発明の如くスイッチング素子を、各接続端子の近傍に位置して隔壁に設けるようにすれば、スイッチング素子から接続端子への配線長を短くしてサージ電圧を低減することができるようになる。
【0019】
また、請求項3の発明の如く各接続端子を、モータの円周方向に等間隔で分散して設けるようにすれば、モータの各相への配線長の均一化を円滑に図ることができるようになる。
【0020】
具体的には、接続端子が3本設けられ、インバータが6個のスイッチング素子を有する場合には、請求項4の発明の如く各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置する。
【0021】
また、接続端子が4本設けられ、インバータが8個のスイッチング素子を有する場合にも、請求項5の発明の如く各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置する。
【0022】
更に、接続端子が6本設けられ、インバータが7個のスイッチング素子と1個のダイオードを有する場合には、請求項6の発明の如く各接続端子に対応するかたちで、スイッチング素子とダイオードを分散して配置する。
【0023】
更にまた、接続端子が6本設けられ、インバータが12個のスイッチング素子を有する場合にも、請求項7の発明の如く各接続端子のそれぞれに対応して2個ずつスイッチング素子を配置するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した一実施例の電動圧縮機の概略縦断面図である。
図2図1の電動圧縮機の一実施例の電気回路図である(実施例1)。
図3図2の実施例の電動圧縮機をインバータ収容部側から見たカバーと基板を除く平面図である。
図4図2の実施例のインバータの動作を説明する図である。
図5図1の電動圧縮機の他の実施例の電気回路図である(実施例2)。
図6図5の実施例の電動圧縮機をインバータ収容部側から見たカバーと基板を除く平面図である。
図7図5の実施例のインバータの動作を説明する図である。
図8図1の電動圧縮機の更に他の実施例の電気回路図である(実施例3)。
図9図8の実施例の電動圧縮機をインバータ収容部側から見たカバーと基板を除く平面図である。
図10図8の実施例のインバータの動作を説明する図である。
図11図1の電動圧縮機の更に他の実施例の電気回路図である(実施例4)。
図12図11の実施例の電動圧縮機をインバータ収容部側から見たカバーと基板を除く平面図である。
図13図11の実施例のインバータの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0026】
先ず、図1図4を用いて本発明を適用した一実施例の電動圧縮機(インバータ一体型電動圧縮機)1について説明する。尚、実施例の電動圧縮機1は、電動車両に搭載される車両用空気調和装置の冷媒回路の一部を構成するものである。
【0027】
(1)電動圧縮機1の構造
図1において、電動圧縮機1の金属製(実施例ではアルミニウム製)のハウジング2(ヒートシンク)内は、当該ハウジング2の軸方向に交差する隔壁3(ハウジング2の一部)によりモータ室4とインバータ収容部6とに区画されており、モータ室4内に例えばスクロール型の圧縮機構7と、この圧縮機構7を駆動するモータ8(電動モータ)が収容されている。実施例の場合、モータ8はハウジング2に固定されたステータ9と、このステータ9の内側で回転するロータ11から成るIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)である。
【0028】
隔壁3のモータ室4側の中心部には軸受部12が形成されており、ロータ11の駆動軸13の一端はこの軸受部12に支持され、駆動軸13の他端は圧縮機構7に連結されている。ハウジング2のモータ室4に対応する位置の隔壁3近傍には吸入口14が形成されており、モータ8のロータ11(駆動軸13)が回転して圧縮機構7が駆動されると、この吸入口14からハウジング2のモータ室4内に作動流体である低温の冷媒が流入し、圧縮機構7に吸引されて圧縮される。
【0029】
そして、この圧縮機構7で圧縮され、高温・高圧となった冷媒は、図示しない吐出口よりハウジング2外の前記冷媒回路に吐出される構成とされている。また、吸入口14から流入した低温の冷媒は、隔壁3近傍を通ってモータ8の周囲を通過し、圧縮機構7に吸引されることから、隔壁3も冷却されることになる。
【0030】
また、実施例ではステータ9の隔壁3側のコイルエンドにバスバー5が取り付けられている。このバスバー5は円環状を呈しており、モータ8のステータ9に巻装されたUVW各相のコイル9U、9V、9W(図2)にそれぞれ電気的に接続されている。また、バスバー5にはこの実施例では3本の接続端子10A、10B、10Cが取り付けられ、隔壁3方向に突出して設けられている。各接続端子10A、10B、10Cの一端は、バスバー5を介してモータ8の各相のコイル9U、9V、9Wに電気的に接続されている。
【0031】
実施例の場合、各接続端子10A、10B、10Cはモータ8の円周方向に等間隔(ハウジング2の軸を中心とする角度120°の間隔)で分散して設けられている。また、各接続端子10A、10B、10Cに対応する位置の隔壁3には挿通孔15がそれぞれ形成されている(3箇所)。そして、各接続端子10A、10B、10Cは各挿通孔15を通過し、即ち、隔壁3を貫通し、それらの他端はインバータ収容部6内に進入している。この状態を図3に示す。尚、各挿通孔15と各接続端子10A、10B、10C間は、図示しないOリング等で絶縁密封される。
【0032】
(2)インバータ16の構造
そして、この隔壁3でモータ室4と区画されたインバータ収容部6内には、モータ8を駆動制御するインバータ16が収容される。この実施例の場合、インバータ16は、基板17と、この基板17の一面側(隔壁3側)に位置して当該基板17に配線された6個の上下アームスイッチング素子18A~18Fと、基板17の他面側に配線された制御部21と、図示しないHVコネクタ、LVコネクタ等から構成されている。各スイッチング素子18A~18Fは、実施例ではMOS構造をゲート部に組み込んだ絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)から構成されている。
【0033】
隔壁3からインバータ収容部6内に進入した各接続端子10A、10B、10Cの他端は、図示しないプレスフィット端子等を介してインバータ16の基板17に電気的に接続される。そして、実施例の場合、図3に示す如く後述する三相のインバータ回路(三相インバータ回路)28のU相のハーフブリッジ回路19Uを構成する上アームスイッチング素子18Aと下アームスイッチング素子18Dが、接続端子10Aの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0034】
また、インバータ回路28のV相のハーフブリッジ回路19Vを構成する上アームスイッチング素子18Bと下アームスイッチング素子18Eは、接続端子10Bの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。更に、インバータ回路28のW相のハーフブリッジ回路19Wを構成する上アームスイッチング素子18Cと下アームスイッチング素子18Fは、接続端子10Cの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0035】
このように、実施例では各スイッチング素子18A~18Fが、各接続端子10A~10Cのそれぞれに対応して2個ずつ分散して配置され、隔壁3に設けられる。また、各スイッチング素子18A~18Fの端子部22は、各接続端子10A~10C側となった状態で基板17側に起立し、インバータ16の当該基板17に電気的に接続されている。このようにしてインバータ回路28を有するインバータ16は、接続端子10A~10Cやバスバー5を介してモータ8に給電する構成とされる。
【0036】
また、各スイッチング素子18A~18Fは隔壁3に絶縁及び/又は放熱用の図示しないシートを介して密着し、ハウジング2の隔壁3と熱交換関係となる。このとき、各スイッチング素子18A~18Fは軸受12及び駆動軸13に対応する箇所を避けた位置に配置される。そして、前述した如く隔壁3はモータ室4内に吸入される冷媒によって冷やされているので、各スイッチング素子18A~18Fは隔壁3を介して吸入冷媒と熱交換関係となり、隔壁3を介してモータ室4内に吸入された冷媒によって冷却され、各スイッチング素子18A~18F自体は隔壁3を介して冷媒に放熱するかたちとなる。即ち、電動圧縮機1の隔壁3(ハウジング2の一部)が各スイッチング素子18A~18Fのヒートシンクとなる。
【0037】
(3)インバータ16の回路構成
次に、図2においてインバータ16は、前述した三相のインバータ回路(三相インバータ回路)28と、制御部21を備えている。インバータ回路28は、直流電源(電動車両のバッテリ)29の直流電圧(例えば、DC300V)を三相交流電圧に変換してモータ8のステータ9のコイル9U、9V、9Wに印加する回路である。尚、この実施例のモータ8のステータ9のコイル9U、9V、9Wは中性点で束ねられている。
【0038】
インバータ回路28は、前述したU相のハーフブリッジ回路19U、V相のハーフブリッジ回路19V、W相のハーフブリッジ回路19Wを有しており、各相のハーフブリッジ回路19U~19Wは、それぞれ前述した上アームスイッチング素子18A~18Cと、下アームスイッチング素子18D~18Fを個別に有している。更に、各スイッチング素子18A~18Fは、それぞれ逆並列に接続されたフライホイールダイオードを内蔵する。
【0039】
そして、インバータ回路28の上アームスイッチング素子18A~18Cのコレクタ電極は、直流電源29の正側電源ライン31(HV+)に接続されている。一方、インバータ回路28の下アームスイッチング素子18D~18Fのエミッタ電極は、直流電源29の負側電源ライン32(HV-)に接続されている。
【0040】
そして、U相のハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18Aのエミッタ電極と下アームスイッチング素子18Dのコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のU相のコイル9Uの一端に接続されている。また、V相のハーフブリッジ回路19Vの上アームスイッチング素子18Bのエミッタ電極と下アームスイッチング素子18Eのコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のV相のコイル9Vの一端に接続されている。更に、W相のハーフブリッジ回路19Wの上アームスイッチング素子18Cのエミッタ電極と下アームスイッチング素子18Fのコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のW相のコイル9Wの一端に接続されている。尚、各コイル9U~9Wの他端は束ねられ、前述したように中性点とされている。
【0041】
前述した接続端子10AはU相のハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18Aと下アームスイッチング素子18Dの接続点とモータ8のU相のコイル9Uの間の配線33Uの一部を構成する。また、接続端子10BはV相のハーフブリッジ回路19Vの上アームスイッチング素子18Bと下アームスイッチング素子18Eの接続点とモータ8のV相のコイル9Vの間の配線33Vの一部を構成する。更に、接続端子10CはW相のハーフブリッジ回路19Wの上アームスイッチング素子18Cと下アームスイッチング素子18Fの接続点とモータ8のW相のコイル9Wの間の配線33Wの一部を構成するかたちとなる。
【0042】
次に、図4にこの実施例におけるインバータ16の制御部21の制御動作例を示す。この図において、cu、cv、cwは正規化したパルス幅指令値、vu、vv、vwはそれぞれモータ8のUVW各相に印加される電圧である。また、Iu、Iv、Iwはモータ8に流れる電流の一例である。
【0043】
制御部21はインバータ回路28の各相のハーフブリッジ回路19U、19V、19Wのスイッチング素子18A~18Fをスイッチング(ON/OFF)することにより、三相の交流電圧vu、vv、vwをモータ8の各コイル9U、9V、9Wに印加する。図4では、上アームスイッチング素子18A~18CがONのときは「1」が、下アームスイッチング素子18D~18FがONのときは「-1」が印加されるように正規化している。また、vu、vv、vwはインバータ回路16の出力電圧から、モータ8の中性点電位vmidを減算した値で示している。
【0044】
図4のようにインバータ16によりモータ8には三相の交流電圧が印加されることでモータ8は回転駆動される。このとき、本発明では前述した如くモータ8から隔壁3方向に突出して設けられた3本の接続端子10A~10Cを分散して設け、隔壁3を貫通した他端をインバータ16に電気的に接続すると共に、スイッチング素子18A~18Fを各接続端子10A~10Cに対応するかたちで、分散して隔壁3に設けているので、モータ8の各相への配線33U~33Wの長さ(配線長)を等しい値、或いは、それに近い値とすることができるようになる。それにより、UVW各相におけるサージ電圧を等しくして、各スイッチング素子18A~18Fの損失/発熱を均一化することが可能となる。
【0045】
また、実施例ではスイッチング素子18A~18Fを2個ずつ、各接続端子10A~10Cのそれぞれに対応させ、それらの近傍に位置して隔壁3に設けているので、スイッチング素子18A、18Dから接続端子10A、スイッチング素子18B、18Eから接続端子10B、スイッチング素子18C、18Fから接続端子10Cへの配線長が短くなり、サージ電圧を一層低減することができるようになる。
【0046】
また、実施例では各接続端子10A~10Cを、モータ8の円周方向に等間隔で分散して設けているので、モータ8のUVW各相への配線長(配線33U~33Wの長さ)の均一化を円滑に図ることができるようになる。
【実施例0047】
次に、図5図7を参照して本発明の他の実施例について説明する。尚、対象とする電動圧縮機1の構造は図1と同様であり、図1図4と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この実施例のインバータ16は4線インバータであり、インバータ回路28は前述した実施例(実施例1)の6個のスイッチング素子18A~18Fに加えて、4個目のハーフブリッジ回路19Mを構成する2個のスイッチング素子18G、18Hを備えている(図5)。
【0048】
即ち、この実施例のインバータ16のインバータ回路28は、計8個のスイッチング素子18A~18Hから構成されている。この場合、4個目のハーフブリッジ回路19Mの上アームスイッチング素子18Gのコレクタ電極は正側電源ライン31に接続され、下アームスイッチング素子18Hのエミッタ電極は、負側電源ライン32に接続されている。
【0049】
そして、ハーフブリッジ回路19Mの上アームスイッチング素子18Gのエミッタ電極と下アームスイッチング素子18Hのコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)は励磁コイル34を介してモータ8の中性点に接続されている。
【0050】
このように、この実施例のインバータ16は8個のスイッチング素子18A~18Hを有しているので、接続端子についても前述した3本の接続端子10A~10Cに加えて、もう一つ接続端子10Dが設けられる。尚、この接続端子10Dもバスバー5に取り付けられ、その一端はバスバー5を介して、モータ8の中性点に電気的に接続される。また、接続端子10Dもバスバー5から突出し、隔壁3の同様の挿通孔15を通過(隔壁3を貫通)して、前述同様にプレスフィット端子等を介し、インバータ16の基板17に電気的に接続される。
【0051】
この実施例では、接続端子10Dは4個目のハーフブリッジ回路19Mの上アームスイッチング素子18Gと下アームスイッチング素子18Hの接続点とモータ8の中性点の間の配線33Mの一部を構成するかたちとなる。
【0052】
そして、この実施例の場合、各接続端子10A、10B、10D、10Cはモータ8の円周方向に等間隔(ハウジング2の軸を中心とする角度90°の間隔)で分散して設けられる(図6)。そして、この実施例においても図6に示す如くU相のハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18Aと下アームスイッチング素子18Dが、接続端子10Aの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0053】
また、インバータ回路28のV相のハーフブリッジ回路19Vの上アームスイッチング素子18Bと下アームスイッチング素子18Eが、接続端子10Bの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。更に、インバータ回路28のW相のハーフブリッジ回路19Wの上アームスイッチング素子18Cと下アームスイッチング素子18Fが、接続端子10Cの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0054】
更にまた、インバータ回路28の4個目のハーフブリッジ回路19Mの上アームスイッチング素子18Gと下アームスイッチング素子18Hは、接続端子10Dの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。このように、この実施例においても、各スイッチング素子18A~18Hが、各接続端子10A~10Dのそれぞれに対応して2個ずつ分散して配置され、隔壁3に設けられる。また、各スイッチング素子18A~18Hの端子部22は、各接続端子10A~10D側となった状態で基板17側に起立し、インバータ16の当該基板17に電気的に接続される。
【0055】
このようにして、この実施例においてもインバータ回路28を有するインバータ16は、接続端子10A~10Dやバスバー5を介してモータ8に給電する構成とされる。また、各スイッチング素子18G、18Hも隔壁3に絶縁及び/又は放熱用のシートを介して密着し、ハウジング2の隔壁3と熱交換関係とされ、隔壁3を介してモータ室4内に吸入された冷媒によって冷却され、各スイッチング素子18G、18H自体は隔壁3を介して冷媒に放熱するかたちとなる。その他は、前述した実施例と同様である。
【0056】
次に、図7にこの実施例におけるインバータ16の制御部21の制御動作例を示す。この図において、cu、cv、cwは正規化したパルス幅指令値、vu、vv、vwはそれぞれモータ8のUVW各相に印加される電圧である。また、vmidはモータ8の中性点電圧である。更に、Iu、Iv、Iwはモータ8に流れる電流の一例である。
【0057】
この場合も制御部21は、インバータ回路28の各相のハーフブリッジ回路19U、19V、19Wのスイッチング素子18A~18Fをスイッチング(ON/OFF)することにより、三相の交流電圧vu、vv、vwをモータ8の各コイル9U、9V、9Wに印加する。4つ目のハーフブリッジ回路19Mは下アームスイッチング素子18Hを常時ONする。更に、パルス幅指令値cu、cv、cwは、全て上アームスイッチング素子18A~18CのON時間が長くなるように、PWMの指令値を変更する。
【0058】
この実施例の場合、励磁コイル34にDC電流Imidを流すことができるようになる。この励磁コイル34に電流を流すことで、強め磁束効果、或いは、弱め磁束効果を与えることができるようになり、高速領域や低速領域を効率よく駆動することができるようになる。尚、電流の向きは図5の電気回路図に記載した通りであり、加算すると0になるように向きを与えるものとする。
【0059】
そして、この実施例においてもモータ8から隔壁3方向に突出して設けられた4本の接続端子10A~10Dを分散して設けると共に、スイッチング素子18A~18Hを各接続端子10A~10Dに対応するかたちで、分散して隔壁3に設けているので、モータ8の各相や中性点への配線33U~33W、33Mの長さ(配線長)を等しい値、或いは、それに近い値とすることができるようになる。それにより、UVW各相、及び、中性点への配線におけるサージ電圧を等しくして、各スイッチング素子18A~18Hの損失/発熱を均一化することが可能となる。
【0060】
また、この実施例でもスイッチング素子18A~18Hを2個ずつ、各接続端子10A~10Dのそれぞれに対応させ、それらの近傍に位置して隔壁3に設けているので、スイッチング素子18A、18Dから接続端子10A、スイッチング素子18B、18Eから接続端子10B、スイッチング素子18C、18Fから接続端子10C、スイッチング素子18G、18Hから接続端子10Dへの配線長が短くなり、サージ電圧を一層低減することができるようになる。
【0061】
また、この実施例でも各接続端子10A、10B、10D、10Cを、モータ8の円周方向に等間隔で分散して設けているので、モータ8のUVW各相及び中性点への配線長(配線33U~33W、33Mの長さ)の均一化を円滑に図ることができるようになる。
【0062】
更に、スイッチング素子18A~18Hの配置に自由度が増すため、接続端子が10A~10Dの4本となり、スイッチング素子が18A~18Hの8個に増加した場合にも、ハウジング2の寸法を拡大すること無く、絶縁耐圧と冷却効率を満足した状態でそれらを配置することが可能となる。
【実施例0063】
次に、図8図10を参照して本発明のもう一つの他の実施例について説明する。尚、対象とする電動圧縮機1の構造は図1と同様であり、図1図7と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この実施例のインバータ16も4線インバータであるが、インバータ回路28は前述した実施例(実施例2)とは異なり、モータ8の中性点からダイオード36を介し、励磁コイル34を通って下アームスイッチング素子18Hのみ備えた構成とされている。
【0064】
即ち、この例では6個のスイッチング素子18A~18Fに加えて、もう一つのスイッチング素子18Hと、ダイオード36を備えている(図8)。即ち、この実施例のインバータ16のインバータ回路28は、計7個のスイッチング素子18A~18F、18Hから構成され、更にダイオード36を備えた構成とされている。この場合、7個目のスイッチング素子18Hのコレクタ電極は励磁コイル34に接続され、エミッタ電極は負側電源ライン32に接続されている。そして、励磁コイル34はダイオード36を介してモータ8の中性点に接続される。尚、ダイオード36は励磁コイル34の方向が順方向とされている。
【0065】
このように、この実施例のインバータ16は7個のスイッチング素子18A~18F、18Hとダイオード36を有しているので、接続端子についても前述した3本の接続端子10A~10Cに加えて、三つの接続端子10D、10E、10Fが設けられる。尚、各接続端子10D~10Fもバスバー5に取り付けられ、それらの一端はバスバー5を介して、モータ8に電気的に接続される。また、接続端子10D~10Fもバスバー5から突出し、隔壁3の同様の挿通孔15を通過(隔壁3を貫通)して、前述同様にプレスフィット端子等を介し、インバータ16の基板17に電気的に接続される。
【0066】
この実施例では、接続端子10Dは下アームスイッチング素子18Hのコレクタ電極と励磁コイル34の間の配線33Mの一部を構成し、接続端子10Eは励磁コイル34とダイオード36の間の配線33D1の一部を構成し、接続端子10Fはダイオード36とモータ8の中性点の間の配線33D2の一部を構成するかたちとなる。
【0067】
そして、この実施例の場合、各接続端子10A、10B、10F、10E、10D、10Cはモータ8の円周方向に分散して設けられる(図9)。そして、この実施例においても図9に示す如くU相のハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18Aと下アームスイッチング素子18Dが、接続端子10Aの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0068】
また、インバータ回路28のV相のハーフブリッジ回路19Vの上アームスイッチング素子18Bと下アームスイッチング素子18Eが、接続端子10Bの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。更に、インバータ回路28のW相のハーフブリッジ回路19Wの上アームスイッチング素子18Cと下アームスイッチング素子18Fが、接続端子10Cの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0069】
更にまた、インバータ回路28の7個目の下アームスイッチング素子18Hが、接続端子10Dの近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。また、ダイオード36は接続端子10Eと10Fの間でそれらの近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0070】
このように、この実施例においても、各スイッチング素子18A~18Fが、各接続端子10A~10Cのそれぞれに対応して2個ずつ分散して配置され、隔壁3に設けられる。また、各スイッチング素子18A~18F、18Hの端子部22とダイオード36の端子37は、各接続端子10A~10F側となった状態で基板17側に起立し、インバータ16の当該基板17に電気的に接続される。
【0071】
このようにして、この実施例においてもインバータ回路28を有するインバータ16は、接続端子10A~10Fやバスバー5を介してモータ8に給電する構成とされる。また、スイッチング素子18Hやダイオード36も隔壁3に絶縁及び/又は放熱用のシートを介して密着し、ハウジング2の隔壁3と熱交換関係とされ、隔壁3を介してモータ室4内に吸入された冷媒によって冷却され、スイッチング素子18Hやダイオード36自体は隔壁3を介して冷媒に放熱するかたちとなる。その他は、前述した実施例と同様である。
【0072】
次に、図10にこの実施例におけるインバータ16の制御部21の制御動作例を示す。この図において、cu、cv、cwは正規化したパルス幅指令値、vu、vv、vwはそれぞれモータ8のUVW各相に印加される電圧である。また、vmidはモータ8の中性点電圧である。更に、Iu、Iv、Iwはモータ8に流れる電流の一例である。
【0073】
この場合も制御部21は、インバータ回路28の各相のハーフブリッジ回路19U、19V、19Wのスイッチング素子18A~18Fをスイッチング(ON/OFF)することにより、三相の交流電圧vu、vv、vwをモータ8の各コイル9U、9V、9Wに印加する。一方、励磁コイル34を通った下アームスイッチング素子18Hは常時ONさせる。また、モータ8の電流の定義を流れ込む方向とすると、DC電流Imidとしては負の電流が流れる。その他は前記実施例2の場合と同様である。
【0074】
この実施例においてもモータ8から隔壁3方向に突出して設けられた6本の接続端子10A~10Fを分散して設けると共に、スイッチング素子18A~18F、18Hとダイオード36を各接続端子10A~10Fに対応するかたちで、分散して隔壁3に設けているので、モータ8の各相や中性点への配線33U~33W、33M、33D1、33D2の長さ(配線長)を等しい値、或いは、それに近い値とすることができるようになる。それにより、UVW各相、及び、中性点への配線におけるサージ電圧を等しくして、各スイッチング素子18A~18F、18H、ダイオード36の損失/発熱を均一化することが可能となる。
【0075】
また、この実施例でもスイッチング素子18A~18Fを2個ずつ、各接続端子10A~10Cのそれぞれに対応させ、それらの近傍に位置して隔壁3に設けると共に、スイッチング素子18Hを接続端子10Dに対応させ、その近傍に位置して隔壁3に設け、ダイオード36を接続端子10E、10Fに対応させ、それらの近傍に位置して隔壁3に設けているので、スイッチング素子18A、18Dから接続端子10A、スイッチング素子18B、18Eから接続端子10B、スイッチング素子18C、18Fから接続端子10C、スイッチング素子18Hから接続端子10D、ダイオード36から接続端子10E、10Fへの配線長が短くなり、サージ電圧を一層低減することができるようになる。
【0076】
また、スイッチング素子18A~18F、18H、ダイオード36の配置に自由度が増すため、接続端子が10A~10Fの6本となり、スイッチング素子が18A~18F、18Hの7個に増加し、ダイオード36が追加された場合にも、ハウジング2の寸法を拡大すること無く、絶縁耐圧と冷却効率を満足した状態でそれらを配置することが可能となる。
【実施例0077】
次に、図11図13を参照して本発明の更にもう一つの他の実施例について説明する。尚、対象とする電動圧縮機1の構造は図1と同様であり、図1図10と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この実施例のインバータ16は6線インバータであり、インバータ回路28はハーフブリッジ回路19U~19Wに加えて、UVWの各相に対応する更に3個のハーフブリッジ回路19U1、19V1、19W1を備えている(図11)。そして、モータ8の各相の中性点を束ねずに、各ハーフブリッジ回路19U~19Wと、各ハーフブリッジ回路19U1~19W1を、モータ8のコイル9U~9Wを挟んで対抗させる。
【0078】
この場合、各相のハーフブリッジ回路19U1~19W1も、それぞれ上アームスイッチング素子18A1~18C1と、下アームスイッチング素子18D1~18F1を個別に有している。また、各スイッチング素子18A1~18F1も、それぞれ逆並列に接続されたフライホイールダイオードを内蔵する。また、上アームスイッチング素子18A1~18C1のコレクタ電極は、直流電源29の正側電源ライン31に接続されている。一方、下アームスイッチング素子18D1~18F1のエミッタ電極は、直流電源29の負側電源ライン32に接続されている。
【0079】
そして、U相のハーフブリッジ回路19U1の上アームスイッチング素子18A1のエミッタ電極と下アームスイッチング素子18D1のコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のU相のコイル9Uの他端に接続されている。また、V相のハーフブリッジ回路19V1の上アームスイッチング素子18B1のエミッタ電極と下アームスイッチング素子18E1のコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のV相のコイル9Vの他端に接続されている。更に、W相のハーフブリッジ回路19W1の上アームスイッチング素子18C1のエミッタ電極と下アームスイッチング素子18F1のコレクタ電極が接続され、それらの接続点(アーム中点)はモータ8のW相のコイル9Wの他端に接続されている。
【0080】
このように、この実施例のインバータ16は合計12個のスイッチング素子18A~18F、18A1~18F1を有しているので、接続端子についても前述した3本の接続端子10A~10Cに加えて、更に3本の接続端子10D~10Fが設けられる(計6本)。尚、この接続端子10D~10Fもバスバー5に取り付けられ、それらの一端はバスバー5を介して、モータ8に電気的に接続される。また、接続端子10D~10Fもバスバー5から突出し、隔壁3の同様の挿通孔15を通過(隔壁3を貫通)して、前述同様にプレスフィット端子等を介し、インバータ16の基板17に電気的に接続される。
【0081】
この実施例では、接続端子10Dはハーフブリッジ回路19U1の上アームスイッチング素子18A1と下アームスイッチング素子18D1の接続点とモータ8のU相のコイル9Uの他端間の配線33U1の一部を構成する。また、接続端子10Eはハーフブリッジ回路19V1の上アームスイッチング素子18B1と下アームスイッチング素子18E1の接続点とモータ8のV相のコイル9Vの他端間の配線33V1の一部を構成する。更に、接続端子10Fはハーフブリッジ回路19W1の上アームスイッチング素子18C1と下アームスイッチング素子18F1の接続点とモータ8のW相のコイル9Wの他端間の配線33W1の一部を構成するかたちとなる。
【0082】
そして、この実施例の場合、各接続端子10A~10Fはモータ8の円周方向に等間隔(ハウジング2の軸を中心とする角度60°の間隔)で分散して設けられる(図12)。そして、この実施例においても図12に示す如くU相のハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18Aと下アームスイッチング素子18Dが、接続端子10Aの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0083】
また、インバータ回路28のV相のハーフブリッジ回路19Vの上アームスイッチング素子18Bと下アームスイッチング素子18Eが、接続端子10Bの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。更に、インバータ回路28のW相のハーフブリッジ回路19Wの上アームスイッチング素子18Cと下アームスイッチング素子18Fが、接続端子10Cの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0084】
更にまた、もう一つのU相のハーフブリッジ回路19U1の上アームスイッチング素子18A1と下アームスイッチング素子18D1が、接続端子10Dの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。また、もう一つのV相のハーフブリッジ回路19V1の上アームスイッチング素子18B1と下アームスイッチング素子18E1が、接続端子10Eの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。更に、もう一つのW相のハーフブリッジ回路19W1の上アームスイッチング素子18C1と下アームスイッチング素子18F1が、接続端子10Fの左右近傍に位置して隔壁3のインバータ収容部6側の面に熱交換関係で配置される。
【0085】
このように、この実施例においても、各スイッチング素子18A~18F、18A1~18F1が、各接続端子10A~10Fのそれぞれに対応して2個ずつ分散して配置され、隔壁3に設けられる。また、各スイッチング素子18A~18F、18A1~18F1の端子部22は、各接続端子10A~10F側となった状態で基板17側に起立し、インバータ16の当該基板17に電気的に接続される。
【0086】
このようにして、この実施例においてもインバータ回路28を有するインバータ16は、接続端子10A~10Fやバスバー5を介してモータ8に給電する構成とされる。また、各スイッチング素子18A1~18F1も隔壁3に絶縁及び/又は放熱用のシートを介して密着し、ハウジング2の隔壁3と熱交換関係とされ、隔壁3を介してモータ室4内に吸入された冷媒によって冷却され、各スイッチング素子18A1~18F1自体は隔壁3を介して冷媒に放熱するかたちとなる。その他は、前述した実施例と同様である。
【0087】
次に、図13にこの実施例におけるインバータ16の制御部21の制御動作例を示す。この図において、cu、cv、cwは正規化したパルス幅指令値、vu、vv、vwはそれぞれモータ8のUVW各相に印加される電圧である。また、Iu、Iv、Iwはモータ8に流れる電流の一例である。
【0088】
この場合も制御部21は、インバータ回路28の各相のハーフブリッジ回路19U、19V、19Wのスイッチング素子18A~18Fをスイッチング(ON/OFF)することにより、三相の交流電圧vu、vv、vwをモータ8の各コイル9U、9V、9Wに印加する。一方、各相のハーフブリッジ回路19U1、19V1、19W1の上アームスイッチング素子18A1~18C1の動作は、反転させて動作させる。即ち、ハーフブリッジ回路19Uの上アームスイッチング素子18AがONのときは、対抗するハーフブリッジ回路19U1の下アームスイッチング素子18D1をONさせる。
【0089】
そうすることで、モータ8のUVW各相のコイル9U~9Wに印加する電圧を、プラスマイナス2の範囲で印加することができるようになり、単純動作でも振幅で判断すると、2倍程度の電圧を印加することができるようになる。尚、最大で印加できる電圧は、1.5倍~2倍程度となる(具体的な数値は変調方式により変化する)。
【0090】
そして、この実施例においてもモータ8から隔壁3方向に突出して設けられた6本の接続端子10A~10Fを分散して設けると共に、スイッチング素子18A~18F、18A1~18F1を各接続端子10A~10Fに対応するかたちで、分散して隔壁3に設けているので、モータ8の各相への配線33U~33W、33U1~33W1の長さ(配線長)を等しい値、或いは、それに近い値とすることができるようになる。それにより、UVW各相への配線におけるサージ電圧を等しくして、各スイッチング素子18A~18F、18A1~18F1の損失/発熱を均一化することが可能となる。
【0091】
また、この実施例でもスイッチング素子18A~18F、18A1~18F1を2個ずつ、各接続端子10A~10Fのそれぞれに対応させ、それらの近傍に位置して隔壁3に設けているので、スイッチング素子18A、18Dから接続端子10A、スイッチング素子18B、18Eから接続端子10B、スイッチング素子18C、18Fから接続端子10C、スイッチング素子18A1、18D1から接続端子10D、スイッチング素子18B1、18E1から接続端子10E、スイッチング素子18C1、18F1から接続端子10Fへの配線長が短くなり、サージ電圧を一層低減することができるようになる。
【0092】
また、この実施例でも各接続端子10A~10Fを、モータ8の円周方向に等間隔で分散して設けているので、モータ8のUVW各相への配線長(配線33U~33W、33U1~33W1の長さ)の均一化を円滑に図ることができるようになる。
【0093】
更に、スイッチング素子18A~18F、18A1~18F1の配置に自由度が増すため、接続端子が10A~10Fの6本となり、スイッチング素子が18A~18F、18A1~18F1の12個に増加した場合にも、ハウジング2の寸法を拡大すること無く、絶縁耐圧と冷却効率を満足した状態でそれらを配置することが可能となる。それにより、図11のインバータ回路28のようなインバータ16を採用することができるようになり、電圧のワイドレンジ化にも円滑に対応することができるようになる。
【0094】
尚、実施例ではIGBTから成るスイッチング素子で説明したが、MOSFETでもよい。また、各実施例で示した具体的構成は、それらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 電動圧縮機
2 ハウジング
3 隔壁
4 モータ室
5 バスバー
6 インバータ収容部
7 圧縮機構
8 モータ
9 ステータ
10A~10F 接続端子
16 インバータ
17 基板
18A~18H、 18A1~18F1 スイッチング素子
19U、19U1 U相インバータ
19V、19V1 V相インバータ
19W、19W1 W相インバータ
21 制御部
28 インバータ回路
36 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13