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  • 特開-医療用ガーゼ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037056
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】医療用ガーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20240101AFI20240311BHJP
【FI】
A61F13/00 301S
A61F13/00 301A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141699
(22)【出願日】2022-09-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】502078996
【氏名又は名称】松文産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄之介
(57)【要約】
【課題】医療用ガーゼの柔軟性を損なうことなくX線造影糸3の脱落を確実に防ぐことができ、しかも、X線撮影時のX線造影糸3の識別性に優れた医療用ガーゼ10を提供すること。
【解決手段】X線造影剤を含むX線造影糸3を一部に織り込んだ医療用ガーゼ10において、X線造影糸3を、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部41・41…を有する意匠撚糸4から構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線造影剤を含むX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼであって、
前記X線造影糸が、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部を有する意匠撚糸から成ることを特徴とした医療用ガーゼ。
【請求項2】
前記意匠撚糸が芯糸と該芯糸の周囲に巻き付けられた絡み糸とを備え、
少なくとも前記絡み糸がX線造影剤を含むことを特徴とした請求項1に記載の医療用ガーゼ。
【請求項3】
前記絡み糸がマルチフィラメントから成り、該マルチフィラメントの構成単糸がX線造影剤を含む芯部とX線造影剤を含まない鞘部とから成る芯鞘型複合糸であることを特徴とした請求項2に記載の医療用ガーゼ。
【請求項4】
前記X線造影糸が、複数の前記意匠撚糸を撚り合わせて構成されていることを特徴とした請求項1~3の何れかに記載の医療用ガーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ガーゼ、より詳しくは、X線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術等の際には、患者の血液や体液等を拭き取ったり、患部を保護したりするために、医療用ガーゼが多用される。ところが、血液等を吸収したガーゼは肉眼で視認することが容易でなく、施術後、使用したガーゼを体内に取り残してしまう怖れがあった。
【0003】
そこで、従来、X線造影剤を含んだX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼが提案されている(例えば、下記特許文献1、2等)。この種のガーゼを用いれば、術中術後に患部をX線撮影し、X線造影糸の造影を確認することによってガーゼの取り残しを見つけ出し、ガーゼの体内残留を未然に防ぐことが可能となる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のガーゼは、X線造影糸をガーゼ本体の密織部に織り込むことで、ガーゼ本体からのX線造影糸の抜け落ちを防ぐようにしていたため、X線造影糸を含む密織部によりガーゼの柔軟性が損なわれる難点があった。
【0005】
また、特許文献2に記載のガーゼは、X線造影糸をガーゼ本体の経糸及び緯糸よりも太い補強糸に密に接触させて織り込むことで、X線造影糸の抜け落ちを防ぐようにしていたため、この補強糸により同様にガーゼの柔軟性が損なわれる難点があった。
【0006】
さらに、これら従来のガーゼは、X線造影剤を含んだX線造影糸の太さが一様であったため、X線撮影によるX線造影糸の造影も、幅の一様な線状にならざるを得ず、例えば患部組織の造影に紛れるなどしてX線造影糸の有無の識別が容易でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5660284号公報
【特許文献2】登録実用新案第3130538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼに上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、医療用ガーゼの柔軟性を損なうことなくX線造影糸の脱落を確実に防ぐことができ、しかも、X線撮影時のX線造影糸の識別性に優れた医療用ガーゼを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、X線造影剤を含むX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼであって、
前記X線造影糸が、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部を有する意匠撚糸から成ることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記意匠撚糸が芯糸と該芯糸の周囲に巻き付けられた絡み糸とを備え、少なくとも前記絡み糸がX線造影剤を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記絡み糸がマルチフィラメントから成り、該マルチフィラメントの構成単糸がX線造影剤を含む芯部とX線造影剤を含まない鞘部とから成る芯鞘型複合糸であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、前記X線造影糸が、複数の前記意匠撚糸を撚り合わせて構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る医療用ガーゼは、X線造影糸が糸長方向に複数の塊状部を有する意匠撚糸から成り、これら塊状部のみが太く形成されているので、これら複数の塊状部によってガーゼ本体からのX線造影糸の抜け落ちを確実に防ぐことができ、また、X線造影糸は塊状部以外の部分で曲がり易く、ガーゼ本体の柔軟性が損なわれることがない。
【0014】
しかも、X線撮影によるX線造影糸の造影が、多数の塊状部において拡幅を繰り返す膨縮に富んだものとなるので、X線撮影時のX線造影糸の識別性を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の医療用ガーゼの要部平面図である。
図2】本実施形態の医療用ガーゼのX線造影糸を構成する意匠撚糸を示す模式正面図である。
図3】同意匠撚糸の絡み糸の構成単糸の模式断面図である。
図4】本実施形態の医療用ガーゼのX線造影糸の構成を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の医療用ガーゼ10は、綿糸から成る多数本の経糸1と緯糸2とが平織りされ、その一部において、経糸1の代わりに、X線造影剤を含んだX線造影糸3が織り込まれて構成されている。
【0017】
X線造影糸3は、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部41・41…を有する意匠撚糸4から構成されている。本実施形態の意匠撚糸4は、図2に示すように、塊状部41としてノット部(玉節部)を複数有するノットヤーンから構成されている。ノットヤーンは、芯糸と、この芯糸の周囲に巻き付けられた絡み糸と、この絡み糸を押える押え糸とから構成され、公知の意匠撚糸機により芯糸の送り速度を間断的に変えて芯糸に対する絡み糸の巻付け量を部分的に多くすることによって、他の部分よりも径の大きいノット部(玉節部)が複数形成されている。本実施形態の意匠撚糸4は、芯糸及び絡み糸にそれぞれ、硫酸バリウム等の公知のX線造影剤が含まれている。
【0018】
また、芯糸及び絡み糸はそれぞれ、マルチフィラメントから成り、その構成単糸5は、図3に示すように、X線造影剤を含む芯部51と、X線造影剤を含んでいない鞘部52とから成る芯鞘型複合糸として紡糸されている。
【0019】
本実施形態の構成単糸5は、芯部51が硫酸バリウムを約60%含んだポリエチレンテレフタレート樹脂、鞘部52が硫酸バリウムを含んでいないナイロン樹脂から成り、芯部51と鞘部52の割合は60:40(構成単糸5全体の硫酸バリウム濃度約36%)であり、繊度15dtexに紡糸されている。そして、意匠撚糸4の芯糸及び絡み糸はそれぞれ、この構成単糸5を計32本引き揃えたマルチフィラメントとして構成されており、また、押さえ糸は、硫酸バリウムを含んでいないポリエチレンテレフタレート樹脂から成る構成単糸を計48本引き揃えたマルチフィラメント(167T-48F)として構成されている。
【0020】
また、本実施形態のX線造影糸3は、図4に示すように、計3本の意匠撚糸4(4A・4B・4C)を互いに撚り合わせて構成されている。このことで、X線造影糸3の単位糸長あたりの塊状部41の数を増加させることができ、また、塊状部41以外の部分のX線造影糸3の径を大きくすることができる。さらに、ノットヤーン等の意匠撚糸4は、その塊状部41同士の間隔(図4中の符号L1、L2参照)にばらつきがあり、複数の意匠撚糸4(4A・4B・4C)を撚り合わせたとき、各意匠撚糸4の塊状部41同士の位置が重なる場合がある(図4中の符号41a、41b参照)。このとき、複数の意匠撚糸4の撚り合わせによって、X線造影糸3の塊状部41の径も大きくすることができる(図4中の符号41c参照)。
【0021】
このように本実施形態の医療用ガーゼ10は、X線造影糸3が糸長方向に複数の塊状部41を有する意匠撚糸4から成り、これら塊状部41のみが太く形成されているので、これら複数の塊状部41が引っ掛かってガーゼ本体からのX線造影糸3の抜け落ちを確実に防ぐことができ、また、X線造影糸3は塊状部41のみが太く形成されているので、塊状部41以外の部分で曲がり易く、ガーゼ本体の柔軟性が損なわれることがない。
【0022】
しかも、本実施形態の医療用ガーゼ10は、X線造影糸3の塊状部41を形成する意匠撚糸4の絡み糸がX線造影剤を含んでいるので、X線撮影によるX線造影糸3の造影が、多数の塊状部41において拡幅を繰り返す膨縮に富んだものとなり、X線造影糸3の識別性を格段に向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態の医療用ガーゼ10は、X線造影糸3の塊状部41を形成する意匠撚糸4の絡み糸がマルチフィラメントから成るので、意匠撚糸4自体の柔軟性を向上させることができる。しかも、このマルチフィラメントの構成単糸5が、X線造影剤を含む芯部51とX線造影剤を含まない鞘部52とから成る芯鞘型複合糸から構成されているので、構成単糸5自体の柔軟性を向上させることができる。通常、合成樹脂繊維は、硫酸バリウム等のX線造影剤の含有濃度を高めるほど脆くなり、柔軟性が低下するが、本実施形態では、X線造影剤を含んだ芯部51をX線造影剤を含まない鞘部52で被覆しているので、構成単糸5自体の柔軟性を保つことができる。
【0024】
また、本実施形態の医療用ガーゼ10は、芯糸に対する絡み糸の巻付け量を部分的に多くして径の大きい塊状部41を形成しているので、塊状部41におけるX線造影剤の含有量を多くすることができる。したがって、必ずしも構成単糸5へのX線造影剤の含有濃度を極限まで高める必要もなく、このことによっても、構成単糸5の柔軟性を保ち、X線造影糸3自体の柔軟性を保つことができる。
【0025】
また、本実施形態の医療用ガーゼ10は、X線造影糸3が複数の意匠撚糸4を互いに撚り合わせて構成されているので、上述したように、X線造影糸3の単位糸長あたりの塊状部41の数を容易に増加させることができ、また、複数の意匠撚糸4の塊状部41同士が重なる部分において塊状部41の径を容易に大きくすることができる。このことによって、X線造影糸3の抜け落ちをより確実に防ぐことができ、X線撮影時のX線造影糸の識別性をより向上させることができる。さらに、X線造影糸3の塊状部41以外の部分も、複数の意匠撚糸4が撚り合わされているので、このことによっても、X線造影糸3自体の柔軟性を向上させることができる。
【0026】
以上、本実施形態の医療用ガーゼ10について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0027】
例えば、上記実施形態では、意匠撚糸4として、ノット部を複数有するノットヤーンを採用しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、塊状部としてネップ部を複数有するネップヤーンや、塊状部としてスラブ部を複数有するスラブヤーン等の他の意匠撚糸を採用してもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、意匠撚糸4から成るX線造影糸3をガーゼ本体の中程部分に織り込んでいるが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばガーゼ本体の縁部に織り込んでもよい。また、ガーゼ本体の複数箇所に、単一種類または複数種類の意匠撚糸4を織り込むことによってX線造影糸3の識別性をより向上させるようにしてもよい。
【0029】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施したりしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 医療用ガーゼ
1 経糸
2 緯糸
3 X線造影糸
4 意匠撚糸
41 塊状部
5 構成単糸
51 芯部
52 鞘部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線造影剤を含むX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼであって、
前記X線造影糸が、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部を有する意匠撚糸から成り、
前記意匠撚糸が芯糸と該芯糸の周囲に巻き付けられた絡み糸とを備え、
少なくとも前記絡み糸がX線造影剤を含むことを特徴とした医療用ガーゼ。
【請求項2】
前記絡み糸がマルチフィラメントから成り、該マルチフィラメントの構成単糸がX線造影剤を含む芯部とX線造影剤を含まない鞘部とから成る芯鞘型複合糸であることを特徴とした請求項1に記載の医療用ガーゼ。
【請求項3】
前記X線造影糸が、複数の前記意匠撚糸を撚り合わせて構成されていることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の医療用ガーゼ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、X線造影剤を含むX線造影糸を一部に織り込んだ医療用ガーゼであって、
前記X線造影糸が、糸長方向に間隔をあけて並ぶ複数の塊状部を有する意匠撚糸から成り、前記意匠撚糸が芯糸と該芯糸の周囲に巻き付けられた絡み糸とを備え、少なくとも前記絡み糸がX線造影剤を含むことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】