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特開2024-3701立体構造形成能が高い光増感タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003701
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】立体構造形成能が高い光増感タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240105BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240105BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240105BHJP
   C12P 3/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/435 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103027
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(71)【出願人】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】竹本 研
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AA01
4B064BJ20
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA50
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 従来に比べ、短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質などを提供すること。
【解決手段】 配列番号9に示すアミノ酸配列を持つタンパク質、または配列番号9と90%以上の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質によって達成される。このとき、当該タンパク質と、細胞内シグナルタンパク質とを融合した融合タンパク質とすることが好ましい。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9に示すアミノ酸配列を持つタンパク質、または配列番号9と90%以上の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質と、細胞内シグナルタンパク質とを融合した融合タンパク質。
【請求項3】
配列番号8に示す塩基配列、配列番号9に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列、または配列番号8に示す塩基配列と80%以上の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質をコードする塩基配列。
【請求項4】
請求項1に記載のタンパク質を発現可能な形で含む光増感タンパク質発現用ベクター。
【請求項5】
請求項2に記載のタンパク質を発現可能な形で含む光増感タンパク質発現用ベクター。
【請求項6】
請求項3に記載の塩基配列が前記タンパク質を発現可能な形で含まれている光増感タンパク質発現用ベクター。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一つに記載の光増感タンパク質発現用ベクターを含む細胞。
【請求項8】
請求項1または2に記載のタンパク質を用いた光増感性の活性酸素産生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体構造形成能が高い光増感タンパク質などに関する。
【背景技術】
【0002】
キラーレッド(KillerRed)と称するタンパク質は、世界で初めて開発された光増感性を持つタンパク質である(非特許文献1)。KillerRedは2量体を形成するという欠点があり、融合相手の局在や機能を乱す事が知られていた。そこで、この点を改良するために、本発明者はKillerRedを単量体化し、スーパーノバ(SuperNova)と名付けて発表を行った(非特許文献2)。現在、SuperNovaは、細胞生物学や神経科学などの基礎研究分野で広く利用されるに至っている。
しかし、SuperNovaは37℃における立体構造形成速度が遅く、特に哺乳類細胞において、遺伝子発現から早期に実験を行うことに困難があった。また、融合相手の分子がターンオーバーの短い分子である場合には、SuperNovaの立体構造形成が行われる前に融合相手が分解されてしまい、実験を行うことが難しかった。このような問題を解決するための研究開発が行われている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bulina et al., A genetically encoded photosensitizer. Nat. Biotechnol. Vol. 24, No. 1, 95-99 (2006)
【非特許文献2】Kiwamu Takemoto et al., SuperNova, a monomeric photosensitizing fluorescent protein for chromophore-assisted light inactivation. Scientific Reports; doi: 10.1038/srep02629
【非特許文献3】Dmitry AG et al., Genetically encoded Red Photosensitizers with enhanced Phototoxicity. Int. Mol. Sci. 2020, 21, 8800; doi:10.3390/ijms21228800
【非特許文献4】Waldo GS et al. Nat. Biotechnol. 1999
【非特許文献5】Gorbachev DA et al. mnt. J. Mol. Sci. 2020
【非特許文献6】Bulina et al. Nat. Biotechnol. 2006
【非特許文献7】Rachline GM et al. mt. J. Mol. Sci. 2019
【非特許文献8】Regot S et al. Cell 2014
【非特許文献9】Stemmer WP et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献3に開示されたタンパク質は、SuperNovaに比べて、立体構造形成効率がわずかに改良されたに過ぎなかった。また、応用の点においても、ミトコンドリア破壊能を確認したに過ぎず、タンパク質分子に対する適用はなされておらず、更なる改良が求められていた。
そこで本発明者は引き続き、従来よりも短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質に関する研究を行った結果、本願発明を完成するに至った。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比べ、短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための発明に係るタンパク質は、配列番号9に示すアミノ酸配列を持つタンパク質、または配列番号9と90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上)の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質である。
配列番号9に示すアミノ酸配列を持つタンパク質は、本願明細書中において、HyperNovaと称されている。HyperNovaは、タンパク質として発現されてから短時間で光増感性を示す立体構造に折り畳まれる。このため、従来のSuperNovaでは困難であった実験(例えば、(1)哺乳類細胞において、遺伝子発現から早期に実施される実験や、(2)ターンオーバーの短い分子を融合相手とする分子に関する実験など)を実施できる。
上記発明において、上記タンパク質と、細胞内シグナルタンパク質とを融合した融合タンパク質であることが好ましい。
この発明によれば、融合タンパク質を発現させた後に、光照射を行うことにより、所定の細胞内シグナルを抑制(停止)させることで、その細胞内シグナルに関わる反応をより詳細に研究できる。 細胞内シグナルタンパク質としては、限定されるものではないが、例えばERK、JNK、MEKl、JNK1、Myc、Max、CREB、TCF(β-catenin)などが含まれる。
別の発明に係る光増感性の活性酸素産生方法は、上記タンパク質を用いることを特徴とする。
上記発明によれば、本発明のタンパク質を用いて、光増感性の活性酸素の産生量・速度などの評価を行える。
【0006】
別の発明に係る塩基配列は、配列番号8に示す塩基配列、配列番号9に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列、または配列番号8に示す塩基配列と80%以上(好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上)の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質をコードする塩基配列である。
この発明によれば、HyperNovaをコードする塩基配列を利用して、HyperNovaそのもの又は、HyperNovaと融合したタンパク質(光増感性のターゲットと成り得るタンパク質)をコードする塩基配列を提供できる。
別の発明に係る光増感タンパク質発現用ベクターは、配列番号9に示すアミノ酸配列を持つタンパク質、または配列番号9と90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上)の相同性を有し、かつ光増感性を持つタンパク質を発現可能な形で含むことを特徴とする。
また、別の発明に係る光増感タンパク質発現用ベクターは、上記融合タンパク質を発現可能な形で含むことを特徴とする。
【0007】
また、別の発明に係る光増感タンパク質発現用ベクターは、上記記載の塩基配列を発現可能な形で含むことを特徴とする。
上記発現用ベクターに関する発明によれば、光増感タンパク質又は光増感タンパク質を融合した融合タンパク質を発現させられる。なお、タンパク質発現用ベクターとしては、従来公知のもののいずれも使用することができる。
別の発明に係る細胞は、上記記載の光増感タンパク質発現用ベクターを含むことを特徴とする。
細胞としては、原核生物由来のもの(例えば、大腸菌など)、真核生物由来のもの(例えば、酵母細胞、哺乳類、昆虫など)が含まれる。
この発明によれば、光増感タンパク質が発現した状態で、光照射することにより、容易に各種実験を行える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりも短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質などを提供できる。本発明は、がん細胞に光増感剤を局在させた状態で光照射によってピンポイントにがん細胞を殺したり、局所的に新生血管を破壊することで加齢黄斑変性を治療する光線力学療法に応用できる。また、光でピンポイントにターゲット分子の機能を破壊するCALI法(Chromophore-assisted light inactivation法)に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】SuperNova/pQE80Lベクターのマップ図である。SuperNova遺伝子は、pQE80Lベクターのマルチプルクローニングサイト(MCS)中のBamHIサイトとKpnIサイトを利用して組み込まれている。
図2】SuperNovaにランダム変異を繰り返し導入し、蛍光発現を速く行えるタンパク質変異体を得るための流れを説明する図である。
図3】SuperNovaとSuperNova1.5の相対蛍光強度をIPTG誘導から2時間後と24時間後で比べた結果を示すグラフである。
図4】HypeNova(=SuperNova2.3)を取得するまでの変異導入スクリーニングサイクル中に得られた変異体を含むタンパク質の蛍光強度を調べた結果を示すグラフである。
図5】HyperNovaの励起スペクトル(ex spectra)と発光スペクトル(em spectra)を調べた結果を示すグラフである。励起スペクトルは、発光波長579nmで調べたときの結果を、発光スペクトルは、励起波長571nmで調べたときの結果をそれぞれ示した。
図6】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの蛍光強度を発現開始からの時間で調べた結果を示すグラフである。
図7】HyperNova/pRSETBベクターのマップ図である。HyperNova遺伝子は、pRSETBベクターのマルチプルクローニングサイト(MCS)中のBamHIサイトとEcoRIサイトを利用して組み込まれている。
図8】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの一重項酸素産生能(A)と、スーパーオキサイド産生能(B)を調べた結果を示すグラフである。GFPは、ネガティブコントロールである。
図9】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの大腸菌における細胞死誘導能を比較した結果を示すグラフである。mSEGFPは、ネガティブコントロールである。
図10】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの哺乳類細胞における細胞死誘導能を比較したデータである。(A)2MLS/HyperNovaの効果を調べた結果を示す顕微鏡写真図(試験前、光照射0時間、6時間及び12時間後)、(B)光照射後0時間~12時間目までの間にSuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaを導入した細胞のうち、生細胞数(%)を調べた結果を示すグラフである。mSEGFPは、ネガティブコントロールである。
図11】ERK2に対するCALI実験に関するデータである。(A)CALI法の概要を示す図、(B)CALI実験の結果を示す図であり、左側はCALI-(上側)及びCALI+(下側)の代表的な細胞の顕微鏡写真図(EGF添加後0min、4min、8minのもの)、右側はGFPの蛍光を相対的に比較した結果を示すグラフである。
図12】MEKlに対するCALI実験に関するデータである。(A)CALI法の概要を示す図、(B)CALI実験の結果を示す図であり、左側はCALI-(上側)及びCALI+(下側)の代表的な細胞の顕微鏡写真図(EGF添加後0min、5min、10minのもの)、右側はGFPの蛍光を相対的に比較した結果を示すグラフである。
図13】JNK1に対するCALI実験に関するデータである。(A)CALI法の概要を示す図、(B)CALI実験の結果を示す図であり、左側はCALI-(上側)及びCALI+(下側)の代表的な細胞の顕微鏡写真図(Anisomycin添加後0min、5min、10minのもの)、右側はGFPの蛍光を相対的に比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<試験方法及び試験結果>
1.SuperNova変異体の作成
SuperNova遺伝子をPCR法により増幅し、IPTGで発現誘導が可能な大腸菌用タンパク質発現ベクター(pQE-80Lベクター。キアゲン社製)のBamHI/KpnI部位にクローニングした。PCR実験条件は下記の通りであった。
(1)PCR条件1
Fowardプライマーとして、5'-CGGGATCCATGGGTTCAGAGGTCGGCCCC-3'(配列番号1)、Reverseプライマーとして、5'-GGGGTACCTTAATCCTCGTCGCTACCGAT-3'(配列番号2)を使用し、PCR酵素としてKOD-plus(TOYOBO社製)を用いた。
反応条件として、94℃にて2分間の熱処理後、「94℃,15秒間の変性、50℃,30秒間のアニーリング、68℃,60秒間の複製反応」を1サイクルとして、これを30サイクル行った後、68℃,5分間の反応を行った。
(2)Error-Prone PCR条件
Fowardプライマーとして、5'-AATAGATTCAATTGTGAGCG-3'(配列番号3)、Reverseプライマーとして、5'-AGAACGCTCGGTTGCCGCCG-3'(配列番号4)を使用し、使用キットとして、DiversifyTM PCR Random Mutagenesis Kit(タカラバイオ社製)を用いた。
反応条件として、94℃にて30秒間の熱処理後、「94℃,30秒間の変性、48℃,30秒間のアニーリング、68℃,60秒間の複製反応」を1サイクルとして、これを25サイクル行った後、68℃,1分間の反応を行った。
(3)PCR条件2
Fowardプライマーとして配列番号1のDNAを、Reverseプライマー、5'-GGAATTCTTAATCCTCGTCGCTACCGAT-3'(配列番号5)を使用し、PCR酵素として、KOD-plus(TOYOBO社製)を用いた。
反応条件として、上記「PCR条件1」と同じものを用いた。
【0011】
2.立体構造形成速度が速いSuperNova変異体のスクリーニング方法
(1)SuperNova/pQE80Lベクターの作製
まずSuperNova遺伝子をPCRにより増幅し、IPTGで発現誘導が可能な大腸菌用タンパク質発現ベクターであるpQE-80Lベクター(キアゲン社製)のBamHI/KpnIサイトにクローニングした。PCR条件は、「1.(1)PCR条件1」に従った。図1には、ベクターMAPを示した。
(2)SuperNova変異体のスクリーニング
次に、ベクター中のSuperNova遺伝子に対してError-Prone PCRを用いてランダムに遺伝子変異を導入後にDNAシャッフル法(非特許文献9)を施した後、pQE-80LベクターのBamHI/KpnIサイトにライゲーションし大腸菌BL21(DE3)を形質転換した後、メンプレンを敷いたアンピシリン含有LBプレート(LB(Amp)プレート:全40~50枚程度を使用)の上面に播種した。Error-Prone PCR条件は、「1.(2)Error-Prone PCR条件」に従った。またコントロールとしてSuperNova/pQE80Lベクターで大腸菌BL21(DE3)を形質転換したプレートも用意した。
播種の翌日に各プレート当たり800~1000個程度のコロニーが形成されたメンブレンを、それぞれIPTG含有プレートに移すことで、タンパク質の発現を誘導し、コントロールである野生型SuperNovaが蛍光をほとんど発していない発現誘導後2時間において、蛍光の強弱を確認した。初期には目視にて明確に蛍光が強いものを選び、これらのコロニーの蛍光強度をオリンパス製マクロ顕微鏡MVX-10と浜松ホトニクス製CCDカメラORCA-R2を用いて検出・定量化した。
図2には、上記スクリーニングの流れを示した。Error-Prone PCRから遺伝子配列決定までの変異スクリーニングを計4サイクル繰り返すことにより、野生型SuperNovaに比べて蛍光発現が極めて速く、SNRから8個の変異を有する変異体であるSuperNova 1.5の単離に成功した。このうち最も強度の強いコロニーを選択し、遺伝子配列を確認した。
【0012】
(3)SuperNova 1.5の取得と特性評価
図3には、SuperNovaとSuperNova 1.5の発現誘導2時間後と24時間後の蛍光強度を比べた結果を示した。IPTG誘導から2時間後には、SuperNova 1.5はSuperNovaに比べて、数百倍の相対蛍光強度を示した。IPTG誘導から24時間には、SuperNovaとSuperNova 1.5の蛍光強度がほぼ等しかったことから、SuperNova 1.5の蛍光量子収率が上昇したのではなく、立体構造形成速度が上昇した変異体であると示唆された。
下記には、SuperNova 1.5の塩基配列とアミノ酸配列をそれぞれ示した。
SuperNova 1.5の塩基配列(配列番号6):ATGGGTTCAGAGGTCGGCCCCGCCCTGTTCCAGAcCGACATGACCTTCAAAATCTTCATCGACGGCGAGGTtAACGGCCAGAAGTTCACCATCGTGGCCGACGGCAGCAGCAAGTTCCCCCACGGCGACTTCAACGTGCACGCCGTGTGCGAGACCGGCAAGCTGCCCATGAGCTGGAAGCCCATCTGCCACCTGATCCAGTACGGCGAGCCCTTCTTCGCCCGCTACCCCGACGGCATCAtCCATTTCGCCCAGGAGTGCTTCCCCGAGGGCCTGAGCATCGACCGCACCGTGCGCTTCGAGAACGACGGCACCATGACCAGCCACCACACCTACGAGCTGGACGgCACCTGCGTGGTGAGCCGCATCACCGTGAACTGCGACGGCTTCCAGCCCGACGGCCCCATCATGCGCGACCAGCTGGTGGACATCCTaCCCAGCGAGACCCgCATGcTCCCCtACGGCCCCAACGCCGTGCGCCAGACCGCCACCATCGGCTTCACCACCGCCGACGGCGGCAAGgTGATGGGCCACTTCGACAGCAAGATGACCTTCAACGGCAGCCGCGCCATCGAGATCCCCGGCCCACACTTCGTGACCATCATCACCAAGCAGACGAGGGACACTAGCGACAAGCGCGACCACGTGTGCCAGCGCGAGGTGGCCTACGCCCACAGCGTGCCCCGCATCACCAGCGCCATCGGTAGCGACGAGtATTAAであった。
アミノ酸配列(配列番号7):MGSEVGPALFQTDMTFKIFIDGEVNGQKFTIVADGSSKFPHGDFNVHAVCETGKLPMSWKPICHLIQYGEPFFARYPDGIIHFAQECFPEGLSIDRTVRFENDGTMTSHHTYELDGTCVVSRITVNCDGFQPDGPIMRDQLVDILPSETRMLPYGPNAVRQTATIGFTTADGGKVMGHFDSKMTFNGSRAIEIPGPHFVTIITKQTRDTSDKRDHVCQREVAYAHSVPRITSAIGSDEYであった。
SuperNova 1.5はSuperNovaに対し、アミノ酸置換変異として、S10T/S79I/D114G/H148R/F150L/H152Y/M173V/D237Yの8個の変異を有していた。また、サイレント変異として、V24V(GTG→GTT)とL145L(CTG→CTA)を有していた。
【0013】
(4)更に立体構造形成速度が高い変異体(HyperNova)の取得
他方、ferritinは蛍光タンパク質と融合すると、蛍光タンパク質の立体構造形成が困難になることが知られている。この性質を利用し、これまでに蛍光タンパク質の立体構造形成速度を向上させた変異体の取得が報告された(非特許文献4)。SuperNovaの立体構造はGFPに類似しているため、同様のスクリーニングが可能であると考えられた。そこで次に、より立体構造形成速度が高い変異体の取得を目指しferritinタンパク質とSuperNova 1.5の融合分子を作製し、この融合分子について、上記「1.SuperNova変異体の作成」と同様の変異導入スクリーニングを4サイクル行った。これにより遺伝子発現後2時間において、SuperNova 1.5と比較し約5倍の蛍光強度を示すSuperNova 2.3(=HyperNova)の取得に成功した。図4には、HyperNovaを取得するまでの変異導入スクリーニングサイクル中に得られた変異体(SuperNova 1.6~1.8)を含むタンパク質の蛍光強度を調べた結果を、図5には、精製したHyperNovaタンパク質の励起スペクトル(ex spectra)と発光スペクトル(em spectra)を調べた結果を、それぞれ示した。
【0014】
下記には、HyperNovaの塩基配列とアミノ酸配列をそれぞれ示した。
HyperNovaの塩基配列(配列番号8):ATGGGTTCgGAGGTCGGCCCCGCCCTGTTCCAGAcCGACATGACCTTCAAAATCTTCATCGACGGCGAGGTtAACGGCCAGAAGTTCACCATCGTGGCCGACGGCAGCAGCAAGTTCCCCCACGGCGACTTCAACGTGCACGCCGTGTGCGAGACCGGCAAGCTGCCCATGAGCTGGAAGCCCATCTGCCACCTGATCCAGTACGGCGAGCCCTTCTTCGCCCGCTACCCCGACGGCATCAtCCATTTCGCCCAGGAGTGCTTCCCCGAGGGCCTGAGCATCGACCGCACCGTGCGCTTCGAGAACGACGGCACCATGACCAGCCACCACACCTACGAGCTGGACGgCACCTGCGTGGTGAGCCGCATCACCGTGAACTGCGACGGCTTCCtGCCCGACGGCCCCATCATGCGCGACCAGCTGGTGGACATCCTaCCCAGCGAGACCCgCATacTCCCCtACGGCCCCAACGCCGTGCGCCAGACCGCCACCATCGGCTTCACCACCGCCGACGGCGGCAAGgTGATGGGCCACTTCGACAGCAAGATGACCTTCAACGGCAGCCGCGCCATCGAGATCCCCGGCCCACACTTCGTGACCATCATCACCgAGCAGACGAGGGACcCTAGCGACAAGCGCGACCACGTGTGCCAGCGCGAGGTGGCCTACGCCCACAGCGgGCCCCGCAaCACCAGCGCCATCGGTAGCGACGAGGATTAAであった。
【0015】
アミノ酸配列(配列番号9):MGSEVGPALFQTDMTFKIFIDGEVNGQKFTIVADGSSKFPHGDFNVHAVCETGKLPMSWKPICHLIQYGEPFFARYPDGIIHFAQECFPEGLSIDRTVRFENDGTMTSHHTYELDGTCVVSRITVNCDGFLPDGPIMRDQLVDILPSETRILPYGPNAVRQTATIGFTTADGGKVMGHFDSKMTFNGSRAIEIPGPHFVTIITEQTRDPSDKRDHVCQREVAYAHSGPRNTSAIGSDEDであった。
HyperNovaはSuperNovaに対してアミノ酸置換変異としてS10T/S79I/D114G/Q129L/H148R/M149I/F150L/H152Y/M173V/K202E/T207P/V225G/I228Nの13個の変異を有していた。また、サイレント変異として、S1”S(TCA→TCG)、V24V(GTG→GTT)、L145L(CTG→CTA)を有していた。なお、1”というアミノ酸番号は、非特許文献2の記載方法に整合させたものである。
【0016】
3.変異体の応用性の確認試験
(1)大腸菌における37℃でのタンパク質の立体構造形成速度比較
pQE-80L発現ベクターにクローニングしたHyperNova、SuperNova及び既知のSuperNova変異体(SuperNova-S10R:非特許文献5)を用いて大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、メンブレンを敷いたLB(Amp)プレート上に播種した。大腸菌がコロニーを形成後、メンブレンをIPTG含有LBプレートに移し、各タンパク質の発現を誘導した。発現開始後の蛍光強度を計測し、fittingにより最大蛍光強度を予測し、これを100%と換算した。
結果を図6に示した。SuperNova及びSuperNova-S10Rに比べ、HyperNovaは蛍光強度の立ち上がりが早いことから、タンパク質の折りたたみ速度(立体構造形成速度)が速いことが分かった。
(2)in vitroにおける活性酸素産生能の比較
HyperNova遺伝子をPCR法により増幅し、pRSETBベクター(Invitrogen社製)のBamHI/EcoRIサイトにクローニングした。PCR条件は「1.(3)PCR条件2」に従った。図7には、HyperNova/pRSETBベクターのMAPを示した。
同様な方法でSuperNovaとSuperNova-S10Rをクローニングした。各タンパク質を組み込んだベクターを用いて大腸菌JM109(DE3)を形質転換後、液体培地LB(Amp)に移植し、18℃で6日間培養した。培養後のサンプルを超音波破砕機にかけ、Ni-NTAカラムと脱塩カラムNAP-5を用いて精製タンパク質を得た。精製タンパク質の活性酸素産生は、一重項酸素指示薬ADPA及びスーパーオキサイド指示薬DHEを用いて測定した。光照射条件は0.43W/cm2・1分間とした。
一重項酸素(Singlet Oxygen)産生能及びスーパーオキサイド(Superoxide)産生能を調べた結果を図8に示した。本実験では18℃という低温で大腸菌を培養しており、SuperNovaを含む3種類のタンパク質は、いずれも十分に立体構造が形成されている条件である。本条件下において、HyperNovaはSuperNovaに比べ、約1.5倍の一重項酸素産生能があることが分かった。
【0017】
(3)大腸菌における細胞死誘導能の比較
次に、大腸菌に本実施形態の光増感タンパク質を発現させた状態で光照射により活性酸素を産生させ、細胞死を誘導できるかどうかを評価した。評価には、既知の系(非特許文献6)を用いた。
HyperNova、SuperNova及びSuperNova-S10R遺伝子をクローニングしたpRSETbベクターを用いて大腸菌JM109(DE3)を形質転換後、コロニーを形成した。37℃にて培養中のコロニーをピックアップし、18時間程度培養後に細胞懸濁液を作製し、CALIを実施した。光照射条件は0.48W/cm2・1分間とした。光照射後に一部をLP(Amp)プレート上に播種し、翌日コロニー数をカウントし、光未照射を陰性対照として形成率(%)を計算した。
結果を図9に示した。HyperNovaは他のタンパク質に比べると、37℃での大腸菌の細胞死誘導能、すなわちCALI効率が有意に(p<0.05)極めて高いことが分かった。
【0018】
(4)哺乳類細胞における細胞死誘導能の比較
2MLS/pcDNA3ベクターはミトコンドリア局在シグナルを2個タンデムに含む発現ベクターである。HyperNova、SuperNova及びSuperNova-S10R遺伝子をPCRで増幅した後、2MLS/pcDNA3ベクターにクローニングした。各ベクターを精製後、ガラスボトム・ディッシュにて培養したHeLa細胞に対し、fugene6試薬(プロメガ社製)を用いてそれぞれ遺伝子導入し、24時間後に光照射を行い、ミトコンドリア破壊に伴う細胞死誘導能の解析を行った。光照射はオリンパス顕微鏡IX83に水銀ランプ光源と蛍光フィルターセットU-FMCHE(オリンパス)により、6.7W/cm2、90秒の条件にて行った。
結果を図10に示した。光照射後12時間の時点において、mSEGFP(コントロール)、SuperNova及びSuperNova-S10Rは、いずれもCALI効率が10%程度であった一方、HyperNovaのCALI効率は70%以上であった。このように、HyperNovaは他に比べ、37℃における細胞死誘導能、すなわちCALI効率が極めて高いことが分かった。
【0019】
(5)細胞内シグナル分子ERK2に対するCALI法の開発
ERK2はMAPKの一種であり、細胞増殖や細胞移動など多岐にわたり重要な分子である。そこで、ERK2のCALI法の開発を行った。ERK2は活性化すると核に移行することが知られている(非特許文献7)。CALIの効果はERKの核移行をGFPでモニターすることで評価した。
図11(A)には、CALI法の概要を示した。GFP-ERK2-HyperNova融合遺伝子をpcDNA3ベクターにクローニングし、ERK2の活性化をGFPで観察しつつHyperNovaでERK2のCALIを行う系を構築した。そのため、まずHyperNova、ヒトERK2遺伝子、GFP遺伝子のそれぞれをPCR法で増幅し、各遺伝子をタンデムに融合しpcDNA3ベクターにクローニングし、GFP-ERK2-HyperNova/pcDNA3ベクターを構築した。このベクター1μgを、ガラスボトム・ディッシュに培養したHeLa細胞に対し、fugene6試薬(プロメガ社製)を用いて遺伝子導入し、48時間後に光照射を行い、ERK2のCALI実験を行った。
ERK2の活性化はEGF(Invitrogen)の添加により誘導した。光照射はオリンパス顕微鏡IX83に水銀ランプ光源と蛍光フィルターセットU-FMCHE(オリンパス社製)により、6.7W/cm2、90秒間にて行った。
結果を図11(B)に示した。左側の顕微鏡写真を見ると、CALI-(上段)では核内にGFPの蛍光が観察される一方、CALI+(下段)では核内のGFPの蛍光は顕著に少なかった。右側のグラフを見ると、光照射依存的にERK2の不活性化を誘導できることが分かった。
【0020】
(6)細胞内シグナル分子MEKlに対するCALI法の開発
MEKlはMAPKKと呼ばれる細胞内リン酸化酵素であり、ERKのリン酸化と活性化を行う分子である。そこで、MEKlのCALI法の開発を行った。CALIの効果はMEKlの下流であるERKの活性をERK-KTR指示薬(非特許文献8)を用いて、光照射前後を比較することで解析した。
図12(A)には、MEKlに対するCALI法の概要を示した。HyperNovaとヒトMEKl遺伝子をそれぞれPCR法で増幅し、MEKl-HyperNova融合遺伝子をpcDNA3ベクターにクローニングした。次に、ERK-KTR-GFP/pcDNA3ベクターとMEKl-HyperNova/pcDNA3ベクターを1:3で混合したDNA1μgを、ガラスボトム・ディッシュに培養したCOS7細胞に対し、fugene6試薬(プロメガ社製)を用いて遺伝子導入し、48時間後に光照射を行い、MEKlのCALI実験を行った。MEKlの活性化はEGF(Invitrogen社製)の添加により誘導した。光照射はオリンパス顕微鏡IX83に水銀ランプ光源と蛍光フィルターセットU-FMCHE(オリンパス社製)により、7.9W/cm2、60秒間にて行った。
図12(B)に示す通り、光照射依存的にMEKlの不活性化を誘導できることが分かった。
【0021】
(7)細胞内シグナル分子JNK1に対するCALI法の開発
JNK1はMAPKの一種であり、発生現象やストレス応答に重要である。そこで、JNK1のCALI法の開発を行った。CALIの効果はJNK-KTR指示薬(非特許文献8)を用いて、光照射前後を比較することで解析した。
図13(A)には、JNK1に対するCALI法の概要を示した。HyperNovaとヒトJNK1遺伝子をそれぞれPCR法で増幅し、JNK1-HyperNova融合遺伝子をpcDNA3ベクターにクローニングした。次に、JNK-KTR-GFP/pcDNA3ベクターとJNK1-HyperNova/pcDNA3ベクターを1:3で混合したDNA1μgを、ガラスボトム・ディッシュに培養したHeLa細胞に対し、fugene6試薬(プロメガ社製)を用いて遺伝子導入し、48時間後に光照射を行い、JNK1のCALI実験を行った。JNK1の活性化はアニソマイシン(WAKO社製)を用いて行った。光照射はオリンパス顕微鏡IX83に水銀ランプ光源と蛍光フィルターセットU-FMCHE(オリンパス社製)により、7.9W/cm2、60秒間にて行った。
図13(B)に示す通り、光照射依存的にJNK1の不活性化を誘導できることが分かった。
【0022】
このように本実施形態によれば、HyperNovaを用いて生細胞にてCALI実験を行ったところ、SuperNovaでは困難であった遺伝子導入早期におけるCALI実験が初めて可能になった。またHyperNovaを各種の重要な細胞内シグナル(例えば、ERK、JNK、MEKl、JNK1など)に対して適用することで、各分子を光操作することに世界で初めて成功した。
こうして、本実施形態によれば、従来よりも短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質などを提供できた。HyperNovaは、がん細胞に光増感剤を局在させた状態で光照射によってピンポイントにがん細胞を殺したり、局所的に新生血管を破壊することで加齢黄斑変性を治療する光線力学療法に応用できる。また、複数の細胞シグナルを用いて、光でピンポイントにターゲット分子の機能を破壊するCALI法を実施できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024003701000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
図1】SuperNova/pQE80Lベクターのマップ図である。SuperNova遺伝子は、pQE80Lベクターのマルチプルクローニングサイト(MCS)中のBamHIサイトとKpnIサイトを利用して組み込まれている。
図2】SuperNovaにランダム変異を繰り返し導入し、蛍光発現を速く行えるタンパク質変異体を得るための流れを説明する図である。
図3】SuperNovaとSuperNova1.5の相対蛍光強度をIPTG誘導から2時間後と24時間後で比べた結果を示すグラフである。
図4】HypeNova(=SuperNova2.3)を取得するまでの変異導入スクリーニングサイクル中に得られた変異体を含むタンパク質の蛍光強度を調べた結果を示すグラフである。
図5】HyperNovaの励起スペクトル(ex spectra)と発光スペクトル(em spectra)を調べた結果を示すグラフである。励起スペクトルは、発光波長579nmで調べたときの結果を、発光スペクトルは、励起波長571nmで調べたときの結果をそれぞれ示した。
図6】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの蛍光強度を発現開始からの時間で調べた結果を示すグラフである。
図7】HyperNova/pRSETBベクターのマップ図である。HyperNova遺伝子は、pRSETBベクターのマルチプルクローニングサイト(MCS)中のBamHIサイトとEcoRIサイトを利用して組み込まれている。
図8】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの一重項酸素産生能(A)と、スーパーオキサイド産生能(B)を調べた結果を示すグラフである。GFPは、ネガティブコントロールである。
図9】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの大腸菌における細胞死誘導能を比較した結果を示すグラフである。mSEGFPは、ネガティブコントロールである。
図10】SuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaの哺乳類細胞における細胞死誘導能を比較したデータである。(A)2MLS/HyperNovaの効果を調べた結果を示す顕微鏡写真図(試験前、光照射0時間、6時間及び12時間後)、(B)光照射後0時間~12時間目までの間にSuperNova、SuperNova-S10R及びHyperNovaを導入した細胞のうち、生細胞数(%)を調べた結果を示すグラフである。mSEGFPは、ネガティブコントロールである。
図11】ERK2に対するCALI実験に関するデータである。(A)CALI法の概要を示す図、(B)CALI実験の結果を示す図であり、左側はCALI-(上側)及びCALI+(下側)の代表的な細胞の顕微鏡写真図(EGF添加後0min、4min、8minのもの)、右側はGFPの蛍光を相対的に比較した結果を示すグラフである。
図12JNK1に対するCALI実験に関するデータである。(A)CALI法の概要を示す図、(B)CALI実験の結果を示す図であり、左側はCALI-(上側)及びCALI+(下側)の代表的な細胞の顕微鏡写真図(Anisomycin添加後0min、5min、10minのもの)、右側はGFPの蛍光を相対的に比較した結果を示すグラフである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
(7)細胞内シグナル分子JNK1に対するCALI法の開発
JNK1はMAPKの一種であり、発生現象やストレス応答に重要である。そこで、JNK1のCALI法の開発を行った。CALIの効果はJNK-KTR指示薬(非特許文献8)を用いて、光照射前後を比較することで解析した。
図12(A)には、JNK1に対するCALI法の概要を示した。HyperNovaとヒトJNK1遺伝子をそれぞれPCR法で増幅し、JNK1-HyperNova融合遺伝子をpcDNA3ベクターにクローニングした。次に、JNK-KTR-GFP/pcDNA3ベクターとJNK1-HyperNova/pcDNA3ベクターを1:3で混合したDNA1μgを、ガラスボトム・ディッシュに培養したHeLa細胞に対し、fugene6試薬(プロメガ社製)を用いて遺伝子導入し、48時間後に光照射を行い、JNK1のCALI実験を行った。JNK1の活性化はアニソマイシン(WAKO社製)を用いて行った。光照射はオリンパス顕微鏡IX83に水銀ランプ光源と蛍光フィルターセットU-FMCHE(オリンパス社製)により、7.9W/cm2、60秒間にて行った。
図12(B)に示す通り、光照射依存的にJNK1の不活性化を誘導できることが分かった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
このように本実施形態によれば、HyperNovaを用いて生細胞にてCALI実験を行ったところ、SuperNovaでは困難であった遺伝子導入早期におけるCALI実験が初めて可能になった。またHyperNovaを各種の重要な細胞内シグナル(例えば、ERK、JNKなど)に対して適用することで、各分子を光操作することに世界で初めて成功した。
こうして、本実施形態によれば、従来よりも短時間で立体構造を形成する光増感タンパク質などを提供できた。HyperNovaは、がん細胞に光増感剤を局在させた状態で光照射によってピンポイントにがん細胞を殺したり、局所的に新生血管を破壊することで加齢黄斑変性を治療する光線力学療法に応用できる。また、複数の細胞シグナルを用いて、光でピンポイントにターゲット分子の機能を破壊するCALI法を実施できた。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正の内容】
図12
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】削除
【補正の内容】