(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037051
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/18 20060101AFI20240311BHJP
B01L 3/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B65D41/18
B01L3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141690
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大久保 春男
【テーマコード(参考)】
3E084
4G057
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084AB10
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084FC09
3E084GA08
3E084GB12
3E084HA01
3E084HB09
3E084HC03
3E084HD01
3E084LD01
3E084LD30
4G057AB08
(57)【要約】
【課題】簡単かつ迅速に開閉できる容器を提供する。
【解決手段】容器(1)は、筒状本体(2)と、筒状本体(2)に着脱自在な蓋体(4)とを備える。筒状本体(2)と蓋体(4)とが、任意の位相で軸芯方向(L)に沿う相対近接移動によって取り付けられると同時に抜止状態となり、かつ、特定位相で抜止状態が解除されて軸芯方向(L)に沿う相対離隔移動によって離脱可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状本体と、前記筒状本体に着脱自在な蓋体と、を備える容器であって、
前記筒状本体と前記蓋体とが、任意の位相で前記筒状本体の軸芯方向に沿う相対近接移動によって取り付けられると同時に抜止状態となり、かつ、特定位相で前記抜止状態が解除されて前記軸芯方向に沿う相対離隔移動によって離脱可能となる、容器。
【請求項2】
前記蓋体は、周壁部から内向きに突出する内向き突起を有し、
前記筒状本体は、外周面に全周に亘って形成されて前記抜止状態で前記内向き突起が収納される周溝を有するとともに、前記周溝の一部に周方向に沿って深さが次第に浅くなるように突出形成されたスロープ状突出部を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記筒状本体は、前記スロープ状突出部が設けられた周方向の位置における前記蓋体の側に、前記蓋体を取り付ける際に前記内向き突起と接触した場合に前記筒状本体と前記蓋体とを相対回転させる回転誘導部をさらに有する、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記内向き突起が、前記筒状本体の側を向く下向き三角形状に形成されているとともに、
前記回転誘導部が、前記蓋体の側を向く上向き三角形状に形成されている、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記周壁部における前記内向き突起が設けられた位置の周方向の両側に、前記軸芯方向に沿って延びるスリットが形成されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記抜止状態で前記筒状本体の上端部と前記蓋体の天面部との間に密接する弾性体をさらに備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば生化学分野や医薬分野の研究開発等において、各種の試料を収納及び保管するために容器(試料容器)が使用される。通常、容器は、筒状本体とそれに着脱自在な蓋体とを備えて構成され、そのような容器の一例が国際公開第2009/150881号(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の容器では、筒状本体(収納管110及び不透明書き込み外装体120)と蓋体(蓋体130)との着脱自在な構造は、筒状本体の外面に設けられた雄ネジと蓋体の周壁部の内面に設けられた雌ネジとの螺合構造によって実現されている。このようなスクリュー式の容器は、高い密封性を容易に得られることから、広く使用されている。
【0004】
スクリュー式の容器は、筒状本体に対して蓋体をクルクルと回すことで開閉することができ、その操作自体に困難性はない。しかし、例えば生化学分野や医薬分野の研究開発等では、比較対照実験のために条件を少しずつ変えた多数の試料を扱うことも多い。このような場合に、多数の試料を1つずつスクリュー式の容器から出し入れするのは、全体として多くの時間と手間を要するものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
簡単かつ迅速に開閉できる容器の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る容器は、
筒状本体と、前記筒状本体に着脱自在な蓋体と、を備える容器であって、
前記筒状本体と前記蓋体とが、任意の位相で前記筒状本体の軸芯方向に沿う相対近接移動によって取り付けられると同時に抜止状態となり、かつ、特定位相で前記抜止状態が解除されて前記軸芯方向に沿う相対離隔移動によって離脱可能となる。
【0008】
この構成によれば、筒状本体に対して蓋体を軸芯方向に沿って近接移動させるだけで極めて簡単に閉蓋できる。時間もほとんどかからない。蓋体を取り外したいときには、蓋体を特定位相となるまで回転させ、その後、軸芯方向に沿って離隔移動させるだけで簡単に開蓋できる。従って、簡単かつ迅速に開閉できる容器を提供することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記蓋体は、周壁部から内向きに突出する内向き突起を有し、
前記筒状本体は、外周面に全周に亘って形成されて前記抜止状態で前記内向き突起が収納される周溝を有するとともに、前記周溝の一部に周方向に沿って深さが次第に浅くなるように突出形成されたスロープ状突出部を有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、蓋体の周壁部に設けられた内向き突起が筒状本体の周溝に収まることで、蓋体が適切に抜け止めされる。また、その状態で蓋体を回転させると、内向き突起が次第にスロープ状突出部に乗り上げて周溝から脱出し、抜止状態が解除される。よって、筒状本体と蓋体とが、任意の位相で筒状本体の軸芯方向に沿う相対近接移動によって取り付けられると同時に抜止状態となり、かつ、特定位相で抜止状態が解除されて軸芯方向に沿う相対離隔移動によって離脱可能となる構成を簡易な構造で実現できる。
【0012】
一態様として、
前記筒状本体は、前記スロープ状突出部が設けられた周方向の位置における前記蓋体の側に、前記蓋体を取り付ける際に前記内向き突起と接触した場合に前記筒状本体と前記蓋体とを相対回転させる回転誘導部をさらに有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、蓋体の取付時に仮に蓋体が既に特定位相となっていたとしても、筒状本体と蓋体との相対回転が促されて自ずと特定位相とは異なる位相となる。このため、内向き突起が確実に筒状本体の周溝に収まることになり、閉蓋操作を簡単・確実に行うことができる。
【0014】
一態様として、
前記内向き突起が、前記筒状本体の側を向く下向き三角形状に形成されているとともに、
前記回転誘導部が、前記蓋体の側を向く上向き三角形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、筒状本体と蓋体との相対近接移動に伴って下向き三角形状の内向き突起と上向き三角形状の回転誘導部とが接触したとき、それぞれの斜辺どうしが互いに摺動し合って、筒状本体と蓋体との相対回転が適切に誘導される。よって、閉蓋操作をより簡単・確実に行うことができる。
【0016】
一態様として、
前記周壁部における前記内向き突起が設けられた位置の周方向の両側に、前記軸芯方向に沿って延びるスリットが形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、蓋体の周壁部における内向き突起が設けられた部位がそれ以外の部位に対して部分的に縁切りされているので、内向き突起が設けられた部位がその根元部分を起点として撓みやすい。よって、内向き突起がスロープ状突出部に乗り上げた際に、周壁部における内向き突起が設けられた部位が拡開しやすく、抜止状態が適切に解除される。よって、開蓋操作を簡単・確実に行うことができる。
【0018】
一態様として、
前記抜止状態で前記筒状本体の上端部と前記蓋体の天面部との間に密接する弾性体をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、閉蓋状態で容器内部を適切に密閉することができる。また、蓋体を特定位相まで回転させて抜止状態を解除するだけで、弾性体の弾性復元力によって蓋体を自ずと離隔移動させることができ、閉蓋操作をさらに簡単に行うことができる。
【0020】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
容器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、一例として、例えば生化学分野や医薬分野の研究開発等において各種の試料を収納及び保管するために用いる容器1(試料用容器)を例として説明する。
図1に示すように、本実施形態の容器1は、筒状本体2と、この筒状本体2に着脱自在な蓋体4とを備えている。また、容器1は、筒状本体2と蓋体4との間に配設される弾性体6(
図4を参照)をさらに備えている。
【0023】
筒状本体2は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン等の合成樹脂素材や、例えばソーダガラスや石英ガラス等のガラス素材で形成することができる。筒状本体2は、中の試料が視認しやすいように、透明又は半透明であることが好ましい。蓋体4は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン等の合成樹脂素材で形成することができる。筒状本体2と蓋体4とは、同じ材料で形成されても良いし、異なる材料で形成されても良い。
【0024】
図1及び
図2に示すように、筒状本体2は、縦長の有底筒状に形成されている。筒状本体2は、底面部21と、本体周壁部22と、本体嵌合部23とを有している。これらは、一体的に形成されている。なお、以下では、縦長の筒状本体2が延びる方向を筒状本体2の「軸芯方向L」と言い、軸芯方向Lに直交する方向を「径方向」と言い、軸芯方向L周りを周回する方向を「周方向C」と言う場合がある。
【0025】
底面部21は、筒状本体2の底部を形成している。底面部21の外形は特に限定されない。本実施形態の底面部21は、丸型(真円)に形成されているが、例えば楕円状や多角形状に形成されても良い。また、底面部21の立体形状も特に限定されない。本実施形態の底面部21は、平板状に形成されているが、例えば半球状や円錐状に形成されても良く、また、下向きの凹部又は上向きの隆起部を有する形状に形成されても良い。
【0026】
本体周壁部22は、底面部21の外周から上方に延びている。本体周壁部22は、底面部21の外形形状に応じた筒状に形成されており、本実施形態では円筒状に形成されている。本実施形態では、本体周壁部22の延在長さは、底面部21の直径よりも長く、例えば底面部21の直径の1.5倍以上であって良く、2倍以上であっても良い。本体周壁部22は、縦長の円筒状に形成されている。
【0027】
本体嵌合部23は、筒状本体2における蓋体4と嵌合する部位であり、本体周壁部22における上方側(蓋体4側)の部位に設けられている。本体嵌合部23は、小径筒部24と、この小径筒部24に形成された環状突出部25、スロープ状突出部27、及び回転誘導部29とを有している。
【0028】
小径筒部24は、本体周壁部22よりも小径の円筒状に形成されている。小径筒部24は、本体周壁部22よりもひと回り小さく形成されている。本体周壁部22と小径筒部24との外径の差による径方向の段差部分に、閉蓋状態で蓋体4の蓋体周壁部42が配置される。
【0029】
環状突出部25は、小径筒部24の外面から全周に亘って径方向外側に突出するように形成されている。本実施形態では、環状突出部25は、小径筒部24における軸芯方向Lの中間領域に形成されている。
図2及び
図4に示すように、環状突出部25は、緩斜面25aと、頂面25bと、急斜面25cとを有している。
【0030】
緩斜面25aは、緩やかに傾斜する斜面であり、本実施形態では軸芯方向Lに対する傾斜角度は例えば5°~30°とされている。頂面25bは、径方向外側を向く円筒状面であり、軸芯方向Lに沿う一定幅を有している。急斜面25cは、急激に傾斜する(少なくとも緩斜面25aよりも急激に傾斜する)斜面であり、本実施形態では軸芯方向Lに対する傾斜角度は例えば45°~75°とされている。軸芯方向Lにおいて、緩斜面25aは頂面25bに対して上部開口側に設けられ、急斜面25cは頂面25bに対して下端部側(底面部21側)に設けられている。
【0031】
小径筒部24における環状突出部25よりも下端部側(底面部21側)の部分は、全周に亘って環状突出部25の頂面25bよりも窪む周溝26となっている。
図4に示すように、この周溝26には、蓋体4の蓋体周壁部42に形成される内向き突起44が、閉蓋状態で配置される。
【0032】
周溝26には、スロープ状突出部27が形成されている。スロープ状突出部27は複数設けられており、これら複数のスロープ状突出部27が周方向Cに分散して設けられている。本実施形態では、複数のスロープ状突出部27が周方向Cに均等に分散して設けられており、図示の例では3つのスロープ状突出部27が中心角120°間隔で設けられている。スロープ状突出部27は、緩斜面27aと、頂面27bとを有している。
【0033】
緩斜面27aは、緩やかに傾斜する斜面であり、本実施形態では周溝26の底面に対する傾斜角度は例えば5°~30°とされている。頂面27bは、径方向外側を向く帯状面であり、一定の周方向幅を有して軸芯方向Lに延びている。スロープ状突出部27の頂面27bは、環状突出部25の頂面25bとT字状をなすように接続されており、これらは面一状に連なっている。本実施形態では、スロープ状突出部27は、頂面27bに対して周方向Cの両側にそれぞれ緩斜面27aを有している。このようなスロープ状突出部27を周溝26の一部に有することで、当該スロープ状突出部27が設けられた部位で、周溝26の深さが周方向Cに沿って頂面27bに向けて次第に浅くなっている。周溝26の深さは、周方向Cの両向きで頂面27bに向けて次第に浅くなっている。
【0034】
回転誘導部29は、一定条件下で筒状本体2と蓋体4とを相対回転させる部位である。回転誘導部29は、複数設けられており、これら複数の回転誘導部29が周方向Cに分散して設けられている。回転誘導部29は、周方向Cにおけるスロープ状突出部27が設けられた位置に設けられており、より具体的にはスロープ状突出部27の頂面27bの位置に設けられている。図示の例では、スロープ状突出部27の配置構成に応じて、3つの回転誘導部29が中心角120°間隔で設けられている。また、回転誘導部29は、軸芯方向Lにおける環状突出部25の緩斜面25aの位置に設けられている。
【0035】
本実施形態では、回転誘導部29は、上部開口側(蓋体4の側)を向く上向き三角形状に形成されている。回転誘導部29の外面29aは、環状突出部25の頂面25b及びスロープ状突出部27の頂面27bと面一状に連なっている。このため、回転誘導部29は、環状突出部25の緩斜面25aとの境界部に、軸芯方向L及び周方向Cの両方に対して傾斜する一対の傾斜案内面29bを有している。このような回転誘導部29を有することで、筒状本体2に蓋体4を取り付ける際、蓋体4の蓋体周壁部42に形成される内向き突起44(
図3を参照)が接触すると、傾斜案内面29bに沿って内向き突起44が摺動し、それに伴い筒状本体2と蓋体4とが相対回転する。
【0036】
図1及び
図3に示すように、蓋体4は、天面部41と、蓋体周壁部42と、蓋体嵌合部43とを有している。これらは、一体的に形成されている。なお、以下では、蓋体4の各部についての方向性について言及する場合には、筒状本体2と蓋体4とが取り付けられた状態での方向を意図しているものとする。
【0037】
天面部41は、蓋体4の天井面を形成している。天面部41は、丸型(真円)に形成されている。天面部41の立体形状は特に限定されない。本実施形態の天面部41は、平板状に形成されているが、例えば全体が半球状又は湾曲状に形成されても良いし、凹部又は隆起部を有する形状に形成されても良い。
【0038】
蓋体周壁部42は、天面部41の外周から下方に延びている。蓋体周壁部42は、天面部41の外形形状に応じた筒状に形成されており、本実施形態では円筒状に形成されている。本実施形態では、蓋体周壁部42の軸芯方向Lに沿う延在長さは、筒状本体2の小径筒部24の軸芯方向Lに沿う延在長さと同程度とされている。本実施形態では、蓋体周壁部42が「周壁部」に相当する。
【0039】
蓋体嵌合部43は、蓋体4における筒状本体2と嵌合する部位であり、蓋体周壁部42における下方側(筒状本体2側)の部位に設けられている。蓋体嵌合部43は、蓋体周壁部42の内周面から内向きに突出する内向き突起44を有している。内向き突起44の外形は特に限定されないが、本実施形態では、下方側(筒状本体2側)を向く下向き三角形状に形成されている。下向き三角形状の内向き突起44は、上側に位置する底辺に対応する係止面44aと、下側に位置する頂点から係止面44aの両端部に延びる一対の傾斜案内面44bとを有している。
【0040】
係止面44aは、周方向Cに沿って延在している。係止面44aは、閉蓋状態で内向き突起44が筒状本体2の周溝26に収容されたとき、筒状本体2の環状突出部25の急斜面25cと上下に対向する。そして、この係止面44aが環状突出部25の急斜面25cに下方側から係止することによって、筒状本体2からの蓋体4の抜け止めが図られる(
図4を参照)。
【0041】
傾斜案内面44bは、軸芯方向L及び周方向Cの両方に対して傾斜している。傾斜案内面44bは、筒状本体2に蓋体4を取り付ける際、筒状本体2の回転誘導部29に接触すると、当該回転誘導部29の傾斜案内面29bに沿って摺動する。それに伴い、筒状本体2と蓋体4とが相対回転する。
【0042】
本実施形態では、蓋体周壁部42における内向き突起44が設けられた位置の周方向Cの両側に、一対のスリット45が形成されている。スリット45は、軸芯方向Lに沿って延びるように形成されている。スリット45の軸芯方向Lに沿う延在長さは、特に限定されないが、例えば本体周壁部22の軸芯方向Lに沿う延在長さの1/3~3/4とすることができる。このようなスリット45が形成されている場合には、周方向Cに隣り合う一対のスリット45どうしの間の、内向き突起44が設けられた部位(内向き突起44を含む)を、上記の蓋体嵌合部43と考えることができる。
【0043】
一対のスリット45によって蓋体周壁部42の他の部位から縁切りされた蓋体嵌合部43は、その根元部分を起点として撓みやすくなっている。蓋体嵌合部43は、蓋体周壁部42の他の部位よりも径方向外側に拡開可能となっている。
【0044】
図4に示すように、弾性体6は、筒状本体2と蓋体4との間に配設される。弾性体6は、閉蓋状態で、筒状本体2の上端部と蓋体4の天面部41との間に密接する状態で配設される。弾性体6は、筒状本体2の内部を密封するためのシール材(いわゆるパッキン)である。弾性体6は、例えばシリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、及びエチレンプロピレンゴム等のゴム素材や、例えばポリエチレン、ポリアミド、及び四フッ化エチレン(PTFE)等の合成樹脂素材で形成することができる。
【0045】
弾性体6の外形は、蓋体周壁部42の内面形状に応じた円形状に形成されている。本実施形態の弾性体6は、円板状に形成されているが、そのような構成に限定されることなく、例えば円環状に形成されても良い(いわゆるOリング)。
【0046】
本実施形態では、弾性体6は、蓋体4の内側に保持されている。蓋体周壁部42の内周面には、天面部41の下面から弾性体6の厚み分だけ下方となる位置に、内向きに突出する保持突起47が形成されている。本実施形態の保持突起47は、全周に亘って突出する環状突起として形成されている。弾性体6は、その上面が天面部41の下面に全面的に接し、その外周面が蓋体周壁部42の内周面に接し、その下面の外縁が保持突起47によって下方から支持される状態で、保持されている。このようにして、本実施形態の蓋体4と弾性体6とは、一体的に取り扱われる。
【0047】
本実施形態の容器1は、筒状本体2と蓋体4とが、特定位相Psを含む任意の位相で軸芯方向Lに沿う相対近接移動によって取り付けられる。なお、「位相」とは、ここでは筒状本体2と蓋体4との周方向Cの位置関係を表す概念として用いている。本実施形態における「特定位相Ps」は、筒状本体2と蓋体4とが、筒状本体2のスロープ状突出部27(より具体的には頂面27b)と蓋体4の内向き突起44とが互いに同じ周方向位置となる位相である。
【0048】
筒状本体2と蓋体4とが特定位相Ps以外の位相にあるとき、筒状本体2のスロープ状突出部27の頂面27bと蓋体4の内向き突起44との周方向Cの位置はズレている。この状態で筒状本体2と蓋体4とを相対近接移動させると、蓋体4の内向き突起44が筒状本体2の環状突出部25の緩斜面25aに次第に乗り上げて、蓋体嵌合部43が拡開する。そしてやがて内向き突起44が緩斜面25a及びそれに連なる頂面25bを乗り越えると、内向き突起44が周溝26に収まる。
【0049】
このとき、上述したように蓋体4の内側には弾性体6が保持されており、この弾性体6は筒状本体2の上端部と蓋体4の天面部41との間に密接する状態となる。その際、弾性体6はやや圧接された状態となって、その弾性復元力によって筒状本体2と蓋体4とを離隔させる力を作用させる。この弾性体6の弾性復元力によって蓋体4がやや持ち上げられ、蓋体4の内向き突起44が筒状本体2の環状突出部25に係止する(
図4及び
図5を参照)。これにより内向き突起44の係止面44aと環状突出部25の急斜面25cとが当接するように付勢され、筒状本体2と蓋体4とが抜止状態となる。よって、筒状本体2の内部が適切に密閉されつつ閉蓋状態が維持される。
【0050】
なお、筒状本体2と蓋体4とが特定位相Psにあるときは、筒状本体2の回転誘導部29と蓋体4の内向き突起44とが同じ周方向位置となっている。この状態で筒状本体2と蓋体4とを相対近接移動させると、
図6に示すように、上向き三角形状の回転誘導部29と下向き三角形状の内向き突起44とが互いに当接する。そして、回転誘導部29の傾斜案内面29bと内向き突起44の傾斜案内面44bとが摺動しながら、筒状本体2と蓋体4とが自ずと相対回転する。これにより、特定位相Psにあった筒状本体2と蓋体4とが特定位相Ps以外の位相となって、上記と同様にして筒状本体2と蓋体4とが抜止状態となる。
【0051】
このようにして、筒状本体2と蓋体4とが、それらの初期位相によらずに、軸芯方向Lに沿う相対近接移動によって取り付けられると同時に抜止状態となる。よって、簡単かつ迅速に閉蓋操作を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態の容器1は、筒状本体2と蓋体4とが、特定位相Psとなるまでの相対回転と軸芯方向Lに沿う相対離隔移動とによって離脱される。筒状本体2と蓋体4とを特定位相Psとなるように相対回転させると、蓋体4の内向き突起44が筒状本体2のスロープ状突出部27の緩斜面27aに次第に乗り上げて、蓋体嵌合部43が拡開する。そしてやがて内向き突起44は、
図7に示すように緩斜面27aに連なる頂面27bに到達して特定位相Psとなる。このとき、蓋体嵌合部43は拡開したままである。
【0053】
この状態では、既に内向き突起44の係止面44aと環状突出部25の急斜面25cとが当接しない状態となっており、抜止状態が解除されている。そして、弾性体6の弾性復元力にもサポートされて、筒状本体2と蓋体4とが軸芯方向Lに沿って相対離隔移動する。内向き突起44は、面一状のスロープ状突出部27の頂面27b、環状突出部25の頂面25b、及び回転誘導部29の外面29aの表面を滑動してやがて環状突出部25よりも上方に離脱する。これにより、筒状本体2と蓋体4とが離脱する。
【0054】
このようにして、筒状本体2と蓋体4とが、特定位相Psで抜止状態が解除されて軸芯方向Lに沿う相対離隔移動によって離脱可能となり、実際に相対離隔移動させることによって離脱する。よって、簡単かつ迅速に開蓋操作を行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の容器1は、簡単かつ迅速に開閉操作を行うことができる。
【0056】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、蓋体4の内向き突起44と筒状本体2のスロープ状突出部27との組が3組設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、内向き突起44とスロープ状突出部27との組は、2組であっても良いし4組以上であっても良い。構造の簡素化や閉蓋状態での安定性を総合的に考慮すると、3組又は4組程度が好ましい。
【0057】
(2)上記の実施形態では、スロープ状突出部27が周方向Cの両側にそれぞれ緩斜面27aを有する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、スロープ状突出部27が周方向Cの一方側だけに緩斜面27aを有するものとされても良い。この場合、開蓋する際の筒状本体2と蓋体4との相対回転の向きが一方向に限定されるので、当該向きを示す案内表示を蓋体4に付す等しても良い。
【0058】
(3)上記の実施形態では、筒状本体2に回転誘導部29が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、必ずしも回転誘導部29が設けられなくても良い。この場合、本体周壁部22よりも小径の小径筒部24を設けるとともにその小径筒部24から突出する環状突出部25を設けて周溝26を形成するのではなく、本体周壁部22の外面に周溝26を直接形成しても良い。
【0059】
(4)上記の実施形態では、筒状本体2の回転誘導部29が上向き三角形状に形成されるとともに蓋体4の内向き突起44が下向き三角形状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、回転誘導部29と内向き突起44とが接触した際に筒状本体2と蓋体4とを適切に相対回転させ得るものであれば、具体的形状は任意である。
【0060】
(5)上記の実施形態では、蓋体周壁部42における内向き突起44が設けられた位置の周方向Cの両側に一対のスリット45が形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、そのようなスリット45が設けられなくても良い。
【0061】
(6)上記の実施形態において、筒状本体2と蓋体4を相対回転させて特定位相Psとなったときにその相対回転を停止させるストッパ機構が、容器1に備えられても良い。
【0062】
(7)上記の実施形態では、筒状本体2が本体周壁部22よりも小径の小径筒部24を有し、この小径筒部24に環状突出部25、スロープ状突出部27、及び回転誘導部29が形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、筒状本体2における環状突出部25等が形成される部位は、本体周壁部22と同径であっても良いし、本体周壁部22よりも大径であっても良い。
【0063】
(8)上記の実施形態では、筒状本体2が縦長に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、筒状本体2は横長に形成されても良いし、縦横比が1に近い形状に形成されても良い。また、少なくとも本体嵌合部23が円筒状であれば、本体周壁部22は例えば楕円筒状や多角形筒状等に形成されても良い。
【0064】
(9)上記の実施形態では、筒状本体2と蓋体4との間に弾性体6が設けられる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば蓋体4自体が弾力性を有する素材で形成される場合等には、弾性体6が設けられなくても良い。
【0065】
(10)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 容器
2 筒状本体
4 蓋体
6 弾性体
26 周溝
27 スロープ状突出部
29 回転誘導部
41 天面部
42 蓋体周壁部(周壁部)
44 内向き突起
45 スリット
L 軸芯方向
C 周方向
Ps 特定位相