(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037033
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】X線厚さ計
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20240311BHJP
G01N 23/02 20060101ALI20240311BHJP
G01N 23/20 20180101ALI20240311BHJP
【FI】
G01B15/02 A
G01N23/02
G01N23/20 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141660
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】小林 章宏
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067BB01
2F067CC05
2F067DD02
2F067EE04
2F067EE11
2F067FF03
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067LL02
2F067RR12
2F067RR24
2F067RR27
2G001AA01
2G001BA11
2G001BA14
2G001CA01
2G001FA08
2G001KA11
(57)【要約】
【課題】被測定板の厚さの測定精度を高くすることができるX線厚さ計を提供すること。
【解決手段】X線厚さ計は、X線を出射するX線源と、前記X線源を収容するケースと、前記X線源からのX線を前記ケース外に位置する被測定板に向けて透過させる窓とを有するX線発生器と、前記被測定板を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器の検出信号を、検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する処理装置と、を備え、前記X線発生器は、前記窓に付着した付着物で反射したX線を検出する補助検出器を前記ケース内に有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出射するX線源と、前記X線源を収容するケースと、前記X線源からのX線を前記ケース外に位置する被測定板に向けて透過させる窓とを有するX線発生器と、
前記被測定板を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器の検出信号を、検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する処理装置と、
を備え、
前記X線発生器は、前記窓に付着した付着物で反射したX線を検出する補助検出器を前記ケース内に有するX線厚さ計。
【請求項2】
前記X線発生器は、前記ケース内に補助X線源をさらに有し、
前記補助検出器は、前記補助X線源から出射し、前記窓に付着した付着物で反射したX線を検出可能な位置に配置される請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項3】
複数の前記補助検出器が、平面視において前記窓を挟む位置に配置される請求項2に記載のX線厚さ計。
【請求項4】
前記補助X線源の出力は、前記X線源の出力よりも低い請求項2または3に記載のX線厚さ計。
【請求項5】
前記補助検出器は平面視における前記窓の周囲を回転移動され、前記補助検出器の位置と対応づけられた前記補助検出器の検出信号により、前記窓に付着した付着物を検出する請求項1に記載のX線厚さ計。
【請求項6】
前記窓は回転され、前記窓の回転角と対応づけられた前記補助検出器の検出信号により、前記窓に付着した付着物を検出する請求項1に記載のX線厚さ計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、X線厚さ計に関する。
【背景技術】
【0002】
X線厚さ計は、例えば鋼板等の被測定板を透過するX線の透過線量(透過したX線の減衰量)が、被測定板の厚さに応じて変化することを利用して、被測定板の厚さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線発生器はケースに納められており、ケースにはX線が透過する窓がついている。この窓に汚れが付着すると、被測定板に照射するX線量が減少し、被測定板の厚さの測定精度に誤差が生じ得る。測定開始前に校正を行うことで窓に付いた汚れによる誤差を取り除くことはできるが、被測定板の厚さの測定開始後に窓に汚れが付着した場合には、汚れが付着したことを検出することができないため、被測定板の厚さの測定に誤差が生じてしまう。
実施形態は、被測定板の厚さの測定精度を高くすることができるX線厚さ計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、X線厚さ計は、X線を出射するX線源と、前記X線源を収容するケースと、前記X線源からのX線を前記ケース外に位置する被測定板に向けて透過させる窓とを有するX線発生器と、前記被測定板を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器の検出信号を、検量線テーブルに基づいて前記被測定板の厚さに換算する処理装置と、を備え、前記X線発生器は、前記窓に付着した付着物で反射したX線を検出する補助検出器を前記ケース内に有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】各実施形態のX線厚さ計の構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態のX線発生器の構成を示す模式図である。
【
図3】第2実施形態のX線発生器の構成を示す模式図である。
【
図4】(a)は第3実施形態における補助検出器を説明するための模式図であり、(b)は第4実施形態における窓を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
図1に示すように、各実施形態のX線厚さ計は、X線発生器10と、検出器20と、処理装置30と、記憶装置40とを備える。
図1において各構成をつなぐ線は、各構成を接続する信号線を表す。信号線は、有線でも無線でもよい。
【0009】
図2に示すように、第1実施形態のX線発生器10は、X線を出射するX線源11と、X線源11を収容するケース12とを有する。X線源11は、例えば、X線管(乾球)内の放電によりX線を発生する。ケース12は、X線に対して遮蔽性を有する材料からなり、例えば、ステンレスからなる。ケース12の天板14には、X線源11からのX線50をケース12外に位置する被測定板100に向けて透過させる窓13が形成されている。窓13は、X線に対して透過性を有する材料からなり、例えば、ベリリウムからなる。
【0010】
図1に示すように、X線発生器10の窓13を透過したX線は、被測定板100に照射される。被測定板100は、例えば、鉄やアルミニウムなどを主成分する金属板である。
【0011】
検出器20は、被測定板100を透過したX線を検出する。検出器20は、検出したX線量に応じた検出信号を処理装置30に出力する。検出信号は、例えば、電流である。
【0012】
記憶装置40には、検量線テーブルが格納されている。検量線テーブルは、予め取得された被測定板100の材質ごとの検出器20の検出信号と被測定板100の厚さとの関係を表す。また、記憶装置40には、後述する統計雑音のデータや校正式も格納される。
【0013】
処理装置30は、検出器20からの検出信号の入力を受け、検出器20からの検出信号を、記憶装置40から読み出した検量線テーブルに基づいて、被測定板100の厚さに換算する。また、処理装置30は、X線発生器10の動作を制御する。
【0014】
本実施形態によれば、
図2に示すように、X線発生器10は、窓13に付着した付着物70で反射したX線60を検出する補助検出器15をケース12内にさらに有する。
【0015】
窓13におけるケース12の外側に露出する外面にゴミ等の付着物70が付着した場合、X線源11からのX線50が付着物70に当たり乱反射したX線60を補助検出器15で検出することができる。例えば、予め窓13に付着物70が付着していな状態で一定時間補助検出器15の出力変動を記録し、統計雑音を取得する。そして、被測定板100の厚さの測定中において、補助検出器15の出力が予め取得しておいた統計雑音を越えた場合に、窓13に汚れ等の付着物70が付着したと検知することができる。
【0016】
窓13に付く付着物によって検出器20の検出信号がどれくらい変動するのかを予めいくつかデータを取得しておき、校正式を作成しておく。そして、被測定板100の厚さの測定中において窓13に付着物70の付着が検知された場合には、処理装置30は上記校正式によって補正して被測定板100の厚さを算出する。これにより、窓13に付着した付着物70による測定誤差の影響を低減し、被測定板100の厚さの測定精度を高くすることができる。
【0017】
図3(a)に示すように、第2実施形態のX線発生器10は、第1実施形態の構成に加えて、ケース12内に補助X線源16をさらに有する。補助X線源16は、窓13に向けてX線51を出射する。被測定板100の厚さ測定に使うX線源11からのX線50は、窓13の窓面(内面及び外面)に対して垂直に入射するのに対して、補助X線源16からのX線51は、窓13の窓面に対して斜め方向から入射する。
【0018】
窓13の外面に付着物70が付着した場合、補助X線源16から窓13に照射したX線51が付着物70に当たり反射したX線60を補助検出器15で検出する。補助検出器15は、補助X線源16から出射し、窓13に付着した付着物70で反射したX線60を検出可能な位置に配置される。
【0019】
第2実施形態においても、予め窓13に付着物70が付着していな状態で一定時間補助検出器15の出力変動を記録し、統計雑音を取得する。そして、被測定板100の厚さの測定中において、補助検出器15の出力が予め取得しておいた統計雑音を越えた場合に、窓13に汚れ等の付着物70が付着したと検知することができる。
【0020】
また、第2実施形態においては、X線源11及び補助X線源16の両方からX線を出射した状態において、窓13に付く付着物によって検出器20の検出信号がどれくらい変動するのかを予めいくつかデータを取得しておき、校正式を作成しておく。そして、被測定板100の厚さの測定中において窓13に付着物70の付着が検知された場合には、処理装置30は上記校正式によって補正して被測定板100の厚さを算出する。これにより、窓13に付着した付着物70による測定誤差の影響を低減し、被測定板100の厚さの測定精度を高くすることができる。
【0021】
被測定板100の測定に用いられない補助X線源16が出射するX線のケース12外への漏れを抑制するため、補助X線源16の出力は、X線源11の出力よりも低いことが好ましい。
【0022】
窓面における付着物70の付着位置と補助検出器15との位置関係によっては、付着物70の検出感度に偏りが生じ得る。そのため、
図3(b)に示すように、補助検出器15は複数設けることが好ましい。複数の補助検出器15が、窓13の窓面を見た平面視において、窓13を挟む位置に配置される。
図3(b)に示す例では、窓面は円形状に形成され、4つの補助検出器15が窓面の中心のまわりに90°間隔で配置されている。複数の補助検出器15を設けることで、窓面全体における付着物70の検出感度を向上させることができる。複数の補助検出器15を設けた形態は、X線源11を付着物70の検出に用いる場合と、補助X線源16を付着物70の検出に用いる場合のどちらの場合にも適用できる。
【0023】
補助X線源16を設けた場合には、複数の補助検出器15に対応して複数の補助X線源16を設けることが好ましい。
図3(b)に示す例では、平面視において、窓13の左方に位置する補助X線源16からのX線は、窓13の右方に位置する補助検出器15で検出可能である。窓13の右方に位置する補助X線源16からのX線は、窓13の左方に位置する補助検出器15で検出可能である。窓13の上方に位置する補助X線源16からのX線は、窓13の下方に位置する補助検出器15で検出可能である。窓13の下方に位置する補助X線源16からのX線は、窓13の上方に位置する補助検出器15で検出可能である。
【0024】
図4(a)に示す第3実施形態によれば、補助検出器15は平面視における窓13の周囲を回転移動され、補助検出器15の位置と対応づけられた補助検出器15の検出信号により、窓13に付着した付着物を検出する。これにより、窓面全体における付着物70の検出感度を向上させることができる。
【0025】
例えば、窓13に付着物70が付着していな状態で一定時間補助検出器15を回転移動させながら補助検出器15の出力変動を記録し、統計雑音を取得する。この統計雑音を取得する際に、補助検出器15の回転移動の回転角(回転移動経路上における補助検出器15の位置に対応)も同時に記録し、回転角毎に統計雑音を取得する。上記統計雑音から窓面の材質と形状の不均一による影響を排除した付着物70の検出を行える。また、補助検出器15の感度の高い領域を移動させることにより、付着物70の検出感度を向上させることが可能となる。
【0026】
図4(b)に示す第4実施形態によれば、静止している補助検出器15に対して窓13が回転される。例えば円形状の窓13の中心が回転中心となる。そして、窓13の回転角と対応づけられた補助検出器15の検出信号により、窓13に付着した付着物を検出する。これにより、窓面全体における付着物70の検出感度を向上させることができる。
【0027】
例えば、窓13に付着物70が付着していな状態で一定時間窓13を回転移動させながら補助検出器15の出力変動を記録し、統計雑音を取得する。この統計雑音を取得する際に、窓13の回転角も同時に記録し、回転角毎に統計雑音を取得する。上記統計雑音から窓面の材質と形状の不均一による影響を排除した付着物70の検出を行える。また、窓13の回転により、補助検出器15の感度の高い領域に付着物70を移動させることができ、付着物70の検出感度を向上させることが可能となる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10…X線発生器、11…X線源、12…ケース、13…窓、14…天板、15…補助検出器、16…補助X線源、20…検出器、30…処理装置、40…記憶装置、100…被測定板