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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037060
(43)【公開日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ケーブルグランド
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240311BHJP
   H02G 15/013 20060101ALI20240311BHJP
   H02G 3/06 20060101ALI20240311BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20240311BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240311BHJP
   F16L 5/08 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
H02G3/22
H02G15/013
H02G3/06 025
H05K7/00 M
F16L5/02 N
F16L5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141703
(22)【出願日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 嘉高
(72)【発明者】
【氏名】谷上 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森 康夫
【テーマコード(参考)】
4E352
5G363
5G375
【Fターム(参考)】
4E352AA01
4E352BB02
4E352BB10
4E352CC02
4E352CC12
4E352CC32
4E352CC33
4E352CC52
4E352CC56
4E352DD05
4E352DD11
4E352DR02
4E352DR13
4E352DR14
4E352DR15
4E352DR25
4E352DR40
4E352DR46
4E352GG04
4E352GG11
4E352GG12
4E352GG18
5G363AA01
5G363AA12
5G363BA01
5G363CA12
5G363CB01
5G363CB08
5G375AA02
5G375BB03
5G375BB08
5G375BB29
5G375CB06
5G375CB25
(57)【要約】
【課題】ケーブルが小径の場合であっても、スリーブの損傷を抑制して、スリーブのケーブル保持力および防塵防水性能を確保することが可能なケーブルグランドを提供する。
【解決手段】ケーブルグランドは、グランド本体とキャップとスリーブとスリーブコレット5とを備える。スリーブコレット5は、スリーブの外周に嵌め込まれる円筒部51と、円筒部51の一方端部から径方向内側に延びるフランジ52と、フランジ52の径方向内側端部から軸方向に延びるスパイラルチューブ53とを含む。スパイラルチューブ53は、ケーブルの外周面に巻き付けられ、キャップの開口孔を介してキャップ側に突出するように配置され、スリット563が螺旋状に延びるように形成されている。フランジ52にはスリット562が形成され、円筒部51にはスリット561が形成されている。スリット561は、スリット562aを介してスリット563aと連通されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの挿通が可能な筒状の部材であって、円筒形状のケーブル保持部を有し、そのケーブル保持部の外周面に雄ねじが形成されているとともに、前記ケーブル保持部内に円すいテーパ面が形成されたグランド本体と、
ケーブルを通す挿通孔を有し、前記ケーブル保持部に嵌め込まれる円筒形状のスリーブと、
前記スリーブに装着されるスリーブコレットと、
前記ケーブル保持部に螺着されるキャップとを備え、
前記キャップは、前記ケーブル保持部の雄ねじに噛み合う雌ねじが形成された筒状の周壁部と、前記周壁部の一方端部に形成された前壁部とを含み、前記前壁部にケーブルが挿通される開口孔が形成され、
前記ケーブル保持部内に前記スリーブおよび前記スリーブコレットを嵌め込んだ状態で、前記キャップを前記ケーブル保持部の雄ねじに締め付けることにより、前記円すいテーパ面にて前記スリーブおよび前記スリーブコレットを径方向内側に変形させるケーブルグランドにおいて、
前記スリーブコレットは、前記スリーブの外周に嵌め込まれる円筒部と、前記円筒部の一方端部から径方向内側に延びるフランジと、前記フランジの径方向内側端部から軸方向に延びるスパイラルチューブとを含み、
前記スパイラルチューブは、ケーブルの外周面に巻き付けられ、前記キャップの開口孔を介して前記キャップ側に突出するように配置され、第1スリットが螺旋状に延びるように形成され、
前記フランジには、第2スリットが径方向に延びるように形成され、
前記円筒部には、第3スリットが軸方向に延びるように形成され、
前記第3スリットは、前記第2スリットを介して前記第1スリットと連通されていることを特徴とするケーブルグランド。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルグランドにおいて、
前記第1スリットおよび前記第2スリットが複数設けられ、前記第3スリットが1つ設けられていることを特徴とするケーブルグランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを保持するケーブルグランドに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器にケーブルを接続する際、電気機器の筐体等に取り付けたケーブルグランドを介してケーブルを保持する技術が公知である。
【0003】
従来の一般的なケーブルグランドは、ケーブルの挿通が可能な筒状の部材であって筐体等の壁体に取り付けられるグランド本体、このグランド本体に嵌め込まれるスリーブ、および、グランド本体の外側に螺着されるキャップ(袋ナット)などを備えている。スリーブは、ケーブルが挿通される挿通孔を有する。キャップは、筒状の周壁部とその周壁部の一方端部に形成された前壁部とを含み、前壁部にケーブルが挿通される開口孔が形成されている。
【0004】
このようなケーブルグランドでは、スリーブの挿通孔にケーブルを挿通した状態でスリーブをグランド本体に嵌め込み、そのグランド本体の雄ねじにキャップを締め付けると、スリーブがグランド本体内に圧入されることにより、グランド本体内の円すいテーパ面にてスリーブが径方向内側に変形し、スリーブの挿通孔の内周面とケーブルの外周面とが密着する。これによって、電気機器の筐体内に異物(例えば、水、油、塵、埃など)が侵入するのを防止することができるとともに、ケーブル自体をしっかりと保持・固定することができる。
【0005】
また、スリーブに装着されるスリーブコレットを備えるケーブルグランドも提案されている(例えば、特許文献1参照)。スリーブコレットは、スリーブを囲うように設けられており、スリーブ圧縮時にキャップやグランド本体内の空き空間にスリーブの変形が逃げて、スリーブのケーブル保持力および防塵防水性能が低減しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6831899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ケーブルグランドでは挿通可能なケーブルを保持することが可能であるが、ケーブルが小径の場合には、キャップの開口孔の内周面とケーブルの外周面との間の隙間が大きくなり、キャップの開口孔を介して露出されるスリーブの面積が大きくなる。このような場合に、キャップ側から温水が高圧噴射されると、スリーブが損傷してケーブル保持力および防塵防水性能が低減するおそれがある。
【0008】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、ケーブルが小径の場合であっても、スリーブの損傷を抑制して、スリーブのケーブル保持力および防塵防水性能を確保することが可能なケーブルグランドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるケーブルグランドは、ケーブルの挿通が可能な筒状の部材であって、円筒形状のケーブル保持部を有し、そのケーブル保持部の外周面に雄ねじが形成されているとともに、ケーブル保持部内に円すいテーパ面が形成されたグランド本体と、ケーブルを通す挿通孔を有し、ケーブル保持部に嵌め込まれる円筒形状のスリーブと、スリーブに装着されるスリーブコレットと、ケーブル保持部に螺着されるキャップとを備える。キャップは、ケーブル保持部の雄ねじに噛み合う雌ねじが形成された筒状の周壁部と、周壁部の一方端部に形成された前壁部とを含み、前壁部にケーブルが挿通される開口孔が形成されている。ケーブルグランドは、ケーブル保持部内にスリーブおよびスリーブコレットを嵌め込んだ状態で、キャップをケーブル保持部の雄ねじに締め付けることにより、円すいテーパ面にてスリーブおよびスリーブコレットを径方向内側に変形させるようになっている。スリーブコレットは、スリーブの外周に嵌め込まれる円筒部と、円筒部の一方端部から径方向内側に延びるフランジと、フランジの径方向内側端部から軸方向に延びるスパイラルチューブとを含む。スパイラルチューブは、ケーブルの外周面に巻き付けられ、キャップの開口孔を介してキャップ側に突出するように配置され、第1スリットが螺旋状に延びるように形成されている。フランジには、第2スリットが径方向に延びるように形成され、円筒部には、第3スリットが軸方向に延びるように形成されている。第3スリットは、第2スリットを介して第1スリットと連通されている。
【0010】
このように構成することによって、スパイラルチューブおよびフランジによりスリーブが覆われるので、ケーブルが小径の場合にキャップ側から温水が高圧噴射されても、スリーブの損傷を抑制して、スリーブのケーブル保持力および防塵防水性能を確保することができる。
【0011】
上記ケーブルグランドにおいて、第1スリットおよび第2スリットが複数設けられ、第3スリットが1つ設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブルグランドによれば、ケーブルが小径の場合であっても、スリーブの損傷を抑制して、スリーブのケーブル保持力および防塵防水性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態によるケーブルグランドを示した斜視図である。
図2図1のケーブルグランドの分解斜視図である。
図3図2のケーブルグランドを別の角度から見た図である。
図4図1のケーブルグランドの断面図である。
図5図2のケーブルグランドのスリーブコレットを示した斜視図である。
図6図2のケーブルグランドのスリーブコレットを別の角度から見た図である。
図7図2のケーブルグランドのキャップを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
本発明のケーブルグランドの一例を図1図7を参照して説明する。
【0016】
ケーブルグランド1は、図1に示すように、電気機器の筐体の壁体160に取り付けられ、電気機器に接続されるケーブル150(図4参照)を保持するように構成されている。ケーブルグランド1は、図2および図3に示すように、グランド本体2、キャップ3、スリーブ4、スリーブコレット5、ロックナット6、ワッシャ7、およびパッキン8などを備えている。
【0017】
グランド本体2は、略円筒形状の部材(例えば樹脂製)であって、軸方向(円筒の軸方向)の中央部に略六角形状の鍔部21が形成されており、この鍔部21を挟んだ両側(軸方向の両側)に、それぞれ円筒形状のケーブル保持部22と取付部23とが形成されている。
【0018】
ケーブル保持部22の外周面には雄ねじ22aが形成されている。また、取付部23の外周面には雄ねじ23aが形成されている。取付部23は、電気機器の筺体の壁体160に形成された取付孔161に差し込まれる。
【0019】
なお、以下の説明では、グランド本体2のケーブル保持部22側(ケーブルグランド1のキャップ3側)を前方側(X1方向側)といい、その反対側を後方側(X2方向側)という。
【0020】
グランド本体2には、ケーブル挿通用の挿通孔(貫通孔)24が軸方向(X1およびX2方向)に沿って形成されている。挿通孔24の軸方向の途中には、後述するスリーブ4を内方(縮径方向)に向けて押圧するための円すいテーパ面25が形成されている。円すいテーパ面25は、後方側に向かうにしたがって径が縮小するテーパ面である。そして、挿通孔24の前方側には、後述するスリーブ4およびスリーブコレット5が嵌め込まれる。
【0021】
また、挿通孔24の内周面には、スリーブコレット5のグランド本体2に対する回り止め用の溝部26が形成されている。溝部26は、軸方向に延びるように形成され、ケーブル保持部22の前方側の端部から円すいテーパ面25に到達するまで延びるように形成されている。溝部26は、周方向に所定の間隔を隔てて複数(例えば3つ)設けられている。
【0022】
また、ケーブル保持部22の外周面には、軸方向に延びる溝状のバイパス通路27が形成されている。このバイパス通路27は、ケーブル保持部22の前方側の端部から鍔部21に到達するまで延びるように形成されている。バイパス通路27は、図4に示すように、スリーブ4およびスリーブコレット5とキャップ3との間の空間を外部に連通させるように構成されている。このため、キャップ3側から水が高圧噴射された場合に、後述するキャップ3の開口孔32aから浸入した水とその圧力がバイパス通路27を介してグランド本体2の外側に逃がされるようになっている。例えば、バイパス通路27は、周方向に所定の間隔を隔てて複数(例えば2つ)設けられている。
【0023】
また、取付部23の外周面には、グランド本体2のワッシャ7に対する回り止め用の溝部28(図3参照)が形成されている。溝部28は、軸方向に延びるように形成され、取付部23の後方側の端部から鍔部21に到達するまで延びるように形成されている。例えば、溝部28が1つ設けられている。
【0024】
キャップ3は、袋ナット状の部材(例えば樹脂製)であり、ケーブル保持部22の外側に螺着される。キャップ3は、外周面が略六角形状の筒状の周壁部31と、その周壁部31の前方側(軸方向の一方端部)を覆う前壁部32とを有する。キャップ3の周壁部31の内周面には、グランド本体2のケーブル保持部22の雄ねじ22aに噛み合う雌ねじ31aが形成されている。キャップ3の前壁部32の中央には、ケーブル150を通すための円形の開口孔32aが形成されている。開口孔32aの内径は、スリーブ4の外径およびスリーブコレット5の外径よりも小さい。このため、キャップ3は、スリーブ4およびスリーブコレット5を圧入可能である。
【0025】
また、図7に示すように、キャップ3の前壁部32の後方側の面(スリーブコレット5のフランジ52と対向する面)には、後方側(X2方向側)に突出する突部33が形成されている。突部33は、断面形状が円弧状であり、径方向に延びるように形成されている。例えば、突部33が1つ設けられている。
【0026】
図4に示すように、スリーブ4は、電気機器の筐体内に異物(例えば、水、油、塵、埃など)が侵入するのを抑制するために設けられている。このスリーブ4は、例えばゴム製で弾性変形可能であり、ケーブル150を挿通可能な挿通孔4aが設けられている。スリーブ4は、円筒状の本体部41と、本体部41の他方端部(X2方向側の端部)に設けられたフランジ部42とを含んでいる。フランジ部42は、スリーブコレット5の厚み分だけ本体部41から外側に張り出すように形成されている。
【0027】
スリーブコレット5は、スリーブ4に外装され、スリーブ4が圧入される際の変形を規正するように構成されている。スリーブコレット5は、例えば樹脂製であり、ケーブル150を挿通可能に構成されている。スリーブコレット5は、図5および図6に示すように、スリーブ4の外周に嵌め込まれる円筒部51と、円筒部51の一方端部(X1方向側の端部)から径方向内側に延びるフランジ52と、フランジ52の径方向内側端部から軸方向に延びるスパイラルチューブ53とを含んでいる。
【0028】
円筒部51は、スリーブ4の本体部41を囲うように円筒状に形成されている。円筒部51の内径は、本体部41の外径に対応しており、円筒部51を本体部41に密着した状態で嵌め込むことができる。円筒部51の外径はスリーブ4のフランジ部42の外径と略等しい。また、円筒部51の外径は、グランド本体2の挿通孔24の前方側の内径に対応している。
【0029】
円筒部51の他方端部(X2方向側の端部)には、軸方向に延びる複数の切欠き54が形成されている。複数の切欠き54は、周方向に間隔を隔てて配置されている。複数の切欠き54は、円筒部51の他方端部側を縮径方向に変形しやすくするために設けられている。円筒部51の外面には、溝部26と嵌合される突部55が形成されている。突部55は、円筒部51から径方向外側に突出するように形成されている。突部55は、周方向に所定の間隔を隔てて複数(例えば3つ)設けられている。
【0030】
また、円筒部51には、1つのスリット561(図5参照)が軸方向に延びるように形成されている。スリット561は、円筒部51の軸方向の全長にわたって形成され、円筒部51を周方向において分断するように設けられている。なお、スリット561は、本発明の「第3スリット」の一例である。
【0031】
フランジ52は、スリーブ4の一方端部側の端面(X1方向側の端面)に沿うように配置されている。フランジ52は、キャップ3とスリーブ4との間に介在されるようになっている。フランジ52には、3つのスリット562が径方向に延びるように形成されている。3つのスリット562は、周方向に間隔を隔てて配置されている。3つのスリット562のうちの1つのスリット562a(図5参照)は、スリット561と接続されている。なお、スリット562は、本発明の「第2スリット」の一例である。
【0032】
スパイラルチューブ53は、ケーブル150の外周面に巻き付けられ、キャップ3の開口孔32aを介してキャップ3側に突出するように配置されている。スパイラルチューブ53には、3つのスリット563が螺旋状に延びるように形成されている。3つのスリット563は、軸方向に間隔を隔てて配置され、それぞれ対応するスリット562と接続されている。すなわち、スパイラルチューブ53は、フランジ52から螺旋状に延びる3つの帯状体によって構成されている。3つのスリット563のうちの1つのスリット563a(図5参照)は、スリット562aと接続されている。なお、スリット563は、本発明の「第1スリット」の一例である。
【0033】
スリーブコレット5では、スリット561がスリット562aを介してスリット563aと連通されている。このため、スリット561、562aおよび563aにより、スリーブコレット5の軸方向における全長にわたって切れ目が入れられている。すなわち、スリット561、562aおよび563aにより、スリーブコレット5が周方向において分断されている。したがって、スリット561、562aおよび563aを介して、スリーブコレット5にケーブル150を挿通することが可能である。
【0034】
また、スリーブコレット5のフランジ52の前方側の面(キャップ3の前壁部32と対向する面)には、周方向に間隔を隔てて複数の凹部57が形成されている。凹部57には、周方向において対向するように傾斜面57aおよび係止面57bが形成されている。傾斜面57aが周方向における一方側(ねじ込み方向側)に配置され、係止面57bが周方向における他方側(ねじ込み方向とは反対方向側)に配置されている。スリーブコレット5の凹部57およびキャップ3の突部33は、キャップ3のねじ込み方向への回転を許容する一方、逆方向(キャップ3の緩み方向)への回転を規制するために設けられている。また、キャップ3がケーブル保持部22にねじ込まれる際に、回転角度に応じて突部33が凹部57に嵌合されてクリック感が付与されるようになっている。
【0035】
図2および図3に示すように、壁体160には、ケーブルグランド1が取り付けられる円形の取付孔161が形成されている。この取付孔161の周縁には、切欠き161aが形成されている。
【0036】
ロックナット6は、グランド本体2を電気機器の壁体160に固定するためのナット(例えば樹脂製)であって、グランド本体2の取付部23の雄ねじ23aに噛み合う雌ねじ6aが形成されている。すなわち、ロックナット6と鍔部21とで壁体160を挟持させることにより、ケーブルグランド1(図1参照)が壁体160に取り付けられる。
【0037】
ワッシャ7は、壁体160とロックナット6との間に挟み込まれるワッシャ本体71と、突起部72および舌片73とを含んでいる。このワッシャ7は、壁体160に対してグランド本体2を回り止めするように構成されている。ワッシャ本体71は、円形孔7aを有する円環板状に形成されている。突起部72および舌片73は、ワッシャ本体71の円形孔7aの周縁に形成されている。
【0038】
突起部72は、前方側(X1方向側)に突出し、壁体160の切欠き161aに嵌合可能に構成されている。舌片73は、後方側(X2方向側)に折り曲げられ、取付部23の溝部28に嵌合可能に構成されている。このため、突起部72が切欠き161aに嵌合されることによって壁体160に対するワッシャ7の回転が規制され、舌片73が溝部28に嵌合されることによってワッシャ7に対するグランド本体2の回転が規制される。
【0039】
パッキン8は、円形孔8aを有する円環状の部材(例えばゴム製)であって、グランド本体2の鍔部21と電気機器の壁体160との間に挟み込まれる。パッキン8は、壁体160とケーブルグランド1との間の隙間をシールするために設けられている。
【0040】
-取付手順-
次に、以上の構造のケーブルグランド1の取付手順について図1図7を参照して説明する。
【0041】
(S1)まず、グランド本体2の取付部23にパッキン8を嵌め込み、その取付部23を電気機器の壁体160の取付孔161に当該壁体160の表側(電子機器の筐体の表側)から差し込む。
【0042】
(S2)壁体160の取付孔161に差し込んだグランド本体2の取付部23にワッシャ7を嵌め込む。このとき、舌片73が溝部28に差し込まれ、突起部72が切欠き161aに嵌め合わされる。そして、取付部23の雄ねじ23a(壁体160の裏側に突出している部分の雄ねじ23a)にロックナット6をねじ込むことによって、グランド本体2を壁体160に取り付ける(固定する)。
【0043】
(S3)グランド本体2の挿通孔24にケーブル150を挿通させるとともに、グランド本体2に対して前方側のケーブル150にキャップ3およびスリーブ4を通す。そして、キャップ3とスリーブ4との間におけるケーブル150に対して、径方向外側からスリーブコレット5が嵌め合わされる。すなわち、スリット561、562aおよび563aを介して、ケーブル150がスリーブコレット5に挿通される。
【0044】
(S4)ケーブル150に挿通されたスリーブ4およびスリーブコレット5を、ケーブル150に沿って相対的に移動させることにより、スリーブコレット5がスリーブ4に装着される。そして、スリーブコレット5が装着されたスリーブ4を挿通孔24の前方側に嵌め込む。
【0045】
(S5)キャップ3の雌ねじ31aをグランド本体2のケーブル保持部22の雄ねじ22aに合わせてキャップ3をグランド本体2に締め付ける。キャップ3がねじ込み方向に回転される際に、キャップ3の突部33がスリーブコレット5の凹部57に嵌合されるとクリック感が発生し、突部33が傾斜面57aに当接されて突部33が傾斜面57aを通過する。このキャップ3のねじ込み過程において、キャップ3にてスリーブコレット5およびスリーブ4が後方側に押圧される。このため、スリーブ4およびスリーブコレット5が円すいテーパ面25とケーブル150との間に圧入される。なお、キャップ3の締め付けが完了された後に、振動などに起因して予期せずに、キャップ3がグランド本体2に対してねじ込み方向とは反対方向に所定トルク未満で回転される場合には、突部33が係止面57bに係合されるため、キャップ3のグランド本体2に対する反対方向への回転が規制される。
【0046】
-効果-
以上説明したように、本実施形態のケーブルグランド1によれば、スパイラルチューブ53およびフランジ52によりスリーブ4が覆われるので、ケーブル150が小径の場合にキャップ3側から温水が高圧噴射されても、スリーブ4の損傷を抑制して、スリーブ4のケーブル保持力および防塵防水性能を確保することができる。また、スリット561、562aおよび563aがスリーブコレット5に形成されることによって、スリーブコレット5にケーブル150を容易に挿通することができる。
【0047】
さらに、本実施形態のケーブルグランド1では、ケーブル保持部22の外周面にバイパス通路27が形成されることによって、キャップ3の前面側から高圧水噴射を受けても、その圧力を逃がすことができる。
【0048】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
たとえば、上記実施形態では、スリーブコレット5の円筒部51の他方端部に軸方向に延びる切欠き54が形成される例を示したが、これに限らず、スリーブコレットの円筒部の一方端部に軸方向に延びる切欠きが形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電気機器等にケーブルを保持する際に使用されるケーブルグランドに有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ケーブルグランド
2 グランド本体
3 キャップ
4 スリーブ
4a 挿通孔
5 スリーブコレット
6 ロックナット
6a 雌ねじ
7 ワッシャ
7a 円形孔
8 パッキン
8a 円形孔
21 鍔部
22 ケーブル保持部
22a 雄ねじ
23 取付部
23a 雄ねじ
24 挿通孔
25 円すいテーパ面
26 溝部
27 バイパス通路
28 溝部
31 周壁部
31a 雌ねじ
32 前壁部
32a 開口孔
33 突部
41 本体部
42 フランジ部
51 円筒部
52 フランジ
53 スパイラルチューブ
54 切欠き
55 突部
57 凹部
57a 傾斜面
57b 係止面
71 ワッシャ本体
72 突起部
73 舌片
150 ケーブル
160 壁体
161 取付孔
161a 切欠き
561 スリット(第3スリット)
562、562a スリット(第2スリット)
563、563a スリット(第1スリット)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7