(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037054
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】スイッチトリラクタンスモータ
(51)【国際特許分類】
H02P 25/08 20160101AFI20240311BHJP
H02K 19/10 20060101ALI20240311BHJP
H02P 29/20 20160101ALI20240311BHJP
【FI】
H02P25/08
H02K19/10 A
H02P29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141693
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】518120603
【氏名又は名称】株式会社FINEMECH
(72)【発明者】
【氏名】平岩 一美
【テーマコード(参考)】
5H501
5H619
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB05
5H501DD09
5H501HB18
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB15
5H619PP01
5H619PP02
(57)【要約】
【課題】
SRモータのステータ歯の磁極を切り換える際に、磁力変動に伴う振動・騒音を小さくすること。
【解決手段】
励磁コイル(14)が巻かれたステータ歯(12)を突設したステータ(10)と、ロータ歯(22)を突設したロータ(20)からなり、励磁コイル(14)に流す電流でステータ歯(12)に生ずる磁力が、ロータ歯(22)を引きつけてロータ(20)にトルクを生じさせるものであって、ステータ歯(12)及びロータ歯(22)の歯数が、基数Bを4または6として、一方はBに3以上の整数を乗じた値であり、他方は一方の値にBの整数倍を加えた値であり、励磁コイル(14)の電流を、周方向隣のステータ歯(12)の励磁コイル(14)に切り換える際に、これによって生じる磁力の向き(N極、S極)が、切り換え前後のステータ歯(12)同士間で変化しない第1の作動モードを有した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のステータと該ステータ内に配置されたロータとからなり、前記ステータには、励磁コイルが巻かれた偶数のステータ歯が、周方向に等間隔に前記ロータに向けて突設され、前記ロータには、前記ステータ歯に対向して、前記ステータ歯と異なる偶数の歯数のロータ歯が周方向に等間隔に突設され、前記励磁コイルに順次流す電流により前記ステータ歯に生ずる磁力で、前記ロータ歯を引きつけることで前記ロータにトルクを生じさせるものであって、
前記ステータ歯及び前記ロータ歯の歯数が、基数Bを4または6として、一方はBに3以上の整数を乗じた値であり、他方は前記一方の値にBの整数倍を加えた値であり、前記励磁コイルに流す電流を、当該の前記ステータ歯の前記励磁コイルから周方向隣の前記ステータ歯の前記励磁コイルに切り換える構成として、この切り換えによって生じる前記磁力の向き(N極、S極)が、切り換え前後の前記ステータ歯同士間で常に変化しない第1の作動モードを有したことを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項2】
前記励磁コイルに流す電流を、当該の前記ステータ歯の前記励磁コイルから周方向隣の前記ステータ歯の前記励磁コイルに切り換える際に、これによって生じる前記磁力の向きが、切り換え前後の前記ステータ歯同士間で常に逆転する第2の作動モードを有して、前記第1の作動モードと前記第2の作動モードとを、必要に応じて切り換え可能としたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項3】
少なくとも前記Bに2を乗じた数の周方向に隣合った前記電磁コイルに、励磁電流を順次供給して、シンクロナスリラクタンスモータとして作動するように切り換え可能にしたことを特徴とする請求項1又は2項に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項4】
前記ステータ歯及び前記ロータ歯の歯数が、一方は前記Bに4以上の整数を乗じた値であり、他方は前記一方の値にB加えた値としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の駆動に用いるスイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータと記述する)に関する。
【背景技術】
【0002】
SRモータは、希土類を含む永久磁石を用いないで、高性能と堅牢性を兼ね備え、電気自動車(EV)を始めとする車両用モータとして注目されている。従来、SRモータとしては、励磁コイルの結線に関して、第1の巻線パターンと第2の巻線パターンとを備えて、運転条件に応じて両者を切り換えることで高い効率を得る例(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の
図2に記載された構成にあっては、ステータ(固定子)10のステータ歯11の数が18で、ロータ(回転子)20のロータ歯21の数が12であり、両者ともに6の倍数であるため、同時に6つのステータ歯11を励磁することができるので、励磁によってステータ10に作用する変形荷重が3方向に分散して、ステータ10の変形が抑えられるメリットがある。しかし、SRモータの回転に伴ってステータ歯11の磁極を切り換える際に、周方向に離れたステータ歯11に切り換える構成であるため、ステータ歯11の磁力が激変するという問題があった。
【0004】
すなわち、SRモータの大きな課題である騒音に関しては、ステータ歯11を励磁した際に、その都度、磁力によってステータ10が変形を繰り返すことが主因である。つまり、励磁電流が流れたときにステータ歯11に生ずる磁力で、ステータ10がロータ20側へ引き寄せられて変形し、この変形は、SRモータの回転に伴ってステータ歯11の磁極が切り換わる際に、一旦磁力がほぼ消えてステータ10の変形が元に戻り、次に周方向に離れた別のステータ歯11を励磁すると再びステータ10が変形する、というパターンを繰り返すのが振動や騒音の元になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、SRモータの回転に伴ってステータ歯の磁極が切り換わる際に、ステータ歯に生ずる磁力が大きく変化するため、振動や騒音が発生しやすい点である。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、効率を重視しつつも、SRモータの回転に伴ってステータ歯の磁極を切り換える際に、磁力変動に伴う振動・騒音を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、中空のステータとこのステータ内に配置されたロータとからなり、ステータには、励磁コイルが巻かれた偶数のステータ歯が、周方向に等間隔にロータに向けて突設され、ロータには、ステータ歯に対向して、ステータ歯と異なる偶数の歯数のロータ歯が周方向に等間隔に突設され、励磁コイルに順次流す電流によりステータ歯に生ずる磁力で、ロータ歯を引きつけることでロータにトルクを生じさせるものであって、ステータ歯及びロータ歯の歯数が、基数Bを4または6として、一方はBに3以上の整数を乗じた値であり、他方は一方の値にBの整数倍を加えた値であり、励磁コイルに流す電流を、当該のステータ歯の励磁コイルから周方向隣のステータ歯の励磁コイルに切り換える構成として、この切り換えによって生じる磁力の向き(N極、S極)が、切り換え前後のステータ歯同士間で常に変化しない第1の作動モードを有した。
【0009】
励磁コイルに流す電流を、当該のステータ歯の励磁コイルから周方向隣のステータ歯の励磁コイルに切り換える際に、これによって生じる磁力の向きが、切り換え前後のステータ歯同士間で常に逆転する第2の作動モードを有して、第1の作動モードと第2の作動モードとを、必要に応じて切り換え可能とすることが好ましい。
【0010】
少なくともBに2を乗じた数の周方向に隣合った電磁コイルに、三相交流電流を順次供給して、シンクロナスリラクタンスモータとして作動するように切り換え可能にすることが好ましい。
【0011】
ステータ歯及び前記ロータ歯の歯数が、一方はBに4以上の整数を乗じた値であり、他方は前記一方の値にB加えた値とすることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のSRモータによれば、回転に伴なうステータ歯の磁極を順次切り換える際に、磁力が途切れるのを防いで、磁力によるステータの変形に起因する振動を抑えることで、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るSRモータの要部断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係るSRモータの要部断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係るSRモータの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るSRモータ1を、実施形態に基づき図を参照して説明する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSRモータ1の要部を表した断面図である。
図1では、一部を除いて断面のハッチングを省略している。また、
図2は、
図1の磁極が切り替わる際の状態を表した部分拡大図である。
【0016】
本発明のSRモータ1は、図示しない静止した相手部材に取り付けられた、円筒状のステータ10と、ステータ10の内側で回転する円筒状のロータ20が主構成要素であり、他に図示を省略したコントローラを備えている。ロータ20は、これと一体の主軸20aが、図示しないベアリングを介してステータ10側に回転自在に支持されている。主軸20aは、図示しない外部負荷の回転体と連結している。
【0017】
ステータ10は、電磁鋼板を軸方向に積層して構成されて、内側にロータ20に向けた12個のステータ歯12が突設され、それぞれのステータ歯12に励磁用のコイル14が巻き付けてある。なお、各ステータ歯12と各コイル14とはセットになって、周方向等分に分かれて配置された4個ずつが、12a、12b、12c及び、14a、14b、14cの、それぞれ各3グループになっている。各コイル14には、このグループごとに同じ励磁電流が供給されるようになっていて、各グループ内の4個のステータ歯12のうち、常に2個ずつがN極およびS極のどちらかの磁極が生じるように、各コイル14が結線されている。むろん、励磁電流の向きによりN極とS極を切り換えることができる。
【0018】
ロータ20は、電磁鋼板を軸方向に積層して構成されて、外周にステータ10に向けた16個のロータ歯22が突設され、ロータ歯22は上記したステータ歯12に生じる磁力に引き寄せられて回転し、トルクを発して主軸20aから外部負荷に出力する。なお、
図1には後述の作動説明のため、各ロータ歯22a~22qの代わりに、符号として22を省き、その後のアルファベットの小文字のみを記入している。(誤認を防ぐため、Lの小文字は不使用)
【0019】
ここで、ステータ歯12とロータ歯22の歯数について説明する。本発明の歯数の決め方は、以下のように行う。すなわち、一方の歯数は、基数Bを4または6から選択して、Bに3以上の整数を乗じて決め、他方の歯数は、一方の歯数にBの整数倍を加算する。本実施形態の場合は、Bを4として、これに3を乗じた12をステータ歯12の歯数とし、これにBを加えた16をロータ歯22の歯数とした。つまり、12及び16という歯数の組み合わせは、本発明の最小構成である。
【0020】
次に、第1の実施形態の動作および作用について説明する。なお、SRモータは、周知のように、コントローラから各励磁コイル14に順次流す励磁電流により、ステータ歯12に生ずる磁力で、ロータ歯22を引きつけることでロータ20にトルクを生じさせるものであって、本例ではロータ20が時計回りに回転する場合について説明する。
【0021】
図1は、ロータ歯22a、22e、22i、22nの4個が、aグループのステータ歯12aの4個に真っ正面から対峙している。この状態は、4個のステータ歯12aのコイル14aへの励磁電流が消滅した状態であり、
図2に示すロータ20の回転位置、つまり
図1の状態の直前では、aグループのコイル14aに励磁電流が流れていて、aグループのステータ歯12aに生じた磁力でロータ歯22a、22e、22i、22nが引き寄せられて、ロータ20はトルクを発していた。
【0022】
すなわち、
図2の、ステータ歯12aに励磁電流が流れていた時点では、ステータ歯12aが発する磁力でロータ歯22a、22e、22i、22nの4個を引きつけて、ロータ20にトルクを発出させる一方、円筒状のステータ10が、径方向にロータ20側に引き寄せられて変形している。この場合、4個のステータ歯12aが引き寄せられるので、円筒状のステータ10がやや四角筒に近づくような変形である。
【0023】
前述したように、
図1はステータ歯12aのコイル14aの励磁電流が消滅した状態であるので、磁力が消えたステータ10の変形は元に戻ることになる。しかし、
図1に見るように、別の4個のロータ歯22b、22f、22j、22oの一部が、回転方向隣のbグループのステータ歯12bに対峙し始めている。つまり、ステータ歯12aの励磁電流が消滅する前の、
図2に示すロータ20の位置近辺で、bグループのステータ歯12bのコイル14bに励磁電流が供給されて、ステータ歯12bはそれによる磁力でロータ歯22b、22f、22j、22oの4個を引きつけ始めている。
【0024】
従って、ステータ歯12aの励磁電流の消滅でステータ10の変形が戻るのとオーバーラップして、回転方向で隣のステータ歯12bの磁力でロータ歯22b、22f、22j、22oの4個を引きつけて、やや回転方向の位置が変化した四角筒形状へと、新たなステータ10の変形に移行する。それとともに、ロータ20はさらに回転して、やがてロータ歯22b、22f、22j、22oがステータ歯12bに真っ正面から対峙するようになって、1つのサイクルが終了する。そして、これを順次繰り返してSRモータは回転する。
【0025】
また、磁力をステータ歯12aから次のステータ歯12bへ切り替える際に、磁極の方向をどうするかについて、以下の2通りから選択することができる。すなわち、前述したように4個のステータ歯12aのうち、
図1で相手ロータ歯22aに対峙したステータ歯12aをN極、相手ロータ歯22eに対峙したステータ歯12aをS極、相手ロータ歯22iに対峙したステータ歯12aをN極、相手ロータ歯22nに対峙したステータ歯12aをS極の、順にNSNSだったとした場合、次のステータ歯22bでもNSNSの磁極順を維持する本発明の第1の作動モードか、SNSNに逆転させる本発明の第2の作動モードかの2通りである。
【0026】
切り替え時の磁極の方向は、従来、一般的に第2の作動モードとする例が多く、その場合はSRモータ1に大トルクを発揮させるには有利とされている。一方、第1の作動モードの、磁極順を維持して切り換える方が、ロータ20の内部における磁束の移動量と方向変化が少なく、鉄損が少ないため、低負荷における効率に有利とされている。従って、両者を使用条件に応じて切り換えるのが好ましい。
【0027】
そして、低負荷において多用する第1の作動モードにおいて、励磁電流を少なくしていくと、いわゆるシンクロナスリラクタンスモータの作動に近くなっていく。そこで、少なくとも回転方向に隣合った2グループの励磁コイル14に、励磁電流を流すようにして、シンクロナスリラクタンスモータとして作動させることができる。詳細の説明は省略するが、周知のように、これらはコントローラによって行うことができる。
【0028】
以上説明したように、第1の実施形態のSRモータ1によれば、従来例に見られたように1組のステータ歯12の磁力が消滅してから、次の組のステータ歯12が磁力を発揮するのではなく、ステータ歯22aの磁力が消滅する前に次のステータ歯12bが磁力を発揮することで、ステータ20の変形が元に戻るのとオーバーラップして次の変形への移行が始まる。これにより、ステータ20の変形量が小さくなって、振動、騒音の発生が抑えられるというメリットがある。特に、上記したようにシンクロナスリラクタンスモータの作動に近くなると、より一層振動、騒音が小さくなる。
【0029】
このようなオーバーラップを伴うステータ10の変形の移行は、上述した、ステータ歯12とロータ歯22の歯数によって決まるものであって、ステータ歯22aの磁力が消滅する前に、次のステータ歯12bがそれぞれの相手ロータ歯22b、22f、22j、22oと確実に対峙し始めるからである。
【0030】
第1の実施形態では、ステータ歯22を12個、ロータ歯22を16個とした場合について説明したが、これを逆にしてステータ歯22を16個、ロータ歯22を12個とした場合であっても、ステータ歯22のグループ分けが4個ずつの4グループになるが、上記したのと同様に1グループのステータ歯22の磁力が消滅する前に次のグループのステータ歯12が相手のロータ歯22と対峙し始める。従って、上記と同様の効果を得ることができる。
【0031】
また、シンクロナスリラクタンスモータに近い作動も含めて、ステータ10側の磁力が途切れることなく、回転方向隣の次のグループのステータ歯22に磁力を発生させて、ステータ10の変形をスムーズに移行させることができることは、SRモータの出力トルクの変動が少なくなることを意味するので、SRモータの課題の一つと言われる、いわゆるトルクリップルを減らす効果も期待できる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態にかかるSRモータにつき説明する。
図3は、
図1に対応した要部の断面図である。ここでは、第1の実施形態の場合と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態の場合と実質的に同じ部分については、同じ符号を付しそれらの説明を省略する。なお、
図3においても、各ロータ歯22a~22yの代わりに、符号として22を省き、その後のアルファベットの小文字のみを記入している。(Lの小文字は不使用)
【0033】
第2の実施形態における第1の実施形態との違いは、ステータ歯12及びロータ歯22の歯数が異なることである。すなわち、第1の実施形態と同様に基数Bを4として、これに5を乗じた20をステータ歯22の歯数とし、これにBを加えた24をロータ歯22の歯数とした。これに伴って、ステータ歯12とコイル14とはセットになって、周方向等分に配置された4個ずつが、12a、12b、12c、12d、12e及び、14a、14b、14c、14d、14eの各5グループになっている。これら以外は、第1の実施形態の場合と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0034】
次に、第2の実施形態の動作および作用について説明する。ここでも、第1の実施形態の場合と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態と実質的に同じ部分については、説明を省略する。
図3は、第1の実施形態で説明したのと同様に、ロータ歯22a、22g、22n、22tの4個が、aグループのステータ歯12aの4個に真っ正面から対峙している。
【0035】
そして、第1の実施形態と異なるのは、
図3においてaグループに続く、bグループのステータ歯12bの4個に、ロータ歯22b、22h、22o、22uが対峙しているのに加えて、その次に続くcグループのステータ歯12cの4個に、ロータ歯22c、22i、22p、22vが対峙し始めていることである。
【0036】
従って、4個のステータ歯12aの磁力が消滅する前に、4個のステータ歯12b及び4個のステータ歯12cが、それぞれ一方が磁力を発揮していて、他方が磁力を発揮し始めていることになる。
【0037】
ステータ歯12aから次のステータ歯12b及びステータ歯12cへの切り替えの際に、磁極の方向を2通りから選択できることは、第1の実施形態の場合と同様である。また、同時に励磁電流を流す励磁コイル14が増えているので、回転方向に隣合った3グループの励磁コイル14に、励磁電流を流すようにして、シンクロナスリラクタンスモータとして作動させることができる。その他の作用及び作動は、第1の実施形態と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0038】
以上説明したように、第2の実施形態のSRモータ1によれば、第1の実施形態で説明したのと同様に、従来例に見られたように1組のステータ歯12の磁力が消滅してから、次の組のステータ歯12が磁力を発揮するのではなく、ステータ歯22aの磁力が消滅する前に次のステータ歯12b及びさらに次のステータ歯12cが磁力を発揮することで、ステータ20の変形が元に戻るのとオーバーラップして次の変形への動作を繰り返す。
【0039】
これにより、ステータ20の変形の変動幅が大幅に小さくなって、振動、騒音の発生が一層抑えられるというメリットがある。すなわちこれは、aグループのステータ歯12aの磁力がピークに達してから、次のbグループのステータ歯12bの磁力がピークに達するまでの、ロータ20の回転量がごくわずかであるからと言える。これと同様に、いわゆるトルクリップルを減らす効果も大きく期待できる。さらに、同時に励磁電流が流れるステータ歯12の数が実質的に2組の8個と多いので、ロータ20の出力トルクを大きくする効果が期待できる。これらは、第1の実施形態の場合に比べて、ステータ歯22及びロータ歯22の歯数が増えたからである。
【0040】
また、第1の実施形態でも説明したように、ステータ歯22を24個、ロータ歯22を20個とした場合であっても、ステータ歯22のグループ分けが変化するが、上記したのと同様に1グループのステータ歯22の磁力が消滅する前に、次のグループのステータ歯12が相手のロータ歯22と対峙する。
【0041】
これらと同様に、上述したルールに沿って、基数Bが4のまま、歯数比を12:20及び、16:20や、さらに多くの数に設定しても、基本的に同様の効果を得ることができる。
【0042】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態にかかるSRモータにつき説明する。
図4は、
図1に対応した要部の断面図である。ここでは、第1の実施形態の場合と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態と実質的に同じ部分については、同じ符号を付しそれらの説明を省略する。なお、
図4においても、各ロータ歯22a~22yの代わりに、符号として22を省き、その後のアルファベットの小文字のみを記入している。(Lの小文字は不使用)
【0043】
第3の実施形態における第1の実施形態の場合との違いは、ステータ歯12及びロータ歯22の歯数が異なることである。すなわち、第1の実施形態と違って基数Bを6として、これに3を乗じた18をステータ歯22の歯数とし、これにBを加えた24をロータ歯22の歯数とした。これに伴って、ステータ歯12とコイル14とはセットになって、周方向等分に配置された6個ずつが、12a、12b、12c及び、14a、14b、14cの各3グループになっている。これら以外は、第1の実施形態の場合と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0044】
次に、第3の実施形態の動作および作用について説明する。ここでも、第1の実施形態の場合と異なる部分を中心に説明し、第1の実施形態と実質的に同じ部分については、説明を省略する。
図4は、第1の実施形態で説明したのと同様に、ロータ歯22a、22e、22i、22n、22r、22vの6個が、aグループのステータ歯12aの6個に真っ正面から対峙している。そして、回転方向隣のbグループのステータ歯12bの6個が、ロータ歯22b、22f、22j、22o、22s、22wの6個と対峙し始めている。
【0045】
従って、第1の実施形態の場合と同様に、6個のステータ歯12aの磁力が消滅する前に、回転方向隣のbグループの6個のステータ歯12bが、それぞれ磁力を発揮し始めていることになる。
【0046】
ステータ歯12aから次のステータ歯12bへの切り替えの際に、磁極の方向を2通りから選択できることは、第1の実施形態の場合と同様である。また、シンクロナスリラクタンスモータとして作動させることも可能である。その他の作用及び作動は、第1の実施形態の場合と基本的に同様であるので、説明を省略する。
【0047】
以上説明したように、第3の実施形態のSRモータ1によれば、従来例と同様に6個のステータ歯12が同時に6個のロータ歯22を引きつけるため、円筒形状のステータ10を六角筒に近づくように変形させるので、変形させる荷重が3方向に分散されて、第1の実施形態変形の場合に比べて、ステータ10の変形の変動幅が減るのに加えて、第1の実施形態の場合と同様に、ステータ歯22aの磁力が消滅する前に次のステータ歯12bに磁力を発揮させることで、ステータ20の変形が元に戻るのとオーバーラップして次の変形への移行が始まる。これらにより、格段に振動、騒音の発生が抑えられるというメリットがある。
【0048】
これらと同様に、上述したルールに沿って、基数Bが6のまま、歯数比を24:30及び30:36や、さらに多くの数に設定しても、同様の効果を得ることができる。また、上記したステータ歯12の磁極切り換えにおける、磁極順を維持するのか、または逆転させるのか、などの操作も同様に行うことができる。
【0049】
以上、本発明の概要を説明したが、ステータ10の変形による騒音に関しては、コントローラの制御で励磁電流の流し方の改善が種々提案されており、本発明に最適な励磁電流の流し方と組み合わせることや、ロータ歯22の形状の工夫などと合わせて、一層の騒音低減を図ることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のSRモータは、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両用に加えて、家庭用電気機器及び各種産業用のモータとして幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)
10 ステータ
12 ステータ歯
14 励磁コイル
20 ロータ
22 ロータ歯